説明

車両用温風ヒータ

【課題】本発明は、電磁誘導加熱手段を利用した、電磁界の人体への影響が少ない車両用温風ヒータを提供する。
【解決手段】本発明の車両用温風ヒータは、車両用温風ヒータ本体において、高透磁性材料を内包する耐熱円筒体の温風発生室1の吹出口に導電性金網の磁気シールド3が設けられ、前記温風発生室1の内面に円環筒状の絶縁円筒体6内に螺旋状に巻かれたトロイダルコイル7が設けられ、該トロイダルコイル7の内側に前記絶縁円筒体6により前記トロイダルコイル7と非接触状態で設けられた中空円筒状の磁性金属材料の磁性円筒体8が設けられ、該磁性円筒体8に風力変形可能な多数枚の金属製放熱板4が前記温風発生室内部1の吹出口を囲うように固定されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導加熱手段を利用したヒータにより加熱する車両用温風ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長距離トラックなどの車室内を暖房するため、燃料タンクに貯蔵された燃料を利用して暖房を行う燃焼式ヒータが知られている(特許文献1を参照)。
この公知技術は、インジェクタにより噴射された燃料は気化プレートに付着し、エアポンプにより供給された空気と混合され、点火グロープラグにより着火し火炎が形成され、火炎の周囲に設けられた燃焼筒の外周にはケーシングが設けられ、更にその外にハウジングが設けられ、前記ケーシングと前記ハウジングとの間には熱媒体が流入し、火炎により発生した燃焼ガスの熱量と熱交換を行う燃焼式ヒータである。
この燃焼式ヒータは、熱を吸収した熱媒体が車両に搭載された温水ヒーターへ供給され、さらに温風に変換されるため、車室内暖房装置として即暖性に欠けるものであったし、かつ電気自動車等には利用できないものであった。
【0003】
また、熱源の加熱手段として磁気誘導加熱手段を採用し、熱風発生室に磁気誘導加熱ヒータを備えてヘヤードライヤの空気を加熱する安全性に優れたヘヤードライヤが知られている(特許文献2を参照)。
この公知技術は、絶縁内筒に巻かれたコイルと、絶縁内筒に挿入され、前記コイルと非接触状態に設けた磁性金属材料の筒とで形成された熱源をヘヤードライヤ本体内に内蔵し、前記コイルに高周波交番磁界の発生源を接続し、高周波電流を流すヘヤードライヤである。
このヘヤードライヤは、ヘヤードライヤ本体の熱源を電磁誘導加熱手段により構成したことにより、熱源の構造が簡単になり、かつ加熱される磁性金属体の温度分布が全体に亘って均一になるものであるが、発生する電磁界の人体への影響が考慮されていないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−223426号公報
【特許文献2】特開2007−190319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電磁誘導加熱手段を利用した、電磁界の人体への影響が少ない車両用温風ヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用温風ヒータは、高透磁性材料を内包する耐熱円筒体の温風発生室の吹出口に導電性金網の磁気シールドが設けられ、前記温風発生室の内面に円環筒状の絶縁円筒体内に螺旋状に巻かれたトロイダルコイルが設けられ、該トロイダルコイルの内側に前記絶縁円筒体により前記トロイダルコイルと非接触状態で設けられた中空円筒状の磁性金属材料の磁性円筒体が設けられ、該磁性円筒体に風力変形可能な多数枚の金属製放熱板が前記温風発生室内部の吹出口を囲うように固定されるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用温風ヒータは、高透磁性材料を内包する耐熱円筒体の温風発生室の吹出口に導電性金網の磁気シールドが設けられ、前記温風発生室の内面に円環筒状の絶縁円筒体内に螺旋状に巻かれたトロイダルコイルが設けられ、該トロイダルコイルの内側に前記絶縁円筒体により前記トロイダルコイルと非接触状態で設けられた中空円筒状の磁性金属材料の磁性円筒体が設けられ、該磁性円筒体に風力変形可能な多数枚の金属製放熱板が前記温風発生室内部の吹出口を囲うように固定されるため、加熱される放熱板の温度分布が全体に亘って均一になり、かつ発生する電磁界の人体への影響が少ない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の車両用温風ヒータの温風発生室の実施例1の外観斜視図である。
