説明

車両空調用蓄熱タンク

【課題】省エネルギーを実現可能としつつ、車室内を効果的に空調可能な車両空調用蓄熱タンクを提供する。
【解決手段】本発明の車両空調用蓄熱タンク3は、水を貯留可能な貯留室7と、貯留室7内に水を流入させる流入口9と、貯留室7内の水を流出させる流出口11とが形成されている。この貯留室7は、流路面積S1の本体部7aと、流出口11に向かって形成され、流路面積S1より小さい流路面積S2の絞り部7bとを有している。絞り部7bには、水を加熱可能な第1ヒータユニット19が設けられている。この蓄熱タンク3では、絞り部7bにより、流出口11に向かって流れる水に乱流が生じる。この乱流により、絞り部7b内の水は好適に混合され、この水は効果的に加熱された状態で流出口11から流出することとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両空調用蓄熱タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図1に従来の空調用蓄熱タンクが開示されている。この空調用蓄熱タンクは、熱交換媒体を貯留可能な貯留室と、貯留室内に熱交換媒体を流入させる流入口と、貯留室内の熱交換媒体を流出させる流出口とが形成されている。この空調用蓄熱タンクには、流入口近傍の貯留室内に第1電熱ヒータが設けられている。また、この空調用蓄熱タンクには、流出口近傍の貯留室内に第2電熱ヒータが設けられている。また、この空調用蓄熱タンクは、熱交換器としてのヒータコアと接続されて空調装置を構成している。
【0003】
この空調用蓄熱タンクは、流入口から流入した熱交換媒体を第1電熱ヒータによって加熱することに加え、貯留室内の熱交換媒体の熱量が不足する場合に、第2電熱ヒータによっても熱交換媒体を加熱することが可能となっている。このため、この空調用蓄熱タンクを備えた空調装置では、第1、2電熱ヒータによって加熱された熱交換媒体とヒータコア周りの空気との間で熱交換を行うことで、室内等を暖房することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−180126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の空調用蓄熱タンクでは、貯留室内において、熱交換媒体が層流の状態で流れる流出口近傍に第2電熱ヒータを設けているため、熱交換媒体が互いに混合され難く、熱交換媒体が第2電熱ヒータによって十分に加熱されないまま流出口から流出するおそれがある。このため、この空調用蓄熱タンクを車両空調用蓄熱タンクとして採用し、車両用空調装置を構成しても、このような車両用空調装置では、省エネルギーの下では車室内を十分に空調し得ない。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、省エネルギーを実現可能としつつ、車室内を効果的に空調可能な車両空調用蓄熱タンクを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両空調用蓄熱タンクは、熱交換媒体を貯留可能な貯留室と、該貯留室内の該熱交換媒体を流出させる流出口とを備える車両空調用蓄熱タンクにおいて、
前記貯留室は下流が前記流出口となる絞り部を有し、該絞り部には該熱交換媒体を加熱又は冷却可能な主熱供給手段が設けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
本発明の車両空調用蓄熱タンクでは、絞り部により、貯留室から流出口に向かって流れる熱交換媒体には乱流が生じることとなる。そして、その絞り部を流れる熱交換媒体が主熱供給手段によって加熱又は冷却される。このため、流出口に流れる熱交換媒体は、乱流によって好適に混合され、効果的に加熱又は冷却された状態で流出口から流出することとなる。
【0009】
また、この車両空調用蓄熱タンクでは、熱交換媒体は、流出口から流出する際に絞り部を必ず流れることとなる。このため、この車両空調用蓄熱タンクでは、流入口から流出口への熱交換媒体の短絡(ショートサーキット)が生じても、熱交換媒体は確実に加熱又は冷却された状態で流出口から流出することとなる。
【0010】
したがって、車両空調用蓄熱タンクによれば、省エネルギーを実現可能としつつ、車室内を効果的に空調可能である。
