説明

車両計量装置

【課題】 車両の重心高さを効率よく求める。
【解決手段】 本発明に係る車両計量システム10は、例えば輸送業者の敷地内の通行路60に沿って直列に配置された水平側計量部20と傾斜側計量部40とを備えている。被計量物としての車両100は、水平側計量部20を通行する際には水平姿勢となり、傾斜側計量部30を通行する際には傾斜姿勢となる。そして、これら水平側計量部20を構成する複数のロードセルから得られる荷重検出値W11〜W16およびW21〜W26と、傾斜側計量部40を構成する複数のロードセルから得られる荷重検出値W31〜W36と、に基づいて、車両100の総重量値や当該車両100の重心位置,重心高さ等の重心情報が求められる。つまり、車両100にとっては、言わば通行路60を通行するだけで、総合的な計量が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両計量装置に関し、特に、車両の重心の高さを求める機能を備えた、車両計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両計量装置として、従来、例えば特許文献1に開示されたものがある。この従来技術によれば、一端が軸支された傾動台と、この傾動台の他端を上下動可能に支持する上下動機構と、当該傾動台上に間隔をおいて配設された少なくとも2つの荷重計と、各荷重計により支持された被測定物用載荷盤と、この載荷盤の傾動台上面に沿った動きのみを規制する規制手段と、が具備されている。この構成において、まず、傾動台上の載荷盤に被計量物としての車両が載置された状態で、当該傾動台が水平姿勢とされ、つまり載荷盤上の車両が水平姿勢とされる。このときに各荷重計から得られる荷重検出値に基づいて、車両の重量と、当該車両の左右方向における重心位置と、が求められる。続いて、傾動台が傾斜姿勢とされ、つまり載荷盤上の車両が傾斜姿勢とされ、このときに各荷重計から得られる荷重検出値と、先に求められた車両の重量および重心位置と、に基づいて、当該車両の重心高さが求められる。なお、規制手段が設けられているので、傾動台が傾動したときでも各荷重計の相対位置が変わらず、従って、測定値にバラツキが生じない、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−9606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような車両計量装置は、例えばトラックスケールに適用される。特に、トラック輸送業界においては、トラックの重量や左右方向における重心位置のみならず、重心高さをも把握することができれば、つまり当該重心に関する情報を立体的に把握することができれば、輸送の安全性の向上に大きく貢献するので、当該重心高さを求める機能を備えた上述の従来技術は、極めて有用である。その一方で、トラック輸送業界においては、輸送の効率化が要求されるため、トラックスケールについても当然に、計量の効率化が要求される。しかし、従来技術では、この計量の効率化の要求に十分に対応することができない。即ち、従来技術では、まず傾動台(載荷盤)にトラックが載置され、この状態で当該トラックの姿勢が傾動台ごと上下動機構によって変えられ、最後に傾動台からトラックが降ろされる。このように傾動台の上下動を含む複数の工程を経て初めてトラックの重心高さが求められるため、1台のトラックに要する計量時間が長く、極めて効率が悪い、という問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、従来よりも効率よく車両の重心高さを求めることができる車両計量装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の車両計量装置は、被計量物としての車両が通行する路面の一部を形成すると共に、当該車両に属する全ての車輪が同時に載置可能であり、かつ、これら全ての車輪が同時に載置されたときに当該車両が第1姿勢を成すように構成された、第1計量台を、具備する。そして、この第1計量台を支持すると共に、当該第1計量台を介して印加される荷重を検出する、複数の第1荷重検出手段を、具備する。併せて、路面の別の一部を形成すると共に、車両に属する全ての車輪が同時に載置可能であり、かつ、これら全ての車輪が同時に載置されたときに当該車両が第1姿勢とは異なる第2姿勢を成すように構成された、第2計量台を、具備する。そして、この第2計量台を支持すると共に、当該第2計量台を介して印加される荷重を検出する、複数の第2荷重検出手段をも、具備する。加えて、各第1荷重検出手段から得られる第1荷重検出値と、各第2荷重検出手段から得られる第2荷重検出値と、に基づいて車両の重心高さを求める、重心高さ演算手段を、具備する。ここで、第1姿勢とは、車両の進行方向に対して直角な平面上で、つまり車両の左右方向において、当該車両が水平方向に対して第1角度を成す姿勢である。そして、第2姿勢とは、車両の左右方向において、当該車両が水平方向に対して第1角度とは異なる第2角度を成す姿勢である。
【0007】
この構成によれば、第1計量台によって路面の一部が形成されると共に、第2計量台によって当該路面の別の一部が形成される。そして、この路面を車両が通行することによって、当該車両に属する全ての車輪が第1計量台に同時に載置される言わば第1の状態と、当該車両に属する全ての車輪が第2計量台に同時に載置される言わば第2の状態とが、必然的に順次形成される。ここで、車両が第1状態にあるとき、当該車両は、その左右方向において水平方向に対して第1角度を成す第1姿勢となる。一方、車両が第2状態にあるときには、当該車両は、その左右方向において水平方向に対して第1角度とは異なる第2角度を成す第2姿勢となる。さらに、第1計量台は、複数の第1荷重検出手段によって支持されており、それぞれの第1荷重検出手段は、当該第1計量台を介して自身に印加される荷重を検出する。また、第2計量台は、複数の第2荷重検出手段によって支持されており、それぞれの第2荷重検出手段は、当該第2計量台を介して自身に印加される荷重を検出する。そして、各第1荷重検出手段から得られる第1荷重検出値と、各第2荷重検出手段から得られる第2荷重検出値と、に基づいて、詳しくは、車両が第1状態にあるときの第1荷重検出値と、当該車両が第2状態にあるときの第2荷重検出値と、に基づいて、重心高さ演算手段が、当該車両の重心高さを求める。
