説明

車両用開閉体のロック装置

【課題】蓋体をハウジングに確実に固定可能な車両用開閉体のロック装置を提供する。
【解決手段】ロック装置1は、ロック装置本体70と、ロック装置本体70を操作してテールゲート9の状態を切り替える切替手段50と、開口72bを有する収納室72aが形成され、収納室72a内に切替手段50を収納するハウジング72と、開口72bを塞ぐ蓋体71とを備える。蓋体71は、挿通穴63を有して側方に突出する3個の係止部62を一体に有する。ハウジング72は、蓋体71が開口72bを塞ぐ際、弾性変形しつつ各挿通穴63に挿通された後、復元して各挿通穴63の奥側に設けられた嵌合縁部63a、63bに嵌合する3個の突出部68を一体に有する。各係止部62は、各突出部68と各嵌合縁部63a、63bとが嵌合する箇所の周囲を側方から覆う側壁部64a、64b、64cを一体に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用開閉体のロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1等に従来の車両用開閉体のロック装置が開示されている。従来のロック装置は、車両用開閉体を施錠状態又は解錠状態とするロック装置本体と、ロック装置本体を操作して車両用開閉体の状態を切替手段と、開口を有する収納室が形成され、収納室内に少なくとも切替手段を収納するハウジングと、開口を塞ぐ蓋体とを備えている。
【0003】
蓋体により開口を塞ぐ際に蓋体をハウジングに固定する具体的構成としては、例えば、図8及び図9に示すように、蓋体91が複数の係止部92を一体に有し、ハウジング99が複数の突出部98を一体に有している構成が知られている。
【0004】
具体的には、各係止部92は、蓋体91の側方に突出しており、蓋体91に沿うように細長い矩形とされた挿通穴93を有している。
【0005】
一方、各突出部98は、細長い矩形断面をなす直方部97と、直方部97の先端の幅方向両側から分岐して直方部97が挿通穴93に挿通される方向と反対方向かつ拡幅方向に延在する一対の変形部96a、96bとからなっている。
【0006】
そして、各突出部98は、各変形部96a、96bが互いに接近するように弾性変形しつつ各挿通穴93に挿通された後、各変形部96a、96bが復元して各挿通穴93の奥側の開口に設けられた嵌合縁部93a、93bに嵌合するようになっている。
【0007】
このような構成により、蓋体91は、ハウジング99に固定されるとともに、ハウジング99の開口を塞ぐ。
【0008】
【特許文献1】特開2006−207192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記従来のロック装置では、図8及び図9の係止部92及び突出部98と同一又は類似の構成である係止部及び突出部を蓋体及びハウジングが有している場合において、物体が接触することにより、突出部が係止部から外れる不具合が生じる場合がある。例えば、図8及び図9の係止部92及び突出部98の例で言えば、ロック装置が装着される車両において、各嵌合縁部93a、93bに嵌合する各変形部96a、96bに荷物等の物体が接触すれば、各変形部96a、96bが弾性変形して、各嵌合縁部93a、93bとの嵌合が外れてしまう。このような不具合が生じると、ハウジング99に対する蓋体91の固定が不完全となって塞がれていた開口が開いてしまう。そうすると、収納室内にゴミ等の異物が進入し、切替手段に異物が接触し易くなる。また、蓋体91が切替手段の構成部品を位置決めする機能も有している場合には、位置決め機能が損なわれて、構成部品のガタツキ量が増加してしまう。その結果、このロック装置では、車両用開閉体を施錠状態又は解錠状態とする動作が阻害されるおそれがある。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、蓋体をハウジングに確実に固定可能な車両用開閉体のロック装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両用開閉体のロック装置は、車両用開閉体を施錠状態又は解錠状態とするロック装置本体と、
前記ロック装置本体を操作して前記車両用開閉体の状態を切り替える切替手段と、
