説明

車両用通信制御システム、車載装置、及び携帯機

【課題】携帯機と車載装置との好適な通信環境を容易に構築することができる車両用通信制御システム、車載装置、及び携帯機を提供する。
【解決手段】携帯機10は、車載装置20から送信されるリクエスト信号を受信した際にそのリクエスト信号の受信レベルを検出し、その受信レベルを示す受信レベルコードを含むIDコード信号を送信する通信制御部11を備えている。車載装置20は車両制御部21を備え、該車両制御部21は、IDコード信号を受信した際に、受信レベルコードによって示される受信レベルと予め設定された室内境界閾値及び車外境界閾値とを比較する。その結果、車両制御部21は、該受信レベルが室内境界閾値よりも高いと判断した場合にはエンジン始動許可状態となり、該受信レベルが車外境界閾値よりも高く、且つ室内境界閾値以下であると判断した場合には、ドア錠を自動的に解錠させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機能を有する携帯機と、その携帯機との無線通信に基づいて車両を制御する車載装置とを備えた車両用通信制御システム、該車両用通信制御システムに用いられる車載装置及び携帯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車においては、基本性能や安全性の向上はもとより、利便性の向上が求められている。そこで、こうした利便性の向上を目的として、従来、ユーザによって所持される携帯機と車載装置(車両制御装置)との間で自動的に無線通信を行い、該無線通信が成立したことを条件としてドア錠の施解錠を自動的に行ったり、エンジンの始動を可能としたりする車両用通信制御システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
詳しくは、車載装置は、車両周辺や車両室内に無線信号(リクエスト信号)を間欠的に送信する。車両周辺にリクエスト信号が送信される場合、リクエスト信号は車両周辺の所定領域(車外領域)に送信され、車両室内にリクエスト信号が送信される場合、リクエスト信号は車両室内の領域(室内領域)のみに送信され、車外には送信されないように設定されている。このため、通信機能を有する携帯機を所持したユーザ(運転者)が車外領域や室内領域に進入すると、携帯機はリクエスト信号を受信するとともに、そのリクエスト信号に応答して自身に設定されたIDコードを含むIDコード信号を返信する。車載装置は、このIDコード信号を受信し、自身に設定されたIDコードとIDコード信号に含まれるIDコードとの照合を行う。その結果、車両制御装置は、それらIDコード同士が一致した際に携帯機との通信が成立したと判断し、該IDコード信号が車外領域に送信したリクエスト信号に応答したものであればドア錠を自動的に解錠させ、該IDコード信号が室内領域に送信したリクエスト信号に応答したものであればエンジンを始動可能な状態にする。すなわち、車載装置と携帯機との間で自動的に相互通信が行われ、その相互通信が確立したことを条件としてドア錠が自動的に解錠されたり、エンジンが始動可能な状態となったりする。このため、ドアの施解錠やエンジンの始動に機械キーを用いるなどの煩雑な操作が不要となり、車両の操作性が向上する。また、電気的な照合に基づいて施解錠、エンジン始動が制御されるため、セキュリティレベルも向上する。
【特許文献1】特開2001−311333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車種毎に車両室内の形状や大きさが異なるとともに、車載装置の配設位置も車種毎に異なる場合があるため、リクエスト信号の送信領域である車外領域及び室内領域も各車種に応じて設定する必要がある。すなわち、リクエスト信号の出力強度を車種に応じて個別に設定する必要がある。
【0005】
しかしながら、特に、車外に存在する携帯機が室内領域に送信されたリクエスト信号に応答してIDコード信号を返信してしまうと、車載装置は、携帯機が車外に存在するにもかかわらず室内に存在すると判断してしまうため、室内領域を高精度に設定する必要があり、リクエスト信号の出力強度の調整が煩雑且つ困難である。
【0006】
また、一般に、携帯機の受信感度には個体差によるバラツキが生じるため、こうした受信感度のバラツキにも対応してリクエスト信号の出力強度を調整する必要があり、その作業が非常に煩雑である。
【0007】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、携帯機と車載装置との好適な通信環境を容易に構築することができる車両用通信制御システム、車載装置、及び携帯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、無線通信機能を有する携帯機と、その携帯機との無線通信に基づいて車両を制御する車載装置とを備えた車両用通信制御システムにおいて、前記携帯機は、前記車載装置から送信されるリクエスト信号を受信した際にそのリクエスト信号の受信レベルを検出し、その受信レベルを示す受信レベルコードを含む応答信号を送信する送信制御手段を備え、前記車載装置は、前記応答信号を受信した際に、前記受信レベルコードによって示される受信レベルと予め設定された閾値とを比較し、該受信レベルが閾値よりも高いと判断した際に対応する制御を行う車両制御手段を備えることを要旨とする。
【0009】
上記構成によると、携帯機の送信制御手段は、リクエスト信号を受信すると、そのリクエスト信号の受信レベルを示す受信レベルコードを含む応答信号を送信する。そして、車載装置の車両制御手段は、携帯機からの応答信号を受信すると、その応答信号に含まれる受信レベルコードによって示される受信レベルと自身に予め設定された閾値とを比較し、該受信レベルが閾値よりも高いと判断した際に対応する制御を行う。このため、例えば閾値を高く設定した場合には、該閾値を低く設定した場合に比べて、リクエスト信号の送信源に携帯機が近くに存在しないと対応する制御が行われないこととなる。すなわち、閾値の設定値を適宜変更することにより、対応する制御を行うために必要な携帯機と車載装置との通信距離が変化する。こうした閾値の変更は車両制御手段のソフトウェア上の小変更によって対応可能であるため、リクエスト信号の出力強度を変更させるよりも容易に行うことができる。よって、携帯機と車載装置との好適な通信環境を容易に構築することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用通信制御システムにおいて、前記閾値として、前記携帯機が車外において車両に最も近接した位置における前記リクエスト信号の受信レベルとなる室内境界閾値が設定され、前記車両制御手段は、前記受信レベルコードによって示される受信レベルが前記室内境界閾値よりも高いと判断した際に、前記携帯機が車両室内に存在すると判断して対応する室内車両制御を行うことを要旨とする。
