説明

車両監視システム、中継装置及び中継方法

【課題】車両の運行状況を簡易に監視することができる車両監視システム、中継装置及び中継方法を提供する。
【解決手段】
車両監視システム1は、車両a1,a3に設けられ、撮影範囲が異なる複数の撮像手段を具備する車上装置2,2,…と、車両a1,a3の運行を監視する監視装置3と、車上装置2,2,…と監視装置3との間を中継する中継装置5とを備えている。監視装置3は、複数の前記撮像手段を含む撮影グループを識別するための撮影グループ識別情報を運行管理者から受け付け、その受け付けた撮影グループ識別情報を中継装置5に対して送信する。中継装置5は、監視装置3から撮影グループ識別情報を受信した場合、当該撮影グループ識別情報で識別される撮影グループに含まれる複数の撮像手段の中から特定の撮像手段を選定し、その選定した撮像手段により撮影される映像を車上装置2から取得し、取得した映像を監視装置3に対して送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運行状況を監視するための車両監視システム、中継装置及び中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モノレール及び新交通システム等、無人走行の軌道交通システムが普及しつつある。これらの軌道交通システムの場合、無人走行であるため、走行している車両の安全確認が重要な課題となる。このため、一部の軌道交通システムにおいては、走行している車両の走行方向の様子をリアルタイムで監視するための車両監視システムが構築されている。
【0003】
特許文献1には、車両の前方及び後方それぞれにCCDカメラとPHS通信ユニットとが備えられ、地上側に設けられた監視装置が、これらの2つのCCDカメラのうち走行方向を撮像するCCDカメラの画像を当該CCDカメラと対応付けられているPHS通信ユニットを介して取得し、その画像を用いて車両の運行状況の監視を行う車両監視システムが開示されている。この車両監視システムによれば、車両の運行状況を監視するために重要である走行方向の画像を自動的に取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−276757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の車両監視システムにおいては、監視装置が、車両を遠隔制御する車両制御盤から当該車両の走行方向を示す走行方向情報を取得し、その走行方向情報に基づいて2つのCCDカメラのうちの一つを選択している。このように、従来の車両監視システムでは、監視装置が車両の走行方向情報を取得することにより当該車両の走行方向を把握しなければならず、そのために監視装置側で特別な処理を行わなければならないという問題がある。
【0006】
また、上記の従来の車両監視システムでは、監視装置が、車両を遠隔制御する車両制御盤から走行方向情報を容易に取得することが可能であるが、あらゆる車両監視システムにおいて、車上ではなく地上に設けられている監視装置が走行方向情報を容易に取得できるわけではない。そのため、この従来の車両監視システムの場合、その適用範囲が狭いという問題がある。
【0007】
また、車両監視システムにおいては、車両の走行方向以外の情報を基準として撮像手段を選択する必要も生じ得るが、上記の従来の車両監視システムでは、車両の走行方向を基準とするのみで、それ以外の情報を基準として撮像手段を選択することはできないという問題もある。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる車両監視システム、中継装置及び中継方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の車両監視システムは、車両に設けられ、撮影範囲が異なる複数の撮像手段を具備する車上装置と、前記車両の運行を監視する監視装置と、前記車上装置と前記監視装置との間を中継する中継装置とを備える車両監視システムにおいて、前記監視装置が、複数の前記撮像手段を含む撮影グループを識別するための撮影グループ識別情報を受け付ける撮影グループ識別情報受付手段と、前記撮影グループ識別情報受付手段により受け付けられた撮影グループ識別情報を前記中継装置に対して送信する撮影グループ識別情報送信手段とを具備し、前記中継装置が、前記撮影グループ識別情報を受信した場合、当該撮影グループ識別情報で識別される撮影グループに含まれる複数の撮像手段の中から特定の撮像手段を選定する選定手段と、前記選定手段により選定された撮像手段により撮影される映像を前記車上装置から取得する映像取得手段と、前記映像取得手段により取得された映像を前記監視装置に対して送信する映像送信手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
前記態様の車両監視システムにおいて、前記車上装置が、前記車両の運行状況を取得する運行状況取得手段と、前記運行状況取得手段により取得された車両の運行状況に基づいて、当該車上装置の動作状態を切り替える動作切替手段とをさらに具備し、前記選定手段が、前記車上装置の動作状態に基づいて、特定の撮像手段を選択するように構成されていてもよい。
【0011】
また、前記態様の車両監視システムにおいて、前記動作切替手段が、前記運行状況取得手段により取得された車両の進行方向に基づいて、前記車上装置の動作状態を切り替えるように構成されていてもよい。
【0012】
また、前記態様の車両監視システムにおいて、複数の前記車上装置を備え、前記動作切替手段が、前記運行状況取得手段により取得された車両の運行状況に基づいて、複数の前記車上装置の通信機能のオン/オフを切り替えるように構成されており、前記選定手段が、前記動作切替手段により通信機能がオンとされた車上装置が具備する撮像手段を選定するように構成されていてもよい。
【0013】
また、前記態様の車両監視システムにおいて、前記選定手段が、前記撮影グループに含まれる前記複数の撮像手段を選択的に切り替えて選定するように構成されていてもよい。
【0014】
