説明

車両用物体検出装置

【課題】超音波センサに代表される物体検出センサの作動が禁止される場合であっても、車両が動き出した場合には例外的に物体検出センサを作動させて、物体検出の実効を図る。
【解決手段】車両用物体検出装置1は、超音波センサ10(物体検出センサ)、制御回路28(制御手段、判定手段、報知手段)、ブザー31,32及び表示器33(報知手段)などを備える。制御回路28は、所定の禁止条件を満たす場合は超音波センサ10を停止制御する一方、禁止条件が解除された場合は発射波を発射するよう超音波センサ10を駆動制御する。制御回路28は、禁止条件が解除されない場合であっても、自車両が停止状態でなくなったことを条件として、超音波センサ10を駆動制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用物体検出装置に関し、例えば超音波センサ等の物体検出センサにより車両周辺に存在する物体を検知するようにした車両用物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用物体検出装置は、通常、自車両の周辺部に設けられ発射波を発射し障害物などの物体で反射した反射波を受信する超音波センサ(物体検出センサ)と、所定の禁止条件を満たす場合は超音波センサを停止制御する一方、禁止条件が解除された場合は発射波を発射するよう超音波センサを駆動制御する制御手段と、超音波センサの送受信に基づいて自車両周辺に存在する物体の有無を判定する判定手段と、判定手段により自車両周辺に物体有りと判定されたとき運転者に報知する報知手段とを備えている。そして、例えば下記特許文献1に記載された超音波物体検出装置では、他車の高速走行時に発生する風きり音や、他車に搭載された超音波物体検出装置からの超音波等の外来超音波ノイズが受信波に重畳することによる誤報知を防止するために、外来超音波ノイズを検知した場合は超音波物体検出装置の機能を停止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−128445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された超音波物体検出装置に代表される物体検出装置では、車両の駐車時に不要な超音波を外部に発射することで車両外部の各種電子機器(例えば、他車両の超音波物体検出装置など)に対する誤作動の原因とならないよう、シフトレンジがP(パーキング)レンジに切り替えられた場合は超音波センサの作動を禁止する禁止処理を実行するのが一般的である。この場合、車種によってはパーキングブレーキが作動状態であるときに禁止処理を実行することが考えられる(例えば、マニュアルトランスミッション車など)。すなわち、パーキングブレーキが作動状態であるときも、シフトレンジがPレンジに切り替えられた場合と同様、車両が動かない状態にあるものとして、誤作動防止の実効を図ることが考えられる。
ところが、パーキングブレーキの作動を検出して上記禁止処理を行う場合、例えばシフトレンジがD(ドライブ)レンジに切り替えられている状態でアクセルペダルを踏むと実際には車両が動いてしまうため、車両が障害物に接近することとなっても運転者にその旨を報知できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、超音波センサに代表される物体検出センサの作動が禁止される場合であっても、車両が動き出した場合には例外的に物体検出センサを作動させて、物体検出の実効を図ることにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、自車両の周辺部に設けられ、発射波を発射し障害物などの物体で反射した反射波を受信する物体検出センサと、所定の禁止条件を満たす場合は物体検出センサを停止制御する一方、禁止条件が解除された場合は発射波を発射するよう物体検出センサを駆動制御する制御手段と、物体検出センサの送受信に基づいて自車両周辺に存在する物体の有無を判定する判定手段と、判定手段により自車両周辺に物体有りと判定されたとき運転者に報知する報知手段とを備えた車両用物体検出装置において、
制御手段は、禁止条件が解除されない場合であっても、自車両が停止状態でなくなったことを条件として、物体検出センサを駆動制御するように設定されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、禁止条件が解除されない場合(禁止モード状態が維持される場合)であっても、自車両が停止状態でなくなったことを条件として、物体検出センサが駆動制御される。このため、物体検出センサを有効利用して、車両の障害物への接近を運転者に報知することで不慮の衝突を良好に防止することができる。
