車両用灯具
【課題】部品点数の削減と光の利用効率の向上とを図れるようにする。
【解決手段】車両用灯具1が、バルブ10と、バルブ10の前に配置され、バルブ10との間に焦点F1を設定した投影レンズ20と、投影レンズ20の後方に配置され、バルブ10からの光を投影レンズ20へ反射させ、その反射光を投影レンズ20の焦点F1の近傍に集光させる第一の反射面31と、第一の反射面31から投影レンズ20に向かう反射光の一部を遮光するシェード60と、シェード60の後面68に設けられ、第一の反射面31から投影レンズ20に向かう反射光の一部を下方に反射させる第二の反射面70と、シェード60の下方に配置され、第二の反射面70によって反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を投影レンズ20の下を通って前方に投射する第三の反射面41と、を備える。
【解決手段】車両用灯具1が、バルブ10と、バルブ10の前に配置され、バルブ10との間に焦点F1を設定した投影レンズ20と、投影レンズ20の後方に配置され、バルブ10からの光を投影レンズ20へ反射させ、その反射光を投影レンズ20の焦点F1の近傍に集光させる第一の反射面31と、第一の反射面31から投影レンズ20に向かう反射光の一部を遮光するシェード60と、シェード60の後面68に設けられ、第一の反射面31から投影レンズ20に向かう反射光の一部を下方に反射させる第二の反射面70と、シェード60の下方に配置され、第二の反射面70によって反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を投影レンズ20の下を通って前方に投射する第三の反射面41と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロジェクタ型車両用灯具では、シェードの上縁が投影レンズの焦点近傍に配置され、バルブが楕円面系リフレクタの第一焦点近傍に配置され、楕円面系リフレクタの第二焦点が投影レンズの焦点近傍に配置されている。バルブから発した光が楕円面系リフレクタによって前方に反射され、その反射光の一部がシェードによって遮光され、遮光されない反射光が投影レンズによって前方に投影される。反射光の一部がシェードによって遮光されることによって、略水平な明暗境界線を有する配光パターンが前方に形成され、明暗境界線よりも上向きの光がない。これにより、すれ違い走行用の配光パターンが形成され、対向車にとってはグレアの発生を抑えることができる。
【0003】
しかし、反射光がシェードによって遮光されるから、バルブから発した光の利用効率が悪い。そのため、光の利用効率を高めたプロジェクタ型車両用灯具が開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、楕円面系リフレクタ(12)の上斜め前に、反射面(15)が設けられ、その反射面(15)の下方に反射面(16)が設けられ、その反射面(16)の下方に反射面(17)が設けられている。この文献の技術によれば、バルブ(11)から上斜め前に発した光が楕円面系リフレクタ(12)に入射せずに、反射面(15)によって反射され、その反射光が反射面(16)、反射面(17)によって順に反射され、前方斜め横に投射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−331617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記文献の技術では、楕円面系リフレクタ(12)に入射しない光が反射面(15)によって反射されるだけであって、シェード(14)によって遮光される光が有効利用されていない。そのため、光の利用効率が充分に高いものとはいえなかった。また、楕円面系リフレクタ(12)のほかに三つの反射面(15,16,17)を設ける必要があることから、部品点数が増えてしまい、コストアップを招いてしまう。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、部品点数の削減と光の利用効率の向上とを図れるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明に係る車両用灯具は、バルブと、前記バルブの前方に配置され、その光軸が前後方向に設定されるとともにその焦点が前記バルブとの間に設定された投影レンズと、前記投影レンズの後方に配置され、前記バルブからの光を前記投影レンズに向けて反射させ、その反射光を前記投影レンズの焦点又はその近傍に集光させる第一の反射面と、前記投影レンズの焦点又はその近傍に上縁を有し、前記第一の反射面から前記投影レンズに向かう反射光の一部を遮光するシェードと、前記シェードの後面に設けられ、前記第一の反射面から前記投影レンズに向かう反射光の一部を前記投影レンズの光軸の径外方向に反射させる第二の反射面と、前記シェードから前記投影レンズの光軸の径外方向に離れた位置に配置され、前記第二の反射面によって反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を前記投影レンズの周囲を通じて前方に投射する第三の反射面と、を備えることとした。
【0007】
好ましくは、前記第二の反射面が、前記第一の反射面から前記投影レンズに向かう反射光の一部を下方に反射させ、前記第三の反射面が、前記シェードの下方に配置されているとともに、前記第二の反射面によって反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を前記投影レンズの下方を通じて前方に投射することとした。
【0008】
好ましくは、前記シェードが、その上縁が前記投影レンズの焦点又はその近傍に位置した遮光位置と、その上縁が前記投影レンズの焦点から下方に離れた退避位置との間を移動可能に設けられていることとした。
【0009】
好ましくは、前記車両用灯具が、前記シェードを前記遮光位置から前記退避位置へ及びその逆に駆動する駆動機構を更に備えることとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第二の反射面がシェードに設けられているから、第二の反射面用の部品を別途準備しなくても済み、車両用灯具の構成部品を削減することができるとともに、コストダウンを図ることができる。
シェードで遮光される光が第二の反射面によって光軸の径外方向に反射され、その反射光が第三の反射面によって前方に投射される。そのため、バルブから発した光の利用効率を高めることができ、明るい配光パターンを得ることができる。
第二の反射面がシェードの後面に設けられ、そのシェードが投影レンズの焦点近傍に配置され、第一の反射面による反射光がその第一の反射面によって投影レンズの焦点又はその近傍に集光させるから、第二の反射面の面積が小さくとも、大光量の光を第二の反射面で反射することができる。第二の反射面が狭くて済むので、車両用灯具を小型化に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用灯具の前方斜視図である。
【図2】同実施形態における車両用灯具の断面図である。
【図3】同実施形態におけるシェードの前方斜視図である。
【図4】同実施形態におけるシェードの後方斜視図である。
【図5】同実施形態における車両用灯具によって仮想スクリーンに形成されるすれ違い走行用の配光パターンを示した図である。
【図6】本発明の第2実施形態における車両用灯具の前方斜視図である。
【図7】同実施形態における車両用灯具の断面図である。
【図8】同実施形態における車両用灯具の断面図である。
【図9】同実施形態における車両用灯具によって仮想スクリーンに形成される走行用の配光パターンを示した図である。
【図10】変形例における車両用灯具の断面図である。
【図11】変形例における車両用灯具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、それぞれ、車両用灯具が装備された車両の「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」である。従って、後ろから前に向かって見て、左右の向きを定める。
【0013】
〔第1の実施の形態〕
図1は、車両用灯具1の前方斜視図である。図2は、光軸Axを通る鉛直断面に沿った断面図である。
この車両用灯具1は、前照灯として用いられるものである。この車両用灯具1は、バルブ10、投影レンズ20、楕円面系リフレクタ30、放物面系リフレクタ40、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50、シェード60及び反射面70等を備える。これら投影レンズ20、楕円面系リフレクタ30、放物面系リフレクタ40、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50及びシェード60がハウジング(図示略)に取り付けられて、これらバルブ10、投影レンズ20、楕円面系リフレクタ30、放物面系リフレクタ40、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50及びシェード60がユニット化されている。なお、図1では、シェード60を詳細に図示するため、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50の図示を省略する。
