説明

車両用空調装置

【課題】オゾンによる効果的な脱臭、除菌を行う車両用空調装置を提供する。
【解決手段】HVACユニット(2)は、送風手段(26)からの送風が加熱手段(33)を通る温風風路と加熱手段及び風量調整手段(38)を迂回する迂回風路とを形成してなり、イオン発生器(40)は、前記調和空気の流れ方向で視て風量調整手段(38)が加熱手段への送風を遮断した状態における迂回風路の蒸発器(30)の下流から、下流にあるエアミックスエリアまでの所定位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に係り、詳しくはイオンとオゾンとを発生可能な車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置は、車室前部のインストルメントパネル内に配置されたHVAC(Heating Ventilating Air-Conditioning)ユニットを備え、HVACユニットのハウジングの内部には、車室に調和空気を吹き出させるための風路の一部が規定されている。
HVACユニットのハウジング内にはブロワ及び蒸発器(エバポレータ)が収容されており、ブロワはHVACユニットの空気取入口から空気送出口に向かう空気流を生成可能であり、蒸発器は自身を通過する空気流を冷却可能である。
【0003】
各空気送出口からは、エアダクトが延び、これらエアダクトは車室に開口した吹出口として、例えば、フロントガラスに向けて開口したデフロスト用吹出口、乗員の上半身に向けて開口したフェース用吹出口、及び乗員の足元に向けて開口したフット用吹出口を有している。
そして、近年では、車両の乗員のリラクゼーションや車室内空気の消臭等を目的として、車室内にイオンを含んだ空気を送風する車両用空調装置が種々開発されている。
【0004】
イオン発生器は、例えばHVACユニットとフェース用吹出口との間を繋ぐエアダクトの中間部に取り付けられ、これによりイオン発生器で発生したイオンがフェース用吹出口から乗員に向けて吹き出される。
ところで、イオン発生器は高電圧放電によりマイナスイオンを発生する構成のものが一般的であるが、このような構成のイオン発生器では、イオンの発生と同時にオゾン(O3)が併せて生成されるという特質を有しており、一般にオゾンは濃度が高いと毒性を有するという問題がある。
【0005】
このようなことから、最近では、例えばイオン発生器によって生成されるオゾンの車室内での濃度を低減、減衰させる構成の装置が開発されている(特許文献1、2参照)。
また、オゾンは上記のような問題もある一方、強力な酸化作用を有するため、殺菌・脱臭等に有効に作用することも広く知られている。
そこで、例えば乗員に影響を与えない程度に車室内に積極的にオゾンを供給し、車室内の脱臭等を行う技術も開発されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−289192号公報
【特許文献2】特開2005−96627号公報
【特許文献3】特開2005−219683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載された技術は、オゾンの濃度を極力低減してイオンのみを利用するものであり、オゾンを利用して除菌、脱臭を行うものではなく、イオン発生器を有効に利用しているとは言い難い。
また、特許文献3に記載された技術は、オゾンを利用しているものの、車室内に供給して脱臭するものであり、オゾンの濃度によっては乗員に悪影響を与える恐れがあり、好ましいことではない。
【0008】
一方、車両用空調装置では、蒸発器やその周辺部材には結露水が付着することから細菌類や真菌類が発生しやすいという問題があり、上述したようなオゾンの性質を利用すれば、このような細菌類や真菌類を除去することが可能と考えられる。
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、オゾンによる効果的な脱臭、除菌を行う車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するべく、請求項1の車両用空調装置は、イオン発生手段とオゾン発生手段とを兼ねたイオン及びオゾンを各々または同時に発生するイオン発生器を備えた車両用空調装置において、ハウジング内に、車室内に送風する送風手段と、該送風手段からの送風を温める加熱手段と、該加熱手段を通過する空気の流量を調整する風量調整手段と、冷凍回路を循環する冷媒を気化させる蒸発器とを内装し、該蒸発器から発生する水分を車外へ排出する排水手段を有する、前記車室内に調和空気を吹き出すための風路を形成するHVACユニットを備え、該HVACユニットは、前記送風手段からの送風が前記加熱手段を通る温風風路と前記加熱手段及び前記風量調整手段を迂回する迂回風路とを形成してなり、前記イオン発生器は、前記調和空気の流れ方向で視て前記風量調整手段が前記加熱手段への送風を遮断した状態における前記迂回風路の前記蒸発器の下流から、該下流にあるエアミックスエリアまでの所定位置に配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2の車両用空調装置では、請求項1において、前記所定位置は、車両の車室内側に面した前記HVACユニット内の側面であることを特徴とする。