【0008】
この場合、禁止条件には、自車両に設けられたパーキングブレーキが作動状態であることを示すパーキングブレーキスイッチのオンが含まれると好適である。ここで、パーキングブレーキは、自車両が駐車又は停車中に移動することを防止するため、一部の車輪の制動装置をワイヤ等の機械的操作機構により作動させるものであり、踏み込みペダルを備えた足踏み式や、引き込みレバーを備えたレバー式のもの等がある。
【0009】
上記したように、パーキングブレーキが作動状態であっても、例えばシフトレンジがドライブレンジに切り替えられた状態ではアクセルペダルを踏むと車両が動き出してしまう。したがって、このような場合でも、障害物に接近した旨を運転者に対してほぼ確実に知らせることができる。
【0010】
また、制御手段は、自車両に設けられた車速センサにより検出された車速に基づいて、自車両が停止状態でないことを判定するように構成されているとよい。超音波センサ等の物体検出センサは、自車両が予め定められた低速状態(例えば15km/h未満)であることを作動条件の一つとして設定されることが多い。このため、車速センサにより検出される車速に基づいて車両が停止状態でないことを判定することにより、物体検出装置の構成を簡易化することができる。なお、車速センサ以外にも、例えば車両周辺を撮像可能なカメラを設け、撮像された景色の変化に応じて自車両が停止状態でないことを判定するなど、車両に搭載された各種のセンサや電子機器を利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】物体検出手段の一例としての超音波センサを示す断面図。
【図2】本発明に係る車両用物体検出装置の概略図。
【図3】本発明に係る車両用物体検出装置のブロック図。
【図4】図3の制御回路によって実行される物体検出プログラムを示すフローチャート。
【図5】超音波センサの送受信に基づく各種波形を例示する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明に係る車両用物体検出装置1(図2、図3参照)で用いられる物体検出センサとしての超音波センサユニット(以下、単に超音波センサという)10を示す。超音波センサ10は、例えば圧電効果により圧電セラミック振動子を振動させて超音波を発射し、また圧電セラミック振動子に入射した超音波の振動を電気信号に変換する送受信兼用型のものであり、超音波マイク11、ケース12、制御基板13などを含んで構成されている。
【0014】
超音波マイク(マイクロフォン)11には、上記した圧電セラミック振動子が組み込まれている。超音波マイク11は、クッション材14を介してケース12に収容されている。
【0015】
ケース12は、コネクタ一体型のものであり、図示を省略するばね部材により鍔部を有する円環状のベゼル15を介して車両のバンパBPに一体的に組み付けられるようになっている。ケース12は、超音波マイク11、制御基板13、充填材(例えばウレタン)等を収容した状態でカバー17により封止されている。
【0016】
制御基板13は、図2に示すように、送波回路13a、受波回路13b、波形整形回路13c、距離演算回路13d及び通信回路13eを備えている。送波回路13aは、超音波を発信する回路であり、例えば約66.7kHzの超音波信号を発振する発振回路と、上記した圧電セラミック振動子を駆動する駆動回路とを含んで構成されている。
【0017】
受波回路13bは、送波回路13aが発信した発射波に基づく反射波を受信する回路であり、例えばオペアンプを用いた検出回路を含んで構成されている。波形整形回路13cは、受波回路13bからの検出信号を整えるための回路であり、例えば整流回路、平滑回路、フィルタ回路、レベル判定回路などを含んで構成されている。
【0018】
距離演算回路13dは、波形整形回路13cで得られた反射波の波形に基づいて発射波が反射して戻って来るまでの時間を計測し、その時間に基づいて物体までの距離を演算し、あるいは残響波の長さを演算する回路である。通信回路13eは、距離演算回路13dで演算された距離を表す検出信号(例えばシリアル信号)などをECU20に送信する回路である。
【0019】
上記した超音波センサ10は、図3に示すように、車両の前後に設けられたバンパBPの各コーナ位置と、後方バンパBPのセンタ位置(左右寄り2箇所)とに配置されている。具体的には、超音波センサ10が、それぞれ左前方位置のFLコーナセンサ10a、右前方位置のFRコーナセンサ10b、左後方位置のRLコーナセンサ10c、右後方位置のRRコーナセンサ10d、後方左寄りセンタ位置のRLCセンタセンサ10e、後方右寄りセンタ位置のRRCセンタセンサ10fとして設けられている。
