車両用空調装置
【課題】空調使用による電力不足によって車両が停止することを抑制し、かつ乗員に与える不快感を低減することができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】エアコンECU32は、走行用電力量と空調用電力量とを合計した合計電力量よりもSOCが小さい場合には、消費可能電力量と空調要求とに基づいて、目的地まで空調が停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限した制限空調負荷を算出し、算出した制限空調負荷に基づいて空調制御(補正後空調制御)を実施する。
【解決手段】エアコンECU32は、走行用電力量と空調用電力量とを合計した合計電力量よりもSOCが小さい場合には、消費可能電力量と空調要求とに基づいて、目的地まで空調が停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限した制限空調負荷を算出し、算出した制限空調負荷に基づいて空調制御(補正後空調制御)を実施する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行の駆動源として電動機を用いる車両に備えられている車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、電動機(モータ)を走行の駆動源として用いる電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)等の電動車両がある。これらの電動車両においては、モータへの電力供給を行うバッテリの残蓄電量が低下した場合に、このバッテリに充電を行う必要がある。また、近年では、バッテリの残蓄電量が尽きて電動車両が走行不能になる前にバッテリの充電を行うことができるよう、ユーザを補助する技術が提案されてきている。
【0003】
また電動車両のバッテリは、モータに電力を供給するだけでなく、車両用空調装置にも電力を供給している。したがってバッテリの電力をどのようにマネージメントするかが重要となっている。従来の車両電力マネージメントは、式1のように現在の電力エネルギーを算出し、現在の電力エネルギーに応じて車両の各構成機器の負荷を制御している。
【0004】
【数1】
ここで、Er:現在の電力エネルギー(kW・h)、E0:満充電時の電力エネルギー(kW・h)、SOC(state of charge):現在のバッテリ残容量(%)、 80:充電できる電力の上限値(%)、30:走行可能な電力下限値(%)である。充電できる電力の上限値の80%、および走行可能な電力下限値の30%は、一例である。走行などすると電力を消費するので、SOCが減っていき、Erも減っていくことになる。
【0005】
特許文献1に記載の従来技術では、車両用空調装置における除霜制御をバッテリに充填中のときに実施することによって、走行中の除霜による電力消費を低減する構成が開示されている。
【0006】
図14は、従来技術における電気自動車の空調負荷制御の一例を示すグラフである。図14の縦軸は、空調電力負荷を示し、横軸は時間を示す。電気自動車が走行中であると、バッテリ残容量が徐々に低下していき、時刻t01にて、バッテリ残容量が予め定める空調を制限するためのしきい値を下回ったので、空調を強制的に制限するように制御している。これによって車両用空調装置の消費電力を少なくして、目的地に到達するまでにバッテリ切れにならないようにしている。さらに走行して時間が経過し、時刻t02にて、バッテリ残容量が予め定める空調を停止するためのしきい値を下回ったので、空調を強制的に停止するように制御している。これによって車両用空調装置の消費電力を無しにして、走行のために電力を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−20239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、車両としては走行距離を延ばすために、図14に示すように走行時間(走行距離)が長くなるにつれて、現在の電力エネルギー(バッテリ残容量)に基づいて車両用空調装置の空調電力負荷を制限または停止してしいる。したがって乗員には、空調が使えないことによる不快感を与えてしまうという問題がある。
【0009】
また空調電力負荷を制限しているが、制限する値(割合)は目的地に到着したときのバッテリ残容量とは全く関係無く、現在のバッテリ残容量が予め定めるしきい値を下回ったら一律に制限している。そうすると目的地に到着してもバッテリ残容量が多く残っている場合もあり、空調制限した制御による利便性が低いという問題もある。
【0010】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、空調使用による電力不足によって車両が停止することを抑制し、かつ乗員に与える不快感を低減することができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0012】
請求項1に記載の発明では、走行の駆動源として電動機(12)を用いる車両(11)に備えられる車両用空調装置(10)であって、
車両の現在地を示す現在地情報を取得する現在地情報取得手段(31)と、
車両の目的地を示す目的地情報を取得する目的地情報取得手段(31)と、
車両の空調要求を取得する空調要求取得手段(33)と、
電動機に電力を供給する走行用バッテリにおける残蓄電量を示す残蓄電量情報を取得する残蓄電量情報取得手段(32)と、
車両が目的地に到達するまでの走行に要する電力量を示す走行用電力量を取得する走行用電力量取得手段(31)と、
現在地情報取得手段によって取得された現在地情報と目的地情報取得手段によって取得された目的地情報と空調要求取得手段によって取得された空調要求とに基づいて、車両が目的地に到達するまでの車室内の空調に要する電力量を示す空調用電力量を算出する空調用電力量算出手段(32)と、
空調要求取得手段によって取得された空調要求を満足するように車室内の空調制御を実施する空調制御手段(32)と、を含み、
空調制御手段は、残蓄電量情報取得手段によって取得された現在地における残蓄電量情報が示す残蓄電量が、走行用電力量取得手段によって取得された走行用電力量と空調用電力量算出手段によって算出された空調用電力量とを合計した合計電力量よりも小さい場合には、残蓄電量から走行用電力量を減じた消費可能電力量を算出し、算出された消費可能電力量と空調要求とに基づいて、目的地まで空調が停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限した制限空調負荷を算出し、算出した制限空調負荷に基づいて空調制御を実施することを特徴とするである。
【0013】
請求項1に記載の発明に従えば、現在地情報と目的地情報と空調要求とに基づいて、車両が目的地に到達するまでの空調用電力量が、空調用電力算出手段によって算出される。従来技術では、空調用電力量などは算出されることなく、現時点における残蓄電量だけを監視して空調能力を制限している。これに対して本発明では、空調制御手段は、走行用電力量と空調用電力量とを合計した合計電力量よりも残蓄電量が小さい場合には、消費可能電力量と空調要求とに基づいて、目的地まで空調が停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限した制限空調負荷を算出し、算出した制限空調負荷に基づいて空調制御を実施する。何ら制限せずに空調要求を満足するように空調制御を実施すると、目的地に到着する前に走行するための残蓄電量がなくなってしまい、電動機を駆動できなくなる場合がある。また消費電力を小さくするために、単に空調を停止することも考えられるが、乗員に目的地まで不快感を与えるという問題がある。これに対して本発明では、空調に使用可能な消費可能電力量が算出されるので、消費可能電力量に基づいて、空調を停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限して、空調制御を行うことができる。したがって目的地に到着するまで、消費可能な電力を最大限に活用することができる。たとえば、空調能力を空調要求に対して2割減少させた制限空調負荷で空調制御をしたら、目的地まで継続して空調を実施することができ、かつ目的地まで走行できる場合には、制御空調負荷に基づく空調制御によって、乗員に与える不快感を抑制しつつ、目的地まで到着することができる。これによって空調を停止する場合に比べて、乗員に与える不快感を低減しつつ、目的地に到着することが可能な車両用空調装置を実現することができる。
【0014】
また請求項2に記載の発明では、予め設定された複数の環境条件における空調負荷の経時変化が記憶された空調負荷記憶手段(36)をさらに含み、
空調用電力算出手段は、空調負荷記憶手段に記憶されている複数の環境条件から現在の環境条件に対応する情報を抽出し、抽出した情報を用いて空調用電力量を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明に従えば、空調負荷記憶手段には、予め設定された複数の環境条件における空調負荷の経時変化が記憶される。環境条件は、たとえば外気温、内気温、湿度および日射量などである。空調用電力算出手段は、空調負荷記憶手段に記憶されている複数の環境条件から現在の環境条件に対応する情報を抽出することによって、空調負荷を算出する。これによって空調用電力算出手段は、空調負荷を算出するために複雑な演算式を用いることなく、単に空調負荷記憶手段から情報を抽出するだけでよいので、演算負荷を低減することができる。これによって処理の高速化をすることができる。
【0016】
さらに請求項3に記載の発明では、天気予測を示す天気予測情報を取得する天気予測情報取得手段(31)をさらに含み、
空調用電力量算出手段は、現在地から目的地までの経路における天気予測情報を用いて空調用電力量を算出することを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明に従えば、空調用電力量算出手段は、現在地から目的地までの経路における天気予測情報を用いて空調用電力量を算出する。天気予測情報を用いるので、たとえば気温の変化および日射量の変化を考慮して、空調用電力量を算出することができる。したがって目的地に到着するまでの空調用電力量の精度を向上することができる。
【0018】
さらに請求項4に記載の発明では、走行用電力量取得手段によって取得される走行用電力量は、現在地から目的地までの経路における混雑状況を含む交通情報を用いて算出された値であることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明に従えば、走行用電力量取得手段は、交通情報を用いて算出された値である。交通情報は、たとえば混雑状況および交通規制などである。混雑して渋滞している道路などが経路上にある場合と、道路が混雑していない場合とでは、走行用電力量が異なる。このような走行用電力量に影響を与える交通情報を用いて算出されるので、走行用電力量の精度を向上することができる。これによって空調に使用可能な電力量の予測精度も向上するので、より快適な車室内環境を提供することができる。
【0020】
さらに請求項5に記載の発明では、空調用電力量算出手段は、天気予測情報に基づいて目的地までに天気が変化する場合には、現在地から目的地までの各地点における空調に用いられる電力量の変化が天気の変化に伴って急激に変化せず段階的に変化させる移行期間によって補正する補正値を用いて、空調用電力量を算出することを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明に従えば、天気予測情報に基づいて目的地までに天気が変化する場合には、現在地から目的地までの各地点における空調に用いられる電力量の変化が天気の変化に伴って急激に変化せず段階的に変化させるように補正する補正値を用いて、空調用電力量を算出する。これによって急に制御状態を切り替える場合に比べた場合の空調用電力量ではなく、ユーザに与える違和感を小さした空調用電力量を用いることができる。これによって実際の空調制御においても、ユーザに与える違和感を小さくする制御をすることができる。
【0022】
さらに請求項6に記載の発明では、補正値は、移行期間内の予め設定される時間が時定数となるように補正した値であることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の発明に従えば、補正値は、移行期間内の予め設定される時間が時定数となるように補正した値である。したがって滑らかに制御状態を変化したときの補正値を用いることができる。これによって実施の空調制御においても、ユーザに与える違和感をより小さくすることができる。
【0024】
さらに請求項7に記載の発明では、制限空調負荷に基づく空調制御を実施の許可または実施の拒否のいずれかを選択するための入力手段(33)をさらに含み、
入力手段によって、制限空調負荷に基づく空調制御を実施の許可が選択されている場合には、残蓄電量が合計電力量よりも小さいとき、制限空調負荷に基づく空調制御を実施し、
入力手段によって、制限空調負荷に基づく空調制御を実施の拒否が選択されている場合には、残蓄電量が合計電力量よりも小さいとき、空調要求を満足する空調制御を実施することを特徴とする。
【0025】
請求項7に記載の発明に従えば、制限空調負荷に基づく空調制御を実施の許可または実施の拒否のいずれかを選択するための入力手段を含むので、ユーザは入力手段によって制限空調負荷を許可するか否かを選択することができる。これによって利便性を向上することができる。
【0026】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】電力供給システム100の電気的構成を簡略化して示すブロック図である。
【図2】電力供給システム100を示す概念図である。
【図3】走行用電力量を算出に用いられる案内経路情報を示す図である。
【図4】走行位置と高度との関係を示すグラフである。
【図5】空調制御のメインルーチンを示したフローチャートである。
【図6】エアコンECU32に記憶される空調負荷DBを示す図である。
【図7】空調負荷の変化パターンの一例を示すグラフである。
【図8】SOCの変化スケジュールの一例を示すグラフである。
【図9】車室内熱負荷とエバ温と目標エバ音との差との関係を示す図である。
【図10】SOCおよび空調消費電力と走行位置との関係を示すグラフである。
【図11】従来のSOCおよび空調消費電力と走行位置との関係を示すグラフである。
【図12】本実施の形態の空調負荷制御の一例を示すグラフである。
【図13】第2実施形態の空調負荷の変化パターンの一例を示すグラフである。
