説明

車両用計器装置

【課題】、重大な不具合が出ないうちに、故障しそうということを知らしめた上で、装置としての寿命を終える車両用計器装置を提供する。
【解決手段】少なくとも走行距離積算計4及び警告表示装置5を制御するメータ用制御ユニット7と、複数の他機器制御ユニット8、9、10、11と、各制御ユニット7〜11内に各々設けられた記憶装置7m〜11mとを備え、この各記憶装置には各制御ユニット自身の設定寿命データが記憶され、各制御ユニットには、積算距離データに基づく比較用積算距離データが、自身の設定寿命データに予め定めた範囲内に接近した場合に、警告表示装置5を制御して予告警報を報知させる手段(S64、65)と、比較用積算距離データが設定寿命データに一致した場合に、その制御ユニットの製品としての寿命を停止する手段(S66)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行距離積算計(オドメータとも言う)、及びメータ用制御ユニット(ECU:Electronic control Unitとも言う)を含む複数の制御ユニットを有する車両用計器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両の積算距離データを表示する走行距離積算計が知られている。これは、記憶された積算距離データの不正改竄を困難にするものである。具体的には、積算距離データを車両外部の外部記憶手段、例えばナビゲーション装置が有する記憶手段に記憶させ、外部記憶手段に記憶された積算距離データを表示している。
【0003】
これによれば、走行距離積算計に積算距離データを記憶させることを廃止でき、しかも、積算距離データを車両外部の外部記憶手段に記憶させるので、当該記憶された積算距離データを不正に改竄することを、極めて困難にできる。
【0004】
また、仮に、走行距離積算計に記憶された積算距離データが不正に改竄された場合には、走行距離積算計の外部に備えられた車載記憶手段に記憶された積算距離データと、不正に改竄された値とが異なる値となるので、走行距離積算計に記憶された積算距離データを、車載記憶手段に記憶された積算距離データと照合することにより、上記不正改竄が為されているか否かを容易に判別することができる。
【0005】
特許文献2においては、車両の積算距離データを記憶させる車両積算距離データ記憶システムにおいて、当該記憶された積算距離データの不正改竄を困難にするために、車両の積算距離データを、メータ用制御ユニットの不揮発性メモリ(EEPROM:Electrical Erasable and Programmable Read Only Memoryともいう)のみならず、車両に搭載された他の複数の制御ユニット内の各EEPROMに関数を用いてデータを桁毎に分散して記憶させている。
【0006】
これにより、単純に、メータ用制御ユニットのEEPROMに記憶された値を書き換えるだけでは、積算距離データを小さい値に改竄することは困難となる。また、所定の関数を用いて桁毎に分散して記憶されたた積算距離データが車両に搭載された何れのEEPROMに記憶されているのかは、改竄者には容易に分からなくでき、しかも、仮に、何れのEEPROMに分散記憶されているのかが分かったとしても、分散された値を任意の積算距離データに復元することは困難であるため、上記不正改竄を困難にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−302249号公報
【特許文献2】特開2004−3921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記、特許文献1及び特許文献2のように、走行距離積算計の改竄防止がなされて、正確な積算距離が表示できるようになってきているが、別の問題として次のような問題が生じている。
【0009】
走行距離積算計だけでなく、この走行距離積算計からの積算距離をバックアップのために記憶している制御ユニット自体が交換された場合に、正しい積算距離が分からなくなることがある。また、近年、寿命が過ぎた電気・電子部品が壊れるときに、突然、過熱状態になるなどの事故が発生している。
【0010】
車両内には、複数の制御ユニットが使用されており、電気・電子部品の数量は膨大である。この制御ユニットは、長寿命化が進む中、最後の壊れ方、装置としての寿命の終え方の設計で、突発的に重要不具合にならないように苦労している。
