説明

車両用空気調和装置

【課題】車両衝突時等にあって、熱交換器間の衝突による破損を防止でき、しかも、空調ケースの外部に突出した熱交換器を乗員等が直接接触するのを確実に防止できる。
【解決手段】送風路5が設けられた空調ケース2と、空調ケース2に固定され、送風路5に配置されたヒータコア11と、空調ケース2の外部に突出するヒータコア11を収容する収容体20とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調ケース内に熱交換器を配置した車両用空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空調ケース内に熱交換器であるヒータコア及びエバポレータを収容する空調ユニットを備えた車両用空気調和装置が提案されている。このような車両用空気調和装置では、乗員席の前方より空調風を車室内に吹き出させるため、通常では空調ユニットを乗員席の前方位置に設置する。この位置に空調ユニットを設置した場合、車両衝突時等で車両後方(乗員席側)方向の過大負荷がヒータコアに作用すると、ヒータコアが空調ケースの外部に飛び出し、乗員等が高温のヒータコアに直接接触する恐れがある。
【0003】
このような事態を回避するために、空調ケースより離脱したヒータコアとエバポレータを互いに衝突する方向にガイドするガイド部材を設けたものが提案されている(特許文献1参照)。この従来例によれば、ヒータコアをエバポレータに衝突させることによってヒータコアに作用した衝撃力を吸収し、ヒータコアが乗員席の近く(乗員室内)まで飛び出すのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−231401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来例では、ヒータコアがエバポレータに衝突するため、ヒータコアやエバポレータが破損する恐れがある。
【0006】
又、ヒータコアに作用する衝撃力が想定以上に強いと、ヒータコアがエバポレータに衝突後に空調ケースの外部に露出する可能性があり、乗員等がヒータコアに直接接触することを確実に防止することができない。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、車両衝突時等にあって、熱交換器間の衝突による破損を防止でき、しかも、空調ケースの外部に突出した熱交換器を乗員等が直接接触するのを確実に防止できる車両用空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、送風路が設けられた空調ケースと、前記空調ケースに固定され、前記送風路に配置された熱交換器と、前記空調ケースの外部に突出する前記熱交換器を収容する収容体とを備えたことを特徴とする車両用空気調和装置である。
【0009】
前記熱交換器の乗員席側を保持し、乗員席側に向かって所定以上の外力を受けると前記熱交換器の移動を許容する保持部を備えることが好ましい。
【0010】
前記収容体は、前記保持部を兼用することが好ましい。
【0011】
前記保持部及び前記収容体は、前記空調ケースの外側に設けられることが好ましい。
【0012】
前記収容体は、絶縁体より形成されていることが好ましい。
【0013】
前記収容体は、隣り合うもの同士がスライド自在で、互いに連結された複数のスライド筒体より伸縮自在に構成され、待機状態では、収縮された前記収容体が前記熱交換器の外面に沿って配置され、収容状態では、伸長された前記収容体が移動後の前記熱交換器を収容するものを含む。
【0014】
前記収容体は、柔軟性を有する袋体であり、待機状態では、折り畳まれた前記収容体が前記熱交換器の外面に沿って配置され、収容状態では、展開された前記収容体が移動後の前記熱交換器を収容するものを含む。
【0015】
前記空調ケースの外部で、且つ、前記熱交換器の設置位置より乗員席側には、熱交換器捕捉スペースが設けられることが好ましい。
【0016】
捕捉部前記空調ケースの外面で囲まれた熱交換器捕捉スペースが構成されていることが好ましい。
【0017】
前記空調ケースは、車両前方側が強度的に弱い脆弱構造部に形成され、乗員席側が強度的に強い高強度構造部に形成され、前記熱交換器は、前記脆弱構造部に固定されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両衝突時等にあって過大負荷が熱交換器に作用すると、熱交換器が空調ケースの外部に突出し、空調ケースより突出した熱交換器が収容体に収容される。