【0008】
なお、本発明において、第1角度は、例えば略零であり、第2角度は、鋭角であってもよい。この場合、車両は、第1状態にあるとき、第1姿勢として、その左右方向において水平を成した姿勢となる。そして、第2状態にあるとき、当該車両は、第2姿勢として、その左右方向において水平方向に対して鋭角を成すように傾斜した姿勢となる。
【0009】
このように車両が第1姿勢として水平姿勢となり、第2姿勢として傾斜姿勢となる場合、つまりそうなるように第1計量台および第2計量台が構成されている場合は、当該車両がまず第1計量台を通行し、その後に第2計量台を通行するように、これら第1計量台および第2計量台が配置されると共に、次のような左右重心位置演算手段と左右重心バランス評価手段と左右重心バランス評価結果出力手段とが設けられるのが、望ましい。即ち、左右重心位置演算手段は、少なくとも車両が第2計量台を通行する前、例えば当該車両が第1計量台を通行している最中か若しくは当該車両が第1計量台を通行し終えた直後に、上述の第1荷重検出値に基づいて、車両の左右方向における重心位置を求める。ここで例えば、この左右重心位置演算手段によって求められた車両の左右重心位置が当該車両の左右方向における中心またはその近傍にあるときは、当該左右方向における重心バランスは比較的に良好である、と言える。一方、車両の左右重心位置が当該車両の左右方向における中心から離れているとき、特にその離れ度合が大きいほど、当該左右方向における重心バランスは悪く、ひいては当該車両が転倒する危険性がある。そして、この転倒の危険性は、車両が第2計量台を通行するとき、つまり当該車両が第2姿勢としての傾斜姿勢になるとき、その傾斜の方向と左右重心位置の偏り方向とによっては増大する。この車両の左右重心位置に起因する転倒の危険性の有無を周囲(計量作業を担う作業者や車両の運転者等)に知らしめるべく、左右重心バランス評価手段が、当該左右重心位置に基づいて車両の左右方向における重心バランスを評価する。そして、左右重心バランス評価結果出力手段が、この左右重心バランス評価手段による評価結果を出力し、特に車両が転倒する危険性が高いときは、当該評価結果として警報を出力する。
【0010】
また、第1角度は、鋭角であり、第2角度は、当該第1角度とは逆方向に成す鋭角であってもよい。この場合、車両は、第1状態にあるとき、第1姿勢として、その左右方向において水平方向に対して或る方向に鋭角を成すように傾斜した姿勢となる。そして、第2状態にあるとき、当該車両は、第2姿勢として、その左右方向において水平方向に対して第1角度とは逆方向に鋭角を成すように傾斜した姿勢となる。
【0011】
このように車両が第1姿勢として傾斜姿勢となり、第2姿勢として当該第1姿勢とは逆方向に傾斜した姿勢となる構成によれば、次のような利点がある。即ち、車両の重心高さを精確に求めるには、当該車両が第1姿勢(第1状態)にあるときの第1荷重検出値と、当該車両が第2姿勢(第2状態)にあるときの第2荷重検出値と、の相互差が大きいほど好都合である。それには、第1姿勢を形成する第1角度と、第2姿勢を形成する第2角度と、の相互差が大きいことが、必要とされる。そうすると例えば、上述の第1姿勢が水平姿勢であり、第2姿勢が傾斜姿勢である構成では、第1角度が略零であり、第2角度が鋭角であるので、車両の重心高さを精確に求めるには、当該第2角度が大きいことが、必要とされる。ただし、第2角度が過度に大きいと、車両が第2姿勢になったときに、当該車両が転倒する危険性が極めて高い。これに対して、第1姿勢が傾斜姿勢であり、第2姿勢が当該第1姿勢とは逆方向の傾斜姿勢である構成によれば、第1角度および第2角度そのもの(絶対値)が比較的に小さくても、両者の相互差は比較的に大きく得られる。例えば、第1角度の絶対値がαという或る値であり、第2角度の絶対値もまたαである、とすると、両者の相互差は2・αとなる。これは、上述の第1姿勢が水平姿勢であり、第2姿勢が傾斜姿勢である構成において、第2角度の値が2・αとされるのと同程度の精度で車両の重心高さを求め得ることを意味し、言い換えれば当該第2角度の値がαとされた場合の約2倍の精度で車両の重心高さを求め得ることを意味する。つまり、第1姿勢が傾斜姿勢であり、第2姿勢が当該第1姿勢とは逆方向の傾斜姿勢である構成によれば、車両の転倒の危険性を抑制しつつ、より高い精度で車両の重心高さを求めることができる。
【0012】
本発明における車両は、駆動車と、この駆動車によって牽引される荷台車と、から成る牽引自動車、いわゆるトレーラ、であってもよい。この場合、トレーラ全体の重心高さのみならず、荷台車単体の重心高さをも、求める機能が設けられてもよい。具体的には、次のような駆動車単体荷重値記憶手段と荷台車単体重心情報演算手段とが設けられる。即ち、駆動車単体荷重値記憶手段には、駆動車が荷台車と切り離された単体の状態にありかつ上述の第1姿勢および第2姿勢にそれぞれあるときの当該駆動車単体に属する全ての左側車輪への印加荷重値である駆動車単体左側車輪印加荷重値と、当該駆動車単体に属する全ての右側車輪への印加荷重値である駆動車単体右側車輪印加荷重値とが、予め記憶されている。なお、これら駆動車単体左側車輪印加荷重値と駆動車単体右側車輪印加荷重値とは、例えば事前に求められ、詳しくは駆動車単体のみが被計量物とされたときの第1荷重検出手段と第2荷重検出手段とに基づいて求められ、より詳しくは当該駆動車単体が第1状態にあるときの第1荷重検出値と当該駆動車単体が第2状態にあるときの第2荷重検出値とに基づいて求められる。そして、荷台車単体重心情報演算手段が、これら駆動車単体左側車輪印加荷重値と駆動車単体右側車輪印加荷重値とに加えて、トレーラ全体が被計量物とされたときの第1荷重検出値と第2荷重検出値とに基づいて、詳しくは当該トレーラ全体が第1状態にあるときの第1荷重検出値と当該トレーラ全体が第2状態にあるときの第2荷重検出値とに基づいて、荷台車単体の重心高さを含む重心情報を求める。
