説明

車両用速度表示装置

【課題】制限速度の変化に対応して、目標速度が現在の制限速度を超過しているか否かをユーザーが認識することができる車両用速度表示装置を提供する。
【解決手段】取得した車速、目標速度、及び制限速度をそれぞれ適宜表示可能な表示手段を有する車両用速度表示装置において、目標速度が制限速度を超えているか否かを判定する判定手段と制御手段とを備える。制御手段は、目標速度が制限速度を超えていると判定手段で判定された場合(S3:YES)は、車速を表示手段に表示すると共に目標速度が制限速度を超えていることを車両の乗員が認識可能な情報を報知(S4)する。目標速度が制限速度を超えている場合と、目標速度が制限速度を超えていない場合とでは、ユーザーが受けることのできる速度情報が異なるため、ユーザーはその速度情報の違いから、目標速度に対する注意を認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の速度を表示する車両用速度表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来運転者の疲労軽減を図るために、予め設定された車速を維持するようにアクセルを自動制御するオートクルーズ制御などの自動走行制御の技術が知られている。
【0003】
この自動走行制御は、ユーザー(車両の乗員)が目標速度を予め設定し、その設定した目標速度に実際の車速を近づけ、目標速度に達したらその目標速度を維持する機能を実現している。
【0004】
このような自動走行制御の制御状態や目標速度を速度メータに表示することで、現在の走行状態を見やすくできるようにした車両用速度表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−256445
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、実際に車両が走行する環境を考えると、走行に伴い現在位置が変化すると制限速度も変わることがある。例えば高速道路(制限速度:80km/h)から一般道路(制限速度:50km/h)に車両が移る場合、又は急な豪雨等により高速道路の制限速度が80km/hから60km/hに変わる場合などが想定される。
【0007】
そしてこの制限速度が変わるときにオートクルーズ制御が実行中の場合、目標速度はユーザーが設定した値を維持しているため、もし目標速度が走行中の道路の制限速度を超えてしまう場合には、何らかの対応が必要である。
【0008】
しかしながらそのような場合、従来の車両用速度表示装置では、目標速度が制限速度を超えることを、ユーザーが認識できるよう具体的な対応がとられていないため、ユーザーに不便を感じさせる問題があった。
【0009】
そこで本発明は、制限速度の変化に対応して、目標速度が現在の制限速度を超過しているか否かをユーザーが認識することができる車両用速度表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するために、請求項1の車両用速度表示装置は、目標速度が制限速度を超えているか否かを判定する判定手段と、制御手段とを備え、その制御手段は、判定手段により目標速度が制限速度を超えていると判定された場合は、車速を表示手段に表示すると共に、車両の乗員が認識可能な情報を報知することを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、目標速度が制限速度を超えている場合には、ユーザー(車両の乗員を意味する)は、その制限速度を超えている情報を報知により知ることができる。従って制限速度の変化に対応して、目標速度が現在の制限速度を超えている場合と、目標速度が現在の制限速度を超えていない場合とでは、ユーザーが受けることのできる速度情報が異なるため、ユーザーはその速度情報の違いから、目標速度に対する注意を認識することができる。
【0012】
また、請求項2の車両用速度表示装置によれば、取得した制限速度から所定値低い値を制限速度として設定されることを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、取得した制限速度に達する前にユーザーに報知するようにできるため、ユーザーがゆとりを持って目標速度の再設定や設定の解除等を操作できるよう対処することができる。
【0014】
つまり所定値とは、所定値=(取得した制限速度)−(取得した制限速度に車両の走行状態が至る前に、ユーザーがゆとりを持って対処できる時間を確保できる車両の速度)を言う。
【0015】
また、請求項3の車両用速度表示装置によれば、報知は、表示、音、音声のうち、少なくとも何れか1つを用いてなされることを特徴としている。
