説明

車両用灯具

【課題】1個のランプユニットで理想の配光パターンを得ること。
【解決手段】この発明は、楕円反射面の第1反射面11と、第1反射面11の第1焦点F11に配置されている半導体型光源3と、第1反射面11からの反射光L2を制御して所定の配光パターンLP、HP、SP、WPとして路面に反射させる放物線反射面12、13、14と、を備える。第2反射面12は、高光度用配光パターンHPを形成する。第3反射面13は、高光度用配光パターンHPを包含する集光用配光パターンSPを形成する。第4反射面14は、高光度用配光パターンHPおよび集光用配光パターンSPと重畳する拡散用配光パターンWPを形成する。この結果、1個のランプユニットで理想の配光パターンを得ることができ、交通安全に貢献することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体型光源を光源とし、かつ、複数の反射面を有する車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、従来の車両用灯具について説明する。従来の車両用灯具は、半導体型光源と、第1反射面と、第2反射面と、第3反射面と、第4反射面と、を備えるものである。以下、従来の車両用灯具の作用について説明する。半導体型光源を点灯発光させる。すると、半導体型光源から放射される光の一部は、第1反射面で反射する。その反射光の一部は、第3反射面で反射されて上縁に水平カットラインを有する配光パターンとして路面に照射される。また、第1反射面からの反射光の残りは、主に第2反射面で反射されて前記の配光パターン内に重なるホットスポット部分と水平カットラインよりも上方にとびだす斜めカットラインを有する突出部分とを備える配光パターンとして路面に照射される。さらに、半導体型光源から放射される光の残りは、主に第4反射面で反射されてオーバーヘッドサイン用配光パターンとしてオーバーヘッドサイン(頭上標識)などに照射される。このように、従来の車両用灯具は、1個のランプユニットで理想の配光パターンが得られる。
【0003】
【特許文献1】特開2008−41557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、前記の従来の車両用灯具の改良という点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明(請求項1にかかる発明)は、楕円反射面の第1反射面と、第1反射面の第1焦点もしくはその近傍に配置されている半導体型光源と、第1反射面からの反射光を制御して高光度部を有する高光度用配光パターンとして路面に反射させる放物線反射面の第2反射面と、第1反射面からの反射光を制御して高光度用配光パターンを包含する集光用配光パターンとして路面に反射させる放物線反射面の第3反射面と、第1反射面からの反射光を制御して高光度用配光パターンおよび集光用配光パターンと重畳する拡散用配光パターンとして路面に反射させる放物線反射面の第4反射面と、を備える、ことを特徴とする。
【0006】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、第2反射面が第3反射面に対して対向車線側(他車が対向走行する車線側)に位置し、第2反射面および第3反射面が第4反射面に対して上方に位置する、ことを特徴とする。
【0007】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、第1反射面の第2焦点もしくはその近傍には第1反射面からの反射光の一部をカットオフするシェードが設けられていて、シェードにはシェードによりカットオフされた第1反射面からの反射光の一部を第2反射面および第3反射面に反射させるシェード反射面が設けられていて、第2反射面および第3反射面および第4反射面が、焦点が第1反射面の第2焦点もしくはその近傍に位置していて、第1反射面からの反射光およびシェード反射面からの反射光を制御してすれ違い用配光パターンとして路面に反射させる反射面である、ことを特徴とする。
【0008】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)は、第2反射面および第3反射面および第4反射面の上方には、焦点が半導体型光源もしくはその近傍に位置していてかつ半導体型光源からの光を制御してオーバーヘッドサイン用配光パターンとして反射させるオーバーヘッドサイン用放物線反射面が、設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、第2反射面により高光度部を有する高光度用配光パターンが得られ、また、第3反射面により高光度用配光パターンを包含する集光用配光パターンが得られ、さらに、第4反射面により高光度用配光パターンおよび集光用配光パターンと重畳する拡散用配光パターンが得られる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、1個のランプユニットで理想の配光パターンを得ることができ、交通安全に貢献することができる。
