説明

車両用通信システム

【課題】ケーブル数の増加をより抑えながら、より容易にECU相互間のデータの通信を行わせることを可能にする。
【解決手段】車両に搭載されるECU1a・1bと、ECU1a・1bごとに設けられているとともに、この車両のボディ4を介してECU1aとECU1bとの間のデータの通信を行わせる通信機11a・11bと、を含み、通信機11a・11bは、この車両のボディ4の表面に電界を変化させながら誘起させるとともに、ボディ4の表面に誘起された電界の変化を検出することによって、ボディ4の表面を介してECU1aとECU1bとの間のデータの通信を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECU間のデータの通信に用いられる車両用通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両制御の電子化が進められてきており、車両に搭載される電子制御ユニット(ECU)の数も増加してきている。また、これらのECU間のデータの通信を専用のケーブルを通して行う技術がよく知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両に配置されて車載LANを構成するワイヤーハーネスの信号線を通してECU間でのデータの通信を行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−192970号公報
【特許文献2】特開平10−228524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、ECU間でのデータの通信を行うためには、専用のケーブルが必要となる。よって、バックアップ用の通信経路を設ける場合などには、新たにバックアップ用のケーブルを車両に配置しなければならず、車両に配置されるケーブル数を増加させてしまうという問題点を有していた。
【0005】
また、車両にケーブルを配置できる場所には制限があるため、特許文献1に開示の技術では、車両に配置しなければならないケーブル数が増加した場合に、車両へのケーブルの配置が困難になる。つまり、特許文献1に開示の技術では、車両に配置しなければならないケーブル数が増加した場合に、ECU間のデータの通信を行わせることが困難になるという問題点を有していた。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、ケーブル数の増加をより抑えながら、より容易にECU間のデータの通信を行わせることを可能にする車両用通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の車両用通信システムは、上記課題を解決するために、車両に搭載される複数のECUと、前記ECUごとに設けられているとともに、前記車両のケーブル以外の部材の表面を介して前記ECU間のデータの通信を行わせる通信装置と、を含み、前記通信装置は、前記部材の表面に電界を変化させながら誘起させるとともに、前記部材の表面に誘起された電界の変化を検出することによって、前記部材の表面を介して前記ECU間のデータの通信を行わせることを特徴としている。
【0008】
これによれば、車両のケーブル以外の部材の表面を介してECU間のデータの通信を行うことができるので、例えばECU間のデータの通信を行う通信経路を新たに設けようとした場合に、ECU間のデータの通信を行うための新たな専用のケーブルを設ける必要がなくなる。他にも、例えばECU間のデータの通信を行う車両のケーブルの代わりに、車両のケーブル以外の部材の表面を介してECU間のデータの通信を行うことが可能になるので、車両に配置されるケーブル数を減らすことも可能になる。よって、車両に配置するケーブル数の増加をより抑えることが可能になる。
【0009】
また、車両のケーブル以外の部材の表面を介してECU間のデータの通信を行うことができるので、例えばECU間のデータの通信を行う通信経路を新たに設けようとした場合に、車両の既存の構成部品などを通信経路に利用してデータの通信を行うことも可能になる。よって、通信経路を設ける場所の制約を減らすことが可能になる。よって、より容易にECU間のデータの通信を行う通信経路を設けることが可能になる。従って、より容易にECU間のデータの通信を行わせることが可能になる。
【0010】
また、請求項2の車両用通信システムでは、前記部材は、前記車両の、データ通信以外の他の用途のための構成部品であることを特徴としている。
【0011】
なお、他の用途のための部品とは、それがなくなることで通信以外の別の機能(用途)が損なわれてしまう部品である。
【0012】
