説明

車両用空調装置に用いられる熱交換器

【課題】2層のチューブを有した熱交換器において、第1及び第2通路に供給される空気を、それぞれ独立して所定の吹出口から車室内へと確実に送風することにより、車室内における乗員の快適性をより一層高める。
【解決手段】車両用空調装置10を構成するエバポレータ18には、第1及び第2チューブ36a、36bの間に、ルーバー40を有した第1フィン38が配設されると共に、第1ブロアユニット16からの空気が流通する第1フロント通路34に臨む第1冷却部50と、第2ブロアユニット22からの空気が流通する第1リア通路130に臨む第2冷却部52との境界部には、前記ルーバー40を備えていない第2フィン54が設けられている。そして、第1ブロアユニット16からケーシング12内に空気が供給され、第2フィン54によって分離された第1冷却部50によって冷却され、一方、第2ブロアユニット22から供給された空気が、前記第2フィン54によって前記第1冷却部50とは分離された第2冷却部52を通過して冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の温度調整を行う車両用空調装置に設けられ、該車室内に送風される空気を冷却・加熱するための車両用空調装置に用いられる熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車両用空調装置は、送風機であるブロアによって内外気をケース内へと取り込み、冷却手段である熱交換器により冷却された空気と、加熱手段である熱交換器により加熱された空気とを前記ケース内で所望の混合比率で混合した後、車室内に設けられたデフロスタ吹出口、フェイス吹出口又はフット吹出口から送風することによって前記車室内の温度及び湿度の調整を行っている。上述した車両用空調装置では、例えば、ケーシング内において空気の流通する複数の通風路を有するものがあり、一方の通風路を通じて流通する空気が、フット吹出口に送風され、他方の通風路を通じて流通する空気が、デフロスタ吹出口又はフェイス吹出口へと送風される。
【0003】
上述したような車両用空調装置では、例えば、前記通風路にそれぞれ対応するように熱交換器の上流側及び下流側にそれぞれ仕切板を設け、前記仕切板によって一方の通風路と他方の通風路とを分離すると共に、前記熱交換器を構成する複数のチューブのいずれか1本と一直線上となるように配置することにより、一方の通風路を流通する空気と前記他方の通風路を流通する空気とを熱交換器内において分離している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−104216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、例えば、2層のチューブを有した熱交換器に対して適用しようとした場合には、該熱交換器の内部において、表面側に配置された一方のチューブと背面側に配置された他方のチューブとの間を通じて空気が流通してしまうこととなる。
【0006】
そのため、このような2層のチューブを有した熱交換器では、一方の通風路又は他方の通風路を通じて熱交換器内に流入した空気が、該熱交換器の内部で、送風量が多く圧力の高い通路側から前記送風量が少なく相対的に圧力の低い通路側へと空気が流通することとなる。その結果、熱交換器の下流側の各通路内における空気が所望の送風量とならず、最終的に冷風と温風との混合比率が変わってしまうこととなり、それに伴って、車室内の各送風口から送風される空気が所望の温度及び送風量にならない。
【0007】
また、第1及び第2通風路のいずれか一方における空気の流通が停止している際、一方の通風路に流通している空気が、熱交換器の内部を通じて他方の通風路側に流通してしまい車室内へと送風されることがある。すなわち、車室内において送風を停止している送風口から意図しない送風が行われることとなり、乗員に不快感を与えることとなる。
【0008】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、2層のチューブを有した熱交換器において、第1及び第2通路に供給される空気を、それぞれ独立して所定の吹出口から車室内へと確実に送風することにより、車室内における乗員の快適性をより一層高めることが可能な車両用空調装置に用いられる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、空気の流通する複数の通路を有するケーシングと、前記通路における前記空気の流通状態を切り換えるダンパ機構とを有する車両用空調装置において、該ケーシングの内部に設けられ、前記空気の熱交換を行うことにより温度調整して供給する熱交換器であって、
前記熱交換器は、前記ケーシングの内部を流通する前記空気の流通方向に沿って並列に設けられ、その内部に媒体が流通する複数の第1及び第2チューブと、
前記第1及び第2チューブの間に設けられ、波状に折曲されて前記空気の流通する空気孔を有する第1のフィンと、