【0010】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、第2反射面が第3反射面に対して対向車線側に位置するので、集光用配光パターン中に包含されている高光度用配光パターンを走行車線側(自車が走行する車線側)に簡単な配光設計(たとえば、第2反射面の光軸を走行車線側に振り向けるなどの配光設計)で配光することができる。しかも、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、集光用配光パターン中の高光度用配光パターンを走行車線側に配光することができるので、走行車線側の視認性が向上されて、交通安全にさらに貢献することができる。特に、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、第2反射面および第3反射面が第4反射面に対して上方に位置するので、高光度用配光パターンおよび集光用配光パターンを拡散用配光パターンよりも上方に位置させることができるので、1個のランプユニットで理想のすれ違い用配光パターンを得ることができ、交通安全に貢献することができる。
【0011】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、第1反射面からの反射光の一部をシェードでカットオフするので、第2反射面および第3反射面および第4反射面でカットオフラインを有するすれ違い用配光パターンを容易に制御することができる。しかも、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、シェードによりカットオフされた第1反射面からの反射光の一部をシェード用反射面で第2反射面および第3反射面に反射させるので、半導体型光源から放射される光を有効に利用することができる。これにより、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、1個のランプユニットで理想のすれ違い用配光パターンを得ることができ、交通安全に貢献することができる。
【0012】
さらにまた、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用灯具は、前記の課題を解決するための手段により、オーバーヘッドサイン用放物線反射面が第2反射面および第3反射面および第4反射面の上方に位置するので、このオーバーヘッドサイン用放物線反射面が半導体型光源からの光をオーバーヘッドサイン用配光パターンとして制御するのに適している。これにより、この発明(請求項4にかかる発明)の車両用灯具は、1個のランプユニットで理想のすれ違い用配光パターンおよびオーバーヘッドサイン用配光パターンを得ることができ、交通安全に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明にかかる車両用灯具の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。図面において、符号「F」は、車両の前方向側(車両の前進方向側)を示す。符号「B」は、車両の後方向側を示す。符号「U」は、ドライバー側から前方向側を見た上方向側を示す。符号「D」は、ドライバー側から前方向側を見た下方向側を示す。符号「L」は、ドライバー側から前方向側を見た場合の左方向側を示す。符号「R」は、ドライバー側から前方向側を見た場合の右方向側を示す。符号「H−H」は、水平軸(車両の進行軸と平行な軸)を示す。前記の前、後、上、下、左、右、水平は、この発明にかかる車両用灯具を車両に装備した際の前、後、上、下、左、右、水平である。また、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。
【実施例】
【0014】
以下、この実施例における車両用灯具の構成について説明する。この実施例における車両用灯具は、車両(自動車)の前部の左右にそれぞれ装備される、たとえば、リフレクタタイプ(反射タイプ)の4灯式のすれ違い用(ロービーム用)のヘッドランプである。前記ヘッドランプは、日本の左側通行に使用するものである。欧州の左側通行に使用されるヘッドランプは、前記ヘッドランプとほぼ同様の構成からなる。また、欧州の右側通行および北米の右側通行に使用されるヘッドランプは、前記ヘッドランプとほぼ同様の構成からなりかつ左右逆のレイアウトからなる。
