説明

車両用計器

【課題】 入力した車両情報に因らずに光源の点灯/消灯を駆動することによって、効果的な照明演出を行うことができる車両用計器を提供する。
【解決手段】 車両情報を電気信号として入力するとともに、この車両情報に関する光源1c,1dに接続される抵抗体を設けた入力回路3と、制御手段2からの制御信号に基づいて、光源1c,1dと入力回路3の間における配線4cの電位を調整し、前記車両情報から光源1c,1dへの影響を無効化する電位調整回路4と、電位調整回路4によって、前記無効化した際に、制御手段2からの制御信号に基づいて、光源1c,1dの点灯/消灯を制御することで演出動作させる光源制御回路5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるセンサなどの情報に基づいて光源を含む表示器を制御する制御手段を備えた車両用計器に関する。
【背景技術】
【0002】
車速,エンジン回転数,水温,油圧等の様々な車両に関する情報(以下、車両情報という)を表示する車両用計器としては、例えば駆動本体に指針が装着され、前記指針を表示板上で回動させることで前記車両情報を示す計測量を表示する指針表示式計器を備えるものが知られており、速度計や回転計及び燃料計がケース体に収納されたコンビネーションメータがある。
【0003】
このような車両用計器は、斬新なデザインが望まれており、車両のイグニッションスイッチ(電源スイッチ)の操作に応じて前記車両情報の表示とは異なる演出動作(非表示動作)を行わせるものが知られている。この演出動作としては、例えば、指針を表示板の目盛りに沿い零点位置から最高目盛位置まで回動させた後に前記零点位置に戻す動作を行わせたり、また指針と文字板とにそれぞれ専用の照明光源を備え、IGNスイッチのオン状態に応じて前記照明光源の点灯タイミングを異ならせて点灯させるものがある。このような計器装置としては、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−245755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の車両用計器は、イグニッションスイッチが投入されてから起動するまでに時間を要するため、車両用計器が起動して前記演出動作を行うまでに、車載されるセンサやスイッチなどに基づく車両情報が入力されて、この車両情報に基づく表示がなされてしまい効果的な演出動作ができないといった問題があった。
【0006】
例えば、指針や文字板だけでなく、インジケータや警告灯を順次点滅させて演出動作する仕様であるのに、前照灯が点灯状態であり、これに基づくインジケータが点灯状態である場合や、何等かの警報情報に基づく警告灯が点灯状態である場合には、意図した点灯順にならないことや演出動作中の表示変化が目立たなくなってしまうという問題があった。
【0007】
そこで本発明の目的とするところは、上述した課題に着目し、入力した車両情報に因らずに光源の点灯/消灯を駆動することによって、効果的な照明演出を行うことができる車両用計器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用計器は、車両情報の入力に基づいて点灯/消灯が切り換えられる光源を設け、電源スイッチの操作状態に基づいて、前記車両情報の入力に関係なく演出動作を行うように前記光源を制御する制御手段を備えた車両用計器であって、前記車両情報を電気信号として入力するとともに、この車両情報に関する前記光源に接続される抵抗体を設けた入力回路と、前記制御手段からの制御信号に基づいて、前記光源と前記入力回路の間における配線の電位を調整し、前記車両情報から前記光源への影響を無効化する電位調整回路と、前記電位調整回路によって、前記無効化した際に、前記制御手段からの制御信号に基づいて、前記光源の点灯/消灯を制御することで演出動作させる光源制御回路と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記制御手段は、前記電源スイッチがオフからオン状態に操作された場合に、前記電位調整回路と前記光源制御回路とを所定時間だけ制御するように制御信号を出力してなることを特徴とする。
【0010】