【0011】
上記構成によると、閾値として室内境界閾値が設定されている。そして、車両制御手段は、受信レベルコードによって示される受信レベルが該室内境界閾値よりも高いと判断した際に対応する室内車両制御を行う。すなわち、携帯機が車外に存在する状態にあっては受信レベルが室内境界閾値を超えることはないため、携帯機が車外に存在するにもかかわらず室内車両制御が行われてしまうことがない。しかも、リクエスト信号の出力強度を何ら変更せず、こうした室内境界閾値を車種毎に設定することで各車種に対応させることができるため、携帯機と車載装置との好適な通信環境を容易に構築することが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の車両用通信制御システムにおいて、前記閾値として、前記室内境界閾値よりも低い受信レベルとなる車外境界閾値が設定され、前記車両制御手段は、前記受信レベルコードによって示される受信レベルが、前記車外境界閾値よりも高く、且つ前記室内境界閾値以下であると判断した際に、前記携帯機が車外制御の対応領域に存在すると判断して対応する車外制御を行うことを要旨とする。
【0013】
上記構成によると、車両制御手段は、受信レベルコードによって示される受信レベルが車外境界閾値よりも高く、且つ室内境界閾値以下であると判断すると、室内車両制御とは異なる車外制御を行う。すなわち、車両制御手段は、受信レベルに応じて個別の制御を行うことが可能となる。しかも、受信レベルが車外境界閾値以下の場合には車外制御を行わないため、車外制御を行うために必要な携帯機と車載装置との通信距離を、車外境界閾値によって設定可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、無線通信機能を有する携帯機と、その携帯機との無線通信に基づいて車両を制御する車載装置とを備えた車両用通信制御システムにおいて、前記携帯機は、前記車載装置から送信されるリクエスト信号を受信した際にそのリクエスト信号の受信レベルを検出するとともに、その受信レベルと予め設定された閾値とを比較し、該受信レベルが該閾値よりも高いと判断した際にその旨を示す受信コードを含む応答信号を送信する送信制御手段を備え、前記車載装置は、前記受信コードを含む応答信号を受信した際に、前記受信コードに対応する制御を行う車両制御手段を備えることを要旨とする。
【0015】
上記構成によると、携帯機の送信制御手段は、リクエスト信号を受信すると、そのリクエスト信号の受信レベルと予め設定された閾値とを比較し、該受信レベルが閾値よりも高いと判断した際にその旨を示す受信コードを含む応答信号を送信する。そして、車載装置の車両制御手段は、受信コードを含む携帯機からの応答信号を受信すると、該受信コードに対応する制御を行う。このため、例えば閾値を高く設定した場合には、該閾値を低く設定した場合に比べて、リクエスト信号の送信源に携帯機が近くに存在しないと対応する制御が行われないこととなる。すなわち、閾値の設定値を適宜変更することにより、対応する制御を行うために必要な携帯機と車載装置との通信距離が変化する。こうした閾値の変更は送信制御手段のソフトウェア上の小変更によって対応可能であるため、リクエスト信号の出力強度を変更させるよりも容易に行うことができる。よって、携帯機と車載装置との好適な通信環境を容易に構築することが可能となる。しかも、こうした好適な通信環境を構築するにあたり、携帯機側の設定のみを変更することで対応させることができるため、該変更をより簡便に行うことができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の車両用通信制御システムにおいて、前記閾値として、前記携帯機が車外において車両に最も近接した位置における前記リクエスト信号の受信レベルとなる室内境界閾値が設定され、前記送信制御手段は、前記リクエスト信号の受信レベルが前記室内境界閾値よりも高いと判断した場合には室内コードを前記受信コードとして設定する一方、該受信レベルが前記室内境界閾値以下であると判断した場合には車外コードを前記受信コードとして設定して前記応答信号を送信し、前記車両制御手段は、前記応答信号に室内コードが含まれている場合には前記携帯機が車両室内に存在すると判断して対応する室内車両制御を行い、前記応答信号に車外コードが含まれている場合には前記携帯機が車外近傍に存在すると判断して対応する車外制御を行うことを要旨とする。
【0017】
上記構成によると、請求項3と同等の作用を奏する。
請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の車両用通信制御システムにおいて、前記閾値として前記室内境界閾値よりも低い値に設定された送信境界閾値が設定され、前記送信制御手段は、前記リクエスト信号の受信レベルが前記送信境界閾値よりも低いと判断した場合には、前記応答信号を送信しないことを要旨とする。
【0018】
上記構成によると、送信境界閾値を設定することにより、携帯機は、たとえリクエスト信号を受信したとしても、該送信境界閾値よりも低い受信レベルとなる車載装置との距離関係にある場合には応答信号を送信しない。このため、不要な応答信号の送信が抑制され、携帯機の電力消費量を低減可能となる。
【0019】
請求項7に記載の発明では、無線通信機能を有する携帯機との無線通信に基づいて車両を制御する車載装置であって、前記携帯機に対して応答信号の返信を要求するリクエスト信号を送信する一方、該リクエスト信号の受信レベルを示す受信レベルコードを含む前記応答信号を受信した際に、その受信レベルと予め設定された閾値とを比較し、該受信レベルが該閾値よりも高いと判断した際に対応する制御を行う車両制御手段を備えることを要旨とする。
【0020】
上記構成によると、受信レベルが閾値よりも高いと判断された場合にのみ、車両制御手段によって対応する制御が行われる。換言すれば、受信レベルが閾値よりも高いと判断されない限り、対応する制御は行われない。このため、例えば閾値を高く設定した場合には、該閾値を低く設定した場合に比べて、リクエスト信号の送信源に携帯機が近くに存在しないと対応する制御が行われないこととなる。すなわち、閾値の設定値を適宜変更することにより、対応する制御を行うために必要な携帯機と車載装置との通信距離が変化する。こうした閾値の変更は車両制御手段のソフトウェア上の小変更によって対応可能であるため、リクエスト信号の出力強度を変更させるよりも容易に行うことができる。よって、携帯機と車載装置との好適な通信環境を容易に構築することが可能となる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、無線通信機能を有する携帯機との無線通信に基づいて車両を制御する車載装置であって、前記携帯機に対して応答信号の返信を要求するリクエスト信号を送信する一方、該リクエスト信号の受信レベルに応じて設定される受信コードを含む前記応答信号を受信した際に、その受信コードに基づいて対応する制御を行う車両制御手段を備えることを要旨とする。
