説明

車両用有害生物追い出しシステム

【課題】車室内の有害生物を効果的に追い出すための車両用有害生物追い出しシステムを提供すること。
【解決手段】車室内の有害生物を追い出すための車両用有害生物追い出しシステム1において、車室内の音を検知する集音装置10と、集音装置10で検知された音を解析する音解析装置20と、音解析装置20での解析結果に基づいて、有害生物を追い出すための音を発生する音発生装置30と、を備え、音解析装置20は、集音装置10で検知された音から雑音を除去する雑音除去部21と、雑音が除去された音から有害生物の発生音を検出する発生音検出部22と、発生音検出部22で有害生物の発生音が検出された場合に、有害生物を追い出す音の制御に関する追い出し信号を音発生装置30に出力する音制御部25と、を有し、音発生装置30は、音制御部25から出力された追い出し信号に基づいて、有害生物を追い出す音を発生することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用有害生物追い出しシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、蚊や蝿などの有害生物を駆除あるいは撃退する種々の装置が知られている。例えば、特許文献1には、有害生物を検知する作動センサを備え、作動センサからの信号に応じて薬剤を揮散する薬剤揮散装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−81117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、有害生物が車両の窓や吸気口から車室内に侵入した場合、運転中のドライバーが有害生物を追い出すことは困難である。例えば蚊などの有害生物を媒介して伝染病などに感染した場合、ワクチンを接種することが考えられる。しかしながら、必ずしもワクチンが有害生物に効くとも限らない。また、例えば虫除けスプレーなどの殺虫剤を用いて虫を駆除することが考えられるが、運転中に運転者が殺虫剤を使用することは困難である。従って、車室内に侵入した有害生物を効果的に追い出す手段が望まれている。また、上記特許文献1に記載の薬剤揮散装置では、作動センサは、周波数100Hz〜1000Hzの範囲で有害生物の羽音を検知している。しかし、検知される音の中には人の発話などの雑音が含まれるので、羽音検出の精度が低いといった問題があった。
【0005】
本発明は、車室内の有害生物の存在を精度良く検出して、有害生物を効果的に追い出すことができる車両用有害生物追い出しシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に係る車室内の有害生物を追い出すための車両用有害生物追い出しシステムは、車室内の音を検知する集音装置と、集音装置で検知された音を解析する音解析装置と、音解析装置での解析結果に基づいて、有害生物を追い出すための音を発生する音発生装置と、を備え、音解析装置は、集音装置で検知された音から雑音を除去する雑音除去部と、雑音が除去された音から有害生物の発生音を検出する発生音検出部と、発生音検出部で有害生物の発生音が検出された場合に、有害生物を追い出す音の制御に関する追い出し信号を音発生装置に出力する音制御部と、を有し、音発生装置は、音制御部から出力された追い出し信号に基づいて、有害生物を追い出す音を発生することを特徴とする。
【0007】
本発明の車両用有害生物追い出しシステムによれば、音解析装置が、集音装置で検知された車室内の音を解析する。具体的には、音解析装置の雑音除去部が、集音装置で検知された音の中から雑音を除去する。また音解析装置の発生音検出部は、雑音が除去された音の中から有害生物の発生音を検出する。発生音検出部において発生音が検出された場合に、音解析装置は、有害生物を追い出す音を発生させるように音発生装置を制御する。このように、車室内で検知した音の中から雑音を除去した後、有害生物の発生音を検出する。従って、車室内の有害生物の存在を精度良く検出して、有害生物を効果的に追い出すことができる。
【0008】
ここで、音発生装置は、有害生物の好む周波数の音を車両における車室以外の場所で発生する第一音発生部を含むことが好ましい。有害生物の好む周波数の音を車室外で発生させることにより、車室内に存在する有害生物を車室の外へ効果的に誘導することができる。
【0009】
