説明

車両積載量検出装置

【課題】構成の簡素化及び低コスト化を図りつつ、車両の積載量を正確に検出することができる車両積載量検出装置を提供すること。
【解決手段】車両1は、ホイール2に対する制動力を制御するABS100と、タイヤ5の内部空気圧を検出するタイヤ状態監視装置200とを備えている。ABS100の回転センサユニット140からの信号に基づきタイヤ5の動半径を求めるとともに、このタイヤ5の動半径とタイヤ状態監視装置200によって検出されたタイヤ5の内部空気圧とに基づき、車両1の積載量が求められる。積載量の算出に際しては、タイヤ5の内部空気圧とタイヤ5の動半径と車両1の積載量との関係を予め設定した積載量判定マップが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されているABS及びタイヤ状態監視装置を用いて車両の積載量を検出する車両積載量検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2は、車両の総重量又は車両の積載量を検出する車両重量検出装置を開示している。
特許文献1の重量検出装置では、車両のホイールには、タイヤの内部空気圧を検知する空気圧センサと、タイヤの内部温度を検知する温度センサと、検知された内部空気圧及び内部温度を示す信号を無線送信する送信機とが装着されている。一方、車両の車体には、前記送信機からの信号を受信する受信機と、受信機で受信された信号に基づき積載量を求める計測装置とが設けられている。計測装置は、タイヤの内部空気圧とタイヤにかかる荷重との関係を設定したテーブルデータを予め記憶している。計測装置は、受信機で受信された信号からタイヤの内部空気圧及び内部温度を把握すると共に、内部温度に基づいて内部空気圧を補正して補正空気圧を求める。そして、計測装置は、この補正空気圧に基づき、前記テーブルデータを用いて車両の総重量及び積載量を求める。
【0003】
特許文献2の重量検出装置では、車両のホイールのリムと同リムに装着されるタイヤとの間に荷重センサが設けられている。荷重センサは、リムからタイヤにかかる荷重(タイヤ荷重)に対応する大きさの電圧を発生する。また、ホイールには、タイヤの内部空気圧を検知する空気圧センサと、タイヤの内部温度を検知する温度センサとを有する送信機ユニットが装着されており、前記荷重センサはこの送信機ユニットに接続されている。送信機ユニットは、前記空気圧センサ及び温度センサでそれぞれ検知された内部空気圧及び内部温度を示す信号を無線送信するとともに、荷重センサで発生した電圧の値を示す信号を無線送信する。一方、車両の車体には、前記送信機からの信号を受信すると共に受信された信号に基づき積載量を求める受信機ユニットが設けられている。受信機ユニットは、荷重センサの出力電圧値とタイヤ荷重との関係をタイヤの内部空気圧毎に設定したマップデータを予め記憶している。受信機ユニットは、受信された信号からタイヤの内部空気圧及び内部温度を把握すると共に、内部温度に基づいて内部空気圧を補正して補正空気圧を求める。また受信機ユニットは、受信された信号から荷重センサの出力電圧値を把握すると共に、その出力電圧値と前記補正空気圧とに基づき、前記マップデータを用いてタイヤ荷重を求め、このタイヤ荷重に基づき車両の総重量を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3578311号公報
【特許文献2】特開2005−140503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の装置では、タイヤの内部空気圧とタイヤにかかる荷重との関係を設定したテーブルデータを用いて、検知されたタイヤの内部空気圧に基づき、車両の総重量及び積載量が求められる。すなわち、同特許文献1の装置では、タイヤにかかる荷重の変化に応じてタイヤの内部空気圧が変化するという前提の基に、車両の総重量及び積載量がタイヤの内部空気圧に基づき求められる。しかしながら、タイヤにかかる荷重の変化に対するタイヤの内部空気圧の変化は非常に微小であるので、タイヤの内部空気圧とタイヤにかかる荷重との関係から車両の総重量及び積載量を正確に求めることは現実的には難しい。
