説明

車両用灯具

【課題】駆動力伝達機構において機械的がたが発生する虞があること。コイルスプリングの組み込みが面倒であること。
【解決手段】第4段ギア17と支持部材2との間に設けられていて駆動力伝達機構13の機械的がたを片寄せる第1ばね部材26を備え、第4段ギア17には第1ばね部材26を仮止めする第1固定部22および長溝21が設けられている。この結果、仮止め状態の第4段ギア17および第1ばね部材26を支持部材2に組み込むことにより、第1ばね部材26を第4段ギア17と支持部材2との間に簡単に組み込むことができる。第1ばね部材26により、駆動力伝達機構13の機械的がたを片寄せることができるので、駆動力伝達機構13の機械的がたを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用ヘッドランプ、フォグランプ、コーナリングランプ、カーブランプ、ベンディングランプ、スイブルランプなどの車両用灯具であって、車両の走行状況に応じて光の照射方向を追従変化させる、たとえば、適応型照明システムAFS(Adaptive Front−lighting System)を備える車両用灯具に関するものである。なお、この明細書、特許請求の範囲において、「路面など」とは、路面およびその路面上の人(歩行者など)や物(先行車や対向車や道路標識や建物など)などを言う。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。以下、この車両用灯具について説明する。なお、括弧つきの符号は、特許文献1、特許文献2にそれぞれ対応する。前者の車両用灯具(1)は、車体に固定的なブラケット(2)に回動自在に支持されたランプボディ(3)を有する。ブラケット(2)には駆動部(11)が固定されている。駆動部(11)には回動軸(16)が突設されている。回動軸(16)はランプボディ(3)に結合されている。駆動部(11)は、モータ(61)と、最終段ギア(44)と一体の回動軸(16)にモータ(61)の駆動力を伝達させる駆動力伝達機構のギア(75)、(80)、(81)と、から構成されている。つぎに、前者の車両用灯具(1)の作用について説明する。制御装置からの制御信号により、モータ(61)が回転すると、そのモータ(61)の駆動力が駆動力伝達機構のギア(75)、(80)、(81)、(44)を介して回動軸(16)に伝達され、その回動軸(16)が回転することにより、ランプボディ(3)がブラケット(2)に対して回転する。この結果、車両の走行状況に応じて光の照射方向を追従変化させることができる。
【0003】
一方、後者の車両用灯具(1)は、可動反射面(3)と、ステッピングモータ(4)およびギアボックス(5)からなる配光可変装置(6)とが設けられている。可動反射面(3)には回動軸(51)が設けられている。ギアボックス(5)は、終段ギア(52)と一体の回動軸(51)にステッピングモータ(4)の駆動力を伝達させる駆動力伝達機構から構成されている。ギアボックス(5)の固定部には固定ストッパ(54)が形成されている。固定ストッパ(54)と回動軸(51)との間にはコイルスプリング(53)が設けられている。つぎに、後者の車両用灯具(1)の作用について説明する。制御装置からの制御信号により、ステッピングモータ(4)が回転すると、そのステッピングモータ(4)の駆動力が駆動力伝達機構および終段のギア(52)を介して回動軸(51)に伝達され、その回動軸(51)が回転することにより、可動反射面(3)が回転する。この結果、車両の走行状況に応じて光の照射方向を追従変化させることができる。また、ステッピングモータ(4)が故障すると、コイルスプリング(53)により可動反射面(3)が初期位置に復帰する。
【0004】
ところが、前者の車両用灯具(1)は、駆動力伝達機構のギア(75)、(80)、(81)、(44)の機械的がたに対する対策が設けられていないので、駆動力伝達機構のギア(75)、(80)、(81)、(44)に機械的がたが発生する虞がある。一方、後者の車両用灯具(1)は、固定ストッパ(54)と回動軸(51)との間にコイルスプリング(53)を設けたので、駆動力伝達機構および終段のギア(52)の機械的がたを防止することができる。しかしながら、後者の車両用灯具(1)は、コイルスプリング(53)を回動軸(51)と一体の終段ギア(52)に組み込むことについては考慮されていないので、コイルスプリング(53)を固定ストッパ(54)と回動軸(51)との間に組み込むことが面倒である。
