説明

車両用空調装置およびその空調制御方法

【課題】運転者の行動意図を早期に推定することで、運転フィーリングと車室内の快適性を両立させること。
【解決手段】エンジンもしくはモータを動力源(4)とする車両に搭載され、車室内の空調を行う空調機器(100)を制御する車両用空調装置であって、
この空調機器(100)を制御して車室内の空調状態を制御する空調制御手段(54)と、運転者の操作量を検出する運転者行動検出手段(35,36)と、この運転者行動検出手段(35,36)からの検出情報に基いて、これから行われる運転者の運転行動を推定した行動意図推定情報を算出する運転行動意図推定手段(52)と、行動意図推定情報に基いて、動力源(4)の出力状態を推定し、空調制御手段(54)に対し、推定された出力状態に応じて指示する判定手段(53)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の運転行動の意図を推定して早めに空調状態を調整可能な車両用空調装置およびその空調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置において、車両エンジンに対する空調用コンプレッサの駆動負荷を軽減して、エンジンの加速性を確保する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された車両用空調装置は、実際にアクセルペダルの踏込み量が閾値を超えると加速時と判定して、コンプレッサを停止するか、もしくはコンプレッサ能力を低下させる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−285618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、坂道走行時や走行並路の合流時などエンジン負荷が大きくなるときでも、実際のアクセル踏込み量が所定の閾値を超えるまでは空調装置のコンプレッサ負荷がエンジンにそのまま加わって運転フィーリングを損ねる可能性があった。このことは、ハイブリッド車などモータを動力源とする車両においても同様である。すなわち、動力源の負荷状態が大きくなるときに、空調装置の電動コンプレッサによる電気負荷がそのまま車載電源に加わることによって車載電源が過負荷になる可能性がある。車載電源が過負荷になると、モータ出力が低下する。そのため、運転フィーリングを損ねる可能性があった。
【0005】
本発明の目的は、運転者の行動意図を早期に推定することで、運転フィーリングと車室内の快適性を両立させることが可能な車両用空調装置およびその空調制御方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、冷凍サイクルの作動時に蓄冷を行う蓄冷式空調装置において、運転者の行動意図を早期に推定して蓄冷と放冷の動作を制御することにより、運転フィーリングと車室内の快適性を両立させることが可能な車両用空調装置およびその空調制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、各請求項に記載の技術的手段を採用する。
【0008】
本発明の請求項1の記載によれば、本発明に係る車両用空調装置は、空調機器(100)を制御して車室内の空調状態を制御する空調制御手段(54)と、運転者の操作量を検出する運転者行動検出手段(35,36)と、運転者行動検出手段(35,36)で検出された操作量に基いて、これから行われる運転者の運転行動推定した行動意図推定情報を算出する運転行動意図推定手段(52)と、行動意図推定情報に基いて、動力源(4)の出力状態を推定し、空調制御手段(54)に対し、推定された出力状態に応じて指示する判定手段(53)を備える。
【0009】
また、請求項2に記載のように、操作量は、アクセルペダルの踏込み量、車速、又はエンジン回転数の少なくとも一つを含むことが好ましい。運転者の操作情報を検出することが可能になるためである。
【0010】
また、請求項3に記載のように、判定手段(53)は、空調制御手段(54)に対し、推定された出力状態に応じて空調能力をと調整するように指示することが好ましい。
それにより、運転者の操作情報に基いて、これから行なわれる運転者の運転行動の意図(例えば、加速行動や制動行動など)を推定して早めに車両動力源の出力状態を推定可能になる。そこで、例えば、推定される運転行動(例えば、加速行動)によっては、運転行動を優先させるように、車両動力源に対する空調負荷を速めに軽減調整することができる。また、推定される運転行動(例えば、減速行動)によっては、空調能力を優先させるように、車両動力源に対する空調負荷を速めに増加調整することもできる。したがって、運転フィーリングと車室内の快適性を両立させることができる。
【0011】
また、請求項4に記載のように、空調機器(100)は、空調時の冷却能力を用いて蓄冷する蓄冷器(40)を備え、判定手段(53)は、空調制御手段(54)に対し、推定された出力状態に応じて蓄冷器(40)への蓄冷、もしくは蓄冷器(40)からの放冷を指示することが好ましい。
【0012】
それにより、運転者の操作情報に基いて、これから行われる運転者の運転行動の意図(例えば、加速行動や制動行動など)を推定して早めに車両動力源の出力状態を推定し、蓄冷器の蓄冷や放冷の指示が可能になる。そこで、例えば、推定される運転行動(例えば、加速行動)によっては、運転行動を優先させるように、実際の運転行動が生じる前から車両動力源に対するコンプレッサ負荷を早めに軽減調整したり、蓄冷器から放冷することができる。また、推定される運転行動(例えば、減速行動)によっては蓄冷器への蓄冷を優先させるように、車両動力源に対するコンプレッサ負荷を早めに増加調整することもできる。したがって、運転フィーリングと車室内の快適性を両立させることができる。
【0013】
また、請求項5に記載のように、空調機器(100)はエバポレータ(9)を有し、判定手段(53)は、蓄冷器(40)への蓄冷を指示し、エバポレータ(9)の温度が目標エバポレータ温度となるように指示することが好ましい。コンプレッサの稼働率を調整し、空調機器による空調能力を調整することが可能になる。
【0014】
また、請求項6に記載のように、運転行動意図推定手段(52)は、運転者の操作量を所定期間だけ記憶する運転行動記憶部(522)と、制動行動又は加速行動を示す予め定められた運転行動パターンが記憶された運転パターン格納部(523)と、運転行動記憶部(522)に記憶された操作量と、予め定められた運転行動パターンとを比較して類似度を求め、類似度が最も高い運転パターンに基づいて行動意図推定情報を算出する類似度算出部(524)とを有することが好ましい。
所定期間の間の運転者の運転行動を、予め定めた運転行動パターンと比較することで、運転者の運転行動をより高精度に推定することが可能になる。
【0015】
本発明の請求項7に記載の形態によれば、本発明に係る車両用空調装置は、空調機器(100)を制御して車室内の空調状態を制御する空調制御手段(54)と、運転者の操作量を検出する運転者行動検出手段(35,36)と、検出された操作量に基いて、これから行われる運転者の運転行動を推定した行動意図推定情報を算出する運転行動意図推定手段(52)と、車両の動きを検出する車両動作検出手段(36,37)と、車両動作検出手段(36,37)で検出された車両動作情報に基いて、行動意図推定情報の確かさを示す確信度を求め、確信度に基づいて空調制御手段(54)に対し蓄冷器(40)への蓄冷を指示する判定手段(53)とを有する。
【0016】
また、請求項8に記載のように、判定手段(53)は、確信度が所定の値を超えるとき、空調制御手段(54)に対し蓄冷器(40)への蓄冷を指示し、確信度が所定の値以下のとき、空調制御手段(54)に対し蓄冷器(40)への蓄冷を指示しないことが好ましい。