よって、特許文献1の装置は実用性に欠ける。
【0006】
一方、上記特許文献2の装置では、タイヤ荷重を検知するために荷重センサを設ける必要があるので、装置の構成が複雑になると共にコストが上昇する。加えて、ホイールのリムとタイヤとの間に荷重センサを設ける場合には、リムとタイヤとの間から空気漏れが生じるおそれが増大するだけでなく、ホイールに対するタイヤの装着作業が極めて煩雑になる。しかも、特に車両走行時には、荷重センサに対して急激且つ大きな動荷重が作用するので、そのような過酷な使用環境下で荷重センサを使用することは耐久性の観点からも好ましくない。
【0007】
本発明の目的は、構成の簡素化及び低コスト化を図りつつ、車両の積載量を正確に検出することができる車両積載量検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本願発明は、車両のホイールに装着されたタイヤの内部空気圧を検出するタイヤ状態監視装置と、前記ホイールに対する制動力を制御するアンチロック・ブレーキシステムであって、前記ホイールの回転速度に比例した周波数を有する回転信号を発生する回転検出器を備えるアンチロック・ブレーキシステムと、前記回転信号に基づき前記タイヤの動半径を求めるとともに、この動半径と、前記タイヤ状態監視装置によって検出されたタイヤの内部空気圧とに基づき車両の積載量を求める積載量算出部と、を備える車両積載量検出装置を提供する。
【0009】
本願発明者は、タイヤの内部空気圧が車両の積載量の変化に対して殆ど変化しない一方、タイヤの動半径が車両の積載量の変化に対してほぼ比例して変化するとともにタイヤの内部空気圧の変化に対してほぼ比例して変化することを見出した。そこで本願発明では、車両に備えられているアンチロック・ブレーキシステム(ABS)及びタイヤ状態監視装置を用いてタイヤの動半径及び内部空気圧を検出し、この動半径及び内部空気圧に基づき車両の積載量を求めるようにしている。そのため、積載量を検出するために荷重センサ等の部品を新たに追加するという必要がなく、構成の簡素化及び低コスト化を図りつつ、積載量を正確に検出することができる。
【0010】
本発明の一態様において、前記積載量算出部は、前記回転信号に基づき、車両が所定距離走行する間におけるタイヤの回転量を求めるとともに、この所定距離及びタイヤの回転量に基づき前記タイヤの動半径を求める。
【0011】
上記構成によれば、車両が所定距離走行する間におけるタイヤの回転量を求めることにより、タイヤの動半径を容易且つ正確に求めることができる。
本発明の一態様において、前記積載量算出部は、タイヤの内部空気圧とタイヤの動半径と車両の積載量との関係を設定した積載量判定データを予め記憶しており、同積載量算出部は、積載物を搭載した車両におけるタイヤの内部空気圧とタイヤの動半径とに基づき、前記積載量判定データを用いて車両の積載量を求める。
【0012】
上記構成によれば、タイヤの内部空気圧とタイヤの動半径と車両の積載量との関係を設定した積載量判定データを予め準備しておくことにより、積載量を容易且つ正確に求めることができる。
【0013】
本発明の一態様において、前記積載量判定データには、異なる複数の内部空気圧のそれぞれに対応して、タイヤの動半径と車両の積載量との関係が設定されている。
上記のように構成された積載量判定データを用いることにより、タイヤの内部空気圧に対するタイヤの動半径及び積載量の関係を一層正確に把握することが可能となり、積載量
を一層正確に求めることができる。
【0014】
本発明の一態様では、前記積載量判定データにおいて、タイヤの内部空気圧は所定の標準温度での圧力として設定されており、前記タイヤ状態監視装置は、前記タイヤの内部空気及びタイヤの内部温度の双方を検出するように構成され、前記積載量算出部は、前記タイヤ状態監視装置によって検出されたタイヤの内部空気圧及びタイヤの内部温度に基づき、検出されたタイヤの内部空気圧を前記標準温度での圧力に換算するとともに、この換算後の圧力を用いて車両の積載量を求める。