【0020】
各センサ10a〜10fには、電源用、GND用、通信用の信号線(inとout)を接続するための端子(例えば6個)が設けられている。そして、FLコーナセンサ10aの各端子は、信号線を介してECU20の対応端子に接続されるとともに、信号線を介してFRコーナセンサ10bの対応端子に接続されている。
【0021】
同様に、RLコーナセンサ10cの各端子は、信号線を介してECU20の対応端子に接続されるとともに、信号線を介してRLCセンタセンサ10eの対応端子に接続されている。順次、RLCセンタセンサ10eの各端子はRRCセンタセンサ10fの対応端子に接続され、RRCセンタセンサ10fの各端子はRRコーナセンサ10dの対応端子に接続されている。
【0022】
ECU(Electronic Control Unit)20は、通信回路21F,21R、電源回路22、ブザー駆動回路23F,23R、表示駆動回路24及び各種インターフェース(I/F)回路25〜27、及びこれらが接続される制御回路28を備えている。
【0023】
通信回路21Fは、FLコーナセンサ10a及びFRコーナセンサ10bからの距離を表す検出信号をそれぞれ制御回路28に入力する。通信回路21Rは、RLコーナセンサ10c、RRコーナセンサ10d、RLCセンタセンサ10e及びRRCセンタセンサ10fからの距離を表す検出信号等をそれぞれ制御回路28に入力する。
【0024】
電源回路22は、バッテリBの電圧(12V)を定電圧(5V、8V)化する機能を有し、メインスイッチMA及びイグニッションスイッチIGを介してバッテリBに接続されている。ブザー駆動回路23F,23Rは、それぞれ車室内の例えば前後に設けられたブザー31,32(報知手段)に駆動電流を流す。表示駆動回路24は、車室内の操作パネルに設けられた表示器33(報知手段)に駆動電流を流す。
【0025】
インターフェース(I/F)回路25は、シフトレンジ(シフトポジション)がR(リバース)レンジに切り替えられたとき、その切り替えを表す検出信号を制御回路28に入力する。インターフェース(I/F)回路26は、パーキングブレーキが作動状態となってパーキングブレーキスイッチPKBがオンとなったときは、そのオン信号を制御回路28に入力する。インターフェース(I/F)回路27は、車速センサ34により検出された車速を表す検出信号を制御回路28に入力する。
【0026】
制御回路28(制御手段、判定手段、報知手段)は、CPU,ROM,RAM,フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ(記憶手段),I/O,A/D変換部,D/A変換部などを主要構成部としており、メインスイッチMA及びイグニッションスイッチIGのオン後の所定時間毎にROM等に記憶されている図4の物体検出プログラムを繰り返し実行し、その実行に応じた駆動信号をブザー駆動回路23F,23R及び表示駆動回路24に出力する。
【0027】
次に、上記のように構成された実施例1の作動について説明する。運転者がイグニッションスイッチIGをオンし、さらにメインスイッチMAをオンすると、制御回路28は、図4の物体検出プログラムの実行を開始する。
【0028】
制御回路28は、初期化処理を行った後(S1)、PKBがオン、すなわちパーキングブレーキが作動状態であるか否かを判定する(S2)。
【0029】
そして、制御回路28は、PKBがオフであれば(S2:NO)、シフトレンジがRレンジであるか否かを判定する(S3)。シフトレンジがRレンジであるか(S3:YES)、あるいはシフトレンジがRレンジ以外のD(ドライブ)レンジ等であって車両が低速状態(車速センサ34からの車速信号に基づく車速が例えば15km/h未満)であれば(S3:NO、S4:YES)、S5以降の処理を実行する。
【0030】
具体的には、制御回路28は、シフトレンジがRレンジ以外のDレンジ等に切り替えられた場合は、各コーナセンサ10a〜10dを駆動制御して各コーナセンサ10a〜10dの検出信号を入力する一方、シフトレンジがRレンジに切り替えられた場合は、各コーナセンサ10a〜10dと各センタセンサ10e,10fを駆動制御して各センサ10a〜10fの検出信号を入力する(S5)。
【0031】
次に、制御回路28は、各センサ10a〜10d等の検出信号に基づいて物体検出処理を実行する(S6)。例えば図5(a)に示すように、センサ10a〜10d等のいずれもが自身の発信した発射波U1に基づく反射波U1’を受信しない場合は、前後ブザー31,32及び表示器33を停止状態に維持する。