【0013】
さらに、荷台車単体の水平方向における重心位置である水平方向重心位置を求める機能が設けられてもよい。具体的には、上述の駆動車単体荷重値記憶手段に加えて、次のような水平方向重心位置演算手段が設けられる。即ち、当該水平方向重心位置演算手段は、トレーラ全体が被計量物とされたときの第1荷重検出値および第2荷重検出値の少なくとも一方と、駆動車単体荷重値記憶手段に記憶されている駆動車単体左側車輪印加荷重値と駆動車単体右側車輪印加荷重値と、に基づいて、水平方向重心位置を求める。なお、ここで言う第1荷重検出値は、トレーラ全体が第1状態にあるとき、つまり当該トレーラに属する全ての車輪が第1計量台に同時に載置されているとき、の荷重検出値に加えて、少なくとも駆動車単体に属する車輪のみが第1計量台に載置されているときの荷重検出値と、荷台車単体に属する車輪が1軸分ずつ順次第1計量台に載置されまたは当該第1計量台から順次降りるたびに得られる荷重検出値と、を含むものとする。そして、第2荷重検出値もまた、トレーラ全体が第2状態にあるとき、つまり当該トレーラに属する全ての車輪が第2計量台に同時に載置されているとき、の荷重検出値に加えて、少なくとも駆動車単体に属する車輪のみが第2計量台に載置されているときの荷重検出値と、荷台車単体に属する車輪が1軸分ずつ順次第2計量台に載置されまたは当該第2計量台から順次降りるたびに得られる荷重検出値と、を含むものとする。
【0014】
なお、この荷台車単体の水平方向重心位置によっては、当該荷台車単体の水平方向における重心バランスが悪く、極端には当該荷台車を含むトレーラ全体が転倒する危険性がある。この荷台車単体の水平方向重心位置に起因する転倒の危険性の有無を周囲に知らしめるべく、次のような荷台車単体重心バランス評価手段と荷台車単体重心バランス評価結果出力手段とが設けられてもよい。即ち、荷台車単体重心バランス評価手段は、荷台車単体の水平重心位置に基づいて当該荷台車単体の水平方向における重心バランスを評価する。そして、荷台車単体重心バランス評価結果出力手段が、この荷台車単体重心バランス評価手段による評価結果を出力し、特にトレーラ全体が転倒する危険性が高いときは、当該評価結果として警報を出力する。
【0015】
本発明における第1計量台は、車両に属する全ての左側車輪のみが同時に載置可能な左側計量台と、当該車両に属する全ての右側車輪のみが同時に載置可能な右側計量台と、を含むものであってもよい。この場合、左側計量台に車両の左側車輪が載置されると、これと同時に、右側計量台に当該車両の右側車輪が載置される。そして、左側計量台に載置された左側車輪への印加荷重は、各第1荷重検出手段のうち当該左側計量台を支持するもの、言わば第1左側荷重検出手段、に分散印加され、右側計量台に載置された右側車輪への印加荷重は、各第1荷重検出手段のうち当該右側計量台を支持するもの、言わば第1右側荷重検出手段、に分散印加される。従って、第1左側荷重検出手段から得られる言わば第1左側荷重検出値に基づいて、左側計量台に載置されている左側車輪への印加荷重値が求められ、第1右側荷重検出手段から得られる言わば第1右側荷重検出値に基づいて、右側計量台に載置されている右側車輪への印加荷重値が求められる。つまり、左側計量台に載置されている左側車輪への印加荷重値と、右側計量台に載置されている右側車輪への印加荷重値とが、互いに独立して求められる。しかも、これらの印加荷重値は、左側計量台および右側計量台のそれぞれにおける車輪の載置位置によって変わらない。
【0016】
これと同様に、第2計量台もまた、車両に属する全ての左側車輪のみが同時に載置可能な左側計量台と、当該車両に属する全ての右側車輪のみが同時に載置可能な右側計量台と、を含むものであってもよい。この場合も、左側計量台に車両の左側車輪が載置されると、これと同時に、右側計量台に当該車両の右側車輪が載置される。そして、左側計量台に載置された左側車輪への印加荷重は、各第2荷重検出手段のうち当該左側計量台を支持する言わば第2左側荷重検出手段に分散印加され、右側計量台に載置された右側車輪への印加荷重は、各第2荷重検出手段のうち当該右側計量台を支持する言わば第2右側荷重検出手段に分散印加される。従って、第2左側荷重検出手段から得られる言わば第2左側荷重検出値に基づいて、左側計量台に載置されている左側車輪への印加荷重値が求められ、第2右側荷重検出手段から得られる言わば第2右側荷重検出値に基づいて、右側計量台に載置されている右側車輪への印加荷重値が求められる。つまり、左側計量台に載置されている左側車輪への印加荷重値と、右側計量台に載置されている右側車輪への印加荷重値とが、互いに独立して求められる。そして、これらの印加荷重値は、左側計量台および右側計量台のそれぞれにおける車輪の載置位置によっては変わらない。
【0017】
このように、第1計量台および第2計量台のそれぞれが左側計量台と右側計量台とに分割された構成によれば、当該左側計量台に載置されている左側車輪への印加荷重値と、右側計量台に載置されている右側車輪への印加荷重値とが、それぞれの車輪の載置位置に関係なく互いに独立して求められるので、重心高さ演算手段による演算においても、当該それぞれの車輪の載置位置とは無関係に車両の重心高さが求められる。即ち、第1計量台および第2計量台のそれぞれに車両が乗り込む際の各車輪の載置位置が厳しく規定されないので、当該第1計量台および第2計量台のそれぞれに車両が乗り込む際の運転が容易化され、ひいては計量の効率化が図られる。
【0018】
なお、重心高さ演算手段は、第1左側荷重検出値と第1右側荷重検出値と第2左側荷重検出値と第2右側荷重検出値とのいずれかが得られなくても、車両の重心高さを求めることができる。従って、第1左側荷重検出値の生成要素である第1左側荷重検出手段と、第1右側荷重検出値の生成要素である第1右側荷重検出手段と、第2左側荷重検出値の生成要素である第2左側荷重検出手段と、第2右側荷重検出値の生成要素である第2右側荷重検出手段と、のいずれかは、荷重検出機能を有しない言わばダミーであってもよい。また、極端には、第1計量台の左側計量台と第1左側荷重検出手段との一式と、第1計量台の右側計量台と第1右側荷重検出手段との一式と、第2計量台の左側計量台と第2左側荷重検出手段との一式と、第2計量台の右側計量台と第2右側荷重検出手段との一式と、のいずれかが、非設置とされてもよい。