【0014】
投影レンズ20は、凸レンズである。この投影レンズ20の光軸Axが前後方向に延び、投影レンズ20の焦点F1が投影レンズ20の後方に設定されている。投影レンズ20の後方に、バルブ10、楕円面系リフレクタ30、放物面系リフレクタ40、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50、シェード60が配置されている。
【0015】
バルブ10は、放電灯(例えば、高輝度放電灯(HID)、高圧金属蒸気放電灯等)、ハロゲン電球、白熱電球その他のバルブである。バルブ10は、そのガラス管11の長手方向が光軸Axの方向(前後方向)になるように配置されている。バルブ10の発光部12が、投影レンズ20の焦点F1の後方に配置されている。発光部12とは、バルブ10が放電灯である場合には発光管(放電部)であり、バルブ10がハロゲン電球、白熱電球等である場合にはフィラメントである。なお、バルブ10のガラス管11の長手方向が光軸Axに対して交差するようにバルブ10が配置されていてもよい。例えば、ガラス管11の長手方向が左右方向になるように、バルブ10が横置きに配置されていてもよい。
【0016】
楕円面系リフレクタ30が略椀状に設けられ、その楕円面系リフレクタ30が前方に向けて開口している。楕円面系リフレクタ30の内面31が、第一の反射面31とされている。第一の反射面31は、バルブ10の発光部12から発した光を前方の投影レンズ20に向けて反射させて、投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に集光させるものである。
【0017】
第一の反射面31は、楕円面の形状に形成されている。楕円面とは、前後方向に延びた中心軸を回転軸とした回転楕円面若しくは扁平楕円面又はこれらを基調とした自由曲面をいう。扁平楕円面とは、前後方向に延びた中心軸を回転軸とした回転楕円面が上下又は左右につぶれたものをいう。また、第一の反射面31は、これらの回転楕円面、扁平楕円面又は自由曲面を組み合わせた複合楕円面であってもよい。
【0018】
より好ましくは、楕円面系リフレクタ30は、以下のように設けられている。即ち、楕円面系リフレクタ30は、上部リフレクタ32と、下部リフレクタ34とを有する。上部リフレクタ32は、バルブ10の発光部12の後ろから発光部12の上斜め前・右上斜め前・左上斜め前にかけて発光部12を囲うように略ドーム状に設けられている。下部リフレクタ34は、発光部12の後ろから発光部12の下斜め前・右下斜め前・左下斜め前にかけて発光部12を囲うように略逆ドーム状に設けられている。
【0019】
上部リフレクタ32の内面33が上部反射面とされ、下部リフレクタ34の内面35が下部反射面とされている。上部反射面33と下部反射面35の組合せが、第一の反射面31である。上部反射面33は、前後方向に延びた中心軸を回転軸とした回転楕円面を上下につぶして左右に拡げた扁平楕円面であるか、又は、その扁平楕円面を基調とした自由曲面である。下部反射面35は、前後方向に延びた中心軸を回転軸とした回転楕円面であるか、又は、その回転楕円面を基調とした自由曲面である。ここで、上部反射面33の上下方向の扁平度は下部反射面35の上下方向の扁平度よりも大きく、上部反射面33が下部反射面35よりも左右に拡がるよう設けられている。
【0020】
上部反射面33の後側焦点(第一焦点)F31が上部リフレクタ32の内側に設定され、その後側焦点F31よりも前方に上部反射面33の前側焦点(第二焦点)F32が設定されている。下部反射面35の後側焦点(第一焦点)F51が下部リフレクタ34の内側に設定され、その後側焦点F51よりも前方に下部反射面35の前側焦点(第二焦点)F52が設定されている。上部反射面33が扁平楕円面又はそれを基調とした自由曲面に形成されているので、前側焦点F32は、水平左右方向に延びるとともに、後ろに凸となるよう湾曲した焦線である。下部反射面35の前側焦点F52は、水平左右方向に延びるとともに、後ろに凸となるよう湾曲した焦線であってもよい。
【0021】
上部反射面33及び下部反射面35の後側焦点F31,F51は、バルブ10の発光部12又はその近傍に位置している。好ましくは、上部反射面33の後側焦点F31と下部反射面35の後側焦点F51が重なっており、更に好ましくは、後側焦点F31,F51が発光部12に重なっている。
【0022】
上部反射面33及び下部反射面35の前側焦点F32,F52が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に位置している。好ましくは、上部反射面33の前側焦点F32が投影レンズ20の焦点F1よりも前方であって投影レンズ20よりも後方に位置しており、下部反射面35の前側焦点F52が上部反射面33の前側焦点F32よりも投影レンズ20の焦点F1の近くに位置している。更に好ましくは、下部反射面35の前側焦点F52が投影レンズ20の焦点F1よりも前方であって投影レンズ20よりも後方に位置している。
【0023】
以上のように、第一の反射面31が上部反射面33と下部反射面35の複合楕円面であるから、第一の反射面31の前側焦点(第二焦点)が前側焦点F32,F52として現れる。上部反射面33は、発光部12から発した光を前方の投影レンズ20に向けて反射させ、その反射光を前側焦点F32に集光させる。下部反射面35は、発光部12から発した光を前方の投影レンズ20に向けて反射させ、その反射光を前側焦点F52に集光させる。なお、第一の反射面31が上部反射面33と下部反射面35の複合楕円面でなく、単一の楕円面である場合には、第一の反射面31の後側焦点(第一焦点)がバルブ10の発光部12又はその近傍に位置し、第一の反射面31の前側焦点が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に位置している。
【0024】
シェード60は、バルブ10と投影レンズ20との間に配置されている。このシェード60は、第一の反射面31によって反射されて投影レンズ20に向かう反射光の一部を投影レンズ20の焦点F1又はその近傍で遮光して、明暗境界線を有する配光パターンを形成するものである。
【0025】
図3は、シェード60の前方斜視図であり、図4は、シェード60の後方斜視図である。図1〜図4に示すように、シェード60が板状に設けられ、そのシェード60が立てた状態に設けられている。具体的には、シェード60の下部61が鉛直に立てられており、シェード60の上部62が下部61の上端から後ろ上がりに傾斜している。シェード60の前面63の左右中央部は、投影レンズ20の像面の湾曲に対応して、後ろに向かって凹むよう湾曲している。シェード60の上縁64が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に位置するように、シェード60が投影レンズ20とバルブ10との間に配置されている。
【0026】
シェード60の上縁64のうち光軸Axよりも左の部分65(以下、左部上縁65という。)が水平に形成され、光軸Axよりも右の部分66(以下、右部上縁66という。)が水平に形成され、左部上縁65と右部上縁66の間に段差があり、左部上縁65と右部上縁66の間の部分67(以下、傾斜部67という。)が水平方向に対して傾斜している。傾斜部67の傾斜角は、水平面に対して15°又は45°であることが好ましい。
【0027】
シェード60の上縁64のうち光軸Axよりも自車線側の部分が対向車線側の部分よりも高く設定されている。具体的には、車両用灯具1が左側通行用である場合、左部上縁65が右部上縁66よりも上に位置し、傾斜部67が右下りに傾斜している。図1〜図4では、シェード60が左側通行用として示されている。一方、車両用灯具1が右側通行用である場合、シェード60の右部上縁66が左部上縁65よりも上に位置し、傾斜部67が左下りに傾斜している。
なお、左部上縁65と右部上縁66の上下位置が揃っていて、傾斜部67が無くてもよい。
【0028】
シェード60の後面68の上部であってその左右中央部には、第二の反射面70が形成されている。この第二の反射面70は、後ろ斜め下に向いている。この第二の反射面70は、後ろから見て、シェード60の上縁64に沿って左右に長尺な帯状に設けられている。第二の反射面70は、平面であってもよいし、曲面(例えば、凸面、凹面、シリンドリカル面、球面)であってもよいし、その平面又は曲面を基調とした自由曲面(非球面)であってもよい。
【0029】
第二の反射面70は、第一の反射面31によって反射されて投影レンズ20に向かう反射光の一部を下方に反射させる。具体的には、第二の反射面70は、下部反射面35によって反射された反射光の殆どを後ろ斜め下に反射させ、下部反射面35の前側焦点F52を第二の反射面70の後ろ斜め下の焦点F53に変換する。つまり、下部反射面35と第二の反射面70からなる光学系の焦点F53が光軸Axの下方に設定され、第一の反射面31の反射光の一部が焦点F53に集光する。
【0030】