【0016】
この構成によれば、ユーザーは目標速度の超過に対する注意を視覚もしくは聴覚を利用して認識することができる。
【0017】
また、請求項4の車両用速度表示装置によれば、制御手段は、車速と、車両の乗員が認識可能な情報を、表示手段に同時に表示することを特徴としている。
【0018】
この構成によれば、ユーザーは瞬時に目標速度の超過に対する注意を目視確認できる。
【0019】
また、請求項5の車両用速度表示装置によれば、制御手段は、目標速度と制限速度の差分の範囲を、その範囲の周囲とは異なる色で表示手段に表示することを特徴としている。
【0020】
この構成によれば、目標速度と制限速度の両方を数字や文字、矢印線で表示手段に表示するよりも、差分範囲を着色して表示することにより、ユーザーは制限速度を超過したことを知ることができると共に、どれくらい超過しているかを同時に見ることができ、より直感的かつ即座に注意を認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る車両用速度表示装置を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る速度メータに関する処理を説明するフローチャートである。
【図3】図2のステップS2に対応する車両用速度表示装置の速度メータの表示例である。
【図4】図2のステップS4に対応する車両用速度表示装置の速度メータの表示例である。
【図5】図2のステップS6に対応する車両用速度表示装置の速度メータの表示例である。
【図6】図2のステップS8に対応する車両用速度表示装置の速度メータの表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る車両用速度表示装置の実施形態を図面に基づき説明する。
【0023】
図1に本実施形態の車両用速度表示装置のブロック図を示す。
【0024】
車両速度表示装置1の内部には、電子制御装置2(本発明の表示制御手段及び判定手段に相当)が、表示部3(本発明の表示手段に相当)と、警告部4が電気配線を介して通信可能に接続されている。
【0025】
また電子制御装置2は、車両速度表示装置1の外部にある制限速度取得部5(本発明の制限速度取得手段に相当)と、複数の車載機器制御装置6とが、車載LAN(LAN:Local Area Network)を介して通信可能に接続されている。この車載LANを介して接続された制限速度取得部5と複数の車載機器制御装置6とを合わせて「外部装置」と呼ぶ。
【0026】
さらに電子制御装置2は、目標速度入力部7(本発明の目標速度取得手段に相当)と電気配線を介して通信可能に接続されている。
【0027】
電子制御装置2は、周知の通常のマイクロコンピュータとして構成されており、図示しないが処理内容を記述したプログラムを記憶するメモリであるROM及び一時的にデータを保存するRAMを備えている。さらに図示しないが、そのROMに記憶されたプログラムを実行するCPU、時間を計測するタイマカウンタ、及び外部装置と通信するための通信ドライバや通信コントローラを有するインタフェース部を主要とする構成部品を備えている。
【0028】
そのROMには、受信した信号を処理するプログラムや、表示部3へ表示処理を行うためのプログラム、また所定の条件になった際に警告部4へ警告を発する命令を出すためのプログラムが保存されている。RAMには、CPUで演算処理されたデータ結果や、外部装置から取得した速度情報などのデータを記憶する機能を備えている。
【0029】
表示部3は、電子制御装置2からの処理信号を受けて、各計器類に、車両に必要な情報を表示する。ここでは計器類として車速を示す速度メータ31(本発明の速度メータに相当)、エンジンの回転数を示す回転メータ32、燃料タンクの燃料残量を示す燃料計33、ラジエターの冷却水温度を示す水温計34が表示されている。
【0030】
尚、回転メータ32、燃料計33、水温計34それぞれのデータの検出方法は周知のものを用いており、本発明と直接関係が無いためここでは詳細な説明を省略する。
【0031】
また、表示部3の表示方法は特に限ることは無いが、本実施形態では表示部に液晶を用いたディスプレイデバイスを用いて構成されている。このデバイスが、各計器類をカラーで色分け表示をしたり、階調分け表示を行ったりして表示させている。また、表示のデバイスも液晶に限ることは無く、同様のカラーや階調表示ができるものであれば有機ELであってもブラウン管であってもよい。または各計器類内で表現(色や画像、目盛など)を変更する必要のある箇所だけに対して液晶などの映像を用いたデバイスを用い、表現を変更する必要の無い箇所は機械の動作で表示してもよい。