【0022】
上記構成によると、受信コードを含む応答信号が受信された場合にのみ、車両制御手段によって対応する制御が行われる。換言すれば、受信コードを含む応答信号が受信されない限り、対応する制御は行われない。このため、上記作用と同等の作用を奏する。
【0023】
請求項9に記載の発明では、車両を制御する車載装置との無線通信を行う携帯機であって、前記車載装置から送信されるリクエスト信号を受信した際にそのリクエスト信号の受信レベルを検出し、その受信レベルを示す受信レベルコードを含む応答信号を送信する送信制御手段を備えることを要旨とする。
【0024】
上記構成によると、車載装置から送信されるリクエスト信号が携帯機によって受信されると、その携帯機からはリクエスト信号の受信レベルを示す受信レベルコードを含む応答信号が送信される。このため、車載装置は、応答信号を受信して受信レベルを認識することにより、携帯機との距離を認識可能となる。よって、車載装置は、この受信レベルに基づいて各種制御を行うことが可能となる。すなわち、こうした携帯機を用いることにより、車載装置との通信に基づく車両制御に最適な通信環境を構築することが可能となる。
【0025】
請求項10に記載の発明では、車両を制御する車載装置との無線通信を行う携帯機であって、前記車載装置から送信されるリクエスト信号を受信した際にそのリクエスト信号の受信レベルを検出するとともに、該受信レベルと予め設定された閾値とを比較し、該受信レベルが該閾値よりも高いと判断した際にその旨を示す受信コードを含む応答信号を送信する送信制御手段を備えることを要旨とする。
【0026】
上記構成によると、携帯機は、車載装置から送信されるリクエスト信号を受信した際に、そのリクエスト信号の受信レベルと予め設定された閾値との比較を行う。そして、携帯機は、リクエスト信号の受信レベルが予め設定された閾値よりも高いと判断した場合に、その旨を示す受信コードを含む応答信号を送信する。このため、車載装置は、受信した応答信号における受信コードの有無に基づいて各種制御を行うことが可能となる。
【0027】
請求項11に記載の発明では、請求項9または請求項10に記載の携帯機において、前記送信制御手段は、前記リクエスト信号の受信レベルが予め設定された送信境界閾値よりも低いと判断した場合には、応答信号を送信しないことを要旨とする。
【0028】
上記構成によると、携帯機は、たとえリクエスト信号を受信したとしても、そのリクエスト信号の受信レベルが送信可否閾値よりも低い場合には応答信号を送信しない。このため、不要な応答信号の送信が抑制され、携帯機の電力消費量を低減可能となる。
【発明の効果】
【0029】
以上詳述したように、本発明によれば、携帯機と車載装置との好適な通信環境を容易に構築することができる車両用通信制御システム、車載装置、及び携帯機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図4に基づき詳細に説明する。
図1に示すように、車両用通信制御システム1は、車両の所有者(ユーザ)によって所持される携帯機10と、車両2に配設された車載装置20とを備えている。
【0031】
<携帯機10の構成>
携帯機10は無線通信機能を有し、車載装置20と相互通信可能となっている。詳しくは、携帯機10は、CPU、ROM、RAM等からなるコンピュータユニットによって構成された送信制御手段としての通信制御部11と、その通信制御部11に電気的に接続された受信回路12及び送信回路13とを備えている。
【0032】
受信回路12は、車載装置20から送信される電波(リクエスト信号)を受信すると、該リクエスト信号の受信レベルを検出するとともにパルス信号に復調し、該リクエスト信号の受信レベルを含む復調信号を通信制御部11に出力する。
【0033】
通信制御部11は不揮発性のメモリ11aを備え、そのメモリ11aには予め設定された固有のIDコードが記録されている。そして、通信制御部11は、受信回路12から復調信号が入力されると、その復調信号に含まれるリクエスト信号の受信レベルを示す受信レベルコードと、メモリ11aに記録されたIDコードとを含むIDコード信号を送信回路13に出力する。
【0034】
送信回路13は、通信制御部11から入力されるIDコード信号を所定周波数の電波に変調して外部に送信する。
<車載装置20の構成>
車載装置20は、CPU、ROM、RAM等からなるコンピュータユニットによって構成された車両制御手段しての車両制御部21と、その車両制御部21に電気的に接続された送信回路22及び受信回路23を備えている。
【0035】
送信回路22は、所定の周波数帯域の電波を送信可能に構成されている。この送信回路22は、車両制御部21からリクエスト信号が入力されると、そのリクエスト信号を電波に変調するとともに、予め設定された間欠周期及び出力強度で外部に送信する。なお、本実施形態において送信回路22は、第1送信回路22aと第2送信回路22bとからなり、図2に示すように、第1送信回路22aは車室内における中央よりも車両前方側位置に配設され、第2送信回路22bは車室内における中央よりも車両後方側位置に配設されている。また、本実施形態において第1送信回路22a及び第2送信回路22bは、同等の出力強度でリクエスト信号を送信するように設定されている。
【0036】
受信回路23は、図2に示すように車両制御部21とともに車室内におけるほぼ中央位置に配設され、対応する電波を受信すると、その電波をパルス信号に復調して車両制御部21に出力する。
【0037】