また、前記制御手段は、前記電源スイッチがオン状態からオフ状態に操作された場合に、車両用計器を停止する前に、所定時間だけ演出動作するように、前記電位調整回路と前記光源制御回路とを制御するように制御信号を出力してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、車両情報の入力に基づいて点灯/消灯が切り換えられる光源を設け、電源スイッチの操作状態に基づいて、前記車両情報の入力に関係なく演出動作を行うように前記光源を制御する制御手段を備えた車両用計器に関し、入力した車両情報に因らずに光源の点灯/消灯を駆動することによって、効果的な照明演出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態における電気的な構成を示す図。
【図2】同上実施の形態の制御による波形の例を示す図。
【図3】別な接続仕様時における電気的な構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が適用された実施の形態について添付図面を用いて説明する。
【0014】
本発明の車両用計器を、二輪自動車に搭載されたものについて実施例として説明する。図1に示すように、車両用計器Aは、光源1c,1dと、制御手段2と、入力回路3と、電位調整回路4と、光源制御回路5と、表示部6とを回路基板上に備えていて、車載された電源スイッチユニットBやエンジンユニットC,変速ユニットDなどと図示しないケーブルを介して電気的に接続され、車両利用者による操作状態や警報状態などの車両情報を入力できる。
【0015】
光源1c,1dは、例えば、各種警告灯やインジケータのバックライトとして用いられる発光ダイオードを適用でき、文字板の透過光によって、所定形状の警報内容やマークを表示出力する。この場合、光源は、エンジンユニットCに直列に接続されるエンジン異常警報灯用バックライトの光源1cや変速ユニットに直列に接続されるギア位置インジケータ用バックライトの光源1dとして複数個設けられる。
【0016】
制御手段2は、例えば、マイクロコンピュータを適用でき、入力する各種信号に基づいて演算処理するためのCPUと、このCPUにおける演算処理結果等を一時的に格納する読出し及び書換え可能なRAMや、制御プログラムや制御データを格納したROMから構成される記憶部と、前記各種信号や制御信号、クロック信号などをやり取りするためにバス接続された入出力インターフェースと、を備えている。
【0017】
制御手段2は、バッテリやイグニッションスイッチからなる電源スイッチユニットBからの信号(車両情報)や、その他の各種信号を入力できるように外部のユニットEと通信ケーブルE1を介して接続される。また、制御手段2は、車両走行時など通常処理として、車両の走行速度に応じた走行信号やエンジン回転数信号など車両の各種信号(車両情報)を入力し、これら信号に応じた制御信号を生成し、表示部6へ出力することによって、表示部6に車速やエンジン回転数などの計測値が表示出力されるように制御できる。
【0018】
入力回路3は、車両情報を電気信号として入力するとともに、この車両情報に関する光源1c,1dと直列に接続される抵抗体を設けて構成される。例えば、入力回路3は、エンジンユニットCから警報状態を示す信号を入力し、前記エンジン異常警告灯のバックライトである光源1cを信号の電圧レベルに応じて駆動(点滅/消灯)できる。車両用計器Aが通常動作時において、車両利用者は、この警告灯が点灯した際にエンジンに何らかの異常があることを確認できる。
【0019】
電位調整回路4は、制御手段2からの制御信号に基づいて、光源1c,1dと入力回路3の間における配線の電位を調整し、電気信号(車両情報)から光源1c,1dへの影響をなくすための回路である。例えば、エンジンユニットCからの電気信号がLレベルにて光源1cが点灯し、Hレベルにて光源1cが消灯する仕様の場合には、光源1cと入力回路3の間の配線4c(電位調整回路4の出力側)の電位をHレベルに強制的に固定することによって、電気信号を無効化することができる。この場合、エンジンユニットCが接地されて、光源1cよりも入力回路2側が低電位の仕様であり、電位調整回路4は、図1のように、2個のトランジスタを接続して電源スイッチユニットBからの電源と、制御手段2からの制御信号とを用いて、光源1cの電位を調整するように設けられる。なお、電位調整回路4は、2個のトランジスタではなくFETなどのスイッチング素子と代替することも考えられる。
【0020】
光源制御回路5は、制御手段2からの制御信号に基づいて駆動するように構成され、前述のように電位調整回路4によって電気信号を無効化した際に、光源1cの点灯/消灯を切り換えるための回路である。この場合、光源制御回路5は、図1のように、トランジスタやダイオード,抵抗体を用いて構成され、制御手段2からの制御信号に基づいて、光源1cの一端側(カソード側)を接地することによって、光源1cを点灯制御することができる。なお、光源制御回路5は、前述マイクロコンピュータによって構成することもできる。