【0017】
運転者の操作情報に基いて、これから行う運転者の制動行動の意図を推定すると共に、車両の動きを示す車両動作情報に基いて、先に推定した制動行動の確かさを定量的に確認することにより、これから行われる運転者の制動行動をより高精度に判定可能となる。
【0018】
また、請求項9に記載のように、車両動作情報は、運転者に対して経路案内を行うカーナビゲーション装置による道路情報、又はカメラまたはレーダー装置により検出する車両前方若しくは後方の道路状況のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。運転者の操作情報とは別に、車両の動きを検出することが可能になる。
【0019】
また、請求項10に記載のように、空調機器(100)はエバポレータ(9)を有し、判定手段(53)は、蓄冷器(40)への蓄冷を指示し、エバポレータ(9)の温度が目標エバポレータ温度となるように指示することが好ましい。コンプレッサの稼働率を調整し、空調機器による空調能力を調整することが可能になる。
【0020】
また、請求項11に記載のように、運転行動意図推定手段(52)は、運転者の操作量を所定期間だけ記憶する運転行動記憶部(522)と、加速行動又は制動行動を示す予め定められた運転行動パターンが記憶された運転パターン格納部(523)と、運転行動記憶部(522)に記憶された操作量と、予め定められた運転行動パターンとを比較して類似度を求め、類似度が最も高い運転パターンに基づいて行動意図推定情報を算出する類似度算出部(524)を有し、判定手段(53)は、車両動作情報と行動意図推定情報と類似度に基いて、確信度を求めることが好ましい。
【0021】
運転者の操作情報に基いて、これから行われる運転者の運転行動の意図を推定する行動意図推定情報を求め、しかもこの類似度および車両の動きを示す車両動作情報に基いて確信度を求めている。そのため、これから行われる運転者の運転行動をより高精度に判定することができる。そして、早期に蓄冷器への蓄冷を開始することで、実際に制動、減速などが行われてから蓄冷を行うよりも、蓄冷の時間を長くすることができる。
【0022】
また、請求項12に記載のように、空調機器(100)は、空調ケース(10)と、空調ケース(10)内に設けられた流通する空気を冷却するエバポレータ(9)とエバポレータ(9)の下流側に蓄冷器(40)を有し、判定手段(53)は、車両動作情報、行動意図推定情報および確信度に基いて、目標エバポレータ温度を求める目標エバポレータ温度算出部(532)と、空調制御手段(54)に対し蓄冷器(40)への蓄冷を指示し、エバポレータ(9)の温度が目標エバポレータ温度となるように指示する出力判定部(534)をさらに有することが好ましい。
【0023】
それにより、これから行う運転者の運転行動の意図を推定すると、早期に蓄冷器への蓄冷を開始することが可能になると共に、そのときの目標エバポレータ温度を設定することで、蓄冷器へ蓄冷するために好ましい温度条件を設定可能になる。
【0024】
また請求項13に記載のように、行動意図推定情報は、運転者の制動行動を推定するものであり、出力判定部(534)は、確信度が所定の値を超えるとき、目標エバポレータ温度を目標エバポレータ温度算出部(532)で求められた温度より高い温度から段階的に下げ、実際に制動行動が生じると目標エバポレータ温度を目標エバポレータ温度算出部(532)で求められた温度に設定することが好ましい。
【0025】
最初は目標エバポレータ温度を比較的高く設定し、徐々に目標エバポレータ温度を下げることにより、コンプレッサの稼働率(つまり、動力源に対するコンプレッサ負荷)を徐々に高くすることができる。そのため、実際に制動を開始するまでの期間は運転者に違和感をもたれない程度に蓄冷を行うことができる。
【0026】
また請求項14に記載のように、行動意図推定情報は、運転者の加速行動を推定するものであり、判定手段(53)は、確信度が所定の値を超えるとき、運転者が実際に加速行動を行うまでの間、空調制御手段(54)に対し蓄冷器(40)への蓄冷を指示することが好ましい。
【0027】
運転者の操作情報に基いて、これから行う運転者の加速行動の意図を推定すると共に、車両の動きを示す車両動作情報に基いて、先に推定した加速行動の確かさを定量的に確認している。そのため、これから行う運転者の加速行動をより高精度に判定できる。そして、加速行動を推定した時点より実際に加速行動を行うまでの期間の間、蓄冷器への蓄冷を行うことが可能になる。
【0028】
また請求項15に記載のように、判定手段(53)は、運転者が実際に加速行動を行うとき、空調制御手段(54)に対し蓄冷器(40)からの放冷を指示することが好ましい。加速行動を推定した時点から実際に加速行動を行うまでの期間の間、蓄冷器へ蓄冷を行い、実際に加速行動を行うときには放冷を行う。そのため、大きな動力を必要とした際に、コンプレッサに動力をまわす必要がない。そして加速フィーリングを妨げることなく快適な空調を提供可能になる。
【0029】
また、本発明の請求項16に記載の形態によれば、本発明に係る空調機器(100)を制御する空調制御方法は、運転者の操作量を検出する運転者行動検出手段(35,36)からの検出情報に基いて求まる運転者の運転行動パターンと、予め定めた運転行動パターンとを比較して類似度を求め、類似度が最も高い運転パターンに基づいて、これから行われる運転者の運転行動を推定した行動意図推定情報を算出し、車両の動きを検出する車両動作検出手段(36,37)からの車両動作情報と、行動意図推定情報及び類似度に基いて、行動意図推定情報の確かさを示す確信度を求め、確信度が高いとき、車両動作情報、行動意図推定情報に応じて空調機器(100)による空調能力を制御する。
【0030】
行動意図推定情報および車両の動きを示す車両動作情報に基いて確信度で求めることにより、これから行われる運転者の運転行動の意図(例えば、制動行動、加速行動など)をより高精度に判定可能になる。したがって、早期に運転行動に応じた空調能力に制御可能になる。
【0031】
また請求項17に記載のように、類似度が所定値以上のときに生じる実際の運転者の運転行動パターンに基いて、予め定めた運転行動パターンを修正する学習処理工程を有していることが好ましい。
あるいは請求項18に記載のように、確信度が所定値以上のときに生じる実際の運転者の運転行動パターンに基いて、予め定めた運転行動パターンを修正する学習処理工程を有していることが好ましい。
個々の運転者は運転に際し個人特有の癖又は特徴を有している。そこで、実際の運転パターンからそれらの癖や特徴を学習して予め定めた運転行動パターンに反映させることにより、より一層個々の運転者へ運転行動パターンを適応させることができる。そして、運転パターンの判定精度を高めることができる。
【0032】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
本発明は、種々の検出情報に基いて運転者の運転行動の意図を推定する運転行動意図推定手段と空調制御手段とを組み合わせ、運転者の運転行動を予測して早めに空調状態を調整し、運転フィーリングと車室内の快適性を両立させる技術に関する。
【0034】
今日、環境保護を目的として、信号待ち等の停車時にエンジンを停止する車両(アイドリングストップ車、ハイブリッド車など)に対応する空調装置として、蓄冷式空調装置の必要性が高まっている。蓄冷式空調装置は、コンプレッサの稼動時に蓄冷される蓄冷器を備え、コンプレッサ停止時には蓄冷器により車室内への吹出し空気を冷却できる。そこで、この蓄冷式空調装置に対し本発明を適用し、運転フィーリングを考慮しつつ効果的な蓄冷と放冷を可能にする実施形態について説明する。