【図14】従来技術における電気自動車の空調負荷制御の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0029】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図12を用いて説明する。図1は、第1実施形態の車両用空調装置10を含む電力供給システム100の電気的構成を簡略化して示すブロック図である。図2は、電力供給システム100を示す概念図である。車両用空調装置10は、電動車両11に搭載される。電動車両11とは、電動機12(モータ)のみを走行の駆動源として用いる電気自動車(EV)のことである。電動車両11に搭載される電力供給システム100は、電力の供給源であるバッテリプラント13、車室内の空調を行う車両用空調装置10、および車両の走行用駆動源である車両用モータ装置14を含んで構成される。電力供給システム100は、バッテリプラント13を構成するバッテリ13aの電力を各構成要素に供給するシステムである。
【0030】
先ず、バッテリプラント13に関して説明する。バッテリプラント13は、バッテリ13a、電源制御装置(図示せず)、各種センサ(図示せず)および充電装置(図示せず)を含んで構成される。バッテリ13aは、車両用モータ装置14、室内ユニットの各部および車両用空調装置10の構成部品に電力を供給する。バッテリ13aは、充電可能であり、たとえばニッケル水素蓄電池等が用いられる。充電装置は、車室内空調および走行等によって消費した電力をバッテリ13aに充電するための装置である。充電装置は、電力供給源としての電気スタンドや商業用電源に接続されるコンセントを備えており、このコンセントに電源供給源を接続することにより、バッテリ13aの充電が行われる。
【0031】
各種センサは、たとえばバッテリ13aの電流を検出するバッテリ電流センサ、バッテリ13aの温度を検出する温度センサ、バッテリ13aの電圧を検出するバッテリ電圧センサなどである。各種センサは、検出した情報をセンサ信号として電源制御装置に与える。
【0032】
電源制御装置は、バッテリ13aの入出力電流、バッテリ温度、バッテリ電圧を受け取ってバッテリ13aの状態(残蓄電量)を監視する。電源制御装置は、バッテリ13aの状態に関する情報をバッテリ信号として車両用空調装置10および車両用モータ装置14に与える。
【0033】
次に、車両用モータ装置14に関して説明する。車両用モータ装置14は、主機モータプラント20、主機通信部21、ナビ情報取得部22、走行用センサ群23、および主機電子制御装置24(Electronic Control Unit:略称ECU)を含んで構成される。主機モータプラント20は、モータ12とインバータ(図示せず)とを含んで構成される。モータ12は、電動車両11の走行駆動源として用いられるものである。モータ12は、バッテリ13aから与えられた電気エネルギー(つまり、電力)を回転エネルギー(駆動力)に変換する。インバータは、電力変換器の一種である。インバータは、主機ECU24およびバッテリ13aと電気的に接続され、主機ECU24によって制御される。主機ECU24は、バッテリ13aの放電出力(直流)をモータ12に適する電力形式(三相交流)に変換するようにインバータを制御する。したがってバッテリ13aの放電出力はインバータを介してモータ12に供給されている。
【0034】
ナビ情報取得部22は、電動車両11に搭載される車載ナビゲーション装置40から情報を取得する。ナビ情報取得部22で車載ナビゲーション装置40から取得する情報としては、たとえば現在位置情報、出発地情報、目的地情報、地図データ、施設情報、案内経路情報、通行候補経路情報および天気予測情報などがある。ナビ情報取得部22は、取得した情報をナビ信号として主機ECU24に与える。
【0035】
現在位置情報は、電動車両11の現在位置の情報であって、車載ナビゲーション装置40を構成する地磁気センサ、ジャイロスコープ、車速センサおよびGPS受信機等からなる位置検出手段で検出されたものである。また出発地情報および目的地情報は、車載ナビゲーション装置40において電動車両11の出発地および目的地として入力された場所の座標等の情報である。
【0036】
地図データは、道路を示すリンクデータとノードデータとが含まれる情報である。リンクとは、地図上の各道路を交差・分岐・合流する点等の複数のノードにて分割したときのノード間を結ぶものであり、各リンクを接続することにより道路が構成される。リンクデータは、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンク旅行時間、リンク方向、リンク方位、リンクの始端および終端ノード座標(緯度・経度)、道路名称、道路種別、道路幅員、車線数、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、ならびに制限速度等の各データから構成される。ノードデータは、地図上の各道路が交差、合流、分岐するノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、および交差点種類等の各データから構成される。また施設情報は、各種施設の種類、名称、住所、配置場所の座標等の情報である。
【0037】
案内経路情報は、車載ナビゲーション装置40において、検出された現在地または入力された出発地および目的地をもとに、電動車両11が通行し得る経路の中から、距離優先、時間優先等の予め設定された条件を満たす適切な現在地から目的地まで移動経路、または出発地から目的地までの移動経路を公知のダイクストラ法を用いて探索した結果として得られた案内経路の情報である。また、通行候補経路情報は、上述の電動車両11が通行し得る経路の情報である。
【0038】
天気予測情報は、現在の天気情報および天気予測情報を含む情報であって、案内経路上にある所定の区域毎の天候、雨雲の状態、気温、紫外線量の情報、日射量および日射方位の情報などを含む情報である。
【0039】
主機通信部21は、車両用空調装置10を構成するエアコン通信部31と電気的に接続され、エアコン通信部31と通信する。主機通信部21は、受信した信号を主機ECU24に与え、主機ECU24から与えられる信号を、エアコン通信部31に送信する。主機通信部21とエアコン通信部31とが送受信する情報(信号)は、たとえば主機モータプラント20の消費電力や、天気予測情報などである。
【0040】
走行用センサ群23は、車両の走行状態を検出する検出手段であり、検出した情報をセンサ信号として主機ECU24に与える。走行用センサ群23は、たとえば車速を検出する車速センサ、操舵角を検出する操舵センサ、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ、ブレーキペダルのオン/オフを検出するブレーキセンサなどである。
【0041】
主機ECU24は、走行用センサ群23から与えられるセンサ信号に基づいて、車速、操舵角、アクセルペダルの踏み込み量およびブレーキのオン/オフを把握している。主機ECU24は、車速、操舵角、アクセルペダルの踏み込み量およびブレーキのオン/オフに基づいて、主機モータプラント20を制御する。主機ECU24は、走行用センサ群23から与えられるセンサ信号に基づいて、主機モータプラント20のトルク制御を実行する。主機ECU24は、たとえばアクセルペダルの踏み込み量が大きくなるほど車輪のトルクが大きくなるようにトルク指令を算出する。主機ECU24は、算出したトルク指令に応じてインバータを制御することにより、トルク指令に相当するトルクをモータ12から出力させる。
【0042】
また主機ECU24は、マイクロコンピュータを主体として構成され、ナビ情報取得部22から入力された各種情報に基づき、各種の制御プログラムを実行することで各種の処理、たとえば走行用電力量算出処理(「SOCスケジュール処理」ともいう)を実行するものである。
【0043】
主機ECU24は、定期的に目的地に到着するまでのSOC変化のスケジュールを算出するSOCスケジュール処理を行う。SOCは、現在のバッテリ13aの残容量のことである。SOC変化スケジュールは、目的地までの走行によって消費するSOCの変化予測のことである。主機ECU24は、ナビ情報から、現在地から目的地までの案内経路、案内経路上の渋滞状況、および案内経路上の交通情報に基づき主機モータプラント20の制御予測を行うことで目的地までの空調以外で消費するSOCの変化を算出する。主機ECU24は、SOCスケジュール処理で算出した結果を、主機通信部21を介して車両用空調装置10に送信する。
【0044】
具体的には、走行用電力量算出処理では、現在地と目的地とに基づいて、目的地に到達するまでの走行に要する電力量を示す走行用電力量を算出する処理である。走行用電力量算出処理では、先ず、ナビ情報取得部22で取得した現在地情報および目的地情報をもとに、電動車両11が現在地から目的地に到達するまでの案内経路の情報(つまり、案内経路情報)を得る。次に、案内経路情報をもとに、電動車両11が現在地から目的地に到達するまでの走行に要する電力量である走行用電力量を算出する。
【0045】
図3は、走行用電力量を算出に用いられる案内経路情報を示す図である。図4は、走行用電力量を算出に用いられる走行位置と高度との関係を示すグラフである。案内経路情報をもとに走行用電力量を算出する方法としては、たとえば予め一定の距離あたりの走行用バッテリ13aの平均電力消費量の情報を主機ECU24で保持しておくとともに、ナビ情報取得部22で取得した地図データをもとに案内経路上の各リンク長を足し合わせて案内経路の距離を求め、案内経路の距離と上述の平均電力消費量とをもとに走行用電力量を算出する方法がある。また、たとえばナビ情報取得部22で取得した地図データをもとに案内経路上の各リンクに対応付けられた制限速度を得て、この制限速度をもとに案内経路上の各リンクでの走行用バッテリ13aの電力消費量をそれぞれ算出し、算出した各リンクでの電力消費量を足し合わせることによって走行用電力量を算出する構成としてもよい。
【0046】
図3に示すように、案内経路上に渋滞区間および郊外道を示す交通情報がある場合には、これらの交通情報を考慮して走行用電力量を算出することが好ましい。具体的には、渋滞区間であるとアクセルおよびブレーキの操作頻度が渋滞でない場合に比べて多くなるので、このような情報に基づいて走行用電力量が多くなる方向へ補正する。また案内経路上に郊外道がある場合には、市街地よりも信号などが少なく、比較的スムーズに走行することができるので、アクセルおよびブレーキの操作頻度が少なくなる。このような情報に基づいて走行用電力量が少なくなる方向へ補正する。これによって走行用電力量の精度を向上することができる。
【0047】
また図4に示すように、走行位置と高度との関係を示す道路情報を考慮して走行用電力量を算出することが好ましい。走行位置と高度によって、案内経路上の登り坂の区間および下り坂の区間などが既知である。登り坂の区間においては、アクセルの操作頻度が多くなるので、走行用電力量が多くなる方向へ補正する。また下り坂の区間においては、ブレーキの操作頻度が多くなるので、走行用電力量が少なくなる方向へ補正する。これによって走行用電力量の精度を向上することができる。
【0048】
次に車両用空調装置10に関して説明する。車両用空調装置10は、エアコン機器プラント30、エアコンECU32、操作パネル33、空調用センサ群34、主機通信部21と通信するエアコン通信部31、および空調負荷データベース(DB)36を含んで構成される。エアコン機器プラント30は、車室内を空調するための空調用部品である。エアコン機器プラント30は、蒸気圧縮式冷凍サイクル(図示せず)と、蒸気圧縮式冷凍サイクルを用いて冷房を行う室内ユニット(図示せず)とを含む。蒸気圧縮式冷凍サイクルは、電動圧縮機(コンプレッサ)101と、電動圧縮機101の吐出口より吐出された冷媒が流入する凝縮器と、凝縮液化された冷媒を気液分離し下流に供給するレシーバと、液冷媒を減圧膨張させる膨張弁等の減圧装置と、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させる蒸発器とを備えており、これらを環状に接続して構成されている。凝縮器は、車室外(例えば、走行風を受け易い場所)に設置されて、内部を流れる冷媒と電動ファン35によって送風される外気とを熱交換する。
【0049】
操作パネル33には、電動圧縮機101の起動および停止を命令するためのエアコンスイッチ、吸込口モードを切り替えるための吸込口切替スイッチ、車室内温度を設定するための温度設定スイッチ、ブロワ(送風機)による車室内への送風量を切り替えるための風量切替スイッチ、吹出口モードを切り替えるための吹出口切替スイッチ等が設けられている。操作パネル33によって入力された操作信号は、エアコンECU32に与えられる。したがって操作パネル33は、電動車両11の空調要求を取得する空調要求取得手段として機能する。
【0050】
空調用センサ群34は、空調に用いられる各種の情報を検出する検出手段であり、検出した情報をセンサ信号としてエアコンECU32に与える。空調用センサ群34は、たとえば車室内の空気温度を検出する内気温センサ、車室外の外気温度を検出する外気温センサ、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ、蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷却用熱交換器を構成する蒸発器を通過した直後の空気温度(エバ温)を検出する蒸発器吹出空気温度センサ、室内ユニット内部の送風空気を加熱するヒータへの冷却水温度を検出する水温センサ、乗員がシートに着座しているか否かを検出することができる着座センサ等である。
【0051】
エアコン通信部31は、主機通信部21と通信することによって、ナビ情報取得部22が取得した情報を取得する。したがってエアコン通信部31は、電動車両11の現在地を示す現在地情報を取得する現在地情報取得手段、および電動車両11の目的地を示す目的地情報を取得する目的地情報取得手段、天気予測を示す天気予測情報を取得する天気予測情報取得手段として機能する。
【0052】
空調負荷データベース36は、空調負荷記憶手段であって、予め設定された複数の環境条件における空調負荷の経時変化が記憶されている。空調負荷データベース36には、たとえば予め設定される環境条件として内気温、外気温、日射量および湿度の4つのパラメータに基づいて、空調負荷の時間に対する変化が記憶されている。
【0053】
エアコンECU32は、室内ユニットの各部および蒸気圧縮式冷凍サイクルの構成部品であるコンプレッサ101等を自動制御可能な空調制御手段である。エアコンECU32は、図示は省略するが、マイクロコンピュータと、車室内前面に設けられた操作パネル33上の各種スイッチからの信号および空調用センサ群34からのセンサ信号や主機ECU24から送信される通信信号が入力される入力回路と、各種アクチュエータに出力信号を送る出力回路と、を備えている。マイクロコンピュータは、ROM(読み込み専用記憶装置)、RAM(読み込み書き込み可能記憶装置)等のメモリおよびCPU(中央演算装置)等から構成されており、操作パネル33等から送信された運転命令に基づいた演算に使用される各種プログラムを有している。マイクロコンピュータから出力された信号は、出力回路によってD/A変換、増幅等された後に、吹出口切替ドア、内外気切替ドア、エアミックスドア(A/Mドア)、ブロワ、コンプレッサ101のそれぞれを駆動する各種アクチュエータに駆動信号として出力される。