【0005】
【特許文献1】特開2002−160580号公報
【特許文献2】特開2000−133026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする問題点は、従来の車両用灯具では、駆動力伝達機構において機械的がたが発生する虞があり、また、コイルスプリングの組み込みが面倒であるなどの点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、最終段部材と支持部材との間に設けられていて駆動力伝達機構の機械的がたを片寄せるばね部材を備え、最終段部材にはばね部材を仮止めする仮止め部が設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両用灯具は、仮止め部により、最終段部材にばね部材を仮止めすることができる。この結果、この発明の車両用灯具は、仮止め状態の最終段部材およびばね部材を支持部材に組み込むことにより、ばね部材を最終段部材と支持部材との間に簡単に組み込むことができる。また、この発明の車両用灯具は、ばね部材により、駆動力伝達機構の機械的がたを片寄せることができるので、駆動力伝達機構の機械的がたを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施例にかかる車両用灯具は、車両の前部の左側に装備される例の車両灯具に関するものである。さらに、符号「F−B」は、この実施例にかかる車両用灯具を搭載する車両のカーラインの前後方向を示す。この車両の前後方向「F−B」は、この実施例にかかる車両用灯具を車両に搭載した際の水平軸を示す。符号「V−V」は、この実施例にかかる車両用灯具の光照射装置9(リフレクタ11および光源10)を回転させる回転軸12の中心線である。この実施例にかかる車両用灯具を車両に搭載した際の垂直軸を示す。符号「Z−Z」は、この実施例にかかる車両用灯具の光照射装置9(リフレクタ11および光源10)の光軸を示す。
【実施例】
【0010】
以下、この実施例における車両用灯具の構成について説明する。この実施例における車両用灯具1は、支持部材2を備える。前記支持部材2は、図8に示すように、取付ブラケット3と、前記取付ブラケット3に取り付けられているカバー5およびベース6とから構成されている。前記カバー5および前記ベース6は、図2に示すように、中空形状のケーシングを上下に2個分割されてなり、スクリュー7により一体に組み込まれている。前記ベース6には、軸受部8が設けられている。また、図4に示すように、前記ベース6の内面には、第1(左側)押え部32、第2(右側)押え部33が設けられている。
【0011】
また、前記車両用灯具1は、光を路面などに照射する光照射装置9を備える。前記光照射装置9は、図8に示すように、リフレクタ11と、前記リフレクタ11に着脱可能に取り付けられている光源としての放電灯10とから構成されている。なお、光源として前記の放電灯10以外にハロゲンバルブや白熱バルブなどでも良い。
【0012】
前記光照射装置9は、前記支持部材2に出力軸12により回転可能に支持されている。すなわち、前記出力軸12は、前記支持部材2の前記ベース6の前記軸受部8に回転可能に支持されており、かつ、前記光照射装置9のリフレクタ11に固定されている。
【0013】
さらに、前記車両用灯具1は、制御装置53からの制御信号により駆動する駆動装置としてのステッピングモータ4を備える。前記ステッピングモータ4は、前記支持部材2の前記ベース6にスクリュー7により取り付けられている。
【0014】
さらにまた、前記車両用灯具1は、駆動力伝達機構13を備える。前記駆動力伝達機構13は、前記支持部材2の前記カバー5および前記ベース6中に収納されている。また、前記駆動力伝達機構13は、図2に示すように、第1段ギア14と、第2段ギア15と、第3段ギア16と、最終段部材としての第4ギア17とから構成されている。前記第1段ギア14は、前記ステッピングモータ4の回転軸に取り付けられている。前記第2段ギア15は、前記支持部材2の前記カバー5および前記ベース6に第1軸18により回転可能に支持されており、かつ、前記第1段ギア14に噛み合っている。前記第3段ギア16は、同じく、前記支持部材2の前記カバー5および前記ベース6に第2軸19により回転可能に支持されており、かつ、前記第2段ギア15に噛み合っている。