【0011】
熱交換媒体は、主熱供給手段が供給する熱量(正又は負の熱量)や車両空調用蓄熱タンクが使用される環境等の条件に応じて、適宜、最適なものが採用される。採用される熱交換媒体としては、例えば、水の他、不凍液等の溶液が挙げられる。また、熱交換媒体は水性に限らず、シリコン油等の油性のものでも良い。
【0012】
この車両空調用蓄熱タンクに設けられる主熱供給手段としては、例えば、電熱ヒータ、グロープラグ等の発熱装置を採用することができる。また、エンジン、モータ等の駆動装置の発熱を主熱供給手段として採用することもできる。主熱供給手段として、電熱ヒータ、グロープラグ等を採用すれば、エンジンやモータ等の発熱によって熱交換媒体を加熱する場合よりも、熱交換媒体の加熱温度の調整が容易となる。また、主熱供給手段としてペルチェ素子を採用することもできる。ペルチェ素子を採用した場合には、熱交換媒体の加熱の他に冷却も可能となる。
【0013】
この車両空調用蓄熱タンクには、貯留室内の前記熱交換媒体を加熱又は冷却可能な副熱供給手段が設けられていることが好ましい(請求項2)。この場合には、副熱供給手段によっても熱交換媒体を加熱又は冷却できる。このため、この車両空調用蓄熱タンクでは、絞り部の上流から熱交換媒体を加熱又は冷却することで、流出口から流出する熱交換媒体をより効果的に加熱又は冷却できる。なお、主熱供給手段と副熱供給手段とは、水の加熱又は冷却温度、加熱又は冷却時間等の条件により、同時に使用することも可能であり、主熱供給手段と副熱供給手段とを別々に使用することも可能である。なお、副熱供給手段は主熱源と同様のものであり得る。
【0014】
この車両空調用蓄熱タンクにおいて、絞り部の上流の貯留室は絞り部よりも流路面積が大きい本体部とされていることが好ましい(請求項3)。この場合、本体部において、熱交換媒体が層流の状態で小さな流路抵抗の下で流れるため、ポンプ等の動力損失が生じ難くなる。
【0015】
また、この車両空調用蓄熱タンクは、貯留室内に熱交換媒体を流入させる流入口を備え得る。そして、貯留室には、流入口から絞り部まで熱交換媒体の短絡を防止する短絡防止手段が設けられていることが好ましい(請求項4)。この場合、流入口から本体部内に流入した熱交換媒体は、短絡が生じることなく絞り部に至ることとなる。これにより、この車両空調用蓄熱タンクでは、本体部内の熱交換媒体と流入口から新たに流入した熱交換媒体とが不必要に混合してしまうことを防止できる。このため、この車両空調用蓄熱タンクでは、流出口から流出する熱交換媒体をより効果的に加熱又は冷却できる。また、車両空調用蓄熱タンクに副熱供給手段が設けられている場合には、短絡防止手段によって副熱供給手段の加熱又は冷却作用をより高めることが可能となる。
【0016】
短絡防止手段としては、任意の枚数からなる仕切板を採用することができる。この際、仕切板は本体部の高さ方向又は水平方向のいずれの方向に設けられても良く、複数枚の仕切板を高さ方向及び水平方向に組み合わせて設けられることも良い。また、短絡防手段として、本体部内にとぐろを巻くような配管を採用することもできる。
【0017】
この車両空調用蓄熱タンクには、流入口と流出口とを貯留室をバイパスして連通するバイパス流路と、バイパス流路内の熱交換媒体を加熱又は冷却可能なバイパス流路用熱供給手段と、熱交換媒体を貯留室又はバイパス流路に流通させる切替弁とが設けられているが好ましい(請求項5)。
【0018】
この場合、車両空調用蓄熱タンクに切替弁が設けられることにより、流入口に流入した熱交換媒体が貯留室を経て流出口から流出する場合と、バイパス流路を流通し、流入口と流出口との間で熱交換媒体が流れる場合とを切り替えることが可能となる。後者の場合、貯留室内の熱交換媒体は、流出口から流出することなく、貯留室内に留められた状態になる。このため、この車両空調用蓄熱タンクでは、貯留室内の熱交換媒体がより十分に加熱又は冷却されることとなる。また、この車両空調用蓄熱タンクでは、バイパス流路用熱供給手段が設けられることにより、バイパス流路内の熱交換媒体を加熱又は冷却することが可能となる他、バイパス流路を流れる熱交換媒体と貯留室内の熱交換媒体との間で温度差を設けることも可能となる。このため、例えば、貯留室内の熱交換媒体については加熱を行う一方、バイパス流路内の熱交換媒体は冷却を行うという使用も可能となる。