【0054】
またエアコンECU32は、バッテリプラント13と電気的に接続され、バッテリ13aのSOCを示す残蓄電量情報(バッテリ信号)を取得する残蓄電量情報取得手段としての機能も有する。
【0055】
次に、エアコンECU32による空調制御処理について図5〜図12を用いて説明する。図5は、エアコンECU32による空調制御のメインルーチンを示したフローチャートである。エアコンECU32は、図5に示すフローチャートを電力が供給されている電力供給状態、目的地情報を与えられると短時間に繰返し実行する。したがってエアコンECU32は、目的地がセット(再セットも含む)されると、図5に示すフローを実行する。
【0056】
エアコンECU32は、図5に示すメインルーチンにしたがって空調制御処理の実行を開始すると、ROM、RAMなどのメモリに記憶された制御プログラムがスタートしてRAMに記憶されるデータなどを初期化し、ステップ1に移る。
【0057】
ステップ1では、現在の車内外の熱負荷状態、および乗員による空調設定状態を取得し、ステップ2に移る。具体的には、エアコンECU32は、内気温センサ、外気温センサ、日射センサ、蒸発器吹出空気温度センサ、および水温センサからの信号を読み込み、内気温、外気温、車内湿度、車外湿度および日射量から車室内外の熱負荷状態を算出する。またエアコンECU32は、操作パネル33から設定温度、設定風量、設定吹出モードなどの空調設定状態を取得する。
【0058】
ステップ2では、空調以外のSOC変化スケジュールを取得し、ステップ3に移る。エアコンECU32は、エアコン通信部31を介して、主機ECU24が実行したSOCスケジュール処理の結果を受信する。このように空調以外のSOC変化スケジュールを取得することにより、空調が消費してもよいSOCを算出することができる。
【0059】
ステップ3では、進行方向の天気予測情報を取得し、ステップ4に移る。天気予測情報は、エアコン通信部31を介して取得されるナビ情報に含まれる。これによって全走行区間における車室内外の空調負荷変動を予測することができる。
【0060】
ステップ4では、車両用空調装置10(エアコン)のSOC変化スケジュール算出し、ステップ5に移る。エアコンECU32は、現在の車内外熱負荷情報、乗員による空調操作、進行方向の天気予測情報に基づいて目的地までの空調が消費するSOCの変化を算出する。具体的な算出方法については、後述する。
【0061】
ステップ5では、エアコン(A/C)制御負荷制限が必要か否かを判断し、必要な場合にはステッ7に移り、必要ない場合には、ステップ6に移る。エアコン(A/C)制御負荷制限が必要か否かは、目的地までに車両全体が消費するSOC算出値が、走行可能な電力下限値(たとえば30%)を下回るかどうかで判定する。したがってステップ2およびステップ4で算出したSOCの変化スケジュールに基づいて、目的地まで走行可能か否かを判断する。換言すると、目的地まで走行可能なSOCを保てる場合は空調負荷を制限せず、走行可能なSOCを保てない場合は空調が消費するSOCを制限するための判別を行う。
【0062】
ステップ6では、算出したSOCスケジュールに沿って走行した場合、目的地まで走行可能であるので、現在の車内外熱負荷状態および乗員による空調操作に基づいて、空調制御を実行し、本フローを終了する。
【0063】
ステップ7では、算出したSOCスケジュールに沿って走行した場合、目的地まで走行することができないので、空調負荷を低減した制御を実施することを乗員が許可しているか否かを判断し、許可されている場合には、ステップ8に移り、許可されていない場合には、ステップ6に移る。許可されているか否かは、電力マネージメント(略称:電マネ)オートスイッチがオンであるか否かで判断される。電マネオートスイッチは、乗員によって操作されるスイッチであって、たとえば操作パネル33を操作することによってON/OFFの切替をすることができる。電マネオートスイッチがONである場合には、乗員が空調能力を制限して消費電力を低減することを許可していると判断し、ステップ8に移ることなる。電マネオートスイッチがOFFである場合には、乗員が空調能力を制限して消費電力を低減することを拒否している判断し、通常の空調制御を実施するようにステップ6に移ることになる。
【0064】
ステップ8では、空調負荷を低減した補正後空調制御を実行し、本フローを終了する。空調負荷を低減した制御とは、空調を停止することなく、通常の空調制御よりも空調によって消費される電力が少なくなるように、空調能力の一部を制限することである。
【0065】
このように図5に示すフローによって、エアコンECU32は、現在地における残蓄電量が、走行用電力量と空調用電力量とを合計した合計電力量よりも小さい場合には、目的地まで空調が停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限した空調制御を実施する。換言すると、空調を停止することによってSOCの不足分を一度に制限するのではなく、時間あたりに平均して空調能力を制限してSOCの不足分を補う。
【0066】
図5に示す処理は、エアコンECU32によって短時間に繰返し実行される。目的地情報は、目的地の再設定によって変更する可能せがある。また天気予測情報は、未来を予測する情報であるの刻一刻と変化する情報である。さらに交通情報も通勤ラッシュなどが発生する時間帯によって変化する情報である。したがって走行によって時間が経過し、たとえば目的地情報、天気予測情報および交通情報などが変更した場合であっても、繰返し図5に示すフローを実行するので、変更後の条件においてSOCが算出される。これによって空調負荷を制限すべきか否かを最新情報に基づいて判断することができる。
【0067】
次に、ステップ4におけるSOCスケジュールの算出方法に関して説明する。図6は、エアコンECU32に記憶される空調負荷データベース(DB)36を示す図である。図7は、空調負荷の変化パターンの一例を示すグラフである。図8は、SOCの変化スケジュールの一例を示すグラフである。
【0068】
空調負荷データベース36には、図6に示すように、たとえば予め設定される環境条件として内気温、外気温、日射量および湿度の4つのパラメータに基づいて、空調負荷の時間に対する変化が記憶されている。4つのパラメータは、それぞれ予め定めるしきい値によって、2つのパターンを有する。たとえば外気温が予め定めるしきい値よりも高い場合(高温の場合)の空調負荷の変化パターンと、高くない場合(低温の場合)の空調負荷の変化パターンである。
【0069】
エアコンECU32は、前述したようにステップ4にて、現在地情報と目的地情報と空調要求に基づいて、車両が目的地に到達するまでの車室内の空調に要する電力量を示す空調用電力量を算出する。エアコンECU32は、空調負荷データベース36に記憶されている複数のパラメータ、本実施の形態では4つのパラメータから現在の環境条件に対応する情報を抽出することによって、空調用電力量を算出する。したがってエアコンECU32は、空調負荷を算出するとき、外気温、内気温および湿度の各高低の各2パターン、日射量の大小の2パターンで合計すると2の4乗で16パターン(16個の環境条件)の中から、現在の環境条件に最も近いグラフを抽出する。また現在の環境条件が16パターン内にないときは、最も値が近い少なくとも2つのパターンから近似値を算出してもよい。これによって現在の環境条件から、空調負荷が算出される。
【0070】
次に、現在と進行方向の熱負荷情報である天気予測情報、たとえば外気温、日射量および車外湿度を取り込み、全走行工程の空調負荷パターンを決定する。図7は、天候予測情報によって、時刻t71に日射量が小から大へと移行する場合の空調負荷の変化パターンである。図7にて時刻t71まで実線で示し、時刻t71から破線で示す波形が、日射量が小のときに空調負荷のパターンである。また時刻t72まで一点鎖線で示し、時刻t72から実線で示す波形が、日射量が大(他のパラメータは同一)のときの空調負荷のパターンである。時刻t71にて日射量が小から大へと移行するので、時刻t71にて空調負荷パターンを日射量が小のパターンから大のパターンへと変化させる必要がある。
【0071】
このような空調負荷パターンを切り替える場合、直ちに切り替えるのではなく、天気の変化の前後で空調負荷パターンが変化する場合には、天気の変化の前後で空調負荷パターンを段階的に切替えるための移行期間を設ける。図7では、時刻t71〜時刻t72までが移行期間となる。このような移行期間では、段階的に徐々に日射量が大の空調負荷パターンに移行するよう空調負荷を変化させる。具体的には、移行期間内の予め設定される時間、たとえば120秒が時定数(63.2%)となるように切替のための制御をする。
【0072】
次に、図7に示した空調負荷からSOCスケジュールを算出する。空調負荷と消費電力とは比例関係にあるので、図7のようなグラフが決定すると、図8に示すSOCスケジュールのグラフが決定される。このSOCスケジュールについて、斜線を施した部分の面積を算出することによって、現在地から目的地に到着するまでの空調用電力量を算出することができる。これによってエアコンECU32は、天気予測情報に基づいて目的地までに天気が変化する場合には、現在地から目的地までの各地点における空調に用いられる電力量の変化が天気の変化に伴って急激に変化せず段階的に変化させる移行期間によって補正する補正値を用いて、空調用電力量を算出することことになる。さらに補正値は、移行期間内の予め設定される時間(120秒)が時定数となるように補正した値である。このように目的地までの時間(距離)情報、天気予測情報、および現在の熱負荷に基づく空調負荷DBを用いることによって、全走行区間における空調が必要とするSOCの変化を算出できる。
【0073】
次に、ステップ8における補正後空調制御に関して説明する。図9は、コンプレッサ電力(W)について、車室内熱負荷と蒸発器吹出空気温度センサによって検出される温度(エバ温)と目標エバ音との差との関係を示す図である。
【0074】
先ず、補正後空調制御は、次式(2)によって、算出される。
【0075】
【数2】
式(2)に示すように、目的地までの空調以外にかかるSOCを全てのSOCで除した割合で補正する。たとえば補正割合が0.8であると、次式(3)となる。
補正後空調制御 = 0.8 × (空調制御) …(3)
したがって2割減で空調制御すれば目的地までバッテリ13a切れになることを防ぐことができる。車両用空調装置10の消費電力を2割削減するために、たとえばコンプレッサ101の消費電力を削減する例に関して説明する。
【0076】
通常の空調制御で算出されるコンプレッサ電力値が2000Wの場合、その電力を1600W(=2000×0.8)に低減し制御する。
【0077】
たとえば第1の方法として、「エバ温−目標エバ温」を20℃ではなく10℃と認識させる。つまり図9に基づいて、
補正後目標エバ温=目標エバ温+10℃ …(4)
とし、目標エバ温の代わりに補正した補正後目標エバ温で制御に用いる。これによって図9に示すように、消費電力が1600Wとなる。
【0078】
また第2の方法として、図9に基づいて、車室内熱負荷を500Wではなく250Wと認識させる。コンプレッサ電力の算出に用いる補正係数、たとえば内気温、外気温、日射量、湿度あるいは車室内熱負荷のうち、車室内熱負荷を補正した場合が図9に示す例である。これによって消費電力が1600Wとなる。
【0079】
また第3の方法として、第1の方法と第2の方法とを組み合わせて、車室内熱負荷を350Wとし、「エバ温−目標エバ温」を15℃とする方法もある。
【0080】
図9に示す値は一例であり、定数は変更可能である。また車室内熱負荷、および「エバ温−目標エバ温」がパターン間の位置にある場合、最寄りの4つのパターンからコンプレッサ電力を求めてもよい。また図9に示す「エバ温−目標エバ温」の代わりにコンプレッサ回転数を用いてもよい。
【0081】
第2の方法の「内気温、外気温、日射量、湿度あるいは車室内熱負荷算出に用いる補正係数」の代わりに、車室内熱負荷が小さくなるよう認識させるために「内気温、外気温、日射量、湿度の値自体をシフト(例えば内気温ならば10℃シフト。入力パラメータ毎に異なる)」させてもよい。
【0082】
このようにコンプレッサ電力を2割削減したが、他の車両用空調装置10で電力を消費する構成要素、たとえば風量制御、電動ファン制御およびPTC制御も同様に電力削減の制御を行う。たとえば風量制御(ブロワ)は、設定温度および車室内熱負荷を補正し、電動ファン制御とPTC制御は、冷媒圧力、車速、エバ温、外気温、内気温、風量およびA/Mドア開度のいずれかもしくは幾つかを組み合わせてなるパラメータを用いて制御する。
【0083】
次に、本実施の形態の空調制御と、従来技術の空調制御とを比較したSOCの変化についてグラフを用いて説明する。図10は、本実施の形態のSOCおよび空調消費電力と走行位置との関係を示すグラフである。図11は、従来技術のSOCおよび空調消費電力と走行位置との関係を示すグラフである。図12は、本実施の形態の空調負荷制御の一例を示すグラフである。図10および図11では、空調がOFFで走行した場合のSOCの波形の始点および終点を黒丸で示し、空調がONで走行した場合のSOCの波形の終点をバツ印で示す。また図10では、本実施の形態の補正後空調制御の波形の始点および終点を三角印で示す。
【0084】
図10に示すように、空調ONで補正後空調制御をしないまま走行すると、破線で示すように、地点p11で走行可能な電力下限値の30%を下回る。また空調OFFで走行すると、目的地に到着した地点p12で、SOCは約50%ある。したがってSOCの20%程度を走行以外の電力消費、たとえば空調に用いることができる。そこで前述したように補正後空調制御を実施すると、地点p12で三角を用いて示すように30%を下回ることなく、空調ON時の空調利用分のグラフで示すように、空調を停止することなく目的地に到着することができる。
【0085】
これに対して図11に示すように、従来技術では前述したように空調ONでは目的地に到着することができないので、予め定める制限しきい値に到達した地点p21で空調を制限している。またさらに予め定める停止しきい値に到着した地点p22では、空調を停止している。これによって空調ON時の空調利用分のグラフで示すように、地点p22以降の消費電力はない。したがって乗員に不快感を与えることになる。
【0086】
図12に示すように、従来技術では一点鎖線で示すように段階的に空調の消費電力を制限しているが、本実施の形態では実線で示すように空調負荷を一定に制限して快適性を確保しつつ、目的地に到着できるように制御している。
【0087】