【0015】
前記第4段ギア17は、図1、図3に示すように、前記出力軸12と一体構造をなす。すなわち、前記第4段ギア17の一端部には、前記出力軸12が一体設けられている。前記第4段ギア17の他端部には、ギア部20が扇形状に設けられている。また、前記第4段ギア17のほぼ他端部よりの部分には、仮止め部としての円弧形状の長溝21が設けられている。さらに、前記第4段ギア17の中間部の両側部には、仮止め部としての第1(左側)固定部22、第2(右側)固定部23がそれぞれ設けられている。前記第1固定部22、前記第2固定部23の下面と前記第4段ギア17の底板部24の上面との間には、隙間がある。また、前記第1固定部22、前記第2固定部23の上面には、傾斜面のガイド25が設けられている。
【0016】
前記出力軸12が前記軸受部8に回転可能に支持されることにより、前記第4段ギア17は、前記支持部材2に回転可能支持されている。また、前記第4段ギア17のギア部20は、前記第3段ギア16に噛み合っている。これにより、前記駆動力伝達機構13は、前記第4段ギア17と一体構造の前記出力軸12に前記ステッピングモータ4の駆動(回転)力を伝達させて前記光照射装置9を回転させることができる。
【0017】
そして、前記車両用灯具1は、第1(左側)ばね部材26を備える。前記第1ばね部材26は、図1〜図3に示すように、コイル部27と、前記コイル部27の両端から延設されてなる2本の腕部28、29と、前記2本の腕部28、29の先端部がほぼ直角に同方向(下側)に折り曲げられてなる2本の脚部30、31と、から構成されている。前記2本の腕部および前記2本の脚部のうち、一方の腕部28および一方の脚部30は、前記コイル部27の下側(左側)から延設されている。また、前記2本の腕部および前記2本の脚部のうち、他方の腕部29および他方の脚部31は、前記コイル部27の上側(右側)から延設されている。
【0018】
前記第1ばね部材26は、前記仮止め部の長溝21および第1固定部22により、前記第4段ギア17に仮止め(サブアッシー)されている。すなわち、この例における前記第1ばね部材26の自由角度は、約90°であり、前記第1ばね部材26を前記第4段ギア17に取り付ける際に、図2、図3に示すように、前記第1ばね部材26を約90°巻き込む。この状態において、前記コイル部27を前記出力軸12に嵌合させ、また、前記一方の腕部28を前記ガイド25により前記第1固定部22の下面と前記底板部24の上面との間の隙間にガイドさせ、さらに、前記2本の脚部30、31を前記長溝21に挿入させる。これにより、前記第1ばね部材26のコイル部27が前記出力軸12に嵌合されており、前記第1ばね部材26の一方の腕部28が前記第1固定部22に固定されており、前記第1ばね部材26の2本の脚部30、31が前記長溝21中に挿入されておりかつ前記長溝21の一方(左側)の端部36、他方(右側)の端部37に弾性当接している。この結果、前記第1ばね部材26は、前記第4段ギア17に仮止めされることとなる。
【0019】
前記第1ばね部材26が仮止めされている前記第4段ギア17を前記支持部材2に前記のように回転可能に支持させる。また、図7(A)に示すように、前記第4段ギア17に仮止めされている前記第1ばね部材26の2本の腕部28、29を前記支持部材2の第1押え部32、第2押え部33に当てる。これにより、前記第1ばね部材26は、前記支持部材2と前記第4段ギア17との間に設けられていて、前記駆動力伝達機構13の機械的がた(ギアのバックラッシなど)を片寄せることができる。
【0020】
前記のように構成されたこの実施例の車両用灯具1、すなわち、支持部材2と、ステッピングモータ4と、光照射装置9と、出力軸12と、駆動力伝達機構13と、第1ばね部材26とを備える車両用灯具1は、ランプハウジング(図示せず)とランプレンズ(図示せず)とにより区画される灯室(図示せず)内に配置されている。また、前記車両用灯具1と前記ランプハウジングとの間に光軸調整機構(図示せず)が設けられている。これにより、前記車両用灯具1は、前記ランプハウジングに対して上下にまたは左右に光軸調整可能となる。このように構成されたこの実施例の車両用灯具1は、車両の前部の左側に搭載される。このとき、出力軸12の中心線をほぼ垂直軸V−Vに合わせる。
