説明

車両用灯具

【課題】従来の車両用灯具では、配光制御されない光が照射されたり、配光むらが生じたりする。
【解決手段】この発明は、3個のランプユニット2、3、4が、光源5、6、7と、光源5、6、7からの光L1、L2、L3を反射させるリフレクタ8、9、10と、リフレクタ8、9、10からの反射光L1、L2、L3を所定の方向に所定の配光パターンで外部に照射するレンズ11、12、13と、をそれぞれ備えるものである。3個のランプユニット2、3、4の3個のレンズ11、12、13が結合部を介して一体に構成されていて、結合部には配光制御兼光拡散部27、28、29が設けられている。この結果、この発明は、配光制御兼光拡散部27、28、29により、配光制御された光を照射することができ、また、配光むらを解消することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数個のランプユニットから構成されている車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用灯具は、従来からある(たとえば、特許文献1)。以下、この従来の車両用灯具について説明する。従来の車両用灯具は、1個のシリンドリカルレンズと、1個のシリンドリカルレンズの後側焦線よりも後方側に配置されている複数個の発光素子と、複数個の発光素子からの光を前方に反射させる複数個のリフレクタと、を備えるものである。そして、従来の車両用灯具は、シリンドリカルレンズと、発光素子と、リフレクタと、から構成されているランプユニットを複数個備えるものであって、複数個のランプユニットのシリンドリカルレンズが1個に一体に構成されているものである。従来の車両用灯具は、複数個の発光素子を発光させると、複数個の発光素子からの光が複数個のリフレクタで前方に反射され、その反射光が1個のシリンドリカルレンズを透過して複数の所定の配光パターンとして外部に照射され、複数の所定の配光パターンが重畳されて路面などを照明する。
【0003】
ところが、前記の従来の車両用灯具は、複数個のランプユニットのシリンドリカルレンズをただ単に1個に一体に構成するものであるから、1個の一体構造のシリンドリカルレンズのうち複数個のランプユニットの境界に対応する部分が一のランプユニットのレンズと他のランプユニットのレンズとを結合するただ単なる結合部であって、配光を制御したり光を拡散させたりする機能を持たない。このために、前記の従来の車両用灯具は、1個の一体構造のシリンドリカルレンズの連結部から照射される光を配光制御することができない。また、従来の車両用灯具は、一のランプユニットにより形成される一の配光パターンと、他のランプユニットにより形成される他の配光パターンと、の間の境における明暗差(光度差、照度差)、あるいは、外側の配光パターンと光が無い部分との間の境における明暗差(光度差、照度差)が、大きく、配光むらが生じるなどの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−294176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、従来の車両用灯具では、配光制御されない光が照射されたり、配光むらが生じたりするなどの課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明(請求項1にかかる発明)は、複数個のランプユニットが、光源と、光源からの光を反射させるリフレクタと、リフレクタからの反射光を所定の方向に所定の配光パターンで外部に照射するレンズと、をそれぞれ備え、複数個のランプユニットの複数個のレンズが結合部を介して一体に構成されていて、レンズとレンズとを一体に結合する結合部には配光制御兼光拡散部が設けられている、ことを特徴とする。
【0007】
また、この発明(請求項2にかかる発明)は、複数個のランプユニットが車両の幅方向の外側から内側にかけて配置されていて、車両の幅方向の外側のランプユニットが集光タイプの配光パターンを照射し、車両の幅方向の内側のランプユニットが集光タイプの配光パターンを含有する拡散タイプの配光パターンを照射し、車両の幅方向の内側のランプユニットの光軸が車両の幅方向の外側に向いている、ことを特徴とする。
