車両用灯具の光源ユニット
【課題】従来の半導体光源を採用する灯具においては、半導体光源からの光で蛍光体を励起させ混色で白色光とするものであったので、光が拡散光となり、反射鏡などによる焦点への集束が困難となり、光束利用率が低下し暗い灯具となる問題があった。
【解決手段】本発明により発光チップ2と、投影レンズ3との間の上方に反射カバー4を設けることで、発光チップ2からの拡散光を反射カバーにより投影レンズ方向に導き、所定の角度で投影レンズを透過するものとして制御可能な光量を増やし、光束料率を向上させて明るい灯具の実現と配光形状の向上を可能とするものである。
【解決手段】本発明により発光チップ2と、投影レンズ3との間の上方に反射カバー4を設けることで、発光チップ2からの拡散光を反射カバーにより投影レンズ方向に導き、所定の角度で投影レンズを透過するものとして制御可能な光量を増やし、光束料率を向上させて明るい灯具の実現と配光形状の向上を可能とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に係るものであり、詳細には、光源にLED発光素子を使用した、ヘッドライト、フォグライトなど、照明を目的とする車両用灯具を構成する光源ユニットに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の車両用灯具の、構成の例を示すものが図10、及び、図11であり、先ず図10に示す車両用灯具90は、例えば、上半部として構成した回転楕円面系の反射鏡91の第一焦点f1の位置に、発光源であるLED発光素子92を、発光の中心軸を上向きとして取付けた構成とすると共に、前記反射鏡91の第二焦点f2の近傍を焦点とする投影レンズ93を設けておく。
【0003】
このときに、前記LED発光素子92を前記反射鏡91に対して適正位置に載置するための台座94は、前記投影レンズ93の方向に延長され、そして、上記した第二焦点f2の近傍に位置するように設定されている。よって、前記LED発光素子92から放射された光は、台座94の先端94a近傍、即ち、前記投影レンズ93の焦点の近傍に第二焦点を形成するものとなる。
【0004】
従って、第二焦点に集束する光の断面形状を、台座94の先端94aにより、例えば、下弦の半円状などとしておけば、投影レンズ93は、上記の形状を拡大、反転して照射方向に投影するものとなり、上弦の半円形となって、上向き光を殆ど含まず、対向車に眩惑を生じることのない配光特性が得られるものとなるのである。
【0005】
次ぎに、図11に示す車両用灯具100の構成は、予めに設定された直線Xに対して、下辺など一辺を合わせることにより、略一列に並べて配置された複数の半導体発光素子102(a〜e)と、前記予めに設定された直線Xの上に光学的中心を有し、前記半導体発光素子102(a〜e)が発生する光を前記照射方向に投影する光学部品であるレンズ104とを備える構成としたものである。
【0006】
このときに、車両用灯具100としては、基本的には、水平方向に拡がりのある配光パターンが要求されるものであるので、前記半導体発光素子102(a〜e)は、水平な直線Xを基準として複数が並べられるものとなる。また、前記半導体発光素子102(a〜e)とレンズ104との間に遮蔽部材112を挿入し、例えば、対向車に対し眩惑光となる上向き光を、より確実に遮蔽する構成としたものもある。
【特許文献1】特開2003−0317513号公報
【特許文献2】特開2004−2417151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上方に光を投射するように取付けられたLED発光素子92を覆い回転楕円面系の反射鏡91を設けた構成(特許文献1)のものでは、第一焦点に置かれたLED発光素子92からの光を、再度、第二焦点f2に集束させ、この第二焦点f2に集束した光の断面形状を投影レンズ93で前方に投影するものであるので、奥行きが深くなり、取付け位置に制限を受けるなどの問題点を生じている。
【0008】