【0015】
このように構成すれば、タイヤの内部温度に起因する内部空気圧の変化の影響を排除して、積載量を一層正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両積載量検出装置が搭載された車両を示す概略構成図。
【図2】(a)は図1の回転センサユニットを示す概略構成図、(b)は回転センサユニットのピックアップコイルが発生する交流電圧を示すグラフ、(c)は図2(b)の交流電圧から生成されるパルス信号列を示すグラフ。
【図3】図1の送信機の回路構成を示すブロック図。
【図4】図1の受信機の回路構成を示すブロック図。
【図5】積載量判定マップ作成手順を示すフローチャート。
【図6】積載量判定マップ作成手順を示すフローチャート。
【図7】積載量判定マップを示すグラフ。
【図8】積載量検出手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両1には、ABS(アンチロック・ブレーキシステム)100及びタイヤ状態監視装置200が搭載されている。
【0018】
先ず前記ABS100について説明すると、同ABS100は、ABSコントローラ110と、油圧装置120と、車両1の4つのホイール2にそれぞれ対応するブレーキユニット130と、4つのホイール2にそれぞれ対応する回転センサユニット140とを備えている。各ブレーキユニット130は、油圧装置120から供給される作動油によって、対応するホイール2を制動する。ABSコントローラ110はCPU、ROM及びRAMを含むマイクロコンピュータ等よりなり、前記回転センサユニット140からの信号に基づき各ホイール2の回転速度を求めると共に、この回転速度とホイール2に装着されたタイヤ5の半径とに基づき路面に対する各ホイール2の移動速度を求める。タイヤ5の半径は標準値として予めABSコントローラ110のROMに記憶されている。ABSコントローラ110はまた、車両のブレーキペダル(図示せず)が踏み込まれたとき、各タイヤ5のスリップ率を求め、このスリップ率が所定の許容値を超えないように油圧装置120を通じて各ブレーキユニット130を制御して、各ホイール2に対する制動力を調整する。スリップ率Sは、例えば以下の式により求められる。
【0019】
S=(V−Vr)/V
上記式において、Vは車速、Vrはホイール2の移動速度である。車速Vは例えば4つのホイール2の移動速度Vrの平均値として求められる。例えば、過剰な制動力によってある一つのホイール2がロックした場合、同ホイール2の移動速度Vrはゼロとして算出され、スリップ率Sは100%となる。そのため、スリップ率が許容値以下に低下するよう同ホイール2の制動力が弱められる。
【0020】
図2(a)に示すように、回転検出器としての前記各回転センサユニット140は、ホイール2と一体回転するセンサロータ140aと、センサロータ140aの外周面に対向するように配置されたピックアップコイル140bとを含む。センサロータ140aの外周面には複数の歯が等角度間隔置きに設けられている。ホイール2と共にセンサロータ140aが回転すると、ピックアップコイル140bは図2(b)に示すように、センサロータ140aの回転速度、つまりホイール2の回転速度に比例した周波数を有する交流電圧信号(回転信号)を発生する。図2(c)に示すように、前記ABSコントローラ110は、各ピックアップコイル140bからの交流電圧信号を波形成形してパルス信号列を生成する。そして、ABSコントローラ110は、単位時間当たりのパルス信号の数に基づき、各ホイール2の回転速度を求める。
【0021】
次に前記タイヤ状態監視装置200について説明すると、図1に示すように、同タイヤ状態監視装置200は、前記ホイール2にそれぞれ装着される4つの送信機3と、車両1の車体に設けられる1つの受信機4とを備えている。各送信機3は、タイヤ5の内部に配置されるように、そのタイヤ5が装着されたホイール2に対して固定されている。各送信機3は、対応するタイヤ5の状態(内部空気圧及び内部温度等)を計測して、計測によって得られたタイヤ状態を示すデータを含む信号、即ちタイヤ状態検知信号を無線電波に乗せて送信する。