前記ケーシングの第1通路を流通する前記空気の熱交換を行う前記熱交換器における第1熱交換部と、前記ケーシングの第2通路を流通する前記空気の熱交換を行う前記熱交換器における第2熱交換部とを分離する分離手段と、
を備え、
前記分離手段は、前記第1及び第2チューブのそれぞれの間において、該第1及び第2チューブの延在方向に沿って配置され、前記空気孔を有していない第2のフィンからなることを特徴とする。
【0010】
また、第1熱交換部と第2熱交換部との境界部位には、第2のフィンに臨み、第1チューブ及び第2チューブの端部に装着される封止部材を設けるとよい。
【0011】
さらに、熱交換器は、空気を冷却して冷風を供給するエバポレータであるとよい。
【0012】
さらにまた、熱交換器は、空気を加熱して温風を供給するヒータコアであるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0014】
すなわち、熱交換器において、第1及び第2チューブの間を通じた第1熱交換部及び第2熱交換部の間の空気の漏れが分離手段によって確実に遮断されるため、一方の送風機から供給された空気を、前記第1熱交換部に通過させ下流側へと流通させることができ、一方、他方の送風機から供給された空気を、前記第2熱交換部を通過させ下流側へと流通させて前記車室内における前席、中間席及び後席側に対してそれぞれ独立して温度調整された混合風をそれぞれ独立して送風することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置の外観斜視図である。
【図2】図1に示す車両用空調装置の全体断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面斜視図である。
【図4】図2に示すエバポレータの全体平面図である。
【図5】図4のエバポレータにおける第1冷却部と第2冷却部との境界部近傍を示す拡大平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図1の車両用空調装置を構成するケーシングと第1及び第2ブロアユニットとエバポレータとを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る車両用空調装置に用いられる熱交換器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0017】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る熱交換器が用いられた車両用空調装置を示す。なお、この車両用空調装置10は、例えば、その進行方向に沿って3列の座席を有した車両に搭載され、以下、前記車両の車室内において1列目の座席を前席、2列目の座席を中間席、3列目の座席を後席として説明する。
【0018】
また、車両用空調装置10は、図2に示される右側(矢印A方向)が車両の前方側となり、左側(矢印B方向)が該車両の後方側となるように搭載されるため、以下、矢印A方向を前方とし、矢印B方向を後方として説明する。
【0019】
なお、この実施の形態では、ケーシングの内部に複数のダンパ等の回動部材が設けられ、これらの回動部材はモータ等の回動駆動源によって作動する。ここでは簡略化のために、これらの回動駆動源についての図示及び説明は省略する。
【0020】
この車両用空調装置10は、図1〜図3に示されるように、空気の各通路を構成するケーシング12と、前記ケーシング12の側部に連結ダクト14を介して連結され、車両の前席側に送風するための第1ブロアユニット16と、前記ケーシング12の内部に配設され、前記空気を冷却するエバポレータ(熱交換器)18と、該空気を加熱するヒータコア(熱交換器)20と、前記ケーシング12の下部に連結され、車室内の空気(内気)を取り込んで前記車両の後席側に送風するための第2ブロアユニット22と、前記各通路内を流通する空気の流れを切り換えるダンパ機構24とを含む。
【0021】
ケーシング12は、略対称形状の第1及び第2分割ケーシング26、28と、該第1分割ケーシング26と第2分割ケーシング28との間に設けられたセンタープレート30とから構成され、該第1分割ケーシング26の下側部には、連結ダクト14が連結され第1ブロアユニット16から空気の供給される第1取入口32が形成される。この第1取入口32は、エバポレータ18の上流側に設けられた第1フロント通路(第1通路)34と連通している。
【0022】
エバポレータ18は、第1分割ケーシング26と第2分割ケーシング28との間に跨るように配置され、車両の前方(矢印A方向)側となる一端部が、後方側となる他端部に対して下方となるよう所定角度だけ傾斜して配設される。
【0023】