また、前記半導体発光素子102の複数を一列に並べて、配光特性に類似する光源を形成しておき、これをレンズ104で投影する方式のものでは、確かに奥行きの問題は解決できるが、前記半導体発光素子102から発光する光は拡散しているため、レンズ104へ入射させ得る光はごく一部となり、従って、必要な明るさを確保するためには、大電力の半導体発光素子102の多数が必要となるなど、光率が低下する問題点を生じている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した従来の課題を解決するための具体的手段として、上端部に水平カットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、前記車両用灯具は、前記水平カットオフラインを形成するための光照射を行う複数の灯具ユニットを備えて成り、これら灯具ユニットが、略長方形状の発光チップを有すると共に、該発光チップは一方の辺が水平方向に延びるようにして前向きに配置された半導体発光素子から成る発光チップであり、この発光チップの前方に設けられ該発光チップの像を反転像として灯具前方へ投影する投影レンズを備えると共に、前記発光チップと前記投影レンズとを直線的に結ぶ反射カバーを前記発光チップの上側に備えて成ることを特徴とする車両用灯具の光源ユニットを提供することで課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、発光チップと投影レンズとを直線的に結ぶ反射カバーを前記発光チップの上側に備えて成る光源ユニットとしたことで、同一の発光チップにおいても光束利用率を向上させ、より明るい車両用灯具の実現を可能とし、発光チップの使用数の低減、消費電力の減少化などを可能とし、性能向上とコストダウンに優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1に符号1で示すものは、本発明に係る車両用灯具の光源ユニット1(以下、光源ユニット1と略称する。)の第一実施例であり、この光源ユニット1は、長方形に形成されたLEDなど発光チップ2と、前記発光チップ2の位置にほぼ焦点を有する投影レンズ3と、前記発光チップ2と前記投影レンズ3との間の上半部を覆う反射カバー4、とを主たる要素として構成されている。
【0012】
ここで、前記発光チップ2について、説明を行えば、略長方形状の発光チップ2とは、長方形の半導体発光素子を用いるか、正方形、矩形などの半導体発光素子を複数並べることにより発行面2aが所望の長方形状を成すものである。そして、この発光チップ2は原則的に、車両に取付ける状態においては、長方形の発光面2aの長辺側を水平として取付けられ、このときには発光面2aが前記投影レンズ3と正対するように、ヒートシンクを兼ねる基台5に取付けられている。
【0013】
このときに、前記発光チップ2としては、車両の法規上、白色発光のものが使用されるが、現状では白色発光を行える半導体発光素子は存在せず、例えば、青色発光の半導体発光素子に黄色発光の蛍光体を被覆すること、あるいは、紫外、近紫外発光の半導体発光素子に、R(赤)、G(緑)、B(青)三原色の蛍光体を適宜混合したもので被覆することで、混合色により白色を得ているのが現状である。
【0014】
よって、前記発光チップ2から投射される光は、蛍光体を通過することで拡散化した光を含むものとなることは避けられず、例えば、明暗境界線を得る場合などに、明確な境界線を得ることが困難となり、例えば、すれ違い配光時においても、上向きの光を含むものとなることは避けられなかった。
【0015】
本発明は、上記の点に考慮して、図2に断面図で示すように、発光チップ2の外径と、前記投影レンズ3との外径とを直線で結ぶ形状に形成した反射カバー4が設けられ、基本的には前記反射カバー4は、内面はアルミ蒸着などの鏡面処理が施されている。
【0016】
また、前記反射カバー4は、前記発光チップ2と、前記投影レンズ3の外径の全周を覆うものではなく、基本的には、前記投影レンズ3の中心軸Yから上方を覆う形状として形成されている。なお、このときに、前記発光チップ2は、前記投影レンズ3の中心軸Yと水平に直交する軸Zを下辺とするように取付けられている。
【0017】
このようにすることで、前記発光チップ2の発光面2aから射出された光は、投影レンズ3により反転され照射方向に投射されるものとなるので、前記投影レンズ3の中心軸Yから下方、即ち、下向きの光として投射されるものとなり、すれ違い用に適する配光形状が得られるものとなる。
【0018】
このとき同時に、前記発光チップ2からは、上記に説明したように蛍光体を被覆したことによる拡散光が、前記投影レンズ3の中心軸Yの上下双方に向けて放射されているものとなるが、本発明では、前記投影レンズ3の焦点距離を適宜なものとして反射カバー4の傾斜を調整し、前記発光チップ2から上方に向かい照射された光が反射カバー4に反射したときには、大部分が上方に向かい反射するものとされている。
【0019】
