説明

車両空調装置のための逆流熱交換器

【課題】取込室と排出室とを有する第1側面槽を備える車両空調装置のための逆流熱交換器を提供する。
【解決手段】第1側面槽102は、取込室106と流体が通過可能なように接続される取込口110と、排出室108と流体が通過可能なように接続される排出口112とを有する。排出口は、気泡を低減するために、第1側面槽の最上部に隣接して配置される。第2側面槽104は、第1側面槽から横方向に相隔てられている。第1セットの複数の管116は、第1側面槽の取込室を流体が通過可能なように第2側面槽に接続する。第2セットの複数の管118は、第2側面槽を第1側面槽の排出室に流体が通過可能なように接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両空調装置のための逆流熱交換器に関するものであり、より具体的には、熱交換器内の気泡の発生や気泡の大きさを小さく抑え、また、気泡の除去が容易になるように改良した逆流熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両空調装置用の逆流熱交換器は、通常、一対の相隔たる槽を有しており、その一対の相隔たる槽は、その一対の槽の間に延び、一対の槽を流体が通過可能なように接続する、一本一本が相隔てられた複数の管を有している。水や冷却液などの熱伝達流体が、その管を通じて相隔たる槽の間を流れる一方、空気流がその相隔たる管の間を流れる。熱伝達流体からの熱は、その相隔たる管の間を流れる空気流に伝達する。その熱は、適切な導管系統によって、車両のキャビンの選択した領域に向かうようにすることが出来る。その熱伝達流体は、取込口から熱交換器に第1高温で取り込まれ、(熱伝達流体の熱が、その近くを通る空気流に伝達した後)、排出口を通して第2低温で熱交換器から排出される。取込口と排出口の位置は、使用する熱交換器の型式(例えば、並流、逆流など)やある特定の空調装置内の熱交換器の配置方向(例えば、槽が隔てられた方向が水平方向か、垂直方向かなど)によって異なることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両空調装置の熱交換器における一つの課題は、熱交換器内に生じる気泡や空洞域の除去である。気泡や空洞域は、熱交換器の熱効率に悪影響を及ぼす可能性がある。もう一つの課題は、車両のレイアウトに関するものである。車両のレイアウトは、熱交換器の大きさ、熱交換器の方向や熱交換器の取込口や排出口の位置に影響を与える場合がある。気泡や空洞域に関する課題とある車両のデザインにおけるレイアウトの課題は、両立しないことが多い。例えば、ある特定のサイズの熱交換器を設計し、その熱交換器をある特定の位置にある方向で配置し、取込口と排出口をある特定の方向に向けるようにすると、その熱交換器は、気泡や空洞域を発生しやすくなってしまう場合がある。一方、気泡や空洞域に関する問題がほとんどない熱効率のよい熱交換器を設計すると、空調装置や車両内に配置する際のレイアウトの選択肢が大幅に制限されてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、車両空調装置のための改良逆流熱交換器である。より具体的には、請求項1に記載の逆流熱交換器は、取込室と排出室とを含む第1側面槽を有している。第1側面槽は、取込室と流体が通過可能なように接続された取込口と、排出室と流体が通過可能なように接続された排出口を有している。排出口は、気泡を低減させるために、第1側面槽の最上部に隣接して配置されている。第2側面槽は、第1側面槽から水平方向に隔てられている。第1セットの複数の管は、第1側面槽の取込室を第2側面槽に流体が通過可能なように接続している。第2セットの複数の管は、第2側面槽を第1側面槽の排出室に流体が通過可能なように接続している。
【0005】
請求項15に記載の発明は、車両空調装置用の改良ヒータコアである。より具体的には、請求項15に記載の改良ヒータコアは、取込排出槽と逆流槽とを含む一対の水平方向に相隔てられた槽を有している。取込排出槽には、その内部に取込室と排出室が設けられている。第1セットの複数の管は、一対の水平方向に相隔てられた槽の間に延び、取込排出槽の取込室から逆流槽への流路を画定している。第2セットの複数の管は、水平方向に相隔てられた槽の間に延び、逆流槽から取込排出槽の排出室への流路を画定している。排出室は、少なくともその一部が、取込室よりも高い位置に位置する。