図1、図2に示すように、放物面系リフレクタ40は、シェード60及び第二の反射面70の下方に配置されている。放物面系リフレクタ40と楕円面系リフレクタ30は、一体化されている。具体的には、放物面系リフレクタ40が下部リフレクタ34の前端から下斜め前に垂下し、放物面系リフレクタ40の上端と下部リフレクタ34の前端が連接している。第三の反射面41は、投影レンズ20よりも後ろに配置されている。また、第三の反射面41は、正面から見て、投影レンズ20から下にずれて配置されている。
放物面系リフレクタ40の前側内面41が、第三の反射面とされている。第三の反射面41は、放物面の形状に形成されている。放物面とは、前後方向に延びた中心軸を回転軸とした回転放物面又はこれを基調とした自由曲面である。第三の反射面41の焦点は、投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に設定されている。好ましくは、第三の反射面41の焦点が、投影レンズ20の焦点F1よりも僅か後方に、且つ、光軸Axよりも下方に設定されている。更に好ましくは、第三の反射面41の焦点が、下部反射面35と第二の反射面70からなる光学系の焦点F53に重なっている。
【0031】
第三の反射面41は、第二の反射面70によって下方に反射された反射光を前方に向けて反射させる。第三の反射面41によって反射された反射光は、投影レンズ20の下を通って前方に投射される。
【0032】
オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50は、シェード60の前側に配置されている。オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50は、シェード60によって遮光されなかった反射光の一部を投影レンズ20に向けて上に反射させ、オーバヘッドサイン配光を形成するものである。
【0033】
図5を参照して、車両用灯具1の配光特性について説明する。図5は、車両用灯具1から前方に所定距離離れた仮想スクリーンに形成される配光パターンを示したものである。図5において横軸は、光軸Axと仮想スクリーンの交点をゼロ°として左右の角度を表し、縦軸は、光軸Axと仮想スクリーンの交点をゼロ°として上下の角度を表す。
【0034】
バルブ10に給電されて、発光部12が発光する。そうすると、発光部12から発した光が第一の反射面31によって前方に反射され、その反射光の一部がシェード60によって遮光される。シェード60によって遮光されずにシェード60の上を通過した反射光は、投影レンズ20に入射して、投影レンズ20の前方に投射される。シェード60によって遮光されるから、図5に示すような配光パターンP1が、仮想スクリーンに形成される。配光パターンP1は、光軸Axを通る水平面と仮想スクリーンとの交線(光軸Axを中心にして上下方向にゼロ°の線)に沿ったカットオフライン(明暗境界線)C1を明部の上縁に有するものである。配光パターンP1の明部の形成に寄与する光は、主に、発光部12から上に向かって発して上部反射面33で反射される光である(図2に示す光ビームB1参照)。なお、バルブ10がHIDである場合、発光部12から上に発する光は白色光であるから、配光パターンP1の明部が白色となる。
【0035】
シェード60によって遮光されずにシェード60の上を通過した反射光がオーバヘッドサイン配光用リフレクタ50によって反射され、その反射光が投影レンズ20によって光軸Axを通る水平面より上に投射される。そのため、図5に示すような、オーバヘッドサイン配光パターンP3が仮想スクリーンに形成される。
【0036】
また、第一の反射面31による反射光の一部が、第二の反射面70によって下方の第三の反射面41に向けて反射される。第二の反射面70による反射光が第三の反射面41によって前方に反射され、その反射光が第三の反射面41によって略平行光になる。第三の反射面41による反射光は、投影レンズ20の下を通って前方に投射される。そのため、図5に示すような、配光パターンP2が仮想スクリーンに形成される。配光パターンP2の明部の照射範囲は、光軸Axを通る水平面よりも下である。配光パターンP2の明部が配光パターンP1の明部に重なる。配光パターンP1と配光パターンP2との組合せによってすれ違い走行用の配光パターンが得られる。なお、左右方向の照射範囲は、配光パターンP1の明部の方が配光パターンP2の明部よりも広い。
【0037】
配光パターンP2の明部の形成に寄与する光は、主に、発光部12から下に向かって発して下部反射面35で反射される光である(図2に示す光ビームB2参照)。また、上部反射面33による反射光の一部も第二の反射面70によって下方に反射されるから、その光も配光パターンP2の明部の形成に寄与する(図2に示す光ビームB3参照)。上部反射面33による反射光の多くがシェード60の上を通過するから、上部反射面33の反射光よりも下部反射面35の反射光の方が配光パターンP2の明部の形成に、より寄与する。なお、バルブ10がHIDである場合、発光部12から下に発する光が黄色光であるから、配光パターンP2の明部が黄色となる。
【0038】
本実施形態によれば、第二の反射面70がシェード60の後面に形成されている。シェード60は第一の反射面31の前側焦点(前側焦点F32,F52)の近傍に配置されているから、第一の反射面31によって集光された反射光が第二の反射面70に入射する。そのため、第二の反射面70の面積が小さくとも、大光量の光を第二の反射面70で反射することができる。第二の反射面70が狭くて済むので、車両用灯具1の小型化に貢献することができる。
【0039】
また、第二の反射面70がバルブ10と投影レンズ20の間に配置されているから、車両用灯具1の大型化を抑えることができる。
【0040】
また、第二の反射面70がシェード60に形成されているから、第二の反射面70用に別途リフレクタを必要としない。そのため、車両用灯具1の構成部品を削減することができ、コストダウンを図ることができる。
【0041】
また、本来シェード60で遮光される光が第二の反射面70によって下方に反射され、その反射光がすれ違い走行用の配光パターンに用いられる。そのため、発光部12の光束利用効率が向上する。
【0042】
また、第一の反射面31による反射光が第二の反射面70によって下方の第三の反射面41に向けて反射されるため、第三の反射面41と第二の反射面70との距離が短くても、第三の反射面41による反射光が投影レンズ20やそのレンズホルダ等に干渉されずに、第三の反射面41による反射光の照射範囲を、光軸Axを通る水平面よりも下にすることができる(図5参照)。そして、第三の反射面41と第二の反射面70の距離を短くすることができるから、車両用灯具1の上下方向の大きさを小さくすることができる。
【0043】
また、配光パターンP2の明部が配光パターンP1の明部に重なっているから、明るい配光が得られ、前方視認性が向上する。特に、バルブ10がHIDである場合、黄色の明部(配光パターンP2の明部)が白色の明部(配光パターンP1の明部)に重なるから、色ムラの発生を抑えることができる。
【0044】
〔第2の実施の形態〕
図6は、車両用灯具1Aの前方斜視図である。図7,8は、光軸Axを通る鉛直断面に沿った断面図である。なお、図6〜図8では、図面を見やすくするために、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50の図示を省略する。
【0045】
第2実施形態における車両用灯具1Aと、第1実施形態における車両用灯具1との間で互いに対応する部分には同一の符号を付す。以下、第2実施形態における車両用灯具1Aと、第1実施形態における車両用灯具1との間で互いに対応する部分が同一に設けられている場合には、その説明を省略し、相違点について説明する。
【0046】
第1実施形態では、シェード60が立てた状態で固定されており、第二の反射面70の位置が一定であった。それに対して、第2実施形態では、走行用(ハイビーム用)の配光パターンを形成すべく、シェード60は、その上縁64が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍において左右方向に延びた遮光位置と、その上縁64が投影レンズ20の焦点F1から下に離れた退避位置との間で移動可能に設けられている。具体的には、シェード60が以下のように設けられている。即ち、シェード60には、左右に延びた回転軸69が取り付けられている。この回転軸69がハウジング等の固定部材に回転可能に支持され、シェード60が回転軸69を中心に回転可能に設けられている。
【0047】
シェード60が立った状態では、そのシェード60が遮光位置に位置し、シェード60の上縁64が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に位置している。これは、第1実施形態のようにシェード60が固定されている場合と同様である。一方、シェード60が回転軸69を中心に後ろに倒伏した状態では、そのシェード60が退避位置に位置し、シェード60の上縁64が投影レンズ20の焦点F1から後ろ斜め下に離れている。
【0048】