【0019】
これに代えて、第1計量台は、一体のものであってもよい。この場合、当該第1計量台に車両の左右両側の車輪が同時に載置される。この第1計量台に載置されたそれぞれの車輪への印加荷重は、当該第1計量台を介して各第1荷重検出手段に分散印加される。そして、これら各第1荷重検出手段への印加荷重の分散比率は、第1計量台におけるそれぞれの車輪の載置位置によって変わる。これと同様に、第2計量台もまた、一体のものであってもよい。この場合、当該第2計量台にも車両の左右両側の車輪が同時に載置される。そして、この第2計量台に載置されたそれぞれの車輪への印加荷重は、当該第2計量台を介して各第2荷重検出手段に分散印加される。これら各第2荷重検出手段への印加荷重の分散比率もまた、第2計量台におけるそれぞれの車輪の載置位置によって変わる。従って、重心高さ演算手段は、第1計量台と第2計量台とのそれぞれにおける各車輪の載置位置をも加味して、車両の重心高さを求めることになる。
【0020】
ここで例えば、第1計量台と第2計量台とのそれぞれにおいて、各車輪の載置位置として希望の位置に適当な目印(マーク)、例えば左右両車輪のそれぞれに対応するように車両の進行方向に沿って延伸する2つの直線状の目印、が付されており、この目印の位置に精確に各車輪が載置される、とする。この場合、重心高さ演算手段は、当該目印の位置を各車両の載置位置として加味することで、車両の重心高さを求めることができる。ただしそれには、当該目印の位置に各車輪が精確に載置される必要があり、それ相応の車両の運転技術や慎重さが要求される。
【0021】
これとは別に、例えば第1計量台と第2計量台とのそれぞれにおいて、各車輪の載置位置、特に車両の左右方向における載置位置、を検出するための車輪載置位置検出手段が、設けられてもよい。この場合、重心高さ演算手段は、当該車輪載置位置検出手段による検出結果を加味することで、車両の重心高さを求めることができる。また、上述の目印が付される場合とは異なり、第1計量台と第2計量台とのそれぞれにおける各車輪の載置位置が厳しく規定されないので、当該第1計量台と第2計量台とのそれぞれに車両が乗り込む際の運転が容易化され、ひいては計量の効率化が図られる。
【発明の効果】
【0022】
上述したように、本発明によれば、車両が路面を通行することによって、当該車両が第1姿勢となる第1状態と、当該第1姿勢とは異なる第2姿勢となる第2状態とが、必然的に順次形成される。そして、この必然的に形成される第1状態にあるときの第1荷重検出値と、第2状態にあるときの第2荷重検出値と、に基づいて、車両の重心高さが求められる。即ち、車両にとっては言わば路面を通行するだけで、当該車両の重心高さが求められる。従って、車両の重心高さを求めるのに傾動台の上下動を含む複数の工程を経る必要のある上述の従来技術に比べて、遥かに効率よく車両の重心高さを求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両計量システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】同第1実施形態における水平側計量部の具体的な構成を示す図解図である。
【図3】同第1実施形態における傾斜側計量部の具体的な構成を示す図解図である。
【図4】同第1実施形態における水平側プロセッサの電気的な構成を示す概略ブロック図である。
【図5】同第1実施形態における傾斜側プロセッサの電気的な構成を示す概略ブロック図である。
【図6】同第1実施形態における車載プロセッサの電気的な構成を示す概略ブロック図である。
【図7】同第1実施形態における左側荷重検出値の推移を示す図解図である。
【図8】図7における一部を拡大して示す図解図である。
【図9】同第1実施形態における水平側計量部に車両が載置された状態を当該車両の左右方向における力学的要素にのみ注目して示す図解図である。
【図10】同第1実施形態における荷台車単体の水平方向における重心位置を求める手順を説明するための図解図である。
【図11】図10におけるX軸方向の力学的要素の相互関係を示す図解図である。
【図12】図10におけるY軸方向の力学的要素の相互関係を示す図解図である。
【図13】図10の別例を示す図解図である。
【図14】同第1実施形態における傾斜側計量部に車両が載置された状態を当該車両の左右方向における力学的要素にのみ注目して示す図解図である。
【図15】同第1実施形態における水平側プロセッサが実行する水平側制御タスクの流れを示すフローチャートである。
【図16】図15における輪重計量タスクの詳細を示すフローチャートである。
【図17】図16に続くフローチャートである。
【図18】図17に続くフローチャートである。
【図19】同第1実施形態における傾斜側プロセッサが実行する傾斜側制御タスクの流れを示すフローチャートである。
【図20】同第1実施形態における車載プロセッサが実行する車載制御タスクの流れを示すフローチャートである。
【図21】同第1実施形態における水平側計量部および傾斜側計量部の配置関係を示す図解図である。
【図22】図21の別例を示す図解図である。
【図23】図21および図22のさらに別例を示す図解図である。
【図24】同第1実施形態における傾斜側計量部の別例を示す図解図である。
【図25】同第1実施形態における水平側計量部の別例を示す図解図である。
【図26】図24のさらに別例を示す図解図である。
【図27】図24および図26のさらに別例を示す図解図である。
【図28】図27の傾斜側計量部に車両が載置された状態を当該車両の左右方向における力学的要素にのみ注目して示す図解図である。
【図29】同第1実施形態における水平側計量部のさらに別例の具体的構成を示す図解図である。
【図30】図29における各車両検知器の出力信号の遷移状態を示す図解図である。
【図31】本発明の第2実施形態に係るトラック計量システムの水平側計量部の具体的な構成を示す図解図である。
