説明

車両用風向調整装置

【課題】車両の走行中に急停止または衝突等により乗員の身体の一部が車両用風向調整装置に当たった場合の乗員への衝撃を緩和すると共に、スペース効率のよい車両用風向調整装置を提供することを目的とする。
【解決手段】前後面を開口したケース体10と、該ケース体10内に平行に複数枚設けられたルーバ20と、を備え、該複数枚のルーバ20の一つに操作体40を有する車両用風向調整装置において、前記複数枚のルーバ20のうち前記操作体40を有するルーバ20aにのみ、長手方向の少なくとも一部に低強度部27を形成し、該低強度部27の破壊強度を前記操作体を有するルーバ20aの他の部位よりも低下させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーバにより車室内へ吹き出す空気の風向を調整する車両用風向調整装置において、車両の走行中に急停止または衝突等により乗員の身体の一部が車両用風向調整装置に当たった場合の乗員への衝撃を緩和する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、図8に示すように、車室内の前部に樹脂製のインストルメントパネル100が設けられている。このインストルメントパネル100には、空調用のための空気吹出用開口101が設けられており、この空気吹出用開口101には、風向調整装置102が取付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、インストルメントパネル100の内部には、図示しない空調装置が設置されており、この空調装置からの空調用の空気が、ベントダクト103を介して、風向調整装置102へと送給され、この風向調整装置102から車室内へ向けて空気を吹出し得るように構成されている。
【0004】
また、風向調整装置102は筒状の支持部材104により支持されており、この支持部材104の外表面には溝等の脆弱部105を形成し、車両の衝突等により乗員の身体の一部が風向調整装置102に当たった場合に、脆弱部105を破断させ、風向調整装置102を車両前方へ移動させ、衝撃を緩和させている。
【0005】
また、車両の風向調整装置とは直接関係はないが、衝撃を緩和させる構造として、図9に示すように、インストルメントパネル100に装着される空調機器の操作コントロールレバー106のアーム部分に屈曲部107を設け、衝撃力がコントロールレバー106に作用した時に屈曲部107が座屈するようにし、車両の衝突時にコントロールレバー106自体をインストルメントパネル100内に後退させることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−98762号公報
【特許文献2】実開昭50−34937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、風向調整装置102の風向を調整する風向操作体108は、風向調整装置102の乗員側表面に突出して風向調整装置102に取付られていると共に、風向操作体108は風向調整装置102からの吹出し風に悪影響を与えないように、小さく形成されている。このため、衝突時に操作ノブの先端部と乗員の身体の一部が当たった場合の接触面積は小さく、操作ノブの乗員の身体の一部に作用する面圧が高くなるという問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術では、コントロールレバー106のアーム部分に上下方向に屈曲する屈曲部107を設けて、衝撃を受けた時に座屈させて衝撃を緩和させていることから、上下方向に屈曲分のスペースが必要となると共に、屈曲変形をさせるだけのスペースも必要となるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の技術的課題に鑑みてなされたもので、車両の走行中に急停止または衝突等により乗員の身体の一部が車両用風向調整装置に当たった場合の乗員への衝撃を緩和すると共に、スペース効率のよい風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、前後面を開口したケース体と、該ケース体内に平行に複数枚設けられたルーバと、を備え、該複数枚のルーバの一つに操作体を