従って、車両衝突時等にあって、熱交換器間の衝突による破損を防止でき、しかも、空調ケースの外部に突出した熱交換器を乗員等が直接接触するのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、(a)は通常時における空調ユニットの概略断面図、(b)は車両衝突時における空調ユニットの概略断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、(a)は収容体の待機状態を示す概略断面図図、(b)は収容体の収容状態を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示し、収容体の待機状態を示す概略断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態を示し、収容体の待機状態を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態を示し、収容体の待機状態を示す概略断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態を示し、収容体の待機状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1及び図2は本発明の第1実施形態を示す。車両用空気調和装置は、空調ユニット1を備えている。空調ユニット1は、乗員席の前方に位置するインストルメントパネル(図示せず)内に配置されている。空調ユニット1は、図1(a)、(b)に示すように、空調ケース2を有する。空調ケース2は、送風ケース3と、これに連結された空調本体ケース4とから構成され、内部に送風路5が設けられている。
【0022】
送風ケース3は、円筒部3aとこの円筒部3aの外周より接線方向に延設された直線延設部3bとから構成されている。円筒部3a内の送風路5に送風機6が収容されている。この送風機6の吸引力によって内気及び外気が送風路5に吸引される。
【0023】
空調本体ケース4は、その一端が送風ケース3の直線延設部3bに接続し、その他端が送風ケース3の円筒部3aの上方位置に開口している。つまり、空調本体ケース4内の送風路5は、送風ケース3の下方位置を更に下方に向かって進んだ後に、送風ケース3の車両前方側を上方に向かってUターンして送風ケース3の上方にまで延びる経路である。
【0024】
空調ケース2は、車両前方側が強度的に弱い脆弱構造部4Aに形成され、車両後方側(乗員席側)が強度的に強い高強度構造部4Bに形成されている。具体的には、送風ケース3は、全て高強度構造に形成されている。空調本体ケース4は、車両前方側が脆弱構造部4Aに、車両後方側(乗員席側)が高強度構造部4Bに形成されている。空調本体ケース4は、脆弱構造部4Aの肉厚を薄くし、高強度構造部4Bの肉厚を厚くすることによって強度差のある構造とされている。
【0025】
空調ケース2の外部で、且つ、下記するヒータコア11の設置位置の車両後方側(乗員席側)には、袋小路状の熱交換器捕捉スペース7が設けられている。熱交換器捕捉スペース7は、空調ケース2の外面、具体的には、送風ケース3と空調本体ケース4の外面に囲まれて構成されている。熱交換器捕捉スペース7は、空調ケース2の高強度構造の箇所(送風ケース3と空調本体ケース4の高強度構造部4B)に囲まれて構成されている。
【0026】
熱交換器であるエバポレータ10とヒータコア11は、空調本体ケース4の送風路5に収容されている。エバポレータ10は、空調本体ケース4の送風路5内で、且つ、送風ケース3の下方位置に配置されている。エバポレータ10は、冷凍サイクルの構成要素として構成され、内部を流れる冷媒と送風路5を流れる送風との間で熱交換して送風を冷却する。
【0027】
ヒータコア11は、空調本体ケース4の送風路5内で、且つ、送風ケース3の前方位置に配置されている。つまり、ヒータコア11は、エバポレータ10より車両前方位置に配置されているが、送風流れ方向ではエバポレータ10より下流に配置されている。詳細には、ヒータコア11は、袋小路状の熱交換器捕捉スペース7の高さ位置で、且つ、熱交換器捕捉スペース7の車両前方位置に配置されている。
【0028】
ヒータコア11は、コア本体11aとその両端に設けられた一対の端部11b,11cとから構成されている。コア本体11aは、通電によって発熱する発熱体(PTC)を有し、発熱体と送風路5を流れる送風の間で熱交換して送風を加熱する。車両前方側に位置する一方の端部11bは、空調本体ケース4に固定されている。つまり、ヒータコア11は、空調本体ケース4の脆弱構造部4Aに固定されている。車両後方側に位置する他方の端部11cは、次のようにして位置保持されている。
【0029】
空調本体ケース4には、ヒータコア11の車両後方側(乗員席側)の位置に開口部4aが設けられている。この開口部4aを空調本体ケース4の外側に固定された収容体20が塞いでいる。ヒータコア11の他方の端部11cは、開口部4aより突出し、収容体20に位置保持されている。
【0030】
収容体20は、図2(a)、(b)に詳しく示すように、隣り合うもの同士がスライド自在で、互いに連結された複数のスライド筒体20aよりスライドによって伸縮自在に構成されている。各スライド筒体20aは、強剛性の絶縁体より形成されている。
【0031】
収容体20は、図2(a)に示すように、通常時では、複数のスライド筒体20aが折り重なった待機状態である。収容体20は、図2(b)に示す車両衝突時等にあって、車両後方(乗員席側)方向の過大負荷時では、ヒータコア11の移動に追従して各スライド筒体20aがスライドして伸長状態となり、空調ケース2の外部に飛び出したヒータコア11を収容する。つまり、収容体20は、ヒータコア11の乗員席側を保持し、ヒータコア11より乗員席側に向かう所定以上の外力を受けるとヒータコア11の移動を許容する保持部を兼用している。又、収容体20は、複数のスライド筒体20aがスライドするため、ヒータコア11の移動に際してガイドとしても機能する。