【0006】
請求項20に記載の発明は、改良された車両用逆流熱交換器である。より具体的には、請求項20に記載の熱交換器は、取込口と、前記取込口に接続された取込室と、排出口と、排出口に接続された排出室とを有する取込排出槽を有している。逆流槽は、取込排出槽から横方向、水平方向に相隔てられ、逆流室を有する。複数の管が、取込室を逆流室に接続するとともに、逆流室を排出室に接続している。排出室は、基底部と高さ部を有する略L字型をしており、基底部は、前記取込室よりも高い位置に位置する取込排出槽の最上部を形成している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】従来の車両空調装置用の逆流熱交換器を垂直方向に配置した概略斜視図である。
【図2】蒸発器および熱交換器を備えた車両空調装置の概略断面図である。
【図3】従来の並流型熱交換器の概略斜視図である。
【図4】水平方向に配置された図3に記載の並流型熱交換器における温度表である。
【図5】図1に記載の熱交換器を水平配置にした際の概略斜視図である。
【図6】水平に配置された図5に記載の逆流熱交換器に対応する温度表である。
【図7】図5に記載の熱交換器の断面図であり、熱交換器内部に形成された気泡を図示している。
【図8】車両空調装置のための、取込排出槽、逆流槽とこれらの槽を流体が通過可能なように接続する複数の管を含む、水平方向に配置された改良熱交換器の概略斜視図である。
【図9】図8に記載の熱交換器の概略断面図である。
【図10】図8の視点Aから見た取込排出槽の概略斜視図であり、取込排出槽の一側面に設けられた複数の管ポートと、いくつかの模範的な管の分解図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面(一つ以上の模範的な実施形態を例示するためだけのものであり、図示されている実施形態に限定するものではない)を参照すると、図1は、従来の車両空調装置用の逆流熱交換器10を垂直方向に配置したものを示している。より具体的には、熱交換器10は、上側取込排出槽12と下側逆流槽14とを含む、垂直方向に相隔てられた一対の槽を有する。熱交換器10は、槽12、14の互いに対する向きから、垂直方向配置されているものである。つまり、槽12、14は、垂直方向において離間しているため、熱交換器10は、垂直方向配置である、ということである。上側槽12は、取込室16と排出室18を備えており、取込室16と排出室18は、セパレータ、つまり隔壁32によってお互いに隔てられている。上側槽12は、さらに、取込室16に流体が通過可能なように形成された取込口20と、排出室18から流体が通過可能なように液絡された排出口22を備えている。
【0009】
熱交換器10はさらに、槽12、14間に延設され、取込室16と取込口20から下側逆流槽14の逆流室28への流路26を画定する第1セットの複数の管24を備えている。第2セットの複数の管30は、槽12と14の間に延設され、逆流槽14から上側槽12、より具体的には、上側槽12の排出室18に戻る流路26を画定している。
【0010】
当業者にとって容易に理解可能なように、熱伝達流体(例 水、冷却液など)が、取込口20から熱交換器10に取り込まれる。熱伝達流体は(取込口20を通して取込室16に運ばれ)、取込室16から、第1セットの複数の管24を通って、逆流室28に流れる。逆流室28では、熱伝達流体の流れ方向が逆になり、逆流槽14から第2セットの複数の管30を通って上側槽12に戻るように流れる。より具体的には、熱伝達流体は、逆流槽14によって、上側槽12の排出室18に戻される。排出室18から、熱伝達流体は排出口22を通って、熱交換器10から排出される。
【0011】
周知のように、空気流は、第1及び第2セットの複数の管24、30の一本一本の相隔てられた管の間を通過することができる。第1及び第2セットの複数の管24、30を流れる熱伝達流体から熱がこの空気流に伝達される。上側槽12の上面(熱交換器10の上側面)に配置された取込口20と排出口22に関して、これらの取込口20及び排出口22への流体接続部は、熱交換器10のすぐ上に物理的に存在している必要があるが、このことは、ある特定の車両のレイアウトに対して、望ましい場合もあるが、そうでない場合もある。しかし、取込口20および排出口22のこの配置(つまり、垂直配置の熱交換器の上側の配置位置)は、熱交換器内に生じる気泡や空洞域の生成を抑えたり、生成した気泡や空洞域を除去しやすいという利点がある。