【0015】
この実施例における車両用灯具は、1個のランプユニット1と、ランプハウジング(図示せず)と、図示しないランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)と、を備えるものである。前記ランプユニット1は、前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズにより区画されている灯室(図示せず)内に配置されている。また、前記ランプユニット1は、ホルダやブラケット(図示せず)および光軸調整装置(図示せず)を介して前記ランプハウジングに取り付けられている。
【0016】
前記ランプユニット1は、図1に示すように、リフレクタ2と、半導体型光源3と、ヒートシンク部材4と、から構成されている。前記リフレクタ2は、たとえば、光不透過性の樹脂などから構成されている。前記リフレクタ2は、図1および図2に示すように、楕円部5と、放物線部6と、傾斜部7と、水平部8と、から一体に構成されている。
【0017】
前記楕円部5は、回転楕円形状のものを長軸方向と短軸方向とに4分割した形状をなし、長軸方向の第1開口部9と短軸方向の第2開口部10とを有する。前記楕円部5の前記第1開口部9の縁には、前記傾斜部7が一体に設けられている。前記傾斜部7の一縁(上縁)には、前記水平部8の一縁(前縁)が一体に設けられている。前記水平部8の他縁(後縁)には、前記放物線部6の一縁(下縁)が一体に設けられている。前記楕円部5は、前記放物線部6に対して、前方斜め下側に位置する。前記放物線部6は、前記楕円部5の前記第2開口部10に対向する。前記傾斜部7は、前記水平部8に対して、一縁(上縁)が前記ランプユニット1の光の照射方向と反対方向側(後側)に、かつ、他縁(下縁)が前記ランプユニット1の光の照射方向側(前側)に、傾斜している。前記水平部8は、水平軸H−Hと平行(ほぼ平行も含む)である。
【0018】
前記リフレクタ2には、第1反射面11および第2反射面12および第3反射面13および第4反射面14および第5反射面15およびシェード16およびシェード反射面17などの光学部品が一体に構成されている。すなわち、前記楕円部5の前記第1開口部9および前記第2開口部10に対向する内面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていて前記第1反射面11が一体に形成されている。前記放物線部6の前記第2開口部10および前記第1反射面11と対向する内面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていて前記第2反射面12および前記第3反射面13および前記第4反射面14および前記第5反射面15が一体に形成されている。前記傾斜部7の一縁(上縁)7には、前記シェード16が一体に形成されている。前記シェード16の前記第2開口部10および前記第1反射面11および前記第2反射面12および前記第3反射面13および前記第4反射面14と対向する面には、アルミ蒸着もしくは銀塗装などが施されていて前記シェード反射面17が一体に形成されている。
【0019】
前記半導体型光源3は、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源(この実施例ではLED)を使用する。前記半導体型光源3は、図2に示すように、基板18と、前記基板18の一面に設けられている光源チップ19と、前記光源チップ19を覆う半球形状(ドーム形状)の光透過部材(レンズ)20と、からなるものである。前記光源チップ19は、この例では、長方形形状をなす。
【0020】
前記半導体型光源3は、ホルダ21を介してスクリュー22により前記ヒートシンク部材4に固定されている。また、前記リフレクタ2の前記傾斜部7は、スクリュー23により前記ヒートシンク部材4に固定されている。この結果、前記ランプユニット1が構成される。このとき、前記リフレクタ2の前記楕円部5の前記第1開口部9は、前記ヒートシンク部材4により閉塞されている。また、前記リフレクタ2の前記楕円部5の前記第1反射面11は、前記半導体型光源3に対向する。さらに、前記半導体型光源3の長方形形状の前記光源チップ19は、水平軸(車両の進行軸)H−Hに対して直交(ほぼ直交も含む)である。すなわち、前記半導体型光源3は、横差バルブ(円柱形状のフィラメントが水平軸(車両の進行軸)H−Hに対して直交(ほぼ直交も含む)であるバルブ)と同様な構成となる。なお、図1において、前記リフレクタ2を前記ヒートシンク部材4に固定するスクリュー23は、2本図示されていて、2本図示が省略されている。