以上説明したように本実施の形態の車両用空調装置10は、現在の車室内外の熱負荷情報に基づき目的地までにかかる総空調負荷を算出し、かつ現在のSOCとの大小関係を比較して、空調のエネルギーマネジメントする車両用空調装置10である。具体的には、空調制御手段として機能するエアコンECU32は、走行用電力量と空調用電力量とを合計した合計電力量よりも残蓄電量であるSOCが小さい場合には、消費可能電力量と空調要求とに基づいて、目的地まで空調が停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限した制限空調負荷を算出し、算出した制限空調負荷に基づいて空調制御(補正後空調制御)を実施する。何ら制限せずに空調要求を満足するように空調制御を実施すると、目的地に到着する前に走行するための残蓄電量がなくなってしまい、電動機12を駆動できなくなる。また消費電力を小さくするために、単に空調を停止することも考えられるが、乗員に目的地まで不快感を与えるという問題がある。これに対して本実施の形態では、空調を停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限して、空調制御を行う。たとえば、空調能力を空調要求に対して2割減少させた制限空調負荷で空調制御をしたら、目的地まで継続して空調を実施することができ、かつ目的地まで走行できる場合には、制御空調負荷に基づく空調制御によって、乗員に与える不快感を抑制しつつ、目的地まで到着することができる。これによって空調を停止する場合に比べて、乗員に与える不快感を低減しつつ、目的地に到着することが可能な車両用空調装置10を実現することができる。
【0088】
また本実施の形態では、空調負荷記憶手段である空調負荷DB36には、予め設定された複数の環境条件における空調負荷の経時変化が記憶される。環境条件は、たとえば外気温、内気温、湿度および日射量などである。エアコンECU32は、空調負荷DB36に記憶されている複数の環境条件から現在の環境条件に対応する情報を抽出することによって、制限空調負荷を算出する。これによってエアコンECU32は、制限空調負荷を算出するために複雑な演算式を用いることなく、単に空調負荷DB36から情報を抽出するだけでよいので、演算負荷を低減することができる。これによって処理の高速化をすることができる。
【0089】
さらに本実施の形態では、空調用電力量算出手段として機能するエアコンECU32は、現在地から目的地までの経路における天気予測情報を用いて空調用電力量を算出する。天気予測情報を用いるので、たとえば気温の変化および日射量の変化を考慮して、空調用電力量を算出することができる。したがって目的地に到着するまでの空調用電力量の精度を向上することができる。
【0090】
また本実施の形態では、走行用電力量取得手段として機能するエアコンECU32は、主機ECU24が交通情報を用いて算出した値である。交通情報は、たとえば混雑状況および交通規制などである。混雑して渋滞している道路などが経路上にある場合と、道路が混雑していない場合とでは、走行用電力量が異なる。このような走行用電力量に影響を与える交通情報を用いて算出されるので、走行用電力量の精度を向上することができる。これによって空調に使用可能な電力量の予測精度も向上するので、より快適な車室内環境を提供することができる。
【0091】
さらに本実施の形態では、天気予測情報に基づいて目的地までに天気が変化する場合には、現在地から目的地までの各地点における空調に用いられる電力量の変化が天気の変化に伴って急激に変化せず段階的に変化させるように補正する補正値を用いて、空調用電力量を算出する。これによって急に制御状態を切り替える場合に比べた場合の空調用電力量ではなく、ユーザに与える違和感を小さした空調用電力量を用いることができる。これによって実際の空調制御においても、ユーザに与える違和感を小さくする制御をすることができる。
【0092】
また本実施の形態では、補正値は、移行期間内の予め設定される時間が時定数となるように補正した値である。したがって滑らかに制御状態を変化したときの補正値を用いることができる。これによって実施の空調制御においても、ユーザに与える違和感をより小さくすることができる。たとえばまた走行中に日射量が大きく変わる場合は、始動時から日射量が大の走行シーンのときと比べて、車室内の熱負荷は小さいことから、そのまま空調負荷DB36を切替えると車室内が必要以上に冷えてしまう。したがって実際の制御において、日射量が切替る時点から空調負荷の変化量に時定数処理を施しながら、空調負荷を抑制することで快適な空調を享受でき且つ走行距離も維持することができる。このような時定数処理をしたことを想定して補正するので、実際の制御に近い制御を想定して、空調用電力量を演算することができる。
【0093】
さらに本実施の形態では、制限空調負荷に基づく空調制御を実施の許可または実施の拒否のいずれかを選択するための入力手段である電マネオートスイッチを含むので、ユーザは電マネオートスイッチによって制限空調負荷を許可するか否かを選択することができる。これによって利便性を向上することができる。換言すると、電マネオートスイッチを設けることで、目的地まで乗員は空調負荷を制限しながら走行するか、従来のように一定時間の間は通常の空調制御にして一定時間経過後は空調OFF状態を強いられながら走行するのか、選択することができる。
【0094】
このように本実施の形態の車両用空調装置10では、設定温度および熱負荷に基づく空調負荷DB36を持たせ、エアコンECU32とエアコンECU32以外のSOCを取り込むことにより、全走行過程の空調に関るエネルギーマネジメントが可能となる。また乗車時点から目的地までの総空調負荷を算出することにより、ユーザは全走行過程において不快感を抑えた空調を享受することができる。さらに進行方向の天気予報情報を取り込むことにより、より精度の良く空調に関るエネルギーマネジメントができ、またユーザの不快感を抑えた空調を提供することができる。
【0095】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図13を用いて説明する。図13は、第2実施形態の空調負荷の変化パターンの一例を示すグラフである。本実施の形態では、移行期間における空調負荷パターンの移行方法が前述の第1実施形態と異なる。
【0096】
図13は、天候予測情報によって、時刻t131に日射量が小から大へと移行する場合の空調負荷の変化パターンである。図13にて時刻t131まで実線で示し、時刻t131から破線で示す波形が、日射量が小のときに空調負荷のパターンである。また時刻t132まで一点鎖線で示し、時刻t132から実線で示す波形が、日射量が大(他のパラメータは同一)のときの空調負荷のパターンである。時刻t131にて日射量が小から大へと移行するので、時刻t131にて空調負荷パターンを日射量が小のパターンから大のパターンへと変化させる必要がある。
【0097】
このような空調負荷パターンを切り替える場合、直ちに切り替えるのではなく、天気の変化の前後で空調負荷パターンが変化する場合には、天気の変化の前後で空調負荷パターンを段階的に切替えるための移行期間を設ける。図13では、時刻t131〜時刻t132までが移行期間となる。このような移行期間では、段階的に徐々に日射量が大の空調負荷パターンに移行するよう空調負荷を変化させる。具体的には、空調負荷パターンを切替える際、空調負荷の変化量に対して時定数処理を施す代わりに、一定の傾き(たとえば100W/分)で、空調負荷を増加させる処理を施す。
【0098】
これによって急に制御状態を切り替える場合に比べて、ユーザに与える違和感を小さくすることができる。
【0099】
また空調負荷パターンを切替える際、空調負荷の変化量に対して移行期間を設けるのでなく、設定温度に対する日射または内気温の変化量に対して移行期間を設けて、空調負荷パターンを切り替えるように制御してもよい。これによって同様の作用および効果を達成することができる。
【0100】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0101】
前述の第1実施形態では、補正空調制御の制御対象は、コンプレッサ101、電動ファン35、PTCヒータなどであったが、このような制御対象に限るものではなく、車両用空調装置10を構成する他の電力消費要素、たとえばシート空調(ヒータ)およびステアリングヒータなどであってもよい。またシート空調(ヒータ)およびステアリングヒータを制御対象とする場合には、補正制御するための入力パラメータとして、内気温、外気温、日射量および湿度あるいはそれらの幾つかを組み合わせてなる入力パラメータが用いられる。
【0102】
また前述の第1実施形態では、空調負荷DB36を用いて空調負荷を算出しているが、空調負荷DB36を用いる算出方法に限るものではなく、空調負荷DB36の代わりに現在の空調負荷と走行距離(走行時間)とをかけ合わせてなる総空調負荷量を用いて空調のエネルギーマネジメントを行ってもよい。またSOCに応じて、総空調負荷量の1/2がけ、または1/3がけと調節して空調のエネルギーマネジメントを行ってもよい。また空調負荷DB36の代わりに現在の空調負荷をSOCに応じて1/2がけ、1/3がけと調節した値を用いて空調のエネルギーマネジメントを行ってもよい。
【0103】
また前述の第1実施形態では、図5に示すフローを短時間に繰返し実行するように制御しているが、このような制御に限るものではなく、目的地が設定されたときに1度だけ設定するようにしてもよく、操作パネル33が操作されて空調要求がユーザに変更されたときに実行してもよく、ユーザの操作パネル33を操作することによって実行してもよい。
【0104】
また前述の第1実施形態では、ナビゲーション装置と通信することによって、目的地情報などを取得する構成であるが、このような構成に限るものではなく、ナビゲーション装置と一体(操作パネル33が同一)であってもよい。
【0105】
また前述の第1実施形態では、目的地は特に限定していないが、目的地は充電スタンドなどの充電設備を有する地点であってもよく、またSOCに基づいて目的地まで走行できない場合には、目的地までの経路上にある充電スタンドを目的地に設定し、目的地(充電設備のある地点)までの本実施の形態の制御を実行するように構成してもよい。
【0106】
また前述の第1実施形態では、情報の出力に関しては、特に限定していないが、空調制御を補正後空調制御に切り替えるときに、乗員に音声または画像で情報を出力するように構成してもよい。これによって補正後空調制御をするか否かを乗員が選択することができるので、利便性が向上する。
【0107】
また前述の第1実施形態において、補正後空調制御にて空調負荷を低減する際、コンプレッサ101など全ての空調部品の電力を一律低減させるのではなく、部品毎に優先順位をつけて低減させるように制御してもよい。たとえばコンプレッサ電力50%低減⇒ブロワ電力50%低減⇒電動ファン電力50%低減⇒シート空調電力50%低減⇒ステアリングヒータ電力50%低減⇒コンプレッサ電力70%低減・・・と予め定める優先順位に従って順次低減するように制御してもよい。
【符号の説明】
【0108】
10…車両用空調装置
11…電動車両(車両)
12…電動機
13…バッテリプラント
14…車両用モータ装置
30…エアコン機器プラント
31…エアコン通信部(現在地情報取得手段、目的地情報取得手段、走行用電力取得手段、天気予測情報取得手段)
32…エアコンECU(残蓄電量取得手段、空調用電力算出手段、空調制御手段)
33…操作パネル(入力手段)
36…空調負荷データベース(空調負荷記憶手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行の駆動源として電動機を用いる車両に備えられている車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、電動機(モータ)を走行の駆動源として用いる電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)等の電動車両がある。これらの電動車両においては、モータへの電力供給を行うバッテリの残蓄電量が低下した場合に、このバッテリに充電を行う必要がある。また、近年では、バッテリの残蓄電量が尽きて電動車両が走行不能になる前にバッテリの充電を行うことができるよう、ユーザを補助する技術が提案されてきている。
【0003】
また電動車両のバッテリは、モータに電力を供給するだけでなく、車両用空調装置にも電力を供給している。したがってバッテリの電力をどのようにマネージメントするかが重要となっている。従来の車両電力マネージメントは、式1のように現在の電力エネルギーを算出し、現在の電力エネルギーに応じて車両の各構成機器の負荷を制御している。
【0004】
【数1】
ここで、Er:現在の電力エネルギー(kW・h)、E0:満充電時の電力エネルギー(kW・h)、SOC(state of charge):現在のバッテリ残容量(%)、 80:充電できる電力の上限値(%)、30:走行可能な電力下限値(%)である。充電できる電力の上限値の80%、および走行可能な電力下限値の30%は、一例である。走行などすると電力を消費するので、SOCが減っていき、Erも減っていくことになる。
【0005】
特許文献1に記載の従来技術では、車両用空調装置における除霜制御をバッテリに充填中のときに実施することによって、走行中の除霜による電力消費を低減する構成が開示されている。
【0006】
図14は、従来技術における電気自動車の空調負荷制御の一例を示すグラフである。図14の縦軸は、空調電力負荷を示し、横軸は時間を示す。電気自動車が走行中であると、バッテリ残容量が徐々に低下していき、時刻t01にて、バッテリ残容量が予め定める空調を制限するためのしきい値を下回ったので、空調を強制的に制限するように制御している。これによって車両用空調装置の消費電力を少なくして、目的地に到達するまでにバッテリ切れにならないようにしている。さらに走行して時間が経過し、時刻t02にて、バッテリ残容量が予め定める空調を停止するためのしきい値を下回ったので、空調を強制的に停止するように制御している。これによって車両用空調装置の消費電力を無しにして、走行のために電力を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−20239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、車両としては走行距離を延ばすために、図14に示すように走行時間(走行距離)が長くなるにつれて、現在の電力エネルギー(バッテリ残容量)に基づいて車両用空調装置の空調電力負荷を制限または停止してしいる。したがって乗員には、空調が使えないことによる不快感を与えてしまうという問題がある。
【0009】
また空調電力負荷を制限しているが、制限する値(割合)は目的地に到着したときのバッテリ残容量とは全く関係無く、現在のバッテリ残容量が予め定めるしきい値を下回ったら一律に制限している。そうすると目的地に到着してもバッテリ残容量が多く残っている場合もあり、空調制限した制御による利便性が低いという問題もある。
【0010】
そこで、本発明は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、空調使用による電力不足によって車両が停止することを抑制し、かつ乗員に与える不快感を低減することができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0012】