よって、投影レンズ3により車両前方に投影された後には、反転されて、ほぼ全てが下向きの光となる。なお、上記の作用を一層確実にし、かつ、反射後の光量の損失を少ないものとするために、前記反射カバー4の内面4aを鏡面処理としておけば、反射により再度拡散を生じ、上向き光を生じたり、光量の損失を生じるのを防止することができ、効率の良い光源ユニット1の形成が可能となる。
【0020】
図3は、上記に説明した光源ユニット1の正面図であり、投影レンズ3の中心軸Yに対して略長方形とした発光面2aを有する発光チップ2が、前記投影レンズ3の中心軸Yに対し水平に直交する軸Zと下辺を一致させて配置されている状態が明確に理解できるものとして示されている。
【0021】
なお、図2において、前記投影レンズ3の中心軸Yから下方には反射カバー4が設けられないのは、この部分に反射カバー4を設けると、この反射カバー4に反射した発光チップ2からの光が下向きの状態で投影レンズ3に入射し、車両前方には上向きの状態で投射されるものとなるからであり、よって、この部分に反射カバー4を設けるのを省略し、発光チップ2からの光が、投影レンズ3に達することをなくし、眩惑光の発生を防止するためである。
【0022】
図4は、本発明に係る光源ユニット1の別の使用例を示すものであり、前の使用例では投影レンズ3の中心軸Yよりも下方に、発光チップ2からの光を照射させるものであった。しかしながら、実際の走行時には、例えば、左側通行であれば、左路側に設置された道路標識などを確認するために、左側に向かい適宜な上向き光を発する前照灯が要求されている。
【0023】
本発明の光源ユニット1によれば、このような配光形状が要求されたときにも、対応可能であり図4に示すように、少なくとも2つの光源ユニット1を一組みとし、一方は発光チップ2が水平の状態で車体に取付けると共に、他の一方を正面から見た状態で、例えば15°反時計方向に回転させた状態で車体に取付ける。
【0024】
このようにすることで、図5に示すように、路肩側には、例えば15°左上がりの照射が行われ、車両の中心から右側には上向き光を含むことない照射が行われ、両光源ユニット1からの配光特性の合成形状は、いわゆるエルボを有するすれ違い配光TLに最適な形状が得られるものとなる。なお、ここでは、回転させた光源ユニット1の1個と、回転させない光源ユニット1の1個との組合せの例で説明したが、何れの側の光源ユニット1の数を増減させることも自在である。
【0025】
なお、言うまでもないことであるが、本発明の光源ユニット1によれば、上記では一方の光源ユニット1を、正面から見る状態で反時計方向に回転させることで、左側通行用のすれ違い配光形状を得ていたが、これを、光源ユニット1の一方に時計方向の回転を与えれば、図6に示すように右側通行用のすれ違い配光TR用の配光形状が得られるものとなる。
【0026】
図7は、本発明の第二実施例であり、以上に説明した第一実施例では、前記反射カバー4は、発光チップ2と、投影レンズ3の上面のみに設けられて、上方に向かう光を生じない構成としていたのに対し、この第二実施例の光源ユニットにおいては、前記発光チップ2と、投影レンズ3とには、それぞれを下方からも覆う下方反射カバー6が、前記反射カバー4とほぼ同様に内面6aに鏡面処理が行われた構成として取付けられている。
【0027】
このようにすることで、前記発光チップ2から下方に向かい放射された光も、前記下方反射カバー6により捕捉され反射が行われて、投影レンズ3に向かうものとなり、発光チップ2に対する光束捕捉率が向上し、より明るい光源ユニット1とすることが可能となる。
【0028】
但し、前記下方反射カバー6を設けた場合、この下方反射カバー6により反射が行われ、投影レンズ3に入射する光は、上記第一実施例の項での説明からも明らかなように、上方に向かう光が投影レンズ3から放射されることを避けることが困難なものとなるので、例えば、図8に示すように、高速道路の走行時、郊外の走行時など、対向車に眩惑を生じさせる恐れもなく、かつ、遠方の確認が要求されるときに用いられる走行配光D用として用いるのが好ましい。
【0029】
図9に示すものは本発明の第三実施例であり、上記に説明した第一実施例、第二実施例の何れも、ほぼ投影レンズ3の焦点の近傍に設置された発光チップ2からの光を投影するものであるので、投影される写像は、前記発光チップ2の大きさ、形に影響を受けるものとなることは避けられない。
【0030】
従って、例えば、前照灯など車両用灯具として適正な照射範囲、配光形状が得られない場合も生じる可能性もあるので、このような場合には、例えば、縦方向、あるいは、横方向に凹または凸のレンズカット7aを施した補助レンズ7を投影レンズの前方、または、後方に設け、所望の配光形状を得るなどは自由である。