【0032】
次に、上記構成の作用を説明する。図1(a)に示す通常時では、送風路5に吸引された送風がエバポレータ10、ヒータコア11を通過し、この通過過程で送風が所望温度の空調風とされる。
【0033】
車両衝突時等にあって、車両後方(乗員席側)方向の過大負荷がヒータコア11に作用すると、図1(b)に示すように、ヒータコア11からの外力によって空調本体ケース4の脆弱構造部4Aが車両後方に向かって潰れる。この空調本体ケース4の潰れ変形によって、ヒータコア11が空調本体ケース4の開口部4aより外側に向かって移動し、このヒータコア11の移動に追従して収容体20が収縮状態から伸長状態に変移する。これにより、ヒータコア11が収容体20に被われつつ空調ケース2の外側に突出する。空調ケース2より突出したヒータコア11は、収容体20に被われた状態で熱交換器捕捉スペース7に入り込む。従って、車両衝突時等にあって、ヒータコア11とエバポレータ10間の衝突による破損を防止でき、しかも、空調ケース2の外部に突出したヒータコア11を乗員等が直接接触するのを確実に防止できる。
【0034】
ヒータコア11の乗員席側を保持し、乗員席側に向かって所定以上の外力を受けるとヒータコア11の移動を許容する収容体20を備えている。従って、車両後方(乗員席側)方向の過大負荷によってヒータコア11が空調ケース2の外部の乗員席側、つまり、熱交換器捕捉スペース7に向かって確実に移動する。
【0035】
収容体20は、ヒータコア11の乗員席側を保持する保持部を兼用している。従って、構造のシンプル化になる。保持部を収容体20とは別部材にて構成しても良い。
【0036】
収容体20は、空調本体ケース4の外側に設けられている。従って、収容体20は、通常時では、送風路5の送風流れを乱さない。
【0037】
収容体20は、絶縁体より形成されている。従って、本実施形態のように、通電によって発熱体が加熱するヒータコア11にあっては、感電を防止できる。
【0038】
収容体20は、隣り合うもの同士がスライド自在で、互いに連結された複数のスライド筒体20aより伸縮自在に構成され、待機状態では、収縮された収容体20がヒータコア11の乗員席側を位置保持し、収容状態では、伸長された収容体20が移動後のヒータコア11を収容する。従って、収容体20は、ヒータコア11を熱交換器捕捉スペース7にガイドするガイド機能を有するため、空調ケース2より突出したヒータコア11を確実に熱交換器捕捉スペース7に閉じこめることができる。
【0039】
熱交換器捕捉スペース7は、空調ケース2の外面に囲まれて構成されている。従って、空調ケース2以外の部品を別途使用する必要がない。
【0040】
熱交換器捕捉スペース7は、空調ケース2の高強度構造の箇所(送風ケース3と空調本体ケース4の高強度構造部4B)に囲まれて構成されている。従って、ヒータコア11の荷重を空調ケース2の高強度構造の箇所によって受けるため、ヒータコア11が熱交換器捕捉スペース7より乗員席側に飛び出すような事態を極力防止できる。
【0041】
空調ケース2は、車両前方側が強度的に弱い脆弱構造部4Aに形成され、車両後方側(乗員席側)が強度的に強い高強度構造部4Bに形成され、ヒータコア11は、脆弱構造部4Aに固定されている。従って、車両衝突時等にあって車両後方(乗員席側)方向の過大負荷がヒータコア11に作用した場合に、空調ケース2の車両後方側が形状を維持しつつ、空調ケース2の車両前方側が塑性変形によって潰れ、この潰れ変形によってヒータコア11が確実に車両後方側に移動するため、衝突エネルギーを減衰しつつヒータコア11を確実に車両後方側に移動させ、収容体20に収容できる。空調ケース2の車両後方側が形状を維持するため、ヒータコア11は、熱交換器捕捉スペース7に入り込み、閉じこめられる。これによっても、ヒータコア11は、空調ケース2の設置位置より車両後方側(乗員席側)に飛び出すような事態を防止できる。
【0042】
この第1実施形態では、空調ケース2は、脆弱構造部4Aは肉厚を薄くすることにより、高強度構造部4Bは肉厚を厚くすることによって強度差のある構造している。しかし、材質、形状等によって強度差のある構造にしても良いことはもちろんである。
【0043】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態を示す。この第2実施形態は、前記第1実施形態と比較するに、収容体21の構成のみが相違する。他の構成は、同一であるため説明を省略し、収容体21の構成のみを説明する。
【0044】
図3に示すように、収容体21は、伸縮性、強靱性、絶縁性を備えた素材より形成されている。収容体21は、蛇腹部21aを有する有底の筒体である。収容体21は、その開口側が空調本体ケース4の外側に固定されている。収容体21は、空調本体ケース4の開口部4aを塞いでいる。収容体21は、通常時では蛇腹部21aが収縮した待機状態であり、ヒータコア11の乗員席側の端部11cを位置保持している。つまり、収容体21は、ヒータコア11の乗員席側を保持する保持部を兼用している。
