説明

車両盗難警報音駆動回路

【課題】簡易な回路構成で、内蔵電池で駆動する場合でも十分な音圧の警報音を発生させることができる車両盗難警報音駆動回路を提供する。
【解決手段】タップtp1〜tp3を備える1次巻線Tr1aと、サイレンSiが接続される2次巻線Tr1bとで構成されるトランスTr1と、バッテリー1と、バッテリー1より出力電圧が低い内蔵電池2と、スイッチング素子Q1,Q2からなる発音体駆動部4と、スイッチング素子Q1,Q2のオンデューティを制御するPWM制御部3aと、トランスTr1に供給する電源を選択する電源選択部とを備え、PWM制御部3aは、バッテリー1を選択した場合におけるオンデューティD1を、内蔵電池2を選択した場合におけるオンデューティD2よりも小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両盗難警報音駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両盗難や車上盗難などの自動車に対する犯罪が増加しているため、車両の異常(例えば、不審者の車内への侵入や窓ガラスの破壊)を検出して警報音を発する車両盗難警報機が普及してきている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、窃盗者等が車両盗難警報機の動作を止める目的で、車両盗難警報機からバッテリーを外すおそれがある。そこで、車両盗難警報機に搭載された内蔵電池を用いて、バッテリーが外された状態でも警報音を発することができる車両盗難警報音駆動回路を備えた車両盗難警報機が提供されている。
【0004】
図6に車両盗難警報機に設けられる従来の車両盗難警報音駆動回路のブロック構成図を示す。
【0005】
従来の車両盗難警報音駆動回路は、バッテリー11と、内蔵電池12と、DC/DCコンバータ13と、ドライブ回路部14と、発音体15とで構成されている。
【0006】
バッテリー11は、車両に搭載される鉛蓄電池で構成されている。本従来例のバッテリー11の出力電圧V11は12VのDC電圧である。内蔵電池12は、Ni−MH電池やリチウム電池等で構成されている。本従来例の内蔵電池12の出力電圧V12は、4.8V〜6.0VのDC電圧である。そして、DC/DCコンバータ13は、バッテリー11が搭載されている場合は、バッテリー11を入力電源とし、バッテリー11が外されている場合は、内蔵電池12を入力電源とする。また、バッテリー11からDC/DCコンバータ13への電源供給をオン・オフするトランジスタやFET等の半導体素子からなるスイッチSWが設けられている。
【0007】
DC/DCコンバータ13は、フライバック方式で構成されており、入力電圧に対する出力電圧の昇圧比が可変となるように構成されている。そして、DC/DCコンバータ13は、電圧値が異なる出力電圧V11または出力電圧V12を異なる昇圧比で昇圧して、一定の出力電圧V13を出力する。本従来例のDC/DCコンバータ13の出力電圧V13は、40VのDC電圧である。
【0008】
ドライブ回路部14は、図示しない4個のトランジスタを備えている。そして、4個のトランジスタをオン・オフすることで、DC電圧の出力電圧V13から高周波の出力電圧V14を生成する。本従来例のドライブ回路部14の出力電圧V14は、80Vppの高周波電圧である。
【0009】
発音体15は、セラミック振動子で構成されるサイレンである。そして、出力電圧V14が印加されると、発音体15から警報音が発生する。
【0010】
上記構成で、従来の車両盗難警報音駆動回路は、バッテリー1で駆動する場合と内蔵電池2で駆動する場合とで同じ音圧の警報音を発音体15から発することができる。
【0011】
しかし、従来の車両盗難警報音駆動回路はDC/DCコンバータ13の昇圧比を変動させて所定の出力電圧V13を生成して出力していた。したがって、DC/DCコンバータ13は昇圧比を変動させる構成が必要なため回路構成が複雑となる問題があった。
【0012】
また、DC/DCコンバータ13でバッテリー11または内蔵電池12からの出力電圧を昇圧した後に、ドライブ回路14で高周波電圧に変換している。そのため、DC/DCコンバータ13とドライブ回路14との両方が必要となるので、部品点数が増加し、コストが高くなる問題があった。
【0013】
