説明

車両用表示器

【課題】 省スペースな構成を維持しつつ、光路長を長くして遠方に表示を行うことができる車両用表示器を提供すること。
【解決手段】 コンバイナ5の下方となるインストパネル9の内部に表示器2を配置し、コンバイナ5と表示器2の間の車両前方側及び車両後方側にそれぞれミラー3とミラー4を設け、光路延長手段は、表示器2からコンバイナ5へ向かう第1の光路201と、コンバイナ5からミラー4へ向かう第2の光路202と、ミラー4からミラー3へ向かう第3の光路203と、ミラー3からコンバイナ5へ向かう第4の光路204を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示器の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来では、光学ユニットから出射された表示光をコンバイナにより運転者に向けて反射して車両前方に虚像を表示し、且つ車両前方からの光を透過させるヘッドアップディスプレイにおいて、光学ユニットは、表示器、平面鏡、及び凹面鏡とで構成され、表示器から出た表示光は、2つの平面鏡で反射された後、凹面鏡でコンバイナに向けて斜め上方に反射され、凹面鏡で反射されるときに、表示像は拡大され、遠方に表示されるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−55957号公報(第2−7頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来にあっては、遠方に有るように見せるために、反射鏡を増やすとその分、構成部品全体を収める空間が大きくなり問題である。車両の表示構成部品の置ける空間は限られており、反射鏡を増やして反射回数を多くすることには限界があるからである。また、凹面鏡では像の歪みに対しての対策が必要となり問題である。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、省スペースな構成を維持しつつ、光路長を長くして遠方に表示を行うことができる車両用表示器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、表示器の表示光を、透過性を有するコンバイナで反射して虚像の表示を見せる車両用表示器において、前記表示器と前記コンバイナの間の光路は、コンバイナの複数回反射により延長させる光路延長手段を備えた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、省スペースな構成を維持しつつ、光路長を長くして遠方に表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の車両用表示器を実現する実施の形態を、請求項1,2に係る発明に対応する実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の車両用表示器の説明図である。
実施例1の車両用表示器1は、表示器2、ミラー3、ミラー4、コンバイナ5、ケース6を主要な構成としている。
表示器2は、車両のドライバ乗車位置の前方に設けられるメータ7やメータフード8のさらに前方のインストパネル9の内部に設けられ、表示を表示光として出力する。実施例1では、コンバイナ5へ向けて出力する。表示器2の例としてLCDによる表示を背後のバックライトで投光したものを挙げておく。
【0009】
ミラー3は、ケース6の内部の車両前方側に設けられ、斜め上方に向かうよう傾斜させる。そして、ミラー4からの表示光をコンバイナ5へ向かって反射する配置、反射面の大きさにする。
ミラー4は、ケース6の内部の車両後方側に設けられ、斜め上方に向かうよう傾斜させる。そして、コンバイナ5からの表示光をミラー3へ向かって反射する配置、反射面の大きさにする。
【0010】
コンバイナ5は、表示器2の上部に設けたインストパネル9の開口部91に設けられ、ほぼ同じ反射範囲で表示器2からの表示光をミラー4へ反射するとともに、ミラー3からの表示光をドライバのアイポイントへ向けて反射する配置と大きさのものである。
また、コンバイナ5は、適度な反射率と適度な透過率を有するハーフミラーである。よって、ドライバはコンバイナ5を通して、車両前方を見ることができる。
【0011】
ケース6は、インストパネル9の内部でミラー3,4を保護し、支持する筐体部分である。
ここで、実施例1の車両用表示器1の表示光の反射構造について、加えて説明する。