また、前記態様の車両監視システムにおいて、複数の前記監視装置を備え、前記中継装置が、前記映像取得手段により取得された映像を記憶する映像記憶手段をさらに具備し、一の監視装置及び他の監視装置から同一の撮影グループ識別情報を受信した場合であって、前記一の監視装置からの要求に応じて既に前記映像取得手段が映像を取得し、その映像を前記映像記憶手段が記憶しているとき、当該映像記憶手段によって記憶されている当該映像を前記他の監視装置に対して送信するように構成されていてもよい。
【0015】
本発明の一の態様の中継装置は、車両に設けられ、撮影範囲が異なる複数の撮像手段を具備する車上装置と、前記車両の運行を監視する監視装置との間を中継する中継装置において、複数の前記撮像手段を含む撮影グループを識別するための撮影グループ識別情報を前記監視装置から受信した場合、当該撮影グループ識別情報で識別される撮影グループに含まれる複数の撮像手段の中から特定の撮像手段を選定する選定手段と、前記選定手段により選定された撮像手段により撮影される映像を前記車上装置から取得する映像取得手段と、前記映像取得手段により取得された映像を前記監視装置に対して送信する映像送信手段とを備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一の態様の中継方法は、車両に設けられ、撮影範囲が異なる複数の撮像手段を具備する車上装置と、前記車両の運行を監視する監視装置との間を中継する中継方法において、複数の前記撮像手段を含む撮影グループを識別するための撮影グループ識別情報を前記監視装置から受信した場合、当該撮影グループ識別情報で識別される撮影グループに含まれる複数の撮像手段の中から特定の撮像手段を選定するステップと、選定された撮像手段により撮影される映像を前記車上装置から取得するステップと、取得された映像を前記監視装置に対して送信するステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る車両監視システム、中継装置及び中継方法によれば、車両の運行状況を簡易な構成で監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両監視システムの全体構成を示す模式図。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両監視システムの無線LANネットワークの構成を示す模式図。
【図3】車上装置の構成を示す模式図。
【図4】監視装置の構成を示すブロック図。
【図5】映像録画装置の構成を示すブロック図。
【図6】記録映像情報テーブルの一例を示す模式図。
【図7】中継装置の構成を示すブロック図。
【図8】撮影グループ情報テーブルの一例を示す模式図。
【図9】撮影グループ情報登録画面の画面例を示す図。
【図10】本実施の形態に係る車両監視システムで実行される通信機能切替処理の手順を示すフローチャート。
【図11】本実施の形態に係る車両監視システムで実行される車上装置特定処理の手順を示すフローチャート。
【図12】本実施の形態に係る車両監視システムで実行される映像取得処理の手順を示すフローチャート。
【図13】グループ検索画面の画面例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す各実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための方法及び装置を例示するものであって、本発明の技術的思想は下記のものに限定されるわけではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0020】
[車両監視システムの構成]
図1は、本実施の形態に係る車両監視システムの全体構成を示す模式図である。本車両監視システム1は、軌道線路上を走行し、一号車両a1、二号車両a2、三号車両a3の三両の車両からそれぞれ編成される列車T1,T2,T3,…の運行状況をリアルタイムで監視するためのシステムである。車両監視システム1は、列車T1,T2,T3,…の車両側に設けられた複数の車上装置2,2,…と、車上装置2,2,…により取得された車両に関する映像に基づいて当該車両の運行状況を監視する複数の監視装置3,3,…と、同じく車両に関する映像を記録する映像記録装置4と、車上装置2,2,…と監視装置3及び映像記録装置4との間を中継する中継装置5とを備えている。
【0021】
車上装置2は、列車T1,T2,T3,…それぞれの前方及び後方を撮影可能なように、列車T1,T2,T3,…の両端に位置する一号車両a1及び三号車両a3に1つずつ設けられている。
【0022】
中継装置5と車上装置2とは、無線LANネットワーク6を介してデータ通信可能に接続されている。この無線LANネットワーク6は、図2に示すように、軌道線路に沿って複数設置された無線LAN基地局61,61,…により構成されている。この無線LAN基地局61,61,…はIEEE802.11g規格に対応した無線LAN基地局であり、軌道線路に沿って約300m毎の間隔で配設されている。このように設けられた無線LAN基地局61,61,…を用いることにより、列車T1,T2,T3,…が軌道線路上を走行中であっても、列車T1,T2,T3,…に設置されている車上装置2と中継装置5とが通信可能となる。
【0023】
なお、上述したように、本実施の形態では、車上装置2は列車T1,T2,T3,…のそれぞれに2つずつ設置されているが、列車の運行状況を監視するために設置されるのであれば、車上装置2がいくつ設置されていても構わない。また、車上装置2が設置される車両についても、車両a1及び車両a3に限定されるわけではなく、どの車両に設置されていてもよい。
【0024】
また、本実施の形態では、列車T1,T2,T3,…は、車両a1,a2,a3の三両の車両から編成されているが、車両の数がいくつであってもよいことは勿論である。
【0025】
[車上装置の構成]
図3は、本実施の形態に係る車上装置2の構成を示す模式図である。車上装置2は、当該車上装置2が設置されている列車の前方又は後方を撮影するための映像カメラ20と、映像カメラ20により撮影された映像を伝送可能な形式に変換する映像変換装置21と、中継装置5との間の通信を制御する通信制御装置22とを備えている。
【0026】