有する車両用風向調整装置において、前記複数枚のルーバのうち前記操作体を有するルーバにのみ長手方向の少なくとも一部に低強度部を形成し、該低強度部の破壊強度を前記操作体を有する前記ルーバの他の部位よりも低下させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の走行中に急停止または衝突等により乗員の身体の一部が車両用風向調整装置に当たった場合の乗員への衝撃を緩和させることができると共に、スペース効率を向上させることができる車両用風向調整装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明に係る実施例の車両用風向調整装置が適用された車室内前部のインストルメントパネルを示す図である。
【図2】車両用風向調整装置の斜視図である。
【図3】図2のA−A線に沿った車両用風向調整装置の断面図である。
【図4】図2の車両用風向調整装置の分解斜視図である。
【図5】図4の操作体が取付けられる、横ルーバと縦ルーバの部分拡大斜視図である。
【図6】図5の操作体が取付けられる横ルーバを下方からみた平面図である。
【図7】第2の実施形態における横ルーバの斜視図である。
【図8】従来の車両用風向調整装置を示す図である。
【図9】衝撃緩和構造を備えた空調機器の操作コントロールレバーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る車両用風向調整装置の最良の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本願発明に係る実施例の車両用風向調整装置が適用された車室内前部のインストルメントパネル1を示す図である。
【0015】
自動車の車室内前部のインストルメントパネル1の内部中央には、車両用空調装置2が設けられている。また、このインストルメントパネル1には、エアー吹き出し用の開口3が形成され、各開口3内部には、車両用風向調整装置4が装着されている。そして、インストルメントパネル1の内部に車幅方向に沿ってベントダクト5が配設され、この車両用空調装置2と車両用風向調整装置4とを連通させている。車両用空調装置2で空調されたエアーは、ベントダクト5および車両用風向調整装置4を介してインストルメントパネル1の各開口3から吹き出るようになっている。
【0016】
以下の説明において、車両用風向調整装置4がインストルメントパネル1に装着された状態で、車両後方側となるインストルメントパネル表面側を前部といい、車両前方側となるインストルメントパネル1の内方を後部という。
【0017】
図2は、車両用風向調整装置の斜視図である。図3は、図2のA−A線に沿った車両用風向調整装置の断面図である。図4は、図2の車両用風向調整装置の分解斜視図である。
【0018】
(ケース)
車両用風向調整装置4は、図4に示すように、両端が開口した合成樹脂製のケース体10と、このケース体内に設けられインストルメントパネル1の開口3から吹き出すエアーの方向を変えるルーバ20、30を有している。
【0019】
また、ケース体10の側壁にはインストルメントパネル1の裏面に係止固定される係止爪(図示せず)が形成されている。
【0020】
図3に示すように、ケース体10の後部開口端13には、ベントダクト5の接続端部へ挿入配置可能な挿入端部14が形成され、挿入端部14は、ベントダクト5の空気出口部に拡管形成された拡管受口部5aに挿入接続される。
【0021】
また、図2に示すように、挿入端部14にはベントダクト5に対するケース体10の接続方向へ延びる複数のV溝、スリット等の第1の切込部15を有している。本実施例ではケース体が角型のため、第1の切込部15は、各コーナに沿って設けるようにしている。さらに複数の第1の切込部15の内端部間を結ぶV溝等の第2の切込部16を挿入端部14の外周に沿って形成している。
【0022】
尚、第1の切込部15、第2の切込部16は、後述する中央横ルーバ20aに形成した低強度部27、28が破断した後に、さらに大きな荷重が加わった場合に、変形または破断するように形成されている。
【0023】