そこで、回路構成を簡易化するために、プッシュプル回路で高周波電力への変換を行い、トランスの昇圧比を切り替える車両盗難警報音駆動回路が提案されている。この車両盗難警報音駆動回路のトランスは、1次側の巻線に接続された複数のタップを切り替えるタップ切替手段を備えている。そして、バッテリーで駆動する場合と内蔵電池で駆動する場合とで、タップ切替手段が1次側のタップを切り替えることによって、発音体が接続される2次側と1次側との巻線比を変動させて昇圧比を可変とすることができる。それによって、バッテリーよりも出力電圧の小さい内蔵電池を用いる場合であっても十分な音圧の警報音を発生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−215544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、従来の車両盗難警報音駆動回路は、昇圧比を変動させるためにトランスにタップ切替手段が必要であった。そこで、さらに簡易な回路構成の車両盗難警報音駆動回路が求められていた。
【0016】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な回路構成で、内蔵電池で駆動する場合でも十分な音圧の警報音を発生させることができる車両盗難警報音駆動回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の車両盗難警報音駆動回路は、第1のタップおよび第2のタップと、前記第1のタップと前記第2のタップとの間の巻線の中性点に接続される中性タップとを具備する入力部と、前記入力部に磁気的に結合され、発音体が接続される出力タップを具備する出力部とで構成されるトランスと、一方の極が前記中性タップに着脱自在に構成され、直流電力を出力する第1の電源と、前記第1の電源より出力電圧が低い直流電力を出力し、一方の極が前記中性タップに接続される第2の電源と、一端が前記第1のタップに接続され、他端が前記第1の電源および前記第2の電源の他方の極に接続される第1のスイッチング素子と、一端が前記第2のタップに接続され、他端が前記第1の電源および前記第2の電源の他方の極に接続される第2のスイッチング素子とを具備する発音体駆動部と、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子を交互にオン・オフさせる駆動信号を出力し、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子のオンデューティを制御するPWM制御部と、前記トランスに電力を供給する電源として、前記第1の電源と前記第2の電源とのうち、いずれか一方の電源を選択する電源選択部とを備え、前記PWM制御部は、前記電源選択部が前記第1の電源を選択した場合における前記オンデューティを、前記電源選択部が前記第2の電源を選択した場合における前記オンデューティよりも小さくすることを特徴とする。
【0018】
この車両盗難警報音駆動回路において、前記トランスは、1つの巻線に前記第1のタップと前記第2のタップと前記中性タップと前記出力タップとを有することが好ましい。
【0019】
この車両盗難警報音駆動回路において、前記トランスは、前記第1のタップと前記第2のタップと前記中性タップとを有する1次巻線と、前記出力タップを有する2次巻線とを備えることが好ましい。
【0020】
この車両盗難警報音駆動回路において、前記第1の電源と前記第2の電源との接続点が前記中性タップに接続されており、当該接続点と前記第2の電源の一方の極との間に、当該第2の電源の一方の極に向かって流れる電流を阻止する逆流防止手段が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明では、簡易な回路構成で、内蔵電池で駆動する場合でも十分な音圧の警報音を発生させることができるという効果がある
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の車両盗難警報音駆動回路の概略回路構成図である。
【図2】(a)〜(b)バッテリーで駆動する場合の駆動信号のタイミングチャートである。
【図3】(a)〜(b)内蔵電池で駆動する場合の駆動信号のタイミングチャートである。
【図4】駆動信号のオン期間に対する警報音の音圧のプロット図である。
【図5】オートトランスを備えた車両盗難警報音駆動回路の概略回路構成図である。