また、音発生装置は、有害生物の嫌う周波数の音を車室内で発生する第二音発生部を含むことが好ましい。有害生物の嫌う周波数の音を車室内で発生させることにより、有害生物は車室内にとどまることを嫌う。よって、有害生物を車室の外へ効果的に追い出すことができる。
【0010】
また、有害生物の嫌う周波数の音を車室内で発生させるとともに、有害生物の好む周波数の音を車両における車室以外の場所で発生させることが好ましい。例えば、有害生物の嫌う音で一度車室内から追い出せたとしても、時間が経つと音は減衰するので撃退効果が薄れる場合がある。よって、一度追い出せた有害生物が再び車室内に戻ってくる可能性がある。また、この有害生物が戻る際に何らかの妨害物が存在すると、有害生物の嫌う音が遮蔽されるおそれがある。そこで、有害生物の嫌う音を車室内で発生するとともに、好む音を車室外で発生させる2重構成により、一度追い出した有害生物が、再び車室内に戻ってくることを確実に抑制できる。
【0011】
また、音解析装置は、発生音検出部で検出された発生音に基づいて、有害生物の種別を特定する有害生物特定部を更に備え、有害生物特定部は、特定した有害生物の種別に関する種別信号を音制御部に出力し、音制御部は、この種別信号に基づいて追い出し信号を音発生装置に出力することが好ましい。常に一定の音を発生させる場合、有害生物の種別によっては効果が無い。しかし、上記のように有害生物の種別を特定した上で、特定した種別に基づいて有害生物を追い出す音を発生させることにより、より効率よく有害生物を車室外に追い出すことができる。
【0012】
また、雑音は人間の発話による雑音とすることができる。車室内で検知される音には、人間の発話が含まれていることが多い。この人間の発話は、検知された音を例えば周波数解析することで容易に特定できる。よって、集音装置で検知された音の中から人間の発話による雑音を簡便に除去することができる。したがって、車室内で検知される音の中から有害生物の発生音を精度良く検出できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車室内の有害生物を精度良く検出して効果的に追い出すことができる車両用有害生物追い出しシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両用有害生物追い出しシステムのブロック構成図である。
【図2】集音装置及び音発生装置の具体例を示す図である。
【図3】音制御部の具体例を示す図である。
【図4】ウィーンブリッジ発振回路の具体例を示す図である。
【図5】車両用有害生物追い出しシステムの動作を示すフローチャートである。
【図6】雑音除去の具体例を示すフローチャートである。
【図7】雑音除去前後の音データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る車両用有害生物追い出しシステム1のブロック構成図である。車両用有害生物追い出しシステム1は、車室内に侵入した有害生物を車両外へ効果的に追い出すためのものである。有害生物には、例えば蚊や蝿などの飛翔害虫がある。図1に示すように、車両用有害生物追い出しシステム1は、集音装置10、音解析装置20、及び音発生装置30を備えている。
【0017】
集音装置10は、車室内の音を検知する部分である。集音装置10は車室内に設置されており、音解析装置20に接続している。集音装置10の例として、音を電気信号に変換するマイクロフォンがある。図2に集音装置10の一例であるマイクロフォン10Aが車室内に設置されている例を示す。集音装置10は、検知した音に関する電気信号を音解析装置20へ出力する。
【0018】
音解析装置20は、集音装置10で検知された音に関する電気信号(以下、音信号ともいう)を解析する部分である。音解析装置20は、雑音除去部21、発生音検出部22、有害生物特定部23、有害生物情報記憶部24、及び音制御部25を有する。
【0019】
雑音除去部21は、集音装置10で検知された音信号から雑音を除去する部分である。雑音には、人間の発話による雑音が含まれる。人間の発話による雑音の例としては、運転者の話し声や、車室内のラジオから流れる人間の声などがある。雑音除去部21は、例えば周波数解析することにより、集音装置10で検知された音信号から雑音を除去する。周波数解析では、例えば音信号を高速フーリエ変換(FET)処理した後、周波数分析する。雑音除去部21は、雑音除去後の音信号を発生音検出部22へ出力する。
【0020】