【図32】同第2実施形態における傾斜側計量部の具体的な構成を示す図解図である。
【図33】同第2実施形態における水平側計量部に車両が載置された状態を当該車両の左右方向における力学的要素にのみ注目して示す図解図である。
【図34】同第2実施形態における傾斜側計量部に車両が載置された状態を当該車両の左右方向における力学的要素にのみ注目して示す図解図である。
【図35】同第2実施形態における水平側計量部の別例を示す図解図である。
【図36】同第1実施形態における傾斜側計量部の別例を示す図解図である。
【図37】図36のさらに別例を示す図解図である。
【図38】図37の傾斜側計量部に車両が載置された状態を当該車両の左右方向における力学的要素にのみ注目して示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1実施形態について、図1に示す車両計量システム10を例に挙げて説明する。
【0025】
同図に示すように、本第1実施形態に係る車両計量システム10は、水平側計量部20と、この水平側計量部20用の水平側プロセッサ30と、水平側計量部20とは別個の傾斜側計量部40と、当該傾斜側計量部40用の傾斜側プロセッサ50と、を備えており、例えば輸送業者の敷地内に設置される。なお、当該敷地内には、被計量物としての車両100を同図に白抜きの矢印102で示す方向(同図において左側から向かう方向)通行させるための例えばアスファルト舗装された通行路60が敷設されている。
【0026】
水平側計量部20は、通行路60(路面)の一部を形成するように配置されており、詳しくは自身の構成要素である後述する左側水平計量台210および右側水平計量台220によって当該通行路60の一部を形成するように配置されている。そして、この水平側計量部20は、水平側プロセッサ30に接続されており、詳しくは自身の構成要素である後述する各ロードセル212,212,…および222,222,…が、当該水平側プロセッサ30に接続されている。なお、水平側プロセッサ30は、管理室等の屋内に配置されている。
【0027】
傾斜側計量部40もまた、水平側計量部20と同様、通行路60の一部を形成するように配置されており、詳しくは自身の構成要素である後述する左側傾斜計量台410および右側傾斜計量台420によって当該通行路60の別の一部を形成するように配置されており、より詳しくは車両100が水平側計量部20(左側水平計量台210および右側水平計量台220)を通行した後にこの傾斜側計量部40(左側傾斜計量台410および右側傾斜計量台420)を通行するように配置されている。そして、この傾斜側計量部40は、傾斜側プロセッサ50に接続されており、詳しくは自身の構成要素である後述する各ロードセル412,412,…および422,422,…が、当該傾斜側プロセッサ50に接続されている。なお、傾斜側プロセッサ50は、水平側プロセッサ30と同じ室内に配置されている。そして、水平側プロセッサ30と傾斜側プロセッサ50とは、後述するように相互間で有線による双方向通信が可能とされている。
【0028】
さらに、通行路60の途中であって、車両100の通行方向102における水平側計量部20の手前には、これから当該水平側計量部20を通行しようとする車両100を検知するための車両検知手段としての車両検知器70が設置されている。この車両検知器70は、水平側プロセッサ30に接続されている。即ち、この車両検知器70は、車両100を検知すると、そのことを表す車両検知信号Saを生成する。そして、この車両検知信号Saは、水平側プロセッサ30に入力される。なお、車両検知器70としては、例えば赤外線反射方式のものが採用されるが、赤外線透過方式のものや、超音波反射方式のもの、超音波透過方式のもの、その他の方式のものも、適宜に採用可能である。
【0029】
加えて、通行路60の途中であって、水平側計量部20と傾斜側計量部40との間には、警報出力手段としての警報器80が設置されている。そして、この警報器80もまた、水平側プロセッサ30に接続されている。即ち、この警報器80は、水平側プロセッサ30から後述する警報信号Sbが入力されると、これに応答して警報を発する。
【0030】
なお、ここで言う車両100は、例えば駆動車104と当該駆動車104によって牽引される荷台車106とから成るトレーラであり、詳しくは2軸の駆動車104と2軸の荷台車106とから成る計4軸のセミトレーラである。そして、この車両100の運転席付近(駆動車104)には、車載プロセッサ90が設置されている。この車載プロセッサ90は、後述するように水平側プロセッサ30および傾斜側プロセッサ50それぞれとの間で無線による双方向通信が可能とされており、そのためのアンテナ902を有している。これと同様に、水平側プロセッサ30も、アンテナ302を有しており、傾斜側プロセッサ50もまた、アンテナ502を有している。
【0031】
以下、より具体的に説明すると、水平側計量部20は、図2に示すように、車両100の全ての左側車輪(タイヤ)110,110,…が同時に載置可能な第1左側計量台としての左側水平計量台210と、当該車両100の全ての右側車輪120,120,…が同時に載置可能な第1右側計量台としての右側水平計量台220と、を有している。これら左側水平計量台210および右側水平計量台220は、互いに同一形状かつ同一寸法の概略矩形の金属製平板であり、それぞれの一方主面が上面として真上に向けられると共に、それぞれの他方主面が下面として真下に向けられ、さらに、それぞれの一方長辺が車両100の通行方向102に沿いつつ互いに適当な隙間22を隔てて平行を成すように、設けられている。なお、これら左側水平計量台210および右側水平計量台220の隙間22を含む総合の短辺寸法、言わば幅寸法L1は、車両100の左右の車輪110,110,…および120,120,…の外側面間距離Laよりも大きい(L1>La)。そして、左側水平計量台210および右側水平計量台220それぞれの長辺寸法、言わば長さ寸法L2は、車両100の最遠軸距(最前輪軸である第1軸から最後輪軸である第4軸までの距離)Lbよりも大きい(L2>Lb)。また、当該左側水平計量台210および右側水平計量台220のそれぞれは、図示しないリブ等の適当な補強部材によって補強されている。
