説明

車両用電源装置

【課題】検出したバッテリの出力電圧値に応じたデューティ比でバッテリの出力電圧をオン/オフ制御(PWM制御)する際に、正しい時点でバッテリの出力電圧を検出することができる車両用電源装置の提供。
【解決手段】バッテリ8の出力電圧を検出する検出手段3,5と、バッテリ8の出力電圧をオン/オフするスイッチング素子2と、検出手段3,5が検出した出力電圧値に応じたデューティ比でスイッチング素子2をオン/オフ制御する制御手段4,6とを備え、制御手段4,6によりスイッチング素子2がオン/オフしたバッテリ8の出力電圧を、給電すべき電気負荷7・・へ与える車両用電源装置。検出手段3,5は、制御手段4,6がスイッチング素子2をオンにしているオン期間の終期で、バッテリ8の出力電圧を検出する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリの出力電圧を検出し、検出した出力電圧値に応じたデューティ比でスイッチング素子をオン/オフ制御し、スイッチング素子がオン/オフしたバッテリの出力電圧を、給電すべき電気負荷へ与える車両用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両に搭載される電気負荷の種類及びそれらの消費電力は飛躍的に増加する傾向にある。その為、バッテリ及びオルタネータ(車載発電機、交流発電機)という限られた電源を有する車両用電源装置では、電力を確保することは重要な課題となっている。
車両用電源装置では、バッテリの出力電圧は、例えば公称値12Vであり、電気負荷も12Vで作動するようになっているものが多い。しかし、発電機の発電電圧がバッテリを充電するために、14〜12.5Vと高い電圧となっていることから、12Vを超える電圧で電気負荷を作動させていることが多く、その分、無駄な電力を消費することになる。
【0003】
そこで、電力の無駄を削減する為に、バッテリの出力電圧が12Vを超えているときは、ランプ等の電気負荷へ供給する電力を、PWM制御で12Vに降圧するようなことも提案されている。
特許文献1には、電気負荷への通電電流を断続制御するMOSトランジスタと、電気負荷の必要通電電流量に関連する入力信号に基づき、所定キャリア周波数のパルス信号のデューティ比を変調してパルス幅変調制御電圧として出力するパルス幅変調(PWM)回路部とを備える負荷駆動回路が開示されている。波形整形回路部が、パルス幅変調制御電圧に基づき形成した台形形状の制御電圧をMOSトランジスタのゲート電極に出力する。
【特許文献1】特開平9−204230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無駄な電力を削減する方法として、バッテリの出力電圧が高いときには、デューティ比を低くすることが考えられる。バッテリの出力電圧を図3(a)に示すようなPWM信号でPWM制御する際、デューティ比を決定する為に、その出力電圧をサンプリングする必要がある。バッテリの出力電圧は、PWM制御されると、オンのときには、図3(b)に示すような負荷電流により、図3(c)に示すように電圧降下が生じているが、このときの電圧値が、サンプリングが必要な出力電圧値Voである。
ところが、検出する側の独自の周期でバッテリの出力電圧をサンプリングすると、図3(c)に示すような時点Ta,Tbでサンプリングすることになり、必要な出力電圧値Voをサンプリングできていないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、検出したバッテリの出力電圧値に応じたデューティ比でバッテリの出力電圧をオン/オフ制御(PWM制御)する際に、正しい時点でバッテリの出力電圧を検出することができる車両用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る車両用電源装置は、バッテリの出力電圧を検出する検出手段と、該出力電圧をオン/オフするスイッチング素子と、前記検出手段が検出した出力電圧値に応じたデューティ比で前記スイッチング素子をオン/オフ制御する制御手段とを備え、該制御手段により前記スイッチング素子がオン/オフした前記出力電圧を、給電すべき電気負荷へ与える車両用電源装置において、前記検出手段は、前記制御手段が前記スイッチング素子をオンにしているオン期間の終期で、前記バッテリの出力電圧を検出するように構成してあることを特徴とする。
【0007】
この車両用電源装置では、検出手段が、バッテリの出力電圧を検出し、スイッチング素子が、バッテリの出力電圧をオン/オフする。制御手段が、検出手段が検出した出力電圧値に応じたデューティ比でスイッチング素子をオン/オフ制御し、スイッチング素子がオン/オフしたバッテリの出力電圧を、給電すべき電気負荷へ与える。検出手段は、制御手段がスイッチング素子をオンにしているオン期間の終期で、バッテリの出力電圧を検出する。
【0008】
第2発明に係る車両用電源装置は、前記制御手段はオン/オフ信号により前記スイッチング素子をオン/オフ制御しており、該オン/オフ信号を所定時間遅延させる遅延回路を備え、該遅延回路が遅延させたオン/オフ信号により、前記スイッチング素子をオン/オフ制御するように構成してあることを特徴とする。
【0009】