映像カメラ20は、撮影した映像をNTSC(National Television Standards Committee)信号として出力することが可能なCCD撮像素子を用いたカメラである。映像変換装置21は、映像カメラ20から出力されるNTSC信号を受け、無線LANネットワーク6を通じて送信可能なMJPEG(Motion-Joint Photographic Experts Group)形式に変換する。
【0027】
通信制御装置22は、IEEE802.11g規格に対応した無線通信機能を有しており、軌道線路に沿って複数設置された無線LAN基地局61,61,…と通信することができる。
【0028】
また、通信制御装置22は、当該車両装置2が設置されている列車の走行を制御する走行制御装置23と通信可能に接続されている。この走行制御装置23は、当該列車に設けられており、その列車の走行方向及び走行速度等を制御する。
【0029】
通信制御装置22は、走行制御装置23から列車の走行方向を示す情報を取得し、その走行方向と映像カメラ20の撮影する方向とが一致する場合、前記無線通信機能をオンにし、列車の走行方向と映像カメラ20の撮影する方向とが一致しない場合、前記無線通信機能をオフにする。
【0030】
上述した無線通信機能のオン/オフについて、図2を参照しながらより具体的に説明する。列車には車両a1及び車両a3それぞれに、車上装置2,2が設置されている。車両a1に設置された車上装置2の映像カメラ20は、図中における列車の右方向を撮影するように、車両a3に設置された車上装置2の映像カメラ20は、図中における列車の左方向を撮影するように構成されている。ここで、図2において、列車が左から右の方向に向かって走行しているとした場合、車両a1に設置された車上装置2の映像カメラ20の撮影方向と列車の走行方向とが一致し、車両a3に設置された車上装置2の映像カメラ20の撮影方向と列車の走行方向とは一致しない。よって、車両a1に設置された車上装置2の通信制御装置22は無線通信機能をオンにし、車両a3に設置された車上装置2の通信制御装置22は無線通信機能をオフにする。逆に、右から左の方向に向かって走行している場合であれば、車両a1に設置された車上装置2の映像カメラ20の撮影方向と列車の走行方向とは一致せず、車両a3に設置された車上装置2の映像カメラ20の撮影方向と列車の走行方向とが一致する。よって、車両a1に設置された車上装置2の通信制御装置22は無線通信機能をオフにし、車両a3に設置された車上装置2の通信制御装置22は無線通信機能をオンとする。ここでは、例えば、走行制御装置23が、車両の進行方向側に設けられている車上装置2のみに対して電圧がHiとなる直流信号を出力し、リレー接点を用いることにより各通信制御装置22の無線通信機能のオン/オフ制御が行われる。
【0031】
上述したように、列車の走行方向と映像カメラ20の撮影方向との一致/不一致を判定するために、通信制御装置22は、映像カメラ20の撮影方向を示す情報(以下、「撮影方向情報」という)を記憶している。
【0032】
なお、本実施の形態では、映像変換装置21及び通信制御装置22が、映像カメラ20とは別に設けられているが、映像カメラ20が、いわゆるwebカメラ等のように、撮影機能、通信可能な映像データへの変換機能及び通信機能を備える撮影装置である場合、当該映像カメラ20が映像変換装置21及び通信制御装置22の機能を兼ねる構成も想定される。
【0033】
[監視装置の構成]
図4は、本実施の形態に係る監視装置3の構成を示すブロック図である。監視装置3は、コンピュータ3aによって実現される。図4に示すように、コンピュータ3aは、本体31と、画像表示部32と、入力部33とを備えている。本体31は、CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、及び画像出力インタフェース31hを備えており、CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、及び画像出力インタフェース31hはバス31jによって接続されている。
【0034】
CPU31aは、RAM31cにロードされたコンピュータプログラム34を実行することが可能である。そして、車両監視システム1の監視装置用のコンピュータプログラム34aを当該CPU31aが実行することにより、コンピュータ3aが監視装置3として機能する。
【0035】
ハードディスク31dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU31aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。監視装置用のコンピュータプログラム34aも、このハードディスク31dにインストールされている。
【0036】
ROM31bは、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、又はEEPROM(Electrically Erasable PROM)等によって構成されており、CPU31aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
【0037】
RAM31cは、SRAM又はDRAM等によって構成されている。RAM31cは、ハードディスク31dに記録されている種々のコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、CPU31aがコンピュータプログラムを実行するときに、CPU31aの作業領域として利用される。
【0038】
ハードディスク31dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU31aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。監視装置用のコンピュータプログラム34aも、このハードディスクにインストールされている。
【0039】