【0019】
切替弁としては、一つの流路の開閉のみを行う開閉弁を採用することができる。また、流路を他の流路に分岐可能な分岐弁を採用することもできる。分岐弁としては、例えば、三つの流路に接続され、二つの流路を連通しつつ、一つの流路を非連通とする三方弁を採用することができる。
【0020】
この車両空調用蓄熱タンクは、絞り部が形成されたことによって生じた凹部に前記主熱供給手段が配置されていることが好ましい(請求項6)。この場合、車両空調用蓄熱タンクの省スペース化を実現できる。
【0021】
この車両空調用蓄熱タンクにおいて、主熱供給手段は棒状をなし、絞り部における熱交換媒体の流れる方向に対して垂直方向に延びていることが好ましい(請求項7)。この場合、絞り部を流れる熱交換媒体が棒状の主熱供給手段に衝突することで、絞り部でより多く乱流を生じさせ易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の車両用空調装置の摸式構造図である。
【図2】実施例1に係り、車両空調用蓄熱タンクの斜視図である。
【図3】実施例1に係り、車両空調用蓄熱タンクにおけるA−A’方向の垂直断面図である。
【図4】実施例1に係り、車両空調用蓄熱タンクにおけるB−B’方向の水平断面図である。
【図5】実施例2の車両用空調装置の摸式構造図である。
【図6】実施例2に係り、流入口及び流出口と貯留室とが連通した状態を示す車両空調用蓄熱タンクの垂直断面図である。
【図7】実施例2に係り、流入口と流出口とが連通した状態を示す車両空調用蓄熱タンクの垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(実施例1)
実施例1の車両用空調装置はハイブリッド車又は電気自動車に搭載される。この車両用空調装置は、図1に示すように、車両空調用蓄熱タンクとしての蓄熱タンク3と車内用熱交換器としてのヒータコア5とを備えている。
【0025】
図2に示すように、この蓄熱タンク3の外形は略直方体形状である。この蓄熱タンク3は、熱交換媒体としての水を貯留可能な貯留室7と、貯留室7内に水を流入させる流入口9と、貯留室7内の水を流出させる流出口11とが形成されている。また、この蓄熱タンク3の周囲は図示しない断熱材によって覆われている。
【0026】
図3に示すように、貯留室7は、流入口9と連通する本体部7aと、本体部7aの下流と連通し、流出口11に向かって形成された絞り部7bとからなる。
【0027】
蓄熱タンク3内には、高さ方向に複数枚の仕切板13a〜13gがそれぞれ平行かつ違い違いに設けられている。本体部7a内には、仕切板13a〜13gで上下が挟まれるか、仕切板13a〜13gと蓄熱タンク3の内面とで仕切られることにより流路15が形成されている。流路15は一方通行で水を流れさせており、本体部7a内の流路15の流路面積S1は上流から下流まで等しくされている。各仕切板13a〜13gが短絡防止手段に相当する。なお、蓄熱タンク3内の各仕切板13a〜13gの配置を変更することで、本体部7a内の流路15の流路面積S1を変化させることもできる。
【0028】
図4に示すように、貯留室7の上端に位置する流路15には、蓄熱タンク3の一方の側壁3bが他方の側壁3cに徐々に近づいた後、側壁3cと平行に延びることにより、流路面積S1より小さい流路面積S2の絞り部7bが形成されている。蓄熱タンク3は絞り部7bが形成されたことによって凹部3dを生じており、この凹部3dに主熱供給手段としての第1ヒータユニット19が配置されている。
【0029】
第1ヒータユニット19は複数本のグロープラグ21a〜21dを有している。第1ヒータユニット19は、凹部3dに各グロープラグ21a〜21dのターミナルを露出させ、絞り部7b内に各グロープラグ21a〜21dの円柱状のセラミックヒータを位置させるように、側壁3bに固定されている。この蓄熱タンク3では、凹部3dに配置可能な大きさで規格化された第1ヒータユニット19を採用することで、第1ヒータユニット19を容易に交換可能となっている。
【0030】
各グロープラグ21a〜21dは、各ターミナルが図示しない制御装置にそれぞれ電気的に接続され、個別に通電可能となっている。なお、ヒータユニット19におけるグロープラグの本数は必要に応じて適宜変更可能である。また、各グロープラグ21a〜21dの構成は周知のグロープラグと同様であり、構成の詳細な説明は省略する。