請求項1に記載の発明では、走行の駆動源として電動機(12)を用いる車両(11)に備えられる車両用空調装置(10)であって、
車両の現在地を示す現在地情報を取得する現在地情報取得手段(31)と、
車両の目的地を示す目的地情報を取得する目的地情報取得手段(31)と、
車両の空調要求を取得する空調要求取得手段(33)と、
電動機に電力を供給する走行用バッテリにおける残蓄電量を示す残蓄電量情報を取得する残蓄電量情報取得手段(32)と、
車両が目的地に到達するまでの走行に要する電力量を示す走行用電力量を取得する走行用電力量取得手段(31)と、
現在地情報取得手段によって取得された現在地情報と目的地情報取得手段によって取得された目的地情報と空調要求取得手段によって取得された空調要求とに基づいて、車両が目的地に到達するまでの車室内の空調に要する電力量を示す空調用電力量を算出する空調用電力量算出手段(32)と、
空調要求取得手段によって取得された空調要求を満足するように車室内の空調制御を実施する空調制御手段(32)と、を含み、
空調制御手段は、残蓄電量情報取得手段によって取得された現在地における残蓄電量情報が示す残蓄電量が、走行用電力量取得手段によって取得された走行用電力量と空調用電力量算出手段によって算出された空調用電力量とを合計した合計電力量よりも小さい場合には、残蓄電量から走行用電力量を減じた消費可能電力量を算出し、算出された消費可能電力量と空調要求とに基づいて、目的地まで空調が停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限した制限空調負荷を算出し、算出した制限空調負荷に基づいて空調制御を実施することを特徴とするである。
【0013】
請求項1に記載の発明に従えば、現在地情報と目的地情報と空調要求とに基づいて、車両が目的地に到達するまでの空調用電力量が、空調用電力算出手段によって算出される。従来技術では、空調用電力量などは算出されることなく、現時点における残蓄電量だけを監視して空調能力を制限している。これに対して本発明では、空調制御手段は、走行用電力量と空調用電力量とを合計した合計電力量よりも残蓄電量が小さい場合には、消費可能電力量と空調要求とに基づいて、目的地まで空調が停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限した制限空調負荷を算出し、算出した制限空調負荷に基づいて空調制御を実施する。何ら制限せずに空調要求を満足するように空調制御を実施すると、目的地に到着する前に走行するための残蓄電量がなくなってしまい、電動機を駆動できなくなる場合がある。また消費電力を小さくするために、単に空調を停止することも考えられるが、乗員に目的地まで不快感を与えるという問題がある。これに対して本発明では、空調に使用可能な消費可能電力量が算出されるので、消費可能電力量に基づいて、空調を停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限して、空調制御を行うことができる。したがって目的地に到着するまで、消費可能な電力を最大限に活用することができる。たとえば、空調能力を空調要求に対して2割減少させた制限空調負荷で空調制御をしたら、目的地まで継続して空調を実施することができ、かつ目的地まで走行できる場合には、制御空調負荷に基づく空調制御によって、乗員に与える不快感を抑制しつつ、目的地まで到着することができる。これによって空調を停止する場合に比べて、乗員に与える不快感を低減しつつ、目的地に到着することが可能な車両用空調装置を実現することができる。
【0014】
また請求項2に記載の発明では、予め設定された複数の環境条件における空調負荷の経時変化が記憶された空調負荷記憶手段(36)をさらに含み、
空調用電力算出手段は、空調負荷記憶手段に記憶されている複数の環境条件から現在の環境条件に対応する情報を抽出し、抽出した情報を用いて空調用電力量を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明に従えば、空調負荷記憶手段には、予め設定された複数の環境条件における空調負荷の経時変化が記憶される。環境条件は、たとえば外気温、内気温、湿度および日射量などである。空調用電力算出手段は、空調負荷記憶手段に記憶されている複数の環境条件から現在の環境条件に対応する情報を抽出することによって、空調負荷を算出する。これによって空調用電力算出手段は、空調負荷を算出するために複雑な演算式を用いることなく、単に空調負荷記憶手段から情報を抽出するだけでよいので、演算負荷を低減することができる。これによって処理の高速化をすることができる。
【0016】
さらに請求項3に記載の発明では、天気予測を示す天気予測情報を取得する天気予測情報取得手段(31)をさらに含み、
空調用電力量算出手段は、現在地から目的地までの経路における天気予測情報を用いて空調用電力量を算出することを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明に従えば、空調用電力量算出手段は、現在地から目的地までの経路における天気予測情報を用いて空調用電力量を算出する。天気予測情報を用いるので、たとえば気温の変化および日射量の変化を考慮して、空調用電力量を算出することができる。したがって目的地に到着するまでの空調用電力量の精度を向上することができる。
【0018】
さらに請求項4に記載の発明では、走行用電力量取得手段によって取得される走行用電力量は、現在地から目的地までの経路における混雑状況を含む交通情報を用いて算出された値であることを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明に従えば、走行用電力量取得手段は、交通情報を用いて算出された値である。交通情報は、たとえば混雑状況および交通規制などである。混雑して渋滞している道路などが経路上にある場合と、道路が混雑していない場合とでは、走行用電力量が異なる。このような走行用電力量に影響を与える交通情報を用いて算出されるので、走行用電力量の精度を向上することができる。これによって空調に使用可能な電力量の予測精度も向上するので、より快適な車室内環境を提供することができる。
【0020】
さらに請求項5に記載の発明では、空調用電力量算出手段は、天気予測情報に基づいて目的地までに天気が変化する場合には、現在地から目的地までの各地点における空調に用いられる電力量の変化が天気の変化に伴って急激に変化せず段階的に変化させる移行期間によって補正する補正値を用いて、空調用電力量を算出することを特徴とする。
【0021】
請求項5に記載の発明に従えば、天気予測情報に基づいて目的地までに天気が変化する場合には、現在地から目的地までの各地点における空調に用いられる電力量の変化が天気の変化に伴って急激に変化せず段階的に変化させるように補正する補正値を用いて、空調用電力量を算出する。これによって急に制御状態を切り替える場合に比べた場合の空調用電力量ではなく、ユーザに与える違和感を小さした空調用電力量を用いることができる。これによって実際の空調制御においても、ユーザに与える違和感を小さくする制御をすることができる。
【0022】
さらに請求項6に記載の発明では、補正値は、移行期間内の予め設定される時間が時定数となるように補正した値であることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の発明に従えば、補正値は、移行期間内の予め設定される時間が時定数となるように補正した値である。したがって滑らかに制御状態を変化したときの補正値を用いることができる。これによって実施の空調制御においても、ユーザに与える違和感をより小さくすることができる。
【0024】
さらに請求項7に記載の発明では、制限空調負荷に基づく空調制御を実施の許可または実施の拒否のいずれかを選択するための入力手段(33)をさらに含み、
入力手段によって、制限空調負荷に基づく空調制御を実施の許可が選択されている場合には、残蓄電量が合計電力量よりも小さいとき、制限空調負荷に基づく空調制御を実施し、
入力手段によって、制限空調負荷に基づく空調制御を実施の拒否が選択されている場合には、残蓄電量が合計電力量よりも小さいとき、空調要求を満足する空調制御を実施することを特徴とする。
【0025】
請求項7に記載の発明に従えば、制限空調負荷に基づく空調制御を実施の許可または実施の拒否のいずれかを選択するための入力手段を含むので、ユーザは入力手段によって制限空調負荷を許可するか否かを選択することができる。これによって利便性を向上することができる。
【0026】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】電力供給システム100の電気的構成を簡略化して示すブロック図である。
【図2】電力供給システム100を示す概念図である。
【図3】走行用電力量を算出に用いられる案内経路情報を示す図である。
【図4】走行位置と高度との関係を示すグラフである。
【図5】空調制御のメインルーチンを示したフローチャートである。
【図6】エアコンECU32に記憶される空調負荷DBを示す図である。
【図7】空調負荷の変化パターンの一例を示すグラフである。
【図8】SOCの変化スケジュールの一例を示すグラフである。
【図9】車室内熱負荷とエバ温と目標エバ音との差との関係を示す図である。
【図10】SOCおよび空調消費電力と走行位置との関係を示すグラフである。
【図11】従来のSOCおよび空調消費電力と走行位置との関係を示すグラフである。
【図12】本実施の形態の空調負荷制御の一例を示すグラフである。
【図13】第2実施形態の空調負荷の変化パターンの一例を示すグラフである。
【図14】従来技術における電気自動車の空調負荷制御の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0029】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に関して、図1〜図12を用いて説明する。図1は、第1実施形態の車両用空調装置10を含む電力供給システム100の電気的構成を簡略化して示すブロック図である。図2は、電力供給システム100を示す概念図である。車両用空調装置10は、電動車両11に搭載される。電動車両11とは、電動機12(モータ)のみを走行の駆動源として用いる電気自動車(EV)のことである。電動車両11に搭載される電力供給システム100は、電力の供給源であるバッテリプラント13、車室内の空調を行う車両用空調装置10、および車両の走行用駆動源である車両用モータ装置14を含んで構成される。電力供給システム100は、バッテリプラント13を構成するバッテリ13aの電力を各構成要素に供給するシステムである。
【0030】
先ず、バッテリプラント13に関して説明する。バッテリプラント13は、バッテリ13a、電源制御装置(図示せず)、各種センサ(図示せず)および充電装置(図示せず)を含んで構成される。バッテリ13aは、車両用モータ装置14、室内ユニットの各部および車両用空調装置10の構成部品に電力を供給する。バッテリ13aは、充電可能であり、たとえばニッケル水素蓄電池等が用いられる。充電装置は、車室内空調および走行等によって消費した電力をバッテリ13aに充電するための装置である。充電装置は、電力供給源としての電気スタンドや商業用電源に接続されるコンセントを備えており、このコンセントに電源供給源を接続することにより、バッテリ13aの充電が行われる。
【0031】
各種センサは、たとえばバッテリ13aの電流を検出するバッテリ電流センサ、バッテリ13aの温度を検出する温度センサ、バッテリ13aの電圧を検出するバッテリ電圧センサなどである。各種センサは、検出した情報をセンサ信号として電源制御装置に与える。
【0032】
電源制御装置は、バッテリ13aの入出力電流、バッテリ温度、バッテリ電圧を受け取ってバッテリ13aの状態(残蓄電量)を監視する。電源制御装置は、バッテリ13aの状態に関する情報をバッテリ信号として車両用空調装置10および車両用モータ装置14に与える。
【0033】
次に、車両用モータ装置14に関して説明する。車両用モータ装置14は、主機モータプラント20、主機通信部21、ナビ情報取得部22、走行用センサ群23、および主機電子制御装置24(Electronic Control Unit:略称ECU)を含んで構成される。主機モータプラント20は、モータ12とインバータ(図示せず)とを含んで構成される。モータ12は、電動車両11の走行駆動源として用いられるものである。モータ12は、バッテリ13aから与えられた電気エネルギー(つまり、電力)を回転エネルギー(駆動力)に変換する。インバータは、電力変換器の一種である。インバータは、主機ECU24およびバッテリ13aと電気的に接続され、主機ECU24によって制御される。主機ECU24は、バッテリ13aの放電出力(直流)をモータ12に適する電力形式(三相交流)に変換するようにインバータを制御する。したがってバッテリ13aの放電出力はインバータを介してモータ12に供給されている。
【0034】
ナビ情報取得部22は、電動車両11に搭載される車載ナビゲーション装置40から情報を取得する。ナビ情報取得部22で車載ナビゲーション装置40から取得する情報としては、たとえば現在位置情報、出発地情報、目的地情報、地図データ、施設情報、案内経路情報、通行候補経路情報および天気予測情報などがある。ナビ情報取得部22は、取得した情報をナビ信号として主機ECU24に与える。
【0035】
現在位置情報は、電動車両11の現在位置の情報であって、車載ナビゲーション装置40を構成する地磁気センサ、ジャイロスコープ、車速センサおよびGPS受信機等からなる位置検出手段で検出されたものである。また出発地情報および目的地情報は、車載ナビゲーション装置40において電動車両11の出発地および目的地として入力された場所の座標等の情報である。
【0036】
地図データは、道路を示すリンクデータとノードデータとが含まれる情報である。リンクとは、地図上の各道路を交差・分岐・合流する点等の複数のノードにて分割したときのノード間を結ぶものであり、各リンクを接続することにより道路が構成される。リンクデータは、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンク旅行時間、リンク方向、リンク方位、リンクの始端および終端ノード座標(緯度・経度)、道路名称、道路種別、道路幅員、車線数、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、ならびに制限速度等の各データから構成される。ノードデータは、地図上の各道路が交差、合流、分岐するノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、および交差点種類等の各データから構成される。また施設情報は、各種施設の種類、名称、住所、配置場所の座標等の情報である。
【0037】