請求項3の車両用空調装置では、請求項1または2において、前記所定位置は、車両の運転席側に面した前記HVACユニット内の側面であることを特徴とする。
【0011】
請求項4の車両用空調装置では、放電電極と対向電極との間に高電圧を印加して気中放電を発生させることでイオン及びオゾンを同時に発生させるイオン発生手段及びオゾン発生手段を兼ねたイオン発生器を備えた車両用空調装置において、蒸発器を内装するHVACユニットと、前記蒸発器の温度を検出する温度検出手段とを備え、該温度検出手段に前記放電電極が配置され、前記蒸発器を前記対向電極とすることを特徴とする。
【0012】
請求項5の車両用空調装置では、請求項1乃至4のいずれかにおいて、前記HVACユニットは、車室内への単数または複数の吹き出し口を開閉する吹き出し口切換手段をさらに備え、該吹き出し口切換手段は、前記車室内へ通じる全ての該吹き出し口を閉じる全閉モードを有することを特徴とする。
【0013】
請求項6の車両用空調装置では、請求項1乃至5のいずれかにおいて、前記車室内の乗員の有無を検出または認識する乗員検出手段をさらに備え、該乗員検出手段により前記車室内に乗員がいないことが確認されたとき、前記イオン発生器により発生したオゾンを前記送風手段により前記車室内に供給し、前記車室内のオゾン濃度を所定上限値以下で前記車室内の除菌を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項7の車両用空調装置では、請求項6において、前記所定上限値は、0.1ppm以下であることを特徴とする。
請求項8の車両用空調装置では、請求項1乃至7のいずれかにおいて、経過時間を計時して積算する計時積算手段と、該計時積算手段により積算された積算時間から、前記オゾン発生手段により発生させるオゾン発生量を算出するオゾン発生量算出手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0015】
請求項9の車両用空調装置では、請求項1乃至8のいずれかにおいて、前記HVACユニット内の湿度を検出する湿度検出手段と、前記HVACユニット内の臭いを検出する臭気検出手段と、少なくとも前記温度検出手段、前記湿度検出手段、前記臭気検出手段のいずれか1つから検出された情報により、オゾン発生量を増減させるオゾン発生量調整手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0016】
請求項10の車両用空調装置では、請求項1乃至9のいずれかにおいて、前記イオン発生器から発生したオゾンにより前記HVACユニット内または車室内の除菌が終了したとき、前記イオン発生器により除菌が終了したことを前記車室内または車外にいる乗員に通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする。
【0017】
請求項11の車両用空調装置では、請求項10において、前記通知手段は、前記オゾン発生手段により除菌が終了したことを表示する表示手段、及び前記HVACユニットの内外気を導入する導入口から前記吹き出し口へ通ずる風路内に配置された芳香剤を送風する前記送風手段の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の車両用空調装置によれば、イオン発生器はHVACユニット内の排水手段と対向する側にあり、風量調整手段が加熱手段への送風を遮断した状態における迂回風路の前記蒸発器の下流からエアミックスエリアまでの所定位置に配置されるので、イオン発生器は、オゾンによってHVACユニット内の周辺部材を良好に除菌することができるとともに、蒸発器が冷凍回路を循環する冷媒を蒸発させる際の気化熱により蒸発器の外表面に生じる結露による水に起因した電気素子の故障を防止することができ、より安全に運転することができる。
【0019】
また、イオン発生器は、調和空気の流れ方向で視て蒸発器の下流に配置されているので、蒸発器の外表面やハウジング内面に発生した細菌類や真菌類をオゾンによって良好に除去することができるとともに、イオン発生器から発生するイオンが蒸発器に衝突して減少してしまうことを防止することができ、車室内の浮遊微粒子をイオンによって良好に除去することができる。