【0021】
また、エンジンユニットDに関する回路構成を例に挙げたが、変速ユニットDに対しても同様に光源1dに対応して、入力回路3,電位調整回路4、光源制御回路5が設けられて接続され、変速ユニットDからの信号に基づいて、ギア位置インジケータ用の光源1dを駆動できるように構成できる。また、ギア位置インジケータが一つのものを図示したが、ギアの種別毎に複数同様な回路を設けることもできる。
【0022】
表示部6は、車両用計器A内において車両利用者が乗車状態にて視認可能な位置に設けられ、制御手段2からの制御信号に基づいて、車両情報を車両利用者に報知するためのインターフェースである。表示部6は、駆動ドライバを含む液晶表示パネルや有機ELパネルを適用でき、総積算走行距離表示や区間走行距離表示、車両外気温、燃費などの車両情報をゲージや数値などで切換え表示するものである。
【0023】
なお、表示部6は、制御手段2によって表示制御されるものであればよく、例えば、前述同様に発光ダイオードなどのバックライト光源を用いて点灯表示する警告灯やインジケータ、またはモータを駆動源として制御信号に基づいて回動する指針と、この指針の指示対象となる目盛りや数値等の指標と、を設けて、計測値を対比判読させる所謂アナログ計器であってもよいし、これらアナログ計器を液晶パネルに疑似表示するものであってもよい。
【0024】
次に、本発明に係る電源スイッチユニットBとエンジンユニットCからの信号に基づく各回路の出力例を図2のタイミングチャートを用いて説明する。
【0025】
制御手段2は、電源スイッチがオフ状態からオン状態に移行したか否かを監視し、電源スイッチがオン状態へ移行した時点(t1)以降もしくはそれ以前から、電位調整回路4を用いて電気信号の入力を無効化するとともに、光源制御回路5を用いて電気信号とは無関係な所定の点滅動作を行うように光源1cを駆動制御することによって、演出動作(T)を行う。この場合、制御手段2は、所定の順番に警告灯やインジケータが駆動するように制御することによって、車両用計器Aに躍動感を付与することができる。なお、制御手段2は、光源制御回路5を用いた光源制御による演出動作中に、電気信号が変化しても演出動作が終わるまでは、電位調整回路4を用いて電気信号を無効化し、演出動作以外の点灯/消灯がなされないように光源1cを制御できる。
【0026】
また、制御手段2は、光源制御回路5を用いた演出動作が終了(t2)した後、電位調整回路4による電位の調整を止めて、電気信号の入力に基づく光源1cの点灯/消灯がなされるように制御信号を切り換える(t3)。これによって、車両用計器Aは、演出動作ではなく、通常の車両情報の表示出力を行うことができる。また、この際、光源1cは、制御手段2による制御と関係なく、入力した電気信号に基づいて直接駆動するため、通常動作時おける制御手段2による制御がなされなくて済み、制御手段2の演算負荷にならない。また、エンジンユニットCのスイッチと光源1cとの電源を共通回路でまかなうことができるため、省電力な回路構成となる。
【0027】
斯かる車両用計器Aは、車両情報の入力に基づいて点灯/消灯が切り換えられる光源1c,1dを設け、電源スイッチの操作状態に基づいて、前記車両情報の入力に関係なく演出動作を行うように光源1c,1dを制御する制御手段2を備えた車両用計器であって、前記車両情報を電気信号として入力するとともに、この車両情報に関する光源1c,1dに接続される抵抗体を設けた入力回路3と、制御手段2からの制御信号に基づいて、光源1c,1dと入力回路3の間における配線4cの電位を調整し、前記車両情報から光源1c,1dへの影響を無効化する電位調整回路4と、電位調整回路4によって、前記無効化した際に、制御手段2からの制御信号に基づいて、光源1c,1dの点灯/消灯を制御することで演出動作させる光源制御回路5と、を備える。
【0028】
従って、入力した車両情報に因らずに光源1c,1dの点灯/消灯を駆動することができるため、意図した光源1c,1dの点灯/消灯など演習動作させることができるだけでなく、演出動作しているもの以外の光源1c,1dによる点灯を止めることで、演出動作中の表示変化を目立たせることができるため、効果的な照明演出を行うことができる。
【0029】
制御手段2は、前記電源スイッチがオフからオン状態に操作された場合に、電位調整回路4と光源制御回路5とを所定時間だけ制御するように制御信号を出力してなることによって、電源スイッチの操作による車両の躍動感を演出することができるだけでなく、演出動作後に速やかに入力情報に基づく車両情報の表示に移行できる。
【0030】