【0032】
左側水平計量台210は、上述の如く通行路60の一部を形成するように、つまり当該左側水平計量台210の上面が通行路60(路面)と一致するように(いわゆる面一になるように)、複数の、例えば6つの、第1左側荷重検出手段としてのロードセル212,212,…によって支持されている。このため、通行路60には、概略矩形穴状のピット62が形成されており、このピット62内において、当該左側水平計量台210がその上面を通行路60に一致させた状態で各ロードセル212,212,…によって支持されている。各ロードセル212,212,…は、互いに同一仕様のものであり、詳しくは概略柱状の起歪体を有し、この起歪体の荷重受け部である両端部が外方に向かって概略球状に突出した形状のいわゆるダブルコンベックス型のものである。これら各ロードセル212,212,…は、左側水平計量台210の下面の周縁近傍、詳しくは四隅近傍および各長辺の中央近傍、の6箇所において、それぞれの起歪体が直立姿勢で当該左側水平計量台210の下面とピット62の底面との間に挟まれた状態になるように配置されている。なお、左側水平計量台210の下面と各ロードセル212,212,…(起歪体)の上方側端部とは、単に接触した状態にあり、言わば可動的に接合されている。そして、この左側水平計量台210の下面における各ロードセル212,212,…の上方側端部との接触(接合)部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。また、ピット62の底面と各ロードセル212,212,…の下方側端部とについても、単に接触した状態にあり、言わば可動的に接合されている。そして、このピット62の底面における各ロードセル212,212,…の下方側端部との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。このように構成されることで、左側水平計量台210が車両100(左側車輪110,110,…)の載荷によって撓んだとしても、この撓みに応じて各ロードセル212,212,…(起歪体)が傾転して、当該各ロードセル212,212,…への横荷重の作用が緩和され、この横荷重に起因する各ロードセル212,212,…による計量精度の低下が抑制される。左側水平計量台210の撓みが解消されると、各ロードセル212,212,…は元の直立姿勢に復帰する。
【0033】
右側水平計量台220も同様に、その上面が通行路60と一致するように、ピット62内において6つのロードセル222,222,…によって支持されている。これらの言わば右側ロードセル222,222,…は、上述の左側ロードセル212,212,…と同一仕様のものであり、右側水平計量台220の下面の周縁近傍において、それぞれの起歪体が直立姿勢で当該右側水平計量台220の下面とピット62の底面との間に挟まれた状態になるように配置されている。そして、右側水平計量台220の下面と各右側ロードセル222,222,…の上方側端部とは、単に接触した状態にあり、当該右側水平計量台220の下面における各右側ロードセル222,222,…との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。また、ピット62の底面と各右側ロードセル222,222,…の下方側端部とについても、単に接触した状態にあり、当該ピット62の底面における各右側ロードセル222,222,…の下方側端部との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。
【0034】
なお、左側水平計量台210に車両100の全ての左側車輪110,110,…が載置されると、必然的に、右側水平計量台220に当該車両100の全ての右側車輪120,120,…が載置される。この状態にあるとき、車両100は、特に図2(c)に示すように、その進行方向に対して直角な平面上(図2(c)の紙面に沿う平面上)で、つまり当該車両100の左右方向において、水平を成す言わば水平姿勢となる。併せて、車両100は、その進行方向においても、つまり前後方向においても、水平姿勢となる。
【0035】
各左側ロードセル212,212,…には、LC11,LC12,LC13,LC14,LC15およびLC16という個別の識別符号が付されている。例えば、図2(b)に示すように、左側水平計量台210の左側後部隅(図2(b)において左上隅)に配置されたロードセル212に、LC11という識別符号が付されており、当該左側水平計量台210の左側長辺の中央近傍(図2(b)において上方側長辺の中央近傍)に配置されたロードセル212に、LC12という識別符号が付されており、左側水平計量台210の左側前部隅(図2(b)において右上隅)に配置されたロードセル212に、LC13という識別符号が付されている。そして、左側水平計量台210の右側後部隅(図2(b)において左下隅)に配置されたロードセル212に、LC14という識別符号が付されており、当該左側水平計量台210の右側長辺の中央近傍(図2(b)において下方側長辺の中央近傍)に配置されたロードセル212に、LC15という識別符号が付されており、左側水平計量台210の右側前部隅(図2(b)において右下隅)に配置されたロードセル212に、LC16という識別符号が付されている。これ以降、各左側ロードセル212,212,…については、当該LC11,LC12,LC13,LC14,LC15およびLC16という識別符号を用いて表現することがある。
【0036】