読出装置31eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体34に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体34には、コンピュータ3aを監視装置3として機能させるためのコンピュータプログラム34aが格納されており、コンピュータ3aが当該可搬型記録媒体34からコンピュータプログラム34aを読み出し、当該コンピュータプログラムをハードディスク34dにインストールすることが可能である。
【0040】
なお、コンピュータプログラム34aは、可搬型記録媒体34によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ3aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、コンピュータプログラム34aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ3aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク31dにインストールすることも可能である。
【0041】
また、ハードディスク31dには、例えば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のマルチタスクオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施の形態に係るコンピュータプログラム34aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0042】
入出力インタフェース31fは、例えば、USB、IEEE1394、又はRS232C等のシリアルインタフェース、SCSI、IDE、又はIEEE1284等のパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース31fには、キーボード及びマウスからなる入力部33が接続されており、列車の運行状況を監視し、運行管理を行う運行管理者が当該入力部を使用することにより、コンピュータ3aにデータを入力することが可能である。
【0043】
通信インタフェース31gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース31gはLANネットワークを介して映像記録装置4及び中継装置5に接続されている。コンピュータ3aは、通信インタフェース31gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANネットワークに接続された映像記録装置4及び中継装置5との間でデータの送受信が可能である。
【0044】
画像出力インタフェース31hは、LCDまたはCRT等で構成された画像表示部32に接続されており、CPU31aから与えられた画像データに応じた映像信号を画像表示部に出力するようになっている。画像表示部32は、入力された映像信号に従って、画像又は画面を表示する。
【0045】
[映像記録装置の構成]
図5は、本実施の形態に係る映像記録装置4の構成を示すブロック図である。映像記録装置4は、コンピュータ4aによって実現される。図5に示すように、コンピュータ4aは、本体41と、画像表示部42と、入力部43とを備えている。本体41は、CPU41a、ROM41b、RAM41c、ハードディスク41d、読出装置41e、入出力インタフェース41f、通信インタフェース41g、及び画像出力インタフェース41hを備えており、CPU41a、ROM41b、RAM41c、ハードディスク41d、読出装置41e、入出力インタフェース41f、通信インタフェース41g、及び画像出力インタフェース41hはバス41jによって接続されている。
【0046】
上記のCPU41a、ROM41b、RAM41c、ハードディスク41d、読出装置41e、入出力インタフェース41f、通信インタフェース41g、及び画像出力インタフェース41hは、監視装置3が備えるCPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、及び画像出力インタフェース31hと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0047】
ハードディスク41dには、コンピュータ4aを映像記録装置として機能させるためのコンピュータプログラム44aの他、記録した映像を管理するための記録映像情報テーブル401が格納されている。図6は、記録映像情報テーブル401の一例を示す模式図である。記録映像情報テーブル401は、映像記録装置4が記録した映像に関する情報が登録されるテーブルであり、映像を識別するための映像ID401aと、映像が取得された撮影日時を示す撮影日時401bと、映像を取得した車上装置が所属するグループを示すグループID401cと、映像が記録されている場所又はアドレスを示すアドレス401dとを要素として含んでいる。
【0048】
通信インタフェース41gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース41gはLANネットワークを介して監視装置3及び中継装置5に接続されている。コンピュータ4aは、通信インタフェース41gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANネットワークに接続された監視装置3及び中継装置5との間でデータの送受信が可能である。
【0049】
[中継装置の構成]
図7は、中継装置5の構成を示すブロック図である。中継装置5は、コンピュータ5aによって実現される。図7に示すように、コンピュータ5aは本体51と、画像表示部52と、入力部53とを備えている。本体51は、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hを備えており、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hはバス51jによって接続されている。
【0050】
上記のCPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hは、監視装置3が備えるCPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インタフェース31f、通信インタフェース31g、及び画像出力インタフェース31hと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0051】