【図2】磁気シールドを除いて示す温風発生室の実施例1の外観斜視図である。
【図3】本発明の車両用温風ヒータの温風発生室の実施例1の断面図である。
【図4】本発明の車両用温風ヒータの温風発生室の実施例1の動作説明図である。
【図5】本発明の車両用温風ヒータの温風発生室の実施例2の断面図である。
【図6】本発明の車両用温風ヒータの温風発生室の実施例2の動作説明図である。
【図7】磁気シールドを除いて示す温風発生室の実施例3の外観斜視図である。
【図8】本発明の車両用温風ヒータの温風発生室の実施例3の断面図である。
【図9】本発明の車両用温風ヒータの温風発生室の実施例3の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の車両用温風ヒータの一実施例を添付図面に基づいて、以下に説明する。
本発明の車両用温風ヒータは、熱風発生室に熱源を設け、図示しない電源によりファン及びファンを駆動するモータを内蔵したものであって、車両用温風ヒータ本体の熱風発生室の熱源として電磁誘導加熱手段を利用したものである。
前記熱風発生室の熱源がトロイダルコイルと中空円筒状の磁性体金属材料の磁性円筒体とで形成しているので、磁性体金属材料の磁性円筒体自体が発熱するので空気の加温が迅速であり、かつ効果的に加熱できるものである。
【実施例1】
【0010】
図1の外観図に示すように、高透磁性材料を内包する耐熱円筒体の温風発生室1の吹出口2には導電性金網の磁気シールド3が設けられ、該磁気シールド3を除いて示す図2の温風発生室1の外観斜視図に示すように、前記温風発生室1内部の吹出口2側には風力変形可能で中心に向かって先尖り状の台形形状の多数枚の金属製放熱板4が前記吹出口2を囲うように固定される。なお、前記放熱板4を撓(たわ)まない固定式とした場合には、先端が台形形状であるため、通風開口5が形成される。
図3の断面図に示すように、前記温風発生室1の内面に円環筒状の絶縁円筒体6内に螺旋状に巻かれたトロイダルコイル7が設けられ、該トロイダルコイル7の内側に前記絶縁円筒体6により前記トロイダルコイル7と非接触状態で設けられた中空円筒状の磁性金属材料の磁性円筒体8が設けられ、該磁性円筒体8に前記放熱板4が前述のように前記吹出口2を囲うように固定される。
【0011】
次に、添付図面に基づいて、実施例1の操作動作を説明する。
電源をONにすると、図3に示すトロイダルコイル7に高周波電流が流れて交番磁界を発生させると、交番磁界によって磁性円筒体8に渦電流が生じると共に、渦電流により発生したジュール熱によって前記磁性円筒体8が発熱し、温風発生室1に存在する空気を加熱することができる。
送風スイッチによりファンを駆動するモータ(図示せず)を駆動すると、ファン(図示せず)が回転して前記温風発生室1に送風が開始する。
その際、前記磁性円筒体8により放熱板4も加熱されて、前記ファン(図示せず)の風力により図4の動作説明図に示すように放熱板4が撓(しな)って矢印で示すように吹出口2から均一な温風を吹出す。
また、前記吹出口2には導電性金網の磁気シールド3が設けられているので、発生する電磁界を遮蔽する。
【実施例2】
【0012】
図2の放熱板4を変形したもので、図5の断面図に示すように、前記温風発生室1内部には風力変形可能で中心に向かって先尖り状の台形形状の一部を切り欠いてフィン9を形成した多数枚の金属製放熱板4が前記吹出口2を囲うように固定される。なお、前記放熱板4の先端には通風開口5が形成される。
前述と同様に、前記温風発生室1の内面に円環筒状の絶縁円筒体6内に螺旋状に巻かれたトロイダルコイル7が設けられ、該トロイダルコイル7の内側に前記絶縁円筒体6により前記トロイダルコイル7と非接触状態で設けられた中空円筒状の磁性金属材料の磁性円筒体8が設けられ、該磁性円筒体8に前記放熱板4が前述のように前記吹出口2を囲うように固定される。
【0013】
次に、添付図面に基づいて、実施例2の操作動作を説明する。
電源をONにすると、図5に示すトロイダルコイル7に高周波電流が流れて交番磁界を発生させると、交番磁界によって磁性円筒体8に渦電流が生じると共に、渦電流により発生したジュール熱によって前記磁性円筒体8が発熱し、温風発生室1に存在する空気を加熱することができる。