発生音検出部22は、雑音除去部21で雑音が除去された音信号から有害生物の発生音を検出する部分である。有害生物の発生音には、例えば飛翔害虫の羽音がある。有害生物の発生音の検出は、例えば周波数分析により行う。発生音検出部22は、検出した発生音に関する信号を有害生物特定部23に出力する。
【0021】
有害生物特定部23は、発生音検出部22で検出された有害生物の発生音に関する信号に基づいて、有害生物の種別を特定する部分である。有害生物情報記憶部24は、有害生物の種別に関する情報が記憶されている部分であり、例えばメモリである。有害生物の種別に関する情報には、例えば飛翔害虫の場合、種別毎の羽音の周波数情報などがある。有害生物特定部23による有害生物の種別の特定は、例えば有害生物情報記憶部24に記憶されている有害生物の種別に関する情報を参照することにより行う。有害生物特定部23は、特定した有害生物の種別に関する種別信号を音制御部25に出力する。
【0022】
音制御部25は、有害生物を追い出す音の制御に関する追い出し信号を音発生装置30に出力する部分である。音制御部25は、有害生物特定部23で特定された有害生物の種別に関する種別信号に基づいて、有害生物を追い出す音の制御に関する信号を音発生装置30に出力する。
【0023】
音発生装置30は、音解析装置20での解析結果に基づいて、有害生物を追い出すための音を発生する部分である。音発生装置30は、音解析装置20の音制御部25に接続している。音発生装置30は、音制御部25からの有害生物を追い出す音の制御に関する追い出し信号に基づいて、有害生物を追い出す音を発生する。音発生装置30の例として、電気信号を音に変換するスピーカーがある。
【0024】
音発生装置30は、第一音発生部31と第二音発生部32とを含む。第一音発生部31は車両における車室以外の場所に設置されている。第一音発生部31は、有害生物の好む周波数の音を車室外で発生する部分である。第一音発生部31は、例えばエアコンなどのコンプレッサ、吸気口内、あるいは車両ボディーの外側などに設置することができる。一方、第二音発生部32は車室内に設置されている。第二音発生部32は、有害生物の嫌う周波数の音を車室内で発生する部分である。第二音発生部32は、運転者の近くに配置されていることが望ましく、例えば車両ドアの内側、インジケータパネルの周辺、あるいはシート部分などに設置することができる。図2に、第一音発生部31の一例であるスピーカー31Aが車室外に設置されており、第二音発生部32の一例であるスピーカー32Aが車室内に設置されている例を示す。
【0025】
図3に音制御部25の具体的な構成の一例を示す。図3に示す例では、音制御部25が複数のウィーンブリッジ発振回路41〜48とセレクタ50とから構成されている。各ウィーンブリッジ発振回路41〜48のゲートのそれぞれは、セレクタ50に接続している。セレクタ50には、有害生物特定部23で特定された有害生物の種別に関する種別信号が入力される。セレクタ50は、この特定された有害生物の種別に関する種別信号に基づいて、複数のウィーンブリッジ発振回路41〜48の中から対応するウィーンブリッジ発振回路を選択可能となっている。
【0026】
これらのウィーンブリッジ発振回路41〜48は、正弦波を発振するものである。図4に、1つのウィーンブリッジ発振回路4の具体的な内部構成の一例を示す。ウィーンブリッジ発振回路4は、コンデンサと抵抗器などから構成されている。ウィーンブリッジ発振回路4は、発振出力を入力に戻す正帰還によって発振動作を行う。
【0027】
ウィーンブリッジ発振回路4における発振構成の一例として、図3に示すウィーンブリッジ発振回路41〜44において、有害生物種αの好む周波数f,f,f,fでそれぞれ発振させ、ウィーンブリッジ発振回路45〜48において、有害生物種βの好む周波数f,f,f,fでそれぞれ発振させる(以下、「発振構成A」ともいう)。あるいは、ウィーンブリッジ発振回路41〜44において、有害生物種αの好む周波数f,f,f,fでそれぞれ発振させ、ウィーンブリッジ発振回路45〜48において、有害生物種αの嫌う周波数f,f,f,fでそれぞれ発振させてもよい(以下、「発振構成B」ともいう)。
【0028】
また、ウィーンブリッジ発振回路4は可変抵抗器Rvを調整することにより、発振周波数を変更することができる。例えば上述した発振構成Aにおいて、可変抵抗器Rvを調整することにより、ウィーンブリッジ発振回路41〜44において、有害生物種αの嫌う周波数f,f,f,fでそれぞれ発振させ、ウィーンブリッジ発振回路45〜48において、有害生物種βの嫌う周波数f,f,f,fでそれぞれ発振させることができる。あるいは、例えば上述した発振構成Bにおいて、可変抵抗器Rvを調整することにより、ウィーンブリッジ発振回路41〜44において、有害生物種βの好む周波数f,f,f,fでそれぞれ発振させ、ウィーンブリッジ発振回路45〜48において、有害生物種βの嫌う周波数f,f,f,fでそれぞれ発振させることができる。