開口を有する収納室が形成され、前記収納室内に少なくとも前記切替手段を収納するハウジングと、
前記開口を塞ぐ蓋体とを備え、
前記ハウジング及び前記蓋体の一方は、挿通穴を有して側方に突出する複数の係止部を一体に有し、
前記ハウジング及び前記蓋体の他方は、前記蓋体が前記開口を塞ぐ際、弾性変形しつつ各前記挿通穴に挿通された後、復元して各前記挿通穴の奥側に設けられた嵌合縁部に嵌合する複数の突出部を一体に有する車両用開閉体のロック装置において、
各前記係止部は、各前記突出部と各前記嵌合縁部とが嵌合する箇所の周囲を側方から覆う側壁部を一体に有していることを特徴とする。
【0012】
本発明の車両用開閉体のロック装置では、各係止部は、各突出部と各嵌合縁部とが嵌合する箇所の周囲を側方から覆う側壁部を一体に有している。このため、ロック装置が装着される車両において、各係止部に荷物等の物体が接触する場合であっても、側壁部により、各突出部と各嵌合縁部とが嵌合する箇所にはその物体が接触しない。このため、物体によって突出部が係止部から外れる不具合は生じない。
【0013】
したがって、本発明の車両用開閉体のロック装置は、蓋体をハウジングに確実に固定することができる。その結果として、このロック装置では、開口が開いて収納室内にゴミ等の異物が進入して切替手段に接触したり、切替手段の構成部品を位置決めする蓋体の機能が損なわれて、構成部品のガタツキ量が増加したりする不具合が発生し難い。このため、このロック装置は、車両用開閉体を施錠状態又は解錠状態とする動作が阻害されるおそれがない。
【0014】
施錠状態には、車両用開閉体が完全に閉じてロックされた状態(フルラッチ状態)の他、車両用開閉体が完全に閉じてはいないが、ロックされた状態(ハーフラッチ状態)等が含まれる。解錠状態には、ロックが解除されているが、車両用開閉体が完全に閉じている状態の他、ロックが解除されて、車両用開閉体が有る程度開いている状態等が含まれる。切替手段がロック装置本体を操作して車両用開閉体の状態を切り替える動作としては、例えば、施錠状態から解錠状態に切り替える動作及び/又は解錠状態から施錠状態に切り替る動作が挙げられる。
【0015】
各係止部及び各突出部としては、本発明の作用効果を奏するものであれば、どのような構成のものを採用してもかまわない。
【0016】
例えば、本発明のロック装置において、各挿通穴は、ハウジング又は蓋体に沿うように細長い矩形とされ、各突出部は、細長い矩形断面をなす直方部と、直方部の先端の幅方向両側から分岐して直方部が挿通穴に挿通される方向と反対方向かつ拡幅方向に延在し、嵌合縁部に嵌合する一対の変形部とからなり得る。
【0017】
このような具体的構成である本発明のロック装置では、側壁部により、各変形部に荷物等の物体が接触しないので、各変形部が弾性変形して嵌合縁部との嵌合が外れてしまう不具合は生じない。このため、このロック装置は本発明の効果を確実に発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。なお、図1に示すように、テールゲート9側を後側として前後方向、左右方向及び上下方向を規定している。すなわち、テールゲート9の反対側である車両前方を前側と規定している。また、車両前方を向いた状態における左側(図1における紙面奥側)を左側と規定し、車両前方を向いた状態における右側(図1における紙面手前側)を右側と規定している。そして、図2及び図3に示す前後方向、左右方向及び上下方向は、全て図1の各方向に対応している。
【実施例】
【0019】
図1に示すように、実施例の車両用開閉体のロック装置1(以下、単に「ロック装置1」と呼ぶ。)は、自動車に適用されるものである。ロック装置1は、車両用開閉体の具体的態様であるテールゲート9の下方の車内側に配設されている。そして、ロック装置1は、後述する通り、フォーク11がストライカ79を係止したり、係止しなくなることにより、テールゲート9を閉じたまま保持する施錠状態又はテールゲート9を開くことができる解錠状態とするものである。以下、ロック装置1の各構成要素について詳しく説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、ロック装置1は、ロック装置本体70と、ハウジング72と、蓋体71と、切替手段50とを備えている。