【0045】
車両衝突時等にあって、車両後方(乗員席側)方向の過大負荷がヒータコア11に作用すると、収容体21は、ヒータコア11の移動に追従して蛇腹部21aが伸長し、空調ケースの外側に突出するするヒータコア11が収容体21で被われる。ここで、ヒータコア11への衝撃エネルギーは、蛇腹部21aの伸長変移によって吸収される。
【0046】
この第2実施形態でも、前記第1実施形態と同様に、車両衝突時等にあって、ヒータコア11とエバポレータ10間の衝突による破損を防止でき、しかも、空調ケース2の外部に突出したヒータコア11を乗員等が直接接触するのを確実に防止できる。
【0047】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態を示す。この第3実施形態は、前記第1実施形態と比較するに、収容体22とこれとは別体の保持部23とを備えている。他の構成は、同一であるため説明を省略し、収容体22及び保持部23の構成のみを説明する。
【0048】
図4に示すように、保持部23は、空調本体ケース4の開口部4aの外側に固定されている。保持部23は、ヒータコア11の他方の端部11cを保持するコア保持部23aと、このコア保持部23aの外側に配置された格納部23bとを有する。コア保持部23aの底面壁には、切り込みによる脆弱部23cが設けられている。コア保持部23aは、通常時では、ヒータコア11の乗員席側の端部11cを位置保持している。収容体22は、絶縁性と柔軟性を有する素材より先端が閉塞された筒形状に形成されている。収容体22は、ヒータコア11の他方の端部11cを包み込み、その余長分が丸められて格納部23b内に格納されている。収容体22の開口側は、格納部23bの壁面に固定されている。
【0049】
車両衝突時等にあって、車両後方(乗員席側)方向の過大負荷がヒータコア11に作用すると、保持部23は、ヒータコア11からの外力を受けて脆弱部23cが破断し、ヒータコア11の空調ケース2の外側への移動を許容し、ヒータコア11が保持部23の破断箇所より外部に飛び出す。すると、ヒータコア11の移動に追従して、丸められた収容体22が引き出されてヒータコア11を包み込みつつ移動する。空調ケースの外部に飛び出したヒータコア11は、収容体22に被われる。
【0050】
この第3実施形態でも、前記第1実施形態と同様に、車両衝突時等にあって、ヒータコア11とエバポレータ10間の衝突による破損を防止でき、しかも、空調ケース2の外部に突出したヒータコア11を乗員等が直接接触するのを確実に防止できる。
【0051】
保持ガイド部23は、コア保持部23aがヒータコア11を熱交換器捕捉スペースにガイドするガイド機能を有するため、空調ケースより突出したヒータコア11を確実に熱交換器捕捉スペースに入り込ませることができる。
【0052】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態を示す。この第4実施形態は、前記第1実施形態と比較するに、収容体24とこれとは別体の保持部25を備えている。他の構成は、同一であるため説明を省略し、収容体24及び保持部25の構成のみを説明する。
【0053】
図5に示すように、保持部25は、空調本体ケース4の開口部4aの外側に固定されている。保持部25は、通常時では、ヒータコア11の他方の端部11cを位置保持している。保持部25の側面壁には、切り込みによる脆弱部25aが設けられている。収容体24は、絶縁性と柔軟性を有する素材より筒形状に形成されている。収容体24は、ヒータコア11の他方の端部11cを包み込み、余長分が折り畳まれている。収容体24の開口側は、保持部25の壁面に固定されている。
【0054】
車両衝突時等にあって、車両後方(乗員席側)方向の過大負荷がヒータコア11に作用すると、保持部25は、ヒータコア11からの外力を受けて脆弱部25aが破断し、ヒータコア11の空調ケース2の外側への移動を許容する。ヒータコア11は、保持部25の破断による開口箇所から空調ケース2の外部に飛び出す。すると、ヒータコア11の移動に追従して、折り畳まれた収容体24の箇所が引き出されてヒータコア11を包み込みつつ移動する。空調ケースの外部に飛び出したヒータコア11は、収容体24に被われる。
【0055】
この第5実施形態でも、前記第1実施形態と同様に、車両衝突時等にあって、ヒータコア11とエバポレータ10間の衝突による破損を防止でき、しかも、空調ケース2の外部に突出したヒータコア11を乗員等が直接接触するのを確実に防止できる。
【0056】
保持部25は、ヒータコア11を熱交換器捕捉スペースにガイドするガイド機能を有するため、空調ケースより突出したヒータコア11を確実に熱交換器捕捉スペースに入り込ませることができる。
【0057】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態を示す。この第5実施形態は、前記第1実施形態と比較するに、収容体26の構成のみが相違する。他の構成は、同一であるため説明を省略し、収容体の構成のみを説明する。
【0058】