【0032】
また、警告部4は、スピーカなどの音声出力部を有しており、電子制御装置2からの処理信号を受けて、予め決められた単音などの音もしくは音声を発生することにより運転者に警告を促す(この警告部4から発する音もしくは音声と、表示部3の計器類内への表示は本発明の報知に相当する)。
【0033】
制限速度取得部5は、走行中の走行道路の制限速度を取得する機能を有する。制限速度取得部5では、走行道路の法定制限速度を図示しないデータベースに予め記憶しておき、車両が走行中は、図示しないGPS受信機の情報に基づいて車両の現在位置を取得する。そして制限速度取得部5は、その現在位置に該当する走行道路の法定の制限速度をデータベース検索する。制限速度取得部5は、その検索の結果得られた法定の制限速度の速度情報を、電子制御装置2へ送信する。尚、この現在の制限速度を電子制御装置2へ送信するタイミングについては、現在位置が変化する都度であっても良いし、制限速度が変化したときであっても良いし、数秒単位の所定時間の間隔であってもよい。
【0034】
制限速度取得部5についてのより具体的な実現手段については、特開2007−199026に記載されているため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0035】
さらに、上述した方法で取得した法定の制限速度は、その取得した制限速度よりも所定値(本発明の所定値に相当)低い値を制限速度として用いてもよい。尚、所定値は、所定値=(取得した制限速度)−(その取得した制限速度に車両の走行状態が至る前に、ユーザーがゆとりを持って対処できる時間を確保できる車両の速度)で求めている。
【0036】
また、制限速度の値は上述の法定の制限速度を基準とする方法に限らず、車両の現在位置の地域情報も取得して制限速度を任意に可変しても良い。例えば人や車の多い市街地域では、飛び出す人や車などへの衝突事故が起きないように早めの目標速度の減速設定をユーザー(本発明の車両の乗員に相当)に促すため、地域ごとに予め定めた制限速度(その地域で安全と想定される走行速度で、例えば40km/h)をやや下回る値(本発明の所定値低い値に相当し、例えば5km/h)を制限速度(40km/h−5km/h=35km/h)として用いる。また一方、人や車の少ない山道地域では、地域ごとに予め定めた制限速度(例えばその地域の法定の制限速度)をそのまま用いるとしても良い。その他同様にして、地域だけでなく交通渋滞の多い又は少ない時間帯によって制限速度を可変(例えば渋滞のときは制限速度=法定速度−5km/h)してもよい。このように制限速度を車両の周囲環境に応じて可変することにより、地域や時間帯が注意すべき状況に切り替わったことを、ユーザーが必要なタイミングで知ることができる。また、車両の周囲環境に応じて所定値低い値を用いるか否かを設定することで、目標速度の再設定や解除設定などを考える時間を必要に応じて確保でき、より安全に設定操作を行うことができる。
【0037】
このように取得した制限速度よりも所定値低い値を制限速度として用いることにより、取得した制限速度に達する前にユーザーは注意を受けることができ、ユーザーは余裕を持って注意に対して目標速度の再設定や設定の解除等を操作できるよう対処することができる。また、この所定値の例を具体的に説明すると、例えば所定値は制限速度ごとにそれぞれ予め定められた値を用いる。例として制限速度が40km/hであれば所定値を5km/hとして、新たな制限速度を35km/hと設定する。60km/hであれば所定値を10km/hとして、新たな制限速度を50km/hと設定する。また制限速度が80km/hであれば所定値を15km/hとして、新たな制限速度を65km/hと設定する。このように制限速度が増加するに度に所定値の量を大きくして、ユーザーの時間的対処にゆとりをもたせている。ただしユーザーに制限速度の対処をするゆとりをもたせる方法は、これに限らず例えば、取得した制限速度に関係なく全て同じ所定値(設定の中で最も絶対値の大きい所定値で、例えば15km/h)を制限速度として用いてもよい。
【0038】
上述のように制限速度とは、法定の制限速度の値であっても、地域や時間帯情報に基づいて独自に予め定めた値であってもよく、またこれらの値から所定値低い値であっても良い。
【0039】