【0035】
(車両用空調装置の全体構成)
図1は、車両用空調装置の全体構成を示す構成図、図2は、蓄冷器40の要部断面図である。
【0036】
図1において、車両用空調装置は、主に機械的構成からなる空調機器100と、この空調機器100の制御手段である空調制御装置50とを有する。
【0037】
まず、空調機器100の構成を説明する。空調装置の冷凍サイクルRにはコンプレッサ1を有する。コンプレッサ1は、ベルト3を介して車載エンジン4より伝わる動力断続用の電磁クラッチ2を備える。冷凍サイクルRは閉回路で構成され、その閉回路はコンプレッサ1より左回りにコンデンサ5、レシーバ6、感温部8を有する温度式膨張弁7、およびエバポレータ9を含む。
【0038】
空調機器100が有する空調ケース10において、エバポレータ9の上流側にはブロワファン11が配置されている。ブロワファン11は遠心式送風ファン12と駆動用モータ13を有する。ブロワファン11の吸入側には内外気切替箱14が配置される。内外気切替箱14内には電気駆動装置18で駆動される内外気切替ドア15が配置される。そして内外気切替ドア15は、外気導入口16と内気導入口17とを切り替えて開閉する。
【0039】
エバポレータ9の下流側には、エバポレータ側から順に後述する蓄冷器40、エアミックスドア19、およびヒータコア20が配置される。また、ヒータコア20をバイパスするバイパス通路21が形成されている。エアミックスドア19は、電気駆動装置22により回動され、ヒータコア20を通過する通路23からの温風とバイパス通路21を通過する冷風との風量割合を調整する。
【0040】
さらに、空気混合部24の下流側の空調ケース10には吹出モード切替部15が構成されている。この吹出モード切替部15には、デフロスタ開口部(DEF)25とそのデフロスタドア26、フェイス開口部(FACE)27とそのフェイスドア28、およびフット開口部29(FOOT)とそのフットドア30が配置される。各開口部は、電気駆動装置31により駆動される各ドア26,28,30によりそれぞれ開閉される。
【0041】
エバポレータ9の温度センサ32は、エバポレータ温度としてエバポレータ吹出温度Teを検出する。蓄冷器40の温度センサ33は、蓄冷器温度として蓄冷器吹出温度Tcを検出する。
【0042】
空調制御装置50には、空調制御のために、上記温度センサ32,33のエバポレータ吹出温度Te、蓄冷器吹出温度Tcの他に、内気温Tr、外気温Tam、日射量Ts、温水温度Tw、および乗員が指示する設定温度、等の各種情報が空調情報部35から入力される。また空調制御装置50には、車両情報部36から、エンジン回転数、車速、変速機の変速位置、ブレーキ踏込み量、アクセル踏込み量、および車両のアクセルペダルとブレーキペダルのどちらに運転者の足があるかを示す足位置、等の車両の各種情報が入力される。さらに空調制御装置50には、外界情報部37から、車両動作を客観的に示すために車載カメラや車載レーダー装置が捕らえた外界(車外)の道路状況、例えば前後の他車までの車間距離、を示す映像、車載ナビゲーション装置が求めた道路情報、例えば次の交差点までの距離や進路の道路勾配、等の各種情報が入力される。ここで、空調情報部35及び車両情報部36は、運転者の操作量を検出する運転者行動検出手段として機能する。それらは、運転者の操作量として、上記の設定温度、車速、足位置などを検出する。また、上記の車両情報部36は、外界情報部37とともに、車両の動きを検出する車両動作検出手段としても機能する。それらは、車両動作情報として、上記の道路状況、道路情報などを検出する。
【0043】
この空調制御装置50は、図示していないCPU,ROM,RAM等からなる1個もしくは複数個の図示してないマイクロコンピュータ、その周辺回路、および電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ等の記憶手段51から構成される。
【0044】
空調制御装置50は、このマイクロコンピュータによる機能実現手段として、運転行動意図推定手段52、判定手段53、および空調制御手段54を有する。そして運転行動意図推定手段52は、各情報部35〜37からの検出情報に基いて運転者の行動意図を推定し、それ以降に運転者がどのような運転制御を行うかを推定した行動意図推定情報を算出する。判定手段53は、算出された行動意図推定情報や車両動作情報に基いて蓄冷、放冷、目標エバポレータ温度を決定する。空調制御手段54は、コンプレッサ1を含む空調機器100を駆動して車室内の空調状態を制御する。
【0045】
(蓄冷器40の構成)
次に、蓄冷器40の具体的な構成例を、図2により説明する。
蓄冷器40は、図1に示すエバポレータ9と同一の前面面積を備えた形状を有する。また蓄冷器40は、空調時に利用できる冷却能力を発揮するために、エバポレータ9通過後の冷風の全量が通過する熱交換器構成となっている。この構成により、蓄冷器40は空調ケース10内の流れ方向Aに対して厚さ寸法の小さい薄型構造にできる。また、2枚のアルミニュウム製の伝熱プレート41,42には、それぞれ冷風流れ方向Aに沿って交互に凸面部41a,42aが形成される。そしてこの凸面部41a,42aは、互いに当接され、ろう付け等により接合される。
【0046】
これにより、凸面部41a,42aの内側に密閉空間43を有するチューブ45が形成される。そして、密閉空間43内に蓄冷材44が収納される。この蓄冷材44には、エバポレータ温度Teの変動範囲(1〜12℃)内に凝固点が入る材料として、本例では凝固点8℃付近のパラフィンが選定されている。
【0047】
そこで、空気通路46は、凸面部41a,42aが交互に突出することにより蛇行状の通路を形成し、冷風側からチューブ45への熱伝達率を向上させている。
なお、図2には、チューブ45を2組しか図示していないが、実際にはチューブ45が図2の矢印B方向に多数積層されている。
【0048】
ここで、本実施形態による蓄冷挙動について説明する。空調装置は、ブロワファン11からの送風空気をエバポレータ9にて冷却する。その後、空調装置は、エアミックスドア19の開度を調整して冷風と温風を混合することにより、車室内への吹出し温度を目標吹出し温度TAOに制御する。その場合、例えばTAO=12℃の比較的高い温度であっても、蓄冷器40の蓄冷を短時間に完了するためには、目標エバポレータ温度Teoをできる限り低い温度に設定する必要がある。
【0049】
但し、エバポレータ9が0℃以下でフロストするため、目標エバポレータ温度Teo1の最低温度(Min)は約1℃である。また蓄冷材44であるパラフィンの凝固点8℃であるため、急速蓄冷を行うには、蓄冷完了後の蓄冷を維持するために、目標エバポレータ温度Teo11は、8℃より低く最低温度より高い温度、例えば6℃が必要となる。放冷時には、コンプレッサ1を停止させているときには目標エバポレータ温度の設定は不要であるが、放冷により蓄冷器40の温度が上昇し、放冷の限界、停止を決めるための限界蓄冷器温度Tco、例えば12℃の設定が必要となる。
【0050】
(空調装置の基本作動)
次に、空調制御装置50による空調装置の基本作動を説明する。図3は、空調制御装置50において実行される空調制御処理(空調制御手段54)のメインルーチンのフローチャートである。
【0051】
図3に示すように、図示していないイグニッションスイッチがオンされてこのルーチンが起動されると、空調制御装置50は、まずデータ処理メモリ(RAM)の記憶内容等の初期化を行う(ステップ101)。続いて空調制御装置50は、空調情報部35等から各種信号(エバポレータ温度Te、蓄冷器温度Tc、内気温Tr、外気温Tam、日射量Ts、温水温度Tw、および乗員が指示する設定温度Tl、等)の読込みと、後述する判定手段53からの蓄冷、放冷等に関する指示情報の読込みを行う(ステップ102)。