【図6】従来の車両盗難警報音駆動回路のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(実施形態1)
本実施形態の車両盗難警報音駆動回路は、バッテリー1と、内蔵電池2と、制御部3と、発音体駆動部4と、トランスTr1と、サイレンSiとで構成されている。
【0025】
トランスTr1は、1次巻線Tr1a(入力部)および2次巻線Tr1b(出力部)とで構成されている。1次巻線Tr1aは、巻線の両端に設けられるタップtp1(第1のタップ)およびタップtp2(第2のタップ)と、タップtp1,tp2との間の巻線の中性点に設けられるタップtp3(中性タップ)とが接続されている。タップtp1はスイッチング素子Q1に接続され、タップtp2はスイッチング素子Q2に接続されている。また、タップtp3はバッテリー1および内蔵電池2に接続されている。
【0026】
また、2次巻線Tr1bは1次巻線Tr1aに磁気的に結合しており、巻線の両端にタップtp4,tp5(出力タップ)が接続され、タップtp4,tp5はコネクタCN1aに接続されている。そして、コネクタCNaに着脱自在に構成されたコネクタCNbに、負荷としてサイレンSi(発音体)が接続されている。そして、コネクタCNa,CNbが結合することによって、トランスTr1の2次巻線Tr1bとサイレンSiとが電気的に接続される。本実施形態のサイレンSiは、セラミック圧電板またはダイナミックスピーカ等で構成されている。
【0027】
次に、発音体駆動部4について説明する。発音体駆動部4はnチャンネルMOSFETからなるスイッチング素子Q1,Q2で構成されている。スイッチング素子Q1は、ドレインがタップtp1に接続され、ソースがグランドGNDに接続され、ゲートが制御部3のPWM制御部3aに接続されている。そして、PWM制御部3aからスイッチング素子Q1のゲートにハイレベルとローレベルとを交互に繰り返す駆動信号S1が出力されることによって、スイッチング素子Q1がオン・オフを交互に繰り返す。また、スイッチング素子Q2は、ドレインがタップtp2に接続され、ソースがグランドGNDに接続され、ゲートが制御部3のPWM制御部3aに接続されている。そして、PWM制御部3aからスイッチング素子Q2のゲートにハイレベルとローレベルとを交互に繰り返す駆動信号S2が出力されることによって、スイッチング素子Q2がオン・オフを交互に繰り返す。また、スイッチング素子Q1,Q2は、ドレイン−ソース間に寄生ダイオードが接続され、ゲート−ソース間にゲート保護ダイオードが接続されている。
【0028】
次にトランスTr1の1次巻線Tr1aのタップtp3に接続されているバッテリー1および内蔵電池2について説明する。バッテリー1(第1の電源)は、車両に搭載される鉛蓄電池で構成されており、12Vの直流電圧V1を出力する。バッテリー1は、正極がバッテリースイッチSW1を介してタップtp3に接続されており、負極がグランドGNDに接続されている。バッテリースイッチSW1は、制御部3の電源切替部3cから出力される電源切替信号S3に応じて導通・遮断することで、バッテリー1からトランスTr1への電源供給をオン・オフする。
【0029】
内蔵電池2(第2の電源)は、Ni−MH電池で構成される2次電池や、リチウム電池で構成される1次電池等が用いられ、4.8V〜6.0Vの直流電圧V2を出力する。内蔵電池2は、正極が内蔵電池スイッチSW2を介してタップtp3に接続されており、負極がグランドGNDに接続されている。内蔵電池スイッチSW2は、制御部3の電源切替部3cから出力される電源切替信号S4に応じて導通・遮断することで、内蔵電池2からトランスTr1への電源供給をオン・オフする。
【0030】
なお、本実施形態では、バッテリースイッチSW1の出力端と内蔵電池スイッチSW2の出力端とが接続点Aで接続されており、接続点Aがタップtp3に接続されることで、バッテリー1または内蔵電池2の直流電圧V1,V2がトランスTr1に印加される。
【0031】
次に制御部3について説明する。制御部3は、PWM制御部3aと電源監視部3bと電源切替部3cと異常検出部3dとして機能するマイクロコンピュータ等で構成されている。例えば外部に接続された図示しない振動センサーが、窃盗者等が車両の窓ガラスを破壊する際に生じる振動を検出すると、振動センサーは振動検出信号S5を異常検出部3dに出力する。そして、異常検出部3dが振動検出信号S5を受信し異常と判断すると、PWM制御部3aはスイッチング素子Q1,Q2に駆動信号S1,S2を出力することで、サイレンSiを駆動させて警報音を発する。