このエバポレータ18は、図4〜図6に示されるように、例えば、アルミニウム等の薄板から一対の第1及び第2チューブ36a、36bが形成され、積層された第1及び第2チューブ36a、36bの間に蛇行するように波状に折曲された第1フィン38がそれぞれ設けられる。この第1フィン38には、該第1フィン38の平面に対して所定角度傾斜するように切り欠かれた複数のルーバー40が形成される。そして、第1及び第2チューブ36a、36bの内部に冷媒を流通させることにより、前記ルーバー40を通じて第1フィン38の間を流通する空気が前記冷媒で冷却されて下流側に冷風として供給される。
【0024】
なお、一対の第1及び第2チューブ36a、36bは、図6に示されるように、エバポレータ18の厚さ方向Tに並設されて2層に配置されると共に、前記第1チューブ36aと第2チューブ36bとの間には所定間隔の間隙42が設けられている。
【0025】
また、エバポレータ18における第1及び第2チューブ36a、36bの両端部には、それぞれ中空状のタンク部44a、44bがそれぞれ接続され、該第1及び第2チューブ36a、36b内を流通する冷媒が保持される。そして、一方のタンク部44aには、外部から冷媒の供給される供給配管46と、該エバポレータ18の内部を循環した前記冷媒が排出される排出配管48とが接続される(図4参照)。
【0026】
さらに、エバポレータ18は、図2に示されるように、第1フロント通路34に臨み、第1ブロアユニット16から供給される空気を冷却する第1冷却部50と、後述する第1リア通路(第2通路)130に臨み、第2ブロアユニット22から供給される空気を冷却する第2冷却部52とを有する。そして、第1冷却部50がケーシング12の前方(矢印A方向)となるように配置されると共に、前記第2冷却部52が前記ケーシング12の後方(矢印B方向)となるように配置される。
【0027】
図4〜図6に示されるように、この第1冷却部50と第2冷却部52との境界部Cには、該第1冷却部50と第2冷却部52との間の空気の連通を遮断する第2フィン54が設けられる。第2フィン54は、第1フィン38と同様に、蛇行するように波状に折曲されて形成され、エバポレータ18における第1冷却部50と第2冷却部52との境界部Cの近傍に設けられ、隣接する一組の第1及び第2チューブ36a、36bの間に設けられる。詳細には、第2フィン54は、エバポレータ18の表面18aから表面18b側まで延在する厚さ寸法で形成され、第1チューブ36a及び第2チューブ36bの側面に対して当接している(図6参照)。
【0028】
また、第2フィン54には、第1フィン38に形成されたルーバー40が形成されていないため、隣接した折曲部位間での空気の流通が遮断され、第1及び第2チューブ36a、36bの延在方向に沿って前記空気が流通することがない。
【0029】
すなわち、第2フィン54は、エバポレータ18において、第1冷却部50と第2冷却部52の境界部Cと平行に配置される。換言すれば、第1冷却部50と第2冷却部52の境界部Cは、第2フィン54及び該第2フィン54の両側部に設けられる第1及び第2チューブ36a、36bと平行に設定されることとなる。
【0030】
また、このエバポレータ18には、図6に示されるように、第2フィン54に臨み、第1フロント通路34及び第1リア通路130に臨む表面18a、18bに、一組のシール部材(封止部材)56a、56bがそれぞれ装着される。シール部材56a、56bは、例えば、ゴムや樹脂製材料から形成され、第2フィン54及び該第2フィン54の両側部に設けられた一組の第1及び第2チューブ36a、36bを覆い、且つ、一方のタンク部44aから他方のタンク部44bまで延在するように設けられる。そして、シール部材56a、56bが、エバポレータ18の表面18a、18bにそれぞれ装着されることにより、該エバポレータ18の内部を通じて第2フィン54から表面18a、18b側への空気の流通が遮断される。
【0031】
一方、図1〜図3に示されるように、エバポレータ18の下流側には、第1冷却部50を通過した空気の供給される第2フロント通路80a、80bが形成され、該第2フロント通路80a、80bの上方には第3フロント通路82と第4フロント通路84とが分岐するように形成される。また、第2フロント通路80a、80bには、第3フロント通路82及び第4フロント通路84の分岐部に臨むように第1エアミックスダンパ86が回動自在に設けられる。
【0032】
そして、第1エアミックスダンパ86を回動させることによってエバポレータ18を通過した冷風の第3フロント通路82及び第4フロント通路84への送風状態及び送風量を調整する。第3フロント通路82は、ケーシング12における前方側(矢印A方向)、第4フロント通路84が後方側(矢印B方向)となるように配置され、該第4フロント通路84の下流側にはヒータコア20が配設される。
【0033】
また、第3フロント通路82の前方側(矢印A方向)には、該第3フロント通路82に沿って延在し、エバポレータ18の下流側から後述する混合部98へと空気を供給するバイパス通路88が形成され、該バイパス通路88の下流側には、バイパスダンパ90が設けられている。このバイパス通路88は、エバポレータ18によって冷却された冷風をバイパスダンパ90の切換作用下に直接的に下流側へと供給するために設けられている。