車両制御部21には、車両2にそれぞれ設けられた、登録スイッチ31、ロックスイッチ32、ドアカーテシスイッチ33、始動スイッチ34、ドア錠装置35及びエンジン制御装置36が電気的に接続されている。なお、登録スイッチ31及び始動スイッチ34は車室内における運転席の近傍(例えばダッシュボード)に配設され、押しボタンスイッチなどによって構成されている。また、ロックスイッチ32は、例えば図2(a)〜(c)に示すように、各ドア2a〜2dのアウトサイドドアハンドル(図示略)にそれぞれ設けられている。一方、ドアカーテシスイッチ33は、各ドア2a〜2dの近傍に設けられ、対応するドア2a〜2dの開閉状態を検出する第1カーテシスイッチ33a〜第4カーテシスイッチ33dによって構成されている。また、ドア錠装置35は、ドア錠を自動的に施解錠する装置であり、車両制御部21から解錠信号が入力されるとドア錠を解錠し、施錠信号が入力されるとドア錠を施錠するとともに、ドア錠の施解錠状態を示す施解錠状態信号を車両制御部21に出力する。エンジン制御装置36は、図示しないセルモータに接続され、車両制御部21から駆動信号が入力されると同セルモータを駆動してエンジンを自動的に始動させるとともに、エンジンの駆動状態を示すエンジン状態信号を車両制御部21に出力する。このため、車両制御部21は、施解錠状態信号やエンジン状態信号に基づいて、ドア錠の施解錠状態やエンジンの駆動状態を認識可能となる。
【0038】
こうした車両制御部21は不揮発性のメモリ21aを備え、そのメモリ21aには、対応する携帯機10に設定されたIDコードと同等のIDコードと、予め設定された室内境界閾値及び車外境界閾値とが記録されている。
【0039】
また、車両制御部21は、室内境界閾値及び車外境界閾値をメモリ21aに設定(登録)するための閾値登録モードと、携帯機10との通信に基づいて車両2を制御する車両制御モードとに選択的に切り換わる。
【0040】
詳しくは、車両制御部21は、通常は車両制御モードとなっており、登録スイッチ31から操作信号が入力されると閾値登録モードに切り換わる。閾値登録モードにおいて車両制御部21は、ロックスイッチ32から操作信号が入力されると送信回路22に対してリクエスト信号を間欠的に出力する。そして、携帯機10からのIDコード信号が受信回路23によって受信されると、車両制御部21は、該IDコード信号に含まれる受信レベルコードによって示される受信レベルを対応するIDコードの室内境界閾値としてメモリ21aに記録する。また、車両制御部21は、該設定した室内境界閾値から予め設定された値を減算し、その算出値を対応するIDコードの車外境界閾値としてメモリ21aに記録する。
【0041】
一方、車両制御モードにおいて車両制御部21は、送信回路22に対してリクエスト信号を間欠的に出力する。そして、車両制御部21は、該リクエスト信号に応答して携帯機10から送信されたIDコード信号が受信回路23によって受信されると、そのIDコード信号に含まれるIDコードとメモリ21aに記録されたIDコードとの比較(IDコード照合)を行う。それとともに車両制御部21は、該IDコード信号に含まれる受信レベルコードによって示される受信レベルと、該IDコードと対応してメモリ21aに記録された閾値(室内境界閾値及び車外境界閾値)との比較を行う。そして、車両制御部21は、これらの結果に基づいて対応する車両制御(ドア錠制御、エンジン始動許可)を行う。
【0042】
詳しくは、車両制御部21は、受信レベルが対応する室内境界閾値よりも高い判断した場合にはエンジン始動許可状態となり、該エンジン始動許可状態において始動スイッチ34から操作信号が入力された際に、エンジン制御装置36に対して駆動信号を出力してエンジンを始動させる。換言すれば、車両制御部21は、エンジン始動許可状態とならない限り、たとえ始動スイッチ34から操作信号が入力されたとしてもエンジン制御装置36に対して駆動信号を出力しない。
【0043】
なお、車両制御部21は、ドアカーテシスイッチ33(33a〜33d)からの検出信号により、ドアが開状態であると判断した場合には、室内境界閾値を予め設定された値だけ減算し、その減算値に基づいてエンジン始動許可判断を行う。すなわち、ドアの開状態においては、閉状態に比べてリクエスト信号が車外に送信されやすくなるため、車両制御部21は、こうした場合に室内境界域値を低い値とすることにより、携帯機10が車外に存在するにもかかわらずエンジンが始動許可状態となってしまうことを抑制している。
【0044】
また、車両制御部21は、受信レベルが対応する室内境界閾値以下であり、且つ対応する車外境界閾値よりも高いと判断した場合には、ドア錠装置35に対して解錠信号を出力してドア錠を解錠させる。
【0045】
さらに、車両制御部21は、受信レベルが対応する室内境界閾値以下であると判断した状態においてロックスイッチ32(32a〜32d)から操作信号が入力された場合には、携帯機10が車外制御の対応領域に存在すると判断し、ドア錠装置35に対して施錠信号を出力してドア錠を施錠させる。
【0046】
なお、室内境界閾値はアウトサイドドアハンドルに設けられたロックスイッチ32a〜32dが操作された時点での携帯機10によるリクエスト信号の受信レベルに設定されるため、該受信レベルが室内境界閾値を超える携帯機10と車載装置20との通信領域は、図2(a)に概略的に示すように、領域A1a,A1bとなる。すなわち、携帯機10が車室内に存在している場合にのみ、携帯機10によるリクエスト信号の受信レベルが室内境界閾値を超えることとなる。また、車外境界閾値は室内境界閾値から所定の値を減算した算出値に設定されるため、受信レベルが室内境界閾値以下となり且つ車外閾値よりも高くなる携帯機10と車載装置20との通信領域は、同図に概略的に示すように、領域A2a,A2bとなる。すなわち、携帯機10が車両2の周辺に存在している場合にのみ、携帯機10によるリクエスト信号の受信レベルが室内境界閾値以下となり且つ車外閾値よりも高くなることとなる。
【0047】
次に、このように構成された車両用通信制御システム1によって行われる閾値登録動作と車両制御とを図3及び図4に示すシーケンスチャートに従って説明する。
<閾値登録動作>
図3に示すように、ステップS1において車載装置20は、携帯機10を所持するユーザによって登録スイッチ31が操作されると、閾値登録モードに切り換わる。そして、車載装置20は、ステップS2においてロックスイッチ32が操作されると、ステップS3においてリクエスト信号の送信を開始する。
【0048】
携帯機10は、そのリクエスト信号を受信すると、ステップS4において該リクエスト信号の受信レベルを判定し、ステップS4において該判定した受信レベルを示す受信レベルコードとIDコードとを含むIDコード信号を送信する。
【0049】
車載装置20は、そのIDコード信号を受信すると、ステップS6において受信レベルコードによって示される受信レベルをIDコード信号に対応付けして室内境界閾値としてメモリ21aに記録する。また、その室内境界閾値に基づいて車外境界閾値を算出してメモリ21aに記録する。
【0050】
<車両制御>
車両制御モードにおいて車載装置20は、図4に示すように、ステップS11においてリクエスト信号を所定の周期で間欠的に送信する。
【0051】