案内経路情報は、車載ナビゲーション装置40において、検出された現在地または入力された出発地および目的地をもとに、電動車両11が通行し得る経路の中から、距離優先、時間優先等の予め設定された条件を満たす適切な現在地から目的地まで移動経路、または出発地から目的地までの移動経路を公知のダイクストラ法を用いて探索した結果として得られた案内経路の情報である。また、通行候補経路情報は、上述の電動車両11が通行し得る経路の情報である。
【0038】
天気予測情報は、現在の天気情報および天気予測情報を含む情報であって、案内経路上にある所定の区域毎の天候、雨雲の状態、気温、紫外線量の情報、日射量および日射方位の情報などを含む情報である。
【0039】
主機通信部21は、車両用空調装置10を構成するエアコン通信部31と電気的に接続され、エアコン通信部31と通信する。主機通信部21は、受信した信号を主機ECU24に与え、主機ECU24から与えられる信号を、エアコン通信部31に送信する。主機通信部21とエアコン通信部31とが送受信する情報(信号)は、たとえば主機モータプラント20の消費電力や、天気予測情報などである。
【0040】
走行用センサ群23は、車両の走行状態を検出する検出手段であり、検出した情報をセンサ信号として主機ECU24に与える。走行用センサ群23は、たとえば車速を検出する車速センサ、操舵角を検出する操舵センサ、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ、ブレーキペダルのオン/オフを検出するブレーキセンサなどである。
【0041】
主機ECU24は、走行用センサ群23から与えられるセンサ信号に基づいて、車速、操舵角、アクセルペダルの踏み込み量およびブレーキのオン/オフを把握している。主機ECU24は、車速、操舵角、アクセルペダルの踏み込み量およびブレーキのオン/オフに基づいて、主機モータプラント20を制御する。主機ECU24は、走行用センサ群23から与えられるセンサ信号に基づいて、主機モータプラント20のトルク制御を実行する。主機ECU24は、たとえばアクセルペダルの踏み込み量が大きくなるほど車輪のトルクが大きくなるようにトルク指令を算出する。主機ECU24は、算出したトルク指令に応じてインバータを制御することにより、トルク指令に相当するトルクをモータ12から出力させる。
【0042】
また主機ECU24は、マイクロコンピュータを主体として構成され、ナビ情報取得部22から入力された各種情報に基づき、各種の制御プログラムを実行することで各種の処理、たとえば走行用電力量算出処理(「SOCスケジュール処理」ともいう)を実行するものである。
【0043】
主機ECU24は、定期的に目的地に到着するまでのSOC変化のスケジュールを算出するSOCスケジュール処理を行う。SOCは、現在のバッテリ13aの残容量のことである。SOC変化スケジュールは、目的地までの走行によって消費するSOCの変化予測のことである。主機ECU24は、ナビ情報から、現在地から目的地までの案内経路、案内経路上の渋滞状況、および案内経路上の交通情報に基づき主機モータプラント20の制御予測を行うことで目的地までの空調以外で消費するSOCの変化を算出する。主機ECU24は、SOCスケジュール処理で算出した結果を、主機通信部21を介して車両用空調装置10に送信する。
【0044】
具体的には、走行用電力量算出処理では、現在地と目的地とに基づいて、目的地に到達するまでの走行に要する電力量を示す走行用電力量を算出する処理である。走行用電力量算出処理では、先ず、ナビ情報取得部22で取得した現在地情報および目的地情報をもとに、電動車両11が現在地から目的地に到達するまでの案内経路の情報(つまり、案内経路情報)を得る。次に、案内経路情報をもとに、電動車両11が現在地から目的地に到達するまでの走行に要する電力量である走行用電力量を算出する。
【0045】
図3は、走行用電力量を算出に用いられる案内経路情報を示す図である。図4は、走行用電力量を算出に用いられる走行位置と高度との関係を示すグラフである。案内経路情報をもとに走行用電力量を算出する方法としては、たとえば予め一定の距離あたりの走行用バッテリ13aの平均電力消費量の情報を主機ECU24で保持しておくとともに、ナビ情報取得部22で取得した地図データをもとに案内経路上の各リンク長を足し合わせて案内経路の距離を求め、案内経路の距離と上述の平均電力消費量とをもとに走行用電力量を算出する方法がある。また、たとえばナビ情報取得部22で取得した地図データをもとに案内経路上の各リンクに対応付けられた制限速度を得て、この制限速度をもとに案内経路上の各リンクでの走行用バッテリ13aの電力消費量をそれぞれ算出し、算出した各リンクでの電力消費量を足し合わせることによって走行用電力量を算出する構成としてもよい。
【0046】
図3に示すように、案内経路上に渋滞区間および郊外道を示す交通情報がある場合には、これらの交通情報を考慮して走行用電力量を算出することが好ましい。具体的には、渋滞区間であるとアクセルおよびブレーキの操作頻度が渋滞でない場合に比べて多くなるので、このような情報に基づいて走行用電力量が多くなる方向へ補正する。また案内経路上に郊外道がある場合には、市街地よりも信号などが少なく、比較的スムーズに走行することができるので、アクセルおよびブレーキの操作頻度が少なくなる。このような情報に基づいて走行用電力量が少なくなる方向へ補正する。これによって走行用電力量の精度を向上することができる。
【0047】
また図4に示すように、走行位置と高度との関係を示す道路情報を考慮して走行用電力量を算出することが好ましい。走行位置と高度によって、案内経路上の登り坂の区間および下り坂の区間などが既知である。登り坂の区間においては、アクセルの操作頻度が多くなるので、走行用電力量が多くなる方向へ補正する。また下り坂の区間においては、ブレーキの操作頻度が多くなるので、走行用電力量が少なくなる方向へ補正する。これによって走行用電力量の精度を向上することができる。
【0048】
次に車両用空調装置10に関して説明する。車両用空調装置10は、エアコン機器プラント30、エアコンECU32、操作パネル33、空調用センサ群34、主機通信部21と通信するエアコン通信部31、および空調負荷データベース(DB)36を含んで構成される。エアコン機器プラント30は、車室内を空調するための空調用部品である。エアコン機器プラント30は、蒸気圧縮式冷凍サイクル(図示せず)と、蒸気圧縮式冷凍サイクルを用いて冷房を行う室内ユニット(図示せず)とを含む。蒸気圧縮式冷凍サイクルは、電動圧縮機(コンプレッサ)101と、電動圧縮機101の吐出口より吐出された冷媒が流入する凝縮器と、凝縮液化された冷媒を気液分離し下流に供給するレシーバと、液冷媒を減圧膨張させる膨張弁等の減圧装置と、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させる蒸発器とを備えており、これらを環状に接続して構成されている。凝縮器は、車室外(例えば、走行風を受け易い場所)に設置されて、内部を流れる冷媒と電動ファン35によって送風される外気とを熱交換する。
【0049】
操作パネル33には、電動圧縮機101の起動および停止を命令するためのエアコンスイッチ、吸込口モードを切り替えるための吸込口切替スイッチ、車室内温度を設定するための温度設定スイッチ、ブロワ(送風機)による車室内への送風量を切り替えるための風量切替スイッチ、吹出口モードを切り替えるための吹出口切替スイッチ等が設けられている。操作パネル33によって入力された操作信号は、エアコンECU32に与えられる。したがって操作パネル33は、電動車両11の空調要求を取得する空調要求取得手段として機能する。
【0050】
空調用センサ群34は、空調に用いられる各種の情報を検出する検出手段であり、検出した情報をセンサ信号としてエアコンECU32に与える。空調用センサ群34は、たとえば車室内の空気温度を検出する内気温センサ、車室外の外気温度を検出する外気温センサ、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ、蒸気圧縮式冷凍サイクルの冷却用熱交換器を構成する蒸発器を通過した直後の空気温度(エバ温)を検出する蒸発器吹出空気温度センサ、室内ユニット内部の送風空気を加熱するヒータへの冷却水温度を検出する水温センサ、乗員がシートに着座しているか否かを検出することができる着座センサ等である。
【0051】
エアコン通信部31は、主機通信部21と通信することによって、ナビ情報取得部22が取得した情報を取得する。したがってエアコン通信部31は、電動車両11の現在地を示す現在地情報を取得する現在地情報取得手段、および電動車両11の目的地を示す目的地情報を取得する目的地情報取得手段、天気予測を示す天気予測情報を取得する天気予測情報取得手段として機能する。
【0052】
空調負荷データベース36は、空調負荷記憶手段であって、予め設定された複数の環境条件における空調負荷の経時変化が記憶されている。空調負荷データベース36には、たとえば予め設定される環境条件として内気温、外気温、日射量および湿度の4つのパラメータに基づいて、空調負荷の時間に対する変化が記憶されている。
【0053】
エアコンECU32は、室内ユニットの各部および蒸気圧縮式冷凍サイクルの構成部品であるコンプレッサ101等を自動制御可能な空調制御手段である。エアコンECU32は、図示は省略するが、マイクロコンピュータと、車室内前面に設けられた操作パネル33上の各種スイッチからの信号および空調用センサ群34からのセンサ信号や主機ECU24から送信される通信信号が入力される入力回路と、各種アクチュエータに出力信号を送る出力回路と、を備えている。マイクロコンピュータは、ROM(読み込み専用記憶装置)、RAM(読み込み書き込み可能記憶装置)等のメモリおよびCPU(中央演算装置)等から構成されており、操作パネル33等から送信された運転命令に基づいた演算に使用される各種プログラムを有している。マイクロコンピュータから出力された信号は、出力回路によってD/A変換、増幅等された後に、吹出口切替ドア、内外気切替ドア、エアミックスドア(A/Mドア)、ブロワ、コンプレッサ101のそれぞれを駆動する各種アクチュエータに駆動信号として出力される。
【0054】
またエアコンECU32は、バッテリプラント13と電気的に接続され、バッテリ13aのSOCを示す残蓄電量情報(バッテリ信号)を取得する残蓄電量情報取得手段としての機能も有する。
【0055】
次に、エアコンECU32による空調制御処理について図5〜図12を用いて説明する。図5は、エアコンECU32による空調制御のメインルーチンを示したフローチャートである。エアコンECU32は、図5に示すフローチャートを電力が供給されている電力供給状態、目的地情報を与えられると短時間に繰返し実行する。したがってエアコンECU32は、目的地がセット(再セットも含む)されると、図5に示すフローを実行する。
【0056】
エアコンECU32は、図5に示すメインルーチンにしたがって空調制御処理の実行を開始すると、ROM、RAMなどのメモリに記憶された制御プログラムがスタートしてRAMに記憶されるデータなどを初期化し、ステップ1に移る。
【0057】
ステップ1では、現在の車内外の熱負荷状態、および乗員による空調設定状態を取得し、ステップ2に移る。具体的には、エアコンECU32は、内気温センサ、外気温センサ、日射センサ、蒸発器吹出空気温度センサ、および水温センサからの信号を読み込み、内気温、外気温、車内湿度、車外湿度および日射量から車室内外の熱負荷状態を算出する。またエアコンECU32は、操作パネル33から設定温度、設定風量、設定吹出モードなどの空調設定状態を取得する。
【0058】
ステップ2では、空調以外のSOC変化スケジュールを取得し、ステップ3に移る。エアコンECU32は、エアコン通信部31を介して、主機ECU24が実行したSOCスケジュール処理の結果を受信する。このように空調以外のSOC変化スケジュールを取得することにより、空調が消費してもよいSOCを算出することができる。
【0059】
ステップ3では、進行方向の天気予測情報を取得し、ステップ4に移る。天気予測情報は、エアコン通信部31を介して取得されるナビ情報に含まれる。これによって全走行区間における車室内外の空調負荷変動を予測することができる。
【0060】
ステップ4では、車両用空調装置10(エアコン)のSOC変化スケジュール算出し、ステップ5に移る。エアコンECU32は、現在の車内外熱負荷情報、乗員による空調操作、進行方向の天気予測情報に基づいて目的地までの空調が消費するSOCの変化を算出する。具体的な算出方法については、後述する。
【0061】
ステップ5では、エアコン(A/C)制御負荷制限が必要か否かを判断し、必要な場合にはステッ7に移り、必要ない場合には、ステップ6に移る。エアコン(A/C)制御負荷制限が必要か否かは、目的地までに車両全体が消費するSOC算出値が、走行可能な電力下限値(たとえば30%)を下回るかどうかで判定する。したがってステップ2およびステップ4で算出したSOCの変化スケジュールに基づいて、目的地まで走行可能か否かを判断する。換言すると、目的地まで走行可能なSOCを保てる場合は空調負荷を制限せず、走行可能なSOCを保てない場合は空調が消費するSOCを制限するための判別を行う。
【0062】
ステップ6では、算出したSOCスケジュールに沿って走行した場合、目的地まで走行可能であるので、現在の車内外熱負荷状態および乗員による空調操作に基づいて、空調制御を実行し、本フローを終了する。
【0063】
ステップ7では、算出したSOCスケジュールに沿って走行した場合、目的地まで走行することができないので、空調負荷を低減した制御を実施することを乗員が許可しているか否かを判断し、許可されている場合には、ステップ8に移り、許可されていない場合には、ステップ6に移る。許可されているか否かは、電力マネージメント(略称:電マネ)オートスイッチがオンであるか否かで判断される。電マネオートスイッチは、乗員によって操作されるスイッチであって、たとえば操作パネル33を操作することによってON/OFFの切替をすることができる。電マネオートスイッチがONである場合には、乗員が空調能力を制限して消費電力を低減することを許可していると判断し、ステップ8に移ることなる。電マネオートスイッチがOFFである場合には、乗員が空調能力を制限して消費電力を低減することを拒否している判断し、通常の空調制御を実施するようにステップ6に移ることになる。
【0064】
ステップ8では、空調負荷を低減した補正後空調制御を実行し、本フローを終了する。空調負荷を低減した制御とは、空調を停止することなく、通常の空調制御よりも空調によって消費される電力が少なくなるように、空調能力の一部を制限することである。
【0065】
このように図5に示すフローによって、エアコンECU32は、現在地における残蓄電量が、走行用電力量と空調用電力量とを合計した合計電力量よりも小さい場合には、目的地まで空調が停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限した空調制御を実施する。換言すると、空調を停止することによってSOCの不足分を一度に制限するのではなく、時間あたりに平均して空調能力を制限してSOCの不足分を補う。
