説明

車両用空調装置の空調ユニット

【課題】製造コストの低減が図れる車両用空調装置の空調ユニットを実現する。
【解決手段】空気通路を形成する空調ケース2と、この空調ケース2内に送風空気を圧送する送風機6と、この送風機6から送風された空気を冷却する蒸発器8と、一端が車両のダッシュパネル17を介して車室外部の冷媒配管と接続され、他端が蒸発器8に接続された冷媒配管81、82とを備え、車両のインストルメントパネルの下方に配置される車両用空調装置の空調ユニットにおいて、蒸発器8が配設される空気通路23aを形成する空調ケース2の側面に、冷媒配管81、82を収納する配管収納部25が形成されており、配管収納部25は、車室内および空気通路23aと気密的に区画され、蒸発器8の接続部からダッシュパネル17まで延びる冷媒配管81、82の外周面を、空気層を介して覆うこと。これにより、製造コストの低減が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のインストルメントパネルの下方に配置される車両用空調装置の空調ユニットに関するものであり、空調ケース内に配設される蒸発器及びそれに接続される冷媒配管の収納に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空調装置の空調ユニットとして、例えば、特許文献1に示されるものが知られている。すなわち、特許文献1における空調ユニットは、空調ケースから蒸発器及びそれに接続される冷媒配管を取り付け、取り外しができるように構成されている。
【0003】
そのため、蒸発器と冷媒配管は、蒸発器に一体的に組み合わされている。また、空調ケースの側面部には、蒸発器を脱着するための脱着口部が形成され、この脱着口部にカバーが脱着可能に被されている。さらに、空調ケースの上面部と蒸発器の上面部との間には、隙間が形成されている。そして、その隙間を塞ぐためのシール部材が設けられている。このシール部材は、カバーに一体に形成されている。つまり、カバーを脱着口部から外すことにより、シール部材が同時に取り外される。
【0004】
このような構成により、蒸発器を取り付けるとき、もしくは取り外すときに、蒸発器を隙間に移動させることにより、蒸発器を空調ケースから容易に脱着することができる。
【特許文献1】特開平6−127261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の空調ケースのカバーには、送風空気を蒸発器の空気通路に取り入れるための通風口が形成されている。そして、通風口から取り入れた送風空気を蒸発器のみに流すように冷媒配管側を断熱カバー等によりシールしている。
【0006】
このように、蒸発器と冷媒配管とを一体的に組み合わせて、空調ケース内に収納させるためには、冷媒配管側にシールするためのシール材もしくは結露防止のための断熱カバー等の付帯部品が必要となっている。このため、部品点数が増えるとともに、組付け工数が増加して製造コストが上昇する問題がある。
【0007】
上記構成の他に、空調ケースの外側に冷媒配管を配設する構成にすると、車室内に冷媒配管が露出するため、断熱カバー、保護カバーや配管固定部材等が必要となる。このため、製造コストが上昇する問題がある。
【0008】
本発明の目的は、製造コストの低減が図れる車両用空調装置の空調ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、空気通路を形成する空調ケース(2)と、この空調ケース(2)内に送風空気を圧送する送風手段(6)と、空調ケース(2)内に配設され、送風手段(6)から送風された空気を冷却する蒸発器(8)と、一端が車両のダッシュパネル(17)を介して車室外部の冷媒配管と接続され、他端が蒸発器(8)に接続された冷媒配管(81、82)とを備え、車両のインストルメントパネルの下方に配置される車両用空調装置の空調ユニットにおいて、
蒸発器(8)が配設される空気通路(23a)を形成する空調ケース(2)の側面に、冷媒配管(81、82)を収納する配管収納部(25)が形成されており、この配管収納部(25)は、車室内および空気通路(23a)と気密的に区画されており、配管収納部(25)に収納され、かつ蒸発器(8)との接続部からダッシュパネル(17)まで延びる冷媒配管(81、82)の外周面を、空気層を介して覆うことを特徴としている。