さらに、挿入端部14の外周部には、少なくとも第1の切込部15、第2の切込部16を覆うように、ベントダクト5の接続端部の内周との間をシール可能なシール部材17が全周に亘って取付けられている。なお、図2では理解のためシール部材17を一部破断した状態で描いている。シール部材17は、両者間に形成される周方向の隙間よりも若干肉厚とされて、この隙間に圧縮状態で介装可能なウレタン部材などが使用されている。
【0024】
(ルーバ)
車両用風向調整装置4のルーバ20、30は、合成樹脂で形成され、図2に示すように、複数枚の平行な前側ルーバと前側ルーバの後方側(車両前方側)でかつ前側ルーバが延びる方向と直交する方向に延びる複数枚の平行な後側ルーバから構成されている。本実施例では、前側ルーバが左右方向に延びる横ルーバ20であり、上下方向に間隔を置いて横ルーバ20が平行に配置され、また後側ルーバが縦ルーバ30であり、左右方向に間隔を置いて縦ルーバ30が平行に配置されている。
【0025】
(横ルーバ)
複数枚の横ルーバ20は、左右方向に延び、各横ルーバ20の左右両側端には、図4に示すように、横ルーバ20の回動軸部となる第1軸部21a,21bが突設され、さらに各横ルーバ20の一端側(図4において左側)には、後述する連結リンク25が取り付けられる第2軸部22が突設されている。尚、上記第1軸部21a,21bは、左右両側から軸受板23,24により支持されると共に、軸受板23,24はケース体10内に装着される。
【0026】
(中央横ルーバ)
また上下方向に平行に配置される横ルーバ20のうち、上下方向の中央に配置される中央横ルーバ20aの中央部分には、後述する操作体40が取付けられる摺動面26が形成されている。摺動面26は図6に示すように、中央横ルーバ20aの長手方向に形成され、操作体40を摺動方向にガイドするガイドリブ26aおよび操作体40の倒れを防止する倒れ防止リブ26bが形成されている。
【0027】
さらに、中央横ルーバ20aには、連結リンク25が取付けられる第2軸部22が形成されている一端側の第1軸部21aで、特に第1軸部21aの基部に低強度部27が形成されている。低強度部27とは、操作体40を介して所定荷重を受けた場合に、積極的に特定部位を破損させるために、例えば特定部位に切欠き27a等を形成して、破壊強度を低下させた部分をさしている。具体的には、第1軸部21aの基部における下面側に形成され、横ルーバ20が延びる方向と直交する方向に延び、車両前方側から乗員側に向かい先端が鋭角になるV字状の切欠き27aが第1軸部21aの回転中心部まで設けられている。このような切欠き27aにより、乗員側から操作体40を介して所定荷重を受けた場合に中央横ルーバ20aは車両前方側に向かい湾曲変形していくが、低強度部27となる切欠き27aが形成されている部分に応力が集中し、低強度部27で破損することとなる。尚、低強度部27は、長孔状のスリット、ミシン目等でもよく、実施例に限定されるものではない。
【0028】
尚、上記実施例では中央横ルーバ20aの長手方向端部となる、第1軸部21aの基部に低強度部27を設けたが、第1軸部21aに低強度部27を設けても構わない。また、実施例には具体的に示してはいないが、他端側の第1軸部21bの回転軸部あるいはその基部に低強度部27を設けてもよい。
【0029】
(横ルーバ−連結リンク)
横ルーバ20の第2軸部22が連結される横ルーバ用の連結リンク25は、図4に示すように、上下方向に延び、その長手方向に等間隔に設けられた軸受25aを有し、この軸受25aに横ルーバ20の第2軸部22が回動可能に軸支され、連結リンク25が個々の横ルーバ20に架渡された状態となる。このため、複数の横ルーバ20は、一つの横ルーバ20、例えば中央横ルーバ20aの向きを変えると連結リンク25を介して他の横ルーバも同方向に向きを変える。
【0030】
(軸受板)
図4に示すように、横ルーバ20の軸受板23,24の内側面23a,24aには軸孔23c、24cを有する軸受部23b,24bがそれぞれ上下方向に等間隔で設けられている。
【0031】
横ルーバ20の両側端の第1軸部21a、21bが軸受板23,24の軸孔23c,24cにそれぞれ回動自在に挿入され、横ルーバ20が軸受板23,24に回動可能に軸支される。
【0032】
(縦ルーバ)