【0008】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)は、複数個のランプユニットの複数個のリフレクタが一体構造をなす、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、レンズ同士の結合部の配光制御兼光拡散部から拡散光が配光制御された補助拡散配光パターンとして照射される。このために、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、レンズ同士の結合部の配光制御兼光拡散部から照射される拡散光を補助拡散配光パターンとして配光制御することができる。また、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、一のランプユニットにより形成される一の配光パターンと他のランプユニットにより形成される他の配光パターンとの間の境に、あるいは、外側の配光パターンと光が無い部分との間の境に、補助拡散配光パターンを照射することができる。この結果、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、補助拡散配光パターンにより、一のランプユニットにより形成される一の配光パターンと他のランプユニットにより形成される他の配光パターンとの間の境における明暗差(光度差、照度差)、あるいは、外側の配光パターンと光が無い部分との間の境における明暗差(光度差、照度差)を小さくすることができるので、配光むらを無くすことができ、配光パターンを精度良く配光制御することができ、その分視認性が向上されて交通安全に貢献することができる。
【0010】
しかも、この発明(請求項1にかかる発明)の車両用灯具は、複数個のランプユニットの複数個のレンズが結合部を介して一体に構成されているので、下記の効果を達成することができる。すなわち、複数個のランプユニットから照射される複数個の配光パターンの相対位置のずれを小さくすることができ、複数個の配光パターンの重なり精度を向上させることができる。また、複数個のランプユニット毎にそれぞれ独立した複数個のレンズを組み付ける車両用灯具と比較して、レンズを組み付ける部品点数や組付工程数を軽減することができ、その分、製造コストを安価にすることができ、かつ、重量の軽量化を図ることができる。さらに、複数個のランプユニット毎にそれぞれ独立した複数個のレンズを組み付ける車両用灯具と比較して、レンズを組み付ける部品に必要なスペースを小さくすることができ、その分、複数個のランプユニットをレイアウトする際には、必要なスペースを小さくすることができ、小型化を図ることができる。
【0011】
また、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、車両の幅方向の外側のランプユニットが集光タイプの配光パターンを照射し、車両の幅方向の内側のランプユニットが集光タイプの配光パターンを含有する拡散タイプの配光パターンであって、車両の幅方向の外側に大きく拡散された拡散タイプの配光パターンを照射するものである。この結果、この発明(請求項2にかかる発明)の車両用灯具は、車両の幅方向の外側を広く照明することができ、たとえば、路肩などの視認性が向上されて、交通安全に貢献することができる。
【0012】
さらに、この発明(請求項3にかかる発明)の車両用灯具は、複数個のランプユニットの複数個のリフレクタが一体構造をなすので、複数個のランプユニットから照射される複数個の配光パターンの相対位置のずれを小さくすることができ、複数個の配光パターンの重なり精度を向上させることができる。すなわち、配光パターンを精度良く配光制御することができ、その分視認性が向上されて交通安全に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明にかかる車両用灯具の実施例を示す斜視図である。
【図2】同じく、車両用灯具を示す平面図である。
【図3】同じく、車両用灯具を示す正面図である。
【図4】同じく、図2におけるIV−IV線断面図である。
【図5】同じく、図2におけるV−V線断面図である。
【図6】同じく、図2におけるVI−VI線断面図である。
【図7】同じく、図3におけるVII−VII線断面図である。
【図8】同じく、車両の右側に装備された車両用灯具からスクリーンに照射される配光パターンを模擬的に示す説明図である。
【図9】同じく、車両の左側に装備された車両用灯具からスクリーンに照射される配光パターンを模擬的に示す説明図である。