携帯機10は、そのリクエスト信号を受信すると、ステップS12において該リクエスト信号の受信レベルを判定し、ステップS13において該判定した受信レベルを示す受信レベルコードとIDコードとを含むIDコード信号を送信する。
【0052】
車載装置20は、そのIDコード信号を受信すると、ステップS14においてIDコード照合を行う。その結果IDコード照合が成立すると、車載装置20は、ステップS15においてIDコード信号の受信レベルコードによって示される受信レベルとメモリ21aに記録された室内境界閾値及び車外境界閾値とを比較する。そして、車載装置20は、ステップS16において比較結果に基づく車両制御を行う。すなわち、車載装置20は、受信レベルが室内境界閾値よりも高いと判断した場合には携帯機10が車室内に存在すると判断してエンジン始動許可状態となり、受信レベルが室内境界閾値以下となり且つ車外閾値よりも高いと判断した場合には携帯機10が車両2の近辺に存在すると判断してドア錠を解錠させる。
【0053】
<作用>
このように構成された車両用通信制御システム1では、室内境界閾値及び車外境界閾値が高く設定されれば、該閾値が低く設定された場合に比べて、リクエスト信号の送信源に携帯機が近くに存在しないと対応する制御が行われないこととなる。具体的には、例えば図2(b)に示すように、車両2よりも小型な車両3に車載装置20を搭載した場合を想定すると、リクエスト信号の出力強度及び各閾値が同等である場合には、受信レベルが室内境界閾値を超える携帯機10と車載装置20との通信領域は、車両2に搭載された場合と同様に領域A1a,A1bとなる。同様に、受信レベルが室内境界閾値以下となり且つ車外閾値よりも高くなる携帯機10と車載装置20との通信領域は、領域A2a,A2bとなる。このため、車両3の室外においても受信レベルが室内境界閾値を超える携帯機10と車載装置20との通信が成立してしまう。
【0054】
従来においては、こうした通信の成立を防止して室内領域においてのみ、受信レベルが室内境界閾値を超える携帯機10と車載装置20との通信が成立するようにするためには、リクエスト信号の出力強度を車両毎に個別に設定する必要がある。しかしながら、本実施形態では、各閾値の値を変更することによって対応可能となる。すなわち、閾値の設定は、携帯機10を所持するユーザがロックスイッチ32を操作した状態における携帯機10によるリクエスト信号の受信レベルが室内境界閾値として設定されるため、図2(c)に示すように、各通信領域は、領域A1a’(<A1a),A1b’(<A1b),A2a’(<A2a),A2b’(<A2b)となる。特に、受信レベルが室内境界閾値を超える携帯機10と車載装置20との通信領域A1a’,A1b’は室内領域のみとなる。
【0055】
したがって、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)室内境界閾値及び車外境界閾値の設定値を例えば車種毎に適宜変更することにより、対応する制御を行うために必要な携帯機10と車載装置20との通信距離を変化させることができる。こうした閾値の変更は車両制御部21のソフトウェア上の小変更によって対応可能であるため、リクエスト信号の出力強度を変更させるよりも容易に行うことができる。よって、携帯機10と車載装置20との好適な通信環境を容易に構築することができる。
【0056】
(2)閾値として室内境界閾値が設定されている。そして、車両制御部21は、受信レベルコードによって示される受信レベルが該室内境界閾値よりも高いと判断した際に対応する室内車両制御(エンジン始動許可)を行う。すなわち、携帯機10が車外に存在する状態にあっては受信レベルが室内境界閾値を超えることはないため、携帯機10が車外に存在するにもかかわらずエンジン始動許可状態となってしまうことがない。しかも、リクエスト信号の出力強度を何ら変更せず、こうした室内境界閾値を車種毎に設定することで各車種に対応させることができるため、携帯機10と車載装置20との好適な通信環境を容易に構築することができる。
【0057】
(3)車両制御部21は、受信レベルコードによって示される受信レベルが車外境界閾値よりも高く、且つ室内境界閾値以下であると判断すると、室内車両制御とは異なる車外制御(ドア錠制御)を行う。すなわち、車両制御部21は、受信レベルに応じて個別の制御を行うことができる。しかも、受信レベルが車外境界閾値以下の場合にはドア錠制御を行わないため、該ドア錠制御を行うために必要な携帯機10と車載装置20との通信距離を、車外境界閾値によって設定することができる。
【0058】
(4)室内境界閾値及び車外境界閾値は、携帯機10毎に個別に設定される。このため、携帯機10毎に受信感度にバラツキが生じている場合においても、ドア錠を施解錠するための携帯機10と車載装置20との通信領域、エンジンを始動許可するための携帯機10と車載装置20との通信領域を、ほぼ同等の領域とすることができる。
【0059】
(5)車両制御部21は、ドアカーテシスイッチ33(33a〜33d)によりドア開状態であると判断すると、室内境界閾値を低下させる。このため、ドアの開状態において、携帯機10が車外に存在するにもかかわらず、エンジンが始動可能な状態となってしまうことを防止することができる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を図5〜図7に基づいて説明する。ここでは第1実施形態と相違する点を主に述べ、共通する点については同一部材番号を付すのみとしてその説明を省略する。
【0061】
本実施形態は、携帯機10に登録スイッチ14が設けられるとともに車載装置20に接続された登録スイッチ31が省略されたことと、通信制御部11及び車両制御部21によって行われる処理とが、第1実施形態と異なる主たる点である。
【0062】
<携帯機10>
携帯機10には、ユーザによって操作可能な登録スイッチ14が設けられ、その登録スイッチ14は通信制御部11に電気的に接続されている。このため、該登録スイッチ14が操作されると、その操作信号が通信制御部11に入力される。通信制御部11は、車両制御通信モードと閾値登録モードとに選択的に切り換わるようになっている。
【0063】
通信制御部11は、通常、車両制御通信モードに設定されており、操作信号が入力されると閾値登録モードに切り換わり、送信回路13を介して登録要求信号を外部に送信する。また、通信制御部11は、受信回路12を介して登録許可信号が入力されると、その登録許可信号の受信レベルを判定し、該受信レベルに基づいて室内境界閾値と送信境界閾値とを求め、それら閾値をメモリ11aに記録する。なお、送信境界閾値は、前記第1実施形態における車外境界閾値と同様の算出手順によって求められる。