【0022】
前記受信機4は、車体の所定箇所に設置され、例えば車両1のバッテリ(図示せず)からの電力によって動作する。受信機4は少なくとも1つの受信アンテナ8を備えている。受信機4は、各送信機3から送信された信号をその受信アンテナ8を通じて受信して、同受信信号を処理する。
【0023】
図3に示すように、前記各送信機3は、圧力センサ11、温度センサ12、送信機コントローラ14、RF送信回路16を備えている。センサ11,12、送信機コントローラ14、及びRF送信回路16は、送信機3に内蔵された電池18から供給される電力によって駆動される。
【0024】
圧力センサ11は、対応するタイヤ5の内部空気圧を計測して、その計測によって得られた空気圧データを送信機コントローラ14に出力する。温度センサ12は、対応するタイヤ5の内部温度を計測して、その計測によって得られた温度データを送信機コントローラ14に出力する。送信機コントローラ14は、CPU、RAM及びROMを含むマイクロコンピュータ等よりなり、RAMには固有の識別情報であるIDコードが登録されている。このIDコードは、各送信機3を受信機4において識別するために使用される情報である。送信機コントローラ14は、空気圧データ、温度データ及びIDコードを含むデータを、RF送信回路16に出力する。RF送信回路16は、送信機コントローラ14からのデータを変調して変調信号を生成し、変調信号を送信アンテナ19から無線送信する。
【0025】
図4に示すように、前記受信機4は、RF受信回路51及び受信機コントローラ53を備えている。RF受信回路51は、各送信機3からの送信信号を、RF受信アンテナ52を介して受信して復調する。RF受信回路51は、受信信号を復調することによって得られたデータを、受信機コントローラ53に送信する。受信機コントローラ53はCPU、ROM及びRAMを含むマイクロコンピュータ等よりなり、RF受信回路51からのデータに基づき、発信元の送信機3に対応するタイヤ5の内部空気圧及び内部温度を把握する。
【0026】
受信機コントローラ53はまた、前記内部空気圧及び内部温度に関する情報等を表示器54に表示させる。表示器54は、車室内等、車両1の搭乗者の視認範囲に配置される。
受信機コントローラ53はさらに、内部空気圧及び内部温度の異常を警報器(報知器)55にて報知させる。警報器55としては、例えば、異常を音によって報知する装置や、異常を光によって報知する装置が適用される。なお、タイヤ5の内部空気圧及び内部温度の異常を、報知器としての表示器54に表示させてもよい。
【0027】
前記受信機4はさらに、設定キー56及び測定キー57を含む各種入力キーを備えている。これら設定キー56及び測定キー57の機能については後述する。また、受信機コントローラ53は図1に示す前記ABSコントローラ110と相互通信可能に接続されている。
【0028】
本願発明者は、タイヤ5の内部空気圧が車両1の積載量の変化に対して殆ど変化しない一方、タイヤ5の動半径が車両1の積載量の変化に対してほぼ比例して変化するとともにタイヤ5の内部空気圧の変化に対してほぼ比例して変化することを見出した。そこで本実施形態では、前記ABS100及び前記タイヤ状態監視装置200を用いてタイヤ5の動半径及び内部空気圧を検出し、この動半径及び内部空気圧に基づき車両1の積載量を検出するようにしている。本実施形態において、前記ABS100及び前記タイヤ状態監視装置200は車両積載量検出装置を構成し、ABSコントローラ110及び受信機コントローラ53は積載量算出部を構成する。
【0029】
以下に、ABS100及びタイヤ状態監視装置200を用いて車両1の積載量を検出する手順について、図5〜図8に従って説明する。
図5及び図6は、積載量の検出に際して用いられる積載量判定マップ(図7参照)を作成するための手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す手順は、前記受信機4に設けられた前記設定キー56が操作されるのに伴い開始される。
【0030】