【0034】
ヒータコア20は、エバポレータ18と同様に、第1分割ケーシング26と第2分割ケーシング28との間に跨るように配置され、車両の前方(矢印A方向)側となる一端部が、後方側(矢印B方向)となる他端部に対して下方となるよう所定角度だけ傾斜して配設される。このヒータコア20は、第4フロント通路84に臨み、該第4フロント通路84から供給される空気を加熱する第1加熱部92と、後述する第3リア通路148に臨み、該第3リア通路148から供給される空気を加熱する第2加熱部94とを有する。
【0035】
このヒータコア20の下流側には、第5フロント通路96が形成され、該第5フロント通路96が前方に向かって延在し、第3フロント通路82の下流と合流した部位に、前記第3フロント通路82を通じて供給される冷風と前記第5フロント通路96を通じて供給される温風との混合される混合部98が形成される。この混合部98の上方には、デフロスタ吹出口100が開口すると共に、該混合部98の側方には、後方に向かって延在する第6フロント通路102が形成される。
【0036】
また、混合部98には、デフロスタ吹出口100に臨むようにデフロスタダンパ104が回動自在に設けられ、前記デフロスタダンパ104を回動させることにより、デフロスタ吹出口100と第6フロント通路102への送風状態を切り換え、且つ、その送風量を調整する。
【0037】
第6フロント通路102には、上方に第1ベント吹出口106a、106bが開口し、該第1ベント吹出口106a、106bに臨むようにベントダンパ108が回動自在に設けられると共に、さらに後方に延在した第7フロント通路110と連通している。そして、ベントダンパ108を回動させることによって混合部98からの空気が第1ベント吹出口106a、106b、第7フロント通路110へ送風される際の送風状態を切り換え、且つ、その送風量を調整可能に設けられている。
【0038】
なお、デフロスタ吹出口100及び第1ベント吹出口106a、106bは、それぞれケーシング12の上方に開口し、該デフロスタ吹出口100が前方側(矢印A方向)に配置され、前記第1ベント吹出口106a、106bが該デフロスタ吹出口100に対して後方(矢印B方向)となるケーシング12の略中央に配置される。
【0039】
第7フロント通路110の下流側には、ケーシング12の幅方向に延在し、図示しない第1ヒート吹出口を通じて車室内における前席の足元近傍に送風する第1ヒート通路112が接続されると共に、前記ケーシング12の後方に向かって延在し、第2ヒート吹出口(図示せず)を通じて前記車室内における中間席の乗員の足元近傍に送風する第2ヒート通路114が接続される。
【0040】
第1ブロアユニット16は、外気を導入するためのダクト116が入口に配設され、内外気の切り換えを行うインテークダンパ118と、前記ダクト116等から取り込んだ空気(外気又は内気)をケーシング12内へと供給する第1ブロアファン120とを有し、前記第1ブロアファン120の収容されるブロアケース122が、第1取入口32に接続された連結ダクト14を介してケーシング12の内部と連通している。なお、第1ブロアファン120は、通電作用下に駆動する第1ブロアモータ121によって回転制御される。
【0041】
このように、第1ブロアユニット16から供給された空気が、連結ダクト14、第1取入口32を通じてケーシング12内へと導入され、ダンパ機構24を構成する第1エアミックスダンパ86、デフロスタダンパ104、ベントダンパ108及びバイパスダンパ90の回動作用下に第1〜第7フロント通路74、80a、80b、82、84、96、102、110、バイパス通路88を通じて車両における前席及び中間席に送風可能なデフロスタ吹出口100、第1ベント吹出口106a、106b、第1及び第2ヒート通路112、114へと選択的に供給される。
【0042】
一方、ケーシング12の下部には、第1取入口32と直交した後方側(矢印B方向)に第2ブロアユニット22から空気の供給される第2取入口128が形成される。この第2取入口128は、エバポレータ18の上流側となる位置に開口して第1リア通路130と連通している。
【0043】
この第1リア通路130は、第1分離壁132を介して第1フロント通路34と分離され、該第1分離壁132に形成された連通口134と第2取入口128との間で回動自在な通風切換ダンパ(切換ダンパ)136が設けられる。そして、第2ブロアユニット22の送風を停止し、第1ブロアユニット16のみで送風を行うモードが選択された場合、通風切換ダンパ136によって第2取入口128を塞ぐことにより(図2中、二点鎖線形状)、第1ブロアユニット16から供給された空気の一部が、エバポレータ18やヒータコア20の内部などを通じて第1〜第4リア通路130、142a、142b、148、150側へ漏れ出した際、第2ブロアユニット22側へと逆流することを防止できる。
【0044】