また、各右側ロードセル222,222,…には、LC21,LC22,LC23,LC24,LC25およびLC26という個別の識別符号が付されている。例えば、右側水平計量台220の右側後部隅(図2(b)において左下隅)に配置されたロードセル222に、LC21という識別符号が付されており、当該右側水平計量台220の右側長辺の中央近傍(図2(b)において下方側長辺の中央近傍)に配置されたロードセル222に、LC22という識別符号が付されており、右側水平計量台220の右側前部隅(図2(b)において右下隅)に配置されたロードセル222に、LC23という識別符号が付されている。そして、右側水平計量台220の左側後部隅(図2(b)において左上隅)に配置されたロードセル222に、LC24という識別符号が付されており、当該右側水平計量台220の左側長辺の中央近傍(図2(b)において上方側長辺の中央近傍)に配置されたロードセル222に、LC25という識別符号が付されており、右側水平計量台220の左側前部隅(図2(b)において右上隅)に配置されたロードセル222に、LC26という識別符号が付されている。これ以降、各右側ロードセル222,222,…については、当該LC21,LC22,LC23,LC24,LC25およびLC26という識別符号を用いて表現することがある。
【0037】
各左側ロードセルLC11,LC12,LC13,LC14,LC15およびLC16は、左側水平計量台210を介して自身に印加された荷重の大きさを表すデジタル荷重検出信号W11,W12,W13,W14,W15およびW16を出力する。そして、これらの言わば左側デジタル荷重検出信号W11〜W16は、水平側プロセッサ30に入力される。なお、これらの左側デジタル荷重検出信号W11〜W16には、左側水平計量台210による荷重のように最初から各左側ロードセルLC11〜LC16に印加されている荷重成分、いわゆる初期荷重成分、および零点変動成分が、含まれている。ただし、ここでは、説明の便宜上、これら初期荷重成分および零点変動成分については各左側デジタル荷重検出信号W11〜W16から排除されているものとする。
【0038】
これと同様に、各右側ロードセルLC21,LC22,LC23,LC24,LC25およびLC26は、右側水平計量台220を介して自身に印加される荷重の大きさを表す右側デジタル荷重検出信号W21,W22,W23,W24,W25およびW26を出力する。そして、これらの右側デジタル荷重検出信号W21〜W26もまた、水平側プロセッサ30に入力される。なお、これらの右側デジタル荷重検出信号W21〜W26にも、初期荷重成分および零点変動成分が含まれているが、ここでは、当該初期荷重成分および零点変動成分は各右側デジタル荷重検出信号W21〜W26から排除されているものとする。
【0039】
一方、傾斜側計量部40は、図3に示すように、車両100の全ての左側車輪110,110,…が同時に載置可能な第2左側計量台としての左側傾斜計量台410と、当該車両100の全ての右側車輪120,120,…が同時に載置可能な第2右側計量台としての右側傾斜計量台420と、を有している。これら左側傾斜計量台410および右側傾斜計量台420は、互いに同一形状かつ同一寸法の金属製傾斜台であり、詳しくは、それぞれの上面は、傾斜面とされており、それぞれの下面(厳密には後述する各ロードセル412,412,…,422,422,…の上方側端部との接触部分およびその周辺部分)は、水平面とされている。特に上面は、これを上方から見ると概略矩形であり、後方から見ると水平方向に対して反時計回りにθという所定の角度だけ傾斜している。なお、この傾斜角度θは、鋭角であり、例えば10度である。そして、これら左側傾斜計量台410および右側傾斜計量台420は、それぞれの上面の一方長辺が車両100の通行方向102に沿いつつ互いに適当な隙間42を隔てて平行を成し、かつ、当該上面が通行路60(路面)と共に水平方向に対して角度θを成す一連の傾斜面(ただし隙間42等の遊び部分を除く)44を形成するように、設けられている。このため、左側傾斜計量台410および右側傾斜計量台420を含む傾斜側計量部40付近では、通行路60も同様に、水平方向に対して角度θを成して傾斜している。この左側傾斜計量台410および右側傾斜計量台420の隙間42を含む総合の上面幅寸法L3は、上述の左側水平計量台210および右側水平計量台220の総合幅寸法L1と基本的に同じ(L3=L1)である。そして、当該左側傾斜計量台410および右側傾斜計量台420それぞれの長さ寸法L4は、左側水平計量台210および右側水平計量台220それぞれの長さ寸法L2と基本的に同じ(L4=L2)である。また、左側傾斜計量台410および右側傾斜計量台420のそれぞれは、図示しないリブ等の適当な補強部材によって補強されている。
【0040】
左側傾斜計量台410は、上述の如くその上面が通行路60と共に一連の傾斜面44を形成するように、複数の、例えば6つの、第2左側荷重検出手段としてのロードセル412,412,…によって支持されている。このため、通行路60には、上述したのとは別のピット64が形成されており、このピット64内において、当該左側傾斜計量台410がその上面を通行路60に一致させた状態で各ロードセル412,412,…によって支持されている。この左側傾斜計量台410を支持する言わば傾斜側ロードセル412,412,…は、上述した左側ロードセル212,212,…および右側ロードセル222,222,…と同一仕様のものであり、左側傾斜計量台410の下面の周縁近傍、詳しくは四隅近傍および各長辺の中央近傍、の6箇所において、それぞれの起歪体が直立姿勢で当該左側傾斜計量台410の下面とピット62の底面との間に挟まれた状態になるように配置されている。なお、左側傾斜計量台410の下面と各傾斜側ロードセル412,412,…の上方側端部とは、単に接触した状態にあり、当該左側傾斜計量台410の下面における各傾斜側ロードセル412,412,…との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。また、ピット64の底面と各傾斜側ロードセル412,412,…の下方側端部とについても、単に接触した状態にあり、当該ピット64の底面における各傾斜側ロードセル412,412,…の下方側端部との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。
【0041】
