説明

車両用空気調和装置

【課題】表示装置を効率的に冷却することができる車両用空気調和装置を提供する。
【解決手段】車両構体4に搭載された空気調和機7A〜7Cと、この車両構体4内の空調空間15に冷却された空調空気を吹き出す吹出口14a,14bと、この空調空間の空調空気を吸い込む吸込口9c,9dと、車両構体4の内面と外面との間隙に形成されて空調空間15の空気を通風させるパネル通風路27と、パネル通風路27に背面を向けた状態で車両構体4の内面部17a,18a側と外面部17b,18b側の少なくとも一方に配設された表示パネル26a,26bと、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は車両用空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電車等の鉄道車両では、各車両毎に、空気調和機を搭載し、各車両毎に車内を冷暖房するものが知られている。
【0003】
一方、近年では、電車の車内に、LCD(液晶表示装置)等の表示装置を設け、このLCDに、商品や企業等の広告等を表示するものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−297075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に表示装置は、その駆動により発熱し、所要温度以上に昇温する場合がある。その場合、表示装置の表示効率が低下するうえに表示装置の寿命が短くなる虞がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、表示装置を効率的に冷却することができる車両用空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、車両構体に搭載された空気調和機と、前記車両構体内の空調空間に前記空気調和機からの空調空気を吹き出す吹出口と、車両構体内の空調空間の空調空気を吸い込む吸込口と、前記車両構体の内面と外面との間隙に形成されて前記空調空気を通風させる通風路と、この通風路に背面を向けた状態で前記車両構体内面側と外面側の少なくとも一方に配設された表示装置と、を具備している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置を具備した電車の横断面を主に示す図。
【図2】図1の一部側面図。
【図3】図1で示す電車の側面図。
【図4】図1〜図3で示す表示ユニットを電車の窓に取り付けるときの要部拡大斜視図。
【図5】図1で示す通風路を拡大して示す縦断面図。
【図6】図1〜図3で示す表示ユニットを駆動する表示制御システムのブロック図。
【図7】図1〜図3で示す表示ユニットの内面パネルの表示例を示す図。
【図8】図1〜図3で示す表示ユニットの外面パネルの表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
【0010】
図3は本発明の一実施形態に係る車両用空気調和装置1を具備した電車2の1両3分の側面図、図1はこの電車2の横断面を主に示す図である。
【0011】
電車2は、1車両3でも複数の車両3,3,…を連結したものでもよく、この1車両3の車両構体4は、その長手方向に例えば4つのドア5,5,…を設けた通勤用の電車2の場合を示している。これらドア5,5,…同士の間には、例えば嵌め殺し等の窓6,6,…を設けている。本実施形態における電車2は、空調の温度区分範囲として、その車両構体4内を、図3中白矢印で示す車両進行方向(車両3の長手方向)に、その進行方向前端から後端に向けて複数、例えば3つのゾーンA,B,Cにそれぞれ区分している。
【0012】