【0031】
以上に説明したように、本発明により発光チップ2と、この発光チップ2の近傍に焦点を有する投影レンズ3との上方に、それぞれの外径間を直線で結ぶ反射カバー4を上半部に設けた光源ユニット1の複数の組合せで前照灯などの照明用灯具を構成するものとしたことで、例えば、組合せ後の形状なども自由度が増しデザイン的に自由度が増す。
【0032】
また、下方反射カバーを設ければ、走行ビーム用の配光が形成可能な光源ユニット1も形成可能となるので、殆ど同一部品による同一構成の双方の光源ユニット1を組合わせることで走行、すれ違い配光の双方は得られる前照灯の生産が可能であり、少い種類の部品で前照灯など照明用の生産が可能となる。
【0033】
更には、すれ違い配光用の光源ユニットを、半時計方向に回転させて車両に取付けるか、時計方向に回転させて車両に取付けるかで、左側通行用でも右側通行用でも同一部品で生産が可能となり、部品点数の削減、生産工数の削減などによるコストダウンに有利な生産手段を提供できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る光源ユニットの要部を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】同じく本発明に係る光源ユニットの部品配置を正面から見た状態で示す説明図である。
【図4】本発明に係る光源ユニットにより左側通行用のすれ違い配光を形成するときの複数のユニットの組合せの例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る光源ユニットにより得られる左側通行用のすれ違い配光の形状の例を示す説明図である。
【図6】同じ光源ユニットにより得られる右側通行用のすれ違い配光の形状の例を示す説明図である。
【図7】本発明に係る光源ユニットを走行ビーム用としたときの構成を示す断面図である。
【図8】本発明に係る光源ユニットを走行ビーム用としたときの配光特性の形状を示す説明図である。
【図9】本発明に係る光源ユニットの第三実施例を示す断面図である。
【図10】従来例を示す断面図である。
【図11】別の従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1…光源ユニット
2…発光チップ
2a…発光面
3…投影レンズ
4…反射カバー
4a…内面
5…基台(ヒートシンク)
6…下方反射カバー
6a…内面
7…補助レンズ
7a…レンズカット
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に係るものであり、詳細には、光源にLED発光素子を使用した、ヘッドライト、フォグライトなど、照明を目的とする車両用灯具を構成する光源ユニットに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の車両用灯具の、構成の例を示すものが図10、及び、図11であり、先ず図10に示す車両用灯具90は、例えば、上半部として構成した回転楕円面系の反射鏡91の第一焦点f1の位置に、発光源であるLED発光素子92を、発光の中心軸を上向きとして取付けた構成とすると共に、前記反射鏡91の第二焦点f2の近傍を焦点とする投影レンズ93を設けておく。
【0003】
このときに、前記LED発光素子92を前記反射鏡91に対して適正位置に載置するための台座94は、前記投影レンズ93の方向に延長され、そして、上記した第二焦点f2の近傍に位置するように設定されている。よって、前記LED発光素子92から放射された光は、台座94の先端94a近傍、即ち、前記投影レンズ93の焦点の近傍に第二焦点を形成するものとなる。
【0004】
従って、第二焦点に集束する光の断面形状を、台座94の先端94aにより、例えば、下弦の半円状などとしておけば、投影レンズ93は、上記の形状を拡大、反転して照射方向に投影するものとなり、上弦の半円形となって、上向き光を殆ど含まず、対向車に眩惑を生じることのない配光特性が得られるものとなるのである。
【0005】
次ぎに、図11に示す車両用灯具100の構成は、予めに設定された直線Xに対して、下辺など一辺を合わせることにより、略一列に並べて配置された複数の半導体発光素子102(a〜e)と、前記予めに設定された直線Xの上に光学的中心を有し、前記半導体発光素子102(a〜e)が発生する光を前記照射方向に投影する光学部品であるレンズ104とを備える構成としたものである。