【0021】
ロック装置本体70は、鋼板が折り曲げ加工されてなる取付部材73を有している。取付部材73には、上端側において左右方向に略水平に延在する一対の取付部73bと、下方に凹む第1収納室73aとが形成されている。取付部73bは、図1に示すように、テールゲート9の下側端面に締結固定されるためのものである。第1収納室73aには、図1及び図2に示すように、後述するフォーク11及びポール12が収納されている。また、第1収納室73aには、図2に示すように、下端縁中央から上方に向けて深く溝状に切り欠かれた進入口78が形成されている。進入口78には、テールゲート9の開閉に伴ってロック装置1が移動する際、ストライカ79が相対的に進入するようになっている。
【0022】
ハウジング72は、熱可塑性樹脂の射出成形品であり、開口72bを有する第2収納室72aが形成された略箱形状のものである。ハウジング72は、取付部材73の上面後端側において、開口72bを車内側(前方)に向けた状態で併設されている。第2収納室72a内には、後述する切替手段50が収納されている。
【0023】
蓋体71は、熱可塑性樹脂の射出成形品であり、開口72bを塞ぐことが可能な略蓋形状に形成されたものである。蓋体71は、取付部材73の上面後端側において、車内側(前方)から開口72bを塞いだ状態でハウジング72に固定されている。蓋体71をハウジング72に固定する具体的構成については後述する。
【0024】
図2に示すように、第1収納室73a内には、フォーク11及びポール12が進入口78を左右から挟むように設けられている。
【0025】
フォーク11は、進入口78の左側(図2に示すように、車両前方を向いた状態における左側。)に配設され、取付部材73の底部から第1収納室73a内に向けて立設された揺動軸14aに揺動可能に軸支されている。そして、フォーク11は、図示しないコイルバネにより、揺動軸14a回りで反時計方向に揺動するように付勢されている。なお、本実施例における「時計方向」及び「反時計方向」は、図2の断面図に対面した状態を基準としている。
【0026】
フォーク11の進入口78側に位置する部位は、上側凸部11aと下側凸部11bとに分岐している。そして、上側凸部11aと下側凸部11bとの間に形成された凹部11cには、進入口78内に進入したストライカ79が収まるようになっている。図2に示す状態が、フォーク11が進入口78の底部でストライカ79を係止することによりテールゲート9が閉じたまま保持される施錠状態である。上側凸部11aのポール12に対面する先端側には、後述するストッパ部12aと当接可能なラッチ面19aが形成されている。フォーク11の外周縁は、上側凸部11aの先端から時計方向に円弧状に形成されている。
【0027】
ポール12は、進入口78の右側(図2に示すように、車両前方を向いた状態における右側。)に配設され、取付部材73の底部から第1収納室73a内に向けて立設された揺動軸14bに揺動可能に軸支されている。そして、ポール12は、図示しないコイルバネにより、揺動軸14b回りで時計方向に揺動するように付勢されている。
【0028】
ポール12の進入口78側に位置する部位は、フォーク11の上側凸部11aに向けて突出するように形成され、その先端側がストッパ部12aとされている。ストッパ部12aは、フォーク11が進入口78の底部でストライカ79を係止した状態において、上側凸部11aのラッチ面19aに当接することにより、フォーク11を反時計方向に揺動させないように固定して施錠状態とするようになっている。
【0029】
ポール12の揺動軸14bより上方に位置する部位は、ストッパ部12aと分岐しつつ、蓋体71及びハウジング72の下面に向けて突出するように形成され、その先端側が被当接部12bとされている。被当接部12bは、詳細は後述するが、切替レバー51の一端である当接部51bが当接することにより、反時計方向に押されて変位するようになっている。
【0030】