【0012】
図2は、蒸発器42およびヒータ素子もしくはヒータコア44を備えた車両空調装置40を示しており、ヒータ素子もしくはヒータコア44は、図1の熱交換器10であってもよい。車両空調装置40は、霜取りダクト48、車室通気ダクト46、フロア通気ダクト50a、50bの一つ以上のダクトに調整空気を送出する。ヒータコア44を通じてダクト46、48、50aに流れる空気流を選択して制御するために、蒸発器42とヒータコア44の間には、第1エアミックスドア52が配置される。例えば、図示している位置では、第1エアミックスドア52は、全ての空気流をヒータコア44を通して、ダクト46、48に送出している。同様に、第2エアミックスドア54は、ヒータコア44を通して、ダクト50bに送出される空気流を選択して制御するために、蒸発器42とヒータコア44の間に配置することができる。図示した位置においては、第2エアミックスドア54は、蒸発器42からの全ての空気流を、ヒータコア44を通してダクト50bに送出している。図示していない他の位置においては、エアミックスドア52、54は、それぞれ、蒸発器42からの様々な量の空気流を、ヒータコア44を通じて送出する(ヒータコア44を通じて全く空気流を送出しない場合もある)。
【0013】
例示した車両空調装置40では、霜取りダクト48は、ダクト48に入り込む空気流(霜取り空気流)を選択して制御するための霜取りダクトドア58を備えていてもよい。同様に、車室通気ダクト46は、ダクト46に流れる空気流(通気空気流)を選択して制御する通気ドア56を備えていてもよい。車両空調装置40を流れる空気流をより細かく制御して、蒸発器42やヒータコア44を通して、ダクト46、48、50a、50bのうちの一つ以上のダクトに送出する空気流を所望の割合で送出するために、付加的な補助ドア60、62、64を車両空調装置40に備えても良い。
【0014】
図2に示すように、ヒータコア44は、上側横側面44a、下側横側面44b、上側の長手方向側面44cと下側の長手方向側面44dを有している。図1の熱交換器10を図2の車両空調装置40のヒータコア44として使用する場合、熱交換器10の取込口20及び排出口22は、ヒータコア44の上側横側面44aの上に配置されることが分かる。したがって、取込口20および排出口22への適切な流体接続部は、ヒータコア44の上側の側面44aに接続されると共に、上側横側面44aから延設される。ある車両のレイアウトにおいては、この位置の取込口20、排出口22や、ヒータコア44の上側横側面44aから延設される流体接続部は望ましくない場合もある。例えば、車両の他の部品が、上側横側面44aのすぐ上の空間を占有する必要がある場合もある。また、この上側横側面44aのすぐ上の空間は、フロア通気ダクト50などの通気孔への空気流を遮らないように、空けておく必要がある場合もある。代わりに、取込口と排出口がヒータコア44の側壁に設けられているヒータコア44を使用することが望ましい場合もある。その様なヒータコアでは、一対の槽が、図1に示すように垂直方向に離間して設けられているわけではなく、水平方向に離間して設けられている(つまり、水平方向配置)。
【0015】
図3は、取込口と排出口が側壁に設けられている公知のヒータコアである、並流型熱交換器70を図示している。熱交換器70は、下側槽72と上側槽74を備えている。取込口76は、熱交換器70の側壁面78に設けられ、下側槽72によって画定される小室に流体が通過可能なように接続される。一セットの複数の管80は、下側槽72と上側槽74の間に延設され、下側槽72と上側槽74の間を流体が通過可能なように接続している。具体的には、その一セットの管80は、下側槽72の小室と上側槽74の小室を流体が通過可能なように接続している。また、排出口82も側壁に設けられており、より具体的には、上側槽74に設けられている。この取込口76と排出口82が熱交換器70の側壁面78に配置されることにより、流体接続部をヒータコア44の側壁面に設けることが望ましい場合の適用例においても、熱交換器70を図2のヒータコア44として使用することができる。