【0021】
図9は、車両の走行状況に応じて前記ステッピングモータ4を駆動させて前記光照射装置9からの光の照射方向を追従変化させる、たとえば、適応型照明システムAFSに使用される駆動制御装置を示すブロック図である。この駆動制御装置は、各種センサー48、49、50、51、52と、制御装置53とから構成されている。
【0022】
前記各種センサーは、ターンシグナルスイッチのON信号を検知してターン信号を出力するターンセンサー48、ハンドルの操舵方向およびまたは操舵角度およびまたは操舵速度などを検知して操舵信号を出力する操舵センサー49、車速を検知して車速信号を出力する車速センサー50、GPSや地上局(電子基準点など)から出力される位置情報信号を受信するGPSレシーバー51、自車位置や自車姿勢を検知するジャイロセンサー52などである。
【0023】
前記制御装置53は、外部信号入力装置としてのインターフェイス回路54と、中央演算処理装置・CPU55と、ナビゲーションシステム(カーナビゲーション)56と、制御信号出力装置としてのモータドライバー回路57とからなる。この制御装置53は、インターフェイス回路54に入力された各種センサー48、49、50、51、52の検知信号に基づいて、中央演算処理装置・CPU55およびナビゲーションシステム56で光照射装置9の最適な回転角度を決定し、この決定された回転角度に応じた制御信号をモータドライブ回路57を介してステッピングモータ4に出力するものである。前記制御装置53は、車両に搭載されているコンピュータを使用する。
【0024】
図2において、符号34、35は、前記光照射装置9の前記支持部材2に対する回転位置(回転角度)を検出するサーキットアッシー、マグネットである。前記サーキットアッシー34およびマグネット35により、前記光照射装置9の前記支持部材2に対する回転位置(回転角度)が検出され、この検出信号が前記制御装置53に出力されて、前記光照射装置の回転制御を正確に行うものである。
【0025】
この実施例にかかる車両用灯具1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0026】
まず、車両が直進している状態においては、図5、図7(A)、図8に示すように、光照射装置9の光軸Z−Zと、車両の前後方向F−Bとがほぼ一致する。ここで、車両がたとえば左旋回状態(車両が左に旋回する前の状態もしくは車両が左に旋回している状態)に入ると、各種センサー48〜52は、車両の左旋回状態を検知して検知信号を制御装置53に出力する。この制御装置53は、各種センサー48〜52の検知信号に基づいて、リフレクタ9の最適な回転角度を演算し、この演算された回転角度に応じた制御信号をステッピングモータ4に出力する。
【0027】
すると、ステッピングモータ4は、制御信号に基づいて駆動する。このステッピングモータ4の駆動(回転)力が駆動力伝達機構13および出力軸12を介して光照射装置9に伝達される。すなわち、ステッピングモータ4が駆動すると、ステッピングモータ4の回転軸に取り付けられている第1段ギア14が回転し、この第1ギア14に噛み合う第2ギア15が回転し、この第2段ギア15に噛み合う第3ギア16が回転し、この第3段ギア16にギア部20が噛み合う第4ギア17が回転し、この第4ギア17と一体の出力軸12が回転し、この出力軸12とリフレクタ11とが相互に固定されている光照射装置9が回転する。たとえば、光照射装置9は、上から見た図5に示す状態(光照射装置9の光軸Z−Zと車両の前後方向F−Bとがほぼ一致する状態)から垂直軸V−V回りに反時計方向(図6中、実線矢印方向、すなわち、左方向)に回転する。
【0028】
そして、光照射装置9が演算された回転角度分回転したところで、ステッピングモータ4の駆動が停止して、光照射装置9の回転も停止する。その結果、光照射装置9は、上から見た図6に示す状態、すなわち、光照射装置9の光軸Z−Zが車両の前後方向F−Bに対して反時計方向(左方向)に演算された回転角度分回転した状態となる。
【0029】