【0010】
この発明によれば、車室内および空気通路(23a)と気密された配管収納部(25)が形成されたことにより、配管収納部(25)内の空気は、配管収納部(25)外と気密しているため、冷媒配管(81、82)に付着する結露水の発生を少なくすることができる。これにより、配管収納部(25)内には、断熱カバー不要の冷媒配管(81、82)を収納できる。
【0011】
また、車室内に対し、冷媒配管(81、82)が配管収納部(25)により覆われるため冷媒配管(81、82)の保護カバーを不要にできる。これにより、部品点数が低減できるとともに、製造コストの低減が図れる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、空調ケース(2)には、空気通路(23a)と配管収納部(25)とを気密的に区画する仕切り板(26)が設けられ、配管収納部(25)および仕切り板(26)は、空調ケース(2)に一体的に形成されていることを特徴としている。
【0013】
この発明によれば、配管収納部(25)および仕切り板(26)を空調ケース(2)に容易に一体成形により形成することができる。これにより、製造コストの低減が図れる。
【0014】
請求項3に記載の発明では、配管収納部(25)のダッシュパネル(17)側には、車室内と配管収納部(25)とを気密的に区画する突出部(27)が設けられ、この突出部(27)の内側には、冷媒配管(81、82)の先端側が貫通する貫通孔(81a、82a)が形成されており、配管収納部(25)および突出部(27)は、冷媒配管(81、82)から滴下した結露水が貫通孔(81a、82a)およびダッシュパネル(17)を介して車室外に流れるように形成されていることを特徴としている。
【0015】
この発明によれば、配管収納部(25)内では、結露水の発生が極めて少ないが、仮に配管収納部(25)内に冷媒配管(81、82)から結露水が滴下しても、貫通孔(81a、82a)およびダッシュパネル(17)を介して車室外に流れるため、車室内に漏れ出すことはない。
【0016】
請求項4に記載の発明では、空調ケース(2)の空気通路の一部は、空調ケース(2)から着脱可能な小ケース部(22)として形成され、配管収納部(25)は、小ケース部(22)の側面に形成され、小ケース部(22)には、空気通路(23a)に配設される蒸発器(8)と、配管収納部(25)に収納される冷媒配管(81、82)とが配置されていることを特徴としている。この発明によれば、空調ユニットへの蒸発器(8)の取り付け、および空調ユニットからの蒸発器(8)の取り外しを容易に行うことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明では、冷媒配管(81、82)と蒸発器(8)との間には、膨張弁(83)が接続されており、配管収納部(25)は、膨張弁(83)を含めた冷媒配管(81、82)を覆う形状に形成されていることを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、結露防止のための断熱カバーを膨張弁(83)に設けると、その膨張弁(83)と蒸発器(8)および冷媒配管(81、82)との接続部の設置スペースが大きくなる欠点があるが、前述したように、配管収納部(25)とその外部とが気密された配管収納部(25)内では、断熱カバーを設けることがないため、接続部の設置スペースを小さくすることができる。これにより、製造コストの低減が図れる。
【0019】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、一実施形態における車両用空調装置の空調ユニットを図1乃至図7に基づいて説明する。図1は、空調ユニットの全体構成を示す模式図である。図2は、車両に搭載される空調ユニットの概略構成を示す側面図である。
【0021】
図3は、車両に搭載される空調ユニットの概略構成を示す正面図である。図4は、図2に示すA−A部分断面図である。図5は、図2に示すB矢視図である。図6は、小ケース部の構成を示す平面図である。図7は、蒸発器を小ケース部に取り付けたときの空調ユニットの分解構成図である。