【0066】
図5に示す処理は、エアコンECU32によって短時間に繰返し実行される。目的地情報は、目的地の再設定によって変更する可能せがある。また天気予測情報は、未来を予測する情報であるの刻一刻と変化する情報である。さらに交通情報も通勤ラッシュなどが発生する時間帯によって変化する情報である。したがって走行によって時間が経過し、たとえば目的地情報、天気予測情報および交通情報などが変更した場合であっても、繰返し図5に示すフローを実行するので、変更後の条件においてSOCが算出される。これによって空調負荷を制限すべきか否かを最新情報に基づいて判断することができる。
【0067】
次に、ステップ4におけるSOCスケジュールの算出方法に関して説明する。図6は、エアコンECU32に記憶される空調負荷データベース(DB)36を示す図である。図7は、空調負荷の変化パターンの一例を示すグラフである。図8は、SOCの変化スケジュールの一例を示すグラフである。
【0068】
空調負荷データベース36には、図6に示すように、たとえば予め設定される環境条件として内気温、外気温、日射量および湿度の4つのパラメータに基づいて、空調負荷の時間に対する変化が記憶されている。4つのパラメータは、それぞれ予め定めるしきい値によって、2つのパターンを有する。たとえば外気温が予め定めるしきい値よりも高い場合(高温の場合)の空調負荷の変化パターンと、高くない場合(低温の場合)の空調負荷の変化パターンである。
【0069】
エアコンECU32は、前述したようにステップ4にて、現在地情報と目的地情報と空調要求に基づいて、車両が目的地に到達するまでの車室内の空調に要する電力量を示す空調用電力量を算出する。エアコンECU32は、空調負荷データベース36に記憶されている複数のパラメータ、本実施の形態では4つのパラメータから現在の環境条件に対応する情報を抽出することによって、空調用電力量を算出する。したがってエアコンECU32は、空調負荷を算出するとき、外気温、内気温および湿度の各高低の各2パターン、日射量の大小の2パターンで合計すると2の4乗で16パターン(16個の環境条件)の中から、現在の環境条件に最も近いグラフを抽出する。また現在の環境条件が16パターン内にないときは、最も値が近い少なくとも2つのパターンから近似値を算出してもよい。これによって現在の環境条件から、空調負荷が算出される。
【0070】
次に、現在と進行方向の熱負荷情報である天気予測情報、たとえば外気温、日射量および車外湿度を取り込み、全走行工程の空調負荷パターンを決定する。図7は、天候予測情報によって、時刻t71に日射量が小から大へと移行する場合の空調負荷の変化パターンである。図7にて時刻t71まで実線で示し、時刻t71から破線で示す波形が、日射量が小のときに空調負荷のパターンである。また時刻t72まで一点鎖線で示し、時刻t72から実線で示す波形が、日射量が大(他のパラメータは同一)のときの空調負荷のパターンである。時刻t71にて日射量が小から大へと移行するので、時刻t71にて空調負荷パターンを日射量が小のパターンから大のパターンへと変化させる必要がある。
【0071】
このような空調負荷パターンを切り替える場合、直ちに切り替えるのではなく、天気の変化の前後で空調負荷パターンが変化する場合には、天気の変化の前後で空調負荷パターンを段階的に切替えるための移行期間を設ける。図7では、時刻t71〜時刻t72までが移行期間となる。このような移行期間では、段階的に徐々に日射量が大の空調負荷パターンに移行するよう空調負荷を変化させる。具体的には、移行期間内の予め設定される時間、たとえば120秒が時定数(63.2%)となるように切替のための制御をする。
【0072】
次に、図7に示した空調負荷からSOCスケジュールを算出する。空調負荷と消費電力とは比例関係にあるので、図7のようなグラフが決定すると、図8に示すSOCスケジュールのグラフが決定される。このSOCスケジュールについて、斜線を施した部分の面積を算出することによって、現在地から目的地に到着するまでの空調用電力量を算出することができる。これによってエアコンECU32は、天気予測情報に基づいて目的地までに天気が変化する場合には、現在地から目的地までの各地点における空調に用いられる電力量の変化が天気の変化に伴って急激に変化せず段階的に変化させる移行期間によって補正する補正値を用いて、空調用電力量を算出することことになる。さらに補正値は、移行期間内の予め設定される時間(120秒)が時定数となるように補正した値である。このように目的地までの時間(距離)情報、天気予測情報、および現在の熱負荷に基づく空調負荷DBを用いることによって、全走行区間における空調が必要とするSOCの変化を算出できる。
【0073】
次に、ステップ8における補正後空調制御に関して説明する。図9は、コンプレッサ電力(W)について、車室内熱負荷と蒸発器吹出空気温度センサによって検出される温度(エバ温)と目標エバ音との差との関係を示す図である。
【0074】
先ず、補正後空調制御は、次式(2)によって、算出される。
【0075】
【数2】
式(2)に示すように、目的地までの空調以外にかかるSOCを全てのSOCで除した割合で補正する。たとえば補正割合が0.8であると、次式(3)となる。
補正後空調制御 = 0.8 × (空調制御) …(3)
したがって2割減で空調制御すれば目的地までバッテリ13a切れになることを防ぐことができる。車両用空調装置10の消費電力を2割削減するために、たとえばコンプレッサ101の消費電力を削減する例に関して説明する。
【0076】
通常の空調制御で算出されるコンプレッサ電力値が2000Wの場合、その電力を1600W(=2000×0.8)に低減し制御する。
【0077】
たとえば第1の方法として、「エバ温−目標エバ温」を20℃ではなく10℃と認識させる。つまり図9に基づいて、
補正後目標エバ温=目標エバ温+10℃ …(4)
とし、目標エバ温の代わりに補正した補正後目標エバ温で制御に用いる。これによって図9に示すように、消費電力が1600Wとなる。
【0078】
また第2の方法として、図9に基づいて、車室内熱負荷を500Wではなく250Wと認識させる。コンプレッサ電力の算出に用いる補正係数、たとえば内気温、外気温、日射量、湿度あるいは車室内熱負荷のうち、車室内熱負荷を補正した場合が図9に示す例である。これによって消費電力が1600Wとなる。
【0079】
また第3の方法として、第1の方法と第2の方法とを組み合わせて、車室内熱負荷を350Wとし、「エバ温−目標エバ温」を15℃とする方法もある。
【0080】
図9に示す値は一例であり、定数は変更可能である。また車室内熱負荷、および「エバ温−目標エバ温」がパターン間の位置にある場合、最寄りの4つのパターンからコンプレッサ電力を求めてもよい。また図9に示す「エバ温−目標エバ温」の代わりにコンプレッサ回転数を用いてもよい。
【0081】
第2の方法の「内気温、外気温、日射量、湿度あるいは車室内熱負荷算出に用いる補正係数」の代わりに、車室内熱負荷が小さくなるよう認識させるために「内気温、外気温、日射量、湿度の値自体をシフト(例えば内気温ならば10℃シフト。入力パラメータ毎に異なる)」させてもよい。
【0082】
このようにコンプレッサ電力を2割削減したが、他の車両用空調装置10で電力を消費する構成要素、たとえば風量制御、電動ファン制御およびPTC制御も同様に電力削減の制御を行う。たとえば風量制御(ブロワ)は、設定温度および車室内熱負荷を補正し、電動ファン制御とPTC制御は、冷媒圧力、車速、エバ温、外気温、内気温、風量およびA/Mドア開度のいずれかもしくは幾つかを組み合わせてなるパラメータを用いて制御する。
【0083】
次に、本実施の形態の空調制御と、従来技術の空調制御とを比較したSOCの変化についてグラフを用いて説明する。図10は、本実施の形態のSOCおよび空調消費電力と走行位置との関係を示すグラフである。図11は、従来技術のSOCおよび空調消費電力と走行位置との関係を示すグラフである。図12は、本実施の形態の空調負荷制御の一例を示すグラフである。図10および図11では、空調がOFFで走行した場合のSOCの波形の始点および終点を黒丸で示し、空調がONで走行した場合のSOCの波形の終点をバツ印で示す。また図10では、本実施の形態の補正後空調制御の波形の始点および終点を三角印で示す。
【0084】
図10に示すように、空調ONで補正後空調制御をしないまま走行すると、破線で示すように、地点p11で走行可能な電力下限値の30%を下回る。また空調OFFで走行すると、目的地に到着した地点p12で、SOCは約50%ある。したがってSOCの20%程度を走行以外の電力消費、たとえば空調に用いることができる。そこで前述したように補正後空調制御を実施すると、地点p12で三角を用いて示すように30%を下回ることなく、空調ON時の空調利用分のグラフで示すように、空調を停止することなく目的地に到着することができる。
【0085】
これに対して図11に示すように、従来技術では前述したように空調ONでは目的地に到着することができないので、予め定める制限しきい値に到達した地点p21で空調を制限している。またさらに予め定める停止しきい値に到着した地点p22では、空調を停止している。これによって空調ON時の空調利用分のグラフで示すように、地点p22以降の消費電力はない。したがって乗員に不快感を与えることになる。
【0086】
図12に示すように、従来技術では一点鎖線で示すように段階的に空調の消費電力を制限しているが、本実施の形態では実線で示すように空調負荷を一定に制限して快適性を確保しつつ、目的地に到着できるように制御している。
【0087】
以上説明したように本実施の形態の車両用空調装置10は、現在の車室内外の熱負荷情報に基づき目的地までにかかる総空調負荷を算出し、かつ現在のSOCとの大小関係を比較して、空調のエネルギーマネジメントする車両用空調装置10である。具体的には、空調制御手段として機能するエアコンECU32は、走行用電力量と空調用電力量とを合計した合計電力量よりも残蓄電量であるSOCが小さい場合には、消費可能電力量と空調要求とに基づいて、目的地まで空調が停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限した制限空調負荷を算出し、算出した制限空調負荷に基づいて空調制御(補正後空調制御)を実施する。何ら制限せずに空調要求を満足するように空調制御を実施すると、目的地に到着する前に走行するための残蓄電量がなくなってしまい、電動機12を駆動できなくなる。また消費電力を小さくするために、単に空調を停止することも考えられるが、乗員に目的地まで不快感を与えるという問題がある。これに対して本実施の形態では、空調を停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限して、空調制御を行う。たとえば、空調能力を空調要求に対して2割減少させた制限空調負荷で空調制御をしたら、目的地まで継続して空調を実施することができ、かつ目的地まで走行できる場合には、制御空調負荷に基づく空調制御によって、乗員に与える不快感を抑制しつつ、目的地まで到着することができる。これによって空調を停止する場合に比べて、乗員に与える不快感を低減しつつ、目的地に到着することが可能な車両用空調装置10を実現することができる。
【0088】
また本実施の形態では、空調負荷記憶手段である空調負荷DB36には、予め設定された複数の環境条件における空調負荷の経時変化が記憶される。環境条件は、たとえば外気温、内気温、湿度および日射量などである。エアコンECU32は、空調負荷DB36に記憶されている複数の環境条件から現在の環境条件に対応する情報を抽出することによって、制限空調負荷を算出する。これによってエアコンECU32は、制限空調負荷を算出するために複雑な演算式を用いることなく、単に空調負荷DB36から情報を抽出するだけでよいので、演算負荷を低減することができる。これによって処理の高速化をすることができる。
【0089】
さらに本実施の形態では、空調用電力量算出手段として機能するエアコンECU32は、現在地から目的地までの経路における天気予測情報を用いて空調用電力量を算出する。天気予測情報を用いるので、たとえば気温の変化および日射量の変化を考慮して、空調用電力量を算出することができる。したがって目的地に到着するまでの空調用電力量の精度を向上することができる。
【0090】
また本実施の形態では、走行用電力量取得手段として機能するエアコンECU32は、主機ECU24が交通情報を用いて算出した値である。交通情報は、たとえば混雑状況および交通規制などである。混雑して渋滞している道路などが経路上にある場合と、道路が混雑していない場合とでは、走行用電力量が異なる。このような走行用電力量に影響を与える交通情報を用いて算出されるので、走行用電力量の精度を向上することができる。これによって空調に使用可能な電力量の予測精度も向上するので、より快適な車室内環境を提供することができる。
【0091】
さらに本実施の形態では、天気予測情報に基づいて目的地までに天気が変化する場合には、現在地から目的地までの各地点における空調に用いられる電力量の変化が天気の変化に伴って急激に変化せず段階的に変化させるように補正する補正値を用いて、空調用電力量を算出する。これによって急に制御状態を切り替える場合に比べた場合の空調用電力量ではなく、ユーザに与える違和感を小さした空調用電力量を用いることができる。これによって実際の空調制御においても、ユーザに与える違和感を小さくする制御をすることができる。
【0092】
また本実施の形態では、補正値は、移行期間内の予め設定される時間が時定数となるように補正した値である。したがって滑らかに制御状態を変化したときの補正値を用いることができる。これによって実施の空調制御においても、ユーザに与える違和感をより小さくすることができる。たとえばまた走行中に日射量が大きく変わる場合は、始動時から日射量が大の走行シーンのときと比べて、車室内の熱負荷は小さいことから、そのまま空調負荷DB36を切替えると車室内が必要以上に冷えてしまう。したがって実際の制御において、日射量が切替る時点から空調負荷の変化量に時定数処理を施しながら、空調負荷を抑制することで快適な空調を享受でき且つ走行距離も維持することができる。このような時定数処理をしたことを想定して補正するので、実際の制御に近い制御を想定して、空調用電力量を演算することができる。
【0093】
さらに本実施の形態では、制限空調負荷に基づく空調制御を実施の許可または実施の拒否のいずれかを選択するための入力手段である電マネオートスイッチを含むので、ユーザは電マネオートスイッチによって制限空調負荷を許可するか否かを選択することができる。これによって利便性を向上することができる。換言すると、電マネオートスイッチを設けることで、目的地まで乗員は空調負荷を制限しながら走行するか、従来のように一定時間の間は通常の空調制御にして一定時間経過後は空調OFF状態を強いられながら走行するのか、選択することができる。
【0094】