車載機器制御装置6は、車両の走行を制御するための制御装置を複数備えている。この制御装置として例えば、エンジンを制御するエンジン制御装置、ユーザーの入力指示に基づき車両を先行車両に追従させたり一定速度で走行させたりするための自動走行制御を行うオートクルーズ制御装置、自動変速機の変速制御を行うECT(Electronic Controlled Transmission)制御装置、ブレーキを制御するブレーキ制御装置といった車両制御系分野の制御装置がある。また、ナビゲーション装置を制御するナビ制御装置、オーディオ機器を制御するオーディオ制御装置、電話装置を制御する制御装置といった情報系分野の制御装置がある。さらに、車載バッテリの電力を管理するための制御を行う電源制御装置、ドアのロック・アンロック等を制御するボデー制御装置、車両運転者が所持する電子キーからの送信電波に基づきボデー制御装置にドアのロック・アンロックを指示したり、運転者の操作に基づくエンジンの始動を許可したりするスマートキー制御装置といったボデー電装品系分野の制御装置がある。
【0040】
このうち、車速を割り出すためのパルス信号を検知する車速センサーを備えるECT制御装置は、その車速センサーから車速の情報を電子制御装置2へ送信する(本発明の車速取得手段に相当)。また動作開始及び目標速度設定の入力スイッチを備えるオートクルーズ制御装置からは、自動走行制御の開始又は停止の情報と共に、ユーザーのスイッチ操作によって設定された目標速度の速度情報を電子制御装置2へ送信する。
【0041】
尚、自動走行制御の目標速度をユーザーが設定する場合、図示しない車両のハンドル上に設けた入力スイッチをユーザーが押すことによって設定する(目標速度入力部7と共に本発明の目標速度取得手段に相当)。具体的には、ユーザーがアクセルペダルやブレーキペダルの操作で希望の車速になったときに、ユーザーがそのハンドル上に設けた入力スイッチを押す。オートクルーズ制御装置は入力スイッチの指示に基づきその希望の車速を目標速度としてセットする。
【0042】
目標速度入力部7は、自動走行制御が停止状態のとき、ユーザーが走行中の目安としたい目標速度を入力操作で設定する装置である。入力操作方法としては、図示しないが、例えば数字入力キーと決定キーと、目標設定値の解除キーと、その数字等の状態を示す表示部と電子制御装置2と通信を行う機能を有する装置であって、運転者の手の届く範囲、例えばインストルメントパネル近くに設置されている。
【0043】
ユーザーは希望する目標速度の数字を手入力し、決定キーを押すことで目標速度の速度情報及び目標速度の設定を開始したことを示す情報を、電子制御装置2へ送信する。
【0044】
また、目標速度の設定を停止するときは、ユーザーが解除キーを押すことにより、その目標速度の設定を停止したことを示す情報を、電子制御装置2へ送信する。
【0045】
上述のように目標速度とは、自動走行制御中は、ユーザーの入力スイッチの指示に基づいて目標速度を設定し、自動走行制御を停止しているときは、ユーザーが走行状態に関係なく独自に決めた値を目標速度として用いている。
【0046】
そして、制限速度取得部5や複数の車載機器制御装置6、及び目標速度入力部7から各種情報を受信した電子制御装置2は、その受信情報に基づき、表示部3の速度メータ31で表示すべき映像情報を表示部3に送信する。尚、上述したように表示部3に液晶のデバイスを利用することで、例えば速度メータ31では、目標速度や制限速度や車速を映像として適宜表示可能となっている。
【0047】
次に、電子制御装置2で行う速度メータ31の表示に関する処理について図2を用いて説明する。
【0048】
まず、車両のイグニッション・スイッチがオンされると、車両速度表示装置1は内部の各装置を初期化し、表示部3の表示処理がスタートする。
【0049】
車両速度表示装置1内の電子制御装置2では、複数の車載機器制御装置6の一つであるオートクルーズ制御装置、及び目標速度入力部7から受信した情報に基づき、オートクルーズ制御装置及び目標速度入力部7何れかの目標速度が設定されているか否かの判定を行う(ステップS1)。尚、もしオートクルーズ制御装置が自動走行制御中であれば、目標速度入力部7の目標速度設定よりも車両動作との関連の深いオートクルーズ制御装置の目標速度設定を優先して用いる(つまりオートクルーズ制御装置が自動走行制御中であれば、目標速度入力部7の目標速度設定はキャンセルされる)。
【0050】
ステップS1がYES(目標速度設定中)であれば、ステップS2に進み、NOであればステップS6に進む。
【0051】
ステップS2に進んだ場合、電子制御装置2は車載機器制御装置6から受信した現在の車速及び設定された目標速度を速度メータ31に表示するよう表示部3に要求し、表示部3はその要求に従って、速度メータ31上に現在の車速及び目標速度を表示する(後述の図3参照)。
【0052】
次に、電子制御装置2では、その目標速度が制限速度取得部5から取得した制限速度を上回ったか否かの判定を行う(ステップS3)。
【0053】