【0052】
続いて空調制御装置50は、各種信号に基いて車両の熱負荷に応じた必要吹出し温度TAOを算出する(ステップ103)。
【0053】
次に、空調制御装置50は、後述する判定手段53からの指示情報に基いて空調モードを選定する(ステップ104)。通常モードが選択されたときには、空調制御装置50は、通常モード時の目標エバポレータ温度Teoを決定する(ステップ105)。この目標エバポレータ温度Teoは、コンプレッサ1の稼働率を低減してエンジン4の省動力を図るために、外気温Tam等の空調環境条件により決定される目標値である。例えば、春秋の季節などのように外気温が18〜25℃の範囲内にあるときには、コンプレッサ1の稼動による無駄な冷凍サイクルの作動を抑えるために目標エバポレータ温度Teoは12℃に設定される。一方、外気温が18℃未満又は25℃より高い場合、目標エバポレータ温度Teoは低く設定される。
【0054】
蓄冷モードが選択されたときには、空調制御装置50は、蓄冷モード時の目標エバポレータ温度Teo1を決定する(ステップ106)。放冷モードが選択されたときには、空調制御装置50は、蓄冷器40の温度Tcが上昇して蓄冷能力がなくなったことを示す限界蓄冷器温度Tcoを目標エバポレータ温度Teoに設定する(ステップ107)。これらの目標エバポレータ温度Teo,Teo1および限界蓄冷器温度Tcoは、ROMもしくは記憶手段51に記憶されている。
【0055】
続いて、ステップ103で算出した必要吹出し温度TAOに基いて、ブロワ制御電圧(吹出し風量)が決定される(ステップ108)。また内気および外気を切り替える吹込モードも、マニュアル設定されていないときは必要吹出し温度TAOに基いて決定される(ステップ109)。さらに、吹出口モードも同様にして決定される(ステップ110)。
【0056】
続いて、算出した必要吹出し温度TAOより予め定めた制御特性表に従ってエアミックスドア19の開度が決定される(ステップ111)。また冷房負荷等の状況に応じてコンプレッサ1のオンオフが決定される(ステップ112)。そして空調制御装置50は、各ステップ105〜112の処理結果に応じて各機器を制御し、所望の空調状態に制御する(ステップ113)。
【0057】
(運転行動意図推定手段52の機能)
次に、運転者の行動意図を推定し、空調制御手段54に対して蓄冷、放冷等を指示する運転行動意図推定手段52および判定手段53について、図面を用いて説明する。
【0058】
図4は、空調制御装置50における運転行動意図推定手段52および判定手段53の主要な機能を示す機能ブロック図である。
図4において、運転行動意図推定手段52は、運転者が実際に車両を制動したり、もしくは加速したりするより早い時点で、これから行われる運転行動(制動もしくは加速)を推定する手段である。そして運転行動意図推定手段52は、正規化部521、運転行動記憶部522、運転パターン格納部523及び類似度算出部524を備える。正規化部521は、運転者行動検出手段として機能する空調情報部35および車両情報部36から取得した複数の検出情報(運転者の操作量)を正規化する。運転行動記憶部522は、この正規化した検出情報に基づいて常に最新の過去一定期間の間の正規化検出情報を更新、記憶する。また運転パターン格納部523は、制動もしくはエンジン出力を増加させる運転パターンを記憶する。類似度算出部524は、運転行動記憶部522に記憶された最新の正規化検出情報と、運転パターン格納部523に記憶された運転パターンとを比較し、類似度を算出する。そして、最も類似度が高い運転パターンを求め、その運転パターンに基づいて、推定時以降の運転者の行動意図(加速又は制動)を推定する。
【0059】
推定を行うための検出情報(運転者の操作量)として、例えば、アクセルペダルの踏込みレベルを検出するアクセルセンサからのアクセル踏込み量36a、車速センサからの車速情報36e、および回転センサからのエンジン回転数情報36fを使用することができる。しかし、運転者の操作量は上記に限られない。例えば、運転者が指示する設定温度Tlや冷房負荷等を示す検出情報などの空調情報35b、アクセルペダルとブレーキペダルのどちらに運転者の足があるかを検出する足位置検出カメラ(または、レーダー)からの足位置情報36c、変速機の変速ギア位置を検出するギア位置センサからのギア位置情報36dなども運転者の操作量として使用することができる。
【0060】
そこで、運転行動意図推定手段52の作動を、図5および図6により説明する。
運転行動意図推定手段52は、運転者行動検出手段として機能する空調情報部35および車両情報部36から運転者の操作量として各種検出情報を読込む(ステップ201)。次に正規化部521は、各情報とも情報のレベルや段階に応じて正規化する。その正規化された情報は、正規化検出情報として0〜1の範囲内の量に数値化される(ステップ202)。各正規化検出情報は、サンプリングデータとして順次時系列に運転行動記憶部522に記憶される。また各正規化検出情報は、最新の過去一定期間、例えば5秒間の間のサンプリングデータであり、常に更新、記憶される(ステップ203)。この運転行動記憶部522は、空調制御装置50内のRAMもしくは記憶手段51の一部で構成されている。
【0061】
類似度算出部524は、この運転行動記憶部522に記憶された最新のサンプリングデータ(最新の運転行動データ)を、所定時間間隔毎に、例えば1秒間毎に取得する。類似度算出部524は、取得したサンプリングデータと、運転パターン格納部523に記憶されている各運転パターンテンプレートとを比較する。そして類似度算出部524は、両者の一致度合いに基づいて類似度を算出する。なお、運転パターンテンプレートの詳細については後述する。
【0062】
類似度は、各サンプリングデータが何れかの運転パターンテンプレートと完全に一致する場合に1となり、運転パターンテンプレートとの差異が大きくなるにつれて低下する。そして、類似度算出部524は、最も類似度が高い運転パターンテンプレートを検出する。検出された運転パターンテンプレートは、以後の運転者の行動を推定する行動意図推定情報として使用される。また検出された運転パターンテンプレートと、そのテンプレートに関連する類似度は、記憶手段51に記憶される(ステップ204)。
【0063】
ここで、ROMもしくは記憶手段51の一部で構成される運転パターン格納部523に予め記憶された運転パターンテンプレートについて、図6を用いて説明する。
運転パターンテンプレートは、予め実験により作成される。運転パターンテンプレートは、制動時を例にすると、以下のように作成される。100人の運転者の操作量に関する各種検出情報(アクセル踏込み量、空調情報、足位置、ギア位置、車速、エンジン回転数)が、それぞれ収集される。例えば、各種検出情報について、制動動作開始10秒前から制動動作に入るまでの10秒間のデータが検出され、正規化される。そしてその正規化データ(正規化情報)は、クラスタリング手法を用いて分類される。そして、制動行動の運転パターンテンプレートが、分類された各クラスタ(同種類のデータ集合)として求められる。
【0064】
さらに、各運転パターンテンプレートは、検出情報ごとに複数個の行動パターンテンプレートを有する。行動パターンテンプレートは、以下のように作成される。まず、その運転パターンテンプレートに対応する各種検出情報の正規化データの平均値(10秒間のデータ)が求められる。各10秒間の正規化データのうち、5秒間のデータを1秒ずつずらして取得することにより、複数個の行動パターンテンプレートが作成される。
同様に、加速行動の運転パターンテンプレートを作成するために、加速動作開始10秒前から加速動作に入るまでの10秒間の運転者の操作量に関する各種データが検出され、正規化される。その後、上記と同様にクラスタリング手法を用いて、複数個の加速行動の運転パターンのテンプレートが作成される。