実施例1の車両用表示器1では、表示器2から出射される表示光(光路201)をまず、コンバイナ5でミラー4に向かって反射し(光路202)、ミラー4でミラー3へ向かって反射し(光路203)、ミラー3でコンバイナ5へ反射し(光路204)、コンバイナ5でドライバのアイポイントへ向かって反射する(光路200)反射構造である。つまり、コンバイナ5は、表示器2からミラー4への反射と、ミラー3からドライバのアイポイントへの反射を同じ反射面で行う特徴を持つ反射構造である。
【0012】
次に、作用を説明する。
[省スペースで遠方に表示を行う作用]
実施例1の車両用表示器1では、図1に示すように、表示器2(実像101)から出た光は(光路201)、まずコンバイナ5の反射面51で反射される(光路202)。次に、ミラー4(光路203)、ミラー3(光路204)の順に光は反射され、再度、コンバイナ5の反射面51で反射された像の光がアイポイントEPに到達する(光路200)ことでドライバは像(虚像102)を見ることができる。
これにより、実施例1の車両用表示器1では、より遠方に虚像を表示することができる。
【0013】
図2に示すのは車両用表示器の表示状態を示す説明図である。
例えば、コンバイナ5を用いて表示器2の表示を反射させてドライバに見せるには、図2に示すように、表示器2からの表示光をコンバイナ5で反射させてアイポイントEPへ到達させることが考えられる。
この場合には、アイポイントEPからコンバイナ5の反射面51、反射面51から表示器2の実像表示位置(101)がそのまま虚像102までの距離となる。
単に反射による虚像を見せるだけでなく、ヘッドアップディスプレイのように、走行中の前方視界から車室内表示までのドライバの眼の焦点距離変化を小さくする要求が高い場合には、実施例1の車両用表示器1のように、虚像表示をより遠方に行うものが有利である。
【0014】
図3に示すのは車両用表示器の表示状態を示す説明図である。
例えば、図3に示すように、表示器2からの表示光をコンバイナ5で反射させてアイポイントEPへ到達させる場合、虚像表示までの距離を長くしようとすると、表示器2をインストパネル9の内部で光路沿いに奥へ移動させなければならない。すると、光路上は何も遮るものがあってはならないため、光路を伸ばした分、インストパネル9の内部で確保すべき空間が大きくなる。実際には、空調用のダクトや他の機器が存在し、実施が困難である。
【0015】
図4に示すのは車両用表示器の表示状態を示す説明図である。
実際に設置可能な空間内において、表示器2からコンバイナ5までの光路を伸ばすために、例えば、2枚のミラー3、4を用いて、図4に示すように、表示器2からの表示光をミラー4でミラー3に向かって反射し、ミラー3からコンバイナ5に向かって反射し、コンバイナ5からドライバのアイポイントEPへ反射する構成を考えることができる。
【0016】
図4の構成では、ウィンドシールド10の近傍位置まで虚像表示位置102を遠方にすることができるが、実施例1の車両用表示器1では、図4上に表示位置を示すと、虚像表示103(図4において)となり、図4の構成よりも、コンバイナ5の反射面51から虚像表示位置が1.7倍、遠方に表示することができ有利である。
【0017】
しかも、考えた図4の構成では、虚像表示位置102は、ドライバが認識するウィンドシールド10の近傍位置になるのに対し、実施例1の車両用表示器1では、虚像表示位置103(図4において)は、ウィンドシールド10より先の空間に位置するように見えるため、実施例1の車両用表示器1のほうが有利であることが、はっきりと見て感じ取れることになる。
【0018】
また、図1に示す実施例1の車両用表示器1において、コンバイナ5は、コンバイナ5での反射率が高すぎると、内部構造が見えすぎて装置全体として、表示の見栄えに影響を及ぼすことが考えられる。そして、この対策としては、コンバイナ5の反射面51の反射率を落とすための表面処理を行う、あるいは、反射率の低い部材を使用することが考えられる。
実施例1の車両用表示器1のコンバイナ5では、表示の見栄えを図4に示すような1回の反射をコンバイナ5が行うものと同等の反射率を確保する。つまり、コンバイナ5の複数回反射で1回反射と同等の反射率となるようにする。
なお、構成や設置状況により、中見えに対する配慮が必要ない場合には、その限りではない。
【0019】
図5は実施例1の車両用表示器の表示状態の説明図である。
実施例1の車両用表示器1では、ドライバのアイポイントEPの変化に対して、ミラー3を回転させることで、コンバイナ5に対して見かけ上同じような位置に表示することができる。