ハードディスク51dには、コンピュータ5aを中継装置として機能させるためのコンピュータプログラム54aの他、複数の映像カメラで構成される撮影グループについて規定する撮影グループ情報テーブル501が格納されている。図8は、撮影グループ情報テーブル501の一例を示す模式図である。撮影グループ情報テーブル501は、複数の映像カメラ20,20,…で構成される撮影グループを識別するためのグループID501aと、撮影グループの名称を示すグループ名501bと、撮影グループ毎に設定された仮想IPアドレス501cと、撮影グループを構成する各映像カメラ20,20,…をそれぞれ搭載している各車上装置2,2,…の固有IPアドレス501dと、当該各車上装置2,2,…のうち、映像を送信することが可能な状態にある車上装置2の固有IPアドレスである通信可能車上装置501eとを要素として含んでいる。なお、以下では、撮影グループを構成する各映像カメラ20,20,…を「撮影グループに属する映像カメラ」と表現し、それらの各映像カメラ20,20,…をそれぞれ搭載している各車上装置2,2,…を「撮影グループに属する車上装置」と表現することがある。
【0052】
通信インタフェース51gは、Ethernet(登録商標)インタフェースである。通信インタフェース51gはLANネットワークを介して監視装置3及び映像記録装置4に接続されている。また、通信インタフェース51gは無線LANネットワークを介して、列車T1,T2,T3,…それぞれに設置された車上装置2に接続されている。コンピュータ5aは、通信インタフェース51gにより、所定の通信プロトコルを使用して当該LANネットワーク又は無線LANネットワークに接続された監視装置3、映像記録装置4及び車上装置2との間でデータの送受信が可能である。
【0053】
[車両監視システムの動作]
次に、上述したように構成された車両監視システム1の動作についてフローチャート等を参照しながら説明する。なお、本実施の形態の車両監視システム1にて実行される主な処理として、(1)撮影グループ情報テーブル501に各種の情報を登録するためのテーブル登録処理、(2)各車上装置2において、列車の走行方向に基づいて通信機能のオン/オフを切り替える通信機能切替処理、(3)前記テーブル登録処理に登録された各撮影グループについて、映像を取得する車上装置を特定する車上装置特定処理、(4)中継装置5を介して監視装置3及び映像記録装置4が映像を取得する映像取得処理がある。以下では、これらの各処理について説明する。
【0054】
(1)テーブル登録処理
テーブル登録処理において、運行管理者は、中継装置5を直接操作することにより各種の情報の登録作業を行う。なお、運行管理者は、監視装置3又は映像記録装置4を使用して中継装置5にアクセスし、各種情報の登録作業を行ってもよい。
【0055】
運行管理者は、中継装置5を直接操作し、撮影グループ情報を登録するための撮影グループ情報登録画面を画像表示部52に表示させる。図9は、撮影グループ情報登録画面の画面例を示す図である。図9に示すように、撮影グループ情報登録画面D1には、撮影グループ情報を入力するための入力欄F1と、入力欄F1に入力された撮影グループ情報の登録を行うための登録ボタンB1とが設けられている。運行管理者は、入力部53を用いて、撮影グループのグループID、その撮影グループのグループ名、その撮影グループに対して設定された仮想IPアドレス、及びその撮影グループに属する車上装置の固有IPアドレスを入力欄F1に入力する。なお、各車上装置の固有IPアドレスについては、複数の入力欄が設けられており、同時に複数登録することができる。
【0056】
運行管理者は、入力欄F1への撮影グループ情報の入力後、登録ボタンB1を押下する。この押下を検知した中継装置5は、入力欄F1に入力されたグループID、グループ名、仮想IPアドレス、及び車上装置の固有IPアドレスを撮影グループ情報テーブル501に登録する。なお、撮影グループ情報テーブル501中のグループIDについては、中継装置5側で自動的に採番してもよく、運行管理者がマニュアルで設定するようにしてもよい。
【0057】
以上のテーブル登録処理により、複数の映像カメラ20,20,…のグループ化が実現される。なお、撮影グループ情報テーブル501の内容は適宜修正することが可能である。
【0058】
(2)通信機能切替処理
以下、各車上装置2によって実行される通信機能切替処理について説明する。この通信機能切替処理は、列車が走行している間、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0059】
図10は、本実施の形態に係る車両監視システム1が備える車上装置2によって実行される通信機能切替処理の手順を示すフローチャートである。
まず、車上装置2の通信制御装置22は、走行制御装置23から、当該車上装置2が設置されている列車の走行方向を示す走行方向情報を取得する(ステップS101)。次に、通信制御装置22は、その取得した走行方向情報に示されている列車の走行方向と、予め記憶している撮影方向情報が示す映像カメラ20の撮影方向とが一致しているか否かを判定する(ステップS102)。ここで、走行方向と撮影方向とが一致すると判定した場合(ステップS102でYES)、通信制御装置22は、無線通信機能をオンとする(ステップS103)。逆に、走行方向と撮影方向とが一致しないと判定した場合(ステップS102でNO)、通信制御装置22は、無線通信機能をオフとする(ステップS104)。
【0060】
この通信機能切替処理の結果、列車の走行方向を撮影している映像カメラ20を備えている車上装置2のみが、無線通信ネットワーク6を介して中継装置5と通信することが可能となる。
【0061】
(3)車上装置特定処理
以下、中継装置5によって実行される車上装置特定処理について説明する。この車上装置特定処理は、所定の時間間隔で(例えば、3秒毎など)、撮影グループ情報テーブル501に登録された各撮影グループについて順次実行される。