【0065】
図6は、制動行動の運転パターンテンプレートが、例えば、制動行動のパターンである、2度踏み型、急ブレーキ型、等に分類された各クラスタであり、各クラスタ毎に、しかも検出情報(アクセル踏込み量、・・・)毎に、1秒ずつずらして切り出した6個の5秒間データ(行動パターンテンプレート)を1セットとして備えることを示している。
【0066】
類似度算出部524は、運転パターンテンプレートと測定されたサンプリングデータの類似度を、例えば以下のように算出する。まず類似度算出部524は、各検出情報について、サンプリングデータと各行動パターンテンプレートとのマッチングを行い、検出情報ごとに最も高い一致度を求める。そして類似度算出部524は、各検出情報について求められた最も高い一致度同士を乗じて、類似度を算出する。
【0067】
(判定手段53の機能)
次に、図4において、判定手段53は、車両動作検出手段として機能する車両情報部36および外界情報部37から取得した複数の検出情報(車両動作情報)と運転行動意図推定手段52からの類似度情報とを受け、運転行動意図推定手段52で用いた検出情報とは異なる検出情報を用いて、先に求めた類似度の信憑性を評価する。
【0068】
つまり、判定手段53は、確信度算出部531、目標エバポレータ温度算出部532、出力テンプレート格納部533、及び出力判定部534を備える。そして確信度算出部531は、運転者の行動意図の確かさを示す確信度を算出する。また出力テンプレート格納部533は、運転フィーリングと空調状態を両立させるための制御特性値を記憶する。目標エバポレータ温度算出部532は、類似度情報、行動意図推定情報、空調状態、エバポレータ温度Te、蓄冷器温度Tcおよびエンジン出力状態に基き、出力テンプレート格納部533からの制御特性値に従って、通常モードの目標エバポレータ温度Teoあるいは蓄冷モードの目標エバポレータ温度Teo1を算出する。出力判定部534は、運転者のアクセル踏込み量、確信度、および目標エバポレータ温度Teo又はTeo1の各情報を受けて、空調制御手段54に対する指示情報(例えば、蓄冷指示信号もしくは放冷指示信号)を提供し、目標エバポレータ温度情報Teo又はTeo1を提供する。
【0069】
蓄冷器40は、実際に制動するときだけでなく、運転者が実際に車両を制動する直前の期間も蓄冷することができる。そのため、エンジンに対する空調負荷(コンプレッサ負荷)が低減される。あるいは蓄冷器40は、運転者が実際に車両を加速する直前の期間蓄冷し、実際の加速時には放冷する。そのため、エンジンに対する空調負荷(コンプレッサ負荷)が低減される。
【0070】
判定手段53で使用する検出情報(車両動作情報)として、運転者に対して経路案内を行うカーナビゲーション装置37cから取得される自車前方の道路情報、又は車両に搭載されて車両の前方道路、後方道路、もしくは側方を撮影するカメラ37aおよびレーダー装置37bから取得される映像情報(道路状況)を使用することができる。しかし、使用される車両動作情報は上記に限られない。例えば、ブレーキペダルの踏込みレベルを検出するブレーキセンサから取得されるブレーキ踏込み量36b、カーナビゲーション装置37cから取得される渋滞情報、道路勾配情報、標高情報なども車両動作情報として使用することができる。
【0071】
以下に、判定手段53を構成する各部531,532,534の作動を説明する。
まず、確信度算出部531は、図7に示すように、類似度算出部524で求めた類似度情報を読込む(ステップ301)。
【0072】
続いて、確信度算出部531は、車両動作検出手段として機能する車両情報部36および外界情報部37から車両動作情報を取得し(ステップ302)、その車両動作情報に基づき、例えば、現在の車両位置から次の交差点までの距離、現在の車両位置から直近の特定対象物(例えば、高速道路の合流点)までの距離、もしくは現在の車両位置より今後進行する直近進路の道路勾配を求める。そして求めた情報と行動意図推定情報を総合することにより、確信度算出部531は、運転者が直近において制動行動もしくは加速行動を起こす確率を示す推論値を、例えばファジィ推論を用いて求める。
【0073】
ファジイ推論を用いる場合、確信度算出部531は、上記の次の交差点までの距離、特定対象物までの距離、道路勾配の各情報をそれぞれ各要素とし、各要素に対して予め定められたメンバシップ関数(ファジイ集合)を有する。なお、一つの要素に対して複数のメンバシップ関数が設定されてもよい。また各要素のメンバシップ関数は、運転者の行動が加速の場合と制動の場合で別途設定される。
確信度算出部531は、行動意図推定情報を取得すると、その情報に示される運転者の行動(加速又は制動)に基づいて、各要素のメンバシップ関数を選択する。次に、確信度算出部531は、上記の各情報の測定値に基づいて、各要素のファジイ集合の適合度(メンバシップ関数の出力値)を算出する。その後確信度算出部531は、min−max法に基づいて適合度の和集合の重心を算出する。算出された重心の値が、推論値である。なお、確信度算出部531は、min−max法を用いる代わりに、代数積−加算重心法、または簡略化推論を用いてもよい。
なお、推論値は、ファジイ推論以外の方法、例えば、上記の情報を入力変数とし、推論値を出力変数とする関数によって求めてもよい。このような関数は実験により、予め求めることができる。
【0074】
推論値は、加速行動時の場合、例えば、次の交差点までの距離及び特定対象物までの距離が遠いほど、また道路勾配が上りの場合に高くなる。また推論値は、制動行動の場合、次の交差点までの距離及び特定対象物までの距離が近いほど、また道路勾配が下りの場合に高くなる。
【0075】
確信度算出部531は、この推論値と類似度とから、例えば両者を掛け算することで車両の制動行動もしくは加速行動の確かさを示す確信度を算出する。あるいは、確信度算出部531は、推論値が所定値(例えば、0.5)以上の場合、類似度の値をそのまま確信度としてもよい。なお、推論値及び類似度が0〜1で表されるため、確信度も0〜1の範囲の値で表される。算出された確信度は、記憶手段51に記憶される(ステップ303)。
【0076】
図8に示すように、目標エバポレータ温度算出部532は、類似度算出部524で求めた類似度情報、空調負荷状態を示す空調情報やエバポレータ温度Te、およびエンジン出力状態を示すエンジン回転数36fやアクセル踏込み量36aを読込む(ステップ401)。ステップ402において、目標エバポレータ温度算出部532は、行動意図推定情報に基づいて、運転者が制動行動を起こす可能性があると判定するとステップ403に進む。
【0077】
出力テンプレート格納部533は、制動時より少し前および制動時の運転フィーリングを良好にするための出力テンプレートを備える。その出力テンプレートは、例えば緩やかな制動もしくは急制動のような制動状態に対し、アクセル踏込み量とエンジン回転数から求まるエンジン出力状態と、現在のエバポレータ温度(空調負荷もしくはコンプレッサ負荷に相関)とに応じて、エンジン出力(もしくはエンジン負荷)が急変しないような目標エバポレータ温度Teo又はTeo1を定める。
【0078】
ステップ403では、目標エバポレータ温度算出部532は、今回の制動時直前および制動状態に相当する出力テンプレートを読出す。そして目標エバポレータ温度算出部532は、この出力テンプレートにより定まる目標エバポレータ温度Teo1を算出し、記憶手段51に記憶する。例えば、目標エバポレータ温度算出部532は、制動時直前として制動時より少し前の期間および緩やかな実際の制動時には、蓄冷しつつ運転フィーリングに違和感を与えない程度の比較的低い空調負荷にするため、目標エバポレータ温度Teoを3〜8℃に設定する。また通常の制動時および急制動時には、運転フィーリングより蓄冷を優先するため空調負荷が高くなるものの、目標エバポレータ温度算出部532は、目標エバポレータ温度Teo1を最低温度(Min)1℃に設定する。