【0032】
また、電源監視部3bと電源切替部3cとバッテリースイッチSW1と内蔵電池スイッチSW2とで電源選択部を構成している。電源監視部3bはバッテリー1の直流電圧V1を監視しており、直流電圧V1の電圧値に応じて電源切替部3cがバッテリースイッチSW1または内蔵電池スイッチSW2をオンすることで、トランスTr1に供給する電源を選択している。
【0033】
次に、本実施形態の車両盗難警報音駆動回路の動作について説明する。本実施形態の車両盗難警報音駆動回路は、制御部3がサイレンSiを駆動するための電源を選択し、振動センサー等が異常を検出すると、スイッチング素子Q1,Q2を交互にオン・オフさせてサイレンSiから警告音を発生させる。
【0034】
まず、バッテリー1を電源としてサイレンSiを駆動する場合について説明する。制御部3の電源監視部3bはバッテリー1の直流電圧V1を監視している。そして、直流電圧V1が所定値以上である場合、電源切替部3cはバッテリースイッチSW1をオンさせる電源切替信号S3を出力してバッテリースイッチSW1をオンさせる。また、電源切替部3cは内蔵電池スイッチSW2をオフさせる電源切替信号S4を出力して内蔵電池スイッチSW2をオフさせる。それによって、バッテリー1からトランスTr1に電源供給される。そして、異常検出部3dが振動センサーから出力される振動検出信号S5に応じて正常・異常を判断する。異常検出部3dが正常と判断した場合は、PWM制御部3aはローレベルの駆動信号S1,S2を出力してスイッチング素子Q1,Q2をオフさせるので、サイレンSiは駆動しない。異常検出部3dが異常と判断した場合は、PWM制御部3aはハイレベルとローレベルとを交互に繰り返す駆動信号S1,S2を出力してスイッチング素子Q1,Q2を交互にオン・オフさせて、サイレンSiを駆動し警報音を発生させる。
【0035】
図2(a)(b)にバッテリー1で駆動する場合の駆動信号S1,S2のタイミングチャートを示す。駆動信号S1,S2はハイレベルとローレベルとを交互に繰り返す矩形波で構成されている。また、駆動信号S1をハイレベルにしてスイッチング素子Q1をオンすることができるオン可能期間T1と、駆動信号S2をハイレベルにしてスイッチング素子Q2をオンすることができるオン可能期間T2とが交互に繰り返される。そして、PWM制御部3aは、駆動信号S1,S2をハイレベルにしてスイッチング素子Q1,Q2をオンさせるオン期間Tonを、オン可能期間T1,T2内で変動させるPWM制御をしている。なお、本実施形態の駆動信号S1,S2のオン可能期間T1,T2は同じ長さの期間となるように構成されており、以下オン可能期間T0(=T1=T2)と称す。
【0036】
また、PWM制御部3aは、サイレンを駆動する電源に応じて駆動信号S1,S2のオンデューティD(=Ton/T0)を変動させることで、スイッチング素子Q1,Q2のオンデューティを制御している。バッテリー1で駆動する場合、PWM制御部3aは駆動信号S1,S2のオン期間をTon1とし、オンデューティがD1(=Ton1/T0)となるように制御している。
【0037】
上記構成によって、スイッチング素子Q1,Q2が交互にオン・オフを繰り返し、タップtp1−tp3間とタップtp2−tp3間とに交互に電流が流れる。それによって、直流電圧V1を高周波電力に変換して、タップtp4−tp5間に交流電圧V3が生成される。そして、交流電圧V3がコネクタCNa,CNbを介してサイレンSiに印加されることで警報音が発生する。
【0038】
次に、内蔵電池2を電源としてサイレンSiを駆動する場合について説明する。制御部3の電源監視部3bはバッテリー1の直流電圧V1を監視しており、直流電圧V1が所定値未満である場合、電源切替部3cはバッテリースイッチSW1をオフし、内蔵電池スイッチSW2をオンする。それによって、内蔵電池2からトランスTr1に電源供給される。なお、直流電圧V1が所定値未満である場合とは、バッテリー1の劣化による直流電圧V1の低下だけでなく、例えば窃盗者がバッテリー1を取り外す等して、トランスTr1とバッテリー1とが電気的に遮断された場合も含む。
【0039】
本実施形態では、バッテリー1よりも出力電圧が低い内蔵電池2でサイレンSiを駆動する場合でも十分な音圧の警報音が得られるように、駆動信号S1,S2のオンデューティDを増大させる。それによって、内蔵電池2で駆動する場合でも、バッテリー1で駆動する場合と同等の電力をトランスTr1に供給することができる。