この場合、図7に示されるように、通風切換ダンパ136を第2取入口128側に回動させ、連通口134を開放することによって第1フロント通路34に供給される空気の一部を第1リア通路130側へと供給することができる。
【0045】
第2ブロアユニット22は、車室内の空気(内気)を取り込み、取り込んだ空気をケーシング12内へと供給する第2ブロアファン138を有し、前記第2ブロアファン138の収容されるブロアケース140がケーシング12の第2取入口128に連結され、第1リア通路130と連通している。なお、第2ブロアファン138は、第1ブロアファン120と同様に、通電作用下に駆動される第2ブロアモータ141によって回転制御される。
【0046】
この第1リア通路130の下流側には、エバポレータ18の第2冷却部52を通過した空気の供給される第2リア通路142a、142bが形成され、第2分離壁144によって第2フロント通路80a、80bと分離されると共に、前記第2分離壁144が前記エバポレータ18まで延在している。そのため、エバポレータ18の下流側においては、第1リア通路130を通じてエバポレータ18の第2冷却部52へ流通した空気と、第1フロント通路34を通じて前記エバポレータ18の第1冷却部50へと流通した空気とが互いに混じることがない。
【0047】
ここで、図2及び図3に示すように、第2リア通路142a、142b及び第2フロント通路80a、80b、第1ベント吹出口106a、106bは、ケーシング12の中央に設けられたセンタープレート30を中心として第1及び第2分割ケーシング26、28側にそれぞれ分離され、第2リア通路142aと第2リア通路142b及び第2フロント通路80aと第2フロント通路80b、第1ベント吹出口106aと第1ベント吹出口106bとを形成する。さらに、第2リア通路142a及び第2リア通路142bには、第2フロント通路80a及び第2フロント通路80bとの連通状態を切換可能な一組の連通切換ダンパ146a、146bが設けられており、一方の連通切換ダンパ146aと、他方の連通切換ダンパ146bとがそれぞれ別個に独立して回動制御される。
【0048】
そして、一組の連通切換ダンパ146a、146bを回動させることにより、車室内における中間席及び後席に送風するための第2リア通路142a、142bと、前記車両における前席に送風するための第2フロント通路80a、80bとを互いに連通させると共に、例えば、一方の連通切換ダンパ146aの回動量と他方の連通切換ダンパ146bの回動量とをそれぞれ変化させることにより、第2フロント通路80aを通じて第1ベント吹出口106aから前席の助手席側に送風される送風量、送風温度と、第2フロント通路80bを通じて第1ベント吹出口106bから前記前席の運転席側に送風される送風量、送風温度をそれぞれ別個に制御することができる。
【0049】
第2リア通路142a、142bの下流側には、ヒータコア20に臨む第3リア通路148が形成され、該第3リア通路148は、ヒータコア20側が開口し、且つ、隣接する第4リア通路150側となる側方が開口している。そして、第3リア通路148に供給された冷風及び温風を所定の混合比率で混合して混合風とする第2エアミックスダンパ152が回動自在に設けられる。この第2エアミックスダンパ152は、第3リア通路148と、ヒータコア20の下流側に接続される第4リア通路150の上流側又は下流側との連通状態を切り換える。これにより、エバポレータ18により冷却されて第3リア通路148へ供給された冷風と、ヒータコア20によって加熱されて第4リア通路150へと流通した温風とを、第2エアミックスダンパ152の回動作用下に前記第4リア通路150内において所定の混合比率で混合して送風する。すなわち、第4リア通路150の中間部位が、車両における中間席及び後席に送風される冷風及び温風を混合する混合部98として機能する。
【0050】
第4リア通路150は、ヒータコア20の他端部を迂回するように湾曲して延在し、下流側において分岐した第5及び第6リア通路154、156と連通する。この第5及び第6リア通路154、156の分岐部位には、回動自在なモード切換ダンパ158が設けられ、前記モード切換ダンパ158が回動することによって第4リア通路150と第5又は第6リア通路154、156との連通状態を切り換える。
【0051】
第5及び第6リア通路154、156は、それぞれ車両の後方(矢印B方向)に向かって延在し、該第5リア通路154は、車両における中間席の乗員の顔近傍に送風するための第2ベント吹出口(図示せず)に連通している。一方、第6リア通路156は、前記中間席及び後席の乗員の足元近傍に送風するための第3及び第4ヒート吹出口(図示せず)に連通している。
【0052】
すなわち、第2ブロアユニット22から供給された空気が、第2取入口128を通じてケーシング12内へと導入され、ダンパ機構24を構成する第2エアミックスダンパ152、モード切換ダンパ158の回動作用下に第1〜第6リア通路130、142a、142b、148、150、154、156を通じて車両における中間席及び後席に送風可能な第2ベント吹出口、第3及び第4ヒート吹出口(図示せず)へと選択的に供給される。