【0011】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、充分製品寿命が過ぎている状態で、かつ重大な不具合が出ないうちに、充分にユーザに対して、故障しそうということを知らしめた上で、自ら壊れる、つまり、装置としての寿命を終える車両用計器装置を提供することにある。
【0012】
従来技術として列挙された特許文献の記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、車両の走行距離を積算した積算走行距離を表示する走行距離表示部と、警告表示を行う警告表示部とを有する表示装置と、表示装置を制御するメータ用制御ユニットを備え、メータ用制御ユニットは、当該メータ用制御ユニットが車両に搭載されたときの積算走行距離である自己初期値と、現在の積算走行距離として取得した自己現在値と、メータ用制御ユニットが自己の寿命に達するまでに車両が走行可能な距離である自己寿命距離とを記憶し、自己初期値と自己現在値との差分である自己差分を算出して、自己寿命距離よりも所定距離短い自己閾値に自己差分が達した場合に、表示装置を制御して警告表示部による警告表示を行い、自己寿命距離に自己差分が達した場合に、メータ用制御ユニットの寿命を停止することを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、メータ用制御ユニットは、当該メータ用制御ユニットが車両に搭載されたときの積算走行距離である自己初期値と、現在の積算走行距離として取得した自己現在値と、メータ用制御ユニットが自己の寿命に達するまでに車両が走行可能な距離である自己寿命距離とを記憶し、自己初期値と自己現在値との差分である自己差分を算出して、自己寿命距離よりも所定距離短い自己閾値に自己差分が達した場合に、表示装置を制御して警告表示部による警告表示を行い、自己寿命距離に自己差分が達した場合に、メータ用制御ユニットの寿命を停止するから、充分製品寿命が過ぎている状態で、かつ重大な不具合が出ないうちに、充分にユーザに対して、故障しそうということを知らしめた上で、寿命を終えるメータ用制御ユニットを持った車両用計器装置を提供できる。
【0015】
請求項2に記載の発明では、メータ制御ユニットは、自己閾値に自己差分が達した場合に、警告表示部の警告表示を、自己差分が自己寿命距離に達するまで継続させることを特徴としている。
【0016】
この発明によれば、メータ制御ユニットは、自己閾値に自己差分が達した場合に、警告表示部の警告表示を、自己差分が自己寿命距離に達するまで継続させるから、メータ用制御ユニットがまもなく寿命を終えることの予告を継続して、修理または交換を促すことができる。
【0017】
請求項3に記載の発明では、表示装置以外の車両内機器を制御する他機器制御ユニットを備え、他機器制御ユニットは、当該他機器制御ユニットが車両に搭載されたときの積算走行距離である他機器初期値と、現在の積算走行距離として取得した他機器現在値と、他機器制御ユニットが自己の寿命に達するまでに車両が走行可能な距離である他機器寿命距離とを記憶し、他機器初期値と他機器現在値との差分である他機器差分を算出して、他機器寿命距離よりも所定距離短い他機器閾値に他機器差分が達した場合に、メータ用制御ユニットに表示装置を制御させて警告表示部による警告表示を行い、他機器寿命距離に他機器差分が達した場合に、他機器制御ユニットの寿命を停止することを特徴としている。
【0018】
この発明によれば、他機器制御ユニットは、当該他機器制御ユニットが車両に搭載されたときの積算走行距離である他機器初期値と、現在の積算走行距離として取得した他機器現在値と、他機器制御ユニットが自己の寿命に達するまでに車両が走行可能な距離である他機器寿命距離とを記憶し、他機器初期値と他機器現在値との差分である他機器差分を算出して、他機器寿命距離よりも所定距離短い他機器閾値に他機器差分が達した場合に、メータ用制御ユニットに表示装置を制御させて警告表示部による警告表示を行い、他機器寿命距離に他機器差分が達した場合に、他機器制御ユニットの寿命を停止するから、充分製品寿命が過ぎている状態で、かつ重大な不具合が出ないうちに、充分にユーザに対して、故障しそうということを知らしめた上で、寿命を終える他機器制御ユニットを持った車両用計器装置を提供できる。
【0019】