横ルーバ20の後方側(車両前方側)に配置される複数枚の縦ルーバ30は、図4に示すように、上下方向に延び、各縦ルーバ30の上下両側端には、縦ルーバの回動軸となる第1軸部31a、31bが突設され、さらに各縦ルーバ30の一端側となる上端側には、後述する連結リンク35が取り付けられる第2軸部32が突設されている。尚、上記第1軸部31a,31bは、上下両側から軸受板33,34により支持されると共に、軸受板33,34はケース体10内に装着される。
【0033】
(中央縦ルーバ)
また左右方向に並んで平行に配置される縦ルーバ30のうち、左右方向の中央に配置される中央縦ルーバ30aの車両前後方向後方側の縁部(横ルーバ側の縁部)近傍で、上下方向中央部に切欠孔部36を形成し、後述する操作体40の挟持係合部42のアーム43が係合する係止縁部37を形成している。尚、この切欠孔部36は、操作体40を操作した場合にアーム43と中央縦ルーバ30aとの干渉を防止するためのものである。
【0034】
(縦ルーバの連結リンク)
図4に示すように、縦ルーバ30の第2軸部32が連結される縦ルーバ用の連結リンク35は、左右方向に延び、その長手方向に等間隔に設けられた軸受35aを有し、この軸受35aに縦ルーバ30の第2軸部32が回動自在に軸支され、連結リンク35が個々の縦ルーバ30に架渡された状態となっている。このため、複数の縦ルーバ30は、一つの縦ルーバ、例えば中央縦ルーバ30aの向きを変えると連結リンク35を介して他の縦ルーバを同方向に向きを変える。
【0035】
(縦ルーバの軸受板)
図4に示すように、縦ルーバ30の軸受板33,34の内側面33a,34aには軸孔33c、34cを有する軸受部33b,34bがそれぞれ左右方向に等間隔で設けられている。
【0036】
縦ルーバ30の両側端の第1軸部31a、31bが軸受板33,34の軸孔33c,34cにそれぞれ回動自在に挿入され、縦ルーバ30が軸受板33,34に回動可能に軸支される。
【0037】
(操作体)
横ルーバ20、縦ルーバ30には図4、図5に示すように、各ルーバの向きを変える合成樹脂で形成された操作体40が取付けられている。
【0038】
この操作体40は、前部の操作部41と、操作部41の後部に装着される挟持係合部42とから構成されている。
【0039】
操作部41は、中央横ルーバ20aの上下両側面に対応する上下一対の上下面および上下面を連結する前縁面からなり、後部が開いた断面U字状に形成され、その前端部表面には滑りとめの凹凸が形成されている。また操作部41の中央横ルーバ20aの摺動面26と対向する内面には、摺動面26に形成されたガイドリブ26aと嵌合する図示しない嵌合溝が形成されている。
【0040】
操作部41の後部には、操作部41の幅寸法に等しく設定され、その後縁から、中央縦ルーバ30aの前縁に形成された係合縁部37の両側部に対する左右一対のアーム43が形成された挟持係合部42が図示しない係合爪により係合装着されている。
【0041】
この操作体40は、中央横ルーバ20aの摺動面26に嵌挿させて摺動可能に取付け、挟持係合部42の一対のアーム43間に中央縦ルーバ30aの係止縁部37を挟持させることにより中央横ルーバ20a、中央縦ルーバ30aに取付けられる。
【0042】
従って、操作体40を上下方向に所望量操作することにより、全横ルーバ20が一斉に上下方向同方向に同角度だけ回動し、また、操作体40を横方向に所望量摺動させると、操作体40の挟持係合部42が、中央縦ルーバ30aの係合縁部37を押動し、中央縦ルーバ30aの第1回転軸31を中心に回動させ、連結リンク35で連結される全縦ルーバ30が一斉に同方向に、同角度だけ回動し、風向きを確実に所望の方向に変更させることができる。
【0043】
(全体構成)
そして、軸受板23、24、連結リンク25、操作体40が取付けられた横ルーバ20の組立体、及び軸受板33、34、連結リンク35が取付けられた縦ルーバ30の組立体(図2)がケース体10の前面開口11a内に装着される。
【0044】
このケース体10は、図3に示すように、挿入端部14がベントダクト5に接続されて、インストルメントパネル1に、図示しない係止爪により係止固定されてエアー吹き出し用の開口3に固定される。
【0045】
次に本願実施例の車両用風向調整装置の作用を説明する。
【0046】