【0016】
熱交換器70の運転中においては、熱伝達流体が、下側槽72の取込口76を通って熱交換器70に入り、複数の管80を通じて下側槽72から上側槽74に流れ、排出口82を通して熱交換器70から排出される。熱交換器10と同様に、熱交換器70の複数の管80は、複数の管80内を流れる熱伝達流体から熱が伝達される空気流が複数の管80の間を通過可能なように、複数の管80の一本一本はお互いに相隔てられている。熱交換器70の一つの利点は、排出口82が、上側槽74に画定される熱交換器70の最上部に配置されることである。この配置により、熱交換器70に生じる、もしくは生じようとする気泡や空洞域の発生を防いだり、生じた気泡や空洞域を除去する効果を得ることが出来る。熱交換器70の欠点は、逆流を欠いており、複数の管80から、複数の管80の傍を通る空気流へ熱が均一に伝達し難いということがある。
【0017】
より具体的には、図4に示している通り、熱伝達流体は、80℃(一例)で取込口76に入ると同時に、蒸発器を出た空気流が−20℃で熱交換器70に入る。熱伝達流体を下側槽72から上側槽74へ流す複数の管80内を流れる熱伝達流体から熱が奪われるため、熱伝達流体の温度は、80℃から60℃(一例)に下がる。ところが、熱交換器70から排出される空気流は、熱交換器によって均一に加熱されるわけではない。図4に示されるように、下側槽72に隣接する空気流の温度は、−20℃から65℃に上昇する一方、上側槽74に隣接する空気流は、−20℃で熱交換器70に入っても、45℃(一例)までしか加熱されない。上述したように、熱交換器70から排出される空気流は、均一に加熱されるわけではない(例えば、熱交換器70を通過する空気流の間で、20℃の差が発生する場合がある)。
【0018】
もう一つの選択肢は、図1の熱交換器10を、図5に示す回転した向きにして(つまり、水平方向配置)取り付けることである。より具体的には、熱交換器10を回転させて、上側槽12と下側槽14を、互いに水平方向に離間した第1の槽と第2層の槽とする。図1の熱交換器10を、図2の車両空調装置40に使用した場合、この配置方向により、第1セットの複数の管24は、槽12、14と共に、ヒータコア44の上側の長手方向側面44cを形成する。この配置方向により、取込口20と排出口22は、熱交換器10の側面に配置される。この配置により、流体接続部をヒータコア44の側壁に設けることが望ましい場合の適用例においても、図1の熱交換器10を使用することが出来る。
【0019】
一例として説明するだけだが、図6を参照すると、熱伝達流体は、(図5に示す水平配置において)80℃で熱交換器10の取込口20に入り、同時に、空気流が−20℃で熱交換器に入る。逆流で管24、30を流れる熱伝達流体から熱が奪われるため、熱伝達流体の温度は80℃から60℃(一例)に下がる。図示しているように、水平方向に配置された熱交換器10を流れる空気流は、一般的に、20℃から55℃(一例)に均一に加熱される。つまり、第1の槽12に隣接する空気流は、水平方向に取り付けられた熱交換器10によって、第2の槽14に隣接する空気流と概ね同じ程度に加熱される。
【0020】
さらに図7に示すように、車両空調装置40のような車両空調装置に水平方向に配置された熱交換器10を使用することの1つの問題点は、気泡や空洞域(例 空洞域AP)が熱交換器10内に生じやすく、残りやすいということである。このことの原因の少なくとも1つには、排出口22が、熱交換器10の最上部(最上部は、空洞域APが生じる位置である)よりも下側に位置していることである。空洞域APなどの気泡や空洞域は、熱交換器10の熱効率を低下させたり、均一な加熱を妨げる場合がある。熱交換器10において、より具体的には排出口22と流体が通過可能なように接続されている排出室18において、排出口22の位置を変更したとしても、まだ取込室16の一部が熱交換器10の最上部として残るため、ほとんど改善効果はないと考えられる。したがって、空洞域は生じると考えられる。
【0021】