請求項4に記載の発明では、メータ制御ユニットは、他機器制御ユニットに記憶されている他機器現在値を他機器制御ユニットから取得して、自己が記憶している自己現在値と照合することにより、当該自己が記憶している自己現在値を更新し、更新された自己現在値を他機器制御ユニットに送信して他機器現在値として記憶させることを特徴としている。
【0020】
この発明によれば、メータ制御ユニットは、他機器制御ユニットに記憶されている他機器現在値を他機器制御ユニットから取得して、自己が記憶している自己現在値と照合することにより、当該自己が記憶している自己現在値を更新し、更新された自己現在値を他機器制御ユニットに送信して他機器現在値として記憶させるから、メータ用制御ユニット内で記憶された自己現在値が誤った値になっても、他機器制御ユニットから受信した他機器現在値と照合することで、修正することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明では、メータ制御ユニットは、他機器閾値に他機器差分が達した場合に、警告表示部の警告表示を、他機器差分が他機器寿命距離に達するまで継続させることを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、メータ制御ユニットは、他機器閾値に他機器差分が達した場合に、警告表示部の警告表示を、他機器差分が他機器寿命距離に達するまで継続させるから、他機器制御ユニットがまもなく寿命を終えることの予告を継続して、修理または交換を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明装置における一実施形態の表示部分を成すコンビネーションメータ1の正面図である。
【図2】上記実施形態における車両用計器装置のブロック構成図である。
【図3】図2の一部を更に詳しく図示したブロック構成図である。
【図4】上記実施形態において、運転開始スイッチがオンされた場合における比較用積算距離データを特定するための制御を示すフローチャートである。
【図5】上記実施形態において、運転開始スイッチがオフされたときの制御を示すフローチャートである。
【図6】上記実施形態において、制御ユニットが製品としての寿命を終える場合のナビ用制御ユニット内における制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0025】
各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図6を用いて詳細に説明する。図1は本発明装置における第1実施形態の表示部分を成すコンビネーションメータ1の正面図である。図2は、上記第1実施形態における車両用計器装置のブロック構成図である。図3は図2の一部を更に詳しく図示したブロック構成図である。
【0027】
なお、本発明では、メータ用制御ユニットに関わる初期値、現在値、あるいはそれらの差分、及び寿命距離等を自己初期値、自己現在値、自己差分、自己寿命距離等と呼称し、メータ用制御ユニット以外の制御ユニットである他機器制御ユニットに関わる初期値、現在値、あるいはそれらの差分、及び寿命距離等を他機器初期値、他機器現在値、他機器差分、他機器寿命距離等と呼称して区別することがあるが、区別しなくとも判明するときは、単に、初期値、現在値、差分、寿命距離等と呼称する。
【0028】
図1において、コンビネーションメータ1として、スピードメータ2、タコメータ3、走行距離積算計(走行距離表示部)4を備えている。スピードメータ2は、目盛り板2a及び指針2bにより当該乗用車の車速を指示する。
【0029】
走行距離積算計4は、液晶パネル等の表示器4aを備えており、この表示器4aは、目盛り板2aの開口部にその裏面側から設けられている。当該表示器4aは、当該車両の走行距離の積算値である積算距離データをデジタル表示し、0km〜999,999kmまでの値が表示可能である。
【0030】
また、コンビネーションメータ1は、自動車内の各種警告情報を絵文字で表示する液晶表示モジュール5を有している。警告表示装置(警告表示部)を構成する液晶表示モジュール5は、例えばTFTタイプの液晶デバイスからなる液晶表示ディスプレイ5a、駆動回路及びバックライトを金属筐体5b内に有する。
【0031】
次に、図1のコンビネーションメータ1(表示装置)を制御する図2のメータ用制御ユニット(メータ用ECU)7は、コンビネーションメータ1の裏側に実装されている。このメータ用制御ユニット7は、CPU、ROM、RAMを含むマイクロコンピュータから構成され、機能実現手段として指針制御手段、液晶表示制御手段、バックライト制御手段を有する。