図5に示すように、先ずステップS101において、受信機コントローラ53は、各送信機3からの受信信号に基づき、各タイヤ5の内部空気圧及び内部温度を読み込む。次にステップS102において、受信機コントローラ53は読み込んだ空気圧が設定値(設定空気圧)であるか否か判定する。本実施形態において、設定値は例えば175kPa、250kPa及び325kPaの何れかである。250kPaはタイヤ5の基準空気圧であり、175kPaはその基準空気圧より30%高い空気圧、325kPaは基準空気圧より30%低い空気圧である。作業者は、各タイヤ5の内部空気圧が設定値となるように、各タイヤ5の内部空気圧を調整する。なお、ここでは各タイヤ5の内部空気圧が先ず175kPaに調整されたものとする。
【0031】
各タイヤ5の内部空気圧が設定値であると判定された場合、ステップS103において、受信機コントローラ53は読み込んだ前記各内部空気圧P1(ゲージ圧)を、ボイル・シャルルの法則に基づく以下の式に従い、標準温度T0(例えば20℃)での圧力Pk(ゲージ圧)、すなわち標準空気圧Pkに換算する。以下の式において、P0は大気圧、T1はステップS101で読み込んだ各内部温度である。
【0032】
(P1+P0)/(T1+273)=(Pk+P0)/(T0+273)
Pk=(P1+P0)×(T0+273)/(T1+273)−P0
各タイヤ5についての標準空気圧Pkを算出した後、ステップS104において、作業者は所定重量の積載物を車両1に搭載する。本実施形態において、所定重量(積載量)は0kg、100kg、200kg及び300kgの何れかである。なお、ここでは0kgの積載物が車両1に搭載された、すなわち積載物が車両1に搭載されなかったものとする。
【0033】
続くステップS105において、ABSコントローラ110は車両1の走行が開始され
たか否かを判定する。ABSコントローラ110は、例えば、各回転センサユニット140から電圧信号(図2(b)参照)の入力が開始されたときに、車両1の走行が開始されたと判定する。
【0034】
車両1の走行開始を判定すると、ステップS106において、ABSコントローラ110は前記各回転センサユニット140からの電圧信号に基づき、各タイヤ5に対応するパルス信号(図2(c)参照)の数をカウントする。ABSコントローラ110は、ステップS107において、車両1が所定距離D走行したか否かを判定し、車両1が所定距離D(例えば200m)走行するまで、パルス信号の数のカウントを継続する。なお、車両1は平坦な路面を低速(例えば2km/h)で走行するのが好ましい。
【0035】
前記ABSコントローラ110は、例えば運転者が車両1を実際に所定距離Dだけ走行させて停止させるのに伴い各回転センサユニット140から電圧信号の入力が停止されたときに、車両1が所定距離D走行したと判定する。この所定距離Dは車両1に設けられたトリップメータ上の距離ではなく、実際の距離である。或いは、GPSを備えたカーナビゲーションシステムが車両1に搭載されている場合には、GPSを通じて検出される車両1の移動距離に基づき、車両1が所定距離D走行したか否かを判定するようにしてもよい。
【0036】
車両1が所定距離D走行したことを判定すると、ABSコントローラ110は各タイヤ5に対応するパルス信号の数(以下、パルス数Ncとする)を受信機コントローラ53に伝達し、従ってステップS108において、受信機コントローラ53は各タイヤ5に対応するパルス数Ncを読み込む。このパルス数Ncは、車両1が所定距離D走行する間におけるホイール2の回転量(つまり、タイヤ5の回転量)に相当する。
【0037】
続くステップS109において、受信機コントローラ53は、前記所定距離D及び前記パルス数Ncに基づき、以下の式を用いて各タイヤ5の動半径rを算出する。以下の式において、Nは回転センサユニット140におけるセンサロータ140aの歯の数であり、Nc/Nは車両1が所定距離D走行する間における各センサロータ140aの回転回数(言い換えれば、各タイヤ5の回転回数)である。
【0038】
(Nc/N)×2πr=D
r=(D×N)/(2π×Nc)