この車両用電源装置では、制御手段はオン/オフ信号によりスイッチング素子をオン/オフ制御しており、遅延回路はそのオン/オフ信号を所定時間遅延させる。遅延回路が遅延させたオン/オフ信号により、スイッチング素子をオン/オフ制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両用電源装置によれば、検出したバッテリの出力電圧値に応じたデューティ比でバッテリの出力電圧をオン/オフ制御(PWM制御)する際に、正しい時点でバッテリの出力電圧を検出する車両用電源装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る車両用電源装置の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
この車両用電源装置は、バッテリ8を備えており、バッテリ8は、オルタネータ(車載発電機、交流発電機)1が発電した電力により充電される。オルタネータ1は、図示しないエンジンに連動して発電し、発電した電力は、オルタネータ1内で整流されて出力される。
【0012】
バッテリ8に充電された電力、及びオルタネータ1が出力した電力は、半導体スイッチ(スイッチング素子)2を通じて、車両に搭載された複数の負荷(電気負荷)7・・に与えられる。
半導体スイッチ2は、遅延回路9及びPWM制御部(制御手段)6を通じて、制御部4(制御手段)からオン/オフ制御される。制御部4は、バッテリ8の出力電圧を、電圧入力回路(検出手段)3を通じて与えられており、与えられた出力電圧値は、内蔵するA/Dコンバータ(検出手段)5でデジタル値に変換して読込む(サンプリングする(検出する))。
【0013】
制御部4は、読込んだバッテリの出力電圧値に応じてデューティ比を決定し、PWM制御部6に与える。PWM制御部6は、与えられたデューティ比で、遅延回路9を通じて、半導体スイッチ2を一定周期でPWM制御させる。その際、PWM制御部6が出力したPWM信号は、制御部4へも与えられる。
【0014】
このような構成の車両用電源装置では、制御部4は、決定したデューティ比をPWM制御部6に与える。PWM制御部6は、与えられたデューティ比で図2(a)に示すようなPWM信号を出力する。
制御部4は、PWM制御部6が出力したPWM信号の立ち下がりをトリガ信号として、バッテリ8の出力電圧値のデジタル値をサンプリングし、サンプリングした出力電圧値に応じて、次のPWM信号のデューティ比を決定し、PWM制御部6に与える。
PWM制御部6が出力したPWM信号は、遅延回路9へも与えられ、遅延回路9は、与えられたPWM信号を所定時間遅延させて半導体スイッチ2のゲートに与える。半導体スイッチ2は、与えられたPWM信号により、バッテリ8の出力電圧をPWM制御し、負荷7に与える。
【0015】
以上により、図2(b)に示すような負荷電流が負荷7に流れ、図2(c)に示すようなバッテリの出力電圧が、制御部4のA/Dコンバータ5に与えられる。また、制御部4が、PWM信号の立ち下がりをトリガ信号として、バッテリ8の出力電圧値をサンプリングする一方、遅延回路9が所定時間遅延させたPWM信号により、バッテリの出力電圧をオン/オフしている。
これにより、制御部4は、半導体スイッチ2をオンにしているオン期間の終期(PWM制御のパルスの立ち下がり直前)で、バッテリ8の出力電圧をサンプリングすることができる。つまり、図2(b)に示すような負荷電流により、図2(c)に示すように電圧降下が生じたサンプリングが必要な時点Tc,Tdで、制御部4はバッテリ8の出力電圧Voをサンプリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る車両用電源装置の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る車両用電源装置の動作の例を説明する為の説明図である。
【図3】従来の車両用電源装置の動作の例を説明する為の説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 オルタネータ
2 半導体スイッチ(スイッチング素子)
3 電圧入力回路(検出手段)
4 制御部(制御手段)
5 A/Dコンバータ(検出手段)
6 PWM制御部(制御手段)
7 負荷(電気負荷)
8 バッテリ
9 遅延回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの出力電圧を検出する検出手段と、該出力電圧をオン/オフするスイッチング素子と、前記検出手段が検出した出力電圧値に応じたデューティ比で前記スイッチング素子をオン/オフ制御する制御手段とを備え、該制御手段により前記スイッチング素子がオン/オフした前記出力電圧を、給電すべき電気負荷へ与える車両用電源装置において、
前記検出手段は、前記制御手段が前記スイッチング素子をオンにしているオン期間の終期で、前記バッテリの出力電圧を検出するように構成してあることを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
前記制御手段はオン/オフ信号により前記スイッチング素子をオン/オフ制御しており、該オン/オフ信号を所定時間遅延させる遅延回路を備え、該遅延回路が遅延させたオン/オフ信号により、前記スイッチング素子をオン/オフ制御するように構成してある請求項1記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−140363(P2010−140363A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317567(P2008−317567)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】