【0020】
請求項2の車両用空調装置によれば、イオン発生器は車両の車室内側に面した前記HVACユニット内の側面に配置されているので、イオン発生器を容易に配置することができ、またメンテナンスが容易である。
請求項3の車両用空調装置によれば、イオン発生器は車両の運転席側に面した前記HVACユニット内の側面に配置されているので、イオン発生器を容易に配置することができ、またメンテナンスが容易である。
【0021】
請求項4の車両用空調装置によれば、蒸発器に配設されている温度検出手段にイオン発生器の放電電極を配置し、蒸発器に対向電極を配置することにより、少ないスペースでイオン発生装置を配置することができるとともに、蒸発器に地絡させて直接放電するので、新たに接地電極を設ける必要はなく、従って構成をより簡易にすることができる。
【0022】
請求項5の車両用空調装置によれば、HVACユニットに備えられている吹き出し口切換手段は、全ての吹き出し口を閉じる全閉モードを備えているので、全閉モードによりHVACユニットを密閉状態にしてイオン発生器によりオゾンを発生させることで、乗員へオゾンの悪影響を与えることなくHVACユニット内の蒸発器等を除菌することができる。
【0023】
また、オゾンでHVACユニット内を除菌中に空調装置の稼働指示がある場合は、送風手段を稼働させて排水手段からHVACユニット内のオゾンを車外へ効率的に排出させることができるので、HVACユニット内のオゾンが車室内へ送風されて乗員へオゾンの悪影響を与えることがない。
【0024】
請求項6の車両用空調装置によれば、乗員検出手段により車室内に乗員がいないことが確認されるとイオン発生器によりオゾンを発生させ、送風手段にて車室内へオゾンを供給し、所定上限値以下のオゾン濃度で車室内の除菌を行う。これにより、車室内の細菌類や真菌類を良好に除菌することができるとともに、車室内の脱臭も行うことができ、例えば所定上限値を車室内の除菌に最低限必要な濃度とし、且つ乗員の人体に影響を与えない濃度とすることで、除菌後に車室内にオゾンが残留したとしても乗員に悪影響を与えることなく、車室内の除菌を行うことができる。
【0025】
請求項7の車両用空調装置によれば、車室内におけるオゾン濃度の所定上限値は0.1ppm以下となるよう設定されているので、車室内にオゾンが残留したとしても乗員に悪影響を与えないようにすることができる。
請求項8の車両用空調装置によれば、計時積算手段により積算された積算時間から、オゾン発生量算出手段によりイオン発生器から発生させるオゾンの発生量を算出するので、経年変化と共に増える細菌類や真菌類を除菌するために、積算時間に対応してオゾンの発生量を徐々に増加させるようにオゾン量を算出することで、時間が経過しても効果的に除菌を行うことができる。
【0026】
請求項9の車両用空調装置によれば、少なくともHVACユニット内の湿度を検出する湿度検出手段、蒸発器の温度を検出する温度検出手段、HVACユニット内の臭いを検出する臭気検出手段のいずれか1つから検出された情報により、オゾン発生量を増減させるオゾン発生量調整機能を有しているので、各検出手段からの検出値に合わせて適切なオゾン量を発生させることができるとともに、効果的に除菌を行うことができる。
請求項10の車両用空調装置によれば、イオン発生器から発生したオゾンによる除菌が終了すると、車室内または車外にいる乗員へ通知する通知手段を備えているので、乗員はオゾンによる除菌が終了したことを容易に認識することができる。
【0027】
請求項11の車両用空調装置によれば、通知手段はオゾンによる除菌が終了したことを表示する表示手段及びHVACユニットの導入口から車室内吹き出し口へ通ずる風路内に設けられた芳香剤を送風する前記送風手段の少なくともいずれか一方の手段を有することにより、表示手段に除菌終了の表示がされる、または車室内に芳香剤の香りが広がることにより、乗員はオゾンによる除菌が終了したことを容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置の概略構成図である。
【図2】着座センサの配置を表す図である。
【図3】本発明に係る車両用空調装置を備えた一実施形態の概略構成図である。
【図4】HVACユニットのオゾン除菌の際の車両用空調装置の概略構成図である。
【図5】車室内のオゾン除菌の際の車両用空調装置の概略構成図である。
【図6】積算時間とオゾン発生量との関係を示すマップである。
【図7】本発明の第2実施形態に係るHVACユニット内の概略構成図の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る車両用空調装置の概略構成図である。この車両用空調装置は、HVAC(Heating Ventilating Air-Conditioning)ユニット2を備えている。