このとき、図7(B)に示すように、第4段ギア17も、光照射装置9と同様に、反時計方向(左方向)に演算された回転角度分回転した状態となる。この状態のとき、第1ばね部材26の他方の腕部29は、支持部材2の第1押え部32に押えられている。このために、第1ばね部材26の他方の腕部29および他方の脚部31は、図7(A)に示す状態のままであり、かつ、第1ばね部材26の他方の脚部31は、第4段ギア17の長溝21の他方の端部37から離れた状態である。一方、第1ばね部材26の一方の脚部30は、第4段ギア17の長溝21の一方の端部36に弾性当接している。このために、第1ばね部材の一方の腕部28および一方の脚部30は、第4段ギア17とともに反時計方向に回転した状態であり、かつ、第1ばね部材の一方の腕部28は、第4段ギア17の第1固定部22に固定されたままの状態であって、支持部材2の第2押え部33から離れている状態である。これにより、支持部材2の第1押え部32と第4段ギア17の長溝21の一方の端部36とには、第1ばね部材26のばね復帰力が作用するので、駆動力伝達機構13の第1段ギア14、第2段ギア15、第3段ギア16、第4段ギア17のギア部20の間の機械的がた(ギアのバックラッシなど)を片寄せることができる。なお、前記の第4段ギア17が反時計方向に回転して第1ばね部材26のばね復帰力が作用しているときには、第1ばね部材26の一方の腕部28が第4段ギア17の第1固定部22に固定されているので、第1ばね部材26が第4段ギア17から外れるようなことはない。
【0030】
また、車両が右旋回状態に入ると、各種センサー48〜52は、車両の右旋回状態を検知して検知信号を制御装置53に出力する。すると、前記の作用と同様に、制御装置53は、各種センサー48〜52の検知信号に基づいて、光照射装置9の最適な回転角度を演算し、この演算結果を制御信号としてステッピングモータ4に出力する。このステッピングモータ4が制御信号に基づいて駆動して、このステッピングモータ4の駆動(回転)力が駆動力伝達機構13および出力軸12を介して光照射装置9に伝達され、光照射装置9が図6に示す状態から垂直軸V−V回りに時計方向(図6中、実線矢印方向と逆方向、すなわち、右方向)に回転する。
【0031】
このように、この実施例にかかる車両用灯具1は、車両の旋回方向に光照射装置9を回転させることができるので、光照射装置9からの光を車両の旋回方向に向けることができる。すなわち、この実施例にかかる車両用灯具1は、車両の旋回方向に光を照射することができる。なお、この実施例にかかる車両用灯具1において、車両の旋回に基づいて光照射装置9を回転させる制御は、上記の作用以外にも種々ある。たとえば、上記の制御としては、AFS(Adaptive Front lighting System)に対応したものでも良い。その上、車両の状況や道路状況やドライバーの好みなどにより、制御は、色々と変更することができるものでも良い。
【0032】
この実施例における車両用灯具1は、上記のごとき構成および作用からなり、以下、この実施例における車両用灯具1の効果について説明する。
【0033】
この実施例における車両用灯具1は、第4段ギア17の仮止め部の長溝21および第1固定部22により、第1ばね部材26を第4段ギア17に仮止め(サブアッシー)することができる。この結果、この実施例における車両用灯具1は、仮止め状態の第4段ギア17および第1ばね部材26を支持部材2に組み込むことにより、第1ばね部材26を第4段ギア17と支持部材2との間に簡単に組み込むことができる。すなわち、第1ばね部材26を第4段ギア17と支持部材2との間に無理に組み込む必要がなく、しかも、無理に組み込む際に第1ばね部材26が外れたりすることがない。このように、組立作業が向上される。
【0034】
また、この実施例における車両用灯具1は、第1ばね部材26により、駆動力伝達機構13の機械的がたを片寄せることができるので、駆動力伝達機構13の機械的がたを防止することができる。すなわち、前記のように、図7(B)に示すように、支持部材2の第1押え部32と第4段ギア17の長溝21の一方の端部36とにおいて、第1ばね部材26のばね復帰力が作用するので、駆動力伝達機構13の第1段ギア14、第2段ギア15、第3段ギア16、第4段ギア17のギア部20の間の機械的がた(ギアのバックラッシなど)を片寄せることができ、その結果、駆動力伝達機構13の第1段ギア14、第2段ギア15、第3段ギア16、第4段ギア17のギア部20の間の機械的がたを防止することができる。
【0035】