【0032】
液晶表示ディスプレイ5aで表示される各種警告情報は、例えば、ドア開放もしくは半ドア情報、変速機のオーバードライブ段のオンオフ情報、バッテリ充電状態、残存燃料不足状態、ヘッドランプ遠方照明状態、エンジンオイル量低下情報等であり、警告すべき状態にある項目をカラー表示したり、もしくは点灯表示、もしくは拡大表示したりする。
【0033】
図2及び図3において、メータ用制御ユニット7は、車両に搭載された他機器制御ユニット8、9、10、11に通信線で接続されて、車内LAN等により相互に通信可能になっている。
【0034】
因みに、他機器制御ユニット8、9、10、11は、車両に搭載されたナビゲーション装置の作動を制御するナビ用制御ユニット8と、車両用空調装置の作動を制御するエアコン用制御ユニット9と、エンジンの作動を制御するエンジン用制御ユニット10と、車両のボデーに装着されたワイパ及び照明装置等を制御するボデー用電子制御装置11とである。
【0035】
なお、各制御ユニット7〜11には、書き換え可能な不揮発性の記憶手段としてのEEPROMからなる記憶装置(記憶手段)7m、8m、9m、10m、11mが各々備えられている。
【0036】
また、メータ用制御ユニット7は、図3にて示すごとく、マイクロプロセッサユニット(MPU)20、及び前述の記憶装置7m等を備えている。また、マイクロプロセッサユニット20は、CPU、ROM等から構成されており、当該車両のイグニッションスイッチ(IGスイッチ)の操作のもと、IG+端子にプラス電圧が印加されると、予めROMに記憶されたコンピュータプログラムに基づいて制御の実行を開始する。
【0037】
そして、マイクロプロセッサ20は、車両内のセンサの一つを成す車速センサ21の検出出力である車速パルス信号に基づき、当該車両の積算距離データを演算する演算積算処理を実行し、駆動回路を成すオドデータ処理部を介して走行距離積算計4のオドメータ表示を行う。
【0038】
なお、マイクロプロセッサユニット20は、当該車両に搭載のバッテリから+B端子により直接給電されて作動状態が維持される。また、車速センサ21は、スピードメータ2の車速センサを共用しており、この車速センサ21は、当該乗用車の車速を検出する。
【0039】
また、マイクロプロセッサユニット20は、図2のその他機器制御ユニット8〜11の記憶装置8m〜11mに、上記演算された積算距離データを、そのままの形態で分散して記憶させる。なお、そのままの形態で分散して記憶させるのでなく、暗号化して記憶させても良い。この積算距離データとは、メータ制御ユニット7が車両に搭載されたときの積算走行距離である初期値と、現在の積算走行距離である現在値とである。
【0040】
このように、マイクロプロセッサユニット20は、記憶装置7mに積算距離データを記憶させるとともに、ナビ用制御ユニット8、エアコン用制御ユニット9、エンジン用制御ユニット10、及びボデー用制御ユニット11の各々に積算距離データを送信する。そして、各制御ユニット8〜11は、各々のEEPROMから成る記憶装置8m〜11mに積算距離データを記憶する。
【0041】
以上のように構成した本実施形態によれば、積算距離データを、メータ用制御ユニット7のEEPROMから成る記憶装置7mのみならず、車両に搭載された複数のEEPROMから成る記憶装置8m〜11mに分散して記憶させるので、単純に、メータ用制御ユニット7の記憶装置7mに記憶された値を書き換えるだけでは、積算距離データを小さい値に改竄することは困難となる。
【0042】
ここで、設定寿命データとは、制御ユニットが自身の寿命に達するまでに、車両が走行可能な距離である寿命距離である。また、予告データとは、寿命距離よりも所定距離短い閾値である。
【0043】
次に、先ず、以下の第1実施形態の説明の為の設定条件について説明する。図2において、ナビ用制御ユニット8は、設定寿命データに予め定めた範囲内に接近したと判断する予告データが50万Kmであり、設定寿命データが55万Kmである。
【0044】
エアコン用制御ユニット9は、予告データが60万Kmであり、設定寿命データが66万Kmである。制御ユニット7、10、11も同様に設定寿命データと予告データとが設定されているが説明を省略する。
【0045】