これによれば、車両の、データ通信以外の他の用途のための構成部品の表面を介してECU間のデータの通信を行うことができるので、例えばECU間のデータの通信を行う通信経路を新たに設けようとした場合に、ECU間のデータの通信を行うための新たな専用のケーブルを設ける必要がなくなる。他にも、例えばECU間のデータの通信を行う車両のケーブルの代わりに、車両のケーブル以外の構成部品の表面を介してECU間のデータの通信を行うことが可能になるので、車両に配置されるケーブル数を減らすことも可能になる。よって、車両に配置するケーブル数の増加をより抑えることが可能になる。
【0013】
また、車両の構成部品の表面を介してECU間のデータの通信を行うことができるので、例えばECU間のデータの通信を行う通信経路を新たに設けようとした場合に、通信経路を設ける場所の制約を受けずに済む。よって、より容易にECU間のデータの通信を行う通信経路を設けることが可能になる。従って、より容易にECU間のデータの通信を行わせることが可能になる。
【0014】
また、請求項3の車両用通信システムでは、前記通信装置は、複数種類の前記部材の表面を介して前記ECU間の電子情報の通信を行わせることを特徴としている。
【0015】
さらに、請求項4の車両用通信システムでは、前記部材は、導電体であることを特徴としている。
【0016】
また、請求項5の車両用通信システムでは、前記部材は、誘電体であることを特徴としている。
【0017】
さらに、請求項6の車両用通信システムでは、前記複数種類の前記部材には、導電体である前記部材と誘電体である前記部材とを含むことを特徴としている。
【0018】
請求項3〜6のようにしても、ケーブル数の増加をより抑えながら、より容易にECU相互間の電子情報の通信を行わせることを可能にすることが可能になる。
【0019】
また、請求項7の車両用通信システムでは、前記通信装置は、前記構成部品の表面に加え、前記構成部品上に設けた導電体の部材の表面を介して前記ECU間のデータの通信を行わせることを特徴としている。
【0020】
さらに、請求項8の車両用通信システムでは、前記通信装置は、前記構成部品の表面に加え、前記構成部品上に設けた誘電体の部材の表面を介して前記ECU間のデータの通信を行わせることを特徴としている。
【0021】
この請求項7および8のようにすれば、車両の、データ通信以外の他の用途のための構成部品が電界を誘起させにくい材質からなっていた場合であっても、上述の構成部品上に設けられた導電体の部材や誘電体の部材の表面を介してECU間のデータの通信を行うことができる。よって、請求項7および8のようにすれば、ECU間のデータの通信を補助することも可能になる。
【0022】
また、車両のケーブル以外の部材の表面を介してECU間のデータの通信を行うことができるので、例えばECU間のデータの通信を行う通信経路を新たに設けようとした場合に、車両の既存の構成部品などを通信経路に利用してデータの通信を行うことも可能になる。よって、通信経路を設ける場所の制約を減らすことが可能になる。よって、より容易にECU間のデータの通信を行う通信経路を設けることが可能になる。従って、より容易にECU間のデータの通信を行わせることが可能になる。
【0023】
請求項9の車両用通信システムは、上記課題を解決するために、車両に搭載される複数のECUと、前記ECUごとに設けられているとともに、前記車両のケーブル以外の、導電体からなる部材を介して前記ECU間のデータの通信を行わせる通信装置と、を含み、前記通信装置は、データを変調した電気信号を前記部材に流すとともに、前記部材を介して流れてくる、データが変調された電気信号を復調することによって、前記部材を介して前記ECU間のデータの通信を行わせることを特徴としている。
【0024】
これによれば、車両のケーブル以外の部材を介してECU間のデータの通信を行うことができるので、例えばECU間のデータの通信を行う通信経路を新たに設けようとした場合に、ECU間のデータの通信を行うための新たな専用のケーブルを設ける必要がなくなる。他にも、例えばECU間のデータの通信を行う車両のケーブルの代わりに、車両のケーブル以外の部材を介してECU間のデータの通信を行うことが可能になるので、車両に配置されるケーブル数を減らすことも可能になる。よって、車両に配置するケーブル数の増加をより抑えることが可能になる。
【0025】
また、車両のケーブル以外の部材を介してECU間のデータの通信を行うことができるので、例えばECU間のデータの通信を行う通信経路を新たに設けようとした場合に、車両の既存の構成部品などを通信経路に利用してデータの通信を行うことも可能になる。よって、通信経路を設ける場所の制約を減らすことが可能になる。よって、より容易にECU間のデータの通信を行う通信経路を設けることが可能になる。従って、より容易にECU間のデータの通信を行わせることが可能になる。
【0026】