【0079】
他方、ステップ402において、目標エバポレータ温度算出部532は、行動意図推定情報に基づいて運転者が加速行動を起こす可能性があると判定するとステップ404に進む。例えば、最も類似度が高いとされた運転テンプレートが、加速行動時に相当するものである場合には、加速行動を起こす可能性があると判定する。
【0080】
出力テンプレート格納部533はまた、加速時直前および加速時の運転フィーリングを良好にするための出力テンプレートを備える。その出力テンプレートは、例えば緩やかな加速もしくは急加速のような加速状態に対し、アクセル踏込み量とエンジン回転数から求まるエンジン出力状態と、現在のエバポレータ温度(空調負荷に相関)Teとに応じて、エンジン出力(もしくはエンジン負荷)が急変しないような目標エバポレータ温度Teo1を定める。
【0081】
ステップ404では、目標エバポレータ温度算出部532は、今回の加速時直前および加速状態に相当する出力テンプレートを読出す。さらに目標エバポレータ温度算出部532は、この出力テンプレートにより定まる目標エバポレータ温度Teo1を算出し、記憶する。例えば、目標エバポレータ温度算出部532は、加速時直前として加速行動を推定した時点から実際に加速行動を行うまでの期間には、蓄冷を行うために目標エバポレータ温度Teo1を3〜8℃に設定する。また目標エバポレータ温度算出部532は、実際の加速行動時、例えば、緩やかな加速時、通常の加速時および急加速時のいずれの加速行動時にも目標エバポレータ温度Teoを最大温度12℃に設定するか、もしくは冷凍サイクルR(主にコンプレッサ1)を停止させるため設定しない(オープンにする)。
【0082】
図9に示すように、出力判定部534は、各種検出情報(アクセル踏込み量36a、確信度、目標エバポレータ温度Teo又はTeo1、蓄冷器温度Tc)を読込む(ステップ501)。そして出力判定部534は、ステップ502において、アクセル踏込み量が第1の閾値以下であると判定するとステップ503に進む。その後出力判定部534は、確信度算出部531から読込んだ確信度が第2の閾値より大きいときには、制動時直前もしくは制動時と判定してステップ504に進み、蓄冷指示信号および先に読込んだ目標エバポレータ温度情報Teo1を出力する。あるいは、ステップ504において、出力判定部534は、目標エバポレータ温度をTeo1よりも高く設定し、その目標エバポレータ温度及び蓄冷指示信号を出力するようにしてもよい。その後、出力判定部534は、実際に制動行動が生じた時点で目標エバポレータ温度がTeo1と等しくなるまで、目標エバポレータ温度を段階的に低下させ、出力するようにしてもよい。
また、読込んだ確信度が第2の閾値以下のときには、出力判定部534は、通常モードの目標エバポレータ温度Teoを出力し、蓄冷指示及び放冷指示は行わない。そしてプロセスは終了する。
ここで、第1の閾値は、アクセル踏込み量と加速感との関係に基づいて決定される。第1の閾値を、例えば最大踏込み量の20%に設定することができる。また、第2の閾値は、例えば0.5とすることができる。しかし、蓄冷を重視する場合には、第2の閾値を0.5よりも低い値に設定してもよい。逆に、運転フィーリングを重視する場合には、第2の閾値を0.5よりも高い値に設定することができる。
【0083】
一方、ステップ502において、出力判定部534は、アクセル踏込み量36aが第1の閾値より大きいと判定するとステップ505に進む。その後出力判定部534は、蓄冷器温度Tcが限界蓄冷器温度Tco以下のときには、放冷指示信号および先に読込んだ目標エバポレータ温度情報Teo(=Tco、例えば12℃)を出力する(506)。また、ステップ505において、蓄冷器温度Tcが限界蓄冷器温度Tcoより高いときにはそのまま終了する。
【0084】
次に、図10(a)〜(d)は、運転行動意図推定手段52および判定手段53による作動例を示す説明図である。
【0085】
図10(a)は、運転者が現時点t0から現行速度を維持して道路を進行すると仮定したとき、道路勾配に応じて変化するエンジン出力を示し、特に急勾配で大きなエンジン出力を必要とすることを示す。なお、エンジン出力は、例えばカーナビゲーションシステムによって受信した道路勾配情報に基づいて推定される。
【0086】
図10(b)〜図10(d)は、蓄冷器40が、急勾配のために大きなエンジン出力を必要とする時点t1より前の時点t0〜t1期間中に少し蓄冷し、時点t1から放冷することを示す。
【0087】
そこで、判定手段53は、現時点t0から時点t1まで蓄冷指示信号を出力する(図10(b))。また判定手段53は、時点t1から蓄冷器40の温度が限界蓄冷器温度Tcoとなるまでの期間だけ放冷指示信号を出力する(図10(c))。また、現時点t0から蓄冷指示が生じると、判定手段53は、運転フィーリングと車室内の快適性を両立させるため、エンジン出力状態と空調状態に応じて、徐々に目標エバポレータ温度Teo1を蓄冷が可能な8℃以下に低下させ、最低温度(Min)1℃に設定する。
【0088】
上記したように本実施形態によれば、車両用空調装置は、車両空調制御に際し、図3に示す通常モード時には、空調環境条件により決定される目標エバポレータ温度Teoを用いる。すなわち、外気温Tamの中間温度域(例えば、18〜25℃)では冷房、除湿の必要性が低下するので、目標エバポレータ温度Teoを高く(例えば、12℃)して、コンプレッサ1の稼働率を低減することにより、エンジン4の省動力を図ることが可能になる。
【0089】
また車両用空調装置は、図3に示す蓄冷モード時には、目標エバポレータ温度Teoを、蓄冷器40の蓄冷に必要な目標エバポレータ温度Teo1(例えば、1〜8℃)に設定する。本実施形態では、車両用空調装置は、図8、図9に示すように、実際に車両が制動する制動時間の他に、制動行動が行われることを推定した時点から蓄冷モードに設定する。それに加えて、車両用空調装置は、加速行動時もしくは登坂行動時などのエンジン出力増大時にも、出力増大を推定した時点から出力増大行動を取るまでの時間の間だけ、運転者に違和感をもたれない程度に蓄冷を行う蓄冷モードに設定する。そのような設定を行うことにより、蓄冷を行う蓄冷モードの時間を実際の制動時間より長く設定可能になり、より蓄冷量を多くすることが可能になる。
【0090】
また、図3に示す放冷モード時、例えば、アイドリングストップ時には、蓄冷器40の蓄冷器温度Tcが限界蓄冷器温度Tcoに到達するまでの期間はコンプレッサ1を停止しても、蓄冷器40の蓄冷能力を用いて空調を比較的長く維持することが可能になる。また、放冷モードとして、加速時や登坂時、広義にはエンジン出力増大時があり、このときコンプレッサ1(冷凍サイクル)を停止させることで、加速や登坂の運転フィーリングを妨げることなく必要な空調を提供することが可能になる。
【0091】
しかも、本実施形態によれば、図8、図9に示すように、運転行動意図推定手段52による運転パターンの類似度と、および判定手段53による制動行動もしくは加速行動の確信度とを用いることにより、運転者の実際の制動行動もしくは加速行動より早い時点で、かつより高い確率で、運転者の直近の制動行動もしくは加速行動を推定することが可能になる。そのため、より確実に蓄冷時間を長く確保することが可能になる。
【0092】