【0032】
これに対して、例えば図5(b)に示すように、センサ10a〜10d等の少なくともいずれか一つにおいて自身が送信した発射波U1に基づく反射波U1’を受信した場合は、自車両と物体との位置関係に応じてブザー31,32の吹鳴態様(断続音、速い断続音、連続音)と、表示器33の表示態様(点滅、点灯)とを決定し、その決定を実行すべくブザー駆動回路23F,23Rと表示駆動回路24に対して駆動信号を出力する。
【0033】
この実施例1では、PKBがオンである場合が、超音波センサ10の作動を禁止する禁止条件として設定され、制御回路28は、原則としてその禁止条件が解除されない限り、超音波センサ10を停止制御する禁止処理を実行する。ところで、この実施例1では、PKBのオン信号を利用して禁止処理を実行する場合は、車速センサ34からの車速信号を参照することとし(S8)、PKBのオン信号を単独で利用して禁止処理を行わないようにしている。
【0034】
具体的には、制御回路28は、PKBがオンで、しかも自車両が停止状態(車速センサ34からの車速信号に基づく車速が0)である場合に限って、超音波センサ10の作動を禁止し(S2,S8:YES)、PKBがオンであっても、自車両が動き出している場合は(車速≠0)、S5以降の処理を実行する(S2:YES、S8:NO)。つまり、パーキングブレーキが作動状態であっても、シフトレンジがDレンジである場合はアクセルペダルを踏むと車両が動き出してしまうため、PKBのオン信号を用いる場合は車速センサ34からの車速信号も確認し、S2の判定処理とS8の判定処理とをANDで判断して禁止処理を行うようにした。
【0035】
以上の説明からも明らかなように、上記実施例1によれば、禁止条件の一つであるパーキングブレーキの作動が解除されない場合であっても(S2:YES)、自車両が停止状態でなくなった場合は(S8:NO)、超音波センサ10が駆動制御される(S5)。このため、超音波センサ10を有効利用して、車両の障害物への接近を表示器33により運転者に報知することで不慮の衝突を良好に防止することができる。
【0036】
また、上記実施例1では、車速センサ34により検出される車速信号に基づいて車両が停止状態でないことを判定するため(S8)、車両用物体検出装置1の構成を簡易化することができる。
【0037】
なお、上記実施例1では、物体検出センサとして超音波センサ10を用いたが、これに限らず、例えば超音波以外の周波数帯域の電磁波の送受信により物体を検出するセンサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 車両用物体検出装置
10(10a〜10f) 超音波センサ(超音波センサユニット、物体検出センサ)
20 ECU
28 制御回路(制御手段、判定手段、報知手段)
31,32 ブザー(報知手段)
33(33a〜33g) 表示器(報知手段)
U1 発射波
U1’ 反射波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺部に設けられ、発射波を発射し障害物などの物体で反射した反射波を受信する物体検出センサと、所定の禁止条件を満たす場合は前記物体検出センサを停止制御する一方、前記禁止条件が解除された場合は前記発射波を発射するよう前記物体検出センサを駆動制御する制御手段と、前記物体検出センサの送受信に基づいて自車両周辺に存在する物体の有無を判定する判定手段と、前記判定手段により自車両周辺に物体有りと判定されたとき運転者に報知する報知手段とを備えた車両用物体検出装置において、
前記制御手段は、前記禁止条件が解除されない場合であっても、自車両が停止状態でなくなったことを条件として、前記物体検出センサを駆動制御するように設定されていることを特徴とする車両用物体検出装置。
【請求項2】
前記禁止条件には、自車両に設けられたパーキングブレーキが作動状態であることを示すパーキングブレーキスイッチのオンが含まれる請求項1に記載の車両用物体検出装置。
【請求項3】
前記制御手段は、自車両に設けられた車速センサにより検出された車速に基づいて、自車両が停止状態でないことを判定する請求項2に記載の車両用物体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−88061(P2012−88061A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232362(P2010−232362)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】