目標速度>制限速度の場合(YES)は、ステップ4に進み、目標速度≦制限速度の場合(NO)は、リターンに進みステップS1の判定に戻る。
【0054】
ステップS4に進んだ場合、電子制御装置2は、目標速度が制限速度を超過していることを表示するよう、表示部3に要求する。具体的には現在の車速と共に目標速度と制限速度の差分の範囲(特定領域)を速度メータの速度スケール上で表示させる(後述の図4参照)。
【0055】
このようにすることで、車速と車速と共に目標速度と制限速度の差分の範囲を1つの速度メータ上に同時に表示するため、ユーザーは他の装置に視線を移す必要がなく瞬時に目標速度の超過に対する注意を目視確認できる。
【0056】
また、目標速度と制限速度の両方を数字や文字、矢印線で表示するよりも目標速度と制限速度の差分の範囲を表示することにより、ユーザーが制限速度を超過したことを知ると共に、どれくらい超過しているかを同時に見ることができ、直感的かつ即座に注意を認識しやすくすることができる。
【0057】
また、ステップS4に進んだ場合、電子制御装置2は、警告音を発するよう警告部4に要求し、警告部4は定められた音(例えばピーという単音をインターバル的に繰り返す)若しくは音声(「制限速度を超えています」)を発する。このように表示だけでなく、単音や音声も用いて制限速度を超えたことをユーザーに警告することで、ユーザーはよりはっきりと制限速度の超過に対する注意を認識することができる。
【0058】
尚、ステップS4の表示はこれに限らず、目標速度が制限速度を越えてしまった情報を報知できる方法であればよい。例えばステップS2と同様に、電子制御装置2は、現在の車速及び設定された目標速度を数字や文字、矢印線を用いて速度メータ31に表示させ、警告部4に制限速度を超えたことをユーザーに警告する音若しくは音声を発音させてもよい。その他、現在の車速を速度メータ31に表示させ、さらに警告部4に目標速度が制限速度を超えたことを音若しくは音声だけを発音させてユーザーに警告してもよい。上述のような報知をユーザーは受けることで、ユーザーは自分自身の視覚又は聴覚の識別能力に応じて、目標速度の超過に対する注意を認識することができる。
【0059】
上述のステップS4のようにすることで、ユーザーは制限速度に注意する必要があるときに、必要な情報(目標速度が制限速度を超過した情報)の報知を受けることができる。
【0060】
さらに、電子制御装置2は、ステップS4に進んだ場合には、タイマのカウントを開始し、ステップS5でカウント開始から所定の時間が経過したか否かを判定する。所定の時間が経過した場合(YES)は、リターンに進みステップS1の判定に戻る。また、所定の時間が経過していない場合(NO)は、所定時間が経過するまでステップS4及びステップS5を繰り返し実行する。この所定の時間については、特に決まった値は無いが、ユーザーがステップS4で報知に気づく時間であればよく、ここでは5秒を所定の時間と定めている。
【0061】
次に、目標速度設定中か否かを確認するステップS1でNOであった場合、ステップS6に進む。ステップS6では、ユーザーが運転する通常の走行モードとして、電子制御装置2は、現在の車速を示す情報を表示するよう、表示部3に要求し、表示部3はその要求に従って、速度メータ31上に現在の車速を表示する(後述の図5参照)。
【0062】
そして、電子制御装置2では、現在の車速が制限速度を上回ったか否かの判定を行う(ステップS7)。現在の車速>制限速度の場合(YES)は、ステップ8に進み、現在の車速≦制限速度の場合(NO)は、リターンに進みステップS1の判定に戻る。
【0063】
尚、ここでの制限速度は、走行道路の法定速度の値をまず設定し、その法定速度から5km/h低い値を制限速度とした値を用いている。このようにすることで、車両が法定速度を超えて運転することを避けるようユーザーが注意することができ、また法定速度から少し低い値を制限速度の値とすることで、目標速度が法定速度を越える前にユーザーが次に取る行動(ブレーキを踏む、目標速度を変更するなど)に時間のゆとりを持たせることができる。
【0064】
ステップS8では、現在の車速及び制限速度を速度メータ31に表示するよう表示部3に要求し、表示部3はその要求に従って、速度メータ31上に現在の車速及び制限速度を表示する(後述の図6参照)。
【0065】
表示後は、ステップS7に戻り、現在の車速≦制限速度になるまで、繰り返しステップS7とステップS8の処理を実行する。速度メータ31には、車速の以外の速度情報として制限速度の1つの種類しかないため、表示する情報が少なく、見た目がすっきりしている。そのため所定の条件(車速≦制限速度)に達するまでステップS7とステップS8を繰り返し、車速と制限速度の両方を速度メータ31の中で同時に表示させ続けている。そのため、ユーザーは他に視線を移すことなく瞬時に車速が制限速度を超えたか否かを知ることができる。尚、ここでは、車速が制限速度を超過していることを表示によってユーザーに警告したが、これに限らず、例えば表示の代わりに音若しくは音声を発音してユーザーに警告してもよい。