【0021】
前記第1反射面11は、楕円反射面である。楕円反射面は、楕円を基調(基本、基準)とする自由曲面からなる反射面、あるいは、回転楕円面からなる反射面である。楕円を基調(基本、基準)とする自由曲面からなる反射面は、図2の垂直断面が楕円をなし、かつ、図示しない水平断面が放物線ないし変形放物線ないし変形楕円ないしそれらの組み合わせからなる反射面である。この結果、楕円反射面である前記第1反射面11は、光軸Z1−Z1と、第1焦点F11と、第2焦点(もしくは第2焦線)F12と、を有する。図2に示すように、前記第1反射面11の光軸Z1−Z1は、側面から見て、水平軸H−Hに対して傾斜している。前記第1焦点F11は、前記第2焦点F12に対して、前方斜め下側に位置する。前記半導体型光源3の前記光源チップ19は、前記第1反射面11の第1焦点F11もしくはその近傍に位置する。この結果、前記半導体型光源3の前記光源チップ19から放射される光の大部分L1は、前記第1反射面11で反射されて前記第1反射面11の第2焦点F12もしくはその近傍に収束する(集まる)。
【0022】
前記第2反射面12および前記第3反射面13および前記第4反射面14および前記第5反射面15は、放物線反射面である。放物線反射面は、放物線を基調(基本、基準)とする自由曲面からなる反射面、あるいは、回転放物面からなる反射面である。放物線を基調(基本、基準)とする自由曲面からなる反射面は、図2の垂直断面が放物線をなし、かつ、図示しない水平断面が楕円ないし変形楕円ないし変形放物線ないしそれらの組み合わせからなる反射面である。この結果、放物線反射面である前記第2反射面12および前記第3反射面13および前記第4反射面14および前記第5反射面15は、光軸Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5と、焦点(焦線)F2、F3、F4、F5と、を有する。図2に示すように、前記第2反射面12および前記第3反射面13および前記第4反射面14および前記第5反射面15の光軸Z2−Z2、Z3−Z3、Z4−Z4、Z5−Z5は、側面から見て、水平軸H−Hと平行(ほぼ平行も含む)である。前記第2反射面12および前記第3反射面13および前記第4反射面14の焦点F2、F3、F4は、前記第1反射面11の第2焦点F12もしくはその近傍に位置する。前記第5反射面15の焦点F5は、前記第1反射面11の第1焦点F11もしくはその近傍に位置する。
【0023】
前記第1反射面11は、前記第2反射面12および前記第3反射面13および第4反射面14および前記第5反射面15に対して前方斜め下側に位置する。前記第1反射面11および前記半導体型光源3側と前記第2反射面12および前記第3反射面13および第4反射面14および前記第5反射面15側との間には、前記第1反射面11からの反射光および前記半導体型光源3からの直射光を前記第2反射面12および前記第3反射面13および第4反射面14および前記第5反射面15に通すための開口部、すなわち、前記第2開口部10が設けられている。
【0024】
前記シェード16は、前記第1反射面11からの反射光L2の一部L3をカットオフするものである。前記シェード16のエッジ、すなわち、前記傾斜部7と前記水平部8との角部は、配光パターンのカットオフラインの形成に関与する。一方、前記シェード反射面17は、前記シェード16によりカットオフされた前記第1反射面11からの反射光L2の一部L3を前記第2反射面12および前記第3反射面13および第4反射面14側に反射させるものである。
【0025】
前記第2反射面12および前記第3反射面13と、前記第4反射面14と、前記第5反射面15とは、図1および図2に示すように、横に分割されている。前記第2反射面12および前記第3反射面13は、前記第4反射面14の上方に位置する。前記第5反射面15は、前記第2反射面12および前記第3反射面13および前記第4反射面14の上方に位置する。
【0026】
前記第2反射面12と前記第3反射面13とは、図1および図2に示すように、縦に分割されている。前記第2反射面12は、前記第3反射面13に対して、対向車線側(右側)に位置する。
【0027】