図4は、上記第1実施形態において、運転開始スイッチ(イグニッションスイッチまたはIGスイッチとも言う)がONされた場合における真の積算距離データ(この場合はメータ用制御ユニット7が途中で交換されていないので比較用積算距離データと同じ)を特定するための制御を示すフローチャートである。
【0046】
この図4において、ステップS41で、運転開始スイッチがONされて、バッテリのプラス電位が導かれる図3のIG+端子にプラス電圧が印加された時、メータ用制御ユニット7は、積算距離データを、記憶装置7mから読み出す。
【0047】
次に、ステップS42において、メータ用制御ユニット7は、他機器制御ユニット8〜11の記憶装置8m〜11mが記憶している積算距離データ(初期値と現在値からなる距離値)を受信する。
【0048】
そして、メータ用制御ユニット7の記憶装置7mが記憶している積算距離データ(ODO値とも言う)と、その他の各制御ユニット8〜11の記憶装置8m〜11mが記憶している積算距離データとが一致しているか否かをステップS43で照合する。
【0049】
メータ用制御ユニット7が記憶している積算距離データと、その他の各制御ユニット8〜11が記憶している積算距離データとが一致している場合は、ステップS44で、一致している積算距離データをメータ制御ユニット7が、比較用積算距離データとして記憶する。ここでいう比較用積算距離データ徒は、後述する図6の各ステップで使用する現在値と初期値との差である。
【0050】
メータ用制御ユニット7が記憶している積算距離データとその他の各制御ユニット8〜11が記憶している積算距離データとが一致しない場合は、ステップS45で後述する多数決等による照合を経て比較用積算距離データを決定する。そして、ステップS46で、決定された比較用積算距離データを走行距離積算計4に表示させる。その後も、1km毎に、走行距離積算計4の表示を更新表示していく。
【0051】
ここで言う多数決とは、3つ以上の積算距離データのうち最も多い値を比較用値として設定することを言う。この場合、積算距離データの値が全て異なるときは、積算距離データの最大値を比較用積算距離データとする。または、平均値を比較用積算距離データとして設定してもよい。
【0052】
図5は、上記第1実施形態において、運転開始スイッチがオフされたときの制御を示すフローチャートである。図5のステップS51において、IG+端子に所定のプラス電圧が印加されなくなった時、ステップS52のように、その時の積算距離データをメータ用制御ユニット7内の記憶装置7mに書き込む。
【0053】
それとともに、メータ用制御ユニット7から、他機器制御ユニット8〜11に走行距離積算計の積算距離データを送信する。更に、ステップS53において、他機器制御ユニット8〜11において、送信されてきた積算距離データを各々記憶装置8m〜11mに書き込む。
【0054】
次に、図6に基づいて、特定の制御ユニットが、製品としての寿命を終える時の全体制御方法について代表的な例を説明する。図6は、上記実施形態において、制御ユニットが製品としての寿命を終える場合の特定の制御ユニットとなるナビ用制御ユニット8内における制御を示すフローチャートである。なお、以下ではナビ用制御ユニット8内の制御を代表例として説明するが、他の制御ユニット7、9、10、11においても、同様な制御が行われる。
【0055】
前述したように、図2において、ナビ用制御ユニット8は、予告データが50万Kmであり、設定寿命データが55万Kmである。一方、エアコン用制御ユニット9は、予告データが60万Kmであり、設定寿命データが66万Kmである。これ以外の制御ユニット7、9、10、11も同様に設定されているが説明を省略する。
【0056】
なお、この図6では、寿命距離に現在値と初期値の差が達した場合の制御を行うので、初期値は0kmとは限らず、初期値が、ナビ用制御ユニット8交換時の走行距離である場合もある。
【0057】
図6において、制御がスタートして、ステップS61において、運転開始スイッチであるIGスイッチがOFFすると、ステップS62において、メータ用制御ユニット7から送信されてきた積算距離データ(ODO値)を、記憶装置7mに初期積算距離データとして記憶する。前述のように、このODO値は、現在値と初期値との差であるが初期値は0kmとは限らない。
【0058】