【0066】
以上、本実施形態の速度メータ31に関する処理を説明してきたが、上述のように制限速度や目標速度の速度情報に関する表示方法は、走行中の条件に応じて予めどのパターンを表示するか選択されるようROMのプログラムに記録されている。
【0067】
次に、図3〜図6を用いて本実施形態の速度メータ31の表示例について説明する。この速度メータ31は、階調表示可能なカラー液晶のディスプレイに表示される。また、以下の説明をわかりやすくするため制限速度は車両の法定速度とイコールとする。
【0068】
図3は、図2のステップS2に対応する速度メータ31の表示例である。この速度メータ31は、車速を示すための車速目盛及びその目盛に対応する車速を数字で表した文字盤(以下、車速目盛と文字盤を合わせて目盛と呼ぶ)311と、目盛311に沿ってアナログ的に回動(正逆両方向に円運動)し、現在の車速を示して表示する指針312を表示している。また、速度メータ31は、目盛311の外周には目標速度313を表示している。ここでは、現在の車速は30km/h、目標速度は50km/h、制限速度は60km/hの状況である。目標速度≦制限速度の条件下では、目標速度が制限速度を超えないため、ユーザーが注意する必要が無い制限速度は、見た目をすっきりさせるため表示させない。また、ユーザーが注意する必要が無いため、音若しくは音声で制限速度を通知させる必要も無い。そのため速度メータ31は、現在の車速312に加え目標速度313を表示している。このようにユーザーは速度メータ31で余計な表示を見なくてもよいため、不要な速度情報に煩わしさを感じることを抑制できる。
【0069】
図4は、図2のステップS4に対応する速度メータ31の表示例である。速度メータ31は、目盛311、現在の車速312、目標速度313の他に、目標速度と制限速度の差分の範囲を示す速度情報314を表示している。この差分の範囲は、速度メータ31の背景色(ここでは黒)や車速312(ここでは白)とは異なる色(ここでは緑)で速度スケール上に表示させている。この差分の範囲の着色すべき色は特にこれに限ることはなく、差分の範囲の色と隣接する色(周囲の色)の違いが認識できればよい。また現在の車速は30km/h、目標速度は50km/h、制限速度は40km/hの状況である。図3と異なり、車両が走行中に法定速度の変わり目(60km/h→40km/h)に差し掛かり、目標速度(50km/h)>制限速度(40km/h)となった場合、速度メータ31は、この図4に示すように現在の車速312に加え速度情報314(差分の10km/h)を表示する。
【0070】
このように目標速度と制限速度の両方を数字や文字、矢印線で表示するよりも、目標速度と制限速度の差分の範囲(特定領域)を着色して表示する。このように表示することにより、ユーザーが制限速度を超過したことを知ると共に、どれくらい超過しているかを同時に見ることができ、ユーザーはより直感的かつ即座に注意を認識することができる。また、差分の範囲を着色することにより、ユーザーはその色を見て警告の種類をはっきりと識別することができる。
【0071】
図5では、図2のステップS6に対応する速度メータ31の表示例である。速度メータ31は、目盛311、現在の車速312を表示している。ここでは、現在の車速は30km/h、制限速度は60km/hの状況である。現在の車速≦制限速度の間は、特に注意を促す必要の無いため、図5のように制限速度の表示を省くことができ、また音や音声で警告する必要も無い。そのため速度メータ31は、見た目をより一層すっきりとさせた表示にすることができ、ユーザーが余計な表示を見て、煩わしさを感じることを抑制できる。
【0072】
図6では、図2のステップS8に対応する速度メータ31の表示例である。速度メータ31には目盛311、現在の車速312の他に、車速と制限速度の差分の範囲を示す速度情報315を表示している。この差分の範囲は、速度メータ31の背景色(ここでは黒)や車速312(ここでは白)とは異なる色(ここでは赤)で速度スケール上に表示させている。また現在の車速は80km/h、制限速度は60km/hの状況を示している。現在の車速>制限速度となった場合、現在の車速312に加え車速と制限速度の差分の範囲を示す速度情報315を表示する。このように現在の車速が制限速度をどれだけ超えているかを、数字や文字、矢印線で表示するよりも車速と制限速度の差分の範囲に着色して表示することにより、ユーザーが制限速度を超過したことを知ると共に、どれくらい超過しているかを同時に見ることができ、より直感的かつ即座に注意を認識しやすくすることができる。また、速度情報314(緑)、速度情報315(赤)のように、差分の範囲の色を異ならせることで、ユーザーはその色を見て今どの警告を受けているかの警告の種類をはっきりと識別することができる。