このように本実施の形態の車両用空調装置10では、設定温度および熱負荷に基づく空調負荷DB36を持たせ、エアコンECU32とエアコンECU32以外のSOCを取り込むことにより、全走行過程の空調に関るエネルギーマネジメントが可能となる。また乗車時点から目的地までの総空調負荷を算出することにより、ユーザは全走行過程において不快感を抑えた空調を享受することができる。さらに進行方向の天気予報情報を取り込むことにより、より精度の良く空調に関るエネルギーマネジメントができ、またユーザの不快感を抑えた空調を提供することができる。
【0095】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に関して、図13を用いて説明する。図13は、第2実施形態の空調負荷の変化パターンの一例を示すグラフである。本実施の形態では、移行期間における空調負荷パターンの移行方法が前述の第1実施形態と異なる。
【0096】
図13は、天候予測情報によって、時刻t131に日射量が小から大へと移行する場合の空調負荷の変化パターンである。図13にて時刻t131まで実線で示し、時刻t131から破線で示す波形が、日射量が小のときに空調負荷のパターンである。また時刻t132まで一点鎖線で示し、時刻t132から実線で示す波形が、日射量が大(他のパラメータは同一)のときの空調負荷のパターンである。時刻t131にて日射量が小から大へと移行するので、時刻t131にて空調負荷パターンを日射量が小のパターンから大のパターンへと変化させる必要がある。
【0097】
このような空調負荷パターンを切り替える場合、直ちに切り替えるのではなく、天気の変化の前後で空調負荷パターンが変化する場合には、天気の変化の前後で空調負荷パターンを段階的に切替えるための移行期間を設ける。図13では、時刻t131〜時刻t132までが移行期間となる。このような移行期間では、段階的に徐々に日射量が大の空調負荷パターンに移行するよう空調負荷を変化させる。具体的には、空調負荷パターンを切替える際、空調負荷の変化量に対して時定数処理を施す代わりに、一定の傾き(たとえば100W/分)で、空調負荷を増加させる処理を施す。
【0098】
これによって急に制御状態を切り替える場合に比べて、ユーザに与える違和感を小さくすることができる。
【0099】
また空調負荷パターンを切替える際、空調負荷の変化量に対して移行期間を設けるのでなく、設定温度に対する日射または内気温の変化量に対して移行期間を設けて、空調負荷パターンを切り替えるように制御してもよい。これによって同様の作用および効果を達成することができる。
【0100】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0101】
前述の第1実施形態では、補正空調制御の制御対象は、コンプレッサ101、電動ファン35、PTCヒータなどであったが、このような制御対象に限るものではなく、車両用空調装置10を構成する他の電力消費要素、たとえばシート空調(ヒータ)およびステアリングヒータなどであってもよい。またシート空調(ヒータ)およびステアリングヒータを制御対象とする場合には、補正制御するための入力パラメータとして、内気温、外気温、日射量および湿度あるいはそれらの幾つかを組み合わせてなる入力パラメータが用いられる。
【0102】
また前述の第1実施形態では、空調負荷DB36を用いて空調負荷を算出しているが、空調負荷DB36を用いる算出方法に限るものではなく、空調負荷DB36の代わりに現在の空調負荷と走行距離(走行時間)とをかけ合わせてなる総空調負荷量を用いて空調のエネルギーマネジメントを行ってもよい。またSOCに応じて、総空調負荷量の1/2がけ、または1/3がけと調節して空調のエネルギーマネジメントを行ってもよい。また空調負荷DB36の代わりに現在の空調負荷をSOCに応じて1/2がけ、1/3がけと調節した値を用いて空調のエネルギーマネジメントを行ってもよい。
【0103】
また前述の第1実施形態では、図5に示すフローを短時間に繰返し実行するように制御しているが、このような制御に限るものではなく、目的地が設定されたときに1度だけ設定するようにしてもよく、操作パネル33が操作されて空調要求がユーザに変更されたときに実行してもよく、ユーザの操作パネル33を操作することによって実行してもよい。
【0104】
また前述の第1実施形態では、ナビゲーション装置と通信することによって、目的地情報などを取得する構成であるが、このような構成に限るものではなく、ナビゲーション装置と一体(操作パネル33が同一)であってもよい。
【0105】
また前述の第1実施形態では、目的地は特に限定していないが、目的地は充電スタンドなどの充電設備を有する地点であってもよく、またSOCに基づいて目的地まで走行できない場合には、目的地までの経路上にある充電スタンドを目的地に設定し、目的地(充電設備のある地点)までの本実施の形態の制御を実行するように構成してもよい。
【0106】
また前述の第1実施形態では、情報の出力に関しては、特に限定していないが、空調制御を補正後空調制御に切り替えるときに、乗員に音声または画像で情報を出力するように構成してもよい。これによって補正後空調制御をするか否かを乗員が選択することができるので、利便性が向上する。
【0107】
また前述の第1実施形態において、補正後空調制御にて空調負荷を低減する際、コンプレッサ101など全ての空調部品の電力を一律低減させるのではなく、部品毎に優先順位をつけて低減させるように制御してもよい。たとえばコンプレッサ電力50%低減⇒ブロワ電力50%低減⇒電動ファン電力50%低減⇒シート空調電力50%低減⇒ステアリングヒータ電力50%低減⇒コンプレッサ電力70%低減・・・と予め定める優先順位に従って順次低減するように制御してもよい。
【符号の説明】
【0108】
10…車両用空調装置
11…電動車両(車両)
12…電動機
13…バッテリプラント
14…車両用モータ装置
30…エアコン機器プラント
31…エアコン通信部(現在地情報取得手段、目的地情報取得手段、走行用電力取得手段、天気予測情報取得手段)
32…エアコンECU(残蓄電量取得手段、空調用電力算出手段、空調制御手段)
33…操作パネル(入力手段)
36…空調負荷データベース(空調負荷記憶手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行の駆動源として電動機(12)を用いる車両(11)に備えられる車両用空調装置(10)であって、
前記車両の現在地を示す現在地情報を取得する現在地情報取得手段(31)と、
前記車両の目的地を示す目的地情報を取得する目的地情報取得手段(31)と、
前記車両の空調要求を取得する空調要求取得手段(33)と、
前記電動機に電力を供給する走行用バッテリにおける残蓄電量を示す残蓄電量情報を取得する残蓄電量情報取得手段(32)と、
前記車両が前記目的地に到達するまでの走行に要する電力量を示す走行用電力量を取得する走行用電力量取得手段(31)と、
前記現在地情報取得手段によって取得された現在地情報と前記目的地情報取得手段によって取得された目的地情報と前記空調要求取得手段によって取得された空調要求とに基づいて、前記車両が前記目的地に到達するまでの車室内の空調に要する電力量を示す空調用電力量を算出する空調用電力量算出手段(32)と、
前記空調要求取得手段によって取得された空調要求を満足するように車室内の空調制御を実施する空調制御手段(32)と、を含み、
前記空調制御手段は、前記残蓄電量情報取得手段によって取得された前記現在地における残蓄電量情報が示す残蓄電量が、前記走行用電力量取得手段によって取得された前記走行用電力量と前記空調用電力量算出手段によって算出された空調用電力量とを合計した合計電力量よりも小さい場合には、前記残蓄電量から前記走行用電力量を減じた消費可能電力量を算出し、算出された消費可能電力量と前記空調要求とに基づいて、目的地まで空調が停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限した制限空調負荷を算出し、算出した制限空調負荷に基づいて空調制御を実施することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
予め設定された複数の環境条件における空調負荷の経時変化が記憶された空調負荷記憶手段(36)をさらに含み、
前記空調用電力算出手段は、前記空調負荷記憶手段に記憶されている複数の環境条件から現在の環境条件に対応する情報を抽出し、抽出した情報を用いて前記空調用電力量を算出することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
天気予測を示す天気予測情報を取得する天気予測情報取得手段(31)をさらに含み、
空調用電力量算出手段は、前記現在地から前記目的地までの経路における天気予測情報を用いて前記空調用電力量を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記走行用電力量取得手段によって取得される前記走行用電力量は、前記現在地から前記目的地までの経路における混雑状況を含む交通情報を用いて算出された値であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調用電力量算出手段は、前記天気予測情報に基づいて前記目的地までに天気が変化する場合には、前記現在地から前記目的地までの各地点における空調に用いられる電力量の変化が前記天気の変化に伴って急激に変化せず段階的に変化させる移行期間によって補正する補正値を用いて、前記空調用電力量を算出することを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記補正値は、前記移行期間内の予め設定される時間が時定数となるように補正した値であることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記制限空調負荷に基づく空調制御を実施の許可または実施の拒否のいずれかを選択するための入力手段(33)をさらに含み、
前記入力手段によって、前記制限空調負荷に基づく空調制御を実施の許可が選択されている場合には、前記残蓄電量が前記合計電力量よりも小さいとき、前記制限空調負荷に基づく空調制御を実施し、
前記入力手段によって、前記制限空調負荷に基づく空調制御を実施の拒否が選択されている場合には、前記残蓄電量が前記合計電力量よりも小さいとき、前記空調要求を満足する空調制御を実施することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項1】
走行の駆動源として電動機(12)を用いる車両(11)に備えられる車両用空調装置(10)であって、
前記車両の現在地を示す現在地情報を取得する現在地情報取得手段(31)と、
前記車両の目的地を示す目的地情報を取得する目的地情報取得手段(31)と、
前記車両の空調要求を取得する空調要求取得手段(33)と、
前記電動機に電力を供給する走行用バッテリにおける残蓄電量を示す残蓄電量情報を取得する残蓄電量情報取得手段(32)と、
前記車両が前記目的地に到達するまでの走行に要する電力量を示す走行用電力量を取得する走行用電力量取得手段(31)と、
前記現在地情報取得手段によって取得された現在地情報と前記目的地情報取得手段によって取得された目的地情報と前記空調要求取得手段によって取得された空調要求とに基づいて、前記車両が前記目的地に到達するまでの車室内の空調に要する電力量を示す空調用電力量を算出する空調用電力量算出手段(32)と、
前記空調要求取得手段によって取得された空調要求を満足するように車室内の空調制御を実施する空調制御手段(32)と、を含み、
前記空調制御手段は、前記残蓄電量情報取得手段によって取得された前記現在地における残蓄電量情報が示す残蓄電量が、前記走行用電力量取得手段によって取得された前記走行用電力量と前記空調用電力量算出手段によって算出された空調用電力量とを合計した合計電力量よりも小さい場合には、前記残蓄電量から前記走行用電力量を減じた消費可能電力量を算出し、算出された消費可能電力量と前記空調要求とに基づいて、目的地まで空調が停止することなく、継続して空調が可能なように空調能力を制限した制限空調負荷を算出し、算出した制限空調負荷に基づいて空調制御を実施することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
予め設定された複数の環境条件における空調負荷の経時変化が記憶された空調負荷記憶手段(36)をさらに含み、
前記空調用電力算出手段は、前記空調負荷記憶手段に記憶されている複数の環境条件から現在の環境条件に対応する情報を抽出し、抽出した情報を用いて前記空調用電力量を算出することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
天気予測を示す天気予測情報を取得する天気予測情報取得手段(31)をさらに含み、
空調用電力量算出手段は、前記現在地から前記目的地までの経路における天気予測情報を用いて前記空調用電力量を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記走行用電力量取得手段によって取得される前記走行用電力量は、前記現在地から前記目的地までの経路における混雑状況を含む交通情報を用いて算出された値であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調用電力量算出手段は、前記天気予測情報に基づいて前記目的地までに天気が変化する場合には、前記現在地から前記目的地までの各地点における空調に用いられる電力量の変化が前記天気の変化に伴って急激に変化せず段階的に変化させる移行期間によって補正する補正値を用いて、前記空調用電力量を算出することを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記補正値は、前記移行期間内の予め設定される時間が時定数となるように補正した値であることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記制限空調負荷に基づく空調制御を実施の許可または実施の拒否のいずれかを選択するための入力手段(33)をさらに含み、
前記入力手段によって、前記制限空調負荷に基づく空調制御を実施の許可が選択されている場合には、前記残蓄電量が前記合計電力量よりも小さいとき、前記制限空調負荷に基づく空調制御を実施し、
前記入力手段によって、前記制限空調負荷に基づく空調制御を実施の拒否が選択されている場合には、前記残蓄電量が前記合計電力量よりも小さいとき、前記空調要求を満足する空調制御を実施することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【公開番号】特開2011−255686(P2011−255686A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129054(P2010−129054)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]