【図10】同じく、車両の右側に装備された車両用灯具からスクリーンに照射される配光パターンと、車両の左側に装備された車両用灯具からスクリーンに照射される配光パターンとを、合成して模擬的に示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、この発明にかかる車両用灯具の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。図面において、符号「F」は、車両の前方向側(車両の前進方向側)を示す。符号「B」は、車両の後方向側を示す。符号「U」は、ドライバー側から前方向側を見た上方向側を示す。符号「D」は、ドライバー側から前方向側を見た下方向側を示す。符号「L」は、ドライバー側から前方向側を見た場合の左方向側を示す。符号「R」は、ドライバー側から前方向側を見た場合の右方向側を示す。前記の前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用灯具を車両に装備した際の前、後、上、下、左、右である。また、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。
【実施例】
【0015】
以下、この実施例における車両用灯具の構成について説明する。この例は、たとえば、自動車用前照灯のヘッドランプについて説明する。この実施例の車両用灯具(ヘッドランプ)は、車両の前部の右側に装備されるものである。なお、車両の前部の左側に装備される車両用灯具は、この実施例の車両用灯具とほぼ左右逆の構成をなすので、説明を省略する。また、この実施例の車両用灯具は、左側通行の車両用灯具について説明する。右側通行の車両用灯具は、この実施例の車両用灯具とほぼ左右逆の配光パターンとなる。
【0016】
図において、符号1は、この実施例における車両用灯具である。前記車両用灯具1は、図に示すように、3個のいわゆるプロジェクタタイプのランプユニット2、3、4から構成されている。前記3個のランプユニット2、3、4は、図示しない自動車用前照灯のランプハウジングおよびランプレンズ(たとえば、素通しのアウターレンズなど)により区画されている灯室(図示せず)内に光軸調整機構(図示せず)を介して光軸調整可能に配置されている。前記3個のランプユニット2、3、4は、車両の幅方向に配置されている。
【0017】
前記3個のランプユニット2、3、4は、光源5、6、7と、リフレクタ8、9、10と、レンズ11、12、13と、シェード14、15、16と、ヒートシンク部材17と、をそれぞれ備えるものである。
【0018】
車両の一番右側、すなわち、車両の幅方向の一番外側に配置されている第1ランプユニット2は、集光タイプの配光パターンSP(図8中の中央の実線で図示されている配光パターン)を照射するランプユニットであって、光源5と、リフレクタ8と、レンズ11と、シェード14と、ヒートシンク部材17と、から構成されている。前記第1ランプユニット2の光軸Z1−Z1は、車両の進行軸(図示せず)と平行(ほぼ平行も含む)である。
【0019】
真ん中に配置されている第2ランプユニット3は、前記集光タイプの配光パターンSPを含有する第1拡散タイプの配光パターンWP1(図8中の中間の実線で図示されている配光パターン)を照射するランプユニットであって、光源6と、リフレクタ9と、レンズ12と、シェード15と、ヒートシンク部材17と、から構成されている。前記第2ランプユニット3の光軸Z2−Z2は、車両の進行軸および前記第1ランプユニット2の光軸Z1−Z1と平行(ほぼ平行も含む)である。
【0020】
車両の一番左側、すなわち、車両の幅方向の一番内側に配置されている第3ランプユニット4は、前記集光タイプの配光パターンSPおよび前記第1拡散タイプの配光パターンWP1を含有する第2拡散タイプの配光パターンWP2(図8中の外側の実線で図示されている配光パターン)を照射するランプユニットであって、光源7と、リフレクタ10と、レンズ13と、シェード16と、ヒートシンク部材17と、から構成されている。前記第3ランプユニット4の光軸Z3−Z3は、車両の幅方向の外側、すなわち、右側に向いている。
【0021】