【0053】
なお、上述した第2〜第6フロント通路80a、80b、82、84、96、102、バイパス通路88及び第2リア通路142a、142bは、それぞれ第1分割ケーシング26と第2分割ケーシング28との間に跨るように設けられているが、ケーシング12の中央に設けられたセンタープレート30によって分離されている。
【0054】
本発明の実施の形態に係る熱交換器の適用された車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0055】
先ず、車両用空調装置10が始動されると、第1ブロアユニット16の第1ブロアファン120は通電作用下に回転され、ダクト116等を通じて取り込まれた空気(外気又は内気)が連結ダクト14を通じてケーシング12の第1フロント通路34へと供給されると同時に、第2ブロアユニット22の第2ブロアファン138が通電作用下に回転されることによって取り込まれた空気(内気)がブロアケース140から第2取入口128を通じて第1リア通路130へと供給される。ここでは、第1ブロアファン120によってケーシング12内に供給される空気を第1エアとし、第2ブロアファン138によって前記ケーシング12内に供給される空気を第2エアとして説明する。
【0056】
このケーシング12内に供給された第1エア及び第2エアは、それぞれエバポレータ18の第1及び第2冷却部50、52をそれぞれ通過することによって冷却され、冷風として第1及び第2エアミックスダンパ86、152の設けられた第2フロント通路80a、80b及び第2リア通路142a、142bへとそれぞれ流通する。
【0057】
ここで、例えば、乗員によって該乗員の顔近傍に送風を行うベントモードが選択された場合には、第1エアミックスダンパ86が、第3フロント通路82と第4フロント通路84との間となるような中間位置へと回動し、前記第3フロント通路82に供給された第1エア(冷風)が混合部98へと流通すると共に、第4フロント通路84に供給された第1エアが、ヒータコア20を通過することで加熱されて温風となり、第5フロント通路96を通じて混合部98へと流通して冷風の第1エアと温風の第1エアとが混合される。
【0058】
この混合部98において冷風及び温風が混合された第1エア(混合風)は、デフロスタダンパ104によってデフロスタ吹出口100が閉塞され、且つ、ベントダンパ108によって第7フロント通路110の開口部が閉塞されているため、第6フロント通路102を通じて第1ベント吹出口106a、106bから車室内における前席の乗員の顔近傍へと送風される。
【0059】
一方、第2エアミックスダンパ152が、第3リア通路148内において中間位置に回動し、該第3リア通路148に供給された第2エア(冷風)が、ヒータコア20を通過することによって加熱されて温風となり、第4リア通路150を通じて下流側へと流通すると共に、前記第3リア通路148の開口部から冷風の第2エアが直接第4リア通路150内へと供給され、前記温風の第2エアと混合されて下流側に流通する。そして、モード切換ダンパ158の切換作用下に第5リア通路154を通じて第2エア(混合風)が第2ベント吹出口(図示せず)から車室内における中間席の乗員の顔近傍へと送風される。
【0060】
次に、車室内における乗員の顔及び足元近傍に送風を行うバイレベルモードが選択された場合には、第1エアミックスダンパ86が第3フロント通路82側に若干だけ回動すると共に、ベントダンパ108がベントモードの場合と比較して若干だけ第1ベント吹出口106a、106b側へと回動した中間位置となる。そして、エバポレータ18を通過した冷風の第1エアがバイパス通路88を介して直接混合部98へと供給され、前記混合部98で第3及び第5フロント通路82、96を通じて供給された第1エア(混合風)と混合されて第1ベント吹出口106a、106bから乗員の顔近傍へと送風される。また、混合部98から第6フロント通路102へと流通する第1エア(混合風)の一部が、該第6及び第7フロント通路102、110を通じて第1及び第2ヒート通路112、114にそれぞれ供給されることにより、第1及び第2ヒート吹出口(図示せず)から車室内における前席及び中間席に乗車している乗員の足元近傍に送風される。
【0061】
同時に、第2エアミックスダンパ152が、若干だけヒータコア20から離間する方向に回動し、且つ、モード切換ダンパ158が第6リア通路156を閉塞した状態から回動して第5リア通路154と第6リア通路156との間となる中間位置となる。そして、第2エアは、ヒータコア20によって加熱された温風と、第3リア通路148から開口部を通じて前記第4リア通路150へと供給された冷風とが混合され、混合風として第5リア通路154から第2ベント吹出口を経て車室内において中間席に乗車している乗員の顔近傍に送風されると共に、第6リア通路156から第3及び第4ヒート吹出口を経て車室内における中間席及び後席に乗車している乗員の足元近傍に送風される。