この車両用灯具1Aには、駆動機構80が設けられている。駆動機構80は、シェード60を遮光位置から退避位置に及びその逆に駆動するものである。駆動機構80は、ソレノイド81及びアーム83を有する。ソレノイド81は、ハウジング等の固定部材に取り付けられているとともに、下部リフレクタ34の下方に配置されている。ソレノイド81は、そのプランジャ82が前に向くように配置されている。ソレノイド81は、プランジャ82を前後に進出・後退させる。プランジャ82の先端がアームの83の一端に回転可能に連結されている。アーム83の他端がシェード60に回転可能に連結されている。
【0049】
以上に説明したことを除いて、第2実施形態における車両用灯具1Aと、第1実施形態における車両用灯具1との間で互いに対応する部分とは、同様に設けられている。
【0050】
シェード60の動作について説明する。
図7に示すように、ソレノイド81のプランジャ82が後ろに引き込んだ状態では、シェード60が遮光位置に位置している。この状態では、図5に示すような配光パターンが仮想スクリーンに形成される。
【0051】
ソレノイド81のプランジャ82が前に引き出ると、シェード60が回転軸69を中心に後ろに倒れる。そして、シェード60が退避位置まで移動すると、ソレノイド81のプランジャ82の引出動作も止まる。
【0052】
図8に示すように、シェード60が退避位置に位置していると、第一の反射面31で反射された反射光が遮光されず、更にその反射光は第二の反射面70にも入射しない。そのため、図9に示すような配光パターンP4が仮想スクリーンに形成される。配光パターンP4は、走行用の配光パターンであって、上下方向ゼロ°の水平面よりも上の中心部に明部Lを有するものである。
【0053】
ソレノイド81のプランジャ82が後ろに引き込むと、シェード60が回転軸69を中心に前に起き上がる。そして、シェード60が遮光位置まで移動すると、ソレノイド81のプランジャ82の引込動作も止まる。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する上、すれ違い走行用の配光と走行用の配光との切替を行うことができる。
【0055】
なお、シェード60を回転させるための動力源がソレノイド81に限るものではなく、モータであってもよいし、ピエゾ素子であってもよいし、その他の動力源であってもよい。例えば、モータの駆動軸を回転軸69に直結してもよいし、モータの駆動軸と回転軸69との間に歯車機構を設けてもよい。
【0056】
〔変形例〕
本発明を適用可能な実施形態は、上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、幾つかの変形例を挙げる。以下に挙げる変形例は、可能な限り組み合わせてもよい。
【0057】
〔変形例1〕
図10に示すように、放物面系リフレクタ40の前側内面の前端部に、オーバヘッドサイン配光用の反射面43を形成してもよい。この反射面43は、第二の反射面70によって反射された反射光を前方であって水平面よりも上に反射させるものである。特に、反射面43は、上部反射面33及び第二の反射面70の両方で反射された反射光を反射させるものである。例えば、この反射面43は、前上がりに前後方向に延びた中心軸を回転軸とした回転放物面又はこれを基調とした自由曲面であって、反射面43の焦点が第二の反射面70又はその近傍に設定されている。
なお、この反射面43は、第2実施形態における車両用灯具1Aの放物面系リフレクタ40に形成してもよい。この反射面43を放物面系リフレクタ40に設けた場合、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50が無くてもよい。
【0058】
〔変形例2〕
図1に示すように、上部反射面33の前縁36が弓なり状に湾曲し、前縁36の前側にスペースが形成されている。このスペースを利用すべく、図11に示すように、上部反射面33の前縁36の前側にリフレクタ90を設けてもよい。このリフレクタ90の内面91が下を向き、その内面91が反射面となっている。この反射面91は、例えば、発光部12を第一焦点とし、第三の反射面41の焦点を第二焦点とした楕円面である。この反射面91は、発光部12から発して反射面91に直接入射した光を下方の第三の反射面41に向けて反射させるものである。反射面91から第三の反射面41に向かう光が第三の反射面41によって前方に反射され、その反射光が投影レンズ20の下を通って前方に投射される。
なお、リフレクタ90は、第2実施形態における車両用灯具1Aに設けてもよい。
【0059】
〔変形例3〕
上記第1、第2の実施形態では、第二の反射面70が第1の反射面31による反射光を下方に反射させていたが、第二の反射面70による反射の向きは下に限るものではない。第二の反射面70による反射の向きは、光軸Axの径外方向であれば、例えば、上であってもよいし、左であってもよいし、右であってもよい。第二の反射面70による反射の向きに応じて第三の反射面41の設置箇所も適宜変更すればよい。つまり、第二の反射面70による反射の向きが上であれば、第三の反射面41がシェード60の上方に配置され、第二の反射面70による反射の向きが左であれば、第三の反射面41がシェード60の左方に配置され、第二の反射面70による反射の向きが右であれば、第三の反射面41がシェード60の右方に配置されている。第三の反射面41がシェード60の上方に配置されている場合には、第三の反射面41は、第二の反射面70により反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を投影レンズ20の上側を通じて前方に投射する。第三の反射面41がシェード60の左方に配置されている場合には、第三の反射面41は、第二の反射面70による反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を投影レンズ20の左側を通じて前方に投射する。第三の反射面41がシェード60の右方に配置されている場合には、第三の反射面41は、第二の反射面70による反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を投影レンズ20の右側を通じて前方に投射する。
【0060】
〔変形例4〕
上記第2実施形態では、シェード60が回転軸69を中心にして前後に揺動可能に設けられていたが、シェード60がリニアガイド等によって昇降可能に設けられていてもよい。この場合、シェード60が上昇して、シェード60の上縁64が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に位置したら、シェード60が止まる。一方、シェード60が下降して、シェード60の上縁64が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍から下に離れたら、シェード60が止まる。駆動機構80も適宜設計変更して、その駆動機構80によってシェード60を昇降させる。
【0061】
〔変形例5〕
第二の反射面41の向きを左又は右に傾けて、図5に示された配光パターンP2の明部が図5の場合よりも左又は右にずれていてもよい。第二の反射面41の向きを下に傾けて、図5に示された配光パターンP2の明部が図5の場合よりも下にずれていてもよい。
【0062】
〔変形例6〕
上記第1実施形態では、車両用灯具1が前照灯であったが、フォグランプであってもよい。この場合、シェード60の上縁の形状、第一の反射面31の曲面形状、投影レンズ20の入射面・出射面の曲面形状、第三の反射面41の曲面形状等を適宜変更して、フォグランプとしての規格を満たすようにする。
【符号の説明】
【0063】
1 車両用灯具
10 バルブ
20 投影レンズ
31 第一の反射面
41 第三の反射面
60 シェード
64 上縁
70 第二の反射面
80 駆動機構
F1、F31、F32、F51、F52、F53 焦点
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロジェクタ型車両用灯具では、シェードの上縁が投影レンズの焦点近傍に配置され、バルブが楕円面系リフレクタの第一焦点近傍に配置され、楕円面系リフレクタの第二焦点が投影レンズの焦点近傍に配置されている。バルブから発した光が楕円面系リフレクタによって前方に反射され、その反射光の一部がシェードによって遮光され、遮光されない反射光が投影レンズによって前方に投影される。反射光の一部がシェードによって遮光されることによって、略水平な明暗境界線を有する配光パターンが前方に形成され、明暗境界線よりも上向きの光がない。これにより、すれ違い走行用の配光パターンが形成され、対向車にとってはグレアの発生を抑えることができる。
【0003】