前記集光タイプの配光パターンSPは、図8に示すように、走行斜線側の上水平カットオフラインCL1と、対向車線側の下水平カットオフラインCL2と、前記上水平カットオフラインCL1と前記下水平カットオフラインCL2との間の斜めカットオフラインCL3と、前記下水平カットオフラインCL2と前記斜めカットオフラインCL3との交点のエルボー点Eと、を有し、高光度帯を形成する。
【0022】
前記第1拡散タイプの配光パターンWP1は、図8に示すように、前記集光タイプの配光パターンSPの前記下水平カットオフラインCL2と同レベルもしくは若干下側に位置する水平カットオフラインCL4を有し、中光度帯を形成する。
【0023】
前記第2拡散タイプの配光パターンWP2は、図8に示すように、前記集光タイプの配光パターンSPの前記下水平カットオフラインCL2および前記第1拡散タイプの配光パターンWP1の前記水平カットオフラインCL4と同レベルもしくは若干下側に位置する水平カットオフラインCL5を有し、低光度帯を形成する。前記第3ランプユニット4の光軸Z3−Z3は、車両の幅方向の外側、すなわち、右側に向いているので、前記第2拡散タイプの配光パターンWP2は、前記集光タイプの配光パターンSPおよび前記第1拡散タイプの配光パターンWP1に対して右側に振り向けられている。すなわち、前記第2拡散タイプの配光パターンWP2の右側の拡散幅が左側の拡散幅と比較して広くなっている。
【0024】
前記3個の光源5、6、7は、たとえば、LED、EL(有機EL)などの自発光半導体型光源(この実施例ではLED)の半導体型光源を使用する。前記3個の光源5、6、7は、熱伝導性絶縁基板(たとえば、セラミック)の基板18、19、20と、前記基板18、19、20の一面(上面)に設けられている微小な矩形形状(正方形形状)のLEDチップの発光体(図示せず)と、前記発光体を覆うほぼ半球形状(ドーム形状)の光透過部材(レンズ)21、22、23と、からなるものである。前記3個の光源5、6、7の前記基板18、19、20は、前記ヒートシンク部材17の一面(上面)に固定されている。
【0025】
前記3個のリフレクタ8、9、10は、一体構造をなす。前記3個のリフレクタ8、9、10は、たとえば、樹脂部材や金属性ダイカストなどの熱伝導率が高くかつ光不透過性の材料からなる。前記3個のリフレクタ8、9、10は、同じく一体構造の前記シェード14、15、16に固定されている。前記3個のリフレクタ8、9、10は、前側の部分および下側の部分が開口し、かつ、後側の部分および上側の部分および左右両側の部分が閉塞した中空形状をなす。前記3個のリフレクタ8、9、10のほぼ半ドーム形状の閉塞部の凹内面には、収束型反射面24、25、26が設けられている。
【0026】
前記収束型反射面24、25、26は、楕円を基調とした反射面、たとえば、回転楕円面や楕円を基本とした自由曲面(NURBS曲面)などの反射面(図4、図5、図6の垂直断面が楕円面をなし、かつ、図7の水平断面が放物面ないし変形放物面をなす反射面)からなる。このために、前記収束型反射面24、25、26は、第1焦点F11、F12、F13と第2焦点(水平断面上の焦線、すなわち、上(平面)から見て両端が前記レンズ11、12、13側に位置し中央が前記光源5、6、7側に位置するような湾曲した焦線)F21、F22、F23と、前記光軸Z1−Z1、Z2−Z2、Z3−Z3と、を有する。前記収束型反射面24、25、26の前記第1焦点F11、F12、F13は、前記光源5、6、7の前記発光体(発光部)もしくはその近傍に位置する。
【0027】
前記第1ランプユニット2の前記レンズ(投影レンズ、凸レンズ、集光レンズ)11は、非球面レンズの凸レンズである。前記レンズ11の出射面は、曲率が大きい(曲率半径が小さい)凸非球面をなし、一方、前記レンズ11の入射面は、曲率が小さい(曲率半径が大きい)凸非球面をなす。このようなレンズ11を使用することにより、前記レンズ11の焦点距離が小さくなるので、その分、この実施例における車両用灯具1の前記レンズ11の光軸Z1−Z1方向の寸法がコンパクトとなる。なお、前記レンズ11の前記入射面は、平非球面(平面)をなすものであってもよい。
【0028】
前記レンズ11は、前側焦点(前記光源5、6、7側の焦点)および後側焦点(外部側の焦点)と、前記前側焦点と前記後側焦点とを結ぶ光軸Z1−Z1とを有する。前記収束型反射面24の光軸Z1−Z1と前記レンズ11の光軸Z1−Z1とは、灯具光軸としてほぼ一致する。前記レンズ11の前側焦点は、レンズ焦点(物空間側の焦点面であるメリジオナル像面)である。前記レンズ11の前記レンズ焦点は、前記収束型反射面24の第2焦点F21もしくはその近傍に位置する。前記レンズ11は、前記集光タイプの配光パターンSPを車両の前方に照射(投影)するものである。