【0064】
また、通信制御部11は、車両制御通信モードにおいて受信回路12を介して前記リクエスト信号が入力されると、そのリクエスト信号の受信レベルとメモリ11aに記録された各閾値とを比較し、その結果に基づいてIDコード信号の送信制御を行う。
【0065】
詳しくは、通信制御部11は、リクエスト信号の受信レベルが室内境界閾値よりも高いと判断した場合には、室内コードとIDコードとを含むIDコード信号を、送信回路13を介して送信する。これに対し、通信制御部11は、リクエスト信号の受信レベルが室内境界閾値以下であり、且つ送信境界閾値よりも高いと判断した場合には、車外コードとIDコードとを含むIDコード信号を、送信回路13を介して送信する。また、通信制御部11は、リクエスト信号の受信レベルが送信境界閾値以下であると判断した場合には、IDコード信号を送信しない。
【0066】
<車載装置20>
一方、車両制御部21は、受信回路23を介して登録要求信号が入力されると、登録許可信号の送信待機状態となる。なお、登録許可信号とは、前記リクエスト信号と同等の信号であり、ここでは便宜的に信号名称を別称したものである。そして、車両制御部21は、こうした登録許可信号の送信待機状態においてロックスイッチ32から操作信号が入力されると、登録許可信号(リクエスト信号)を、送信回路22(22a,22b)を介して送信する。
【0067】
また、車両制御部21は、登録要求信号が入力されていない状態においては、リクエスト信号を所定の間欠周期で送信回路22を介して送信し、このリクエスト信号に応答したIDコード信号が入力されると、前記IDコード照合を行う。そして、車両制御部21は、第1実施形態と同様に、IDコード照合の結果に基づいて対応する車両制御(ドア錠制御、エンジン始動許可)を行う。
【0068】
次に、このように構成された車両用通信制御システム1によって行われる閾値登録動作と車両制御とを図6及び図7に示すシーケンスチャートに従って説明する。
<閾値登録動作>
図6に示すように、携帯機10は、ステップS21においてユーザによって登録スイッチ14が操作されると閾値登録モードに切り換わり、ステップS22において登録要求信号を送信する。
【0069】
車載装置20は、その登録要求信号を受信すると登録許可信号の送信待機状態となり、ステップS23においてロックスイッチ32から操作信号が入力されると、ステップS24において登録許可信号を送信する。
【0070】
携帯機10は、登録許可信号を受信すると、ステップS25においてその登録許可信号の受信レベルを判定し、ステップS26においてその受信レベルを室内境界閾値としてメモリ11aに記録し、その室内境界閾値に基づいて送信境界閾値を算出してメモリ11aに記録する。
【0071】
<車両制御>
車両制御モードにおいて車載装置20は、図7に示すように、ステップS31においてリクエスト信号を所定の周期で間欠的に送信する。
【0072】
携帯機10は、そのリクエスト信号を受信すると、ステップS32において該リクエスト信号の受信レベルを判定し、ステップS33において該判定した受信レベルとメモリ11aに記録された室内境界閾値及び送信境界閾値とを比較する。そして、ステップS34において携帯機10は、その比較結果に基づき、IDコード信号の送信制御を行う。すなわち、携帯機10は、リクエスト信号の受信レベルが室内境界閾値よりも高いと判断した場合には、自身が車室内に存在すると判断して室内コードを受信コードとして含むIDコード信号を送信する。これに対し、携帯機10は、該受信レベルが室内境界閾値以下となり且つ送信境界閾値よりも高いと判断した場合には、自身が車両2の近辺に存在すると判断して車外コードを受信コードとして含むIDコード信号を送信する。また、携帯機10は、該受信レベルが送信境界閾値以下であると判断した場合には、自身が車両2から離間した位置に存在すると判断してIDコード信号を送信しない。
【0073】
車載装置20は、IDコード信号を受信すると、ステップS35においてIDコード照合を行う。その結果IDコード照合が成立すると、車載装置20は、ステップS36においてIDコード信号に含まれる受信コードに基づいて車両制御を行う。すなわち、車載装置20は、室内コードからなる受信コードが含まれている場合には携帯機10が車室内に存在すると判断してエンジン始動許可状態となり、車外コードからなる受信コードが含まれている場合には携帯機10が車両2の近辺に存在すると判断してドア錠を解錠させる。
【0074】
よって、このように構成された車両用通信制御システム1では、第1実施形態と同様に、室内境界閾値及び送信境界閾値が高く設定されれば、該閾値が低く設定された場合に比べて、リクエスト信号の送信源に携帯機が近くに存在しないと対応する制御が行われないこととなる。
【0075】
したがって、本実施形態によれば、前記第1実施形態における上記(1)〜(3)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(6)室内境界閾値及び車外境界閾値の設定値を例えば車種毎に適宜変更することにより、対応する制御を行うために必要な携帯機10と車載装置20との通信距離を変化させることができる。こうした閾値の変更は携帯機10の通信制御部11のソフトウェア上の小変更によって対応可能であるため、リクエスト信号の出力強度を変更させるよりも容易に行うことができる。よって、携帯機10と車載装置20との好適な通信環境を容易に構築することができる。
【0076】
(7)閾値として室内境界閾値が設定されている。そして、携帯機10の通信制御部11は、リクエスト信号の受信レベルが該室内境界閾値よりも高いと判断した際に室内コードを含むIDコード信号を送信することにより、車載装置20の車両制御部21をエンジン始動許可状態にする。携帯機10は、車外に存在する状態にあってはリクエスト信号の受信レベルが室内境界閾値よりも高いと判断しないため、携帯機10が車外に存在するにもかかわらず携帯機10から室内コードを含むIDコード信号が送信されない。よって、携帯機10が車外に存在した状態でエンジン始動許可状態となってしまうことがない。しかも、リクエスト信号の出力強度を何ら変更せず、こうした室内境界閾値を車種毎に設定することで各車種に対応させることができるため、携帯機10と車載装置20との好適な通信環境を容易に構築することができる。
【0077】