具体的には、車両のエンジンルーム4と車室6との間は隔壁8によって区画され、車室6の前側部分には、隔壁8とインストルメントパネル10との間に機器室12が確保されている。この機器室12にHVACユニット2は配置されている。
【0030】
HVACユニット2はハウジング14を有し、ハウジング14の内部には、車室6に調和空気を吹き出させるための風路の一部が規定されている。
詳しくは、ハウジング14の一端部には、外気導入用及び内気循環用の2つの空気取り入れ口16a、16bが開口している。外気導入用空気取り入れ口16aには、車外に開口した外気導入口18aを有する外気用エアダクトが接続され、内気循環用空気取り入れ口16bには、車室6に開口した内気導入口18bを有する内気用エアダクトが接続されている。
【0031】
ハウジング14の他端部には3つの空気送出口20a、20b、20cが開口し、空気送出口20a、20b、20cには、デフロスト用エアダクト22a、フェース用エアダクト22b、及びフット用エアダクト22cがそれぞれ接続されている。これらデフロスト用エアダクト22a、フェース用エアダクト22b、フット用エアダクト22cは、車室6の異なる位置に開口した吹き出し口を有し、デフロスト用エアダクト22aの吹き出し口であるデフロスト用吹き出し口24aは、フロントガラスに向けて開口している。フェース用エアダクト22bの吹き出し口であるフェース用吹き出し口24bは、運転席側または助手席側の乗員の上半身に向かうように開口し、フット用エアダクト22cの吹き出し口であるフット用吹き出し口24cは、乗員の足元に向かうよう開口している。
【0032】
ハウジング14内にはブロワ26が配置され、ブロワ26は空気取り入れ口16側に位置している。ブロワ26は、ブロワモータ60により回転駆動されることで、ハウジング14内部に空気取り入れ口16から空気送出口20に向かう空気流を生成する(送風手段)。
ハウジング14内には、空気取り入れ口16とブロワ26との間に位置してフィルタ28が配置され、フィルタ28の面積は、フィルタ28が取り付けられたハウジング14の部位の横断面積に略等しい。このため、ブロワ26によって生成される空気流はフィルタ28を必ず通過し、この際、空気流中の塵や埃がフィルタ28に付着し、空気流が浄化される。つまり、フィルタ28はダストフィルタである。
【0033】
また、ハウジング14内には蒸発器30が配置され、蒸発器30は、空気流の流動方向でみてブロワ26の下流に配置されている。ブロワ26側の蒸発器30の前面は、空気流が蒸発器30の隙間を通過するよう、蒸発器30が設置されたハウジング14の部位の横断面積に略等しい面積を有する。
【0034】
なお、蒸発器30は、図示しないものの、エンジンルーム4から機器室12に渡る冷媒の循環流路の間に挿入され、冷媒循環流路には、圧縮機、凝縮器、レシーバ、及び膨張弁も挿入されている。エンジンから圧縮機に動力が伝達されると、圧縮機は冷媒循環流路内で冷媒を循環させ、冷媒は蒸発器30で気化する。冷媒が気化しているときに蒸発器30の隙間を空気流が通過することで、空気流は気化熱を奪われて冷却される。空気流が冷却されることにより蒸発器30の外表面で結露水が生じるが、この結露水を車外へ排出するためのドレーン(排水手段)31が蒸発器30の下端部及び蒸発器30の下端部に隣接するハウジング14に亘って開口して設けられている。
【0035】
また、蒸発器30には、蒸発器30の温度を検出する蒸発器温度センサ(温度検出手段)32が設けられており、後述するように蒸発器温度センサ32はエアコン電子コントロールユニット(以下、エアコンECUと略す)50の入力側に接続されている。
さらに、ハウジング14内にはヒータコア(加熱手段)33が配置され、ヒータコア33は、空気流の流動方向でみて蒸発器30よりも下流に配置されている。蒸発器30側のヒータコア33の前面は、蒸発器30を通過した空気流の一部のみがヒータコア33の隙間を通過するよう、ヒータコア32が設置されたハウジング14の部位の横断面積よりも小さい面積を有する。
【0036】
なお、ヒータコア33は、図示しないものの、エンジンルーム24から機器室12に渡るエンジン冷却水の分流路に温水バルブとともに挿入され、分流路は、エンジンとラジエータとの間を循環するエンジン冷却水の循環流路に、ヒータコア33とラジエータとが並列になるように接続されている。エンジン冷却水が循環流路を循環しているときに温水バルブが開かれると、エンジンで加熱された冷却水が分流路に流入し、ヒータコア33が温水によって加熱される。加熱されたヒータコア33の隙間を空気流が流れることで、空気流は加熱される。