【0006】
このときに、車両用灯具100としては、基本的には、水平方向に拡がりのある配光パターンが要求されるものであるので、前記半導体発光素子102(a〜e)は、水平な直線Xを基準として複数が並べられるものとなる。また、前記半導体発光素子102(a〜e)とレンズ104との間に遮蔽部材112を挿入し、例えば、対向車に対し眩惑光となる上向き光を、より確実に遮蔽する構成としたものもある。
【特許文献1】特開2003−0317513号公報
【特許文献2】特開2004−2417151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上方に光を投射するように取付けられたLED発光素子92を覆い回転楕円面系の反射鏡91を設けた構成(特許文献1)のものでは、第一焦点に置かれたLED発光素子92からの光を、再度、第二焦点f2に集束させ、この第二焦点f2に集束した光の断面形状を投影レンズ93で前方に投影するものであるので、奥行きが深くなり、取付け位置に制限を受けるなどの問題点を生じている。
【0008】
また、前記半導体発光素子102の複数を一列に並べて、配光特性に類似する光源を形成しておき、これをレンズ104で投影する方式のものでは、確かに奥行きの問題は解決できるが、前記半導体発光素子102から発光する光は拡散しているため、レンズ104へ入射させ得る光はごく一部となり、従って、必要な明るさを確保するためには、大電力の半導体発光素子102の多数が必要となるなど、光率が低下する問題点を生じている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した従来の課題を解決するための具体的手段として、上端部に水平カットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、前記車両用灯具は、前記水平カットオフラインを形成するための光照射を行う複数の灯具ユニットを備えて成り、これら灯具ユニットが、略長方形状の発光チップを有すると共に、該発光チップは一方の辺が水平方向に延びるようにして前向きに配置された半導体発光素子から成る発光チップであり、この発光チップの前方に設けられ該発光チップの像を反転像として灯具前方へ投影する投影レンズを備えると共に、前記発光チップと前記投影レンズとを直線的に結ぶ反射カバーを前記発光チップの上側に備えて成ることを特徴とする車両用灯具の光源ユニットを提供することで課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、発光チップと投影レンズとを直線的に結ぶ反射カバーを前記発光チップの上側に備えて成る光源ユニットとしたことで、同一の発光チップにおいても光束利用率を向上させ、より明るい車両用灯具の実現を可能とし、発光チップの使用数の低減、消費電力の減少化などを可能とし、性能向上とコストダウンに優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1に符号1で示すものは、本発明に係る車両用灯具の光源ユニット1(以下、光源ユニット1と略称する。)の第一実施例であり、この光源ユニット1は、長方形に形成されたLEDなど発光チップ2と、前記発光チップ2の位置にほぼ焦点を有する投影レンズ3と、前記発光チップ2と前記投影レンズ3との間の上半部を覆う反射カバー4、とを主たる要素として構成されている。
【0012】
ここで、前記発光チップ2について、説明を行えば、略長方形状の発光チップ2とは、長方形の半導体発光素子を用いるか、正方形、矩形などの半導体発光素子を複数並べることにより発行面2aが所望の長方形状を成すものである。そして、この発光チップ2は原則的に、車両に取付ける状態においては、長方形の発光面2aの長辺側を水平として取付けられ、このときには発光面2aが前記投影レンズ3と正対するように、ヒートシンクを兼ねる基台5に取付けられている。
【0013】
このときに、前記発光チップ2としては、車両の法規上、白色発光のものが使用されるが、現状では白色発光を行える半導体発光素子は存在せず、例えば、青色発光の半導体発光素子に黄色発光の蛍光体を被覆すること、あるいは、紫外、近紫外発光の半導体発光素子に、R(赤)、G(緑)、B(青)三原色の蛍光体を適宜混合したもので被覆することで、混合色により白色を得ているのが現状である。
【0014】