前記第2反射面12および前記第3反射面13および第4反射面14は、前記第1反射面11からの反射光L2(前記シェード16によりカットオフされなかった前記第1反射面11からの反射光L2)および前記シェード反射面17からの反射光L4(前記シェード16によりカットオフされた前記第1反射面11からの反射光L2の一部L3)を制御して図9に示すすれ違い用配光パターンLPとして路面に反射させる反射面である。前記すれ違い用配光パターンLPの上縁には、水平のカットオフラインCL1および斜めのカットオフラインCL2が形成されている。前記すれ違い用配光パターンLPの水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2は、前記シェード16のエッジおよび前記第2反射面12および前記第3反射面13および第4反射面14により形成される。前記すれ違い用配光パターンLPの水平カットオフラインCL1は、スクリーンの左右水平線HL−HRよりも約0.57°下側に位置する。また、前記すれ違い用配光パターンLPの斜めカットオフラインCL2は、水平カットオフラインCL1のスクリーンの上下垂直線VU−VDから左側に約15〜45°傾斜している。
【0028】
前記第2反射面12は、前記シェード反射面17からの反射光L4を制御して図4に示す高光度用配光パターンHPとして路面に反射させる反射面である。前記高光度用配光パターンHPは、範囲が狭く狭められたスポット状の高光度部を形成して、最高光度を高めるものである。前記高光度用配光パターンHPは、スクリーンの上下垂直線VU−VDから左側であって、前記すれ違い用配光パターンLPの斜めカットオフラインCL2の下側に位置する。
【0029】
前記第3反射面13は、前記シェード反射面17からの反射光L4を制御して図4に示す集光用配光パターンSPとして路面に反射させる反射面である。前記集光用配光パターンSPの上縁には、前記の水平のカットオフラインCL1および前記の斜めのカットオフラインCL2が形成されている。前記集光用配光パターンSPの水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2は、前記シェード16のエッジおよび前記第3反射面13により形成される。前記集光用配光パターンSPは、前記高光度用配光パターンHPを包含する。前記高光度用配光パターンHPおよび前記集光用配光パターンSPは、前記すれ違い用配光パターンLPのホットスポットであって、前記すれ違い用配光パターンLPの主な配光規格を満足させるものである。
【0030】
前記第4反射面14は、前記第1反射面11からの反射光L2を制御して図6に示す拡散用配光パターンWPとして路面に反射させる反射面である。前記拡散用配光パターンWPの上縁には、前記の水平のカットオフラインCL1が形成されている。前記拡散用配光パターンWPの水平カットオフラインCL1は、前記シェード16のエッジおよび前記第4反射面14により形成される。前記拡散用配光パターンWPは、前記すれ違い用配光パターンLPの水平拡散であって、前記すれ違い用配光パターンLPの商品性を向上させる拡散配光を形成するものである。なお、前記拡散用配光パターンWPの水平カットオフラインCL1を前記集光用配光パターンSPの水平カットオフラインCL1よりも約0.3〜1°下側に設定しても良い。
【0031】
前記第5反射面15は、図1に示すように、前記第2反射面12および前記第3反射面13および第4反射面14の上方に位置する。前記第5反射面15は、前記半導体型光源3からの光(直射光)L5を制御してオーバーヘッドサイン用配光パターンOPとして反射させる反射面である。前記オーバーヘッドサイン用配光パターンOPは、スクリーンの左右水平線HL−HRよりも上側に位置して、図示していないオーバーヘッドサイン(頭上標識)を照明するものである。
【0032】
放物線反射面は、前記第2反射面12と前記第3反射面13と第4反射面14と前記第5反射面15との4個のセグメントに分割されている。また、前記第2反射面12および前記第3反射面13は、単一のセグメントからなり、一方、第4反射面14および前記第5反射面15は、複数個(この例では3個)のセグメントからなるものである。なお、前記第2反射面12および前記第3反射面13および第4反射面14および前記第5反射面15は、それぞれ、配光特性に応じて、単一のセグメントもしくは複数個のセグメントからなるものであっても良い。
【0033】
この実施例における車両用灯具は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0034】
まず、ランプユニット1の半導体型光源3の光源チップ19を点灯発光させる。すると、半導体型光源3の光源チップ19から放射された光の大部分L1は、第1反射面11に入射する。また、半導体型光源3の光源チップ19から放射された光の一部L5は、直射光としてリフレクタ2の第2開口部10を経て主に第5反射面15に直接入射する。