特に、この実施例における車両用灯具1は、第1固定部22、第2固定部23に一方の腕部28を固定するためのガイド25が設けられている。このために、この実施例における車両用灯具1は、第1ばね部材26を第4段ギア17に仮止めする際に、一方の腕部28がガイド25により第1固定部22の下面と底板部24の上面との間の隙間にガイドされ、その結果、一方の腕部28が第1固定部22に簡単にかつ確実に固定されて、第1ばね部材26が第4段ギア17に簡単にかつ確実に仮止めされることとなる。
【0036】
また、この実施例における車両用灯具1は、第1ばね部材26の2本の腕部28、29の先端部がほぼ直角に同方向(下側)に折り曲げられて2本の脚部30、31が形成されており、かつ、この2本の脚部30、31が第4段ギア17の長溝21に挿入されている。このために、この実施例における車両用灯具1は、第1ばね部材26の2本の腕部28、29の切断面(先端面)と、支持部材2のベース6の内面との摩擦をなくすことができる。また、第1ばね部材26の2本の脚部30、31の切断面(先端面)が長溝21を通して支持部材2のカバー5の内面に届かないようにすることにより、同じく、2本の脚部30、31の切断面(先端面)とカバー5の内面との摩擦をなくすころができる。この結果、この実施例における車両用灯具1は、第1ばね部材26と支持部材2との間の摺動摩擦抵抗をなくすことができ、光照射装置9をスムーズに回転させることができる。
【0037】
さらに、この実施例における車両用灯具1は、一方の腕部28および一方の脚部30をコイル部27の左側かつ下側から延設し、また、他方の腕部29および他方の脚部31をコイル部27の右側かつ上側から延設してなる第1ばね部材26を使用して、車両の前部の左側に搭載される車両用灯具である。ところが、この発明においては、一方の腕部および一方の脚部をコイル部の右側かつ下側から延設し、また、他方の腕部および他方の脚部をコイル部の左側かつ上側から延設してなる第2ばね部材(図示せず)を使用することにより、他の構成部品、たとえば、支持部材2、ステッピングモータ4、出力軸12、駆動力伝達機構13などを左右共有化することができる。すなわち、右側用の第2ばね部材と右側用の光照射装置と左右共有の支持部材2、ステッピングモータ4、出力軸12、駆動力伝達機構13とを使用することにより、車両の前部の右側に搭載される車両用灯具を構成することができる。この結果、この発明においては、支持部材2、ステッピングモータ4、出力軸12、駆動力伝達機構13などを左右共有化することにより、部品点数の軽減化および部品管理の軽減化でき、その分、製造コストを安価にすることができる。
【0038】
以下、上記の実施例以外の例について説明する。上記の実施例においては、駆動装置としてステッピングモータ4を使用するものである。ところが、この発明のいては、駆動装置としてステッピングモータ4以外のもの、たとえば、通常のモータ、シリンダ、ソレノイドなどを使用してもよい。
【0039】
また、上記の実施例においては、光照射装置として光源としての放電灯10とリフレクタ11とからなるものを使用するのである。ところが、この発明においては、光源とリフレクタとランプハウジングとランプレンズとからなるランプユニットなどであってもよい。
【0040】
さらに、上記の実施例においては、駆動力伝達機構として第1段ギア14と、第2段ギア15と、第3段ギア16と、第4段ギア17とからなるものを使用するものである。ところが、この発明においては、ギア以外に、ベルト、ベルト車、リンク、カムなど、また、それらとギアとの組み合わせのものを使用してもよい。
【0041】
さらにまた、上記の実施例においては、支持部材としてカバー5とベース6とからなるものを使用するものである。ところが、この発明おいては、カバーとベースとが一体のもの、または、3分割以上のものなどを使用してもよい。
【0042】
さらにまた、ばね部材や最終段部材の第4段ギアなどは、上記の実施例のものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明にかかる車両用灯具の実施例を示すばね部材と第4段ギアとの仮止め状態の説明図である。
【図2】同じく、主な構成部品を示す分解斜視図である。
【図3】同じく、ばね部材と第4段ギアとを示す分解斜視図である。
【図4】同じく、ベースの内面の第1押え部および第2押え部を示す斜視図である。
【図5】同じく、光照射装置の光軸が車両のカーラインの前後方向と一致する状態を示す平面図である。