送風スイッチによりファンを駆動するモータ(図示せず)を駆動すると、ファン(図示せず)が回転して前記温風発生室1に送風を開始する。
その際、前記磁性円筒体8により放熱板4のフィン9も加熱されて、前記ファン(図示せず)の風力により図6の動作説明図に示すようにフィン9が撓(しな)って矢印で示すように吹出口2から均一な温風を吹出す。
また、前記吹出口2には導電性金網の磁気シールド3が設けられているので、発生する電磁界を遮蔽する。
【実施例3】
【0014】
図7の磁気シールド3を除いて示す温風発生室1の外観斜視図に示すように、前記温風発生室1内部には風力変形可能で中心部を固定されて放射状に外側に向かって末広がり状の台形形状の多数枚の放熱板10が前記吹出口2を囲うように固定される。
図8の断面図に示すように、前記温風発生室1の内面に円環筒状の絶縁円筒体6内に螺旋状に巻かれたトロイダルコイル7が設けられ、該トロイダルコイル7の内側に前記絶縁円筒体6により前記トロイダルコイル7と非接触状態で設けられた中空円筒状の磁性金属材料の磁性円筒体8が設けられ、該磁性円筒体8に前記放熱板10の中心部を支持するための支持杆11が前記磁性円筒体8に設けられる。
【0015】
次に、添付図面に基づいて、実施例3の操作動作を説明する。
電源をONにすると、図8に示すトロイダルコイル7に高周波電流が流れて交番磁界を発生させると、交番磁界によって磁性円筒体8に渦電流が生じると共に、渦電流により発生したジュール熱によって前記磁性円筒体8が発熱し、温風発生室1に存在する空気を加熱することができる。
送風スイッチによりファンを駆動するモータ(図示せず)を駆動すると、ファン(図示せず)が回転して前記温風発生室1に送風を開始する。
その際、前記磁性円筒体8により放熱板10も加熱されて、前記ファン(図示せず)の風力により図9の動作説明図に示すように放熱板10が撓(しな)って矢印で示すように吹出口2から均一な温風を吹出す。
また、前記吹出口2には導電性金網の磁気シールド3が設けられているので、発生する電磁界を遮蔽する。
【符号の説明】
【0016】
1 温風発生室
2 吹出口
3 磁気シールド
4 放熱板
5 通風開口
6 絶縁円筒体
7 トロイダルコイル
8 磁性円筒体
9 フィン
10 放熱板
11 支持杆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高透磁性材料を内包する耐熱円筒体の温風発生室の吹出口に導電性金網の磁気シールドが設けられ、前記温風発生室の内面に円環筒状の絶縁円筒体内に螺旋状に巻かれたトロイダルコイルが設けられ、該トロイダルコイルの内側に前記絶縁円筒体により前記トロイダルコイルと非接触状態で設けられた中空円筒状の磁性金属材料の磁性円筒体が設けられ、該磁性円筒体に風力変形可能な多数枚の金属製放熱板が前記温風発生室内部の吹出口を囲うように固定されることを特徴とする車両用温風ヒータ。
【請求項2】
前記放熱板は、中心に向かって先尖り状の台形形状の多数枚の金属製放熱板が前記吹出口を囲うように固定されることを特徴とする請求項1記載の車両用温風ヒータ。
【請求項3】
前記放熱板は、中心に向かって先尖り状の台形形状の一部を切り欠いてフィンを形成した多数枚の金属製放熱板が前記吹出口を囲うように固定されることを特徴とする請求項1記載の車両用温風ヒータ。
【請求項4】
前記放熱板は、中心部を固定されて放射状に外側に向かって末広がり状の台形形状の多数枚の金属製放熱板が前記吹出口を囲うように固定されることを特徴とする請求項1記載の車両用温風ヒータ。
【請求項5】
前記放熱板は、吹出口に導電性金網の磁気シールドを合わせもつ磁性円筒内に固定される固定式の放熱板であることを特徴とする請求項1記載の車両用温風ヒータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−11844(P2012−11844A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148685(P2010−148685)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【特許番号】特許第4659913号(P4659913)
【特許公報発行日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(506136232)
【Fターム(参考)】