続く図6のステップS110において、受信機コントローラ53は現在の設定空気圧での積載量と各タイヤ5の動半径rとの関係をRAMに記憶する。例えば、現在の設定空気圧が175kPaであり、積載物の重量(積載量)が0kgである場合、0kgの値と各タイヤ5の動半径rの値とが175kPaの設定空気圧(正確には175kPaを標準空気圧Pkに変換した値)に関連づけられて記憶される。
【0039】
次にステップS111において、受信機コントローラ53は、現在の設定空気圧でのデータの取り込みが完了したか否かを判定する。つまり、例えば現在の設定空気圧が175kPaである場合、この175kPaの設定空気圧について、0kg、100kg、200kg及び300kgという全ての積載量に対応する動半径rのデータが取得されたか否かが判定される。
【0040】
現在の設定空気圧でのデータの取り込みが完了していない場合、図5のステップS104に戻って異なる重量の積載物が車両1に搭載され、ステップS105〜ステップS111の処理が再度行われる。このようにして、現在の設定空気圧について、0kg、100kg、200kg及び300kgという全ての積載量に対応する動半径rのデータが取得されるまで、ステップS104〜ステップS111の処理が繰り返される。
【0041】
上記ステップS111において現在の設定空気圧でのデータの取り込みが完了したと判定した場合、受信機コントローラ53は図6のステップS112において、全データの取り込みが完了したか否かを判定する。つまり、0kg、100kg、200kg及び300kgという全ての積載量に対応する動半径rのデータが、175kPa、250kPa及び325kPaという全ての設定空気圧のそれぞれについて取得されたか否かが判定される。
【0042】
全データの取り込みが完了していない場合、図5のステップS101に戻って各タイヤ5の内部空気圧が異なる設定空気圧に調整される。そしてこの異なる設定空気圧について、前述したのと同様の処理が行われる。
【0043】
全データの取り込みが完了した場合、図6のステップS113において、受信機コントローラ53は、RAMに記憶された取得データに基づき図7に示すような積載量判定マップを作成するとともに、これをRAMに記憶し、本手順を終了する。図7に示すように、積載量判定データとしての積載量判定マップには、175kPa、250kPa及び325kPaという設定空気圧(正確には、設定空気圧を基準空気圧Pkに変換した値)のそれぞれについて、積載量と動半径rとの関係が設定される。なお、この積載量判定マップは、全てのタイヤ5それぞれに対応する複数のマップとして作成することもできるし、全タイヤ5の動半径rの平均値を示す単一のマップとして作成することもできる。
【0044】
図8は、上記のようにして作成された積載量判定マップを用いて車両1の積載量を検出するための手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す手順は、前記受信機4に設けられた前記測定キー57が操作されるのに伴い開始される。
【0045】
先ずステップS201において、受信機コントローラ53は、各送信機3からの受信信号に基づき、各タイヤ5の内部空気圧及び内部温度を読み込む。次にステップS202において、受信機コントローラ53は、図5の前記ステップS103での処理と同様にして、読み込んだ各内部空気圧を、標準温度(例えば20℃)での圧力、すなわち標準空気圧に換算する。
【0046】
続くステップS203において、受信機コントローラ53は、換算後の空気圧、すなわち標準空気圧が基準範囲内であるか否かを判定する。基準範囲は、例えば、図5の前記ステップS102で説明した設定空気圧の範囲、つまり175kPaから325kPaまでの範囲である。換算後の空気圧が基準範囲から外れている場合、受信機コントローラ53はステップS204において、表示器54及び警報器55の少なくとも一方を通じて作業者に警告を行い、本手順を終了する。この場合、作業者は、各タイヤ5の内部空気圧を調整した後、測定キー57を再度操作して図8の手順を再開させる。
【0047】