【0029】
このようにウィーンブリッジ発振回路4で生成された特定の周波数を有する音信号の出力は、音発生装置30に送られる。例えば、ウィーンブリッジ発振回路41で生成された有害生物種αの好む周波数fを有する音信号の出力が、第一音発生部31に送られる。また例えば、ウィーンブリッジ発振回路45で生成された有害生物種αの嫌う周波数fを有する音信号の出力が、第二音発生部32に送られる。
【0030】
次に、本実施形態に係る車両用有害生物追い出しシステム1の動作について説明する。図5は、車両用有害生物追い出しシステム1の動作を示すフローチャートである。この図5の動作処理は、例えば集音装置10、音解析装置20、音発生装置30などにより実行される。
【0031】
まず、集音装置10で車室内の音を集音する(S1)。集音装置10は、車室内で検知した音を電気信号に変換して、音信号として音解析装置2に出力する。次いで、音解析装置20の雑音除去部21が、集音装置10で検知された音信号から雑音を除去する(S2)。雑音の除去は、音信号の周波数解析により行う。
【0032】
次いで、ステップS2における雑音除去の具体的な動作フローを図6に示す。まず、雑音除去部21では、集音装置10で検知された音信号の波形から一定区間を切り出すための窓掛けを行う(S21)。窓掛けには、例えばハミング窓を用いる。
【0033】
ここで、音信号は何秒間も続くものであるので一挙に処理することは困難である。そこで、音信号を複数のフレームに分けて、シフト処理する(S22)。具体的には、音信号を例えば30msずつのフレームに分割する。分割したフレームは、時間的に最初のものから第1フレーム、第2フレーム、第3フレーム…第Nフレームと呼ぶ。上述のように元の音信号にハミング窓を掛ける場合、各フレームの真ん中は元の信号に近く、再現性が良い。一方、各フレームの両端は0に近くなり、再現性が悪い。よって、フレーム分けした各フレームの真ん中部分を元の音信号の時間箇所に該当するようにずらして処理(シフト処理)する。
【0034】
続いて、第1〜第Nフレームの音信号の周波数解析を順に行う。まず、N=1の場合、すなわち第1フレームの処理を行う(S23)。第1フレームの対象となる音信号にどのような周波数の波が含まれているかを解析するために、高速フーリエ変換(FET)処理を行う(S24)。
【0035】
次いで、FET処理をした音データから子音縞の連続性を判断する(S25)。具体的に子音縞はソナグラム(スペクトログラム、声紋)で検知する。ソナグラムとは、ある時刻・周波数の音のパワーを色の濃淡で表した2次元画像である。ここで、通常の発話は、母音、子音、母音、子音・・・の繰り返しとなる。この子音の大部分、特に「k」、「s」、「t」、「h」などの濁らない子音は、白色雑音となる。白色雑音とは、全ての周波数帯域において同じ強度を有する雑音のことである。この白色雑音は、ソナグラム上において特定の周波数のところにパワーが出るのではなく、全体の周波数にわたってパワーが存在する。そこで、この白色雑音が続いていることをある一定の期間続いては消え、続いては消え、を繰り返していることを判断することによって、子音縞の連続性を判断する(S26)。
【0036】
子音縞の連続性があると判断された場合、続いて、母音に関する間欠性を判断する(S27)。具体的に母音に関する間欠性は、例えばソナグラム上の周波数分析により判断する。母音はおよそ0〜4kHzの周波数帯域に数箇所の大きなパワーを持って存在する信号である。通常の発話は、母音と子音が交互に繰り返されるので、母音の時間のところだけが間欠的になる。なお、母音の発話時間はおよそ50〜300msである。
【0037】
母音に関する間欠性があると判断された場合、人間の発話(ヒューマンスピーチ)であると確定する(S28)。この場合、人間の発話に関する音データの区間を排除する(S29)。よって、車室内で検知された音信号から人間の発話による雑音が除去される。
【0038】
図7に雑音除去前後の音データの一例を示す。図7の左上及び左下の画像が雑音除去前の音データであり、右上及び右下の画像が雑音除去後の音データである。この左上及び右上の画像は波形であり、横軸に時間、縦軸に振幅を示す。一方、左下及び右下の画像は、上述したソナグラムであり、横軸に時間、縦軸に周波数を示す。この例では、全体的に音のパワーがそれほど大きくないので、ソナグラムは暗い色として表されている。音のパワーが大きくなれば、黄色に、さらに大きくなれば赤色になる。