図6に示すように、収容体26は、空調本体ケース4の開口部4aの外側に固定された収容本体壁26aと、底面壁26bと、収容本体壁26aと底面壁26bを連結する伸縮部26cとから有底の筒形状に構成されている。伸縮部26cは、伸縮性、耐熱性、絶縁性を備えた素材より形成されている。収容体26は、通常時では、伸縮部26cが収縮した待機状態であり、ヒータコア11の他方の端部11cを位置保持している。収容体26は、ヒータコア11の乗員席側を保持する保持部を兼用している。
【0059】
車両衝突時等にあって、車両後方(乗員席側)方向の過大負荷がヒータコア11に作用すると、収容体26は、ヒータコア11の移動に追従して伸縮部26cが伸長し、ヒータコア11を収容しつつ空調ケースの外側に向かって変移する。これにより、空調ケースの外側に移動するヒータコア11は、収容体26に被われる。ここで、ヒータコア11への衝撃エネルギーは、伸縮部26cの伸長変移によって吸収される。
【0060】
この第5実施形態でも、前記第1実施形態と同様に、車両衝突時等にあって、ヒータコア11とエバポレータ10間の衝突による破損を防止でき、しかも、空調ケース2の外部に突出したヒータコア11を乗員等が直接接触するのを確実に防止できる。
【0061】
(その他)
各実施形態では、収容体20,21,22,24,26で収容される熱交換器は、高温となるヒータコア11としたが、エバポレータ10であっても良い。
【符号の説明】
【0062】
2 空調ケース
4A 脆弱構造部
4B 高強度構造部
5 送風路
7 熱交換器捕捉スペース
11 ヒータコア(熱交換器)
20,21,22,24,26 収容体(保持部)
23,25 保持部
20a スライド筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風路(5)が設けられた空調ケース(2)と、前記空調ケース(2)に固定され、前記送風路(5)に配置された熱交換器(11)と、前記空調ケース(2)の外部に突出する前記熱交換器(11)を収容する収容体(20),(21),(22),(24),(26)とを備えたことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空気調和装置であって、
前記熱交換器(11)の乗員席側を保持し、乗員席側に向かって所定以上の外力を受けると前記熱交換器(11)の移動を許容する保持部(20),(21),(23),(25),(26)を備えたことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用空気調和装置であって、
前記収容体(20),(21),(26)は、前記保持部を兼用することを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の車両用空気調和装置であって、
前記収容体(20),(21),(22),(24),(26)は、前記空調ケース(2)の外側に設けられていることを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の車両用空気調和装置であって、
前記収容体(20),(21),(22),(24),(26)は、絶縁体より形成されていることを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の車両用空気調和装置であって、
前記収容体(20)は、隣り合うもの同士がスライド自在で、互いに連結された複数のスライド筒体(20a)より伸縮自在に構成され、待機状態では、収縮された前記収容体(20)が前記熱交換器(11)の外面に沿って配置され、収容状態では、伸長された前記収容体(20)が移動後の前記熱交換器(11)を収容することを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の車両用空気調和装置であって、
前記収容体(22),(24)は、柔軟性を有する袋体であり、待機状態では、折り畳まれた前記収容体(22),(24)が前記熱交換器(11)の外面に沿って配置され、収容状態では、展開された前記収容体(22),(24)が移動後の前記熱交換器(11)を収容することを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の車両用空気調和装置であって、
前記熱交換器(11)の設置位置より乗員席側には、熱交換器捕捉スペース(7)が設けられたことを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の車両用空気調和装置であって、
前記空調ケース(2)は、車両前方側が強度的に弱い脆弱構造部(4A)に形成され、乗員席側が強度的に強い高強度構造部(4B)に形成され、前記熱交換器(11)は、前記脆弱構造部(4A)に固定されたことを特徴とする車両用空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−91337(P2013−91337A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232807(P2011−232807)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】