しかし、反射光がシェードによって遮光されるから、バルブから発した光の利用効率が悪い。そのため、光の利用効率を高めたプロジェクタ型車両用灯具が開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術では、楕円面系リフレクタ(12)の上斜め前に、反射面(15)が設けられ、その反射面(15)の下方に反射面(16)が設けられ、その反射面(16)の下方に反射面(17)が設けられている。この文献の技術によれば、バルブ(11)から上斜め前に発した光が楕円面系リフレクタ(12)に入射せずに、反射面(15)によって反射され、その反射光が反射面(16)、反射面(17)によって順に反射され、前方斜め横に投射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−331617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記文献の技術では、楕円面系リフレクタ(12)に入射しない光が反射面(15)によって反射されるだけであって、シェード(14)によって遮光される光が有効利用されていない。そのため、光の利用効率が充分に高いものとはいえなかった。また、楕円面系リフレクタ(12)のほかに三つの反射面(15,16,17)を設ける必要があることから、部品点数が増えてしまい、コストアップを招いてしまう。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、部品点数の削減と光の利用効率の向上とを図れるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、本発明に係る車両用灯具は、バルブと、前記バルブの前方に配置され、その光軸が前後方向に設定されるとともにその焦点が前記バルブとの間に設定された投影レンズと、前記投影レンズの後方に配置され、前記バルブからの光を前記投影レンズに向けて反射させ、その反射光を前記投影レンズの焦点又はその近傍に集光させる第一の反射面と、前記投影レンズの焦点又はその近傍に上縁を有し、前記第一の反射面から前記投影レンズに向かう反射光の一部を遮光するシェードと、前記シェードの後面に設けられ、前記第一の反射面から前記投影レンズに向かう反射光の一部を前記投影レンズの光軸の径外方向に反射させる第二の反射面と、前記シェードから前記投影レンズの光軸の径外方向に離れた位置に配置され、前記第二の反射面によって反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を前記投影レンズの周囲を通じて前方に投射する第三の反射面と、を備えることとした。
【0007】
好ましくは、前記第二の反射面が、前記第一の反射面から前記投影レンズに向かう反射光の一部を下方に反射させ、前記第三の反射面が、前記シェードの下方に配置されているとともに、前記第二の反射面によって反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を前記投影レンズの下方を通じて前方に投射することとした。
【0008】
好ましくは、前記シェードが、その上縁が前記投影レンズの焦点又はその近傍に位置した遮光位置と、その上縁が前記投影レンズの焦点から下方に離れた退避位置との間を移動可能に設けられていることとした。
【0009】
好ましくは、前記車両用灯具が、前記シェードを前記遮光位置から前記退避位置へ及びその逆に駆動する駆動機構を更に備えることとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第二の反射面がシェードに設けられているから、第二の反射面用の部品を別途準備しなくても済み、車両用灯具の構成部品を削減することができるとともに、コストダウンを図ることができる。
シェードで遮光される光が第二の反射面によって光軸の径外方向に反射され、その反射光が第三の反射面によって前方に投射される。そのため、バルブから発した光の利用効率を高めることができ、明るい配光パターンを得ることができる。
第二の反射面がシェードの後面に設けられ、そのシェードが投影レンズの焦点近傍に配置され、第一の反射面による反射光がその第一の反射面によって投影レンズの焦点又はその近傍に集光させるから、第二の反射面の面積が小さくとも、大光量の光を第二の反射面で反射することができる。第二の反射面が狭くて済むので、車両用灯具を小型化に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用灯具の前方斜視図である。
【図2】同実施形態における車両用灯具の断面図である。
【図3】同実施形態におけるシェードの前方斜視図である。
【図4】同実施形態におけるシェードの後方斜視図である。
【図5】同実施形態における車両用灯具によって仮想スクリーンに形成されるすれ違い走行用の配光パターンを示した図である。
【図6】本発明の第2実施形態における車両用灯具の前方斜視図である。
【図7】同実施形態における車両用灯具の断面図である。
【図8】同実施形態における車両用灯具の断面図である。
【図9】同実施形態における車両用灯具によって仮想スクリーンに形成される走行用の配光パターンを示した図である。
【図10】変形例における車両用灯具の断面図である。
【図11】変形例における車両用灯具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、それぞれ、車両用灯具が装備された車両の「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」である。従って、後ろから前に向かって見て、左右の向きを定める。
【0013】
〔第1の実施の形態〕
図1は、車両用灯具1の前方斜視図である。図2は、光軸Axを通る鉛直断面に沿った断面図である。
この車両用灯具1は、前照灯として用いられるものである。この車両用灯具1は、バルブ10、投影レンズ20、楕円面系リフレクタ30、放物面系リフレクタ40、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50、シェード60及び反射面70等を備える。これら投影レンズ20、楕円面系リフレクタ30、放物面系リフレクタ40、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50及びシェード60がハウジング(図示略)に取り付けられて、これらバルブ10、投影レンズ20、楕円面系リフレクタ30、放物面系リフレクタ40、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50及びシェード60がユニット化されている。なお、図1では、シェード60を詳細に図示するため、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50の図示を省略する。
【0014】
投影レンズ20は、凸レンズである。この投影レンズ20の光軸Axが前後方向に延び、投影レンズ20の焦点F1が投影レンズ20の後方に設定されている。投影レンズ20の後方に、バルブ10、楕円面系リフレクタ30、放物面系リフレクタ40、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50、シェード60が配置されている。
【0015】
バルブ10は、放電灯(例えば、高輝度放電灯(HID)、高圧金属蒸気放電灯等)、ハロゲン電球、白熱電球その他のバルブである。バルブ10は、そのガラス管11の長手方向が光軸Axの方向(前後方向)になるように配置されている。バルブ10の発光部12が、投影レンズ20の焦点F1の後方に配置されている。発光部12とは、バルブ10が放電灯である場合には発光管(放電部)であり、バルブ10がハロゲン電球、白熱電球等である場合にはフィラメントである。なお、バルブ10のガラス管11の長手方向が光軸Axに対して交差するようにバルブ10が配置されていてもよい。例えば、ガラス管11の長手方向が左右方向になるように、バルブ10が横置きに配置されていてもよい。
【0016】
楕円面系リフレクタ30が略椀状に設けられ、その楕円面系リフレクタ30が前方に向けて開口している。楕円面系リフレクタ30の内面31が、第一の反射面31とされている。第一の反射面31は、バルブ10の発光部12から発した光を前方の投影レンズ20に向けて反射させて、投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に集光させるものである。
【0017】
第一の反射面31は、楕円面の形状に形成されている。楕円面とは、前後方向に延びた中心軸を回転軸とした回転楕円面若しくは扁平楕円面又はこれらを基調とした自由曲面をいう。扁平楕円面とは、前後方向に延びた中心軸を回転軸とした回転楕円面が上下又は左右につぶれたものをいう。また、第一の反射面31は、これらの回転楕円面、扁平楕円面又は自由曲面を組み合わせた複合楕円面であってもよい。
【0018】
より好ましくは、楕円面系リフレクタ30は、以下のように設けられている。即ち、楕円面系リフレクタ30は、上部リフレクタ32と、下部リフレクタ34とを有する。上部リフレクタ32は、バルブ10の発光部12の後ろから発光部12の上斜め前・右上斜め前・左上斜め前にかけて発光部12を囲うように略ドーム状に設けられている。下部リフレクタ34は、発光部12の後ろから発光部12の下斜め前・右下斜め前・左下斜め前にかけて発光部12を囲うように略逆ドーム状に設けられている。
【0019】