【0031】
図1に示すように、ヒータコア5には流出口5aと流入口5bとが形成されている。このヒータコア5の近傍には電動ブロワ5cが設けられている。電動ブロワ5cは、図示しない制御装置に電気的に接続されている。電動ブロワ5cを駆動すれば、ヒータコア5の周りの空気が車室内に供給される。なお、ヒータコア5にフィン等を設けてヒータコア5の表面積を大きくすることも可能である。
【0032】
蓄熱タンク3の流出口11とヒータコア5の流入口5bとは配管23によって接続されている。また、蓄熱タンク3の流入口9とヒータコア5の流出口5aとは配管25によって接続されている。配管23には、蓄熱タンク3とヒータコア5との間において、図1に示す矢印方向で水を循環させるポンプP1が設けられている。ポンプP1は、図示しない制御装置に電気的に接続されている。なお、ポンプP1は、配管25側に設けられても良い。
【0033】
以上のように構成された蓄熱タンク3では、図4に示すように、貯留室7の絞り部7bが流出口11に向かって、流路15の流路面積S1を流路面積S2に絞っているため、本体部7a内から流出口11に向かって流れる水には乱流が生じこととなる。そして、その絞り部7b内の水が第1ヒータユニット19によって加熱される。このため、絞り部7bから流出口11に流れる水は、乱流によって好適に混合され、効果的に加熱された状態で流出口11から流出することとなる。
【0034】
また、この蓄熱タンク3では、図3に示すように、流入口9から本体部7a内に流入された水が流路15によって一方通行で絞り部7bに至ることとなる。このため、この蓄熱タンク3では、流入口9から流出口11への水の短絡が生じない。また、この流路15は、絞り部7bを除き、等しい流路面積S1を有している。このため、貯留室7の本体部7a内において、水が層流の状態で小さな流路抵抗の下で流れることとなる。このため、ポンプP1の動力損失が生じ難い。そして、この蓄熱タンク3では、水は、流出口11から流出する際、絞り部7bを必ず流れることとなる。このため、この蓄熱タンク3では、水は確実に加熱された状態で流出口9から流出することとなる。
【0035】
さらに、この蓄熱タンク3では、流路15により本体部7a内の水と流入口9から新たに流入した水とが不必要に混合してしまうことを防止できる。このため、この蓄熱タンク3では、流出口11から流出する水を効果的に加熱できる。
【0036】
これらのため、この蓄熱タンク3を備えた車両用空調装置では、図1に示すように、ヒータコア5内に好適に加熱された状態の水を流入させることが可能となる。このため、電動ブロワ5cを作動させることにより、このヒータコア5は、好適な温度の空気を車室内に供給することが可能となる。
【0037】
したがって、この蓄熱タンク3を備えた車両用空調装置によれば、省エネルギーを実現可能としつつ、車室内を効果的に暖房可能である。
【0038】
特に、この蓄熱タンク3では、図4に示すように、第1ヒータユニット19を採用している。このため、制御装置が各グロープラグ21a〜21dに対する電力の供給を制御することで、水の加熱温度の調整が容易となっている。そして、各グロープラグ21a〜21dにおける円柱状のセラミックヒータが絞り部7b内に突出した状態となっている。このように、各セラミックヒータが円柱状であることから、絞り部7b内を流れる水は、各セラミックヒータ間をさほどの抵抗なく流れることとなる。一方、各セラミックヒータは水の流れる方向に対して垂直方向に延びるように配置されているため、絞り部7b内の水は、各セラミックヒータに衝突することで、より多く乱流を生じさせ易くなっており、この乱流によって、水は、より好適に混合され、効果的に加熱されるようになっている。
【0039】
さらに、この蓄熱タンク3では、絞り部7bが形成されたことによって生じた凹部3dに第1ヒータユニット19が配置されているため、蓄熱タンク3の省スペース化が実現されている。
【0040】
(実施例2)
実施例2の車両用空調装置は、図5に示すように、蓄熱タンク3に替えて蓄熱タンク30が備えられている。この車両用空調装置の他の構成は実施例1の車両用空調装置と同様である。
【0041】