そして、別途演算している図4のフローチャートのステップS44またはステップS46で決定した真の積算距離データを取り込む等の制御を行い、比較用積算距離データ(図6では比較用ODO値と記す)を決定する。この比較用積算距離データとは、後述するように制御ユニットが新品と交換されていない場合には、真の積算距離データ(走行用距離積算計4で表示されているデータ)と同じ値である。すなわち、現在値と初期値(0km)との差の照合済みの値である。
【0059】
次に、図6のステップS63において、比較用積算距離データ(比較用ODO値)が、予め記憶している予告データである50万Km以下であるか否かを判定する。以下であれば、制御を終える。ステップS63において、比較用積算距離データが、予告データである50万Km以下でないときはステップS64に進む。
【0060】
ステップS64においては、比較用積算距離データが設定寿命データである55万Km以下か否かを判定する。比較用積算距離データが設定寿命データである55万Km以下である場合は、ステップS65に進み、警告表示装置を構成する液晶表示モジュール5内の予め設定された表示項目を表示させるインジケータの点灯制御を開始し継続する。この表示は、例えば通常の警告表示の時の表示モードである通常警告モードとは異なるモードで行っても良い。
【0061】
また、ステップS64において、比較用積算距離データが、設定寿命データである55万Km以下でない場合には、ステップS66に進み、設定寿命データ55万Kmに関わるナビ用制御ユニット8の動作を停止させ、ナビ用制御ユニット8が自ら製品としての寿命を終わらせる。つまり、動作を自ら停止し、完全に故障する。
【0062】
ステップS65において、50万Kmから55万Kmまで、もし、ナビ用制御ユニット8が交換されることが無い場合、ステップS65で液晶表示モジュール5内のインジケータは点灯を継続し、55万Kmで、自ら停止するまで、交換等を促し続け、交換されることを期待する設計としている。
【0063】
以上の説明は、新車としての車両が、一度もナビ用制御ユニット8を交換しないで、走行し続け、ついに設定寿命データ55万Kmまで走行距離を延ばした場合、つまり、初期値が0kmの場合である。次に、途中でナビ用制御ユニット8が交換された場合について説明する。
【0064】
ナビ用制御ユニット8が、例えば、52万Kmで、新品に交換された場合には、この新品のナビ用制御ユニット8は、その新品に交換された時にメータ用制御ユニット7から送信されてきた真の走行距離積算計4の値52万Kmを初期値として、自身の記憶装置8mに記憶する。
【0065】
この状態で車両が走行し、次の周期で図6の制御がスタートし、図6のステップS62において、メータ用制御ユニット7から、58万Kmの現在値が送信されてきたとする。この場合、58万Kmと、交換時の初期値である52万Kmとの差(58万Km−52万Km=6万Km)を演算し、その差の値をステップS63、ステップS64で比較用積算距離データ(比較用ODO値)とする。
【0066】
そして、走行につれて比較用積算距離データが増加するため、比較用積算距離データを、予告データとしての50万Km、設定寿命データとしての55万Kmと、図6のステップS63及びステップS64において比較し、インジケータの点灯を継続したり、ナビ用制御ユニット8を自ら停止させたりする。
【0067】
次に、エアコン用制御ユニット9について述べる。このエアコン用制御ユニット9は、図2に示したように、予告データが60万Kmであり、設定寿命データが66万Kmである。
【0068】
車両が走行し、積算距離データが増加して、メータ用制御ユニット7から、エアコン用制御ユニット9に、現在値として60万Kmが送信されてきた場合に、エアコン用制御ユニット9の交換が無い場合は、初期値は0kmであり、ナビ用制御ユニット8と同様に、予告データとしての60万Kmと設定寿命データとしての66万Kmとを、図6のステップS64及びステップS66と同様に比較し、インジケータの点灯を継続したり、エアコン用制御ユニット9を自ら停止させたりする。
【0069】
つまり、インジケータで予告を行って、積算距離データ(比較用ODO値)が、66Kmになった場合に、完全にエアコン用制御ユニット9としての作動を停止するというナビ用制御ユニット8と同様な動作を行う。
【0070】