そして、図3に示すように、被当接部12bが反時計方向に変位すれば、ポール12は、コイルバネの付勢力に抗しつつ、揺動軸14b回りで反時計方向に揺動するようになっている。この際、ストッパ部12aがフォーク11のラッチ面19aから離反するので、ポール12がフォーク11を開放する。このため、フォーク11がコイルバネの付勢力により揺動軸14a回りで反時計方向に揺動して、ストライカ79を進入口78から離脱する方向に変位させる。その結果、フォーク11は、進入口78内においてストライカ79を係止しない状態に切り替わり、テールゲート9は解錠状態とされる。この際、テールゲート9は、完全に閉じた状態から少し開いた状態に変位する。
【0031】
逆に、ストライカ79が進入口78内に進入する場合には、フォーク11及びポール12が上述の動作とは逆に動作する。そして、図2に示すように、ストライカ79が進入口78の底部まで進入すれば、フォーク11は、元の状態まで揺動し、ストッパ部12aがラッチ面19aに当接して施錠状態に戻る。
【0032】
切替手段50は、図2に示すように、第2収納室72aに収納されており、切替レバー51と、駆動手段80とを有している。
【0033】
切替レバー51は、熱可塑性樹脂の射出成形により、上方に扇型歯車82dが形成され、中央に軸穴51aが形成され、下方に当接部51bが形成された細長い板形状のものである。
【0034】
軸穴51aは、ハウジング72の内側から前方(図2における紙面手前側)に向けて凸設された揺動軸72cに挿通されている。このため、切替レバー51は、揺動軸72c回りで揺動可能となっている。また、切替レバー51は、揺動軸72cの軸心方向のガタツキ量が一定となるように、蓋体71によって位置決めされている。図2は、切替レバー51が初期位置にある状態を示している。また、図3は、切替レバー51が最大揺動位置にある状態を示している。
【0035】
図2に示すように、当接部51bは、蓋体71及びハウジング72の下面側に形成された当接部用開口72dよりも下方に突出し、被当接部12bの左側に延在している。
【0036】
扇型歯車82dの上方、すなわち、第2収納室72aの上方右側には、小径ギヤ82c及びウォームホイール82bが配設されている。前方に位置する小径ギヤ82cと後方(図2における紙面奥側)に位置するウォームホイール82bとは同軸であり、熱可塑性樹脂の射出形成や金属材料の切削加工等により一体成型されている。小径ギヤ82c及びウォームホイール82bは、ハウジング72の内側から前方に向けて凸設された回転軸75によって、回転可能に軸支されている。また、小径ギヤ82c及びウォームホイール82bは、回転軸75の軸心方向のガタツキ量が一定となるように、蓋体71によって位置決めされている。
【0037】
小径ギヤ82cは、扇型歯車82dと噛み合っている。一方、ウォームホイール82bは、下方に配設されたウォームギヤ82aと噛み合っている。ウォームギヤ82aは、第2収納室72aの上方左側に配設されたモータ81の回転軸に一体回転可能に固定されている。
【0038】
ウォームホイール82bの後面側には、リターンスプリング83が配設されている。リターンスプリング83の一端は、ハウジング72からウォームホイール82bの後面側に向けて凸設されたハウジング側係止部83aに係止されている。他方、リターンスプリング83の他端は、ウォームホイール82bの後面側からハウジング72に向けて凸設されたウォームホイール側係止部83bに係止されている。このため、ウォームホイール82bは、リターンスプリング83により時計方向に回転するように付勢されている。
【0039】
扇型歯車82dと、小径ギヤ82cと、ウォームホイール82bと、ウォームギヤ82aとを有してギヤ機構82が構成されている。また、モータ81と、ギヤ機構82と、リターンスプリング83とを有して駆動手段80が構成されている。そして、駆動手段80は、後述する通り、モータ81とギヤ機構82とリターンスプリング83とによって、切替レバー51を図2に示す初期位置と図3に示す最大揺動位置との間で往復動作させる。
【0040】
このような構成である実施例のロック装置1では、図1及び図2に示す初期状態において、使用者が開閉ハンドル9aを操作してテールゲート9を開こうとする場合、下記のようにして、切替手段50が自動によりロック装置本体70を操作して、テールゲート9を解錠状態とする。
【0041】