電車2は、その車両構体4の屋根4aに、各ゾーンA〜C毎に、その長手方向中間部にて、分散配置式の空気調和機7A,7B,7Cをそれぞれ設けている。各空気調和機7A〜7Cは、車両構体4の屋根4a上に配設された、側面形状が長方形のエアコンケーシング8A,8B,8Cからなる。これら各エアコンケーシング8A〜8Cは、その進行方向の例えば前半部を室外機能部とし、進行方向後半部を室内機能部に構成している。すなわち、各エアコンケーシング8A〜8Cは、空気調和機7A〜7Cの冷凍サイクル部品の室外側の機能部品と、室内側の機能部品とを一体に収納した、いわゆるモジュールドタイプで、その各前半部内に図示しない左右一対の室外熱交換器と圧縮機及び室外ファンを配設している。また、各エアコンケーシング8A〜8Cは、その後半部内に、図1で示すように、室内側の機能部品である左右一対で、逆ハの字状に配置された室内熱交換器9a,9bと、その間に位置する室内ファン10が設けられている。
【0013】
各室内熱交換器9a,9bの近傍の車両構体4の屋根4aには、それぞれ空調後の空気の流入口9c,9dとなる開口が形成され、これら流入口9c,9dにより各エアコンケーシング8A〜8C内と車両構体4の天井裏12とをそれぞれ連通させている。
【0014】
そして、車両構体4は、その内側の天井11の天井裏12に送風ダクト13を配設している。すなわち、車両構体4の上部は外装である屋根4aと内装となる天井11との間に天井裏12の空間が形成されており、その天井裏12に送風ダクト13が配置されている。冷却された空調空気が流れる通風路である送風ダクト13は、図1中、その上端を室内ファン10の送風口に連通させ、下端の天井11側を、天井11に設けられた左右一対の吹出口14a,14bに連通させている。これにより、図1中、天井11の吹出口14a,14bから車内の空調空間15に冷風の空調空気を吹き出すように構成されている。
【0015】
空調空間15は、車両構体4の天井11と床16と左右一対の側壁部17,18とにより囲まれた、乗客の乗車空間であり、車両構体4の長手方向に複数、例えば3つの温度帯が異なるゾーンA〜Cを形成している。実際の車両構体4の途中には仕切りは無いため、車両内部では3つのゾーンA〜Cは一体に連通している。
【0016】
車両構体4の左右一対の各側壁部17,18は、車両構体4の内面を形成する内面部17a,18aと、車両構体4の外面を形成する外面部17b,18bとを有する。
【0017】
これら左右一対の各外面部17b,18bと内面部17a,18aは、その間に、厚さ方向に所要の間隙をそれぞれ形成しており、これら間隙は上部通風路19,20となる。左右一対の外面部17b,18bは、図1に示すように、その上端部を屋根4の左右端にそれぞれ一体に連成し、下端部を床16の左右両端部にそれぞれ一体に連成している。また、左右一対の各外面部17b,18bには、所要高さにおいて、例えば嵌め殺し等の所要大の矩形の窓6,6,…をそれぞれ形成している。一方、窓6,6,…が形成されている外面部17b,18bに対向する位置には、内面部17a,18aは設けられておらず、開口となっている。したがって、窓6の内側には車内から車外方向に凹んだ矩形凹部25が形成されている。
【0018】
一方、左右一対の内面部17a,18aは、その上端部を、天井11の図1中左右両端部にそれぞれ一体に連成し、左右一対の上部通風路19,20を天井裏12にそれぞれ連通させている。また、左右一対の内面部17a,18aには、その下部の車内側に、乗客が座るためのベンチシート等の左右一対のシート21,22を設け、これらシート21,22の下方に吸込口23,24をそれぞれ設けている。これら吸込口23,24は左右一対の下部通風路25,26にそれぞれ連通している。これら一対の下部通風路25a,25bは左右一対の外面部17b,18bの下部と、各シート21,22の背もたれの背面が固定された車両構体4の内面部17a,18aの下部との間隙により形成されている。
【0019】
そして、図4に示すように窓6の内側の矩形凹部25内には、表示ユニット26が嵌入され、固定される。なお、本実施形態においては、車両3の左右の窓6にそれぞれ矩形凹部25を設けているが、矩形凹部25を一方の側面にのみ設け、他方の側面は窓6を外面部17b,18bだけでなく、内面部17a,18aに設け、二重の窓6としても良い。
【0020】