【0035】
第1反射面11に入射した光L1は、第1反射面11で反射する。第1反射面11で反射した反射光L2は、第1反射面11の第2焦点F12もしくはその近傍に収束する(集まる)。第1反射面11からの反射光L2であって、シェード16によりカットオフされなかった第1反射面11からの反射光L2は、リフレクタ2の第2開口部10を経て主に第4反射面14に入射する。また、第1反射面11からの反射光L2であって、シェード16によりカットオフされた第1反射面11からの反射光L2の一部L3は、シェード反射面17で反射する。シェード反射面17からの反射光L4は、リフレクタ2の第2開口部10を経て主に第2反射面12および第3反射面13に入射する。
【0036】
第2反射面12に入射したシェード反射面17からの反射光L4は、第2反射面12および第3反射面13で反射する。第2反射面12からの反射光は、第2反射面12で、図4に示す高光度用配光パターンHPとして制御されて路面に照射される。第3反射面13からの反射光は、第3反射面13で、図4に示す集光用配光パターンSP、すなわち、上縁に水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2を有し、かつ、高光度用配光パターンHPを包含する集光用配光パターンSPとして制御されて路面に照射される。
【0037】
また、第4反射面14に入射した第1反射面11からの反射光L2は、第4反射面14で反射する。第4反射面14からの反射光は、第4反射面14で、図6に示す拡散用配光パターンWP、すなわち、上縁に水平カットオフラインCL1を有する拡散用配光パターンWPとして制御されて路面に照射される。
【0038】
図4に示す高光度用配光パターンHPおよび集光用配光パターンSPと図6に示す拡散用配光パターンWPとが重畳されて図9に示すすれ違い用配光パターンLP、すなわち、上縁に水平カットオフラインCL1および斜めカットオフラインCL2を有するすれ違い用配光パターンLPが形成される。
【0039】
第5反射面15に直接入射した半導体型光源3の光源チップ19からの直射光L5は、第5反射面15で反射する。第5反射面15からの反射光は、第5反射面15で図8に示すオーバーヘッドサイン用配光パターンOPとして制御されてオーバーヘッドサインに照射される。この結果、図9に示すように、高光度用配光パターンHPおよび集光用配光パターンSPと拡散用配光パターンWPとが重畳されてなるすれ違い用配光パターンLPと、オーバーヘッドサイン用配光パターンOPとが得られる。
【0040】
ここで、1個の半導体型光源3の光束(光度、照度、光量)が大きいと、1個のランプユニット1により、所定の配光特性を有するすれ違い用配光パターンLP(高光度用配光パターンHPおよび集光用配光パターンSPおよび拡散用配光パターンWP)およびオーバーヘッドサイン用配光パターンOPが得られる。
【0041】
この実施例における車両用灯具は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0042】
この実施例における車両用灯具(ランプユニット1)は、第2反射面12により高光度部を有する高光度用配光パターンHPが得られ、また、第3反射面13により高光度用配光パターンHPを包含する集光用配光パターンSPが得られ、さらに、第4反射面14により高光度用配光パターンHPおよび集光用配光パターンSPと重畳する拡散用配光パターンWPが得られる。この結果、この実施例における車両用灯具(ランプユニット1)は、1個のランプユニット1で理想のすれ違い用配光パターンLPを得ることができ、交通安全に貢献することができる。
【0043】
また、この実施例における車両用灯具(ランプユニット1)は、第2反射面12が第3反射面13に対して対向車線側(右側)に位置するので、集光用配光パターンSP中に包含されている高光度用配光パターンHPを走行車線側(左側)すなわちスクリーンの上下垂直線VU−VDの左側に簡単な配光設計、たとえば、図10に示すように、平面(上面)から見て、第2反射面12の光軸Z2−Z2を走行車線側(左側)すなわち水平軸(車両の進行軸)H−Hに対して左側に振り向けるなどの配光設計で配光することができる。しかも、この実施例における車両用灯具(ランプユニット1)は、集光用配光パターンSP中の高光度用配光パターンHPを走行車線側(左側)に配光することができるので、走行車線側の視認性が向上されて、交通安全にさらに貢献することができる。特に、この実施例における車両用灯具(ランプユニット1)は、第2反射面12および第3反射面13が第4反射面14に対して上方に位置するので、高光度用配光パターンHPおよび集光用配光パターンSPを拡散用配光パターンWPよりも上方に位置させることができるので、1個のランプユニット1で理想のすれ違い用配光パターンLPを得ることができ、交通安全に貢献することができる。