【0062】
図11は、本実施の形態に係る車両監視システム1が備える中継装置によって実行される車上装置特定装置の手順を示すフローチャートである。
まず、中継装置5のCPU51aは、所定の撮影グループ所属する全ての車上装置2,2,…に対して、通信インタフェース51gを通じて、ICMP Pingパケットを送信する(ステップS201)。
【0063】
上述した通信機能切替処理により、列車の走行方向を撮影している映像カメラ20を備えている車上装置2が無線通信可能な状態になっており、他方、列車の走行方向以外の方向を撮影している映像カメラ20を備えている車上装置2は無線通信ができない状態になっている。そのため、列車の走行方向を撮影している映像カメラ20を備えている車上装置2のみが、中継装置5から送信されたICMP Pingパケットを受信し、これに対応した応答パケットを中継装置5に対して送信することになる。
【0064】
中継装置5のCPU51aは、送信したICMP Pingパケットに対応する応答パケットを受信したか否かを判定する(ステップS202)。ここで、応答パケットが受信したと判定した場合(ステップS202でYES)、CPU51aは、その受信した応答パケットを送信した車上装置2を、通信可能な車上装置として特定する(ステップS203)。その後、CPU51aは、特定した車上装置の固有IPアドレスを、撮影グループ情報テーブル501の通信可能車上装置501eに登録する(ステップS204)。他方、応答パケットが受信できなかったと判定した場合(ステップS202でNO)、CPU51aは、当該撮影グループに属する全ての車上装置2,2,…は通信断の状態であると判定し、撮影グループ情報テーブル501の通信可能車上装置501eに、通信断を示す情報を登録する(ステップS205)。
【0065】
上記の車上装置特定処理を全ての撮影グループについて行うことにより、撮影グループ情報テーブルに登録されている撮影グループそれぞれについて、通信可能な状態にある車上装置を特定することができる。
【0066】
なお、本実施の形態ではICMP PINGパケットに対する応答が1回でもなければ車上装置2が通信不可能な状態にあると判定しているが、所定回数繰り返し応答がなかった場合に車上装置2が通信不可能な状態にあると判定するようにしてもよい。
【0067】
また、本実施の形態では、中継装置5は撮影グループに属する車上装置2,2,…のそれぞれに対して、ICMP Pingパケットを送信し、その応答があった車上装置2を映像取得先として特定しているが、その他の方法でこの特定を行うようにしてもよい。例えば、撮影方向が列車の走行方向と一致している映像カメラ20のみが撮影動作を行い、撮影方向がそれ以外の方向である映像カメラ20は撮影動作を行わないようにしておいた上で、中継装置5が、各映像カメラ20,20,…の動作状態を定期的に確認し、そこで撮影動作を行っていると確認された映像カメラ20を備えている車上装置2を映像取得先として特定するようにしてもよい。
【0068】
(4)映像取得処理
以下、車両監視システム1によって実行される映像取得処理について説明する。
運行管理者は、監視装置3を使用し、監視装置3のコンピュータプログラム34aを起動する。当該コンピュータプログラム34aが起動すると、監視装置3のCPU31aは、画像表示部32にログイン画面を表示させ、そのログイン画面を介して、運行管理者の運行管理者ID及びパスワードの入力を受け付ける。その後、CPU31aは、入力を受け付けた運行管理者ID及びパスワードについて、ログイン認証処理を行う。以下、このログイン認証に成功したものとして説明を進める。
【0069】
図12は、本実施の形態に係る車両監視システム1で実行される映像取得処理の手順を示すフローチャートである。運行管理者が映像取得処理を行う指示を監視装置3に与えると、CPU31aは監視対象の撮影グループ(本実施の形態の場合では「列車」に相当)を選択するために、通信インタフェース31gを通じて、中継装置5へ撮影グループ情報を要求するための撮影グループ情報要求データを送信する(ステップS301)。
【0070】
中継装置5のCPU51aは、監視装置3から送信された撮影グループ情報要求データを受信すると(ステップS401)、撮影グループ情報テーブル501に記録されている情報のうち、グループ名、グループID、及び仮想IPアドレスを含む撮影グループ情報を、通信インタフェース51gを通じて、監視装置3へ送信する(ステップS402)。
【0071】
監視装置3のCPU31aは、中継装置5から送信された撮影グループ情報を受信すると(ステップS302)、受信した撮影グループ情報をRAM31cに記憶させ、監視対象の撮影グループを選択するための撮影グループ検索画面を画像表示部52に表示する(ステップS303)。
【0072】
図13は、撮影グループ検索画面の画面例を示す図である。撮影グループ検索画面D2には、図13に示すように、グループ名又はグループIDを入力するための入力欄F2と、入力欄F2に入力されたグループ名又はグループIDを有するグループを検索するための検索ボタンB2と、検索結果を表示するための表示欄F3とが設けられている。運行管理者は、監視対象となるグループのグループ名又はグループIDを入力欄F2に入力し、検索ボタンB2を押下する。この検索ボタンB2の押下を検知したCPU31aは、RAM31cに記憶されている撮影グループ情報から、入力欄F2に入力された情報と部分一致又は完全一致する撮影グループの検索を実行する。その結果、グループ検索画面D2の表示欄F3に、検索された撮影グループのグループ名が表示される。このとき、運行管理者は、入力部33を用いて、表示欄F3に表示されているグループ名のうち、特定のグループ名を選択する。CPU31aは、このようにして撮影グループの選択を受け付けると(ステップS304)、選択された撮影グループに係る映像を要求するための第1映像要求データを中継装置5に対して送信する(ステップS305)。なお、この第1映像要求データには、選択された撮影グループのグループID又は当該撮影グループに設定された仮想IPアドレス等が含まれている。
【0073】