【0022】
本実施形態の空調ユニット1では、蒸発器8及びそれに接続される冷媒配管81、82を、空調ケース2への取り付けおよび空調ケース2から取り外しが容易にできるように構成されている。そのため、蒸発器8と冷媒配管81、82は、蒸発器8に一体的に組み合わされている。ここでは、蒸発器8を取り付けた状態の空調ユニット1の構成について説明する。
【0023】
本実施形態の空調ユニット1は、図1に示すように、空気通路を形成する空調ケース2を備えている。空調ケース2の上流側部位には、車室内の空気を吸込む内気吸込口3、車室外の空気を吸込む外気吸込口4、両吸込口3、4を選択的に開閉する内外気切替ドア5が設けられている。
【0024】
更に、この内外気切替ドア5の下流側には、空調ケース2内に送風空気を圧送する送風手段としての送風機6が設けられている。送風機6は、図示しないファンケース、ファン、ファンモータからなっている。送風機6の下流側には、空調ケース2において、上述したように、空調ケース2内を流れる空気を冷却する蒸発器8が設けられている。蒸発器8は、図示しないコンプレッサ、コンデンサ、レシーバおよび膨張弁83(図2参照)とともに、周知の冷凍サイクルを構成する冷却用熱交換器である。
【0025】
そして、蒸発器8の下流側には、加熱用熱交換器としてのヒータコア9およびエアミックスドア10が設けられている。ヒータコア9は、図示しないエンジンの冷却水を熱源とする加熱用熱交換器で、空調ケース2内に流れる空気を加熱するためのものである。また、エアミックスドア10は、蒸発器8を通過した送風空気のうち、ヒータコア9を通過して加熱される風量と、ヒータコア9をバイパスする風量との割合を調節することにより、車室内への吹出空気の吹出温度を調節するようになっている。
【0026】
そして、ヒータコア9の下流側には、車室内乗員の上半身に向けて風を吹き出すフェイス吹出開口部11、車室内乗員の足元に向けて風を吹き出すフット吹出開口部12、車両の前面窓ガラス内面に向けて風を吹き出すデフロスタ吹出開口部13がそれぞれ設けられている。
【0027】
また、フェイス吹出開口部11およびデフロスタ吹出開口部13の上流側には、フェイスデフロスタドア14が設けられ、フット吹出開口部12の上流側には、フットドア15が設けられている。フェイス吹出開口部11およびデフロスタ吹出開口部13は、フェイスデフロスタドア14により開閉されるようになっている。フット吹出開口部12は、フットドア15により開閉されるようになっている。
【0028】
フェイス吹出開口部11は、図示しないフェイスダクトおよびサイドフェィスダクトを介してフェイス吹出口およびサイドフェイス吹出口に接続されている。このフェイス吹出口およびサイドフェイス吹出口から、乗員の上半身に向けて風が吹き出される。
【0029】
デフロスタ吹出開口部13は、図示しないデフロスタダクトを介してデフロスタ吹出口に接続されている。このデフロスタ吹出口から、車両の前面窓ガラスの内面に向けて風が吹き出される。フット吹出開口部12は、図示しないフットダクトを介してフット吹出口に接続されている。このフット吹出口から、乗員の足元に向けて風が吹き出される。
【0030】
ここで、空気通路を形成する空調ケース2は、ポリプロピレンのような、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂の成形品からなっている。空調ケース2は、複数の分割ケースからなっており、複数の分割ケースは、空気通路内に配設される蒸発器8、ヒータコア9等の空調用熱交換器および制御ドア10、14、15等の機器を収納した後に、金属バネクリップ、ネジ等の締結手段により、一体的に結合されている。
【0031】
ところで、図1中に示す2点鎖線で囲まれた符号22は、空調ケース2内に形成される空気通路の一部であり、本実施形態では小ケース部と呼んでいる。この小ケース部22は、空調ケース2から着脱可能となるように構成している。つまり、空調ケース2は、図2および図3に示すように、図示しない内外気切替箱と、上ケース21と、小ケース部22の3分割されたケース部分から構成されている。
【0032】