上部リフレクタ32の内面33が上部反射面とされ、下部リフレクタ34の内面35が下部反射面とされている。上部反射面33と下部反射面35の組合せが、第一の反射面31である。上部反射面33は、前後方向に延びた中心軸を回転軸とした回転楕円面を上下につぶして左右に拡げた扁平楕円面であるか、又は、その扁平楕円面を基調とした自由曲面である。下部反射面35は、前後方向に延びた中心軸を回転軸とした回転楕円面であるか、又は、その回転楕円面を基調とした自由曲面である。ここで、上部反射面33の上下方向の扁平度は下部反射面35の上下方向の扁平度よりも大きく、上部反射面33が下部反射面35よりも左右に拡がるよう設けられている。
【0020】
上部反射面33の後側焦点(第一焦点)F31が上部リフレクタ32の内側に設定され、その後側焦点F31よりも前方に上部反射面33の前側焦点(第二焦点)F32が設定されている。下部反射面35の後側焦点(第一焦点)F51が下部リフレクタ34の内側に設定され、その後側焦点F51よりも前方に下部反射面35の前側焦点(第二焦点)F52が設定されている。上部反射面33が扁平楕円面又はそれを基調とした自由曲面に形成されているので、前側焦点F32は、水平左右方向に延びるとともに、後ろに凸となるよう湾曲した焦線である。下部反射面35の前側焦点F52は、水平左右方向に延びるとともに、後ろに凸となるよう湾曲した焦線であってもよい。
【0021】
上部反射面33及び下部反射面35の後側焦点F31,F51は、バルブ10の発光部12又はその近傍に位置している。好ましくは、上部反射面33の後側焦点F31と下部反射面35の後側焦点F51が重なっており、更に好ましくは、後側焦点F31,F51が発光部12に重なっている。
【0022】
上部反射面33及び下部反射面35の前側焦点F32,F52が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に位置している。好ましくは、上部反射面33の前側焦点F32が投影レンズ20の焦点F1よりも前方であって投影レンズ20よりも後方に位置しており、下部反射面35の前側焦点F52が上部反射面33の前側焦点F32よりも投影レンズ20の焦点F1の近くに位置している。更に好ましくは、下部反射面35の前側焦点F52が投影レンズ20の焦点F1よりも前方であって投影レンズ20よりも後方に位置している。
【0023】
以上のように、第一の反射面31が上部反射面33と下部反射面35の複合楕円面であるから、第一の反射面31の前側焦点(第二焦点)が前側焦点F32,F52として現れる。上部反射面33は、発光部12から発した光を前方の投影レンズ20に向けて反射させ、その反射光を前側焦点F32に集光させる。下部反射面35は、発光部12から発した光を前方の投影レンズ20に向けて反射させ、その反射光を前側焦点F52に集光させる。なお、第一の反射面31が上部反射面33と下部反射面35の複合楕円面でなく、単一の楕円面である場合には、第一の反射面31の後側焦点(第一焦点)がバルブ10の発光部12又はその近傍に位置し、第一の反射面31の前側焦点が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に位置している。
【0024】
シェード60は、バルブ10と投影レンズ20との間に配置されている。このシェード60は、第一の反射面31によって反射されて投影レンズ20に向かう反射光の一部を投影レンズ20の焦点F1又はその近傍で遮光して、明暗境界線を有する配光パターンを形成するものである。
【0025】
図3は、シェード60の前方斜視図であり、図4は、シェード60の後方斜視図である。図1〜図4に示すように、シェード60が板状に設けられ、そのシェード60が立てた状態に設けられている。具体的には、シェード60の下部61が鉛直に立てられており、シェード60の上部62が下部61の上端から後ろ上がりに傾斜している。シェード60の前面63の左右中央部は、投影レンズ20の像面の湾曲に対応して、後ろに向かって凹むよう湾曲している。シェード60の上縁64が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に位置するように、シェード60が投影レンズ20とバルブ10との間に配置されている。
【0026】
シェード60の上縁64のうち光軸Axよりも左の部分65(以下、左部上縁65という。)が水平に形成され、光軸Axよりも右の部分66(以下、右部上縁66という。)が水平に形成され、左部上縁65と右部上縁66の間に段差があり、左部上縁65と右部上縁66の間の部分67(以下、傾斜部67という。)が水平方向に対して傾斜している。傾斜部67の傾斜角は、水平面に対して15°又は45°であることが好ましい。
【0027】
シェード60の上縁64のうち光軸Axよりも自車線側の部分が対向車線側の部分よりも高く設定されている。具体的には、車両用灯具1が左側通行用である場合、左部上縁65が右部上縁66よりも上に位置し、傾斜部67が右下りに傾斜している。図1〜図4では、シェード60が左側通行用として示されている。一方、車両用灯具1が右側通行用である場合、シェード60の右部上縁66が左部上縁65よりも上に位置し、傾斜部67が左下りに傾斜している。
なお、左部上縁65と右部上縁66の上下位置が揃っていて、傾斜部67が無くてもよい。
【0028】
シェード60の後面68の上部であってその左右中央部には、第二の反射面70が形成されている。この第二の反射面70は、後ろ斜め下に向いている。この第二の反射面70は、後ろから見て、シェード60の上縁64に沿って左右に長尺な帯状に設けられている。第二の反射面70は、平面であってもよいし、曲面(例えば、凸面、凹面、シリンドリカル面、球面)であってもよいし、その平面又は曲面を基調とした自由曲面(非球面)であってもよい。
【0029】
第二の反射面70は、第一の反射面31によって反射されて投影レンズ20に向かう反射光の一部を下方に反射させる。具体的には、第二の反射面70は、下部反射面35によって反射された反射光の殆どを後ろ斜め下に反射させ、下部反射面35の前側焦点F52を第二の反射面70の後ろ斜め下の焦点F53に変換する。つまり、下部反射面35と第二の反射面70からなる光学系の焦点F53が光軸Axの下方に設定され、第一の反射面31の反射光の一部が焦点F53に集光する。
【0030】
図1、図2に示すように、放物面系リフレクタ40は、シェード60及び第二の反射面70の下方に配置されている。放物面系リフレクタ40と楕円面系リフレクタ30は、一体化されている。具体的には、放物面系リフレクタ40が下部リフレクタ34の前端から下斜め前に垂下し、放物面系リフレクタ40の上端と下部リフレクタ34の前端が連接している。第三の反射面41は、投影レンズ20よりも後ろに配置されている。また、第三の反射面41は、正面から見て、投影レンズ20から下にずれて配置されている。
放物面系リフレクタ40の前側内面41が、第三の反射面とされている。第三の反射面41は、放物面の形状に形成されている。放物面とは、前後方向に延びた中心軸を回転軸とした回転放物面又はこれを基調とした自由曲面である。第三の反射面41の焦点は、投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に設定されている。好ましくは、第三の反射面41の焦点が、投影レンズ20の焦点F1よりも僅か後方に、且つ、光軸Axよりも下方に設定されている。更に好ましくは、第三の反射面41の焦点が、下部反射面35と第二の反射面70からなる光学系の焦点F53に重なっている。
【0031】
第三の反射面41は、第二の反射面70によって下方に反射された反射光を前方に向けて反射させる。第三の反射面41によって反射された反射光は、投影レンズ20の下を通って前方に投射される。
【0032】
オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50は、シェード60の前側に配置されている。オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50は、シェード60によって遮光されなかった反射光の一部を投影レンズ20に向けて上に反射させ、オーバヘッドサイン配光を形成するものである。
【0033】
図5を参照して、車両用灯具1の配光特性について説明する。図5は、車両用灯具1から前方に所定距離離れた仮想スクリーンに形成される配光パターンを示したものである。図5において横軸は、光軸Axと仮想スクリーンの交点をゼロ°として左右の角度を表し、縦軸は、光軸Axと仮想スクリーンの交点をゼロ°として上下の角度を表す。
【0034】
バルブ10に給電されて、発光部12が発光する。そうすると、発光部12から発した光が第一の反射面31によって前方に反射され、その反射光の一部がシェード60によって遮光される。シェード60によって遮光されずにシェード60の上を通過した反射光は、投影レンズ20に入射して、投影レンズ20の前方に投射される。シェード60によって遮光されるから、図5に示すような配光パターンP1が、仮想スクリーンに形成される。配光パターンP1は、光軸Axを通る水平面と仮想スクリーンとの交線(光軸Axを中心にして上下方向にゼロ°の線)に沿ったカットオフライン(明暗境界線)C1を明部の上縁に有するものである。配光パターンP1の明部の形成に寄与する光は、主に、発光部12から上に向かって発して上部反射面33で反射される光である(図2に示す光ビームB1参照)。なお、バルブ10がHIDである場合、発光部12から上に発する光は白色光であるから、配光パターンP1の明部が白色となる。