図3に示すように、車両が走行中に急停止または衝突したとき、助手席または運転席の乗員の身体の一部(この場合には、実験用のヘッドフォーム6)が風向調整装置の表面から突出している操作体40に当接する。その衝撃は中央横ルーバ20aに加わることにより、中央横ルーバ20aの第1軸部21aの基部の切欠き27aが形成されて強度が低下した低強度部27に応力が集中し、低強度部27が破損する。また軸基部が破損することにより操作体40が装着されている中央横ルーバ20aが後方側(車両前方側)へ傾斜または移動する。これに伴い操作体40も後方へ退避し、衝撃を操作体40の小面積部で受けるのではなく、乗員側に形成された他の複数枚の横ルーバ20が乗員の身体と接触することになり、乗員に作用する荷重が集中することなく分散され、面圧を下げることが可能となり、衝撃を緩和させることができる。
【0047】
また、中央横ルーバ20aの低強度部27(図6)は衝撃力により完全に破断するものであることから、屈曲変形させるための余裕スペースを設定する必要がなく、スペースの有効利用が可能となる。
【0048】
また、中央横ルーバ20aの回転軸部が破断しても、中央横ルーバ20aを含む全ての横ルーバ20は、連結リンク25により連結されていることから、破断した中央横ルーバ20aが飛散することがない。
【0049】
また、中央横ルーバ20aの回転軸部という特定の場所に低強度部27を設けたことにより、荷重の入力方向が多少異なっても、必ず低強度部27が形成されている同じ場所で破断させることができ、常に安定した作動をさせることができる。
【0050】
さらに、中央横ルーバ20aの軸基部に形成した低強度部27が破断した後に、さらに大きな荷重が加わった場合、車両用風向調整装置は、ベントダクト5側へ押圧され、ベントダクト5の拡管受口部5aの拡管する傾斜部に突き当たるが、ケース体10の挿入端部14に形成された第1の切込部15により、挿入端部14を容易に折曲がらせることができるようになる。そして折曲がった挿入端部14がガイド部材となり、ベントダクト5内へと容易に進入させることができるようになる。この時、車両用風向調整装置の進入によってベントダクト5が拡がるように変形させることにより、入力荷重を吸収させることができる。よって、さらに有効に衝撃を緩和させることができる。尚、第2の切込部16を設けることにより、第1の切込部15を内端部間を結ぶ線に沿って挿入端部14を確実に折曲げさせることができる。
【0051】
次に、図7に基づいてこの発明の実施の形態の実施例2の車両用風向調整装置について説明する。なお、この実施例2は、実施例1の変形例であるため、その相違点についてのみ説明し、実施例1と同様の構成には同じ符号を付けることで説明を省略し、また、作用効果についても、実施例1と同じものは説明を省略する。
【0052】
操作体40が装着される、中央横ルーバ20bの摺動面26で、操作体を左右方向に摺動させても常に操作体40に覆われ、乗員側から視認できない領域に、低強度部28を設けたものである。
【0053】
低強度部28は、中央横ルーバ20bが延びる方向と直交する方向に延び、中央横ルーバ20bのガイドリブ26aと倒れ防止リブ26bとの間を横架するV字溝28aで形成している。尚このV字溝28aは、乗員側から操作体40を介して所定荷重より大きな荷重を受けた場合に破損する低強度部28であり、スリット等でもよく、V字状溝に限定されるものではない。また、低強度部28は、ガイドリブ26a、倒れ防止リブ26bを超えて辺縁部まで延ばしてもよい。
【0054】
車両が走行中に急停止または衝突し、乗員の身体一部が操作体40に当接した場合、操作体40、中央横ルーバ20bのV字溝28a等の低強度部28に衝撃が伝わり、低強度部28、破断するが、低強度部28は常に操作体に覆われているため、破断した破断面が、乗員側に露出することはない。
【0055】
尚、低強度部28は、第1軸部21aあるいは前記第1軸部21aの基部に形成する低強度部27と併用してもよい。
【0056】
上記第実施例1、2では、前側ルーバを横ルーバ20とし、後側ルーバを縦ルーバ30としたが、前側ルーバを縦ルーバとし、後側ルーバを横ルーバとした場合は、縦ルーバの操作体が取付く中央縦ルーバに低強度部27、28を設けて適用することは言うまでもない。
【0057】