よって、ドライバの目線位置の高さ変化に対しても、像がコンバイナ5から外れることなく成立する。また、図5では目線が上がった場合を示したが、目線が下がった場合であってもミラー3を回転させることで、像がコンバイナ5から外れることなく成立する。
【0020】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両用表示器にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
(1)表示器2の表示光を、透過性を有するコンバイナ5で反射して虚像の表示102を見せる車両用表示器1において、表示器2とコンバイナ5の間の光路は、コンバイナ5の複数回反射により延長させるようミラー3、ミラー4で光路201〜光路204を形成する反射構造にしたため、省スペースな構成を維持しつつ、光路長を長くして遠方に表示を行うことができる。
【0021】
(2) (1)において、コンバイナ5の下方となるインストパネル9の内部に表示器2を配置し、コンバイナ5と表示器2の間の車両前方側及び車両後方側にそれぞれミラー3とミラー4を設け、光路延長手段は、表示器2からコンバイナ5へ向かう第1の光路201と、コンバイナ5からミラー4へ向かう第2の光路202と、ミラー4からミラー3へ向かう第3の光路203と、ミラー3からコンバイナ5へ向かう第4の光路204を備えるため、コンバイナ5の下方となるインストパネル9の内部に表示器2を配置し、コンバイナ5と表示器2、ミラー3、ミラー4を囲むように設けることで、小さなスペース内に複数反射構造を設け、省スペースな構成を維持しつつ、光路201〜光路204により光路長を長くして遠方に表示を行うことができる。
【0022】
以上、本発明の車両用表示器を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0023】
例えば、実施例1では、ヘッドアップディスプレイとしてコンバイナを用いるものについて説明したが、コンバイナがウィンドシールドに一体として設けられているものであってもよい。
また、実施例1では、コンバイナがハーフミラーで通して車両前方視界を見るものについて説明したが、コンバイナが反射による表示のみを行うものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1の車両用表示器の説明図である。
【図2】車両用表示器の表示状態を示す説明図である。
【図3】車両用表示器の表示状態を示す説明図である。
【図4】車両用表示器の表示状態を示す説明図である。
【図5】実施例1の車両用表示器の表示状態の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 車両用表示器
2 表示器
3 ミラー
4 ミラー
5 コンバイナ
51 反射面
6 ケース
7 メータ
8 メータフード
9 インストパネル
91 開口部
10 ウィンドシールド
101 実像(及び実像表示位置)
102 虚像(及び虚像表示位置)
103 虚像(及び虚像表示位置)
200 光路
201 光路
202 光路
203 光路
204 光路
EP アイポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示器の表示光を、透過性を有するコンバイナで反射して虚像の表示を見せる車両用表示器において、
前記表示器と前記コンバイナの間の光路は、コンバイナの複数回反射により延長させる光路延長手段を備えた、
ことを特徴とする車両用表示器。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用表示器において、
前記コンバイナの下方となるインストパネル内部に前記表示器を配置し、
前記コンバイナと前記表示器の間の車両前方側及び車両後方側にそれぞれ第1ミラーと第2ミラーを設け、
前記光路延長手段は、
前記表示器から前記コンバイナへ向かう第1の光路と、
前記コンバイナから第1ミラーへ向かう第2の光路と、
前記第1ミラーから第2ミラーへ向かう第3の光路と、
第2ミラーから前記コンバイナへ向かう第4の光路と、
を備えることを特徴とする車両用表示器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−296635(P2008−296635A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142226(P2007−142226)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】