さらに、本実施形態によれば、車両用空調装置は、図8に示すように、出力テンプレート格納部533に予め設定記憶された出力テンプレートに基いて、蓄冷モードに入るときの目標エバポレータ温度Teo1を、エンジン出力状態に応じて設定している。そのため、直近の制動行動推定時や実際の制動行動時、もしくは直近の加速行動推定時に蓄冷モードに入っても、エンジン出力が急変しないようにすることが可能になる。
【0093】
(他の実施形態)
上記実施形態によれば、蓄冷器40を備えた空調機器100を制御する車両用空調装置への適用例について説明しているが、本発明は蓄冷器40への蓄冷や放冷を行う構成に限定されない。本発明は、運転者の運転行動の意図(例えば、加速や制動)を推定して早めにこの車両の動力源の出力状態を推定し、空調制御手段に対し、この出力状態に応じた空調能力となるように調整指示するものであり、運転フィーリングと車室内の快適性を両立させるものである。
【0094】
例えば、高速道路の合流時などエンジン負荷が大きくなるときでも、早めに運転行動の意図を推定することにより、一時的に空調装置のコンプレッサ負荷が軽減されるようにしてもよい。また本発明は、エンジンとモータを組み合わせたハイブリッド車や電気車などモータを動力源とする車両にも適用可能である。例えば、動力源の負荷状態が大きくなるときに、運転者の運転行動の意図を推定して早めにこの車両の動力源の出力状態を推定する。そして推定された出力状態に応じた空調装置の電動コンプレッサの作動状態(空調能力)に調整することで、車載電源に対する電動コンプレッサ(電気負荷)からの影響を軽減する。そのため、この電源の過負荷による電源電圧の低下を防ぎ、運転フィーリングの悪化を防ぐことが可能になる。
【0095】
また、本実施形態によれば、運転者の運転行動を制動行動と加速行動に分けて説明しているが、本例の加速行動とは、加速行動および登坂行動を含む、広義にはエンジン出力増大時の運転行動のことを意味している。
また、本実施形態によれば、運転行動意図推定手段52における運転パターンテンプレート格納部523は、図5および図6に示すように、予め実験等により求めた各種検出情報毎の運転パターンテンプレートを記憶するように構成されている。そして運転パターンテンプレート格納部523には、多数の運転者に共通する標準運転パターンのテンプレートが記憶設定されている。それに対し、個々の運転者は運転に際し個人特有の癖や特徴を有しているため、実際の運転パターンからそれらの癖や特徴を学習して運転パターンテンプレートに反映させた方が、より一層個人適応が可能となり、運転パターンの判定精度を高めることが可能になる。
【0096】
そこで、図11に示す実施形態では、学習処理工程として、図5の制御フローに対して実際の運転パターン(運転行動データ)の検出処理と、運転パターンテンプレート格納部523に対し運転パターンテンプレートの修正処理(ステップ205,206)とを追加したものである。
【0097】
まず、ステップ205は、学習処理を行うか否かを判定する学習条件判定ステップであり、本例では、類似度が高い場合に各種検出情報を取り込むことにより、運転パターンの判定精度が高められる。そこで、運転行動意図推定手段52は、ステップ204で算出した類似度が所定値以上の制動行動もしくは加速行動であると判定したときステップ206に進み、そのときの各種検出情報毎のサンプリングデータ(運転行動データ)を取り込み、RAMもしくは記憶手段51に一時記憶する。
【0098】
続いて、ステップ206では、所定回数だけ制動行動データもしくは加速行動データが蓄積される毎に、運転行動意図推定手段52は、それらを平均化した制動行動パターンもしくは加速行動パターンを求める。運転行動意図推定手段52は、求められた制動行動パターンもしくは加速行動パターンを用いて、運転パターンテンプレート格納部523に格納されている制動運転パターンおよび加速運転パターンの各テンプレートを修正し、個々の運転者特有の運転パターンを反映させる。なお、各テンプレートの修正は、例えば加重平均処理とし、当初設定記憶された各テンプレートのデータ量を徐々に修正する程度にした方が、判定精度が安定して好ましい。
一方、ステップ205において、類似度が所定値より低いと判定されたときは、学習処理を行わず、終了となる。
【0099】
なお、ステップ205の学習条件判定ステップにおいて、類似度の代わりに確信度を用いて、学習を行うか否かを判定してもよい。この場合、運転行動意図推定手段52は、ステップ204の後、図7に示した手順で確信度算出部531が算出した確信度を読み込む。そして、運転行動意図推定手段52は、確信度と所定値とを比較する。そして、確信度が所定値以上の場合、ステップ206に進み、学習処理を行う。
ここで、類似度を学習を行うか否かの判定に用いる場合、所定値は、例えば0.7に設定される。一方、確信度を学習を行うか否かの判定に用いる場合、所定値は、例えば0.5に設定される。なお、所定値はこれらの値に限られるものではなく、各テンプレートの修正をより慎重に行いたい場合は、これらの閾値をもっと高く設定してもよい。逆に、より積極的に各テンプレートの修正を行いたい場合には、これらの閾値をもっと低く設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の一実施形態である車両用空調装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】蓄冷器40の要部断面図である。
【図3】空調制御装置50において実行される空調制御処理(空調制御手段54)のメインルーチンのフローチャートである。
【図4】空調制御装置50における運転行動意図推定手段52の主要な機能を示す機能ブロック図である。
【図5】運転行動意図推定手段52の作動を示すフローチャートである。
【図6】運転パターン格納部523に格納される行動パターンテンプレートの説明図である。
【図7】確信度算出部531の作動を示すフローチャートである。
【図8】目標エバポレータ温度算出部532の作動を示すフローチャートである。
【図9】出力判定部534の作動を示すフローチャートである。
【図10】運転行動意図推定手段52および判定手段53による作動例を示す説明図である。
【図11】本発明の他の実施形態である、学習機能を備えた運転行動意図推定手段52の作動を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0101】
1 コンプレッサ
4 エンジン
9 エバポレータ
10 空調ケース
35 空調情報部
36 車両情報部
37 外界情報部
40 蓄冷器
50 空調制御装置
51 記憶手段
52 運転行動意図推定手段
53 判定手段
54 空調制御手段
100 空調機器
522 運転行動記憶部
523 運転パターン格納部
524 類似度算出部
531 確信度算出部
532 目標エバポレータ温度算出部
533 出力テンプレート格納部
534 出力判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンもしくはモータを動力源(4)とする車両に搭載され、車室内の空調を行う空調機器(100)を制御する車両用空調装置であって、
前記空調機器を制御して車室内の空調状態を制御する空調制御手段(54)と、
運転者の操作量を検出する運転者行動検出手段(35,36)と、
前記運転者行動検出手段(35,36)で検出された前記操作量に基いて、これから行われる運転者の運転行動を推定した行動意図推定情報を算出する運転行動意図推定手段(52)と、