また、上記実施例1、2では、操作体40が中央横ルーバ20aに取り付けられているが、操作体40が取り付けられるルーバは中央横ルーバ20aに限定されず、複数枚の横ルーバ20のいずれかに取り付けられていればよい(前側ルーバが縦ルーバの場合は複数枚の縦ルーバのいずれか)。この場合、低強度部27、28は、操作体40が取り付けられるルーバに設けることになる。
【0058】
また、ケース体10の内側前部に複数の前ルーバを上下壁部と平行に一体にケース体と形成すると共に、その後方側に後部ルーバを前側ルーバと直交する方向に延在し、所定の間隔をおいて、その上下両端に設けた軸部により左右方向回動自在に軸支されるようにし、ケース体は左右の壁部の外側に左右一対の支軸が突設され、支軸を中心に回動可能とするタイプの車両用風向調整装置に適用もできる。尚、本タイプの車両用風向調整装置は、各前側ルーバの両端部に軸部を有さない構成であるが、例えば、操作体を備える前側ルーバのケースとの接続部近傍となる少なくとも一端部に、車両前方側の辺縁から乗員側に向う切欠き状のスリット等で低強度部を形成すればよい。
【0059】
さらに、ケース体の吹出し孔を円筒状とすると共に、空気吹き出し孔に回動自在に取付けられる円板部を有し、円板部は、長円状開口部が形成され、長円状開口部の直線辺に沿って支持板が開口部を挟んで対向するように設けられ、この支持板の対向する位置に複数のピン孔が長手方向に等間隔に穿設され、これらのピン孔に複数枚のルーバの両端の回転軸部が嵌挿されると共に複数枚のルーバは互いにリンクにより互いに連動され、また、長円状開口部の中央部に設けられたルーバのみに風向を調整時に操作する操作体が設けられ、操作体が形成された1枚のルーバを操作することにより、全てのルーバが連動して同一方向に調整される、後ルーバを有さない車両用風向調整装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0060】
4・・・・・・車両用風向調整装置
10・・・・・ケース体
15・・・・・第1の切込部(ケース低強度部)
16・・・・・第2の切込部(ケース低強度部)
20・・・・・横ルーバ(前側ルーバ)
20a・・・・中央横ルーバ(操作体を有するルーバ)
27・・・・・低強度部
30・・・・・縦ルーバ(後側ルーバ)
40・・・・・操作体
41・・・・・操作部
42・・・・・挟持係合部(係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後面を開口したケース体と、該ケース体内に平行に複数枚設けられたルーバと、を備え、該複数枚のルーバの一つに操作体を有する車両用風向調整装置において、前記複数枚のルーバのうち前記操作体を有するルーバにのみ長手方向の少なくとも一部に低強度部を形成し、該低強度部の破壊強度を前記操作体を有する前記ルーバの他の部位よりも低下させたことを特徴とする車両用風向調整装置。
【請求項2】
前記複数枚のルーバは、前記ケース体内に平行に複数枚設けられた前側ルーバと、前記ケース体内の前記前側ルーバの後方において前記前側ルーバと直交する方向に回動自在に支持され、互いに連動回動する複数枚の後側ルーバとからなり、前記操作体は、前記前側ルーバの一つに摺動自在に係着する操作部及び該操作部の後部に前記後側ルーバに係合される係合部を有していることを特徴とする請求項1記載の車両用風向調整装置。
【請求項3】
前記操作体の前記操作部が係着された前記前側ルーバは、前記ケース内に回転軸部を介して回動自在に支持され、前記回転軸部あるいは前記回転軸部の基部に前記低強度部を形成したことを特徴とする請求項2記載の車両用風向調整装置。
【請求項4】
前記操作体の前記操作部が係着された前記前側ルーバの前記操作部で常時覆われている領域に前記低強度部を形成したことを特徴とする請求項2記載の車両用風向調整装置。
【請求項5】
前記ケース体に、前記ケース体の他の部位よりも破壊強度を低下させたケース低強度部を形成したことを特徴とする請求項1〜4いずれかひとつに記載の車両用風向調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−140256(P2011−140256A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1166(P2010−1166)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】