【0073】
以上、説明してきたように本発明の車両用速度表示装置における実施形態を説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り適用でき、例えばエコ運転の最適速度を、目標速度を制限する速度情報として制限速度の変わりに用いてもよい。
【0074】
その他、車両が一定速度で走行するよう自動走行制御させる場合は、上述のようにユーザーによって目標速度を設定している。また一方、車両が先行車両に追従するよう自動走行制御させる場合は、ミリ波センサやFM(連続波)−CW(周波数変調)レーダ等を用いて、車両前方の車両の車間距離を一定に保つよう調整される車速を目標速度としている。その場合、車両前方との車間距離が変わる度に目標速度が頻繁に変更されることになり、ユーザーが速度メータに対して見た目の煩わしさを感じる恐れがある。そこで車両が先行車両に追従するよう自動走行制御させる場合は、車速≒目標速度であると考えて、図2のステップ2において、目標速度を省略して(車速に目標速度の意味を含ませる)、車速だけを表示させてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 車両用速度表示装置
2 電子制御装置
3 表示部
4 警告部
5 制限速度取得部
6 車載機器制御装置
7 目標速度入力部
31 速度メータ
32 回転メータ
33 燃料計
34 水温計
311 目盛
312 現在の車速
313 目標速度
314 目標速度が制限速度を超過した速度
315 車速が制限速度を超過した速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車速を取得する車速取得手段と、
目標速度を取得する目標速度取得手段と、
制限速度を取得する制限速度取得手段と、
取得した前記車速、前記目標速度、及び前記制限速度を適宜表示可能な表示手段と、
を有する車両用速度表示装置であって、
前記目標速度が前記制限速度を超えているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により、前記目標速度が前記制限速度を超えていないと判定された場合は、
前記車速と共に、前記目標速度を前記表示手段に表示し、
前記判定手段により、前記目標速度が前記制限速度を超えていると判定された場合は、
前記車速を前記表示手段に表示すると共に、前記目標速度が前記制限速度を超えていることを車両の乗員が認識可能な情報を報知する制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用速度表示装置。
【請求項2】
前記制限速度は、前記取得した制限速度から所定値低い値に設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用速度表示装置。
【請求項3】
前記報知は、表示、音、音声のうち、少なくとも何れか1つを用いてなされることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用速度表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、車速と、車両の乗員が認識可能な前記情報を、前記表示手段に同時に表示することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の車両用速度表示装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記目標速度と前記制限速度の差分の範囲を、その範囲の周囲とは異なる色で前記表示手段に表示することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の車両用速度表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−218889(P2011−218889A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87910(P2010−87910)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】