【0040】
図3(a)(b)に内蔵電池2で駆動する場合の駆動信号S1,S2のタイミングチャートを示す。内蔵電池2で駆動する場合、PWM制御部3aは駆動信号S1,S2のオン期間がTon2となるようにPWM制御している。内蔵電池2で駆動する場合のオン期間Ton2は、バッテリー1で駆動する場合のオン期間Ton1よりも長い。すなわち、内蔵電池2で駆動する場合のオンデューティD2(=Ton2/T0)は、バッテリー1で駆動する場合のオンデューティD1よりも大きい。したがって、バッテリー1より出力電圧が低い内蔵電池2で駆動する場合でも、トランスTr1に電力を供給する時間を長くすることによって、トランスTr1の1次巻線Tr1aに蓄積される磁気エネルギーをバッテリー1で駆動する場合と同等にしている。
【0041】
図4に、駆動信号S1,S2のオン期間Tonと直流電圧V1,V2とを乗算した値に対する警報音の音圧のプロット図を示す。本実施形態では、直流電圧V1,V2は略一定であるので、図4に示すプロット図は、駆動信号S1,S2のオン期間Tonを変動させた場合における警報音の音圧の変動を示している。図4におけるL1はバッテリー1を電源としてオン期間Tonを変動させた場合における警報音の音圧変動軌跡であり、L2は内蔵電池を電源としてオン期間Tonを変動させた場合における警報音の音圧変動軌跡である。音圧変動軌跡L1,L2に示すように、オン期間Tonを増加させるにつれて警報音の音圧が大きくなる。すなわち、駆動信号S1,S2のオンデューティDを大きくすると、サイレンSiから発せられる警報音の音圧も大きくなる。
【0042】
したがって、内蔵電池2で駆動する場合のオンデューティD2を、バッテリー1で駆動する場合のオンデューティD1よりも大きくすることによって、バッテリー1で駆動する場合と内蔵電池2で駆動する場合との警報音の音圧の差を低減することができる。すなわち、オン期間Ton1,Ton2を調整することによって、バッテリー1で駆動する場合と内蔵電池2で駆動する場合とで略同じ音圧の警報音を発生させることができる。
【0043】
また、本実施形態では駆動信号S1,S2のオンデューティDを変動させることでトランスTr1に供給される電力を変動させるので、従来のようにトランスにタップ切替手段を設ける必要がない。したがって、回路構成を簡易化することができ、コストを低減させることができる。
【0044】
また、トランスTr1は1次巻線Tr1aと2次巻線Tr1bとが絶縁されている。したがって、サージ等によってトランスTr1の1次巻線Tr1a側が損傷して短絡電流が流れても、1次巻線Tr1aと2次巻線Tr1bとが絶縁されているので、2次巻線Tr1b側に影響はない。
【0045】
また、バッテリースイッチSW1と内蔵電池スイッチSW2との両方がオンした場合、出力電圧の高いバッテリー1から出力電圧の低い内蔵電池2に向かって電流が流れ、内蔵電池2が故障するおそれがあった。しかし、本実施形態の内蔵電池スイッチSW2は、接続点Aから内蔵電池2に向かって流れる電流を阻止する逆流防止手段を備えている。逆流防止手段は、内蔵電池スイッチSW2が機械式スイッチからなり、バッテリースイッチSW1がオン時に、内蔵電池スイッチSW2をオフして電流を遮断することで構成されている。それによって、バッテリー1で駆動時にバッテリー1から内蔵電池2に向かって流れる電流を阻止することで内蔵電池2を保護している。また、逆流防止手段は、内蔵電池スイッチSW2に直列接続されるダイオードで構成されていてもよい。
【0046】
また、オートトランスを用いてサイレンSiを駆動するように構成してもよい。図5にオートトランスを備えた車両盗難警報音駆動回路の回路構成図を示す。
【0047】
トランスTr2はオートトランスで構成されており、1つの巻線にタップtp11〜tp15を備えている。巻線の中性点にタップtp13(中性タップ)が接続され、巻線の両端にタップtp14,tp15(出力タップ)が接続されている。そして、タップtp13とタップtp14との間にタップtp11(第1のタップ)が接続され、タップtp13とタップtp15との間にタップtp12(第2のタップ)が接続されている。
【0048】