よって、前記発光チップ2から投射される光は、蛍光体を通過することで拡散化した光を含むものとなることは避けられず、例えば、明暗境界線を得る場合などに、明確な境界線を得ることが困難となり、例えば、すれ違い配光時においても、上向きの光を含むものとなることは避けられなかった。
【0015】
本発明は、上記の点に考慮して、図2に断面図で示すように、発光チップ2の外径と、前記投影レンズ3との外径とを直線で結ぶ形状に形成した反射カバー4が設けられ、基本的には前記反射カバー4は、内面はアルミ蒸着などの鏡面処理が施されている。
【0016】
また、前記反射カバー4は、前記発光チップ2と、前記投影レンズ3の外径の全周を覆うものではなく、基本的には、前記投影レンズ3の中心軸Yから上方を覆う形状として形成されている。なお、このときに、前記発光チップ2は、前記投影レンズ3の中心軸Yと水平に直交する軸Zを下辺とするように取付けられている。
【0017】
このようにすることで、前記発光チップ2の発光面2aから射出された光は、投影レンズ3により反転され照射方向に投射されるものとなるので、前記投影レンズ3の中心軸Yから下方、即ち、下向きの光として投射されるものとなり、すれ違い用に適する配光形状が得られるものとなる。
【0018】
このとき同時に、前記発光チップ2からは、上記に説明したように蛍光体を被覆したことによる拡散光が、前記投影レンズ3の中心軸Yの上下双方に向けて放射されているものとなるが、本発明では、前記投影レンズ3の焦点距離を適宜なものとして反射カバー4の傾斜を調整し、前記発光チップ2から上方に向かい照射された光が反射カバー4に反射したときには、大部分が上方に向かい反射するものとされている。
【0019】
よって、投影レンズ3により車両前方に投影された後には、反転されて、ほぼ全てが下向きの光となる。なお、上記の作用を一層確実にし、かつ、反射後の光量の損失を少ないものとするために、前記反射カバー4の内面4aを鏡面処理としておけば、反射により再度拡散を生じ、上向き光を生じたり、光量の損失を生じるのを防止することができ、効率の良い光源ユニット1の形成が可能となる。
【0020】
図3は、上記に説明した光源ユニット1の正面図であり、投影レンズ3の中心軸Yに対して略長方形とした発光面2aを有する発光チップ2が、前記投影レンズ3の中心軸Yに対し水平に直交する軸Zと下辺を一致させて配置されている状態が明確に理解できるものとして示されている。
【0021】
なお、図2において、前記投影レンズ3の中心軸Yから下方には反射カバー4が設けられないのは、この部分に反射カバー4を設けると、この反射カバー4に反射した発光チップ2からの光が下向きの状態で投影レンズ3に入射し、車両前方には上向きの状態で投射されるものとなるからであり、よって、この部分に反射カバー4を設けるのを省略し、発光チップ2からの光が、投影レンズ3に達することをなくし、眩惑光の発生を防止するためである。
【0022】
図4は、本発明に係る光源ユニット1の別の使用例を示すものであり、前の使用例では投影レンズ3の中心軸Yよりも下方に、発光チップ2からの光を照射させるものであった。しかしながら、実際の走行時には、例えば、左側通行であれば、左路側に設置された道路標識などを確認するために、左側に向かい適宜な上向き光を発する前照灯が要求されている。
【0023】
本発明の光源ユニット1によれば、このような配光形状が要求されたときにも、対応可能であり図4に示すように、少なくとも2つの光源ユニット1を一組みとし、一方は発光チップ2が水平の状態で車体に取付けると共に、他の一方を正面から見た状態で、例えば15°反時計方向に回転させた状態で車体に取付ける。
【0024】
このようにすることで、図5に示すように、路肩側には、例えば15°左上がりの照射が行われ、車両の中心から右側には上向き光を含むことない照射が行われ、両光源ユニット1からの配光特性の合成形状は、いわゆるエルボを有するすれ違い配光TLに最適な形状が得られるものとなる。なお、ここでは、回転させた光源ユニット1の1個と、回転させない光源ユニット1の1個との組合せの例で説明したが、何れの側の光源ユニット1の数を増減させることも自在である。
【0025】
なお、言うまでもないことであるが、本発明の光源ユニット1によれば、上記では一方の光源ユニット1を、正面から見る状態で反時計方向に回転させることで、左側通行用のすれ違い配光形状を得ていたが、これを、光源ユニット1の一方に時計方向の回転を与えれば、図6に示すように右側通行用のすれ違い配光TR用の配光形状が得られるものとなる。
【0026】