一方、換算後の空気圧が基準範囲内である場合、ABSコントローラ110はステップS205において車両1の走行が開始されたか否かを判定する。なお、ステップS205〜ステップS209の処理は図5の前記ステップS105〜ステップS109の処理と同様なので、その説明を省略する。
【0048】
ステップS209において各タイヤ5の動半径rを算出した後、受信機コントローラ53はステップS210において、図7の積載量判定マップを用い、例えば補間演算等を通じて車両1の積載量を算出する。例えば、ステップS202で算出された全タイヤ5の換算後の空気圧の平均値と、ステップS209で算出された全タイヤ5の動半径rの平均値とに基づき、全タイヤ5の動半径rの平均値を示す単一の積載量判定マップを用い、車両1の積載量が算出される。ステップS202で算出された全タイヤ5の換算後の空気圧の
平均値が、図7の積載量判定マップ上の3つの特性線に対応する空気圧値と異なる場合には、その異なる空気圧値に対応する積載量と動半径rとの関係が、マップ上の3つの特性線を用いた補間演算等を通じて求められる。
【0049】
なお、全てのタイヤ5それぞれに対応する複数の積載量判定マップを作成した場合、ステップS202で算出された各タイヤ5の換算後の空気圧と、ステップS209で算出された各タイヤ5の動半径rとに基づき、各タイヤ5に対応する積載量判定マップを用いて、車両1に対する積載物の偏り具合を判定することも可能となる。
【0050】
続くステップS210において、受信機コントローラ53は算出された積載量の値を前記表示器54に表示させる。ステップS211において、受信機コントローラ53は算出された積載量が車両1に対して定められた基準値を超過しているか否かを判定する。積載量が基準値を超過している場合、受信機コントローラ53はステップS213において、表示器54及び警報器55の少なくとも一方を通じて作業者に警告を行い、本手順を終了する。積載量が基準値を超過していない場合、受信機コントローラ53は本手順をそのまま終了する。
【0051】
以上詳述した本実施形態は、下記の利点を有する。
(1) 本実施形態では、ホイール2に対する制動力を制御するABS100とタイヤ5の内部空気圧を検出するタイヤ状態監視装置200とを備えた車両1において、このABS100とタイヤ状態監視装置200とを用いてタイヤ5の動半径及び内部空気圧を検出し、この動半径及び内部空気圧に基づき車両1の積載量を求めるようにしている。そのため、積載量を検出するために荷重センサ等の部品を新たに追加するという必要がなく、構成の簡素化及び低コスト化を図りつつ、積載量を正確に検出することができる。
【0052】
(2) 回転センサユニット140から得られる交流電圧信号(回転信号)に基づき、車両1が所定距離D走行する間におけるパルス信号の数Nc(タイヤ5の回転量)を求めるとともに、この所定距離D及びパルス信号の数Ncに基づきタイヤ5の動半径を求めるようにしている。これにより、タイヤ5の動半径を容易且つ正確に求めることができる。
【0053】
(3) 受信機コントローラ53は、タイヤ5の内部空気圧とタイヤ5の動半径と車両1の積載量との関係を設定した積載量判定マップ(積載量判定データ)を予め記憶している。そして、積載物を搭載した車両1におけるタイヤ5の内部空気圧とタイヤ5の動半径とを求め、それらに基づき、前記積載量判定マップを用いて車両1の積載量を求めるようにしている。このような積載量判定マップを予め準備しておくことにより、積載量を容易且つ正確に求めることができる。
【0054】
(4) 前記積載量判定マップには、異なる複数の内部空気圧のそれぞれに対応して、タイヤ5の動半径と車両1の積載量との関係が設定されている。このような積載量判定マップを用いることにより、タイヤ5の内部空気圧に対する動半径及び積載量の関係を一層正確に把握することが可能となり、積載量を一層正確に求めることができる。
【0055】