【0044】
さらに、この実施例における車両用灯具(ランプユニット1)は、第1反射面11からの反射光L2の一部L3をシェード16でカットオフするので、第2反射面12および第3反射面13および第4反射面14でカットオフラインCL1、CL2を有するすれ違い用配光パターンLPを容易に制御することができる。しかも、この実施例における車両用灯具(ランプユニット1)は、シェード16によりカットオフされた第1反射面11からの反射光L2の一部L3をシェード用反射面17で第2反射面12および第3反射面13に反射させるので、半導体型光源3から放射される光L1を有効に利用することができる。これにより、この実施例における車両用灯具(ランプユニット1)は、1個のランプユニット1で理想のすれ違い用配光パターンLPを得ることができ、交通安全に貢献することができる。
【0045】
さらにまた、この実施例における車両用灯具(ランプユニット1)は、オーバーヘッドサイン用放物線反射面の第5反射面15が第2反射面12および第3反射面13および第4反射面14の上方に位置するので、第5反射面15が半導体型光源3からの光L5を図8に示すオーバーヘッドサイン用配光パターンOPとして制御するのに適している。これにより、この実施例における車両用灯具(ランプユニット1)は、1個のランプユニット1で理想のすれ違い用配光パターンLPおよびオーバーヘッドサイン用配光パターンOPを得ることができ、交通安全に貢献することができる。
【0046】
以下、前記の実施例以外の例について説明する。前記の実施例においては、放物線反射面の第2反射面12および第3反射面13および第4反射面14ですれ違い用配光パターンLP(高光度用配光パターンHPおよび集光用配光パターンSPおよび拡散用配光パターンWP)を形成するものである。ところが、この発明においては、放物線反射面の第2反射面12および第3反射面13および第4反射面14で形成する所定の配光パターンとしては、すれ違い用配光パターンLP以外の配光パターン、たとえば、走行用配光パターン、高速道路用配光パターン、フォグランプ(霧)用配光パターン、雨用配光パターン、追加灯用配光パターンなどであっても良い。
【0047】
また、前記の実施例においては、第2反射面12を第3反射面13に対して対向車線側(右側)に位置させたものである。ところが、この発明においては、第2反射面12を第3反射面13に対して対向車線側(右側)に位置させなくても良い。
【0048】
さらに、前記の実施例においては、第2反射面12および第3反射面13を第4反射面14の上方に位置させたものである。ところが、この発明においては、第2反射面12および第3反射面13を第4反射面14の上方に位置させなくても良い。
【0049】
さらにまた、前記の実施例においては、シェード16を設け、また、シェード16にシェード反射面17を設けたものである。ところが、この発明においては、シェード16を設けずに、また、シェード16にシェード反射面17を設けなくても良い。
【0050】
さらにまた、前記の実施例においては、第2反射面12および第3反射面13および第4反射面14の上方にオーバーヘッドサイン用放物面反射面の第5反射面15を設けたものである。ところが、この発明においては、第2反射面12および第3反射面13および第4反射面14の上方に第5反射面15を設けず、オーバーヘッドサイン用配光パターンOPを形成しなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】この発明にかかる車両用灯具の実施例を示すリフレクタ、半導体型光源、ヒートシンク部材の分解斜視図である。
【図2】同じく、光路を示す図1におけるII−II線断面図に対応する縦断面図(垂直断面図)である。
【図3】第2反射面および第3反射面の反射作用を示す説明図である。
【図4】第2反射面および第3反射面により得られるすれ違い用配光パターンの高光度用配光パターンおよび集光用配光パターンを示す説明図である。
【図5】第4反射面の反射作用を示す説明図である。
【図6】第4反射面により得られるすれ違い用配光パターンの拡散用配光パターンを示す説明図である。
【図7】第5反射面の反射作用を示す説明図である。
【図8】第5反射面により得られるオーバーヘッドサイン用配光パターンを示す説明図である。