【0035】
シェード60によって遮光されずにシェード60の上を通過した反射光がオーバヘッドサイン配光用リフレクタ50によって反射され、その反射光が投影レンズ20によって光軸Axを通る水平面より上に投射される。そのため、図5に示すような、オーバヘッドサイン配光パターンP3が仮想スクリーンに形成される。
【0036】
また、第一の反射面31による反射光の一部が、第二の反射面70によって下方の第三の反射面41に向けて反射される。第二の反射面70による反射光が第三の反射面41によって前方に反射され、その反射光が第三の反射面41によって略平行光になる。第三の反射面41による反射光は、投影レンズ20の下を通って前方に投射される。そのため、図5に示すような、配光パターンP2が仮想スクリーンに形成される。配光パターンP2の明部の照射範囲は、光軸Axを通る水平面よりも下である。配光パターンP2の明部が配光パターンP1の明部に重なる。配光パターンP1と配光パターンP2との組合せによってすれ違い走行用の配光パターンが得られる。なお、左右方向の照射範囲は、配光パターンP1の明部の方が配光パターンP2の明部よりも広い。
【0037】
配光パターンP2の明部の形成に寄与する光は、主に、発光部12から下に向かって発して下部反射面35で反射される光である(図2に示す光ビームB2参照)。また、上部反射面33による反射光の一部も第二の反射面70によって下方に反射されるから、その光も配光パターンP2の明部の形成に寄与する(図2に示す光ビームB3参照)。上部反射面33による反射光の多くがシェード60の上を通過するから、上部反射面33の反射光よりも下部反射面35の反射光の方が配光パターンP2の明部の形成に、より寄与する。なお、バルブ10がHIDである場合、発光部12から下に発する光が黄色光であるから、配光パターンP2の明部が黄色となる。
【0038】
本実施形態によれば、第二の反射面70がシェード60の後面に形成されている。シェード60は第一の反射面31の前側焦点(前側焦点F32,F52)の近傍に配置されているから、第一の反射面31によって集光された反射光が第二の反射面70に入射する。そのため、第二の反射面70の面積が小さくとも、大光量の光を第二の反射面70で反射することができる。第二の反射面70が狭くて済むので、車両用灯具1の小型化に貢献することができる。
【0039】
また、第二の反射面70がバルブ10と投影レンズ20の間に配置されているから、車両用灯具1の大型化を抑えることができる。
【0040】
また、第二の反射面70がシェード60に形成されているから、第二の反射面70用に別途リフレクタを必要としない。そのため、車両用灯具1の構成部品を削減することができ、コストダウンを図ることができる。
【0041】
また、本来シェード60で遮光される光が第二の反射面70によって下方に反射され、その反射光がすれ違い走行用の配光パターンに用いられる。そのため、発光部12の光束利用効率が向上する。
【0042】
また、第一の反射面31による反射光が第二の反射面70によって下方の第三の反射面41に向けて反射されるため、第三の反射面41と第二の反射面70との距離が短くても、第三の反射面41による反射光が投影レンズ20やそのレンズホルダ等に干渉されずに、第三の反射面41による反射光の照射範囲を、光軸Axを通る水平面よりも下にすることができる(図5参照)。そして、第三の反射面41と第二の反射面70の距離を短くすることができるから、車両用灯具1の上下方向の大きさを小さくすることができる。
【0043】
また、配光パターンP2の明部が配光パターンP1の明部に重なっているから、明るい配光が得られ、前方視認性が向上する。特に、バルブ10がHIDである場合、黄色の明部(配光パターンP2の明部)が白色の明部(配光パターンP1の明部)に重なるから、色ムラの発生を抑えることができる。
【0044】
〔第2の実施の形態〕
図6は、車両用灯具1Aの前方斜視図である。図7,8は、光軸Axを通る鉛直断面に沿った断面図である。なお、図6〜図8では、図面を見やすくするために、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50の図示を省略する。
【0045】
第2実施形態における車両用灯具1Aと、第1実施形態における車両用灯具1との間で互いに対応する部分には同一の符号を付す。以下、第2実施形態における車両用灯具1Aと、第1実施形態における車両用灯具1との間で互いに対応する部分が同一に設けられている場合には、その説明を省略し、相違点について説明する。
【0046】
第1実施形態では、シェード60が立てた状態で固定されており、第二の反射面70の位置が一定であった。それに対して、第2実施形態では、走行用(ハイビーム用)の配光パターンを形成すべく、シェード60は、その上縁64が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍において左右方向に延びた遮光位置と、その上縁64が投影レンズ20の焦点F1から下に離れた退避位置との間で移動可能に設けられている。具体的には、シェード60が以下のように設けられている。即ち、シェード60には、左右に延びた回転軸69が取り付けられている。この回転軸69がハウジング等の固定部材に回転可能に支持され、シェード60が回転軸69を中心に回転可能に設けられている。
【0047】
シェード60が立った状態では、そのシェード60が遮光位置に位置し、シェード60の上縁64が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に位置している。これは、第1実施形態のようにシェード60が固定されている場合と同様である。一方、シェード60が回転軸69を中心に後ろに倒伏した状態では、そのシェード60が退避位置に位置し、シェード60の上縁64が投影レンズ20の焦点F1から後ろ斜め下に離れている。
【0048】
この車両用灯具1Aには、駆動機構80が設けられている。駆動機構80は、シェード60を遮光位置から退避位置に及びその逆に駆動するものである。駆動機構80は、ソレノイド81及びアーム83を有する。ソレノイド81は、ハウジング等の固定部材に取り付けられているとともに、下部リフレクタ34の下方に配置されている。ソレノイド81は、そのプランジャ82が前に向くように配置されている。ソレノイド81は、プランジャ82を前後に進出・後退させる。プランジャ82の先端がアームの83の一端に回転可能に連結されている。アーム83の他端がシェード60に回転可能に連結されている。
【0049】
以上に説明したことを除いて、第2実施形態における車両用灯具1Aと、第1実施形態における車両用灯具1との間で互いに対応する部分とは、同様に設けられている。
【0050】
シェード60の動作について説明する。
図7に示すように、ソレノイド81のプランジャ82が後ろに引き込んだ状態では、シェード60が遮光位置に位置している。この状態では、図5に示すような配光パターンが仮想スクリーンに形成される。
【0051】
ソレノイド81のプランジャ82が前に引き出ると、シェード60が回転軸69を中心に後ろに倒れる。そして、シェード60が退避位置まで移動すると、ソレノイド81のプランジャ82の引出動作も止まる。
【0052】
図8に示すように、シェード60が退避位置に位置していると、第一の反射面31で反射された反射光が遮光されず、更にその反射光は第二の反射面70にも入射しない。そのため、図9に示すような配光パターンP4が仮想スクリーンに形成される。配光パターンP4は、走行用の配光パターンであって、上下方向ゼロ°の水平面よりも上の中心部に明部Lを有するものである。
【0053】
ソレノイド81のプランジャ82が後ろに引き込むと、シェード60が回転軸69を中心に前に起き上がる。そして、シェード60が遮光位置まで移動すると、ソレノイド81のプランジャ82の引込動作も止まる。
【0054】
以上のように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する上、すれ違い走行用の配光と走行用の配光との切替を行うことができる。
【0055】
なお、シェード60を回転させるための動力源がソレノイド81に限るものではなく、モータであってもよいし、ピエゾ素子であってもよいし、その他の動力源であってもよい。例えば、モータの駆動軸を回転軸69に直結してもよいし、モータの駆動軸と回転軸69との間に歯車機構を設けてもよい。
【0056】
〔変形例〕
本発明を適用可能な実施形態は、上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、幾つかの変形例を挙げる。以下に挙げる変形例は、可能な限り組み合わせてもよい。
【0057】
〔変形例1〕