【0029】
前記第2ランプユニット3の前記レンズ12および前記第3ランプユニット4の前記レンズ13は、円柱面の軸が車両の幅方向(水平方向)にあるシリンドリカルレンズである。前記レンズ12、13の出射面は、曲率が大きい(曲率半径が小さい)凸非球面をなし、一方、前記レンズ12、13の入射面は、曲率が小さい(曲率半径が大きい)凸非球面をなす。このようなレンズ12、13を使用することにより、前記レンズ12、13の焦点距離が小さくなるので、その分、この実施例における車両用灯具1の前記光軸Z2−Z2、Z3−Z3方向の寸法がコンパクトとなる。なお、前記レンズ12、13の前記入射面は、平非球面(平面)をなすものであってもよい。
【0030】
前記レンズ12、13は、前側焦線(前記光源5、6、7側の焦線)および後側焦線(外部側の焦線)を有する。前記レンズ12、13の前側焦点は、前記収束型反射面25、26の第2焦点F22、F23もしくはその近傍に位置する。前記レンズ12、13は、前記第1拡散タイプの配光パターンWP1、前記第2拡散タイプの配光パターンWP2を車両の前方に照射(投影)するものである。
【0031】
前記3個の光源5、6、7から放射される光は、高い熱を持たないので、前記3個のレンズ11、12、13として樹脂製のレンズを使用することができる。前記3個のレンズ11、12、13は、PC材、PMMA材、PCO材などの樹脂製のレンズからなるものである。前記3個のレンズ11、12、13は、結合部を介して一体に構成されている。前記3個のレンズ11、12、13は、同じく一体構造をなす前記3個のシェード14、15、16に固定されている。
【0032】
前記第1ランプユニット2の前記レンズ11と前記第2ランプユニット3の前記レンズ12とを一体に結合する前記結合部、および、前記第2ランプユニット3の前記レンズ13と前記第3ランプユニット4の前記レンズ13とを一体に結合する前記結合部、および、前記第3ランプユニット4の前記レンズ13の端部には、それぞれ配光制御兼光拡散部27、28、29が設けられている。
【0033】
前記配光制御兼光拡散部27、28、29は、前記レンズ11、12、13の出射面側に設けられている。前記配光制御兼光拡散部27、28、29は、数条この例では4条のいわゆる縦かまぼこ形状のプリズム、すなわち、図7に示すように、水平断面(横断面)がほぼ半円形をなすプリズムからなる。
【0034】
前記第2ランプユニット3の前記レンズ12の両側の前記配光制御兼光拡散部27、28は、前記第2ランプユニット3の前記収束型反射面25からの反射光を配光制御して第1補助拡散配光パターンWP3(図8中の中央側の点線で図示されている配光パターン)として前記第1拡散タイプの配光パターンWP1の左右両端部に照射するものである。また、前記第3ランプユニット4の前記レンズ13の両側の前記配光制御兼光拡散部28、29は、前記第3ランプユニット4の前記収束型反射面26からの反射光を配光制御して第2補助拡散配光パターンWP4(図8中の外側の点線で図示されている配光パターン)として前記第2拡散タイプの配光パターンWP2の左右両端部に照射するものである。
【0035】
前記3個のシェード14、15、16は、一体構造をなす。前記3個のシェード14、15、16は、前記リフレクタ8、9、10と同様に、たとえば、樹脂部材や金属性ダイカストなどの熱伝導率が高くかつ光不透過性の材料からなる。前記3個のシェード14、15、16は、前記ヒートシンク部材17に固定されている垂直部と、前記垂直部のほぼ中央から前側に一体に延設されている水平部と、から構成されている。
【0036】
前記3個のシェード14、15、16の前記水平部の一面(上面)には、前記3個の光源5、6、7と前記3個のリフレクタ8、9、10とがそれぞれ固定されている。前記3個のシェード14、15、16の前記水平部の角(上面と前面とのなす角)には、エッジ30、31、32がそれぞれ設けられている。前記エッジ30、31、32は、前記収束型反射面24、25、26の第2焦点F21、F22、F23もしくはその近傍、あるいは、前記レンズ11、12、13のレンズ焦点もしくはその近傍に位置する。
【0037】