(8)通信制御部11は、受信レベルコードによって示される受信レベルが車外境界閾値よりも高く、且つ室内境界閾値以下であると判断すると、車外コードを含むIDコード信号を送信して、車載装置20によってドア錠制御を行わせる。すなわち、通信制御部11は、リクエスト信号受信レベルに応じて個別の受信コードを含むIDコード信号を送信することにより、車載装置20に個別の制御を行わせることができる。しかも、受信レベルが車外境界閾値以下の場合には車外コードを含むIDコード信号が送信されないため、ドア錠制御が行われない。それゆえ、該ドア錠制御を行うために必要な携帯機10と車載装置20との通信距離を、車外境界閾値によって設定することができる。
【0078】
(9)携帯機10の通信制御部11のメモリ11aには、室内境界閾値よりも低い値に設定された送信境界閾値が設定され、通信制御部11は、リクエスト信号の受信レベルが送信境界閾値よりも低いと判断した場合には、IDコード信号を送信しない。このため、携帯機10は、たとえリクエスト信号を受信したとしても、該送信境界閾値よりも低い受信レベルとなる車載装置20との距離関係にある場合には、IDコード信号を送信しない。よって、不要なIDコード信号の送信が抑制され、携帯機10の電力消費量を低減することができる。
【0079】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 第1実施形態において、各ドアのロックスイッチ32a〜32dに応じてロック閾値を設定してもよい。詳しくは、車両制御部21は、閾値登録モードにおいて、各ロックスイッチ32a〜32dが操作されたときにそれぞれ送信されるIDコード信号に含まれる受信レベルを、それぞれ個別のロック閾値としてメモリ21aに記録してもよい。そして、車両制御部21は、各ロックスイッチ32a〜32dのうちの何れかから操作信号が入力された場合には、IDコード信号に含まれる受信レベルが、その操作されたロックスイッチ32a〜32dと対応して設定されたロック閾値よりも低いと判断した場合に、ドア錠を施錠するようになっていてもよい。このようにすれば、例えば第1ロックスイッチ32a周辺と第2ロックスイッチ32b周辺とでリクエスト信号の受信レベルとが異なる場合であっても、携帯機10を所持するユーザは、対応するロックスイッチ32a〜32dを操作することにより、確実にドア錠を施錠することができる。
【0080】
・ 第1実施形態において車両制御部21は、ドアカーテシスイッチ33(33a〜33d)によりドア開状態であると判断すると、室内境界閾値を低下させている。しかし、こうしたドアの開閉状態に応じた室内境界閾値の変更は、必ずしも行われる必要はない。
【0081】
・ 第1実施形態において、室内境界閾値及び車外境界閾値は、携帯機10毎に個別に設定可能となっている。しかし、モデルとなる携帯機10を基準とした室内境界閾値及び車外境界閾値のみを設定可能となっていてもよい。このようにすれば、携帯機10の個体差による感度バラツキに対する車載装置20との通信精度は低下するものの、各閾値の登録作業が簡素化される。
【0082】
・ 第1実施形態においては室内境界閾値及び車外境界閾値のうちの何れか、第2実施形態においては室内境界閾値及び送信境界閾値のうちの何れかのみを閾値として設定可能となっていてもよい。すなわち、携帯機10と車載装置20との相互通信に基づく車両制御は、エンジンの始動許可制御及びドア錠制御のうちの一方のみとなっていてもよい。
【0083】
・ 第2実施形態において、携帯機10の通信制御部11は、リクエスト信号の受信レベルが送信境界閾値以下であると判断した際には、IDコード信号を送信しないようになっている。しかし、こうした場合であっても通信制御部11は、リクエスト信号を受信できる限り、IDコード信号を送信するようになっていてもよい。この場合、通信制御部11は、室内コード及び車外コード以外の固有の受信コードを含むIDコード信号を送信するようになっていてもよい。
【0084】
・ 各実施形態において、車載装置20においてリクエスト信号を送信するための送信回路22は、2つ(送信回路22a,22b)に限らず、1つまたは3つ以上で構成されていてもよい。
【0085】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1) 請求項3に記載の車両用通信制御システムにおいて、前記車外境界閾値は、前記室内境界閾値から演算によって算出すること。この(1)に記載の技術的思想によれば、車外境界閾値を容易に設定することができる。
【0086】
(2) 請求項1〜3、上記(1)のいずれか1項に記載の車両用通信制御システムにおいて、前記車両制御手段は、車両の各ドアハンドルに設けられたロックスイッチが操作された状態で受信した前記応答信号に含まれる前記受信レベルをそれぞれロック閾値として個別に設定し、該ロック閾値の設定後において各ロックスイッチが操作された際には、その時点で受信した前記応答信号に含まれる前記受信レベルが、該操作されたロックスイッチと対応して設定された前記ロック閾値以下であると判断したことを条件としてドア錠を施錠すること。この(2)に記載の技術的思想によれば、ドア錠を確実に施錠させることができる。
【0087】
(3) 請求項4に記載の車両用通信制御システムにおいて、前記閾値として送信境界閾値が設定され、前記送信制御手段は、前記リクエスト信号の受信レベルが前記送信境界閾値よりも低いと判断した場合には、前記応答信号を送信しないこと。この(3)に記載の技術的思想によれば、不要な状態における応答信号の送信を抑制することができ、携帯機の電力消費量を低減させることができる。
【0088】
(4) 請求項6に記載の車両用通信制御システムにおいて、前記送信境界閾値は、前記室内境界閾値から演算によって算出すること。この(4)に記載の技術的思想によれば、送信境界閾値を容易に設定することができる。
【0089】
(5) 請求項2,3,5,6のいずれか1項に記載の車両用通信制御システムにおいて、前記室内車両制御は、エンジンを始動可能な状態にするエンジン始動許可制御であること。
【0090】
(6) 請求項3,5,6のいずれか1項に記載の車両用通信制御システムにおいて、前記車外制御は、ドア錠を自動的に解錠させるドア錠制御であること。
(7) 請求項1〜6、上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の車両用通信制御システムにおいて、車両のドア開状態においては、前記閾値を所定量高く設定された値に変更すること。この(7)に記載の技術的思想によれば、ドア開状態においては携帯機によるリクエスト信号の受信レベルが高くなるため、こうした制御を行うことにより、より好適な車両制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1実施形態の車両用通信制御システムの概略構成を示すブロック図。
【図2】(a)〜(c)は、同実施形態の携帯機と車載装置との通信領域を概略的に示す平面図。