次に、メータ用制御ユニット7が、68万Kmで、故障してしまった場合について説明する。この場合には、図4のフローチャートと同様に、メータ用制御ユニット7が新品に交換された後、運転開始スイッチがONされて、IG+端子にプラス電圧が印加された時に、メータ用制御ユニット7は、他機器制御ユニット8〜11より受信した積算距離データ、及び自身の記憶装置7m内の積算距離データより、多数決等で真の積算距離データを確定する。
【0071】
そして、多数決等により、真の積算距離データを68万Kmとして確定する。そして、自身のメータ用制御ユニット7内の記憶装置7mへの書き込み、走行距離積算計4の表示を設定する。
【0072】
これにより、交換された場合や、なんらかの原因で、メータ用制御ユニット7、及び他機器制御ユニット8〜11の記憶装置7m〜11mが故障しても、信頼性のある走行距離積算計の表示用積算距離データが得られ、この信頼性のある積算距離データは、装置としての寿命の終え方の重要なデータとしても使用出来る。
【0073】
なお、ナビ用制御ユニット8とエアコン用電子制ユニット9だけを例にとって説明したが、それ以外の制御ユニット7、10、11にとっても固有の予告データ及び設定寿命データが設定されていて同様の制御が行われる。
【0074】
以上のべたように、第1実施形態においては、各制御ユニットは、その走行距離積算計の積算距離データを使って、積算距離データが自身の設定寿命データに一致した場合に、各制御ユニットの製品としての寿命を停止することができる。また、いきなり停止するのでなく、積算距離データが設定寿命データに予め定めた範囲内(閾値)に接近した場合に警告表示装置を制御して予告警報させることができる。これにより、充分製品寿命が過ぎている状態で、かつ重大な不具合が出ないうちに、ユーザに故障しそうということを知らしめた上で、装置としての寿命を終えるという、制御ユニットの寿命管理を行うことができる。また、予告警報は、通常の警告表示とは異なる態様で報知すれば、普段とは異なる異常を車両のユーザに感じさせて、車両を修理に出す等の対策を促すことができる。
【0075】
更に、各制御ユニットの記憶手段に積算距離データを記憶させておく。そして、各制御ユニットに記憶させている積算距離データの多数決をとって決定した値か、または最も距離の大きい値を比較用積算距離データとしているから、走行距離積算計や制御ユニットが取り替えられたとしても、比較用積算距離データを正しく保持することができ、この正しい値に基づいて、制御ユニットの寿命管理を行うことができる。
【0076】
また、積算距離データが設定寿命データに一致した場合に、設定寿命データに関わる各制御ユニットのいずれかの製品としての寿命を停止させるのは、車両の運転スイッチが投入されていない場合に行われるから、車両用運転スイッチが投入されている走行中に、突然、制御ユニットが、製品としての寿命を停止させることが少なくなるから、より安全である。
【0077】
次に、各制御ユニットの比較用積算距離データは、各制御ユニットのうち交換されなかったものについては、走行距離積算計で表示された積算距離データと同じ値であり、各制御ユニットのうち交換されたものについては、交換後から積算しなおした積算距離データを比較用積算距離データとしているから、交換したのにすぐに予告警報が報知されることがなく、また、すぐに制御ユニットの製品としての寿命が停止してしまうことがなくなる。
【0078】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。
【0079】
警告表示装置となる液晶モジュール5を制御して予告警報する手段は、積算距離データ(差の値)が設定寿命データ(寿命距離)に予め定めた範囲内に接近してから、換言すれば、寿命距離よりも所定距離短い値に差の値が達したら、所定距離走行するたびに、警告表示装置を制御して予告警報を報知する種類を増やして行っても良い。
【0080】
例えば、当初の予告警報は、図1において、警報表示装置5のドア警告表示5cが点灯を継続するようにし、この予告警報を無視して走行を続けた場合に、その下のバッテリ警告表示5dの点灯が継続されるようにしても良い。
【0081】
これによれば、最初の予告警報が出ても、予告警報を無視して走行し続けた場合に、予告警報を報知する絵文字の数が増えていくから、より一層、車両を修理に出す等の対策を促すことができる。
【0082】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。例えば、上述の第1実施形態では、液晶モジュール5内に警告表示装置を設けたが、コンビネーションメータ1内の表示板状に設けられた警告表示装置であればよい。また、液晶表示でなく、ランプを使用した表示装置でも良い。