【0039】
以上のような雑音除去に関するステップS24〜S29を最初のフレームである第1フレームから最終フレームである第Nフレームまで繰り返す(S30)。
【0040】
雑音除去部21における雑音の除去処理が最終フレームまで完了したら、雑音除去部21は雑音除去後の音信号を発生音検出部22に出力する。図5を再び参照すると、発生音検出部22は、この雑音除去後の音信号から有害生物の発生音を検出する(S3)。有害生物の発生音の検出は、例えば周波数分析により行う。例えば、飛翔害虫の羽音の周波数解析を行う。発生音検出部22は、検出した有害生物の発生音に関する発生音信号を有害生物特定部23に出力する。
【0041】
有害生物特定部23は、この発生音信号に基づいて、有害生物の種別を特定する(S4)。この際、有害生物特定部23は、有害生物情報記憶部24に記憶されている有害生物の種別に関する情報を参照することにより、有害生物の種別を特定する。例えば、有害生物情報記憶部24に記憶されている複数の飛翔害虫の羽音の周波数情報の中から、発生音検出部22で検出された特定の周波数を見つけ出し、飛翔害虫の種別を特定する。有害生物特定部23は、特定した有害生物の種別に関する種別信号を音制御部25に出力する。
【0042】
次いで、音制御部25が音制御を行う(S5)。具体的に音制御部25は、有害生物特定部23で特定された有害生物の種別に関する種別信号に基づいて、有害生物を追い出す音の制御に関する追い出し信号を音発生装置30に出力する。
【0043】
音発生装置30は、音制御部25からの有害生物を追い出す音の制御に関する追い出し信号に基づいて、有害生物を追い出す音を発生する(S6)。この際、音制御部25の制御により、例えば第一音発生部31から有害生物種αの好む周波数fの音を車室外で発生させる。あるいは第二音発生部32から有害生物種αの嫌う周波数fの音を車室内で発生させる。もしくは、第一音発生部31から有害生物種αの好む周波数fの音を車室外で発生させるとともに、第二音発生部32から有害生物種αの嫌う周波数fの音を車室内で同時に発生させる。以上のように、本実施形態に係る車両用有害生物追い出しシステム1の動作が完了する。
【0044】
以下、本実施形態に係る車両用有害生物追い出しシステム1の効果を説明する。本実施形態に係る車両用有害生物追い出しシステム1によれば、音解析装置20が、集音装置10で検知された車室内の音を解析し、音解析装置20の雑音除去部21では、集音装置10で検知された音の中から雑音を除去する。音解析装置20の発生音検出部22は、雑音が除去された音の中から有害生物の発生音を検出する。発生音検出部22において発生音が検出された場合に、音解析装置20は、有害生物を追い出す音を発生させるように音発生装置30を制御する。このように、車室内で検知した音の中から、雑音を除去した上で、有害生物の発生音を検出する。従って、車室内の有害生物の存在を精度良く検出して、有害生物を効果的に追い出すことができる。
【0045】
また、音発生装置30の第一音発生部31において、特定の有害生物種αの好む特定の周波数Fの音を車両における車室以外の場所で発生させる。この場合、車室内に存在する有害生物を車室の外へ効果的に誘導することができる。
【0046】
また、音発生装置30の第二音発生部32において、特定の有害生物種αの嫌う特定の周波数Fの音を車室内で発生させる。この場合、有害生物は車室内にとどまることを嫌う。よって、車室内の有害生物を車室の外へ効果的に追い出すことができる。
【0047】
また、例えば飛翔害虫などの有害生物の嫌う音で一度車室内から追い出せたとしても、時間が経つと音は減衰するので撃退効果が薄れる場合がある。よって、一度追い出せた飛翔害虫などの有害生物が再び車室内に戻ってくる可能性がある。また、この有害生物が戻る際に何らかの妨害物が存在すると、有害生物の嫌う音が遮蔽されるおそれがある。そこで、第一音発生部31において、特定の有害生物種αの好む特定の周波数Fの音を車両における車室以外の場所で発生させるとともに、第二音発生部32において、当該特定の有害生物種αの嫌う特定の周波数Fの音を車室内で発生させる。このような2重構成により、一度追い出した有害生物が、再び車室内に戻ってくることを確実に抑制できる。
【0048】