表示ユニット26は、矩形凹部25とほぼ同形同大、または若干小形の内面表示パネル26aと外面表示パネル26bとを所要(例えば50mm)の間隙g(図5参照)を置いて同心状に背中合わせに対向配置し、これら内,外面表示パネル26a,26bの左右側面を左右一対の側板26c,26dにより固着して一体化することにより、角筒状のユニットに形成されている。そして、この表示ユニット26は、その図4,図5中の上下両端をそれぞれ開口させて上部開口26eと下部開口26fをそれぞれ形成し、これら上,下部開口26e,26f同士に連通する間隙gを、空調空間15内の空気を通風させるパネル通風路27として形成している。このように、矩形凹部25内に、表示ユニット26を嵌め込み、所要の固定装置により固定して組み込むことで内面表示パネル26aが車両構体内面側に配設され、外面表示パネル26bが車両構体外面側に配設されることになる。ここで、内,外面表示パネル26a,26bの各々が表示装置となる。
【0021】
これらパネル通風路27は、その上方の上部通風路19,20と、下方の下部通風路25a,25bとに上下方向でそれぞれ連通している。
【0022】
内,外面表示パネル26a,26bは、例えば約50〜60インチ等所要大の横長薄形カラーLCD(液晶表示装置)パネルから形成され、前面となる各表示面を外側、すなわち車内及び車外に向け、TFT(Thin Fillm Transistor)等駆動装置を配設した各背面を、パネル通風路27側にそれぞれ向けて対向配置されている。このため、車外からは窓6を介して外面表示パネル26bの表示面における表示内容を見ることができ、車内からは直接露出している内面表示パネル26bの表示面における表示を見ることができる。 なお、内,外面表示パネル26a,26bは、DSTN液晶ディスプレイ(LCD)やPDP(Plasma Display Panel)、EL(エレクトロ・ルミネセンス)等の薄形ディスプレイでもよい。これらの内,外面表示パネル26a,26bを制御・駆動するための電子・電気部品は、発熱部品であり、それぞれの表示パネル26a,26bの背面は放熱面となっている。
【0023】
なお、各表示パネル26a,26bの寸法は、例えば幅(wa):約1300mm、高さ(h):約1000mm、内,外面表示パネル26a,26bの厚さ(da):約15mm、窓6のガラスの厚さ(db):10mmであり、パネル通風路27の幅(wb):50mmである。
【0024】
また、各表示ユニット26の長手方向(幅方向)両側の車両構体4には、例えばヒンジドア式片開きの側面窓28,28がそれぞれ配設されている。
【0025】
そして、床16近傍の左右一対の吸込口23,24の車両構体4内の空調空間の空調空気の入り口側には、ロールフィルタ29がそれぞれ配設されている。各ロールフィルタ29は、巻取り式集塵装置であり、図示しない長尺帯状でメッシュを形成したエアフィルタを巻き付けた送りローラと、そのエアフィルタを所要時間毎に間欠的に所要長巻き取る巻取りローラとを所要の間隔を置いて対向配置し、各吸込口23,24を、このエアフィルタにより覆っている。これにより吸込み空気に含まれる塵埃が、通風路である下部通風路25a,25b、パネル通風路27及び上部通風路19,20に流れ込むことを防止する。
【0026】
図6は、上記表示ユニット26の表示を制御する表示制御システム30の機能ブロック図である。この図6に示すように、表示制御システム30は、内面表示パネル26aと外面表示パネル26bにおける表示内容を、例えば空調空間15の各ゾーンA〜C毎に、あるいは一斉に制御する表示制御手段31を具備している。
【0027】
表示制御手段31は、例えばマイクロプロセッサ等から構成され、その入力側には、各ゾーンA〜Cの空気調和機7A〜7Cからの設定温度を示す設定温度信号、駅近接検出器32からの駅近接検出信号、ドア開閉スイッチ33からのドア開指令信号またはドア閉指令信号がそれぞれ入力される。
【0028】
駅近接検出器32は、図示しない駅の近傍に配設されたキロポストから次の駅への距離が所定値に達したときに、駅近接検出信号を表示制御手段31に与える。
【0029】