図10に示すように、放物面系リフレクタ40の前側内面の前端部に、オーバヘッドサイン配光用の反射面43を形成してもよい。この反射面43は、第二の反射面70によって反射された反射光を前方であって水平面よりも上に反射させるものである。特に、反射面43は、上部反射面33及び第二の反射面70の両方で反射された反射光を反射させるものである。例えば、この反射面43は、前上がりに前後方向に延びた中心軸を回転軸とした回転放物面又はこれを基調とした自由曲面であって、反射面43の焦点が第二の反射面70又はその近傍に設定されている。
なお、この反射面43は、第2実施形態における車両用灯具1Aの放物面系リフレクタ40に形成してもよい。この反射面43を放物面系リフレクタ40に設けた場合、オーバヘッドサイン配光用リフレクタ50が無くてもよい。
【0058】
〔変形例2〕
図1に示すように、上部反射面33の前縁36が弓なり状に湾曲し、前縁36の前側にスペースが形成されている。このスペースを利用すべく、図11に示すように、上部反射面33の前縁36の前側にリフレクタ90を設けてもよい。このリフレクタ90の内面91が下を向き、その内面91が反射面となっている。この反射面91は、例えば、発光部12を第一焦点とし、第三の反射面41の焦点を第二焦点とした楕円面である。この反射面91は、発光部12から発して反射面91に直接入射した光を下方の第三の反射面41に向けて反射させるものである。反射面91から第三の反射面41に向かう光が第三の反射面41によって前方に反射され、その反射光が投影レンズ20の下を通って前方に投射される。
なお、リフレクタ90は、第2実施形態における車両用灯具1Aに設けてもよい。
【0059】
〔変形例3〕
上記第1、第2の実施形態では、第二の反射面70が第1の反射面31による反射光を下方に反射させていたが、第二の反射面70による反射の向きは下に限るものではない。第二の反射面70による反射の向きは、光軸Axの径外方向であれば、例えば、上であってもよいし、左であってもよいし、右であってもよい。第二の反射面70による反射の向きに応じて第三の反射面41の設置箇所も適宜変更すればよい。つまり、第二の反射面70による反射の向きが上であれば、第三の反射面41がシェード60の上方に配置され、第二の反射面70による反射の向きが左であれば、第三の反射面41がシェード60の左方に配置され、第二の反射面70による反射の向きが右であれば、第三の反射面41がシェード60の右方に配置されている。第三の反射面41がシェード60の上方に配置されている場合には、第三の反射面41は、第二の反射面70により反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を投影レンズ20の上側を通じて前方に投射する。第三の反射面41がシェード60の左方に配置されている場合には、第三の反射面41は、第二の反射面70による反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を投影レンズ20の左側を通じて前方に投射する。第三の反射面41がシェード60の右方に配置されている場合には、第三の反射面41は、第二の反射面70による反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を投影レンズ20の右側を通じて前方に投射する。
【0060】
〔変形例4〕
上記第2実施形態では、シェード60が回転軸69を中心にして前後に揺動可能に設けられていたが、シェード60がリニアガイド等によって昇降可能に設けられていてもよい。この場合、シェード60が上昇して、シェード60の上縁64が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍に位置したら、シェード60が止まる。一方、シェード60が下降して、シェード60の上縁64が投影レンズ20の焦点F1又はその近傍から下に離れたら、シェード60が止まる。駆動機構80も適宜設計変更して、その駆動機構80によってシェード60を昇降させる。
【0061】
〔変形例5〕
第二の反射面41の向きを左又は右に傾けて、図5に示された配光パターンP2の明部が図5の場合よりも左又は右にずれていてもよい。第二の反射面41の向きを下に傾けて、図5に示された配光パターンP2の明部が図5の場合よりも下にずれていてもよい。
【0062】
〔変形例6〕
上記第1実施形態では、車両用灯具1が前照灯であったが、フォグランプであってもよい。この場合、シェード60の上縁の形状、第一の反射面31の曲面形状、投影レンズ20の入射面・出射面の曲面形状、第三の反射面41の曲面形状等を適宜変更して、フォグランプとしての規格を満たすようにする。
【符号の説明】
【0063】
1 車両用灯具
10 バルブ
20 投影レンズ
31 第一の反射面
41 第三の反射面
60 シェード
64 上縁
70 第二の反射面
80 駆動機構
F1、F31、F32、F51、F52、F53 焦点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブと、
前記バルブの前方に配置され、その光軸が前後方向に設定されるとともにその焦点が前記バルブとの間に設定された投影レンズと、
前記投影レンズの後方に配置され、前記バルブからの光を前記投影レンズに向けて反射させ、その反射光を前記投影レンズの焦点又はその近傍に集光させる第一の反射面と、
前記投影レンズの焦点又はその近傍に上縁を有し、前記第一の反射面から前記投影レンズに向かう反射光の一部を遮光するシェードと、
前記シェードの後面に設けられ、前記第一の反射面から前記投影レンズに向かう反射光の一部を前記投影レンズの光軸の径外方向に反射させる第二の反射面と、
前記シェードから前記投影レンズの光軸の径外方向に離れた位置に配置され、前記第二の反射面によって反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を前記投影レンズの周囲を通じて前方に投射する第三の反射面と、を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第二の反射面が、前記第一の反射面から前記投影レンズに向かう反射光の一部を下方に反射させ、
前記第三の反射面が、前記シェードの下方に配置されているとともに、前記第二の反射面によって反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を前記投影レンズの下方を通じて前方に投射することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記シェードが、その上縁が前記投影レンズの焦点又はその近傍に位置した遮光位置と、その上縁が前記投影レンズの焦点から下方に離れた退避位置との間を移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記シェードを前記遮光位置から前記退避位置へ及びその逆に駆動する駆動機構を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項1】
バルブと、
前記バルブの前方に配置され、その光軸が前後方向に設定されるとともにその焦点が前記バルブとの間に設定された投影レンズと、
前記投影レンズの後方に配置され、前記バルブからの光を前記投影レンズに向けて反射させ、その反射光を前記投影レンズの焦点又はその近傍に集光させる第一の反射面と、
前記投影レンズの焦点又はその近傍に上縁を有し、前記第一の反射面から前記投影レンズに向かう反射光の一部を遮光するシェードと、
前記シェードの後面に設けられ、前記第一の反射面から前記投影レンズに向かう反射光の一部を前記投影レンズの光軸の径外方向に反射させる第二の反射面と、
前記シェードから前記投影レンズの光軸の径外方向に離れた位置に配置され、前記第二の反射面によって反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を前記投影レンズの周囲を通じて前方に投射する第三の反射面と、を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第二の反射面が、前記第一の反射面から前記投影レンズに向かう反射光の一部を下方に反射させ、
前記第三の反射面が、前記シェードの下方に配置されているとともに、前記第二の反射面によって反射された反射光を前方に反射させて、その反射光を前記投影レンズの下方を通じて前方に投射することを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記シェードが、その上縁が前記投影レンズの焦点又はその近傍に位置した遮光位置と、その上縁が前記投影レンズの焦点から下方に離れた退避位置との間を移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記シェードを前記遮光位置から前記退避位置へ及びその逆に駆動する駆動機構を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−175820(P2011−175820A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38257(P2010−38257)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]