前記行動意図推定情報に基いて、前記動力源(4)の出力状態を推定し、前記空調制御手段(54)に対し、推定された出力状態に応じて指示する判定手段(53)と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記操作量は、アクセルペダルの踏込み量、車速、又はエンジン回転数の少なくとも一つを含む請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記判定手段(53)は、前記空調制御手段(54)に対し、前記推定された出力状態に応じて空調能力を調整するように指示する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記空調機器(100)は、空調時の冷却能力を用いて蓄冷する蓄冷器(40)を備え、前記判定手段(53)は、前記空調制御手段(54)に対し、前記推定された出力状態に応じて前記蓄冷器(40)への蓄冷、もしくは前記蓄冷器(40)からの放冷を指示する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調機器(100)はエバポレータ(9)を有し、
前記判定手段(53)は、前記蓄冷器(40)への蓄冷を指示し、前記エバポレータ(9)の温度が目標エバポレータ温度となるように指示する請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記運転行動意図推定手段(52)は、
前記操作量を所定期間だけ記憶する運転行動記憶部(522)と、
制動行動又は加速行動を示す予め定められた運転行動パターンが記憶された運転パターン格納部(523)と、
前記運転行動記憶部(522)に記憶された前記操作量と、前記予め定められた運転行動パターンとを比較して類似度を求め、該類似度が最も高い運転パターンに基づいて前記行動意図推定情報を算出する類似度算出部(524)を有する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
エンジンもしくはモータを動力源(4)とする車両に搭載され、車室内の空調を行うと共に、空調時の冷却能力を用いて蓄冷する蓄冷器(40)を備えた空調機器(100)を制御する車両用空調装置であって、
前記空調機器(100)を制御して車室内の空調状態を制御する空調制御手段(54)と、
運転者の操作量を検出する運転行動検出手段(35,36)と、
検出された前記操作量に基いて、これから行われる運転者の運転行動を推定した行動意図推定情報を算出する運転行動意図推定手段(52)と、
前記車両の動きを検出する車両動作検出手段(36,37)と、
前記車両動作検出手段(36,37)で検出された車両動作情報に基いて、前記行動意図推定情報の確かさを示す確信度を求め、該確信度に基づいて前記空調制御手段(54)に対し前記蓄冷器(40)への蓄冷を指示する判定手段(53)と、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項8】
前記判定手段(53)は、前記確信度が所定の値を超えるとき、前記空調制御手段(54)に対し前記蓄冷器(40)への蓄冷を指示し、前記確信度が所定の値以下のとき、前記空調制御手段(54)に対し前記蓄冷器(40)への蓄冷を指示しない請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記車両動作情報は、
運転者に対して経路案内を行うカーナビゲーション装置による道路情報、又はカメラまたはレーダー装置により検出する車両前方若しくは後方の道路状況のうち少なくとも1つを含む請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記空調機器(100)はエバポレータ(9)を有し、
前記判定手段(53)は、前記蓄冷器(40)への蓄冷を指示し、前記エバポレータ(9)の温度が目標エバポレータ温度となるように指示する請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記運転行動意図推定手段(52)は、
前記操作量を所定期間だけ記憶する運転行動記憶部(522)と、
加速行動又は制動行動を示す予め定められた運転行動パターンが記憶された運転パターン格納部(523)と、
前記運転行動記憶部(522)に記憶された前記操作量と、前記予め定められた運転行動パターンとを比較して類似度を求め、該類似度が最も高い運転パターンに基づいて前記行動意図推定情報を算出する類似度算出部(524)を有し、
前記判定手段(53)は、前記車両動作情報と、前記行動意図推定情報及び前記類似度に基いて、前記確信度を求める請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記空調機器(100)は、
空調ケース(10)と、該空調ケース(10)内に設けられた流通する空気を冷却するエバポレータ(9)と、該エバポレータ(9)の下流側に前記蓄冷器(40)を有し、
前記判定手段(53)は、
前記車両動作情報、前記行動意図推定情報および前記確信度に基いて、目標エバポレータ温度を求める目標エバポレータ温度算出部(532)と、
空調制御手段(54)に対し前記蓄冷器(40)への蓄冷を指示し、前記空調機器(100)内の前記エバポレータ(9)の温度が前記目標エバポレータ温度となるように指示する出力判定部(534)をさらに有する請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記行動意図推定情報は、運転者の制動行動を推定するものであり、前記出力判定部(534)は、前記確信度が前記所定の値を超えるとき、前記目標エバポレータ温度を前記目標エバポレータ温度算出部(532)で求められた温度より高い温度から段階的に下げ、実際に制動行動が生じると前記目標エバポレータ温度を前記目標エバポレータ温度算出部(532)で求められた温度に設定する請求項12に記載の車両用空調装置。
【請求項14】
前記行動意図推定情報は、運転者の加速行動を推定するものであり、
前記判定手段(53)は、前記確信度が所定の値を超えるとき、運転行動が推定されてから、運転者が実際に加速行動を行うまでの間、前記空調制御手段(54)に対し前記蓄冷器(40)への蓄冷を指示する請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項15】
前記判定手段(53)は、運転者が実際に加速行動を行うとき、前記空調制御手段(54)に対し前記蓄冷器(40)からの放冷を指示する請求項14に記載の車両用空調装置。
【請求項16】
エンジンもしくはモータを動力源(4)とする車両に搭載され、車室内の空調を行う空調機器(100)を制御する空調制御方法であって、
運転者の操作量を検出する運転者行動検出手段(35,36)からの検出情報に基いて求まる運転者の運転行動パターンと、予め定めた運転行動パターンとを比較して類似度を求め、
前記類似度が最も高い運転パターンに基づいて、これから行われる運転者の運転行動を推定した行動意図推定情報を算出し、
車両の動きを検出する車両動作検出手段(36,37)からの車両動作情報と、前記行動意図推定情報及び前記類似度に基いて、前記行動意図推定情報の確かさを示す確信度を求め、
前記確信度が高いとき、前記車両動作情報、前記行動意図推定情報に応じて前記空調機器(100)による空調能力を制御することを特徴とする空調制御方法。
【請求項17】
前記類似度が所定値以上の場合に前記検出情報に基づいて求める運転者の運転行動パターンに基いて、前記予め定めた運転行動パターンを修正する学習処理工程を有することを特徴とする請求項16に記載の空調制御方法。
【請求項18】
前記確信度が所定値以上の場合に前記検出情報に基づいて求める運転者の運転行動パターンに基いて、前記予め定めた運転行動パターンを修正する学習処理工程を有することを特徴とする請求項16に記載の空調制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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