また、請求項10の車両用通信システムでは、前記部材は、前記車両の構成部品であることを特徴としている。
【0027】
これによれば、車両のケーブル以外の構成部品を介してECU間のデータの通信を行うことができるので、例えばECU間のデータの通信を行う通信経路を新たに設けようとした場合に、ECU間のデータの通信を行うための新たな専用のケーブルを設ける必要がなくなる。他にも、例えばECU間のデータの通信を行う車両のケーブルの代わりに、車両のケーブル以外の構成部品を介してECU間のデータの通信を行うことが可能になるので、車両に配置されるケーブル数を減らすことも可能になる。よって、車両に配置するケーブル数の増加をより抑えることが可能になる。
【0028】
また、車両の構成部品を介してECU間のデータの通信を行うことができるので、例えばECU間のデータの通信を行う通信経路を新たに設けようとした場合に、通信経路を設ける場所の制約を受けずに済む。よって、より容易にECU間のデータの通信を行う通信経路を設けることが可能になる。従って、より容易にECU間のデータの通信を行わせることが可能になる。
【0029】
また、請求項11の車両用通信システムでは、前記通信装置は、前記構成部品に加え、導電体の部材を介して前記ECU間のデータの通信を行わせることを特徴としている。
【0030】
これによれば、データの通信を行わせようとするECU間を、車両のケーブル以外の導電体からなる構成部品のみで繋げなかった場合であっても、上述の導電体の部材を介してECU間のデータの通信を行うことができる。よって、請求項11のようにすれば、ECU間のデータの通信を補助することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された車両用通信システム100の概略的な構成を示す図である。図1に示す車両用通信システム100は、車両に搭載されるものであり、ECU(electric controlunit)1a・1b、ECU基板2a・2b、ECUケース3a・3bおよび車両のボディ4を含んでいる。また、ECU1a・1bは、通信機11a・11bを備えている。さらに、通信機11a・11bは、通信用電極12a・12bおよび通信用モジュール13a・13bを備えている。
【0032】
ECU1a・1bは、車両に搭載される電装品を制御する電子制御ユニットであって、通信機11a・11bを備えていることを除けば周知のECUと同様のものである。つまり、ECU1a・1bは、通常のコンピュータとして構成されており、通信機11a・11bの他に、周知のCPU、ROM、RAM、I/O、およびこれらの構成を接続するバスライン(いずれも図示せず)を備えている。
【0033】
ECU基板2a・2bは、ECU1a・1bが実装される基板である。具体的には、ECU基板2aにはECU1aが実装されており、ECU基板2bにはECU1bが実装されている。なお、ECU基板2a・2bの材質は、樹脂やセラミックなど、周知のECU基板と同様のものである。
【0034】
ECUケース3a・3bは、ECU1a・1bが実装されたECU基板2a・2bを収容するケースであって、ボディ4にネジなどで固定されている。具体的には、ECUケース3aには、ECU1aを実装したECU基板2aが収容されており、ECUケース3bには、ECU1bを実装したECU基板2bが収容されている。なお、ECUケース3a・3bの材質は、ABS樹脂等の樹脂など、周知のECUケースと同様のものである。
【0035】
ボディ4は、車両の車体部分である。よって、ボディ4は、請求項の既存の構成部品として機能する。なお、ボディ4の材質は、鉄板等の金属や内側に金属等の導電体を備えた樹脂などの導電体および誘電体である。
【0036】
ECU1a・1bの通信機11a・11bは、ボディ4の表面に電界を変化させながら誘起させるとともに、ボディ4の表面に誘起された電界の変化を検出することによって、ボディ4の表面を介してECU1aとECU1bとの間でのデータの通信を行わせる部材である。なお、ECU1a・1bの通信機11a・11bは、周知の電界方式による人体通信に用いられる送受信機と同様の機構によって、人体の代わりにボディ4の表面に電界を変化させながら誘起するとともに、この電界の変化を検出することによってデータの通信を行わせる。なお、人体通信とは、例えば特許文献2に開示されているように、人体を伝送路として用いる通信である。
【0037】
次に、図2を用いて、通信機11a・11bの概略的な構成について説明を行う。ここでは、通信機11aを例に挙げて説明を行う。図2は、通信機11aの概略的な構成を示すブロック図である。前述したように、通信機11aは、通信用電極12aおよび通信用モジュール13aを備えている。また、図2に示すように、通信用モジュール13aは、マイコン14a、送信部15a、および受信部16aを備えている。なお、ここでは、通信機11aを例に挙げて説明を行うが、通信機11bについても通信用電極12bとマイコン14b、送信部15b、および受信部16bを備えている通信用モジュール13bとを備え、通信機11aと同様の機能を有しているものとする。