図8は、図2の空調装置40などの車両空調装置のための改良逆流熱交換器100示している。熱交換器100(ヒータ素子もしくはヒータコアと称する場合もある)は、水平方向に離間した一対の槽102、104を有する。より具体的には、その水平方向に離間した一対の槽は、第1側面取込排出槽102および第2側面逆流槽104を含んでいる。槽12と14が水平方向に相隔てられている(つまり、第2側面逆流槽104が第1側面槽102から水平方向もしくは横方向に相隔てられている)ことから、図示された熱交換器100は水平方向に取り付けられることになる。第1側面槽102は、取込室106と排出室108を有し、取込室106と排出室108は第1側面槽102の内部に配置されている。より具体的には、第1槽102は、取込口110、取込口110と接続された取込室106、排出口112、排出口112に接続された排出室108を有している。取込口110は、第1槽102に設けられ、取込室106と流体が通過可能なように接続されている。同様に、排出口112は、第1側面側槽102に設けられ、排出室108に流体が液絡するように接続されている。第2側面槽104は、逆流室114を有すると共に逆流室114を画定している。
【0022】
複数の管116、118は横方向に離間した槽102、104の間を略水平に延びている。複数の管116は、取込室106を逆流室114につなぎ、複数の管118は、逆流室114を排出室108に挿通させている。より具体的には、第1セットの複数の管116は、第1側面槽102の取込室106と第2側面槽104を流体が通過可能なように接続し、第2セットの複数の管118は、第2側面槽104と第1側面槽102の排出室108とを流体が通過可能なように接続している。上述の通り、第1セットの複数の管116は、水平方向に相隔てられた槽102、104の間に延び、第1側面槽102から逆流槽104への流路120を画定している。同様に、第2セットの複数の管118は、槽102、104の間に延び、逆流槽104から第1槽102の排出室108への流路120を画定している。下記に詳述するが、排出口112は、空洞域や気泡を低減させるために、第1側面槽102の最上部122に隣接して配置されている。つまり、排出室108は、少なくともその一部が、取込口106よりも高い位置に位置することになる。このことにより、排出室108が熱交換器100の最上部を形成することを可能にし、排出口112をこの最上部に配置することが可能になる。
【0023】
図9および図10を参照すると、第1側面槽102は、第1セットの複数の管116と第2セットの複数の管118を接続する第1壁面130と、第1壁面と向かい合い、取込口110と排出口112を画定する第2壁面132(第2壁面132は、管116、118に対して反対方向を向いている)を有している。特に、第1壁面は、管116、118と流体が通過可能なように接続される複数の管ポート130aを有している。第1側面槽102は、さらに、第1壁面と第2壁面の間に延びる、相隔てられた長手方向の側面134、136と、同様に第1壁面と第2壁面の間に延びる、相隔てられた横側面138、140を有している。したがって、取込室106、排出室108は、水平方向に相隔てられた第1壁面130と第2壁面132の間を水平方向に延びている。横側面は、第1横側面138、つまり、上側横側面138と第2横側面、つまり下側横側面140を含んでいる。図9に最も明瞭に示されているように、排出口112は、上側長手方向側面134と上側横側面138に隣接して配置されている。より具体的には、排出口112は、上側長手方向側面134と上側横側面138の交点に隣接している。図2の車両空調装置40に特に適している(他の車両空調装置にも適している)のだが、第1槽102と第2槽104は、交点142が第1槽の最上部を形成するように、斜めに配置され、取込口110と排出口112との流体接続部を長手方向側面134に隣接して配置されることになる。
【0024】
排出室108の少なくとも一部が、交点142に隣接しているため、排出口112を交点142に隣接して配置させることが可能となる。より具体的には、排出室108は、下側長手方向側面136に沿って隣接して位置する第1部位144と、上側横側面138に沿って隣接して位置する第2部位146を有する。例示した実施形態においては、第2部位146は、長手方向側面134、136の間に延設されている。図示している通り、取込口110は、上側長手方向側面134に隣接し、横側面138、140からは離間させて配置することができる。排出室108は、L字型をしており、第2部位146がL字の基底を形成し、第1部位144がL字の立ち上がり部分を形成する。排出室108の第2部位(基底部)146は、第1槽102の最上部122を形成する。最上部122は、少なくともその一部は、取込室106よりも高い位置に位置している。