【0037】
また、ハウジング14内には、風路、即ち、ブロワ26により生成される空気流の流路を切り換えるための複数のダンパが配置されている。
詳しくは、空気取り入れ口16の近傍には、外気導入用空気取り入れ口16aと内気循環用空気取り入れ口16bとを開閉により切り換える内外気切り換えダンパ34が設置され、空気送出口20近傍には、デフロスト用エアダクト22a、フェース用エアダクト22b、フット用エアダクト22cをそれぞれ開閉するモードダンパ(吹き出し口切換手段)36としてデフロスト用ダンパ36a、フェース用ダンパ36b、フット用ダンパ36cが設置されている。ヒータコア33の前面近傍には、ヒータコアダンパ(風量調整手段)38が設置され、ヒータコアダンパ38は、その開度によってヒータコア33を通過する空気流の流量を調整する。
【0038】
そして、車両用空調装置は、イオン発生器40を備えている。
イオン発生器40は、ハウジング14内に空気流の方向で視てヒータコアダンパ38がヒータコア33への送風を遮断した状態におけるヒータコア33を迂回する風路の蒸発器30の下流からエアミックスエリアまでの所定位置に設けられ、ヒータコアダンパ38に接しない位置に配置されている。つまり、蒸発器30の下流から車室6内へ吹き出すデフロスト用吹き出し口24a、フェース用吹き出し口24b、フット用吹き出し口24cまでの所定位置に配置されている。
【0039】
イオン発生器40は、イオン、特にマイナスイオンを発生させることが可能であるとともに、同時にオゾンをも発生可能に構成されている。イオン発生器40としては、例えば高電圧放電を利用したコロナ放電式または電子放射式のものを用いることができる。なお、電子放射式のイオン発生器には、高電圧発生手段として、鉄芯型トランスを用いるものや圧電トランスを用いるものがある。
【0040】
図2に示すように、イオン発生器40はHVACユニット2のステアリング41を有する運転席側に配置されている。そして、車室内6には着座センサ(乗員検出手段)42が設けられており、着座センサ42はエアコンECU50の入力側に接続されている。
図3に示すように、エアコンECU50の入力側には、上述したように、さらに蒸発器温度センサ32が接続されている。
【0041】
エアコンECU50は、CPUやメモリ等(図示せず)からなり、計時及び計時の積算行うタイマ52(計時積算手段)と、オゾン発生量マップ(オゾン発生量算出手段)54とを備えている。
エアコンECU50の出力側には、イオン発生器40、ブロワモータ60、内外気切り換えダンパ用モータ62、モードダンパ用モータ64、ヒータコアダンパ用モータ66、及び各種計器類(走行速度メータ、エンジン回転速度メータ、冷却水温度計、各種状態表示灯等)を表示するための表示装置68が接続されている。
【0042】
このように構成された本発明に係る車両用空調装置のオゾン除菌の作動内容について、以下に説明する。
まず、HVACユニット2内をオゾン除菌する場合について述べる。
イオン発生器40は、電力が供給されると、コロナ放電または電子放射によってイオンを発生するとともに、同時にオゾンをも発生させる特質を有している。
【0043】
図4に示すように、エアコンECU50はブロワモータ60を停止させることでブロワ26の作動を停止させるとともに、モードダンパ36を全閉モードとしてモードダンパ用モータ64を作動させてデフロスト用ダンパ36a、フェース用ダンパ36b、フット用ダンパ36cを閉じる。また、内外気切換用モータ62を作動させて内気循環用空気取り入れ口16bを内外気切り換えダンパ34で閉じ、外気導入口18aを開口させる。そして、イオン発生器40に電力を供給すると、オゾンが車室6内に供給されることなくハウジング14内の蒸発器30近傍に滞留する。これにより、蒸発器30に付着した細菌類や真菌類が良好に除去される。
【0044】
一方、HVACユニット2内をオゾン除菌中に乗員がエアコンの操作スイッチを操作することによるエアコンの稼働指示があった場合は、エアコンECU50はブロワモータ60によりブロワ26を回転駆動させて、ドレーン31からハウジング14内のオゾンを車外へ排出する。
【0045】
次に、車室内をオゾン除菌する場合について述べる。
エアコンECU50は着座センサ42の検出により車室6内に乗員がいないと判定すると、イオン発生器40を稼働させて車室6内をオゾン除菌する。