上ケース21の空気流れ上流側、即ちファンケースの上流側は、図示しない内外気切替箱に接続されている。前述した通り、内外気切替箱には、内気吸込口3、外気吸込口4および内外気切替ドア5が設けられている。また、内外気切替箱は、車室内の計器盤(インストルメントパネル)下方部のうち、中央部から助手席にオフセットして配置されている。
【0033】
これに対し、上ケース21および小ケース部22は、車室内の計器盤(インストルメントパネル)下方部のうち、車両左右方向の略中央部に配置されている。そして、上ケース21には、送風機6、ヒータコア9および制御ドア10、14、15等を収納できるように形成されている。送風機6は、車両後方側の上方に配置され、ヒータコア9は、車両前方側の上下方向のほぼ中央に配置されている。
【0034】
また、送風機6とヒータコア9との間には、蒸発器8を通過した送風空気の空気通路が形成されている。また、ヒータコア9の車両後方側には、エアミックスドア10が配設されている。このエアミックスドア10は、前述したように、蒸発器8を通過した送風空気のうち、ヒータコア9を通過して加熱される風量と、ヒータコア9をバイパスする風量との割合を調節している。
【0035】
また、上ケース21には、ヒータコア9と送風機6との間の上方に各吹出開口部11、12、13が形成されている。フェイス吹出開口部11は、送風機6の上方にて、車両後方側が開口するように形成されている。デフロスタ吹出開口部13は、フェイス吹出開口部11と対向する位置に、車両前方側が開口するように形成されている。フット吹出開口部12は、上ケース21の側壁に形成されている。
【0036】
小ケース部22は、空調ユニット1の底部となる部分に相当し、その上方に上ケース21を重ね合わせるように構成している。図2および図3中に示す符号24は、小ケース部22に形成されたドレン口であり、小ケース部22は、このドレン口24が最下方になるように形成されている。ドレン口24の先端が、ダッシュパネル17よりも車室外に突き出されており、結露水が外部に排出される。
【0037】
更に、図2および図3中に示す符号25は、上ケース21および小ケース部22の側面に形成された配管収納部であり、蒸発器8に接続される冷媒配管81、82および膨張弁83を収納できるように形成されている。この配管収納部25は、上ケース21および小ケース部22の側方の一端側が、外方に膨らむように形成される。
【0038】
この膨らみは、上ケース21と小ケース部22との分割面に形成されている。つまり、上ケース21と小ケース部22とを重ね合わせることにより、配管収納部25が形成される。小ケース部22の分割面には、膨らみ部25aが形成され、上ケース21の分割面には、中央部近傍に膨らみ部25b及び車両前方端側に膨らみ部25cが形成されている。
【0039】
小ケース部22の膨らみ部25aと上ケース21の膨らみ部25bとの間に形成される配管収納部25には、蒸発器8に接続される膨張弁83およびその膨張弁83に接続される冷媒配管81、82が収納される。膨張弁83は、蒸発器8の側方に設けられ、その下方に冷媒配管81、82が接続されている。膨張弁83は、上ケース21と小ケース部22との分割面に沿って配設されている。
【0040】
つまり、小ケース部22に形成される膨らみ部25aは、蒸発器8及び膨張弁83の接続部からダッシュパネル17まで延びる冷媒配管81、82の外周面を、空気層を介して覆うように形成されている。そして、小ケース部22の膨らみ部25aと上ケース21の膨らみ部25cとの間に形成される配管収納部25には、冷媒配管81、82のダッシュパネル17側の先端側が収納される。そして、膨らみ部25aおよび膨らみ部25cの末端、即ち車両前方端が、ダッシュパネル17側に突き出した環状の突出部27(後述する)が形成されている。
【0041】
ところで、小ケース部22は、送風機6から吐出された送風空気を、ヒータコア9およびエアミックスドア10側に流すための空気通路を形成している。小ケース部22は、送風機6により車両後方側の下方に向けて吹き出された送風空気が、小ケース部22の底面を車両前方側に沿って流れ、その上方に配設された蒸発器8に向けて導くように形成されている。
【0042】