蓄熱タンク30は、図6に示すように、流入口9と流出口11とに接続するバイパス流路31を備えている。このバイパス流路31には、バイパス流路用熱供給手段としてのペルチェ素子33が設けられている。また、パイパス流路31と流出口11の接続箇所には、切替弁としての三方弁35が設けられている。ペルチェ素子33及び三方弁35は、図示しない制御装置に電気的に接続されている。なお、三方弁35は、パイパス流路31と流入口9との接続箇所側に設けることもできる。また、三方弁35に替えて、開閉弁をバイパス流路31に設けることもできる。
【0042】
また、この蓄熱タンク30には、上記の第1ヒータユニット19の他に、本体部7a内の流路15にも副熱供給手段としての第2ヒータユニット37a〜37gが設けられている。第1ヒータユニット19と第2ヒータユニット37a〜37gとは同一の構成である。また、第2ヒータユニット37a〜37gが有する各グロープラグ(符号なし)の各ターミナルは、図示しない制御装置に電気的に接続されている。なお、第2ヒータユニット37a〜37g及びグロープラグの個数は、必要に応じて適宜変更可能である。また、流路15の上流側(最下段)に第2ヒータユニット37a〜37gを並べて配置させても良い。他の構成は蓄熱タンク3と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成の詳細な説明を省略する。
【0043】
以上のように構成された蓄熱タンク30では、図6に示すように、三方弁35を制御し、バイパス流路31と流出口11とを非連通とすることで、流入口9から流入した水は、貯留室7を経て流出口11から流出することとなる。この場合、第1ヒータユニット19に加え、第2ヒータユニット37a〜37gによっても水は加熱される。このため、この蓄熱タンク30では、本体部7a内において上流となる位置から順に第2ヒータユニット37a〜37g及び第1ヒータユニット19によって水を加熱することで、流出口11から流出する水をより効果的に加熱することができる。なお、第1、2ヒータユニット19、37a〜37gは、水の加熱温度、加熱時間等の条件により、同時に使用することも可能であり、第1ヒータユニット19と第2ヒータユニット37a〜37gとを別々に使用することも可能である。
【0044】
一方、蓄熱タンク30では、図7に示すように、三方弁35を制御し、バイパス流路31と流出口11とを連通させることで、貯留室7を経ずに流入口9と流出口11との間で水を流通させることが可能となる。この場合、貯留室7内の水は、流出口11から流出することなく、貯留室7内に留められた状態となる。このため、この蓄熱タンク30では、貯留室7内の水が第1、2ヒータコア19、37a〜37gによって、十分に加熱されることとなる。
【0045】
また、この蓄熱タンク30では、バイパス流路31にペルチェ素子33が設けられており、制御装置により、このペルチェ素子33の水と接する面が放熱面とされることで、バイパス流路31内の水を加熱することが可能となっている。また、この場合、制御装置が第1、2ヒータユニット19、37a〜37g及びペルチェ素子33の各制御を行うことで、バイパス流路31を流れる水と貯留室7内の水との間で温度差を設けることも可能となる。
【0046】
これらにより、この蓄熱タンク30を備えた車両用空調装置では、実施例1の車両用空調装置の作用効果に加えて、以下の作用効果を有する。
【0047】
すなわち、この車両用空調装置では、車両の始動前又は始動直後において、図6に示すように三方弁35を制御することで、高温で貯留室7内に貯留された水の熱を車室内に供給し、車室内を急速に暖房することができる。そして、車室内が暖房された後は、図7に示すように三方弁35を制御することで、貯留室7内に水を貯留させつつ、バイパス流路31により蓄熱タンク30とヒータコア5との間で水を循環させることが可能となる(図5中の矢印参照)。このため、ペルチェ素子33によって加熱された水の熱を車室内に供給することで、引き続き車室内を暖房することができる。この際、ペルチェ素子33は、車室内の室温を維持できる程度に水を加熱させれば足りるため、省エネルギーで車室内を暖房することができる。なお、貯留室7内の水は、次回の使用又はより高い暖房能力が求められる場合に備えてヒータユニット9、37a〜37gによって加熱される。