まず、使用者がテールゲート9を開こうとして開閉ハンドル9aを引くと、図示しない制御手段がモータ81に電力を供給してウォームギヤ82aを回転させる。これにより、ウォームギヤ82aと噛合するウォームホイール82bが反時計方向に回転し、小径ギヤ82cもウォームホイール82bと一体に反時計方向に回転する。そして、図3に示すように、小径ギヤ82cと噛み合う扇型歯車82dを介して、切替レバー51が揺動軸72c回りで時計方向に揺動し、当接部51b及び当接部12bを介して、ポール12に作用する。
【0042】
その結果、上述の通り、ポール12がフォーク11を開放し、フォーク11が揺動軸14a回りで反時計方向に揺動する。その結果、フォーク11は、進入口78内においてストライカ79を係止しない状態に切り替わり、テールゲート9は解錠状態とされる。
【0043】
そして、使用者が開閉ハンドル9aを戻すと、制御手段がモータ81への電力の供給を停止する。これにより、切替レバー51は、リターンスプリング83により時計方向に付勢されたウォームホイール82b及び小径ギヤ82cに駆動されて、図3に示す最大揺動位置から逆方向に揺動して、初期位置へと復帰する。このため、ポール12も逆方向に揺動し、ストッパ部12aがフォーク11の外周面に付勢されて、いつでもフォーク11を固定可能な状態になる。その後、使用者がテールゲート9を閉めようとすれば、ストライカ79が進入口78に進入して、フォーク11を逆方向に揺動させるので、フォーク11及びポール12が上述とは逆に動作する。そして、ストライカ79が進入口78の底部まで進入すれば、図2に示す施錠状態へと戻る。
【0044】
このように動作するロック装置1では、仮に、ハウジング72に対する蓋体71の固定が不完全となって、開口72bが少しでも開いてしまうと、そこから第2収納室72a内にゴミ等の異物が進入し、切替手段50に異物が接触し易くなる。また、切替手段50の構成部品を位置決めする蓋体91の機能が損なわれて、切替レバー51等のガタツキ量が増加してしまう。そして、このような不具合が生じることとなれば、テールゲート9を施錠状態又は解錠状態とする動作が阻害されるおそれがある。このため、このロック装置1では、下記に詳述する係止部62と突出部68とにより、蓋体71をハウジング72に確実に固定している。
【0045】
蓋体71は、図1及び図2に示すように、3個の係止部62を有している。各係止部62は、それぞれ蓋体71の上面及び両側面から側方に突出するように一体に形成されている。各係止部62は同一形状であるので、以後、1つの係止部62について説明し、残りの係止部62についても同様とする。
【0046】
図4に示すように、係止部62には、蓋体71の側面に沿うように細長い矩形とされた挿通穴63が貫設されている。挿通穴63の貫設方向は、図1に示すように、ハウジング72に対する蓋体71の合わせ面71aに直交する方向である。そして、挿通穴63において、合わせ面71aから離れる側が奥側である。
【0047】
図4に示すように、挿通穴63の奥側には、細長い矩形の両短辺から外側に向けて段状に凹むように嵌合縁部63a、63bが設けられている。そして、係止部62は、各嵌合縁部63a、63bの周囲を側方から「コ」字状に覆う側壁部64a、64b、64cを一体に有している。より詳しくは、側壁部64a、64b、64cは、係止部62において挿通穴63を「コ」字状に覆う部位のうち、各嵌合縁部63a、63bよりも挿通穴63の奥側に位置する部位である。
【0048】
ハウジング72は、図1及び図2に示すように、3個の突出部68を有している。各突出部68は、それぞれハウジング72の上面及び両側面から、合わせ面71aに直交する方向に突出するように一体に形成されている。各突出部68は同一形状であるので、以後、1つの突出部68について説明し、残りの突出部68についても同様とする。
【0049】
図5に示すように、突出部68は、直方部67と一対の変形部66a、66bとからなっている。
【0050】
直方部67は、合わせ面71aに直交する方向に突出するとともに、ハウジング72の側面に沿うように、細長い矩形断面をなしている。直方部67において、突出方向に直交し、かつ、ハウジング72の側面に沿う方向が幅方向である。
【0051】