図7は、本発明の第二実施例であり、以上に説明した第一実施例では、前記反射カバー4は、発光チップ2と、投影レンズ3の上面のみに設けられて、上方に向かう光を生じない構成としていたのに対し、この第二実施例の光源ユニットにおいては、前記発光チップ2と、投影レンズ3とには、それぞれを下方からも覆う下方反射カバー6が、前記反射カバー4とほぼ同様に内面6aに鏡面処理が行われた構成として取付けられている。
【0027】
このようにすることで、前記発光チップ2から下方に向かい放射された光も、前記下方反射カバー6により捕捉され反射が行われて、投影レンズ3に向かうものとなり、発光チップ2に対する光束捕捉率が向上し、より明るい光源ユニット1とすることが可能となる。
【0028】
但し、前記下方反射カバー6を設けた場合、この下方反射カバー6により反射が行われ、投影レンズ3に入射する光は、上記第一実施例の項での説明からも明らかなように、上方に向かう光が投影レンズ3から放射されることを避けることが困難なものとなるので、例えば、図8に示すように、高速道路の走行時、郊外の走行時など、対向車に眩惑を生じさせる恐れもなく、かつ、遠方の確認が要求されるときに用いられる走行配光D用として用いるのが好ましい。
【0029】
図9に示すものは本発明の第三実施例であり、上記に説明した第一実施例、第二実施例の何れも、ほぼ投影レンズ3の焦点の近傍に設置された発光チップ2からの光を投影するものであるので、投影される写像は、前記発光チップ2の大きさ、形に影響を受けるものとなることは避けられない。
【0030】
従って、例えば、前照灯など車両用灯具として適正な照射範囲、配光形状が得られない場合も生じる可能性もあるので、このような場合には、例えば、縦方向、あるいは、横方向に凹または凸のレンズカット7aを施した補助レンズ7を投影レンズの前方、または、後方に設け、所望の配光形状を得るなどは自由である。
【0031】
以上に説明したように、本発明により発光チップ2と、この発光チップ2の近傍に焦点を有する投影レンズ3との上方に、それぞれの外径間を直線で結ぶ反射カバー4を上半部に設けた光源ユニット1の複数の組合せで前照灯などの照明用灯具を構成するものとしたことで、例えば、組合せ後の形状なども自由度が増しデザイン的に自由度が増す。
【0032】
また、下方反射カバーを設ければ、走行ビーム用の配光が形成可能な光源ユニット1も形成可能となるので、殆ど同一部品による同一構成の双方の光源ユニット1を組合わせることで走行、すれ違い配光の双方は得られる前照灯の生産が可能であり、少い種類の部品で前照灯など照明用の生産が可能となる。
【0033】
更には、すれ違い配光用の光源ユニットを、半時計方向に回転させて車両に取付けるか、時計方向に回転させて車両に取付けるかで、左側通行用でも右側通行用でも同一部品で生産が可能となり、部品点数の削減、生産工数の削減などによるコストダウンに有利な生産手段を提供できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る光源ユニットの要部を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】同じく本発明に係る光源ユニットの部品配置を正面から見た状態で示す説明図である。
【図4】本発明に係る光源ユニットにより左側通行用のすれ違い配光を形成するときの複数のユニットの組合せの例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る光源ユニットにより得られる左側通行用のすれ違い配光の形状の例を示す説明図である。
【図6】同じ光源ユニットにより得られる右側通行用のすれ違い配光の形状の例を示す説明図である。
【図7】本発明に係る光源ユニットを走行ビーム用としたときの構成を示す断面図である。
【図8】本発明に係る光源ユニットを走行ビーム用としたときの配光特性の形状を示す説明図である。
【図9】本発明に係る光源ユニットの第三実施例を示す断面図である。
【図10】従来例を示す断面図である。
【図11】別の従来例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1…光源ユニット
2…発光チップ
2a…発光面
3…投影レンズ
4…反射カバー
4a…内面
5…基台(ヒートシンク)
6…下方反射カバー
6a…内面
7…補助レンズ