【図9】第2反射面および第3反射面により得られるすれ違い用配光パターンの高光度用配光パターンおよび集光用配光パターンと第4反射面により得られるすれ違い用配光パターンの拡散用配光パターンと第5反射面により得られるオーバーヘッドサイン用配光パターンとを示す説明図である。
【図10】図1におけるX−X線断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ランプユニット(車両用灯具)
2 リフレクタ
3 半導体型光源
4 ヒートシンク部材
5 楕円部
6 放物線部
7 傾斜部
8 水平部
9 第1開口部
10 第2開口部
11 第1反射面(楕円反射面)
12 第2反射面(放物線反射面)
13 第3反射面(放物線反射面)
14 第4反射面(放物線反射面)
15 第5反射面(オーバーヘッドサイン用放物線反射面)
16 シェード
17 シェード反射面
18 基板
19 光源チップ
20 光透過部材
21 ホルダ
22 スクリュー
23 スクリュー
F 前
B 後
U 上
D 下
L 左
R 右
HL−HR スクリーンの左右の水平線
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
H−H 水平軸(車両の進行軸)
Z1−Z1 第1反射面の光軸
F11 第1反射面の第1焦点
F12 第1反射面の第2焦点
Z2−Z2 第2反射面の光軸
F2 第2反射面の焦点
Z3−Z3 第3反射面の光軸
F3 第3反射面の焦点
Z4−Z4 第4反射面の光軸
F4 第4反射面の焦点
Z5−Z5 第5反射面の光軸
F5 第5反射面の焦点
LP すれ違い用の配光パターン
CL1 水平カットライン
CL2 斜めカットライン
HP 高光度用配光パターン
SP 集光用配光パターン
WP 拡散用配光パターン
OP オーバーヘッドサイン用配光パターン
L1 半導体型光源からの光の大部分
L2 シェードでカットオフされない第1反射面からの反射光
L3 シェードでカットオフされる第1反射面からの反射光
L4 シェード反射面からの反射光
L5 半導体型光源からの直射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体型光源を光源とし、かつ、複数の反射面を有する車両用灯具において、
楕円反射面の第1反射面と、
前記第1反射面の第1焦点もしくはその近傍に配置されている前記半導体型光源と、
前記第1反射面からの反射光を制御して高光度部を有する高光度用配光パターンとして路面に反射させる放物線反射面の第2反射面と、
前記第1反射面からの反射光を制御して前記高光度用配光パターンを包含する集光用配光パターンとして路面に反射させる放物線反射面の第3反射面と、
前記第1反射面からの反射光を制御して前記高光度用配光パターンおよび前記集光用配光パターンと重畳する拡散用配光パターンとして路面に反射させる放物線反射面の第4反射面と、
を備える、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第2反射面は、前記第3反射面に対して、対向車線側に位置し、
前記第2反射面および前記第3反射面は、前記第4反射面に対して、上方に位置する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第1反射面の第2焦点もしくはその近傍には、前記第1反射面からの反射光の一部をカットオフするシェードが設けられていて、
前記シェードには、前記シェードによりカットオフされた前記第1反射面からの反射光の一部を前記第2反射面および前記第3反射面に反射させるシェード反射面が設けられていて、
前記第2反射面および前記第3反射面および前記第4反射面は、焦点が前記第1反射面の第2焦点もしくはその近傍に位置していて、前記第1反射面からの反射光および前記シェード反射面からの反射光を制御してすれ違い用配光パターンとして路面に反射させる反射面である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第2反射面および前記第3反射面および前記第4反射面の上方には、焦点が前記半導体型光源もしくはその近傍に位置していてかつ前記半導体型光源からの光を制御してオーバーヘッドサイン用配光パターンとして反射させるオーバーヘッドサイン用放物線反射面が、設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−277481(P2009−277481A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127098(P2008−127098)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】