中継装置5のCPU51aは、監視装置3から送信された第1映像要求データを受信すると(ステップS403)、その第1映像要求データに含まれているグループID又は仮想IPアドレス等の情報を用いて、撮影グループ情報テーブル501の中から、運行管理者によって選択された撮影グループの撮影グループ情報を特定する(ステップS404)。
【0074】
次に、CPU51aは、ステップS404で特定した撮影グループの撮影グループ情報テーブルに含まれる通信可能車上装置501eを参照し、当該撮影グループに属する車上装置2,2,…の中に通信可能な状態にある車上装置2が存在するか否かを判定する(ステップS405)。ここで、当該撮影グループに属する車上装置2,2,…のすべてが通信可能な状態になかった場合(ステップS405でNO)、CPU51aは当該撮影グループが通信断の状態であることを示す映像データ(例えば、“通信断”であることを示すメッセージが含まれるデータ、及びブラックアウト画面を示すデータ等)を、監視装置3に対して送信する(ステップS411)。監視装置3がこの映像データを受信した場合(ステップS306)、その受信した映像データを画像表示部32に表示させ(ステップS307)、処理が終了する。
【0075】
他方、ステップS405において、当該撮影グループの中に通信可能な車上装置2が存在すると判定した場合(ステップS405でYES)、CPU51aは、その車上装置2の固有IPアドレスを撮影グループ情報テーブルから取得することにより、当該車上装置2を特定する(ステップS406)。
【0076】
その後、CPU51aは、ステップS406で特定された車上装置2の固有IPアドレスを宛先として、映像を要求するための第2映像要求データを送信する(ステップS407)。車上装置2は、中継装置5から送信された第2映像要求データを受信すると(ステップS501)、映像カメラ20により取得され、映像変換装置21によりデータ通信可能なように変換された映像データを、中継装置5へ送信する(ステップS502)。
【0077】
中継装置5のCPU51aは、車上装置2から送信された映像データを受信すると(ステップS408)、受信した映像データをRAM51cに一時記録する(ステップS409)。次に、CPU51aは、その受信した映像データを監視装置3へ送信する(ステップS410)。
【0078】
監視装置3のCPU31aは、中継装置5から送信された映像データを受信すると(ステップS306)、当該映像データを画像表示部32に表示させ(ステップS307)、処理が終了する。
【0079】
なお、上記の処理が終了した後、定期的にステップS305に戻って第1映像要求データの送信が行われ、それ以降の処理が繰り返される。これにより、監視装置3では、所望の映像データを継続的に取得することができる。
【0080】
図12のフローチャートには示されていないが、中継装置5は、車上装置2から受信した映像データを映像記録装置4に対しても送信する。映像記録装置4は、中継装置5から送信された映像データを受信した場合、ハードディスク41dの所定の領域に映像データを記録する。また、映像データがハードディスク41dに記録される際に、CPU41aは、映像ID、撮影日時、グループID、アドレスを示す情報を記録映像情報テーブル401に登録する。
【0081】
また、中継装置4のRAM51cに一時記憶された映像データは、他の監視装置3から同一の撮影グループについて映像要求があった場合に用いられる。すなわち、中継装置5は、他の監視装置3から同一の撮影グループについて映像要求があった場合、上述したステップS407のように第2映像要求データを車上装置2に送信して当該車上装置2から新たに映像データを取得するのではなく、RAM51cに記憶されている映像データを当該他の監視装置3に対して送信する。これにより、車上装置2と中継装置5との間の通信量を大幅に抑えることができるため、無線通信ネットワーク等の限られた通信帯域でも対応することが可能になる。
【0082】
以上のとおり、本実施の形態の場合、中継装置5が列車の走行方向を撮影している映像カメラ20を選択し、その映像カメラ20から車両監視に必要となる映像を取得して、これを監視装置3及び映像記録装置4に送信する。そのため、監視装置3において特定の映像カメラ20を選択する必要はなく、監視装置3では監視対象の撮影グループを特定するのみで足りる。従来の車両監視システムのように、監視装置が列車の走行方向を把握する必要はない。
【0083】
本実施の形態の場合、列車の走行方向に関する情報は車両側の車上装置2によって取得され、当該車上装置2にて処理に供される。列車の走行方向に関する情報は車両側で必ず取得できるものであるから、本実施の形態の車両監視システム1は、そのような情報を取得するための特別な装置を用意することなく実現することができる。
【0084】
また、本実施の形態では、中継装置5が撮影グループ情報テーブルに登録された各撮影グループに属する車上装置2,2,…に対してICMP Pingパケットを送信し、その応答を確認するのみで、車上装置2の選択を行っている。そのため、監視装置3及び映像記録装置4のみではなく、中継装置5も列車の走行方向を把握する必要はない。このように、監視装置3、映像記録装置4、及び中継装置5の何れもが列車の走行方向を示す情報を取得する必要がないため、そのような情報の送受信を行う必要がない。したがって、各装置間で送受信するデータ量を抑えることができる。
【0085】
(その他の実施の形態)
本実施の形態では、列車の走行方向に応じて、監視装置に送信される映像を取得する映像カメラが特定されているが、本発明はこれに限定されるわけではなく、列車の走行方向以外の運行状況に応じて映像カメラが特定されるようにしてもよい。例えば、車両に設置されている警報装置の作動状況に応じて映像カメラが特定されるような態様が想定される。より詳細について説明すると、各車上装置の通信制御装置が警報装置の作動状況を検出できるように構成されており、当該通信制御装置が、警報装置が作動したことを検出した場合に、所定の時間間隔で無線通信機能のオン/オフを繰り返す。この場合、それぞれの車上装置の無線通信機能がオンとなる時間は重複しないよう設定されることが好ましい。このような動作の結果、中継装置では、撮影グループに属する複数の映像カメラを選択的に切り替えて選定することになる。これにより、監視装置では、各映像カメラの映像データを順次的に取得することができる。例えば車両周辺を撮影したり、車両内を撮影したり等、様々な撮影範囲を有する複数の映像カメラが車両に設けられている場合では、車両周辺及び車両内等の様子を巡回監視することが可能になる。