一対の変形部66a、66bは、直方部67先端の幅方向両側から分岐して、直方部67が突出する方向と反対方向かつ拡幅方向に延在する細長い略角柱形状とされている。各変形部66a、66bの先端には、幅方向外側から内側に向けて凹む嵌合部66c、66dが形成されている。
【0052】
各変形部66a、66bの幅方向外側面同士の幅Lは、挿通穴63の細長い矩形の長辺より長くされている。そして、各変形部66a、66bが幅方向に互いに接近するように弾性変形すると、各変形部66a、66bの幅方向外側面同士の幅Lが挿通穴63の細長い矩形の長辺より短くなるように、各変形部66a、66bと直方部67との隙間が確保されている。
【0053】
このような構成である各係止部62及び各突出部68により、下記の通り、蓋体71がハウジング72に固定され、開口72bが塞がれる。
【0054】
まず、蓋体71をハウジング72に対面させた状態で接近させ、各係止部62の各挿通穴63に対して、各突出部68の挿通を開始する。
【0055】
そうすると、各挿通穴63内に、各突出部68の直方部67及び各変形部66a、66bが進入し、各変形部66a、66bの幅方向外側面が挿通穴63の内壁面に当接して弾性変形する。このため、各変形部66a、66bの幅方向外側面同士の幅Lが挿通穴63の細長い矩形の長辺より短くなり、各突出部68が各挿通穴63に完全に挿通される。その結果、図6及び図7に示すように、各変形部66a、66bの幅方向外側面が挿通穴63の内壁面に当接しなくなって復元し、各変形部66a、66bの先端の各嵌合部66c、66dが各嵌合縁部63a、63bに嵌合する。
【0056】
こうして、このロック装置1では、各係止部62に各突出部68が係止されて、蓋体71がハウジング72に固定され、開口72bが塞がれる。そして、各挿通穴63から各突出部68を引き抜こうとしても、各嵌合部66c、66dが各嵌合縁部63a、63bに当て止まるので、各突出部68を引き抜くことができないようになっている。
【0057】
また、このロック装置1では、側壁部64a、64b、64cにより、各突出部68と各嵌合縁部63a、63bとが嵌合する箇所の周囲が側方から覆われている。このため、ロック装置1が装着される車両において、各係止部62に荷物等の物体が接触する場合であっても、側壁部64a、64b、64cにより、各突出部68と各嵌合縁部63a、63bとが嵌合する箇所にはその物体が接触しない。このため、物体によって各突出部68が各係止部62から外れる不具合は生じない。
【0058】
したがって、このロック装置1は、蓋体71をハウジング72に確実に固定することができる。その結果として、このロック装置1では、開口72bが開いて収納室72a内にゴミ等の異物が進入して切替手段50に接触したり、切替手段50の構成部品を位置決めする蓋体71の機能が損なわれて、切替レバー51等のガタツキ量が増加したりする不具合が発生し難い。このため、このロック装置1は、テールゲート9を施錠状態又は解錠状態とする動作が阻害されるおそれがない。
【0059】
また、このロック装置1では、各挿通穴63は、蓋体71に沿うように細長い矩形とされ、各突出部68は、細長い矩形断面をなす直方部67と、直方部67の先端の幅方向両側から分岐する一対の変形部66a、66bとからなっている。各変形部66a、66bは、直方部67が挿通穴63に挿通される方向と反対方向かつ拡幅方向に延在し、各嵌合縁部63a、63bに嵌合するようになっている。このため、仮に各変形部66a、66bに荷物等の物体が接触するとすれば、各変形部66a、66bが弾性変形して各嵌合縁部63a、63bとの嵌合が外れてしまう不具合が生じ得る。しかしながら、このロック装置1では、側壁部64a、64b、64cにより、各変形部66a、66bの嵌合部63c、63dと各嵌合縁部63a、63bとが嵌合する箇所の周囲を側方から覆っている。このため、このロック装置1では、各変形部66a、66bに荷物等の物体が接触し難くなっており、各変形部66a、66bが弾性変形して各嵌合縁部63a、63bとの嵌合が外れてしまう不具合は生じない。このため、このロック装置1は本発明の効果を確実に発揮することができている。
【0060】
さらに、このロック装置1では、側壁部64a、64b、64cにより、各係止部62の挿通穴63周りの強度を補強することもできているので、各係止部62自体も破損し難くなっている。