【0038】
通信用電極12aは、電界方式の人体通信に用いられる周知の通信用電極と同様のものである。具体的には、通信用電極12aは、ECU1aの外部に備えられており、ECUケース3aの外部で絶縁体を介してボディ4に接触させてある。
【0039】
通信用モジュール13aは、ECU1aの内部に備えられている。通信用モジュール13aのマイコン14aは、ECU1aのCPUからデータ信号を送信するよう指示があったときに、ECU1aのCPUから送られてきたデータ信号をこのデータ信号に応じた電圧の変化の情報に変換する。そして、マイコン14aは、通信用電極12aからボディ4の表面に、この電圧の変化の情報に従った電圧をかけさせるように通信用モジュール13の送信部15aを制御する。送信部15aは、電位差を通信用電極12aと図示しない接地用のグランド電極との間に発生させることによって、通信用電極12aからボディ4の表面に電圧をかけさせる。なお、通信用電極12aからボディ4の表面に電圧がかけられると、ボディ4の表面に電界が誘起される。このように、本実施形態では、データ信号を、ボディ4の表面に誘起させる電界の変化に変換することによって、ボディ4の表面を通信経路とした情報の伝達を行っている。
【0040】
一方、通信機11bによってボディ4の表面に誘起された電界の広がりが通信機11aの通信用電極12aに到達したときに、通信用モジュール13aの受信部16aは、この電界の変化を検出する。続いて、受信部16aは、検出したこの電界の変化をデータ信号に変換してマイコン14aに送る。そして、マイコン14aは、受信部16aから送られてきたデータ信号をECU1aに送る。なお、受信部16aでは、例えば、電界の変化を光信号に変換して検出する周知のフォトニック電界センサによって電界を検出して光信号に変換し、周知の受光回路でこの光信号をデータ信号に変換することによって、電界の変化をデータ信号に変換する。
【0041】
以上の構成によれば、ボディ4の表面を介してECU間のデータの通信を行うことができるので、例えばECU間のデータの通信を行う通信経路を新たに設けようとした場合に、ECU間のデータの通信を行うための専用のケーブル(以下、通信用ケーブルと呼ぶ)を新たに設ける必要がなくなる。他にも、既存の通信用ケーブルを用いてデータの通信を行っていたECU間の通信を、ボディ4の表面を介したECU間の通信に切り替えることが可能になるので、車両に配置される通信用ケーブルの数を減らすことも可能になる。例えば、ECU間のバックアップ通信用の通信経路としてボディ4の表面を介した上述の通信経路を用いることによって、バックアップ通信用の通信用ケーブルを設けることなくサブ通信を実現することが可能になる。従って、車両に配置する通信用ケーブルの数の増加をより抑えることが可能になる。
【0042】
また、車両のボディ4の表面を介してECU間のデータの通信を行うことができるので、例えばECU間のデータの通信を行う通信経路を新たに設けようとした場合に、通信用ケーブルを用いる構成に比べ、通信経路を設ける場所の制約を受けずに済む。よって、より容易にECU間のデータの通信を行う通信経路を設けることが可能になる。従って、より容易にECU間のデータの通信を行わせることが可能になる。
【0043】
なお、本実施形態では、車両のボディ4の表面を介してデータの通信を行う構成の一例を示したが、必ずしもこれに限らない。データの通信に用いる伝送路としては、通信用電極12a・12bによって誘起される電界を伝播することが可能な部材でありさえすればよい。つまり、導電体からなる部材であっても、誘電体からなる部材であってもよく、例えばシャーシの表面やケーブルの保護皮膜の表面など、車両の他の既存の構成部品の表面であってもよい。さらに、複数の既存の構成部品の表面を介してデータの通信を行う構成であってもよい。さらに、上述したような車両の既存の構成部品以外にも、車両の既存の構成部品上に導電体や誘電体からなる部材を追加することによって、この部材を介してデータの通信を行う構成としてもよい。なお、ここで言うところの導電体や誘電体からなる部材とは、導電性の固形物や誘電性の固形物(部品など)であってもよいし、導電性のシート状の部材や誘電性のシート状の部材であってもよいし、車両の構成品上に塗布や筆で描くなどした導電性の塗料や誘電性の塗料であってもよい。
【0044】