ドア開閉スイッチ33は、車掌等による手動、または自動で開閉操作され、このドア開閉スイッチ33が開または閉操作されたときに、その開指令信号または閉指令信号を表示制御手段31とドア駆動装置34とに与える。ドア駆動装置34はドア開指令信号を受けたときに、ドア5を開扉させ、ドア閉指令信号を受けたときに、ドア5を閉扉させる。
【0030】
前述のとおり本実施形態における電車2は、空調の温度区分範囲として、3つのゾーンA,B,Cにそれぞれ区分されている。そこで、表示制御手段31は、電車2が駅で停車し、ドア開閉スイッチ33からドア開指令信号を受けたときに、各ゾーンA〜Cの表示ユニット26の外面表示パネル26bの表示を、図3に示すように各ゾーンA〜C毎に、空調運転のモード表示を行う。例えば、図3に示すように冷房運転時に、Aゾーンの外面表示パネル26Aには、Aゾーンの設定温度(例えば25℃)の表示と、『この辺は冷房を弱くしています。』等の文字を表示する。また、B,Cゾーンの各外面表示パネル26B,26Cには、その各設定温度(例えばBゾーンが26℃、Cゾーンが25℃)の表示と、『この辺は冷房が普通となっています。』(Bゾーン)や『この辺は冷房が強めとなっています。』(Cゾーン)等の冷房ゾーンを文字等により表示する。このために、これから電車2に乗車しようとする乗客は、これら外面表示パネル26bの冷房ゾーンに関する表示を見ることにより、好みの冷房ゾーン(冷房温度)A〜Cを選択して乗車することができる。また、これら冷房強弱モードを表示するときの外面表示パネル26bの地色を、冷房の強弱に応じて、例えばブルーの濃度を変えてイメージを強調するように表示してもよい。また、これら外面表示パネル26bの冷房ゾーン表示と同じ冷房ゾーン表示は、駅のプラットホーム上の複数のホームドア(開閉柵)35にそれぞれ配設された複数の表示パネル35a,35a,…に、各ホームドア35が開く所定時間(例えば10秒)前に所定時間(例えば5秒間)、電車2の各冷房ゾーンA〜Cに対応する位置でそれぞれ表示される。このために、乗客は、好みの温度の冷房ゾーンA〜Cを表示している表示パネル35aを有するホームドア35から電車2内に乗車することにより、電車2内の好みの温度の冷房ゾーンA〜Cに乗車できる。なお、ホームドア35は、駅のプラットホーム上に配設され、電車2がプラットホームに進入して停止し、電車2の乗車側のドア5,5,…が開扉したときに、その開扉ドア5,5,…の位置に対応して開扉し、この開扉時以外は常時閉扉してプラットホーム上の乗客が線路上等へ転落する等の防止を図っている。そして、各ホームドア35は、そのプラットホーム内側に向いた内面に、LCDやPDP、EL等の表示パネル35aを配設しているが、この表示パネル35aは、図示しない表示制御手段により表示されている。
【0031】
また、上記電車2の表示制御手段31は、ドア閉指令信号を受けたときに、外面表示パネル26bの冷房ゾーン表示とほぼ同様の冷房ゾーン表示を各ゾーンA〜Cの内面表示パネル26aにも所定時間(例えばドア閉指令信号の入力から20秒間)表示する。
【0032】
さらに、表示制御手段31は、ドア閉指令信号を受けて、内面表示パネル26aに上記冷房ゾーン表示を所定時間表示した後、広告等の車内表示に切り換える。この車内表示は、内面表示パネル26aが配置されているゾーンA〜Cに関係なく、一斉に表示される。表示制御手段31は表示ユニット26に表示される各種情報を記録した図示しない記録媒体と、この記録媒体から所要の情報を適宜読み込み、表示ユニット26に表示するための表示制御プログラムを記載したROM等のメモリーと、を具備している。この記録媒体は、更新可能または着脱可能に構成されている。
【0033】
図7はこの内面表示パネル26aによる車内表示36の一例を示しており、商業広告表示36a、車両運行情報や交通渋滞情報、天気予報、ニュース速報等の臨時スポット表示36b、乗換え案内等表示36c等がある。
【0034】