【0025】
隔壁150は第1槽102内に配置され、第1槽102の内壁面と共に、取込室106と排出室108(これら両室は、隔壁150によって、お互いに流体が通過不可能なように隔てられている)を画定している。隔壁150は、壁面130、132の間にわたっている。図示しているように、隔壁150は、第1槽102を長手方向に取入室106と排出室108に分ける第1セクション152と、第1セクションに対して角度を持って配置される第2セクション154とを有している。第2セクション154は、排出室108の第2部位(最上部146)の少なくとも一部を画定している。図示しているように、隔壁150は、一般的にはL字型をしており、第2セクション154がL字の基底を形成し、第1セクション154がL字の高さ部分を形成している。取込室106は、第1槽102の長手方向側面134に沿って隣接して形成されており、隔壁150がL字型になっていることにより、排出室108の第2部位146も同様に長手方向側面134に沿って隣接して配置されることになる。図示しているように、取込口110と排出口112は、ともに第1槽102の長手方向側面134に隣接する第2壁面132上に配置される。
【0026】
図示しているように、第1セットの複数の管116は、取込排出槽102から延設され、取込排出槽102と逆流槽104を流体が通過可能なように接続している。第2セットの複数の管118は、逆流槽104から延設されし、逆流槽104と取込排出槽102を接続している。第1セットの複数の管116は、隔壁150(特に隔壁150の第1セクション152)の長手方向に沿って配置されている複数の管116a、116bを有している。複数の管116bは、第2セクション154に隣接する管(例えば、第2セクション154に最も近い1、2本の管)である。第2セットの複数の管118は、隔壁150(特に隔壁150の第1セクション152)の長手方向に沿って管116a、116bの下側に配置される複数の管118aを含んでいる。取込排出槽102の取込室106から管116a、116bを通して逆流槽に流れ、管118aを通して取込排出槽102の排出室108に戻る流体のために、流路120aが画定されている。
【0027】
第2セットの複数の管118は、第1セクション152の上側で、管118aに対して第2セクションの反対側に配置される管118bと、第1セクション152の下側で、管118bと第2セクションの同じ側に配置される管118cを有している。さらに、流路120b、120cが管116b、118b、118cによって画定されている。特に、流路120bは、流体が取込室106から管116bを通して逆流槽114に流れ、管118bを通して排出室108へ戻るために画定されている。同様に、流路120cは、流体が取込室106から管116bを通して逆流槽114に流れ、管118cを通して排出室108へ戻るために画定されている。この構成は、管118b、118c(特に管118c)が排出口112に位置合わされて配置されているため、熱交換器100からの気泡の除去を促進する。
【0028】
上述した改良逆流熱交換器100の利点の一つは、熱交換器の熱効率を低減させる気泡や空洞域を生成じやすくさせることなく、熱交換器100を図2の車両空調装置40などの車両空調装置において、水平方向に配置して使用することができるという点(つまり、水平方向に配置されても、気泡や空洞域が熱交換器100に生じ難いということ)である。気泡や空洞域が生じると、熱交換器100の熱効率を低下させることが知られている。特に、排出室108が、取込室106よりも高い位置に配置された部位146を有し、槽102の最上部を形成することにより、排出口112を図示した位置に配置することが可能となる。このことにより、熱交換器100内の気泡や空洞域の生成を抑えやすくなる。もし、気泡や空洞域が熱伝達流体に生じたとしても、気泡や空洞域は、熱交換器100内に残り難くなる。したがって、逆流熱交換器100は、逆流熱交換器100を流れる空気流の概ね均一な加熱を可能にするとともに、気泡や空洞域に関する問題も解消する。