【図6】同じく、光照射装置の光軸が車両のカーラインの前後方向に対して左側に回転した状態を示す平面図である。
【図7】同じく、ばね部材が駆動力伝達機構の機械的がたを片寄せ手いる状態を示す説明図である。
【図8】図5におけるVIII−VIII線断面図である。
【図9】同じく、駆動制御手段を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0044】
F−B 車両の前後方向(水平軸)
V−V 垂直軸
Z−Z 光軸
1 車両用灯具
2 支持部材
3 取付ブラケット
4 ステッピングモータ
5 カバー
6 ベース
7 スクリュー
8 軸受
9 光照射装置
10 放電灯
11 リフレクタ
12 出力軸
13 駆動力伝達機構
14 第1段ギア
15 第2段ギア
16 第3段ギア
17 第4段ギア(最終段部材)
18 第1軸
19 第2軸
20 ギア部
21 長溝
22 第1固定部
23 第2固定部
24 底板部
25 ガイド
26 第1ばね部材
27 コイル部
28 一方の腕部
29 他方の腕部
30 一方の脚部
31 他方の脚部
32 第1押え部
33 第2押え部
34 サーキットアッシー
35 マグネット
36 一方の端部
37 他方の端部
48 ターンセンサー
49 操舵センサー
50 車速センサー
51 GPSレシーバー
52 ジャイロセンサー
53 制御装置・コンピュータ
54 インターフェイス回路
55 中央演算装置・CPU
56 ナビゲーションシステム(カーナビゲーション)
57 モータドライブ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射方向を可変制御することができる車両用灯具において、
支持部材と、
光を路面などに照射する光照射装置と、
前記光照射装置を前記支持部材に回転可能に支持する出力軸と、
制御装置からの制御信号により駆動する駆動装置と、
最終段部材と一体構造の前記出力軸に前記駆動装置の駆動力を伝達させて前記光照射装置を回転させる駆動力伝達機構と、
前記最終段部材と前記支持部材との間に設けられていて前記駆動力伝達機構の機械的がたを片寄せるばね部材と、
を備え、
前記最終段部材には、前記ばね部材を前記最終段部材に仮止めする仮止め部が設けられている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記最終段部材には、前記仮止め部としての長溝と固定部とが設けられており、
前記支持部材には、押え部が設けられており、
前記ばね部材は、前記出力軸に嵌合されているコイル部と、前記コイル部の両端から延設されてなる2本の腕部と、前記2本の腕部の先端部がほぼ直角に折り曲げられてなる2本の脚部と、から構成されており、
前記2本の腕部のうち一方の腕部が前記固定部に固定されており、かつ、前記2本の脚部が前記長溝中に挿入されていて、前記ばね部材が前記最終段部材に仮止めされており、
前記2本の腕部のうち他方の腕部が前記押え部に押さえられており、かつ、前記2本の脚部のうち一方の脚部が前記長溝の一方の端部に押されていて、前記ばね部材のばね作用により前記駆動力伝達機構の機械的がたを片寄せる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記固定部は、第1固定部と第2固定部とからなり、
前記押え部は、第1押え部と第2押え部とからなり、
前記ばね部材は、前記一方の腕部が前記第1固定部に固定されかつ前記他方の腕部が前記第1押え部に押される第1ばね部材、または、前記一方の腕部が前記第2固定部に固定されかつ前記他方の腕部が前記第2押え部に押される第2ばね部材からなる、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記固定部または前記第1固定部、前記第2固定部には、前記一方の腕部を固定するためのガイドが設けられている、ことを特徴とする請求項2または3に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−222036(P2006−222036A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36453(P2005−36453)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】