小ケース部22は、図6に示すように、車両上方側端部(即ち、上ケースの車両下方側端部と結合される分割面)が空気通路を形成するために開口されている。前述の通り、小ケース部22の上方側には、蒸発器8、膨張弁83及びその膨張弁83に接続される冷媒配管81、82を収納するための収納空間23が形成されている。収納空間23は、図6中に示す2点鎖線で囲まれた部分に相当している。収納空間23に対して、車両後方側に形成された開口部22aは、送風機6から吐出された送風空気が流れる空調通路である。
【0043】
また、図6中に示す符号26は、収納空間23における空気通路23aと配管収納部25とを区画する仕切り板である。つまり、空気通路23aは、蒸発器8の通風部分に相当するコア部(図示せず)が配設される部分である。配管収納部25は、前述したように、膨張弁83及びその膨張弁83に接続される冷媒配管81、82を収納するスペースである。
【0044】
そして、小ケース部22の空気通路23aおよび仕切り板26に対応する上ケース21の分割面の位置には、図4に示すように、空気通路23aおよび仕切り板26が形成されている。その仕切り板26には、蒸発器8の接続部と膨張弁83とを接続するための接続配管を貫通させる貫通孔26aが設けられている。貫通孔26aは、小ケース部22および上ケース21のそれぞれの仕切り板26に半円状に形成されている。
【0045】
貫通孔26aには、シール部材85を介して、空気通路23aと配管収納部25とが気密的に区画される。これにより、蒸発器8を流れる送風空気が、配管収納部25側に漏れることがない。また、小ケース部22に形成される空気通路23aおよび仕切り板26は、小ケース部22に一体的に形成され、同じように、上ケース21に形成される空気通路23aおよび仕切り板26は、上ケース21に一体的に形成されている。
【0046】
また、図6中に示す符号81a、82aは、冷媒配管81、82のダッシュパネル17側の先端を支持する貫通孔であり、突出部27の中央(上ケース21と小ケース部22との分割面)に形成されている。この貫通孔81a、82aに対応する位置であって、上ケース21の分割面にも、貫通孔81a、82aが形成されている(図5参照)。貫通孔81a、82aは、それぞれ半円状に形成されている。
【0047】
また、貫通孔81a、82aは、冷媒配管81、82の径よりも少しだけ太めに形成されている。つまり、小ケース部22の膨らみ部25a内に冷媒配管81、82から結露水が滴下したときに、その結露水が貫通孔81a、82aおよびダッシュパネル17の孔部17a(図2参照)を介してエンジンルーム内に流れるようになっている。
【0048】
ところで、この貫通孔81a、82aは、冷媒配管81、82の径よりも大きめになっているため僅かな隙間が発生するが、配管収納部25内の空気が外部の空気と入れ替わるほどの隙間ではない。そのため、この隙間から配管収納部25内に外部の湿り空気が侵入することがない。従って、貫通孔81a、82aに冷媒配管81、82が設置されることにより、配管収納部25が車室内とほぼ気密的に区画される。
【0049】
一方、突出部27の一端面は、図5に示すように、略四角丸状の環状に形成されている。突出部27は、前述したように、膨らみ部25aおよび膨らみ部25cの車両前方端に形成されている。突出部27の端面中央部には、ジョイント84を収納するジョイント穴84aが形成されている。
【0050】
突出部27は、ジョイント84の外周縁がダッシュパネル17面にパッキン材19を介して当接するように形成されている。また、ジョイント84には、冷媒配管81、82のダッシュパネル17側の先端が接合されている。そして、ジョイント84は、ダッシュパネル17に固定されたジョイント18に、図示しない締結部材により固定されている。
【0051】
ジョイント18は、エンジンルーム内に搭載された冷凍サイクル装置の機能部品に接続された車室外部の冷媒配管との接続金具である。以上のような構成の突出部27により、突出部27の端面、即ちジョイント84の外周縁が、パッキン材19を介してダッシュパネル17面に、押し付けられるように取り付けられて、配管収納部25と車室内とが気密される。
【0052】