前記第1ランプユニット2の前記シェード14の前記水平部および前記エッジ30は、前記光源5から放射されて前記収束型反射面24で反射された反射光の一部をカットオフして残りの反射光で、前記集光タイプの配光パターンSPおよび前記上水平カットオフラインCL1および前記下水平カットオフラインCL2および前記斜めカットオフラインCL3および前記エルボー点E、を形成するものである。
【0038】
前記第2ランプユニット3の前記シェード15の前記水平部および前記エッジ31は、前記光源6から放射されて前記収束型反射面25で反射された反射光の一部をカットオフして残りの反射光で、前記第1拡散タイプの配光パターンWP1および前記水平カットオフラインCL4を形成するものである。
【0039】
前記第3ランプユニット4の前記シェード16の前記水平部および前記エッジ32は、前記光源7から放射されて前記収束型反射面26で反射された反射光の一部をカットオフして残りの反射光で、前記第2拡散タイプの配光パターンWP2および前記水平カットオフラインCL5を形成するものである。
【0040】
前記3個のシェード14、15、16の前記水平部の左右両側には、前記3個のレンズ11、12、13がホルダ33を介して固定されている。前記3個のシェード14、15、16の前記水平部には、前記水平部でカットオフされた前記収束型反射面24、25、26からの反射光の一部を前記レンズ11、12、13側に反射させて補助配光パターンたとえばオーバーヘッドサイン用の配光パターン(図示せず)を形成する付加反射面(図示せず)を設けても良い。
【0041】
前記ヒートシンク部材17は、たとえば、樹脂や金属性ダイカストなどの熱伝導率が高い材料からなる。前記ヒートシンク部材17は、前側の部分が垂直の平板形状をなし、中間部から後側の部分にかけて縦形のフィン形状をなす。前記ヒートシンク部材17の前側の部分が前記3個のシェード14、15、16の垂直部に固定されている。
【0042】
この実施例における車両用灯具1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0043】
まず、車両用灯具1の光源5、6、7の発光体を点灯発光させる。すると、光源5、6、7の発光体から光L1、L2、L3が放射される。この光源5、6、7の発光体から放射される光L1、L2、L3は、収束型反射面24、25、26で反射される。この反射光L1、L2、L3が収束型反射面24、25、26の第2焦点F21、F22、F23に収束(集中)する。第2焦点F21、F22、F23に収束(集中)する反射光L1、L2、L3の一部は、シェード14、15、16によりカットオフされる。一方、シェード14、15、16によりカットオフされなかった反射光L1、L2、L3の残りは、集光タイプの配光パターンSP、および、第1拡散タイプの配光パターンWP1、および、第2拡散タイプの配光パターンWP2、および、第1補助拡散配光パターンWP3、および、第2補助拡散配光パターンWP4として車両の前方に照射される。
【0044】
すなわち、図8に示すように、第1ランプユニット2のレンズ11からは、高光度の集光タイプの配光パターンSPがスクリーンの中央部に照射される。また、第2ランプユニット3のレンズ12からは、集光タイプの配光パターンSPを含有する中光度の第1拡散タイプの配光パターンWP1が照射される。さらに、第3ランプユニット4のレンズ13からは、集光タイプの配光パターンSPおよび第1拡散タイプの配光パターンWP1を含有し、かつ、右側の拡散幅が左側の拡散幅と比較して広くなっている低光度の第2拡散タイプの配光パターンWP2が照射される。さらにまた、第2ランプユニット3のレンズ12の両側の配光制御兼光拡散部27、28からは、配光制御された第1補助拡散配光パターンWP3が第1拡散タイプの配光パターンWP1の左右両端部に照射される。さらにまた、第3ランプユニット4のレンズ13の両側の配光制御兼光拡散部28、29からは、配光制御された第2補助拡散配光パターンWP4が第2拡散タイプの配光パターンWP2の左右両端部に照射される。このようにして、車両の前方の路面など(車道、歩道、他の車両、歩行者、交通標識、建物など)を照明することができる。
【0045】