【図3】同実施形態の閾値登録動作を示すシーケンスチャート。
【図4】同実施形態の車両制御を示すシーケンスチャート。
【図5】第2実施形態の車両用通信制御システムの概略構成を示すブロック図。
【図6】同実施形態の閾値登録動作を示すシーケンスチャート。
【図7】同実施形態の車両制御を示すシーケンスチャート。
【符号の説明】
【0092】
1…車両用通信制御システム、2,3…車両、10…携帯機、11…送信制御手段としての通信制御部、20…車載装置、21…車両制御手段としての車両制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信機能を有する携帯機と、その携帯機との無線通信に基づいて車両を制御する車載装置とを備えた車両用通信制御システムにおいて、
前記携帯機は、前記車載装置から送信されるリクエスト信号を受信した際にそのリクエスト信号の受信レベルを検出し、その受信レベルを示す受信レベルコードを含む応答信号を送信する送信制御手段を備え、
前記車載装置は、前記応答信号を受信した際に、前記受信レベルコードによって示される受信レベルと予め設定された閾値とを比較し、該受信レベルが閾値よりも高いと判断した際に対応する制御を行う車両制御手段を備えることを特徴とする車両用通信制御システム。
【請求項2】
前記閾値として、前記携帯機が車外において車両に最も近接した位置における前記リクエスト信号の受信レベルとなる室内境界閾値が設定され、
前記車両制御手段は、前記受信レベルコードによって示される受信レベルが前記室内境界閾値よりも高いと判断した際に、前記携帯機が車両室内に存在すると判断して対応する室内車両制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の車両用通信制御システム。
【請求項3】
前記閾値として、前記室内境界閾値よりも低い受信レベルとなる車外境界閾値が設定され、
前記車両制御手段は、前記受信レベルコードによって示される受信レベルが、前記車外境界閾値よりも高く、且つ前記室内境界閾値以下であると判断した際に、前記携帯機が車外制御の対応領域に存在すると判断して対応する車外制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の車両用通信制御システム。
【請求項4】
無線通信機能を有する携帯機と、その携帯機との無線通信に基づいて車両を制御する車載装置とを備えた車両用通信制御システムにおいて、
前記携帯機は、前記車載装置から送信されるリクエスト信号を受信した際にそのリクエスト信号の受信レベルを検出するとともに、その受信レベルと予め設定された閾値とを比較し、該受信レベルが該閾値よりも高いと判断した際にその旨を示す受信コードを含む応答信号を送信する送信制御手段を備え、
前記車載装置は、前記受信コードを含む応答信号を受信した際に、前記受信コードに対応する制御を行う車両制御手段を備えることを特徴とする車両用通信制御システム。
【請求項5】
前記閾値として、前記携帯機が車外において車両に最も近接した位置における前記リクエスト信号の受信レベルとなる室内境界閾値が設定され、
前記送信制御手段は、前記リクエスト信号の受信レベルが前記室内境界閾値よりも高いと判断した場合には室内コードを前記受信コードとして設定する一方、該受信レベルが前記室内境界閾値以下であると判断した場合には車外コードを前記受信コードとして設定して前記応答信号を送信し、
前記車両制御手段は、前記応答信号に室内コードが含まれている場合には前記携帯機が車両室内に存在すると判断して対応する室内車両制御を行い、前記応答信号に車外コードが含まれている場合には前記携帯機が車外近傍に存在すると判断して対応する車外制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の車両用通信制御システム。
【請求項6】
前記閾値として前記室内境界閾値よりも低い値に設定された送信境界閾値が設定され、前記送信制御手段は、前記リクエスト信号の受信レベルが前記送信境界閾値よりも低いと判断した場合には、前記応答信号を送信しないことを特徴とする請求項5に記載の車両用通信制御システム。
【請求項7】
無線通信機能を有する携帯機との無線通信に基づいて車両を制御する車載装置であって、
前記携帯機に対して応答信号の返信を要求するリクエスト信号を送信する一方、該リクエスト信号の受信レベルを示す受信レベルコードを含む前記応答信号を受信した際に、その受信レベルと予め設定された閾値とを比較し、該受信レベルが該閾値よりも高いと判断した際に対応する制御を行う車両制御手段を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項8】
無線通信機能を有する携帯機との無線通信に基づいて車両を制御する車載装置であって、
前記携帯機に対して応答信号の返信を要求するリクエスト信号を送信する一方、該リクエスト信号の受信レベルに応じて設定される受信コードを含む前記応答信号を受信した際に、その受信コードに基づいて対応する制御を行う車両制御手段を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項9】
車両を制御する車載装置との無線通信を行う携帯機であって、
前記車載装置から送信されるリクエスト信号を受信した際にそのリクエスト信号の受信レベルを検出し、その受信レベルを示す受信レベルコードを含む応答信号を送信する送信制御手段を備えることを特徴とする携帯機。
【請求項10】
車両を制御する車載装置との無線通信を行う携帯機であって、
前記車載装置から送信されるリクエスト信号を受信した際にそのリクエスト信号の受信レベルを検出するとともに、該受信レベルと予め設定された閾値とを比較し、該受信レベルが該閾値よりも高いと判断した際にその旨を示す受信コードを含む応答信号を送信する送信制御手段を備えることを特徴とする携帯機。
【請求項11】
前記送信制御手段は、前記リクエスト信号の受信レベルが予め設定された送信境界閾値よりも低いと判断した場合には、応答信号を送信しないことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の携帯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−118899(P2007−118899A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317460(P2005−317460)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】