また、音解析装置20は、発生音検出部22で検出された発生音に基づいて、有害生物の種別を特定する有害生物特定部23を更に備え、有害生物特定部23は、特定した有害生物の種別に関する種別信号を音制御部25に出力し、音制御部25は、この種別信号に基づいて、有害生物を追い出す音の制御に関する追い出し信号を音発生装置30に出力することが好ましい。音発生装置において常に一定の音を発生させる場合、有害生物の種別によっては効果が無いあるいは薄い。しかし、上記のように有害生物の種別を予め特定した上で、特定した種別に基づいて有害生物を追い出す効果的な音を発生させることにより、より効率よく有害生物を車室外に追い出すことができる。
【0049】
また、除去される雑音は人間の発話による雑音である。車室内で検知される音には、人間の発話が含まれていることが多い。この人間の発話は、検知された音を例えば周波数解析することで容易に特定できる。よって、集音装置10で検知された音の中から人間の発話による雑音を簡便に除去することができる。したがって、車室内で検知される音の中から有害生物の発生音を精度良く検出できる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、有害生物として蚊や蝿などの飛翔害虫を車室内から追い出す例を説明したが、本発明は飛翔害虫に限らず、例えば、羽をもたない昆虫や動物などの有害生物に適用してもよい。羽をもたない昆虫や動物などの有害生物の場合、発生音検出部22で羽音を検出する代わりに、昆虫や動物の例えば鳴き声などの発生音を検出すればよい。この場合、有害生物情報記憶部24には、昆虫や動物の種別に関する情報として、種別毎の鳴き声の周波数情報などが記憶されている。有害生物特定部23は、この有害生物情報記憶部24に記憶されている種別毎の鳴き声の周波数情報などを参照して、昆虫や動物の種別を特定することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…車両用有害生物追い出しシステム、10…集音装置、20…音解析装置、21…雑音除去部、22…発生音検出部、23…有害生物特定部、24…有害生物情報記憶部、25…音制御部、30…音発生装置、31…第一音発生装置、32…第二音発生装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の有害生物を追い出すための車両用有害生物追い出しシステムであって、
前記車室内の音を検知する集音装置と、
前記集音装置で検知された音を解析する音解析装置と、
前記音解析装置での解析結果に基づいて、前記有害生物を追い出すための音を発生する音発生装置と、を備え、
前記音解析装置は、
前記集音装置で検知された音から雑音を除去する雑音除去部と、
雑音が除去された音から前記有害生物の発生音を検出する発生音検出部と、
前記発生音検出部で前記有害生物の発生音が検出された場合に、前記有害生物を追い出す音の制御に関する追い出し信号を前記音発生装置に出力する音制御部と、を有し、
前記音発生装置は、
前記音制御部から出力された前記追い出し信号に基づいて、前記有害生物を追い出す音を発生することを特徴とする車両用有害生物追い出しシステム。
【請求項2】
前記音発生装置は、前記有害生物の好む周波数の音を前記車両における前記車室以外の場所で発生する第一音発生部を含む、請求項1に記載の車両用有害生物追い出しシステム。
【請求項3】
前記音発生装置は、前記有害生物の嫌う周波数の音を前記車室内で発生する第二音発生部を含む、請求項1または2に記載の車両用有害生物追い出しシステム。
【請求項4】
前記音解析装置は、前記発生音検出部で検出された前記発生音に基づいて、前記有害生物の種別を特定する有害生物特定部を更に備え、
前記有害生物特定部は、特定した前記有害生物の種別に関する種別信号を前記音制御部に出力し、
前記音制御部は、前記種別信号に基づいて、前記追い出し信号を前記音発生装置に出力する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用有害生物追い出しシステム。
【請求項5】
前記雑音は、人間の発話による雑音である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用有害生物追い出しシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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