7a…レンズカット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部に水平カットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、前記車両用灯具は、前記水平カットオフラインを形成するための光照射を行う複数の灯具ユニットを備えて成り、これら灯具ユニットが、略長方形状の発光チップを有すると共に、該発光チップは一方の辺が水平方向に延びるようにして前向きに配置された半導体発光素子から成る発光チップであり、この発光チップの前方に設けられ該発光チップの像を反転像として照射方向へ投影する投影レンズを備えると共に、前記発光チップと前記投影レンズとを直線的に結ぶ反射カバーを前記発光チップの上側に備えて成ることを特徴とする車両用灯具の光源ユニット。
【請求項2】
前記反射カバーは、前記投影レンズの焦点におかれた前記発光チップと、前記投影レンズの外径を結ぶ直線で形成され、前記発光チップの指向特性よりも狭い拡がりをもつ形状であることを特徴とする請求項1記載の車両用灯具の光源ユニット。
【請求項3】
前記反射カバーは、前記投影レンズの焦点におかれた前記発光チップと、前記投影レンズの外径を結ぶ直線で形成され、前記発光チップの指向特性より狭い拡がりをもつ形状であり、かつ、前記発光チップの上側と下側とに設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用灯具の光源ユニット。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の光源ユニットにおいて、少なくとも1個の光源ユニットを光軸を中心として所定の角度回転させることで、前記水平カットオフラインから所定角度で立ち上がる斜めカットオフラインが形成されていることを特徴とする車両用灯具の光源ユニット。
【請求項5】
前記投影レンズの前方または後方にはレンズカットが施された補助レンズが設けられ、前記補助レンズに施されるレンズカットは単一方向の凹カット、または、凸カットであることを特徴とする請求項1〜4記載の車両用灯具の光源ユニット。
【請求項1】
上端部に水平カットオフラインを有する配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、前記車両用灯具は、前記水平カットオフラインを形成するための光照射を行う複数の灯具ユニットを備えて成り、これら灯具ユニットが、略長方形状の発光チップを有すると共に、該発光チップは一方の辺が水平方向に延びるようにして前向きに配置された半導体発光素子から成る発光チップであり、この発光チップの前方に設けられ該発光チップの像を反転像として照射方向へ投影する投影レンズを備えると共に、前記発光チップと前記投影レンズとを直線的に結ぶ反射カバーを前記発光チップの上側に備えて成ることを特徴とする車両用灯具の光源ユニット。
【請求項2】
前記反射カバーは、前記投影レンズの焦点におかれた前記発光チップと、前記投影レンズの外径を結ぶ直線で形成され、前記発光チップの指向特性よりも狭い拡がりをもつ形状であることを特徴とする請求項1記載の車両用灯具の光源ユニット。
【請求項3】
前記反射カバーは、前記投影レンズの焦点におかれた前記発光チップと、前記投影レンズの外径を結ぶ直線で形成され、前記発光チップの指向特性より狭い拡がりをもつ形状であり、かつ、前記発光チップの上側と下側とに設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両用灯具の光源ユニット。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の光源ユニットにおいて、少なくとも1個の光源ユニットを光軸を中心として所定の角度回転させることで、前記水平カットオフラインから所定角度で立ち上がる斜めカットオフラインが形成されていることを特徴とする車両用灯具の光源ユニット。
【請求項5】
前記投影レンズの前方または後方にはレンズカットが施された補助レンズが設けられ、前記補助レンズに施されるレンズカットは単一方向の凹カット、または、凸カットであることを特徴とする請求項1〜4記載の車両用灯具の光源ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−32566(P2009−32566A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196111(P2007−196111)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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