ところで、蒸発器8は、その蒸発器8の接続部分が小ケース部22の分割面よりも上方に突き出すように配置され、蒸発器8の接続部分以外が小ケース部22の分割面に沿って配置されている(図2参照)。つまり、蒸発器8は、車両前方側が下方に傾斜して小ケース部22の空気通路23aに配置されている。これにより、蒸発器8のコア部で発生した結露水はドレーン口24を介して、外部に排出される。
【0053】
一方、配管収納部25に配置される冷媒配管81、82は、一方がエンジンルーム内に搭載された受液器(図示せず)に通ずるように接続され、他方がエンジンルーム内に搭載された圧縮機(図示せず)の吸入側に通ずるように接続される。一方の冷媒配管81に高温高圧の冷媒が流れ、他方の冷媒配管82に低温低圧の冷媒が流れる。
【0054】
つまり、一方の冷媒配管81は、高温となっており、乗員が素手で触るとやけどの恐れがある。また、他方の冷媒配管82は、低温となっており、これに湿り空気が触れると、結露水が発生する。従って、配管収納部25に収納することにより、冷媒配管81、82の高温部が車室内に露出することはない。これにより、分割面に形成された膨らみ部25a、25b、25cにより高温部を保護することができる。
【0055】
以上のような構成による配管収納部25は、蒸発器8が配設される空気通路23aとが仕切り板26により気密される。更に、配管収納部25は、ダッシュパネル17と突出部27とにより車室内とほぼ気密される。これにより、配管収納部25内には、湿り度の高い空気が侵入することがない。つまり、冷媒配管81、82に付着する結露水の発生を少なくすることができる。
【0056】
従って、配管収納部25に収納する膨張弁83および冷媒配管81、82には、結露防止用の断熱カバーを不要とすることができる。そのため、空気層を介して膨張弁83および冷媒配管81、82を覆うことのできる配管収納部25を形成すれば良い。
【0057】
仮に、配管収納部25に収納された冷媒配管81、82から滴下した結露水が発生した場合には、配管収納部25の車両前方側の突出部27により、貫通孔81a、82aおよびダッシュパネル15の孔部17aから車室外に流れる。
【0058】
更に、以上の構成の空調ユニット1は、車両のインストルメントパネルの下方部に配置される。そして、車両に配置した状態において、空調ユニット1から蒸発器8を取り外す場合は、図7に示すように、空調ケース2から小ケース部22を取り外すことにより、蒸発器8の交換作業が容易に行うことができる。ただし、空調ケース2から小ケース部22を取り外す場合には、予めダッシュパネル17側のジョイント84を外しておくことが必要である。
【0059】
以上の構成による空調ユニット1によれば、空調ケース2内に配管収納部25を形成することにより、膨張弁83及び冷媒配管81、82が車室内に露出することなく、蒸発器8と一体的に配置できる。また、配管収納部25には、断熱カバー不要の膨張弁83および冷媒配管81、82を収納できることにより、部品点数および製造コストの低減が図れる。
【0060】
更に、通常の配管収納部25内では、結露水の発生が極めて少ないが、仮に配管収納部25内に冷媒配管81、82から結露水が滴下しても、貫通孔81a、82aおよびダッシュパネル17の孔部17a介して車室外に流れるため、車室内に漏れ出すことはない。
【0061】
また、配管収納部25および仕切り板26は、空調ケース2に一体的に形成されていることにより、配管収納部25および仕切り板26を空調ケース2に容易に一体成形により形成することができる。これにより、製造コストの低減が図れる。
【0062】
空調ケース2の空気通路の一部は、空調ケース2から着脱可能な小ケース部22として形成されることにより、空調ユニット1への蒸発器8の取り付け、および空調ユニット1からの蒸発器8の取り外しを容易に行うことができる。
【0063】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、配管収納部25に、膨張弁83及びその膨張弁83に接続される冷媒配管81、82を収納させたが、これに限らず、配管収納部25に蒸発器8に接続される冷媒配管81、82を収納させても良い。この場合には、膨張弁83は、ダッシュパネル17よりも外部に配設される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】一実施形態における空調ユニットの全体構成を示す模式図である。
【図2】一実施形態における車両に搭載される空調ユニットの概略構成を示す側面図である。
【図3】一実施形態における車両に搭載される空調ユニットの概略構成を示す正面図である。
【図4】図2に示すA−A部分断面図である。
【図5】図2に示すB矢視図である。
【図6】一実施形態における小ケース部の構成を示す平面図である。
【図7】一実施形態における蒸発器を小ケース部に取り付けたときの空調ユニットの分解構成図である。
【符号の説明】
【0065】
2…空調ケース
6…送風機(送風手段)
8…蒸発器
17…ダッシュパネル
22…小ケース部
23a…空気通路
25…配管収納部
26…仕切り板
27…突出部
81、82…冷媒配管
81a、82a…貫通孔
83…膨張弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気通路を形成する空調ケース(2)と、
前記空調ケース(2)内に送風空気を圧送する送風手段(6)と、
前記空調ケース(2)内に配設され、前記送風手段(6)から送風された空気を冷却する蒸発器(8)と、
一端が車両のダッシュパネル(17)を介して車室外部の冷媒配管と接続され、他端が前記蒸発器(8)に接続された冷媒配管(81、82)とを備え、
車両のインストルメントパネルの下方に配置される車両用空調装置の空調ユニットにおいて、
前記蒸発器(8)が配設される空気通路(23a)を形成する前記空調ケース(2)の側面に、前記冷媒配管(81、82)を収納する配管収納部(25)が形成されており、
前記配管収納部(25)は、車室内および前記空気通路(23a)から気密的に区画されており、
前記配管収納部(25)に収納され、かつ前記蒸発器(8)との接続部から前記ダッシュパネル(17)まで延びる前記冷媒配管(81、82)の外周面を、空気層を介して覆うことを特徴とする車両用空調装置の空調ユニット。
【請求項2】
前記空調ケース(2)には、前記空気通路(23a)と前記配管収納部(25)とを気密的に区画する仕切り板(26)が設けられ、
前記配管収納部(25)および前記仕切り板(26)は、前記空調ケース(2)に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置の空調ユニット。
【請求項3】
前記配管収納部(25)の前記ダッシュパネル(17)側には、前記車室内と前記配管収納部(25)とを気密的に区画する突出部(27)が設けられ、
前記突出部(27)の内側には、前記冷媒配管(81、82)の先端側が貫通する貫通孔(81a、82a)が形成されており、
前記配管収納部(25)および前記突出部(27)は、前記冷媒配管(81、82)から滴下した結露水が前記貫通孔(81a、82a)および前記ダッシュパネル(17)を介して車室外に流れるように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置の空調ユニット。
【請求項4】
前記空調ケース(2)の空気通路の一部は、前記空調ケース(2)から着脱可能な小ケース部(22)として形成され、
前記配管収納部(25)は、前記小ケース部(22)の側面に形成され、
前記小ケース部(22)には、前記空気通路(23a)に配設される蒸発器(8)と、前記配管収納部(25)に収納される前記冷媒配管(81、82)とが配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の車両用空調装置の空調ユニット。
【請求項5】
前記冷媒配管(81、82)と前記蒸発器(8)との間には、膨張弁(83)が接続されており、
前記配管収納部(25)は、前記膨張弁(83)を含めた前記冷媒配管(81、82)を覆う形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車両用空調装置の空調ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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