これら車内表示36は、表示制御プログラムに従って電車2の走行時に適宜切り換えられて表示されるが、表示制御手段31は、駅近接検出器32から駅近接検出信号を受けたときに、商業広告等表示36aから電車乗換え案内等表示36cに切り換える。表示制御手段31は、この電車乗換え案内等表示36cを、電車2が駅に到着してドア開指令信号を受けたとき、または電車2が発車のため再びドア5を閉扉するためのドア閉指令信号を受けたときに、商業広告表示36aに再び切り換える。さらに、表示制御手段31は、この商業広告表示36aを、臨時ニュース入力時等所要時、適宜タイミングで臨時スポット表示36bに切り換える。
【0035】
図8は、表示制御手段31により各外面表示パネル26bに表示する車外表示37の表示例を示している。これら車外表示37としては、例えば電車2の行き先表示の他、種々の表示例を適宜切り換え、またはこれら複数の表示例を適宜組み合せて同時に表示する。これら表示ユニット26に表示される各種情報は図示しない運転室や車掌室内に設置された情報提供装置から表示制御手段31に信号線を介して適宜提供されるように構成してもよい。また、この情報提供装置はインターネットを介して各種情報が提供されるように構成してもよい。
【0036】
次に車両用空気調和装置1の作用を説明する。
【0037】
まず、電車2内の分散配置式の例えば3台の空気調和機7A〜7Cが例えば冷房運転されると、これら空気調和機7A〜7Cは、各々の設定温度(例えば27,26,25℃)により運転される。このために、電車2内の空調空間15は、強冷から弱冷までの3つの冷房ゾーンA〜Cが形成される。このために、乗客は好みに応じて冷房ゾーンA〜Cを移動できるので、顧客満足度の向上を図ることができる。
【0038】
そして、各空気調和機7A〜7Cの吹出口14a,14bが車両構体4の天井11に形成される一方、空気調和機7A〜7Cの流入口9c,9dに連通する吸込口23,24が吹出口14a,14bの下方のシート21,22の下方で開口されているので、例えば吹出口14a,14bの近傍に吸込口23,24が並設している場合に、吹出口14a,14bから吹き出された空調空気の多くが直ちに吸込口23,24に吸い込まれて空調効率が低下するショートサーキットを低減できる。
【0039】
そして、吸込口23,24内に吸い込まれた空調空気は、ロールフィルタ29,29によりそれぞれ浄化されてから、車両構体4の側壁部外面17b,18bと側壁部内面17a,18aとの間隙により形成された下部通風路25a,25b、パネル通風路27および上部通風路19,20からなる通風路を通風して屋根裏12へ流入し、さらに、この屋根裏12から空気調和機7A〜7Cの流入口9c,9dを通風して各エアコンケーシング8A〜8Cに流入し、その際に室内熱交換器9a,9bと熱交換して冷却される。なお、下部通風路25a,25b、パネル通風路27および上部通風路19,20からなる通風路は、その側面が断熱材で覆われており、車両構体4の内面を形成する内面部17a,18aと、車両構体4の外面を形成する外面部17b,18bの間に形成されている通風路以外の間隙空間から遮熱されている。
【0040】
この室内熱交換器9a,9bで冷却された冷風(空調空気)は、室内ファン10により送風ダクト13へ送風され、送風ダクト13の吹出口14a,14bから各冷房ゾーンA〜Cの空調空間15へそれぞれ吹き出されて、これら冷房ゾーンA〜Cを冷房する。これら冷房ゾーンA〜Cは、各々の設定温度で冷房される。これら冷房ゾーンA〜Cをそれぞれ冷却した空調空気は再び吸込口23,24内に吸い込まれる。以後、これの繰返しにより各ゾーンA〜Cが冷却される。これらゾーンA〜Cは、各空気調和機7A〜7Cの各設定温度一定で冷房運転されるので、強冷から弱冷までの3つの冷房ゾーンA〜Cに形成される。
【0041】
そして、吸込口23,24により吸い込まれた冷風は、各表示ユニット26の内,外面表示パネル26a,26b背面間の間隙に形成されたパネル通風路27,27をそれぞれ通風する。したがって、空気調和機7A〜7Cの各室内熱交換器9a,9bを通過して、冷却された空調空気は、吹出口14a,14bから車両内の空調空間15、吸込口23,24、パネル通風路27、流入口9c,9dを順次循環して、再び室内熱交換器9a,9bを通過する空調空気の循環経路が形成されている。したがって、冷房運転時の冷却された空調空気は駆動時に発熱する各表示パネル26a、26bを良好に冷却することができる。