また、本実施形態では、車両用通信システム100にECU1aとECU1bとの2つのECUを含む構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、前述した通信機11a・11bと同様の通信機を備えるECUを2つよりも多く車両用通信システム100に含む構成であってもよい。なお、車両用通信システム100に、前述した通信機11a・11bと同様の通信機を備えるECUを2つよりも多く含む場合には、一般的な車載LANと同様にして、通信プロトコルによって特定のECU同士でのデータの送受信を行わせるようにすればよい。この場合、マイコン14a・14bでデータの送受信のタイミングを制御する構成とすればよい。また、通信方式としては、マルチマスタ方式を採用する構成であってもよいし、シングルマスタ方式を採用する構成であってもよい。
【0045】
なお、本実施形態では、データ信号を、車両の既存の構成部品の表面に誘起させる電界の変化に変換することによって、車両の既存の構成部品の表面を通信経路とした情報の伝達を可能にする構成の一例を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、データ信号を変調した電流を車両の既存の構成部品に流すことによって、車両の既存の構成部品を通信経路とした情報の伝達を可能にする構成であってもよい。以下では、データ信号を変調した電流を車両の既存の構成部品に流すことによって、車両の既存の構成部品を通信経路とした情報の伝達を可能にする構成の一例について図3を用いて説明を行う。図3は、車両用通信システム200の概略的な構成を示す図である。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
図3に示す車両用通信システム200は、ECU5a・5b、ECU基板2a・2b、ECUケース3a・3bおよび車両のボディ6を含んでいる。また、ECU5a・5bは、通信機51a・51bを備えている。さらに、通信機51a・51bは、通信用電極52a・52bおよび通信用モジュール53a・53bを備えている。
【0047】
ECU5a・5bは、通信機11a・11bの代わりに通信機51a・51bを備えていることを除けば、ECU1a・1bと同様のものである。また、ボディ6は、車両の車体部分である。よって、ボディ6は、請求項の既存の構成部品として機能する。なお、ボディ6の材質は、鉄板等の金属などの導電体である。
【0048】
ECU5a・5bの通信機51a・51bは、データ信号を変調した電流をボディ6に流すとともに、ボディ6を流れてきた電流(つまり、データ信号が変調された電流)を復調することによって、ボディ6を介してECU5aとECU5bとの間でのデータの通信を行わせる部材である。なお、ECU5a・5bの通信機51a・51bは、周知の電流方式による人体通信に用いられる送受信機と同様の機構によって、人体の代わりにボディ6にデータ信号を変調させた電流を流すとともに、この変調された電流を受け取って復調することによってデータの通信を行わせる。
【0049】
次に、図4を用いて、通信機51a・51bの概略的な構成について説明を行う。ここでは、通信機51aを例に挙げて説明を行う。図4は、通信機51aの概略的な構成を示すブロック図である。前述したように、通信機51aは、通信用電極52aおよび通信用モジュール53aを備えている。また、図4に示すように、通信用モジュール53aは、マイコン54a、送信部55a、および受信部56aを備えている。さらに、送信部55aは変調回路65aを備え、受信部56aは復調回路66aを備えている。なお、ここでは、通信機51aを例に挙げて説明を行うが、通信機51bについても通信用電極52bとマイコン54b、送信部55b、変調回路65b、受信部56b、および復調回路66bを備えている通信用モジュール53bとを備え、通信機51aと同様の機能を有しているものとする。
【0050】
通信用電極52aは、電流方式の人体通信に用いられる周知の通信用電極と同様のものである。具体的には、通信用電極52aは、ECU1aの外部に備えられており、ECUケース3aの外部で通電可能なようにボディ6に接触させてある。
【0051】
通信用モジュール53aは、ECU5aの内部に備えられている。通信用モジュール53aのマイコン54aは、ECU5aのCPUからデータ信号を送信するよう指示があったときに、ECU5aのCPUから送られてきたデータ信号を送信部55aに送る。送信部55aの変調回路では、マイコン54aから送られてきたデータ信号に対して、このデータ信号に応じた変調を行う。そして、送信部55aは、このデータ信号を変調させた電流を通信用電極52aからボディ6に流させる。このように、本実施形態では、データ信号を、このデータ信号に応じた電流に変調してボディ6に流すことによって、ボディ6を通信経路とした情報の伝達を行っている。つまり、電流の量を電気信号として用いて車両の既存の構成部品を解したデータの通信を行っている。