【0048】
また、この車両用空調装置では、上記のように、蓄熱タンク30のバイパス流路31にペルチェ素子33が設けられている。このため、制御装置がこのペルチェ素子33の水と接する面を吸熱面とする制御を行うことで、バイパス流路33内の水を冷却することが可能となっている。このため、この車両用空調装置では、車室内の暖房に加えて冷房も行うことが可能となっている。
【0049】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0050】
例えば、実施例1、2の車両用空調装置について、これらを車室内の冷房専用の装置として用いることもできる。この場合、主熱供給手段及び副熱供給手段は、負の熱量を供給可能なペルチェ素子等が採用される。また、この場合には、水に替えて不凍液を採用することで、車室内の冷房能力をより高くすることができる。
【0051】
また、蓄熱タンク3、30の貯留室7やバイパス流路31に水の温度を検知可能な検知手段を設け、制御装置は、この検知手段が検知した水の温度を基に第1、2ヒータユニット19、37a〜37g及びペルチェ素子33をそれぞれ作動させても良い。
【0052】
さらに、蓄熱タンク3、30について、仕切板13a〜13g等の短絡防止手段を設けない状態で構成することもできる。この場合には、蓄熱タンク3、30の製造が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、空調装置に用いる蓄熱タンクの他、エンジン、モータ等の暖気又は冷却回路に用いる蓄熱タンクとしても利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
7…貯留室
11…流出口
3…蓄熱タンク(車両空調用蓄熱タンク)
7b…絞り部
19、37a〜37g…ヒータユニット(19…主熱供給手段、37a〜37g…副熱供給手段)
S1、S2…流路面積
7a…本体部
9…流入口
13a〜13g…仕切板(短絡防止手段)
31…バイパス流路
33…ペルチェ素子(バイパス流路用熱供給手段)
35…三方弁(切替弁)
3d…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換媒体を貯留可能な貯留室と、該貯留室内の該熱交換媒体を流出させる流出口とを備える車両空調用蓄熱タンクにおいて、
前記貯留室は下流が前記流出口となる絞り部を有し、該絞り部には該熱交換媒体を加熱又は冷却可能な主熱供給手段が設けられていることを特徴とする車両空調用蓄熱タンク。
【請求項2】
前記貯留室内の前記熱交換媒体を加熱又は冷却可能な副熱供給手段が設けられている請求項1記載の車両空調用蓄熱タンク。
【請求項3】
前記絞り部の上流の前記貯留室は該絞り部よりも流路面積が大きい本体部とされている請求項1又は2記載の車両空調用蓄熱タンク。
【請求項4】
前記貯留室内に前記熱交換媒体を流入させる流入口を備え、
該貯留室には、前記流入口から前記絞り部まで前記熱交換媒体の短絡を防止する短絡防止手段が設けられている請求項1乃至3のいずれか1項記載の車両空調用蓄熱タンク。
【請求項5】
前記流入口と前記流出口とを前記貯留室をバイパスして連通するバイパス流路と、
該バイパス流路内の前記熱交換媒体を加熱又は冷却可能なバイパス流路用熱供給手段と、
該熱交換媒体を該貯留室又は該バイパス流路に流通させる切替弁とが設けられている請求項4記載の車両空調用蓄熱タンク。
【請求項6】
前記絞り部が形成されたことによって生じた凹部に前記主熱供給手段が配置されている請求項1乃至5のいずれか1項記載の車両空調用蓄熱タンク。
【請求項7】
前記主熱供給手段は棒状をなし、前記絞り部における前記熱交換媒体の流れる方向に対して垂直方向に延びている請求項1乃至6のいずれか1項記載の車両空調用蓄熱タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−195061(P2011−195061A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65334(P2010−65334)
【出願日】平成22年3月22日(2010.3.22)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】