【0029】
好ましい実施形態を参照して、模範的な実施形態を説明してきたが、言うまでもなく、上述した詳細な説明を読み、理解することにより、当業者は本発明の修正例や変更例を考案するであろう。上述した模範的な実施例は、修正例や変更例が付属の請求の範囲に入るものであれば、そのような修正例や変更例全てを含むものと解釈されたい。
【符号の説明】
【0030】
102 第1側面取込排出槽
104 第2側面逆流槽
106 取込室
108 排出室
110 取込口
112 排出口
116 第1セットの複数の管
118 第2セットの複数の管
120 流路
120a 流路
120b 流路
120c 流路
130 第1壁面
132 第2壁面
134 上側長手方向側面
136 下側長手方向側面
138 上側横側面
140 下側横側面
142 交点
144 第1部位
146 第2部位
150 隔壁
152 第1セクション
154 第2セクション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取込口と、前記取込口と流体が通過可能なように接続された取込室と、排出口と、前記排出口と流体が通過可能なように接続された排出室を有する第1側面槽と、
前記第1側面槽から横方向に隔てられた第2側面槽と、
前記第1側面槽の前記取込室と前記第2側面槽とを、流体が通過可能なように接続する第1セットの複数の管と、
前記第2側面槽と前記第1側面槽の前記排出室とを、流体が通過可能なように接続する第2セットの複数の管とを備え、
前記排出口は、気泡を低減させるために、前記第1側面槽の最上部に隣接して配置されていることを特徴とする車両空調装置のための逆流熱交換器。
【請求項2】
前記第1セットの複数の管と前記第2セットの複数の管とは、前記1側面と第2側面槽との間に概ね水平に延設されていることを特徴とする請求項1に記載の逆流熱交換器。
【請求項3】
前記第1側面槽は、前記第1セットの複数の管と前記第2セットの複数の管が接続される第1の側面と、
前記取込口と前記排出口とが画定される、第1の側面と対向する第2の側面と、
前記第1の側面と前記第2の側面の間に延設された、一対の相隔てられた長手方向側面と、
前記第1の側面と前記第2の側面の間に延設された、一対の相隔てられた横側面と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の逆流熱交換器。
【請求項4】
前記一対の長手方向側面は、上側長手方向側面と下側長手方向側面とを含み、前記排出口は、前記上側長手方向側面に隣接して配置されることを特徴とする請求項3に記載の逆流熱交換器。
【請求項5】
前記取込口は前記上側長手方向側面に隣接して配置され、前記第1セットの複数の管は、 概ね前記上側長手方向側面に沿って隣接して配置されていることを特徴とする請求項4に記載の逆流熱交換器。
【請求項6】
前記排出室は前記下側長手方向側面に沿って隣接して位置する第1部位と、前記一対の横側面の上側側面に沿って隣接して位置し、前記一対の長手方向側面の間に延びる第2部位とを含むことを特徴とする請求項4に記載の逆流熱交換器。
【請求項7】
前記排出室は概ねL字型であり、前記第2部位が前記L字の基底を形成し、前記第1部位が前記L字の高さ部分を形成することを特徴とする請求項6に記載の逆流熱交換器。
【請求項8】
前記一対の横側面は、上側横側面と下側横側面とを含み、前記排出口は、前記上側横側面に隣接して配置されていることを特徴とする請求項3に記載の逆流熱交換器。
【請求項9】
前記排出口は、前記一対の長手方向側面の一側面と前記一対の横側面の一側面との交点に隣接して配置されることを特徴とする請求項3に記載の逆流熱交換器。
【請求項10】
前記一対の長手方向側面の前記一側面と前記一対の横側面の前記一側面の前記交点が前記第1側面槽の前記最上部を形成するように、前記第1側面槽と前記第2側面槽は斜めに配置されることを特徴とする請求項9に記載の逆流熱交換器。
【請求項11】
前記第1側面槽内に配置され、前記第1側面槽の内壁面とともに前記取込室と前記排出室を画定する隔壁をさらに備え、