なお、本発明の車両用計器を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに設計の変更が可能なことは勿論である。
【0031】
例えば、上述した実施の形態において、電源スイッチの操作による車両用計器Aの起動時における演出動作を例に挙げて説明したが、制御手段は、車両用計器の停止時、即ち、電源スイッチがオン状態からオフ状態に操作された場合に、車両用計器を停止する前に、所定時間だけ電位調整回路と光源制御回路とを用いて、光源を演出動作させることもでき、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、光源の発光輝度を徐々に変えて点灯/消灯制御させることによって、通常の表示と異なる照明制御となり、更に効果的な演出動作を行うことができる。
【0032】
また、光源のアクティブレベルがLレベルの仕様を対象に図1に示したが、アクティブレベルがHレベルの場合や、電流方向が異なる仕様であってもよく、図3のブロック図(図1と同様箇所は同符号を記す)に示すような回路構成にて実現できる。
【0033】
図3において、Fは、制動制御ユニットであり、例えば、制動制御ユニットFからの電気信号がLレベルの際に制動装置の異常警報用の光源1fが消灯し、Hレベルの際に該光源1fが点灯する仕様の場合には、図示のように、入力回路3と、電位調整回路41と、光源制御回路51とを設けることができる。従って、制御手段2は、演出動作時に制動制御ユニットFからの電気信号を無効化しつつ、光源1fを駆動制御することができるため、上述した実施の形態と同様の作用を得ることができる。
【0034】
また、図3において、Gは、前照灯ユニットであり、例えば、前照灯ユニットGからの電気信号がLレベルの際にハイビームインジケータ用の光源1gが点灯するような仕様であり、かつ前照灯ユニットG側が光源1gよりも電位が高い仕様である場合(上述した実施の形態とは逆の電流方向の場合)には、図示のように、入力回路3と、電位調整回路42と、光源制御回路52とを設けることができる。従って、制御手段2は、演出動作時に前照灯ユニットGからの電気信号を無効化しつつ、光源1gを駆動制御することができるため、上述した実施の形態と同様の作用を得ることができる。
【0035】
また、これらの回路(図3に示す回路)と上述実施の形態の回路(図1に示す回路)とが併設することも考えられ、また、演出動作が同期する場合にあっては、光源制御手段を共用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、車両用計器に関し、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される車両用計器として適用できる。
【符号の説明】
【0037】
1c,1d 光源
2 制御手段
3 入力回路
4 電位調整回路
5 光源制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報の入力に基づいて点灯/消灯が切り換えられる光源を設け、電源スイッチの操作状態に基づいて、前記車両情報の入力に関係なく演出動作を行うように前記光源を制御する制御手段を備えた車両用計器であって、
前記車両情報を電気信号として入力するとともに、この車両情報に関する前記光源に接続される抵抗体を設けた入力回路と、
前記制御手段からの制御信号に基づいて、前記光源と前記入力回路の間における配線の電位を調整し、前記車両情報から前記光源への影響を無効化する電位調整回路と、
前記電位調整回路によって、前記無効化した際に、前記制御手段からの制御信号に基づいて、前記光源の点灯/消灯を制御することで演出動作させる光源制御回路と、
を備えることを特徴とする車両用計器。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電源スイッチがオフからオン状態に操作された場合に、前記電位調整回路と前記光源制御回路とを所定時間だけ制御するように制御信号を出力してなることを特徴とする請求項1に記載の車両用計器。
【請求項3】
前記制御手段は、前記電源スイッチがオン状態からオフ状態に操作された場合に、車両用計器を停止する前に、所定時間だけ演出動作するように、前記電位調整回路と前記光源制御回路とを制御するように制御信号を出力してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用計器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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