【0062】
次に、車室内において乗員の足元近傍に送風を行うヒートモードが選択された場合には、バイレベルモードの場合と比較して第1エアミックスダンパ86がさらに第3フロント通路82側に回動すると共に、デフロスタダンパ104及びベントダンパ108が回動してそれぞれデフロスタ吹出口100及び第1ベント吹出口106a、106bを閉塞する。これにより、混合部98で混合された第1エア(混合風)が、第6及び第7フロント通路102、110を通じて後方へと流通して第1及び第2ヒート通路112、114にそれぞれ供給され、図示しない第1及び第2ヒート吹出口から車室内における前席及び中間席における乗員の足元近傍に送風される。
【0063】
一方、第2エアミックスダンパ152が、バイレベルモードの場合と比較してさらに開口部側に向かって回動し、且つ、モード切換ダンパ158が第5リア通路154を閉塞する。これにより、第4リア通路150で混合された第2エア(混合風)が、該第4リア通路150から第6リア通路156を経て第3及び第4ヒート吹出口へ供給され、車室内における中間席及び後席における乗員の足元近傍に送風される。
【0064】
次に、車室内において乗員の足元近傍及びフロントウィンドウの曇りを除去するために該フロントウィンドウ近傍に送風を行うヒートデフモードについて説明する。このヒートデフモードが選択された場合には、デフロスタダンパ104がデフロスタ吹出口100から離間する方向に回動し、第6フロント通路102の開口部との間となる中間位置となると共に、ベントダンパ108によって第1ベント吹出口106a、106bが閉塞される(図2中、二点鎖線形状)。これにより、混合部98で混合された第1エア(混合風)の一部が、デフロスタ吹出口100を通じて車両におけるフロントウィンドウ近傍に送風されると共に、前記第1エアの一部が、第6及び第7フロント通路102、110を経て第1及び第2ヒート通路112、114、第1及び第2ヒート吹出口(図示せず)から車室内における前席及び中間席における乗員の足元近傍に送風される。
【0065】
一方、このヒートデフモードにおいて、第2エアを車室内の中間席及び後席に送風する場合には、上述したヒートモードと同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0066】
最後に、車両におけるフロントウィンドウの曇りを除去するために該フロントウィンドウ近傍のみに送風を行うデフロスタモードについて説明する。この場合には、デフロスタダンパ104が、デフロスタ吹出口100から離間するように回動して第6フロント通路102の開口部を閉塞し、第1エア(混合風)が混合部98から開口したデフロスタ吹出口100へと供給され、車両におけるフロントウィンドウ近傍に送風される。この場合、第2ブロアユニット22を駆動させることなく、第1ブロアユニット16から供給される第1エアのみを送風することによって対応することができる。
【0067】
以上のように、本発明の実施の形態では、エバポレータ18が、第1フロント通路34に臨み、第1ブロアユニット16から供給される空気の通過する第1冷却部50と、第1リア通路130に臨み、第2ブロアユニット22から供給される空気の通過する第2冷却部52とを備え、前記第1冷却部50と第2冷却部52との境界部Cに、ルーバーを備えていない第2フィン54を設け、該境界部近傍に設けられた一組の第1及び第2チューブ36a、36bの間に配置している。
【0068】
これにより、第1冷却部50と第2冷却部52との境界部Cに第2フィン54が設けられることにより、複数の第1チューブ36aと第2チューブ36bとの間の間隙42を通じて前記第2フィン54側へと流入した空気が、該第2フィン54によって反対側に流通することが阻止される。
【0069】
具体的には、第1冷却部50側から第2フィン54側へと流入した空気が、該第2フィン54によって遮断され、第2冷却部52側へと流通することが阻止され、反対に、前記第2冷却部52側から前記第2フィン54側へと流入した空気が、該第2フィン54によって遮断され、前記第1冷却部50側へと流通することが阻止される。
【0070】
このように、第1及び第2チューブ36a、36bの間を通じた第1冷却部50及び第2冷却部52の間の空気の漏れが確実に遮断されるため、第1ブロアユニット16から供給された空気を、エバポレータ18の第1冷却部50を通過させ、所望流量で下流側へと流通させることができ、一方、第2ブロアユニット22から供給された空気を、前記エバポレータ18の第2冷却部52を通過させ、所望流量で下流側へと流通させて前記車室内における前席、中間席及び後席側に対してそれぞれ独立して温度調整された混合風をそれぞれ独立して送風することができる。
【0071】
なお、前記第2フィン54は、第1フィン38のルーバー40を省略しただけの部材であるため、該第1フィン38を流用して形成することができ、新たに別個のフィン等の部材を準備する必要がなく、前記第1冷却部50と第2冷却部52との間の空気の流通を遮断することができる。