【0052】
一方、通信機51bによってボディ6に流された上述の電流が通信機51aの通信用電極52aに到達したときに、通信用モジュール53aの受信部56aがこの電流を受け取る。続いて、受信部56aの復調回路66aでこの電流を復調し、この電流に応じたデータ信号を得る。そして、受信部56aは、得られたデータ信号をマイコン54aに送り、マイコン54aは、受信部56aから送られてきたデータ信号をECU5aに送る。
【0053】
以上の構成によれば、車両のケーブル以外の構成部品である既存のボディ6を介してECU間のデータの通信を行うことができるので、例えばECU間のデータの通信を行う通信経路を新たに設けようとした場合に、新たな通信用ケーブルを設ける必要がなくなる。他にも、既存の通信用ケーブルを用いてデータの通信を行っていたECU間の通信を、ボディ6を介したECU間の通信に切り替えることが可能になるので、車両に配置される通信用ケーブルの数を減らすことも可能になる。例えば、ECU間のバックアップ通信用の通信経路としてボディ6を介した上述の通信経路を用いることによって、バックアップ通信用の通信用ケーブルを設けることなくサブ通信を実現することが可能になる。よって、車両に配置する通信用ケーブルの数の増加をより抑えることが可能になる。
【0054】
また、車両のボディ6を介してECU間のデータの通信を行うことができるので、例えばECU間のデータの通信を行う通信経路を新たに設けようとした場合に、通信用ケーブルを用いる構成に比べ、通信経路を設ける場所の制約を受けずに済む。よって、より容易にECU間のデータの通信を行う通信経路を設けることが可能になる。従って、より容易にECU間のデータの通信を行わせることが可能になる。
【0055】
なお、本実施形態では、車両のボディ6を介してデータの通信を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。データの通信に用いる伝送路としては、車両のケーブルの導線を除く、通信用電極52a・52bから電圧をかけることによって電流を流すことが可能な部材でありさえすればよい。例えば、シャーシなど、車両の、データ通信以外の他の用途のための構成部品であってもよい。また、複数のこのような構成部品を介してデータの通信を行う構成であってもよい。さらに、上述したような車両の構成部品以外にも、車両の構成部品上に導電体からなる部材を追加することによって、この部材を介してデータの通信を行う構成としてもよい。なお、ここで言うところの導電体からなる部材とは、導電性の固形物であってもよいし、導電性のシート状の部材であってもよいし、車両の構成品上に塗布や筆で描くなどした導電性の塗料であってもよい。
【0056】
また、本実施形態では、車両用通信システム200にECU5aとECU5bとの2つのECUを含む構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、前述した通信機51a・51bと同様の通信機を備えるECUを2つよりも多く車両用通信システム200に含む構成であってもよい。なお、車両用通信システム200に、前述した通信機51a・51bと同様の通信機を備えるECUを2つよりも多く含む場合には、一般的な車載LANと同様にして、通信プロトコルによって特定のECU同士でのデータの送受信を行わせるようにすればよい。この場合、マイコン54a・54bでデータの送受信のタイミングを制御する構成とすればよい。また、通信方式としては、マルチマスタ方式を採用する構成であってもよいし、シングルマスタ方式を採用する構成であってもよい。
【0057】
さらに、本実施形態では、電流の量を電気信号として用いて車両の既存の構成部品を解したデータの通信を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、電圧(電位差)の変化量を電気信号として用いて車両の既存の構成部品を解したデータの通信を行う構成であってもよい。
【0058】
なお、前述の実施形態では、ECUケース3a・3bに1つのECU基板2a・2bを収容する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ECUケース3a・3bに2つ以上のECU基板が収容される構成であってもよい。
【0059】
また、本発明の構成によれば、通信用ケーブルを用いなくても既存のボディといった車両の構成部品を通信経路としてECUのネットワークを形成することが可能になるので、複数のECU間での認証によってエンジンの始動の許可やステアリングのロックの解除などを行うイモビライザーシステムなどにおいて、ECU間のネットワークを形成させることが容易になる。従って、本発明の構成によれば、車両のセキュリティ性を向上させることも容易になる。