【0061】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。実施例では、電動オープン型のロック装置1について説明したが、本発明は、自動車用ロック装置全般に適用可能である。例えば、本発明は、自動により車両用開閉体を解錠状態から施錠状態に切り替えるロック装置(電動ロック型)、自動により車両用開閉体を施錠状態又は解錠状態に切り替えるロック装置(電動ロックアンロック型)等に適用できる。また、本発明は、手動により車両用開閉体の状態を切り替えるロック装置にも適用できる。さらに、本発明は、ロック装置本体が切替手段とともにハウジングの収納室内に収納されるロック装置にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は車両用開閉体のロック装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例の車両用開閉体のロック装置の側面図である。
【図2】実施例の車両用開閉体のロック装置に係り、図1のII−II断面を示す断面図である。
【図3】実施例の車両用開閉体のロック装置に係り、図1のII−II断面を示す断面図である。
【図4】実施例の車両用開閉体のロック装置に係り、蓋体及び係止部を示す部分斜視図である。
【図5】実施例の車両用開閉体のロック装置に係り、ハウジング及び突出部を示す部分斜視図である。
【図6】実施例の車両用開閉体のロック装置に係り、係止部に嵌合する突出部を示す部分斜視図である。
【図7】実施例の車両用開閉体のロック装置に係り、係止部に嵌合する突出部を示す部分斜視図である。
【図8】従来の車両用開閉体のロック装置に係り、係止部に嵌合する突出部を示す部分斜視図である。
【図9】従来の車両用開閉体のロック装置に係り、係止部に嵌合する突出部を示す部分斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
1…ロック装置
9…車両用開閉体(テールゲート)
50…切替手段
62、92…係止部
63、93…挿通穴
63a、63b、93a、93b…嵌合縁部
64a、64b、64c…側壁部
66a、66b、96a、96b…変形部
67、97…直方部
68、98…突出部
71、91…蓋体
70…ロック装置本体
72、99…ハウジング
72a…収納室(第2収納室)
72b…開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用開閉体を施錠状態又は解錠状態とするロック装置本体と、
前記ロック装置本体を操作して前記車両用開閉体の状態を切り替える切替手段と、
開口を有する収納室が形成され、前記収納室内に少なくとも前記切替手段を収納するハウジングと、
前記開口を塞ぐ蓋体とを備え、
前記ハウジング及び前記蓋体の一方は、挿通穴を有して側方に突出する複数の係止部を一体に有し、
前記ハウジング及び前記蓋体の他方は、前記蓋体が前記開口を塞ぐ際、弾性変形しつつ各前記挿通穴に挿通された後、復元して各前記挿通穴の奥側に設けられた嵌合縁部に嵌合する複数の突出部を一体に有する車両用開閉体のロック装置において、
各前記係止部は、各前記突出部と各前記嵌合縁部とが嵌合する箇所の周囲を側方から覆う側壁部を一体に有していることを特徴とする車両用開閉体のロック装置。
【請求項2】
各前記挿通穴は、前記ハウジング又は前記蓋体に沿うように細長い矩形とされ、
各前記突出部は、細長い矩形断面をなす直方部と、該直方部の先端の幅方向両側から分岐して前記直方部が前記挿通穴に挿通される方向と反対方向かつ拡幅方向に延在し、前記嵌合縁部に嵌合する一対の変形部とからなる請求項1記載の車両用開閉体のロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−138460(P2009−138460A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317150(P2007−317150)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(591038587)株式会社アンセイ (48)
【Fターム(参考)】