(5) 前記積載量判定マップにおいて、タイヤ5の内部空気圧は所定の標準温度での圧力として設定されている。そして、タイヤ状態監視装置200によって検出されたタイヤ5の内部空気圧及び内部温度に基づき、検出された内部空気圧を前記標準温度での圧力に換算するとともに、この換算後の圧力を用いて積載量を求めるようにしている。そのため、タイヤ5の内部温度に起因する内部空気圧の変化の影響を排除して、積載量を一層正確に求めることができる。
【0056】
なお、上記実施形態は以下のように変更することも可能である。
・積載量判定マップにおいて、異なる複数の内部空気圧のそれぞれに対応してタイヤ5の動半径と車両1の積載量との関係を設定するのに代えて、ある特定の内部空気圧にのみ対応してタイヤ5の動半径と車両1の積載量との関係を設定してもよい。
【0057】
・積載量判定データとして、図7に示すような積載量判定マップに代えて、タイヤ5の内部空気圧とタイヤ5の動半径と車両1の積載量との関係を設定した関係式を用いてもよい。
【0058】
・積載量判定データはシミュレーションによって作成するようにしてもよい。
・積載量の検出に係る処理を、ABSコントローラ110のみで行うようにしてもよいし、受信機コントローラ53のみで行うようにしてもよいし、これらのコントローラ110,53が適宜分担して行うようにしてもよいし、或いは、これらのコントローラ110,53とは別に設けられた車載ECUで行うようにしてもよい。
【0059】
上記実施形態から把握される技術的思想について、以下に記載する。
(1) 前記回転検出器は、前記ホイールと一体回転するセンサロータと、センサロータに対向配置されたピックアップコイルとを含み、前記センサロータの外周面には複数の歯が等角度間隔置きに設けられている請求項1に記載の車両積載量検出装置。
【符号の説明】
【0060】
1…車両、2…ホイール、5…タイヤ、53…積載量算出部を構成する受信機コントローラ、100…ABS、110…ABSコントローラ、140…回転検出器としての回転センサユニット、200…タイヤ状態監視装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のホイールに装着されたタイヤの内部空気圧を検出するタイヤ状態監視装置と、
前記ホイールに対する制動力を制御するアンチロック・ブレーキシステムであって、前記ホイールの回転速度に比例した周波数を有する回転信号を発生する回転検出器を備えるアンチロック・ブレーキシステムと、
前記回転信号に基づき前記タイヤの動半径を求めるとともに、この動半径と、前記タイヤ状態監視装置によって検出されたタイヤの内部空気圧とに基づき車両の積載量を求める積載量算出部と、
を備える車両積載量検出装置。
【請求項2】
前記積載量算出部は、前記回転信号に基づき、車両が所定距離走行する間におけるタイヤの回転量を求めるとともに、この所定距離及びタイヤの回転量に基づき前記タイヤの動半径を求める請求項1に記載の車両積載量検出装置。
【請求項3】
前記積載量算出部は、タイヤの内部空気圧とタイヤの動半径と車両の積載量との関係を設定した積載量判定データを予め記憶しており、同積載量算出部は、積載物を搭載した車両におけるタイヤの内部空気圧とタイヤの動半径とに基づき、前記積載量判定データを用いて車両の積載量を求める請求項1又は2に記載の車両積載量検出装置。
【請求項4】
前記積載量判定データには、異なる複数の内部空気圧のそれぞれに対応して、タイヤの動半径と車両の積載量との関係が設定されている請求項3に記載の車両積載量検出装置。
【請求項5】
前記積載量判定データにおいて、タイヤの内部空気圧は所定の標準温度での圧力として設定されており、
前記タイヤ状態監視装置は、前記タイヤの内部空気及びタイヤの内部温度の双方を検出するように構成され、
前記積載量算出部は、前記タイヤ状態監視装置によって検出されたタイヤの内部空気圧及びタイヤの内部温度に基づき、検出されたタイヤの内部空気圧を前記標準温度での圧力に換算するとともに、この換算後の圧力を用いて車両の積載量を求める請求項3又は4に記載の車両積載量検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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