【0072】
また、例えば、第2ブロアユニット22が停止し、第1ブロアユニット16のみを駆動させた状態において、該第1ブロアユニット16から第1フロント通路34へと供給された空気が、エバポレータ18の内部を通じて前記第2ブロアユニット22からの空気の供給される第1リア通路130、第2リア通路142a、142b側へと流通してしまうことが第2フィン54によって確実に阻止される。反対に、第1ブロアユニット16が停止し、第2ブロアユニット22のみが駆動した状態においては、前記第2ブロアユニット22によって第1リア通路130へと供給された空気が、エバポレータ18の内部を通じて前記第1フロント通路34、第2フロント通路80a、80b側へと流通してしまうことが第2フィン54によって阻止される。
【0073】
そのため、送風の停止されている吹出口(送風口)から誤って車室内へと送風されてしまうことが回避され、意図しない送風によって乗員に不快感を与えることがない。
【0074】
さらに、エバポレータ18には、第1フロント通路34及び第1リア通路130に臨む表面18a、18bに、第2フィン54を覆うように一組のシール部材56a、56bがそれぞれ装着されているため、例えば、第1冷却部50又は第2冷却部52側から第2フィン54へと流入した空気が、該第2フィン54に沿って前記エバポレータ18の厚さ方向に流通した際、その表面18a、18bに設けられた前記シール部材56a、56bによって外部への漏出が確実に阻止される。
【0075】
その結果、第1フロント通路74及び第1リア通路130からエバポレータ18における第1及び第2冷却部50、52へと流入した空気を、第2フロント通路80a、80b及び第2リア通路142a、142bへと確実且つ所望流量で流通させることができる。
【0076】
また、上述した本実施の形態では、エバポレータ18における第1冷却部50と第2冷却部52を分離する際、ルーバー40を備えていない第2フィン54を、前記第1冷却部50と第2冷却部52との境界部Cに設ける構成について説明したが、例えば、ヒータコア20における第1加熱部92と第2加熱部94とを分離する構成として用いるようにしてもよい。
【0077】
なお、本発明に係る車両用空調装置に用いられる熱交換器は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0078】
10…車両用空調装置 12…ケーシング
14…連結ダクト 16…第1ブロアユニット
18…エバポレータ 18a、18b…表面
20…ヒータコア 22…第2ブロアユニット
24…ダンパ機構 30…センタープレート
36a…第1チューブ 36b…第2チューブ
38…第1フィン 40…ルーバー
42…間隙 44a、44b…タンク部
46…供給配管 48…排出配管
50…第1冷却部 52…第2冷却部
54…第2フィン 56a、56b…シール部材
98…混合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の流通する複数の通路を有するケーシングと、前記通路における前記空気の流通状態を切り換えるダンパ機構とを有する車両用空調装置において、該ケーシングの内部に設けられ、前記空気の熱交換を行うことにより温度調整して供給する熱交換器であって、
前記熱交換器は、前記ケーシングの内部を流通する前記空気の流通方向に沿って並列に設けられ、その内部に媒体が流通する複数の第1及び第2チューブと、
前記第1及び第2チューブの間に設けられ、波状に折曲されて前記空気の流通する空気孔を有する第1のフィンと、
前記ケーシングの第1通路を流通する前記空気の熱交換を行う前記熱交換器における第1熱交換部と、前記ケーシングの第2通路を流通する前記空気の熱交換を行う前記熱交換器における第2熱交換部とを分離する分離手段と、
を備え、
前記分離手段は、前記第1及び第2チューブのそれぞれの間において、該第1及び第2チューブの延在方向に沿って配置され、前記空気孔を有していない第2のフィンからなることを特徴とする車両用空調装置に用いられる熱交換器。
【請求項2】
請求項1記載の熱交換器において、
前記第1熱交換部と前記第2熱交換部との境界部位には、前記第2のフィンに臨み、前記第1チューブ及び第2チューブの端部に装着される封止部材が設けられることを特徴とする車両用空調装置に用いられる熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の熱交換器において、
前記熱交換器は、前記空気を冷却して冷風を供給するエバポレータであることを特徴とする車両用空調装置に用いられる熱交換器。
【請求項4】
請求項1又は2記載の熱交換器において、
前記熱交換器は、前記空気を加熱して温風を供給するヒータコアであることを特徴とする車両用空調装置に用いられる熱交換器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate