説明

車両用空調装置

【課題】2列目シートおよび3列目シートの乗員の空調感を向上する。
【解決手段】2列目シート2および3列目シート3の乗員の頭部に向けて空調風を吹き出す第1、第2ルーフ吹出口73、74、75、76と、2列目シート2の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すリヤフェイス吹出口52、53と、2列目シート2の乗員の足元に向けて空調風を吹き出す第1リヤフット吹出口49、50と、2列目シート2の乗員の脹ら脛に向けて空調風を吹き出す第2リヤフット吹出口77、78と、3列目シート3の乗員の足元に向けて空調風を吹き出す第3リヤフット吹出口79、80と、2列目シート2および3列目シート3の側方に位置する車両側面窓ガラスW2、W3に向けて空調風を吹き出す第1、第2ピラー吹出口83、84、85、86と、2列目シート2の乗員の太股に向けて空調風を吹き出すリヤサイド吹出口81、82とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前後方向に3列のシートを有する車両に用いられる車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、運転席および助手席の乗員に向けて空調風を吹き出す吹出口を複数個備えることによって、運転席および助手席の乗員の快適性を確保する車両用空調装置が開示されている。
【0003】
一方、ミニバンやRV車等のような車両前後方向に3列のシートを有する車両に用いられる車両用空調装置として、図10に示すものが製品化されている。
【0004】
この従来技術は、冷房時には、車両天井部7に配置されたルーフ吹出口73、75から矢印H1、J1のように2列目シート2および3列目シート3の乗員の頭部に向けて冷風を吹き出すようになっている。
【0005】
また、暖房時には、車両床面部5に配置されたリヤフット吹出口50、79から矢印F1、F2、L1、L2のように2列目シート2および3列目シート3の乗員の足元に向けて温風を吹き出すようになっている。
【0006】
なお、図示を省略しているが、ルーフ吹出口73、75およびリヤフット吹出口50、79はそれぞれ、車両左右両側に対称配置されている。
【特許文献1】特開2005−96539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、後者の従来技術では、冷房時には、ルーフ吹出口73、75から2列目シート2および3列目シート3の乗員の頭部に向けてスポット的に冷風を吹き出し、暖房時には、リヤフット吹出口50、79から2列目シート2および3列目シート3の乗員の足元に向けてスポット的に温風を吹き出すこととなる。
【0008】
このため、2列目シート2および3列目シート3の乗員がスポット的な空調感(スポット感)しか得ることができず、十分な空調感を得られないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記点に鑑み、2列目シートおよび3列目シートの乗員の空調感を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、車両前後方向に3列に配置された1列目シート(1)、2列目シート(2)および3列目シート(3)を有する車両に用いられ、車室内に吹き出される空調風を供給する空調ユニット(10、60)を備える車両用空調装置であって、
車両天井部(7)に配置され、2列目シート(2)の乗員の頭部に向けて空調風を吹き出す第1ルーフ吹出口(73、74)と、
車両天井部(7)に配置され、3列目シート(3)の乗員の頭部に向けて空調風を吹き出す第2ルーフ吹出口(75、76)と、
1列目シート(1)の背もたれ部近傍に配置され、2列目シート(2)の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すリヤフェイス吹出口(52、53)と、
2列目シート(2)の乗員の足元近傍に配置され、2列目シート(2)の乗員の足元に向けて空調風を吹き出す第1リヤフット吹出口(49、50)と、
2列目シート(2)の乗員の脹ら脛近傍に配置され、2列目シート(2)の乗員の脹ら脛に向けて空調風を吹き出す第2リヤフット吹出口(77、78)と、
3列目シート(3)の乗員の足元近傍に配置され、3列目シート(3)の乗員の足元に向けて空調風を吹き出す第3リヤフット吹出口(79、80)と、
車両ピラー部(9)に配置され、2列目シート(2)の側方に位置する車両側面窓ガラス(W2)に向けて空調風を吹き出す第1ピラー吹出口(83、84)と、
車両ピラー部(9)に配置され、3列目シート(3)の側方に位置する車両側面窓ガラス(W3)に向けて空調風を吹き出す第2ピラー吹出口(85、86)と、
車両側面部(8)に配置され、2列目シート(2)の乗員の太股に向けて空調風を吹き出すリヤサイド吹出口(81、82)とを備えることを特徴とする。
【0011】
これによると、2列目シート(2)および3列目シート(3)の乗員の頭部に向けて空調風を吹き出す第1、第2ルーフ吹出口(73、74、75、76)と、2列目シート(2)および3列目シート(3)の乗員の足元に向けて空調風を吹き出す第1、第3リヤフット吹出口(49、50、79、80)とに加えて、2列目シート(2)の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すリヤフェイス吹出口(52、53)と、2列目シート(2)の乗員の脹ら脛に向けて空調風を吹き出す第2リヤフット吹出口(77、78)と、2列目シート(2)および3列目シート(3)の側方に位置する車両側面窓ガラス(W2、W3)に向けて空調風を吹き出す第1、第2ピラー吹出口(83、84、85、86)と、2列目シート(2)の乗員の太股に向けて空調風を吹き出すリヤサイド吹出口(81、82)とを備えているので、2列目シート(2)および3列目シート(3)の乗員におけるスポット的な空調感を緩和することができる(後述の図1を参照)。このため、2列目シート(2)および3列目シート(3)の乗員の空調感を向上することができる。
【0012】
本発明は、具体的には、冷房時には、第1ルーフ吹出口(73、74)、第2ルーフ吹出口(75、76)およびリヤフェイス吹出口(52、53)から冷風を吹き出す。
【0013】
これにより、第1、第2ルーフ吹出口(73、74、75、76)から2列目シート(2)および3列目シート(3)の乗員の頭部に向けて冷風が吹き出されるのみならず、リヤフェイス吹出口(52、53)から2列目シート(2)の乗員の上半身に向けて冷風が吹き出されるので、2列目シート(2)の乗員が包まれるような冷房感(包まれ感)を得ることができる(後述の図8を参照)。このため、冷房時における空調感を効果的に向上することができる。
【0014】
また、本発明は、具体的には、暖房時には、リヤフェイス吹出口(52、53)、第1リヤフット吹出口(49、50)、第2リヤフット吹出口(77、78)、第3リヤフット吹出口(79、80)、第1ピラー吹出口(83、84)、第2ピラー吹出口(85、86)およびリヤサイド吹出口(81、82)から温風を吹き出す。
【0015】
これによると、第1、第3リヤフット吹出口(49、50、79、80)から2列目シート(2)および3列目シート(3)の乗員の足元に向けて温風が吹き出されるのみならず、リヤフェイス吹出口(52、53)から2列目シート(2)の乗員の上半身に向けて温風が吹き出され、さらに、第2リヤフット吹出口(77、78)から2列目シート(2)の乗員の脹ら脛に向けて温風が吹き出されるので、2列目シート(2)の乗員が包まれるような暖房感(包まれ感)を得ることができる(後述の図9を参照)。
【0016】
しかも、第1、第2ピラー吹出口(83、84、85、86)から車両側面窓ガラス(W2、W3)の内面に向けて温風が吹き出され、リヤサイド吹出口(81、82)から2列目シート(2)の乗員の太股に向けて吹き出されるので、車両側面窓ガラス(W2、W3)からの冷輻射(冷気)によって、2列目シート(2)および3列目シート(3)の乗員の暖房感が損なわれることを軽減できる(後述の図9を参照)。以上のことから、暖房時における空調感を効果的に向上することができる。
【0017】
また、本発明は、具体的には、空調ユニットが、車室内前方部位に配置されるフロント空調ユニット(10)と、車室内後方部位に配置されるリヤ空調ユニット(60)とを有し、
フロント空調ユニット(10、60)が、リヤフェイス吹出口(52、53)および第1リヤフット吹出口(49、50)に空調風を供給し、
第2リヤ空調ユニット(10、60)が、第1ルーフ吹出口(73、74)、第2ルーフ吹出口(75、76)、フット吹出口(77、78)、第3リヤフット吹出口(79、80)、第1ピラー吹出口(83、84)、第2ピラー吹出口(85、86)およびリヤサイド吹出口(81、82)に空調風を供給すればよい。
【0018】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1〜図9は本発明の一実施形態を示すもので、図1は、本実施形態による車両用空調装置を搭載した車両の車室内を示す斜視図である。図1の上下前後左右の矢印は、車両の上下前後左右方向を示している。また、図1は左ハンドル車での搭載例を示している。
【0020】
車室内には、1列目シート1、2列目シート2、および3列目シート3が、車両前方から後方に向かって順に配置されている。本例では、1列目シート1が車両左側の運転席1aと車両右側の助手席1bとに分割されている。
【0021】
車室内の最前部に計器盤4が配置され、この計器盤4の内部に、車室内前方側の空間を空調(冷暖房)するフロント空調ユニット10が配置されている。
【0022】
図2は、フロント空調ユニット10の模式的な断面図であり、図3は、フロント空調ユニット10の吹出口の配置を示す斜視図である。
【0023】
このフロント空調ユニット10は、内外気切替箱11、電動式の送風機(ブロワ)12、冷却用熱交換器としての蒸発器13、および、加熱用熱交換器としてのヒータコア14を備えている。
【0024】
内外気切替箱11は、内気導入口11a、外気導入口11bおよび内外気切替ドア11cを有し、内気及び外気を切替導入する。
【0025】
送風機12は内外気切替箱11によって導入された内気または外気を蒸発器13やヒータコア14へ向けて送風する。蒸発器13は、エンジンによって駆動される冷媒圧縮機を含む冷凍サイクル(図示せず)に設けられて、送風空気を冷却する。ヒータコア14の内部にはエンジン冷却水(温水)が流れ、この温水を熱源としてヒータコア14は蒸発器13通過後の空気(冷風)を加熱する。
【0026】
ヒータコア14の下流側にPTCヒータ15が配置されている。このPTCヒータ15は、車両用空調装置の暖房運転時に、ヒータコア14が蒸発器13通過後の空気を充分に加熱できない場合、図示しない制御装置から電力供給されることによって発熱し、ヒータコア14通過後の空気を加熱する補助加熱器である。
【0027】
蒸発器13の下流側であってヒータコア14の側方側には、第1冷風バイパス通路16および第2冷風バイパス通路17が形成されている。この第1冷風バイパス通路16および第2冷風バイパス通路17は、蒸発器13通過後の冷風がヒータコア15を迂回して流れる通路である。
【0028】
第1冷風バイパス通路16には、エアミックスクールドア18が配置され、蒸発器13とヒータコア14との間には、エアミックスホットドア19が配置されている。エアミックスクールドア18およびエアミックスホットドア19は、図示しないサーボモータによって駆動されて、その回転位置(開度)が連続的に調整できるようになっている。
【0029】
第1冷風バイパス通路16およびPTCヒータ15の下流側には、ヒータコア14およびPTCヒータ15を通過した温風と第1冷風バイパス通路16を通過した冷風とを混合する第1エアミックス空間20が形成されている。
【0030】
従って、エアミックスクールドア18およびエアミックスホットドア19の開度調整によって、ヒータコア14およびPTCヒータ15を通過した温風の風量と第1冷風バイパス通路16を通過した冷風との風量割合が調整され、この温風と冷風が第1エアミックス空間20で混合されて所望温度の空調風となる。
【0031】
そして、第1エアミックス空間20で混合された所望温度の空調風は、デフロスタダクト21、運転席側フロントセンターダクト22、運転席側フロントサイドダクト23、助手席側フロントセンターダクト24、助手席側フロントサイドダクト25、運転席側フロントフットダクト26および助手席側フロントフットダクト27に流入する。
【0032】
デフロスタダクト21はデフロスタドア28により切替開閉される。本例では、デフロスタドア28は、図示しないサーボモータによって駆動される。
【0033】
デフロスタダクト21に流入した空調風は、計器盤4上面に配置されたセンターデフロスタ吹出口29から矢印Aのように車両前面窓ガラス(図示せず)の内面に向けて空調風を吹き出すとともに、計器盤4上面のうち左右両端部に位置するサイドデフロスタ吹出口30、31から矢印B1、B2のように1列目シート1の側方側に位置する車両側面窓ガラスW1の内面に向けて空調風を吹き出す。
【0034】
運転席側フロントセンターダクト22および運転席側フロントサイドダクト23は、運転席側フロントセンターサイドドア32により切替開閉される。同様に、助手席側フロントセンターダクト24および助手席側フロントサイドダクト25は、助手席側フロントセンターサイドドア33により切替開閉される。本例では、運転席側フロントセンターサイドドア32および助手席側フロントセンターサイドドア33は、図示しないサーボモータによって駆動される。
【0035】
運転席側フロントセンターダクト22および助手席側フロントセンターダクト24に流入した空調風は、計器盤4正面中央部に配置されるフロントセンター吹出口34、35から矢印C1、C2のように運転席1aおよび助手席1bの乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す。なお、フロントセンター吹出口34、35は、吹出口ドア34a、35aにより開閉可能になっている。本例では、吹出口ドア34a、35aは、図示しないサーボモータによって駆動される。
【0036】
運転席側フロントサイドダクト23および助手席側フロントサイドダクト25に流入した空調風は、計器盤4正面のうち左右両端部に配置されるフロントサイド吹出口36、37から矢印D1、D2のように運転席1aおよび助手席1bの乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す。なお、フロントサイド吹出口36、37は、吹出口ドア36a、37aにより開閉可能になっている。本例では、吹出口ドア36a、37aは、図示しないサーボモータによって駆動される。
【0037】
運転席側フロントフットダクト26は運転席側フロントフットドア38により切替開閉され、助手席側フロントフットダクト27は助手席側フロントフットドア39により切替開閉される。本例では、運転席側フロントフットドア38および助手席側フロントフットドア39は、図示しないサーボモータによって駆動される。
【0038】
運転席側フロントフットダクト26および助手席側フロントフットダクト27に流入した空調風は、運転席1aおよび助手席1bの乗員の足元近傍に配置されたフロントフット吹出口40、41から矢印E1、E2のように運転席1aおよび助手席1bの乗員の足元側へ空気を吹き出す。
【0039】
第2冷風バイパス通路17およびヒータコア14の下流側には、第2冷風バイパス通路17を通過した冷風とヒータコア14を通過した温風とを混合させる第2エアミックス空間42が形成されている。
【0040】
第2エアミックス空間42へ流入させる冷風と温風の風量割合は、エアミックスドア43により調整される。このエアミックスドア43は、図示しないサーボモータによって駆動されて、その回転位置(開度)が連続的に調整できるようになっている。
【0041】
従って、エアミックスドア43の開度調整によって、ヒータコア14を通過して第2エアミックス空間42に流入する温風の風量と第2冷風バイパス通路17を通過して第2エアミックス空間42に流入する冷風との風量割合が調整され、この温風と冷風が第2エアミックス空間42で混合されて所望温度の空調風となる。
【0042】
そして、第2エアミックス空間42で混合された所望温度の空調風は、運転席側リヤフットダクト44、助手席側リヤフットダクト45、運転席側リヤフェイスダクト46および助手席側リヤフェイスダクト47に流入する。
【0043】
運転席側リヤフットダクト44および助手席側リヤフットダクト45はリヤフットドア48により切替開閉される。本例では、リヤフットドア48は、図示しないサーボモータによって駆動される。
【0044】
運転席側リヤフットダクト44および助手席側リヤフットダクト45に流入した空調風は、2列目シート2の乗員の足元近傍に配置された第1リヤフット吹出口49、50から矢印F1、F2のように2列目シート2の乗員の足元に向けて吹き出される。本例では、第1リヤフット吹出口49、50を、車両床面部5のうち運転席1aおよび助手席1bの下方に位置する部位に配置している。
【0045】
運転席側リヤフェイスダクト46および助手席側リヤフェイスダクト47はリヤフェイスドア51により切替開閉される。本例では、リヤフェイスドア51は、図示しないサーボモータによって駆動される。
【0046】
運転席側リヤフェイスダクト46および助手席側リヤフェイスダクト47に流入した空調風は、1列目シート1の背もたれ部近傍に配置されたリヤフェイス吹出口52、53から矢印G1、G2のように2列目シート2の乗員の上半身に向けて吹き出される。
【0047】
本例では、リヤフェイス吹出口52、53を、運転席1aと助手席1bとの間に位置するコンソール6の後面部に配置している。リヤフェイス吹出口52、53は、吹出口ドア52a、53aにより開閉可能になっている。本例では、吹出口ドア52a、53aは、図示しないサーボモータによって駆動される。
【0048】
蒸発器13の下流側には、蒸発器13を通過した冷風が第1エアミックス空間20を迂回してデフロスタダクト21、運転席側フロントセンターダクト22、運転席側フロントサイドダクト23、助手席側フロントセンターダクト24および助手席側フロントサイドダクト25側に流れる冷風バイパスダクト54が配置されている。
【0049】
この冷風バイパスダクト54は、冷風バイパスドア55、56により切替開閉されるようになっている。本例では、冷風バイパスドア55、56は、図示しないサーボモータによって駆動される。
【0050】
図4は、車室内後方側空間を空調(冷暖房)するリヤ空調ユニット60の模式的な断面図であり、図5は、リヤ空調ユニット60の吹出口の配置を示す斜視図である。このリヤ空調ユニット60は、車室内後方側のトリム(車室内壁)と車両外板との間のスペースに設けられている。
【0051】
リヤ空調ユニット60は、電動式の送風機(ブロワ)61、冷却用熱交換器としての蒸発器62、加熱用熱交換器としてのヒータコア63を備えている。
【0052】
送風機61は内気を蒸発器62やヒータコア63へ向けて送風する。蒸発器62は、フロント空調ユニット10の蒸発器13と同様に、冷凍サイクル(図示せず)に設けられて送風空気を冷却する。ヒータコア23は、フロント空調ユニット10のヒータコア14と同様に、エンジン冷却水(温水)を熱源として蒸発器62通過後の冷風を加熱する。
【0053】
蒸発器62の下流側であってヒータコア63の側方側には、冷風バイパス通路64が形成されている。この冷風バイパス通路64は、蒸発器62通過後の冷風がヒータコア63を迂回して流れる通路である。
【0054】
冷風バイパス通路64には、エアミックスクールドア65が配置され、蒸発器62とヒータコア63との間には、エアミックスホットドア66が配置されている。エアミックスクールドア65およびエアミックスホットドア66は、図示しないサーボモータによって駆動されて、その回転位置(開度)が連続的に調整できるようになっている。
【0055】
従って、エアミックスクールドア65およびエアミックスホットドア66の開度調整によって、ヒータコア63を通過した温風の風量と冷風バイパス通路64を通過した冷風との風量割合が調整され、この温風と冷風が冷風バイパス通路64およびヒータコア63の下流側に形成されるエアミックス空間67で混合されて所望温度の空調風となる。
【0056】
そして、エアミックス空間67で混合された所望温度の空調風は、スライドドア68により切替開閉される左側リヤルーフダクト69、右側リヤルーフダクト70、左側リヤフットダクト71および右側リヤフットダクト72に流入する。本例では、スライドドア68は、図示しないサーボモータによって駆動される。
【0057】
左側リヤルーフダクト69および右側リヤルーフダクト70に流入した空調風は、車両天井部7のうち車両前後方向中央側かつ車両左右方向両端側の部位に配置された第1ルーフ吹出口73、74から矢印H1、H2のように2列目シート2の乗員の頭部に向けて吹き出されるとともに、車両天井部7のうち車両後方側かつ車両左右方向両端側の部位に配置された第2ルーフ吹出口75、76から矢印J1、J2のように3列目シート3の乗員の頭部に向けて吹き出される。
【0058】
左側リヤフットダクト71および右側リヤフットダクト72に流入した空調風は、第2リヤフット吹出口77、78、第3リヤフット吹出口79、80、リヤサイド吹出口81、82、第1ピラー吹出口83、84および第2ピラー吹出口85、86から吹き出される。
【0059】
第2リヤフット吹出口77、78は、2列目シート2の乗員の脹ら脛近傍に配置され、矢印K1、K2のように2列目シート2の乗員の脹ら脛に向けて空調風を吹き出す。本例では、第2リヤフット吹出口77、78を、車両床面部5のうち2列目シート2の下方に位置する部位に配置している。
【0060】
第3リヤフット吹出口79、80は、3列目シート3の乗員の足元近傍に配置され、矢印L1、L2のように3列目シート3の乗員の足元に向けて空調風を吹き出す。本例では、第3リヤフット吹出口79、80を車両の後輪側ホイールハウス部8aのうち車両床面部5近傍部位に配置している。
【0061】
リヤサイド吹出口81、82は、車両側面部8のうち2列目シート2の乗員の腰近傍に位置する部位に配置され、矢印M1、M2のように2列目シート2の乗員の腰および太股に向けて空調風を吹き出す。
【0062】
第1ピラー吹出口83、84は、車両ピラー部、より具体的にはCピラー9の前方部位に配置され、矢印N1、N2のように2列目シート2の側方に位置する車両側面窓ガラス(以下、2列目窓ガラスという)W2の内面に向けて空調風を吹き出す。
【0063】
第2ピラー吹出口85、86は、車両ピラー部、より具体的にはCピラー9の後方部位に配置され、矢印P1、P2のように3列目シート3の側方に位置する車両側面窓ガラス(以下、3列目窓ガラスという)W3の内面に向けて空調風を吹き出す。
【0064】
車両用空調装置には、各種制御を行う制御手段として、図示しない空調用電子制御装置(ECU)が設けられている。空調用電子制御装置は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムに従って各種演算などの処理を実行し、上述の各種ドア18、19、32、33等を駆動するサーボモータを制御する。
【0065】
次に、上記構成における作動の一例について説明する。図6は、フロント空調ユニット10における各吹出モードの作動を説明する図表である。図7は、リヤ空調ユニット60における各吹出モードの作動を説明する図表である。
【0066】
なお、図6中、「デフロスタ吹出口」は、センターデフロスタ吹出口29およびサイドデフロスタ吹出口30、31を意味している。また、図6および図7において、丸印の大きさは風量の大きさを表している。
【0067】
また、図6中、選択可能モードの「オート」とは、図示しない空調操作パネルのオートスイッチが投入され、空調用電子制御装置が吹き出しモードを決定するオートモードを意味する。また、選択可能モードの「マニュアル」とは、オートスイッチが投入されず、図示しない空調操作パネルの吹出モードスイッチによって吹出モードをマニュアル設定するマニュアルモードを意味している。
【0068】
(1)主に夏期の冷房時に選択されるFACE(フェイス)モードでは、フロント空調ユニット10においては、フロントセンター吹出口34、35、フロントサイド吹出口36、37およびリヤフェイス吹出口52、53から空調風(冷風)が吹き出され、リヤ空調ユニット60においては、第1、第2ルーフ吹出口73、74、75、76から空調風(冷風)が吹き出される。
【0069】
FACE2モードは、フロント空調ユニット10のみに設定されるモードであり、フロントセンター吹出口34、35、フロントサイド吹出口36、37、フロントフット吹出口40、41、リヤフェイス吹出口52、53および第1リヤフット吹出口49、50から空調風(温風)が吹き出される。
【0070】
(2)主に春秋の中間期に使用されるB/L(バイレベル)モードでは、デフロスタ吹出口29、30、31を除く全ての吹出口から空調風が吹き出される。
【0071】
すなわち、フロント空調ユニット10においては、フロントセンター吹出口34、35、フロントサイド吹出口36、37およびリヤフェイス吹出口52、53から空調風(冷風)が吹き出されるとともに、フロントフット吹出口40、41および第1リヤフット吹出口49、50から空調風(温風)が吹き出される。
【0072】
リヤ空調ユニット60においては、第1、第2ルーフ吹出口73、74、75、76から空調風(冷風)が吹き出されるとともに、第2リヤフット吹出口77、78、リヤサイド吹出口81、82、第3リヤフット吹出口79、80および第1、第2ピラー吹出口83、84、85、86から空調風(温風)が吹き出される。
【0073】
B/L2モードは、フロント空調ユニット10のみに設定されるモードであり、フロントセンター吹出口34、35、フロントサイド吹出口36、37およびリヤフェイス吹出口52、53から空調風(冷風)が吹き出されるとともに、フロントフット吹出口40、41および第1リヤフット吹出口49、50から空調風(温風)が吹き出される。
【0074】
(3)主に冬期の暖房時に選択されるFOOT(フット)モードでは、デフロスタ吹出口29、30、31および第1、第2ルーフ吹出口73、74、75、76を除く全ての吹出口から空調風(温風)が吹き出される。
【0075】
すなわち、フロント空調ユニット10においては、フロントセンター吹出口34、35、フロントサイド吹出口36、37、フロントフット吹出口40、41、リヤフェイス吹出口52、53および第1リヤフット吹出口49、50から空調風(温風)が吹き出され、リヤ空調ユニット60においては、第2リヤフット吹出口77、78、リヤサイド吹出口81、82、第3リヤフット吹出口79、80および第1、第2ピラー吹出口83、84、85、86から空調風(温風)が吹き出される。
【0076】
FOOT Dモード、FOOT RモードおよびFOOT Fモードは、フロント空調ユニット10のみに設定されるモードであり、フロントセンター吹出口34、35、フロントサイド吹出口36、37、フロントフット吹出口40、41、リヤフェイス吹出口52、53、第1リヤフット吹出口49、50およびデフロスタ吹出口29、30、31から空調風(温風)が吹き出される。
【0077】
(4)主に冬期の暖房時に選択されるF/D(フットデフロスタ)モードは、フロント空調ユニット10のみに設定されるモードであり、フロントセンター吹出口34、35、フロントサイド吹出口36、37、フロントフット吹出口40、41、リヤフェイス吹出口52、53、第1リヤフット吹出口49、50およびデフロスタ吹出口29、30、31から空調風(温風)が吹き出される。
【0078】
(5)窓ガラスの曇り止めを行うDEF(デフロスタ)モードは、フロント空調ユニット10のみに設定されるモードであり、デフロスタ吹出口29、30、31のみから空調風(温風)が吹き出される。
【0079】
本実施形態では、第1、第2ルーフ吹出口73、74、75、76および第1、第2リヤフット吹出口49、50、77、78に加えて、リヤフェイス吹出口52、53、第3リヤフット吹出口79、80、第1、第2ピラー吹出口83、84、85、86およびリヤサイド吹出口81、82を備えているので、2列目シート2および3列目シート3の乗員において、スポット的な空調感(スポット感)が緩和され、包まれるような空調感(包まれ感)が得られる。このため、2列目シート2および3列目シート3の乗員の空調感を向上することができる。
【0080】
以下、この効果について具体的に説明する。図8は、2列目シート2の右側に着座した乗員に対するFACEモードの作動を示す斜視図である。なお、2列目シート2の左側に着座した乗員に対するFACEモードの作動については、図8と同様であるので、対応する符号を図8の括弧内に付して図示を省略している。
【0081】
図8からわかるように、夏期の冷房時にFACEモードが設定されると、2列目シート2の乗員に対して、矢印H1、H2のように第1ルーフ吹出口73、74から頭部に向けて冷風が吹き出されるのみならず、矢印G1、G2のようにリヤフェイス吹出口52、53から上半身に向けて冷風が吹き出されるので、2列目シート2の乗員が包まれるような冷房感を得ることができる。
【0082】
図9は、2列目シート2の右側に着座した乗員に対するB/Lモードの作動を示す斜視図である。なお、図示を省略しているが、2列目シート2の左側に着座した乗員に対するB/Lモードの作動については、図8と同様であるので、対応する符号を図8の括弧内に付して図示を省略している。また、FOOTモードの作動については、第1ルーフ吹出口73、74から冷風が吹き出されない点を除いて図9に示すB/Lモードの作動と同様であるので、図示を省略している。
【0083】
図9からわかるように、春秋の中間期にB/Lモードが設定され、または冬期の暖房時にFOOTモードが設定されると、2列目シート2の乗員に対して、矢印F1、F2のように第1リヤフット吹出口49、50から足元に向けて温風が吹き出されるのみならず、矢印G1、G2のようにリヤフェイス吹出口52、53から上半身に向けて温風が吹き出され、さらに、矢印K1、K2のように第2リヤフット吹出口77、78から脹ら脛に向けて温風が吹き出されるので、2列目シート2の乗員が包まれるような暖房感を得ることができる。
【0084】
しかも、矢印N1、N2のように第1ピラー吹出口83、84から2列目シート窓ガラスW2の内面に向けて温風が吹き出され、矢印M1、M2のようにリヤサイド吹出口81、82から2列目シート2の乗員の太股に向けて吹き出されるので、2列目窓ガラスW2からの冷輻射による冷気(図9の矢印Z)を軽減することができる。
【0085】
3列目シート3の乗員に対しても同様に、矢印P1、P2のように第3リヤフット吹出口79、80から足元に向けて温風が吹き出されるのみならず、第2ピラー吹出口85、86から3列目窓ガラスW3の内面に向けて吹き出されるので、3列目窓ガラスW3からの冷輻射による冷気を軽減することができる。
【0086】
以上のことから、2列目シート2および3列目シート3の乗員の空調感を向上することができる。
【0087】
さらに、フロント空調ユニット10およびリヤ空調ユニット60として、車室内の左右の領域に吹き出す空調風の温度をそれぞれ独立に制御できる左右独立温度制御方式のものを採用した場合には、各乗員の好みの温度で包み込むような空調感を得ることが可能になるので、各乗員の空調感を一層向上することが可能になる。
【0088】
また、本実施形態では、リヤフェイス吹出口52、53、第2リヤフット吹出口77、78、リヤサイド吹出口81、82、第1ピラー吹出口83、84および第2ピラー吹出口85、86を設けることによって、図10に示す従来技術と比較して吹出口の個数が増加し、ひいては吹出口1箇所当たりの吹出風量が減少する。このため、吹出口からの空気吹出騒音を低減することができる。
【0089】
(他の実施形態)
なお、上述の一実施形態は、各吹出口の配置の一例を示したに過ぎず、上述と同様の作用効果が得られる範囲において各吹出口の配置を適宜変更することができる。
【0090】
また、上述の一実施形態は、吹出モードの一例を示したに過ぎず、その他の種々の吹出モードを設定することができる。
【0091】
また、上述の一実施形態では、各種ドア18、19、32、33等をサーボモータにて駆動しているが、サーボモータの代わりに、乗員の手動操作により操作力が与えられる手動操作機構を使用してもよい。
【0092】
また、上述の一実施形態では、本発明による車両用空調装置を左ハンドル車に適用した例を示したが、左ハンドル車のみならず右ハンドル車に適用可能であることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1実施形態による車両用空調装置を搭載した車両の車室内を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態による車両用空調装置のフロント空調ユニットの模式的な断面図である。
【図3】フロント空調ユニットの吹出口の配置を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態による車両用空調装置のリヤ空調ユニットの模式的な断面図である。
【図5】リヤ空調ユニットの吹出口の配置を示す斜視図である。
【図6】フロント空調ユニットにおける各吹出モードの作動を説明する図表である。
【図7】リヤ空調ユニットにおける各吹出モードの作動を説明する図表である。
【図8】2列目シートに対するFACEモードの作動を説明する斜視図である。
【図9】2列目シートに対するB/Lモードの作動を説明する斜視図である。
【図10】従来技術による車両用空調装置を搭載した車両の車室内を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0094】
1…1列目シート、2…2列目シート、3…3列目シート、5…車両床面部、
6…車両天井部、8…車両側面部、9…Cピラー(車両ピラー部)、
50…第1リヤフット吹出口、73…第1ルーフ吹出口、75…第2ルーフ吹出口、
79…第3リヤフット吹出口、83…第1ピラー吹出口、85…第2ピラー吹出口、
W2…2列目窓ガラス(車両側面窓ガラス)、
W3…3列目窓ガラス(車両側面窓ガラス)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に3列に配置された1列目シート(1)、2列目シート(2)および3列目シート(3)を有する車両に用いられ、車室内に吹き出される空調風を供給する空調ユニット(10、60)を備える車両用空調装置であって、
車両天井部(7)に配置され、前記2列目シート(2)の乗員の頭部に向けて前記空調風を吹き出す第1ルーフ吹出口(73、74)と、
前記車両天井部(7)に配置され、前記3列目シート(3)の乗員の頭部に向けて前記空調風を吹き出す第2ルーフ吹出口(75、76)と、
前記1列目シート(1)の背もたれ部近傍に配置され、前記2列目シート(2)の乗員の上半身に向けて前記空調風を吹き出すリヤフェイス吹出口(52、53)と、
前記2列目シート(2)の乗員の足元近傍に配置され、前記2列目シート(2)の乗員の足元に向けて前記空調風を吹き出す第1リヤフット吹出口(49、50)と、
前記2列目シート(2)の乗員の脹ら脛近傍に配置され、前記2列目シート(2)の乗員の脹ら脛に向けて前記空調風を吹き出す第2リヤフット吹出口(77、78)と、
前記3列目シート(3)の乗員の足元近傍に配置され、前記3列目シート(3)の乗員の足元に向けて前記空調風を吹き出す第3リヤフット吹出口(79、80)と、
車両ピラー部(9)に配置され、前記2列目シート(2)の側方に位置する車両側面窓ガラス(W2)に向けて前記空調風を吹き出す第1ピラー吹出口(83、84)と、
前記車両ピラー部(9)に配置され、前記3列目シート(3)の側方に位置する車両側面窓ガラス(W3)に向けて前記空調風を吹き出す第2ピラー吹出口(85、86)と、
車両側面部(8)に配置され、前記2列目シート(2)の乗員の太股に向けて前記空調風を吹き出すリヤサイド吹出口(81、82)とを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
冷房時には、前記第1ルーフ吹出口(73、74)、前記第2ルーフ吹出口(75、76)および前記リヤフェイス吹出口(52、53)から冷風を吹き出すことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
暖房時には、前記リヤフェイス吹出口(52、53)、前記第1リヤフット吹出口(49、50)、前記第2リヤフット吹出口(77、78)、前記第3リヤフット吹出口(79、80)、前記第1ピラー吹出口(83、84)、前記第2ピラー吹出口(85、86)および前記リヤサイド吹出口(81、82)から温風を吹き出すことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記空調ユニットは、車室内前方部位に配置されるフロント空調ユニット(10)と、車室内後方部位に配置されるリヤ空調ユニット(60)とを有し、
前記フロント空調ユニット(10、60)は、前記リヤフェイス吹出口(52、53)および前記第1リヤフット吹出口(49、50)に空調風を供給し、
前記第2前記リヤ空調ユニット(10、60)は、前記第1ルーフ吹出口(73、74)、前記第2ルーフ吹出口(75、76)、フット吹出口(77、78)、前記第3リヤフット吹出口(79、80)、前記第1ピラー吹出口(83、84)、前記第2ピラー吹出口(85、86)および前記リヤサイド吹出口(81、82)に空調風を供給することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−40304(P2009−40304A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209207(P2007−209207)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】