【0042】
すなわち、このパネル通風路27は、表示ユニット26の内面表示パネル26aと外面表示パネル26bの背面同士が対向する間隙に形成されており、内・外面表示パネル26a、26bの背面には、TFT等の表示パネルの駆動装置が配置された放熱面が配置されているので、これら駆動装置を有効に冷却することができる。このために、表示ユニット26の内面表示パネル26aと外面表示パネル26bの高温昇温による寿命の短命化や誤動作等の不具合を低減できる。
【0043】
また、表示ユニット26の電車2の外面側にある外面表示パネル26bにおいて、電車2内の冷房ゾーンA〜Cをそれぞれ表示するので、駅から乗車する乗客は好みに応じた冷房ゾーンA〜Cを選択して乗車できる。または電車2内の内面表示パネル26aにも冷房ゾーンA〜Cを表示するので、乗客は電車2内を好みの冷房ゾーンA〜Cに移動することができる。これにより、顧客満足度の向上を図ることができる。
【0044】
さらに、表示ユニット26は電車2の窓6に取り付けられるので、既存の車両構体4を大幅に改造せずに表示ユニット26を簡単に取り付けることができる。
【0045】
また、電車2内の空調空気をロールフィルタ29により浄化して車内を循環させるので、車内の空気を浄化できる。しかも、このロールフィルタ29のフィルタは洗浄等により繰返し使用できるので、コスト低減を図ることができる。さらに、浄化された空気が内,外面表示パネル26a,26bの背面同士の間隙であるパネル通風路27を通風するので、その通風中の塵埃等の異物が内,外面表示パネル26a,26bの背面に形成されたTFT等の駆動装置に付着して汚染されることを低減することができる。また、これにより、駆動装置等への塵埃の付着による熱伝導効率の低下を抑制できる。つまり、冷却効率の向上を図ることができる。
【0046】
そして、乗客は表示ユニット26の商業広告やニュース等の車内表示36や冷房ゾーン表示等の車外表示37を見ることにより、必要な情報を適宜取得できる。このために、乗客の顧客満足度のさらなる向上を図ることができる。
【0047】
なお、上記実施形態では、例えば5つドア用の通勤用の車両構体4を使用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ドア5が4個以下、または6個以上の車両構体4を使用してもよく、電車2も車両3を複数連結したものでもよい。
【0048】
また、上記実施形態では電車2内を3つの冷房ゾーンA〜Cにゾーニングする場合について説明したが、本発明は、冷房ゾーンA〜Cは2つ以下でも、3つ以上でも適用できる。しかも、空気調和機7A〜7Cを暖房運転して一両3の電車2内を複数の温度の暖房ゾーンにゾーニングしてもよい。
【0049】
さらに、表示ユニット26により表示される情報は上述の車内表示36や車外表示37に限定されない。
【0050】
なお、上記実施形態では車両構体4の上部に冷却された空調空気の吹出口14a,14bを、下部に吸込口23,24を配置した空気調和機7A〜7Cを例に説明したが、空調空気の吹出口14a,14bと吸込口23,24の位置は、ショートサーキットを生じない位置であれば、どこに配置しても良い。
【0051】
また、上記実施形態では内面表示パネル26aと外面表示パネル26bの背面同士に間隙を設けて組み合せた表示ユニット26を用いた例で説明したが、いずれか一方の表示パネルのみとして、他方の表示パネルの位置には、単に車両構体4の外面部17b,18bや内面部17a,18aもしくは単なる板とし、一方の表示パネルの背面と対向する外面部17b,18bや内面部17a,18aや板との間に間隙を設け、その間隙をパネル通風路27としても良い。
【0052】