詳しくは、図5に示すように、エアコンECU50は内外気切り換えダンパ用モータ62を作動させて外気導入用空気取り入れ口16aを閉じ、内気導入口18bを開口させるとともに、ヒータコアダンパ用モータ66を作動させてヒータコアダンパ38を閉じる。そして、デフロスト用ダンパ36a、フェース用ダンパ36b、フット用ダンパ36cのいずれかが開いている状態でイオン発生器40に電力を供給すると、発生したオゾンが、ブロワモータ60によりブロワ26が回転駆動されることにより生成された空気流に伴って車室6内へ供給される。これにより、車室6内の細菌類や真菌類を良好に除去されるとともに、車室6内の脱臭も行われる。
【0046】
ところで、上述したように、オゾンは濃度が高いと毒性を有するという問題があることから、この車両用空調装置では車室6内の除菌を行う場合、オゾン発生量は車室内にオゾンが残留しても乗員に影響を与えない所定上限値以下となるようにオゾンを発生する。具体的には、オゾンの発生量は車室6内のオゾン濃度が0.1ppm以下となるように設定されている。
【0047】
通常、蒸発器30の外表面には抗菌剤が塗布されているが、経年変化とともに抗菌剤の効果は薄れ、逆に蒸発器30付近の細菌類や真菌類は、経年変化とともに増加していく傾向にある。そこで、エアコンECU50はタイマ52の計時を積算して、図6のオゾン発生量マップ54に示すように、積算時間とともにオゾン発生量を増加させていくことで、HVACユニット2内の細菌類や真菌類を十分に除去することができる。なお、経年変化とともにイオン発生器の稼働時間を増加させてもよい。また、蒸発器温度センサ32、HVACユニット2内の湿度を検出する湿度センサ(湿度検出手段)、または臭気を検出する臭気センサ(臭気検出手段)等により、イオン発生器40の稼働時間を増加させてもよい。例えば、蒸発器の温度が所定温度より高いときやHVACユニット2内の湿度が所定値よりも高いとき、または臭気センサの数値が所定値よりも高いときにイオン発生器40の稼働時間を増加させてもよい。
【0048】
そして、イオン発生器40への通電が終了したか、またはHVACユニット2内や車室6内のオゾン濃度が所定上限値(例えば0.1ppm)以下であり、且つ所定上限値近傍の濃度になったときオゾン除菌が終了すると、エアコンECU50は表示装置68に、オゾン除菌が終了したことを表示する。なお、HVACユニット2の外気導入用空気取り入れ口16aまたは内気循環用空気取り入れ口16bから車室6へ吹き出す各吹き出し口24a、24b、24cへ通じる風路内に芳香剤を配置して、オゾン除菌が終了するとブロワ26を作動させて芳香剤の香りを車室6内へ流入させるようにしてもよい。
【0049】
ところで、イオン除塵の場合は、イオン発生器40に電力が供給されると、上述したように、コロナ放電または電子放射によって、イオン発生器40を通過する空気流中の分子をマイナスに帯電させることができる。従って、ブロワ26の作動中、イオン発生器40に電力を供給すると、ブロワ26によって生成された空気流がイオン発生器40を通過し、車室6内にイオンが供給される。これにより、車室6内の浮遊微粒子が除去される。
【0050】
このように、本発明に係る車両用空調装置によれば、イオン発生器40はハウジング14内にヒータコアダンパ38がヒータコア33への送風を遮断した状態におけるヒータコア33を迂回する風路の蒸発器30の下流から、車室6内へ吹き出す各吹き出し口24a、24b、24cまでのエアミックスエリアの所定位置に設けられ、ヒータコアダンパ38と接しない位置に配置されるので、冷媒を蒸発器30で気化させることにより蒸発器30の外表面に生じる結露による水によって電気素子の故障を防止することができ、より安全に運転することができる。
【0051】
また、オゾンはブロワ26の停止時において蒸発器30の外表面やハウジング14内面にある蒸発器30の周辺部材に発生し付着した細菌類や真菌類を良好に除菌することができるとともに、イオン発生器40から発生するイオンが蒸発器30に衝突して減少してしまうことを防止することができ、車室6内の浮遊微粒子をイオンによって良好に除去することができる。
【0052】
そして、イオン発生器40を車室内、特に運転席側に面したHVACユニット2内の側面に配置することにより、容易に配置することができ、メンテナンスが容易になる。
また、HVACユニット2内をオゾン除菌する場合、エアコンECU50はモードダンパ用モータ64を作動させてモードダンパ36を全閉にし、内外気切り換えダンパ用モータ62を作動させて内外気切り換えダンパ34で内気循環用空気取り入れ口16bを閉じるので、ハウジング14内の蒸発器30及び周辺機器を効果的にオゾンにより除菌することができるとともに、乗員へオゾンの悪影響を与えないようにすることができる。
【0053】
そして、HVACユニット2内のオゾン除菌中に乗員からのエアコン稼働指示があった場合、エアコンECU50はブロワモータ60によりブロワ26を駆動させて、ハウジング14内のオゾンをドレーン31から車外へ排出させるので、乗員へオゾンの悪影響を与えることを防止することができる。