前記隔壁は、前記第1側面槽を長手方向に前記取込室と前記排出室とに分ける第1セクションと、前記第1セクションに対して斜めに配置された第2セクションとを有することを特徴とする請求項1に記載の逆流熱交換器。
【請求項12】
前記隔壁は概ねL字型であり、前記第2セクションがL字の基底を形成し、前記第1セクションが前記L字の高さ部分を形成することを特徴とする請求項11に記載の逆流熱交換器。
【請求項13】
前記取込室は、前記第1側面槽の長手方向側面に沿って隣接して形成され、前記隔壁が前記L字型をしていることにより、前記排出室の一部が前記長手方向側面に沿って配置されることを特徴とする請求項12に記載の逆流熱交換器。
【請求項14】
前記取込口と前記排出口は、前記第1セットの複数の管と、前記第2セットの複数の管に対して反対側を向いた前記第1側面槽の一側面に画定され、
前記取込口と前記排出口は、前記長手方向側面に隣接する前記一側面に配置されることを特徴とする請求項13に記載の逆流熱交換器。
【請求項15】
取込室と排出室が設けられた取込排出槽と、逆流槽とを含む、一対の水平方向に相隔てられた槽と、
前記一対の水平方向に相隔てられた槽の間に延び、前記取込排出槽の前記取込室から前記逆流槽への流路を画定する第1セットの複数の管と、
前記一対の水平方向に相隔てられた槽の間に延び、前記逆流槽から前記取込排出槽の前記排出室への流路を画定する第2ットの管とを備え、
前記排出室は、少なくともその一部が、前記取込室よりも高い位置に配置されていることを特徴とする車両空調装置用のヒータコア。
【請求項16】
前記取込排出槽の一壁面に画定され、前記取込室と流体が通過可能に接続された取込口と、
前記取込排出槽の一壁面の内の、前記取込室よりも高い位置にある前記排出室の前記一部の位置に配置され、前記排出室と流体が通過可能なように接続され、前記取込排出槽に生じる気泡の生じやすさを低減する排出口と、
をさらに備えることを特徴とする請求項15に記載のヒータコア。
【請求項17】
前記排出室は、前記第2セットの複数の管と流体が通過可能なように接続された複数の管用ポートを有する第1の壁面と、前記第1の壁面と対向する第2の壁面とを含む、一対の水平方向に相隔てられた壁面の間を水平に延び、
前記排出室は、基底部と高さ部を含む略L字型をしており、前記基底部は、前記取込室よりも高い位置に位置する前記排出室の前記一部を含んでいることを特徴とする請求項15に記載のヒータコア。
【請求項18】
L字型の隔壁が、前記取込排出槽内に配置されて、前記取込排出槽を前記取込室と前記排出室とに分け、前記隔壁は、前記第1の壁面と前記第2の壁面に渡って設けられていることを特徴とする請求項17に記載のヒータコア。
【請求項19】
前記一対の水平方向に相隔てられた槽は、斜めに配置されていることを特徴とする請求項15に記載のヒータコア。
【請求項20】
取込口と、前記取込口に接続された取込室と、排出口と、前記排出口に接続された排出室とを有する取込排出槽と、
前記取込排出槽から横方向、水平方向に相隔てられ、逆流室を有する逆流槽と、
前記取込室を前記逆流室に接続するとともに、前記逆流室を前記排出室に接続する複数の管とを備え、
前記排出室は、基底部と高さ部を有する略L字型をしており、
前記基底部は、前記取込室よりも高い位置に位置する前記取込排出槽の最上部を形成することを特徴とする車両用逆流熱交換器。
【請求項21】
前記複数の管は、
前記取込室と前記逆流室とを流体が通過可能なように接続し、前記取込室から延設されする第1セットの複数の管と、
前記逆流室と前記排出室とを流体が通過可能なように接続し、前記逆流室から延設されする第2セットの複数の管と、
前記第1セットの複数の管と前記第2セットの複数の管のうちの、前記基底部に沿って配置される複数の管によって画定される第1の流路と、
少なくとも、前記第1セットの複数の管のうちの、前記高さ部に隣接して配置される複数の管と、前記第2セットの複数の管のうちの、前記排出室の前記高さ部に接続される管によって画定される、第2の流路と、
を有することを特徴とする請求項21に記載の車両用熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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