図8に示す集光タイプの配光パターンSP、および、第1拡散タイプの配光パターンWP1、および、第2拡散タイプの配光パターンWP2、および、第1補助拡散配光パターンWP3、および、第2補助拡散配光パターンWP4は、車両の前部の右側に装備されるこの実施例における車両用灯具1から照射される配光パターンである。車両の前部の左側に装備される車両用灯具から照射される配光パターンは、図9に示すように、図8に示す配光パターンを左右逆にした配光パターンである。そして、車両の前部の右側に装備されるこの実施例における車両用灯具1から照射される配光パターンと、車両の前部の左側に装備される車両用灯具から照射される配光パターンとを合成すると、図10に示す配光パターン、すなわち、すれ違い用の配光パターンが得られる。
【0046】
この実施例における車両用灯具1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0047】
この実施例における車両用灯具1は、レンズ11、12、13同士の結合部の配光制御兼光拡散部27、28、29から拡散光が配光制御された第1補助拡散配光パターンWP3および第2補助拡散配光パターンWP4として照射される。このために、この実施例における車両用灯具1は、レンズ11、12、13同士の結合部の配光制御兼光拡散部27、28、29から照射される拡散光を第1補助拡散配光パターンWP3および第2補助拡散配光パターンWP4として配光制御することができる。また、この実施例における車両用灯具1は、第2ランプユニット3により形成される第1拡散配光パターンWP1と第3ランプユニット4により形成される第2拡散配光パターンWP2との間の境に、および、第3ランプユニット4により形成される外側の第2拡散配光パターンWP2と光が無い部分との間の境に、第1補助拡散配光パターンWP3および第2補助拡散配光パターンWP4を照射することができる。この結果、この実施例における車両用灯具1は、第1補助拡散配光パターンWP3および第2補助拡散配光パターンWP4により、第2ランプユニット3により形成される第1拡散配光パターンWP1と第3ランプユニット4により形成される第2拡散配光パターンWP2との間の境における明暗差(光度差、照度差)、および、第3ランプユニット4により形成される外側の第2拡散配光パターンWP2と光が無い部分との間の境における明暗差(光度差、照度差)を小さくすることができるので、配光むらを無くすことができ、配光パターンを精度良く配光制御することができ、その分視認性が向上されて交通安全に貢献することができる。
【0048】
しかも、この実施例における車両用灯具1は、3個のランプユニット2、3、4の3個のレンズ11、12、13が結合部(配光制御兼光拡散部27、28)を介して一体に構成されているので、下記の効果を達成することができる。すなわち、3個のランプユニット2、3、4から照射される3個の配光パターン(集光タイプの配光パターンSP、第1拡散タイプの配光パターンWP1、第2拡散タイプの配光パターンWP2)の相対位置のずれを小さくすることができ、3個の配光パターンの重なり精度を向上させることができる。また、複数個のランプユニット毎にそれぞれ独立した複数個のレンズを組み付ける車両用灯具と比較して、レンズを組み付ける部品点数や組付工程数を軽減することができ、その分、製造コストを安価にすることができ、かつ、重量の軽量化を図ることができる。さらに、複数個のランプユニット毎にそれぞれ独立した複数個のレンズを組み付ける車両用灯具と比較して、レンズを組み付ける部品に必要なスペースを小さくすることができ、その分、複数個のランプユニット2、3、4をレイアウトする際には、必要なスペースを小さくすることができ、小型化を図ることができる。
【0049】
また、この実施例における車両用灯具1は、車両の幅方向の外側の第1ランプユニット2が集光タイプの配光パターンSPを照射し、車両の幅方向の内側の第3ランプユニット4が集光タイプの配光パターンSPを含有する第2拡散タイプの配光パターンWP2であって、車両の幅方向の外側に大きく拡散された第2拡散タイプの配光パターンWP2を照射するものである。この結果、この実施例における車両用灯具1は、車両の幅方向の外側を広く照明することができ、たとえば、路肩などの視認性が向上されて、交通安全に貢献することができる。
【0050】
さらに、この実施例における車両用灯具1は、3個のランプユニット2、3、4の3個のリフレクタ8、9、10が一体構造をなすので、3個のランプユニット2、3、4から照射される3個の配光パターン(集光タイプの配光パターンSP、第1拡散タイプの配光パターンWP1、第2拡散タイプの配光パターンWP2)の相対位置のずれを小さくすることができ、3個の配光パターンの重なり精度を向上させることができる。すなわち、配光パターンを精度良く配光制御することができ、その分視認性が向上されて交通安全に貢献することができる。