【0054】
さらに、車室6内をオゾン除菌する場合は、エアコンECU50は着座センサ42により車室6内に乗員の有無を検出し、車室6内に乗員がいないことが確認されると、内外気切り換えダンパ用モータ62を作動させて内外気切り換えダンパ34で外気導入用空気取り入れ口16aを閉じるとともに、ヒータコアダンパ用モータ66を作動させてヒータコアダンパ38を閉じ、ブロワモータ60によりブロワ26を作動させて車室6内へオゾンを流入させることにより車室6内の除菌を行うので、乗員へオゾンの悪影響を与えることを防止することができる。
【0055】
車室6内を除菌する際の車室6内のオゾン濃度は、乗員に悪影響を与えない所定上限値に設定され、具体的には0.1ppm以下であるので、車室6内にオゾンが残留したとしても、乗員に悪影響を与えないようにすることができる。
また、エアコンECU50はタイマ52とオゾン発生量マップ54とを備えており、エアコンECU50はタイマ52の計時を積算して、オゾン発生量マップ54から積算時間に対応したオゾン発生量を読み出し、イオン発生器40からオゾン発生量マップ54から読み出した量のオゾンを発生させるので、蒸発器30付近の経年変化とともに増加する細菌類や真菌類を効果的に除去することができる。
【0056】
また、蒸発器の温度が所定温度より高いときやHVACユニット2内の湿度が所定値よりも高いとき、または臭気センサの数値が所定値よりも高いときにイオン発生器40の稼働時間を増加させるので、各センサからの検出値に合わせて適切なオゾン量を発生させることができ、効果的に除菌を行うことができる。
【0057】
そして、オゾン除菌が終了すると、表示装置68にオゾン除菌が終了したことを表示するので、車室6内または車外にいる乗員はオゾン除菌が終了したことを容易に認識することができる。また、HVACユニットの導入口から車室内吹き出し口へ通ずる風路内に設けられた芳香剤の香りを、回転駆動されるブロワ26により車室6内へ流入させてもよいので、同様の効果が得られる。
【0058】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態では、図7に示すように、イオン発生器40のイオン発生部である放電電極40aは蒸発器温度センサ32に設置されて構成されている。なお、放電電極40aが蒸発器温度センサ32に設置されている点以外は上記第1実施形態と同様であり、ここでは、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0059】
図7に示すように、イオン発生器40の放電電極40aは、蒸発器温度センサ32と一体化して設置されており、蒸発器30を対向電極としている。そして、イオン発生器40は高圧電源40bを備えている。
このように構成されたイオン発生器40は、高圧電源40bから高電圧を印加することで、蒸発器温度センサ32と一体化した放電電極40aからイオン及びオゾンが発生し、蒸発器30を対向電極としているので、蒸発器30に地絡する。
【0060】
従って、蒸発器温度センサ32と放電電極40aを一体化し、蒸発器30を対向電極とすることで、新たに接地電極を設ける必要はなく、イオン発生器40は少ないスペースで配置することが可能である。
なお、当該第2実施形態では蒸発器30を対向電極としているが、図示しないが、蒸発器30の導電性のパッキン材を対向電極としてもよい。
【0061】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記各実施形態では、車室6内のオゾン除菌を行う前に着座センサ42により乗員の有無を検出しているが、赤外線センサやシートベルトセンサを代わりに用いてもよい。
【0062】
また、上記各実施形態では、HVACユニット2または車室6内のオゾン除菌が終了すると、各種計器類を表示する表示装置68にオゾン除菌が終了したことを表示しているが、表示装置はこれに限られず、例えばエアコンの操作パネル付近にあるエアコン用の液晶表示装置でもよい。
【符号の説明】
【0063】
2 HVACユニット
14 ハウジング
20 モードダンパ
30 蒸発器
31 ドレーン(排水手段)
32 蒸発器温度センサ(温度検出手段)
38 ヒータコアダンパ(風量調整手段)
40 イオン発生器
40a 放電電極
40b 高圧電源
42 着座センサ(乗員検出手段)
50 エアコンECU
52 タイマ(計時積算手段)
54 オゾン発生量マップ(オゾン発生量算出手段)
68 表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン発生手段とオゾン発生手段とを兼ねたイオン及びオゾンを各々または同時に発生するイオン発生器を備えた車両用空調装置において、