要は、内,外面表示パネル26a,26b(表示装置)の背面にある放熱面が空調空気の循環流に晒され、冷却されればよい。このため、上記実施形態では、電車2内を冷却後の空調空気の戻り空気を表示パネル26の背面に通風したが、上記実施形態における空調空気の流れを反対とし、吸込口23,24を吹出口14a,14bとし、吹出口14a,14bを吸込口23,24として機能させるとともに、下部通風路25a,25b、パネル通風路27及び上部通風路19,20からなる通風路を車両を冷却する前の空気調和機7A〜7Cからの空調空気の通路として用い、途中のパネル通風路27に表示装置の背面を配置し、表示装置を冷却後の空調空気を電車2内に吹き出してもよい。但し、この場合には低温の空調空気に表示装置が晒されるため、結露の可能性がある。そのため、表示装置の内部の電子・電気部品に対する結露対策が必要となる場合がある。
【0053】
以上のとおり、車両構体に搭載された空気調和機と、この車両構体内の空調空間に前記空気調和機からの空調空気を吹き出す吹出口と、車両構体内の空調空間の空調空気を吸い込む吸込口と、車両構体の内面と外面との間隙に形成されて前記空調空気を通風させる通風路と、この通風路に背面を向けた状態で車両構体内面側と外面側の少なくとも一方に配設された表示装置とを備えることで、表示装置を良好に冷却することができる車両用空気調和装置を得ることができる。
【0054】
そして、本実施形態は、表示装置を前記通風路の車両構体内面側と外面側とに、背中合せでそれぞれ配設してなる表示ユニットを具備しているので、この表示ユニットを車両構体に組み込む際の容易性の向上を図ることができる。
【0055】
なお、上記実施形態では空気調和機の冷房運転のみを説明したが、空気調和機を冷房のみならず暖房可能としたヒートポンプタイプとした場合、暖房時の暖気が空調空気として表示装置の背面にある放熱面を流れることになる。しかしながら、暖房時は外気が低温で、空調空気も22〜28℃程度の温度であるため、この場合でも表示装置の放熱が可能である。
【0056】
以上、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1…車両用空気調和装置、2…電車、4…車両構体、7A,7B,7C…空気調和機、14a,14b…左右一対の吹出口、15…空調空間、17,18…左右一対の側壁部、17a,18a…内面部、17b,18b…外面部、19,20…左右一対の上部通風路、23,24…吸込口、26…表示ユニット、26a…内面表示パネル、26b…外面表示パネル、27…パネル通風路、29…ロールフィルタ、30…表示制御システム、31…表示制御手段、A,B,C…3つの冷房ゾーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両構体に搭載された空気調和機と、
前記車両構体内の空調空間に前記空気調和機からの空調空気を吹き出す吹出口と、
前記車両構体内の空調空間の空調空気を吸い込む吸込口と、
前記車両構体の内面と外面との間隙に形成されて前記空調空気を通風させる通風路と、
この通風路に背面を向けた状態で前記車両構体内面側と外面側の少なくとも一方に配設された表示装置と、
を具備していることを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
前記通風路は、前記空気調和機の吸込口に連通していることを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
前記表示装置を前記通風路の車両構体内面側と外面側とに、背中合せでそれぞれ配設してなる表示ユニットを具備していることを特徴とする請求項1または2記載の車両用空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−126175(P2012−126175A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277357(P2010−277357)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(505461072)東芝キヤリア株式会社 (477)
【Fターム(参考)】