【0083】
また、液晶を利用した走行距離積算計でなくても良い。更に、制御ユニットの数は少なくとも複数あれば照合が可能であり、3つ以上あれば照合の一種である多数決を取れる。更に、真の積算距離データを特定する手法は、多数決をとるものに限らず、公知技術を用いて改竄させていない真の値が得られるようにしても良い。
【0084】
また、初期値が0kmである場合は、初期値が記憶装置内に無いことをもって、初期値の記憶としても良い。この場合は、初期値と現在値の送信は、現在値だけの送信とする場合も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1 コンビネーションメータ
2 スピードメータ
2a スピードメータの目盛り板
2b 指針
3 タコメータ
4 走行距離積算計
4a 液晶パネル等の表示器
5 液晶表示モジュール(警告表示装置)
5a 液晶表示ディスプレイ
5b 金属筐体
5c ドア警告表示
5d バッテリ警告表示
7 メータ用制御ユニット
8 ナビ用制御ユニット
9 エアコン用制御ユニット
10 エンジン用制御ユニット
11 ボデー用制御ユニット
7m、8m、9m、10m、11m 記憶装置(記憶手段)
20 マイクロプロセッサユニット(MPU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行距離を積算した積算走行距離を表示する走行距離表示部と、警告表示を行う警告表示部とを有する表示装置と、
前記表示装置を制御するメータ用制御ユニットを備え、
前記メータ用制御ユニットは、
当該メータ用制御ユニットが車両に搭載されたときの積算走行距離である自己初期値と、現在の積算走行距離として取得した自己現在値と、前記メータ用制御ユニットが自己の寿命に達するまでに前記車両が走行可能な距離である自己寿命距離とを記憶し、
前記自己初期値と前記自己現在値との差分である自己差分を算出して、前記自己寿命距離よりも所定距離短い自己閾値に前記自己差分が達した場合に、前記表示装置を制御して前記警告表示部による前記警告表示を行い、
前記自己寿命距離に前記自己差分が達した場合に、前記メータ用制御ユニットの寿命を停止することを特徴とする車両用計器装置。
【請求項2】
前記メータ制御ユニットは、前記自己閾値に前記自己差分が達した場合に、前記警告表示部の前記警告表示を、前記自己差分が前記自己寿命距離に達するまで継続させることを特徴とする請求項1に記載の車両用計器装置。
【請求項3】
前記表示装置以外の前記車両内機器を制御する他機器制御ユニットを備え、
前記他機器制御ユニットは、
当該他機器制御ユニットが車両に搭載されたときの積算走行距離である他機器初期値と、現在の積算走行距離として取得した他機器現在値と、前記他機器制御ユニットが自己の寿命に達するまでに前記車両が走行可能な距離である他機器寿命距離とを記憶し、
前記他機器初期値と前記他機器現在値との差分である他機器差分を算出して、前記他機器寿命距離よりも所定距離短い他機器閾値に前記他機器差分が達した場合に、前記メータ用制御ユニットに前記表示装置を制御させて前記警告表示部による前記警告表示を行い、
前記他機器寿命距離に前記他機器差分が達した場合に、前記他機器制御ユニットの寿命を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用計器装置。
【請求項4】
前記メータ制御ユニットは、前記他機器制御ユニットに記憶されている前記他機器現在値を前記他機器制御ユニットから取得して、自己が記憶している前記自己現在値と照合することにより、当該自己が記憶している前記自己現在値を更新し、更新された自己現在値を他機器制御ユニットに送信して前記他機器現在値として記憶させることを特徴とする請求項3に記載の車両用計器装置。
【請求項5】
前記メータ制御ユニットは、前記他機器閾値に前記他機器差分が達した場合に、前記警告表示部の前記警告表示を、前記他機器差分が前記他機器寿命距離に達するまで継続させることを特徴とする請求項3または4に記載の車両用計器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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