ハウジング内に、車室内に送風する送風手段と、該送風手段からの送風を温める加熱手段と、該加熱手段を通過する空気の流量を調整する風量調整手段と、冷凍回路を循環する冷媒を気化させる蒸発器とを内装し、該蒸発器から発生する水分を車外へ排出する排水手段を有する、前記車室内に調和空気を吹き出すための風路を形成するHVACユニットを備え、
該HVACユニットは、前記送風手段からの送風が前記加熱手段を通る温風風路と前記加熱手段及び前記風量調整手段を迂回する迂回風路とを形成してなり、
前記イオン発生器は、前記調和空気の流れ方向で視て前記風量調整手段が前記加熱手段への送風を遮断した状態における前記迂回風路の前記蒸発器の下流から、該下流にあるエアミックスエリアまでの所定位置に配置されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記所定位置は、車両の車室内側に面した前記HVACユニット内の側面であることを特徴とする、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記所定位置は、車両の運転席側に面した前記HVACユニット内の側面であることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
放電電極と対向電極との間に高電圧を印加して気中放電を発生させることでイオン及びオゾンを同時に発生させるイオン発生手段及びオゾン発生手段を兼ねたイオン発生器を備えた車両用空調装置において、
蒸発器を内装するHVACユニットと、
前記蒸発器の温度を検出する温度検出手段とを備え、
該温度検出手段に前記放電電極が配置され、
前記蒸発器を前記対向電極とすることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
前記HVACユニットは、車室内への単数または複数の吹き出し口を開閉する吹き出し口切換手段をさらに備え、
該吹き出し口切換手段は、前記車室内へ通じる全ての該吹き出し口を閉じる全閉モードを有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記車室内の乗員の有無を検出または認識する乗員検出手段をさらに備え、
該乗員検出手段により前記車室内に乗員がいないことが確認されたとき、前記イオン発生器により発生したオゾンを前記送風手段により前記車室内に供給し、前記車室内のオゾン濃度を所定上限値以下で前記車室内の除菌を行うことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記所定上限値は、0.1ppm以下であることを特徴とする、請求項6に記載の車両用空量装置。
【請求項8】
経過時間を計時して積算する計時積算手段と、
該計時積算手段により積算された積算時間から、前記オゾン発生手段により発生させるオゾン発生量を算出するオゾン発生量算出手段と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記HVACユニット内の湿度を検出する湿度検出手段と、
前記HVACユニット内の臭いを検出する臭気検出手段と、
前記温度検出手段、前記湿度検出手段、及び前記臭気検出手段の少なくともいずれか1つから検出された情報により、オゾン発生量を調整するオゾン発生量調整手段と、
をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記イオン発生器から発生したオゾンにより前記HVACユニット内または車室内の除菌が終了したとき、前記イオン発生器により除菌が終了したことを前記車室内または車外にいる乗員に通知する通知手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の車両用空量装置。
【請求項11】
前記通知手段は、前記オゾン発生手段により除菌が終了したことを表示する表示手段、及び前記HVACユニットの内外気を導入する導入口から前記吹き出し口へ通ずる風路内に配置された芳香剤を送風する前記送風手段の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする、請求項10に記載の車両用空調装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−105257(P2011−105257A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264919(P2009−264919)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】