【0060】
さらに、本発明の構成によれば、ECU間のネットワークに新たなECUを追加させる場合にも、通信用ケーブルを新たに設けてこのネットワークに新たなECUを追加させる必要がなく、ネットワークに参加しているECUのプログラムを変更するだけでこのネットワークにECUを新たに追加することができる。従って、本発明の構成によれば、容易にECU間のネットワークに新たなECUを追加することもできる。
【0061】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】車両用通信システム100の概略的な構成を示す図である。
【図2】通信機11aの概略的な構成を示すブロック図である。
【図3】車両用通信システム200の概略的な構成を示す図である。
【図4】通信機51aの概略的な構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0063】
1a・1b ECU、2a・2b ECU基板、3a・3b ECUケース、4 ボディ(部材、構成部品)、5a・5b ECU、11a・11b 通信機(通信装置)、12a・12b 通信用電極、13a・13b 通信用モジュール、14a・14b マイコン、15a・15b 送信部、16a・16b 受信部、51a・51b 通信機(通信装置)、52a・52b 通信用電極、53a・53b 通信用モジュール、54a・54b マイコン、55a・55b 送信部、56a・56b 受信部、65a・65b 変調回路、66a・66b 復調回路、100 車両用通信システム、200 車両用通信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される複数のECUと、
前記ECUごとに設けられているとともに、前記車両のケーブル以外の部材の表面を介して前記ECU間のデータの通信を行わせる通信装置と、を含み、
前記通信装置は、前記部材の表面に電界を変化させながら誘起させるとともに、前記部材の表面に誘起された電界の変化を検出することによって、前記部材の表面を介して前記ECU間のデータの通信を行わせることを特徴とする車両用通信システム。
【請求項2】
前記部材は、前記車両の、データ通信以外の他の用途のための構成部品であることを特徴とする請求項1に記載の車両用通信システム。
【請求項3】
前記通信装置は、複数種類の前記部材の表面を介して前記ECU間の電子情報の通信を行わせることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用通信システム。
【請求項4】
前記部材は、導電体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用通信システム。
【請求項5】
前記部材は、誘電体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用通信システム。
【請求項6】
前記複数種類の前記部材には、導電体である前記部材と誘電体である前記部材とを含むことを特徴とする請求項3に記載の車両用通信システム。
【請求項7】
前記通信装置は、前記構成部品の表面に加え、前記構成部品上に設けた導電体の部材の表面を介して前記ECU間のデータの通信を行わせることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の車両用通信システム。
【請求項8】
前記通信装置は、前記構成部品の表面に加え、前記構成部品上に設けた誘電体の部材の表面を介して前記ECU間のデータの通信を行わせることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の車両用通信システム。
【請求項9】
車両に搭載される複数のECUと、
前記ECUごとに設けられているとともに、前記車両のケーブル以外の、導電体からなる部材を介して前記ECU間のデータの通信を行わせる通信装置と、を含み、
前記通信装置は、データを変調した電気信号を前記部材に流すとともに、前記部材を介して流れてくる、データが変調された電気信号を復調することによって、前記部材を介して前記ECU間のデータの通信を行わせることを特徴とする車両用通信システム。
【請求項10】
前記部材は、前記車両の構成部品であることを特徴とする請求項9に記載の車両用通信システム。
【請求項11】
前記通信装置は、前記構成部品に加え、導電体の部材を介して前記ECU間のデータの通信を行わせることを特徴とする請求項10に記載の車両用通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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