【0051】
なお、前記の実施例は、自動車用前照灯のヘッドランプについて説明するものである。ところが、この発明においては、自動車用前照灯のヘッドランプ以外の車両用灯具、たとえば、フォグランプ、カーブランプ、ベンディングランプ、などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 車両用灯具
2 第1ランプユニット
3 第2ランプユニット
4 第3ランプユニット
5 第1ランプユニットの光源
6 第2ランプユニットの光源
7 第3ランプユニットの光源
8 第1ランプユニットのリフレクタ
9 第2ランプユニットのリフレクタ
10 第3ランプユニットのリフレクタ
11 第1ランプユニットのレンズ
12 第2ランプユニットのレンズ
13 第3ランプユニットのレンズ
14 第1ランプユニットのシェード
15 第2ランプユニットのシェード
16 第3ランプユニットのシェード
17 ヒートシンク部材
18、19、20 基板
21、22、23 光透過部材
24 第1ランプユニットの収束型反射面
25 第2ランプユニットの収束型反射面
26 第3ランプユニットの収束型反射面
27、28、29 配光制御兼光拡散部
F 前
B 後
U 上
D 下
L 左
R 右
HL−HR スクリーンの左右の水平線
VU−VD スクリーンの上下の垂直線
Z1−Z1 第1ランプユニットの光軸
Z2−Z2 第2ランプユニットの光軸
Z3−Z3 第3ランプユニットの光軸
F11 第1ランプユニットの収束型反射面の第1焦点
F21 第1ランプユニットの収束型反射面の第2焦点
F12 第2ランプユニットの収束型反射面の第1焦点
F22 第2ランプユニットの収束型反射面の第2焦点
F13 第3ランプユニットの収束型反射面の第1焦点
F23 第3ランプユニットの収束型反射面の第2焦点
SP 集光タイプの配光パターン
WP1 第1拡散タイプの配光パターン
WP2 第2拡散タイプの配光パターン
WP3 第1補助拡散配光パターン
WP4 第2補助拡散配光パターン
E エルボー点
CL1 上水平カットオフライン
CL2 下水平カットオフライン
CL3 斜めカットオフライン
CL4 水平カットオフライン
CL5 水平カットオフライン
L1 第1ランプユニットからの光
L2 第2ランプユニットからの光
L3 第3ランプユニットからの光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のランプユニットから構成されている車両用灯具において、
前記複数個のランプユニットは、光源と、前記光源からの光を反射させるリフレクタと、前記リフレクタからの反射光を所定の方向に所定の配光パターンで外部に照射するレンズと、をそれぞれ備え、
前記複数個のランプユニットの前記複数個のレンズは、結合部を介して一体に構成されていて、
前記レンズと前記レンズとを一体に結合する前記結合部には、配光制御兼光拡散部が設けられている、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記複数個のランプユニットは、車両の幅方向の外側から内側にかけて配置されていて、
車両の幅方向の外側の前記ランプユニットは、集光タイプの配光パターンを照射し、
車両の幅方向の内側の前記ランプユニットは、前記集光タイプの配光パターンを含有する拡散タイプの配光パターンを照射し、
車両の幅方向の内側の前記ランプユニットの光軸は、車両の幅方向の外側に向いている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記複数個のランプユニットの前記複数個のリフレクタは、一体構造をなす、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−218964(P2010−218964A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66579(P2009−66579)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】