【0086】
また、上述したように警報装置の作動状況に応じて映像カメラを特定する場合であれば、作動した警報装置の近傍に設けられている車上装置2の通信制御装置のみが無線通信機能をオンにすることにより、警報装置近傍の映像データを監視装置が取得することが可能になる。
【0087】
その他にも、車上装置の通信制御装置が、列車の走行速度に応じて無線通信機能をオン/オフしたり等、車内の混雑状況に応じて無線通信機能をオン/オフしたり等、様々な車両の運行状況に応じて車上装置の動作状態を切り替えることにより、多様な目的の車両監視を容易に実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明の車両監視システム、中継装置及び中継方法は、モノレール及び新交通システム等の軌道交通システムにおいて車両の運行状況を監視するシステム、中継装置及び中継方法等として有用である。
【符号の説明】
【0089】
1 車両監視システム
2 車上装置
20 映像カメラ
21 映像変換装置
22 通信制御装置
23 走行制御装置
3 監視装置
4 映像記録装置
5 中継装置
6 無線LANネットワーク
61 無線LAN基地局
a1〜a3 車両
T1〜T3 列車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられ、撮影範囲が異なる複数の撮像手段を具備する車上装置と、前記車両の運行を監視する監視装置と、前記車上装置と前記監視装置との間を中継する中継装置とを備える車両監視システムにおいて、
前記監視装置が、
複数の前記撮像手段を含む撮影グループを識別するための撮影グループ識別情報を受け付ける撮影グループ識別情報受付手段と、
前記撮影グループ識別情報受付手段により受け付けられた撮影グループ識別情報を前記中継装置に対して送信する撮影グループ識別情報送信手段と
を具備し、
前記中継装置が、
前記撮影グループ識別情報を受信した場合、当該撮影グループ識別情報で識別される撮影グループに含まれる複数の撮像手段の中から特定の撮像手段を選定する選定手段と、
前記選定手段により選定された撮像手段により撮影される映像を前記車上装置から取得する映像取得手段と、
前記映像取得手段により取得された映像を前記監視装置に対して送信する映像送信手段と
を具備することを特徴とする、車両監視システム。
【請求項2】
前記車上装置が、
前記車両の運行状況を取得する運行状況取得手段と、
前記運行状況取得手段により取得された車両の運行状況に基づいて、当該車上装置の動作状態を切り替える動作切替手段と
をさらに具備し、
前記選定手段が、前記車上装置の動作状態に基づいて、特定の撮像手段を選択するように構成されている、
請求項1に記載の車両監視システム。
【請求項3】
前記動作切替手段が、前記運行状況取得手段により取得された車両の進行方向に基づいて、前記車上装置の動作状態を切り替えるように構成されている、
請求項2に記載の車両監視システム。
【請求項4】
複数の前記車上装置を備え、
前記動作切替手段が、前記運行状況取得手段により取得された車両の運行状況に基づいて、複数の前記車上装置の通信機能のオン/オフを切り替えるように構成されており、
前記選定手段が、前記動作切替手段により通信機能がオンとされた車上装置が具備する撮像手段を選定するように構成されている、
請求項2又は3に記載の車両監視システム。
【請求項5】
前記選定手段が、前記撮影グループに含まれる前記複数の撮像手段を選択的に切り替えて選定するように構成されている、
請求項1乃至4の何れかに記載の車両監視システム。
【請求項6】
複数の前記監視装置を備え、
前記中継装置が、
前記映像取得手段により取得された映像を記憶する映像記憶手段をさらに具備し、
一の監視装置及び他の監視装置から同一の撮影グループ識別情報を受信した場合であって、前記一の監視装置からの要求に応じて既に前記映像取得手段が映像を取得し、その映像を前記映像記憶手段が記憶しているとき、当該映像記憶手段によって記憶されている当該映像を前記他の監視装置に対して送信するように構成されている、
請求項1乃至5の何れかに記載の車両監視システム。
【請求項7】
車両に設けられ、撮影範囲が異なる複数の撮像手段を具備する車上装置と、前記車両の運行を監視する監視装置との間を中継する中継装置において、
複数の前記撮像手段を含む撮影グループを識別するための撮影グループ識別情報を前記監視装置から受信した場合、当該撮影グループ識別情報で識別される撮影グループに含まれる複数の撮像手段の中から特定の撮像手段を選定する選定手段と、
前記選定手段により選定された撮像手段により撮影される映像を前記車上装置から取得する映像取得手段と、
前記映像取得手段により取得された映像を前記監視装置に対して送信する映像送信手段と
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項8】
車両に設けられ、撮影範囲が異なる複数の撮像手段を具備する車上装置と、前記車両の運行を監視する監視装置との間を中継する中継方法において、
複数の前記撮像手段を含む撮影グループを識別するための撮影グループ識別情報を前記監視装置から受信した場合、当該撮影グループ識別情報で識別される撮影グループに含まれる複数の撮像手段の中から特定の撮像手段を選定するステップと、
選定された撮像手段により撮影される映像を前記車上装置から取得するステップと、
取得された映像を前記監視装置に対して送信するステップと
を有することを特徴とする中継方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−60179(P2013−60179A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201625(P2011−201625)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】