タップtp11はスイッチング素子Q1のドレインに接続され、タップtp12はスイッチング素子Q2のドレインに接続されている。タップtp13はバッテリースイッチSW1を介したバッテリー1および内蔵電池スイッチSW2を介した内蔵電池2に接続されている。また、タップtp14,tp15はコネクタCNa,CNbを介してサイレンSiに接続されている。
【0049】
他の構成は、図1を用いて説明したトランスTr1を備えた車両盗難警報音駆動回路と同様であり、同一符号を付して説明は省略する。
【0050】
制御部3のPWM制御部3aがバッテリー1で駆動する場合の駆動信号S1,S2のオンデューティD1を、内蔵電池2で駆動する場合の駆動信号S1,S2のオンデューティD2よりも小さくする。それによって、バッテリー1で駆動する場合と内蔵電池2で駆動する場合との警報音の音圧の差を低減することができる。すなわち、オン期間Ton1,Ton2を調整することによって、バッテリー1で駆動する場合と内蔵電池2で駆動する場合とで略同じ音圧の警報音を発生させることができる。
【0051】
また、トランスTr2はオートトランスで構成されているので、1次巻線と2次巻線とが一部共用されている。そのため、トランスTr2の巻線数を少なくすることができ、トランスTr2を小型化することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 バッテリー
2 内蔵電池
3 制御部
3a PWM制御部
3b 電源監視部
3c 電源切替部
3d 異常検出部
4 発音体駆動部
Tr1 トランス
Si サイレン
SW1 バッテリースイッチ
SW2 内蔵電池スイッチ
Q1,Q2 スイッチング素子
S1,S2 駆動信号
S3,S4 電源切替信号
S5 振動検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のタップおよび第2のタップと、前記第1のタップと前記第2のタップとの間の巻線の中性点に接続される中性タップとを具備する入力部と、前記入力部に磁気的に結合され、発音体が接続される出力タップを具備する出力部とで構成されるトランスと、
一方の極が前記中性タップに着脱自在に構成され、直流電力を出力する第1の電源と、
前記第1の電源より出力電圧が低い直流電力を出力し、一方の極が前記中性タップに接続される第2の電源と、
一端が前記第1のタップに接続され、他端が前記第1の電源および前記第2の電源の他方の極に接続される第1のスイッチング素子と、一端が前記第2のタップに接続され、他端が前記第1の電源および前記第2の電源の他方の極に接続される第2のスイッチング素子とを具備する発音体駆動部と、
前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子を交互にオン・オフさせる駆動信号を出力し、前記第1のスイッチング素子および前記第2のスイッチング素子のオンデューティを制御するPWM制御部と、
前記トランスに電力を供給する電源として、前記第1の電源と前記第2の電源とのうち、いずれか一方の電源を選択する電源選択部とを備え、
前記PWM制御部は、前記電源選択部が前記第1の電源を選択した場合における前記オンデューティを、前記電源選択部が前記第2の電源を選択した場合における前記オンデューティよりも小さくすることを特徴とする車両盗難警報音駆動回路。
【請求項2】
前記トランスは、1つの巻線に前記第1のタップと前記第2のタップと前記中性タップと前記出力タップとを有することを特徴とする請求項1記載の車両盗難警報音駆動回路。
【請求項3】
前記トランスは、前記第1のタップと前記第2のタップと前記中性タップとを有する1次巻線と、前記出力タップを有する2次巻線とを備えることを特徴とする請求項1記載の車両盗難警報音駆動回路。
【請求項4】
前記第1の電源と前記第2の電源との接続点が前記中性タップに接続されており、当該接続点と前記第2の電源の一方の極との間に、当該第2の電源の一方の極に向かって流れる電流を阻止する逆流防止手段が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両盗難警報音駆動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−242698(P2011−242698A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116672(P2010−116672)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】