右側傾斜計量台420も同様に、その上面が左側傾斜計量台410の上面および通行路60と共に一連の傾斜面44を形成するように、ピット64内において6つのロードセル422,422,…によって支持されている。ただし、これらのロードセル422,422,…は、上述の各ロードセル212,212,…,222,222,…,412,412,…と同一仕様の起歪体を有するものの、図示しない歪ゲージを有しない、つまり荷重検出機能を有しない、いわゆるダミーである。そして、これらのダミーロードセル422,422,…は、右側傾斜計量台420の下面の周縁近傍において、それぞれの起歪体が直立姿勢で当該右側傾斜計量台420の下面とピット64の底面との間に挟まれた状態になるように配置されている。また、上述の如く一連の傾斜面44が形成されるように、ピット64の底面には段差が設けられており、つまり、当該ピット64の底面のうち各ダミーロードセル422,422,…が配置されている部分と各傾斜側ロードセル412,412,…が配置されている部分とでは互いの高さが異なる。そして、右側傾斜計量台420の下面と各ダミーロードセル422,422,…の上方側端部とは、単に接触した状態にあり、当該右側傾斜計量台420の下面における各ダミーロードセル422,422,…との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。また、ピット62の底面と各ダミーロードセル422,422,…の下方側端部とについても、単に接触した状態にあり、当該ピット62の底面における各ダミーロードセル422,422,…の下方側端部との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。
【0042】
なお、左側傾斜計量台410に車両100の全ての左側車輪110,110,…が載置されると、必然的に、右側傾斜計量台420に当該車両100の全ての右側車輪120,120,…が載置される。この状態にあるとき、車両100は、特に図3(b)に示すように、これを後方から見ると、水平方向に対して反時計回りに上述の角度θだけ傾斜した言わば傾斜姿勢となる。ただし、車両100の前後方向においては、当該車両100は水平姿勢となる。
【0043】
各傾斜側ロードセル412,412,…には、LC31,LC32,LC33,LC34,LC35およびLC36という個別の識別符号が付されている。例えば、図3(a)に示すように、左側傾斜計量台410の左側後部隅(図3(a)において左上隅)に配置されたロードセル412に、LC31という識別符号が付されており、当該左側傾斜計量台410の左側長辺の中央近傍(図3(a)において上方側長辺の中央近傍)に配置されたロードセル412に、LC32という識別符号が付されており、左側傾斜計量台410の左側前部隅(図3(a)において右上隅)に配置されたロードセル412に、LC33という識別符号が付されている。そして、左側傾斜計量台410の右側後部隅(図3(a)において左下隅)に配置されたロードセル412に、LC34という識別符号が付されており、当該左側傾斜計量台410の右側長辺の中央近傍(図3(a)において下方側長辺の中央近傍)に配置されたロードセル412に、LC35という識別符号が付されており、左側傾斜計量台410の右側前部隅(図3(a)において右下隅)に配置されたロードセル412に、LC36という識別符号が付されている。これ以降、各傾斜側ロードセル412,412,…については、当該LC31,LC32,LC33,LC34,LC35およびLC36という識別符号を用いて表現することがある。なお、各ダミーロードセル422,422,…については、特段に識別符号等は付されていない。また、図3においては、その見やすさを考慮して、図2(a)に示したような横方から見た図は省略してある。
【0044】
各傾斜側ロードセルLC31,LC32,LC33,LC34,LC35およびLC36は、左側傾斜計量台410を介して自身に印加された荷重の大きさを表す言わば傾斜側デジタル荷重検出信号W31,W32,W33,W34,W35およびW36を出力する。そして、これらの傾斜側デジタル荷重検出信号W31〜W36は、傾斜側プロセッサ50に入力される。なお、これらの傾斜側デジタル荷重検出信号W31〜W36にも、左側傾斜計量台410の荷重等の初期荷重成分および零点変動成分が含まれているが、ここでは、当該初期荷重成分および零点変動成分は各傾斜側デジタル荷重検出信号W31〜W36から排除されているものとする。
【0045】
水平側プロセッサ30は、図4に示すように、水平側計量部20の各左側ロードセルLC11〜LC16からの左側デジタル荷重検出信号W11〜W16と、当該水平側計量部20の各右側ロードセルLC21〜LC16からの右側デジタル荷重検出信号W21〜W26と、の入力を受け付ける入出力インタフェース(I/O)回路304を有している。この入出力インタフェース回路304に入力された各デジタル荷重検出信号W11〜W16およびW21〜W26は、当該入出力インタフェース回路304を経由してさらに水平側演算手段としてのCPU(Central
Processing Unit)306に入力される。また、CPU306には、上述の車両検知器70からの車両検知信号Saも、当該入出力インタフェース回路304経由で入力される。
【0046】
CPU306は、これに付随されたメモリ回路308に記憶されている水平側制御プログラムに従って動作し、この動作の1つとして、後述するように警報信号Sbを生成する。この警報信号Sbは、入出力インタフェース回路304を経由して上述の警報器80に入力される。また、CPU306は、入出力インタフェース回路304および無線通信回路310を介して、上述のアンテナ302と接続されている。無線通信回路310は、アンテナ302を用いての双方向の無線通信処理を担い、つまり変調処理および復調処理を担う。さらに、CPU306は、入出力インタフェース回路304および通信制御回路312を介して、傾斜側プロセッサ50と有線接続されており、詳しくは当該傾斜側プロセッサ50の後述するCPU504と接続されている。通信制御回路312は、傾斜側プロセッサ50との間で所定の通信規格に従ってデータ通信を行うための処理を担う。加えて、CPU306は、入出力インタフェース回路304を介して、当該CPU306に各種命令を入力する水平側命令入力手段としての操作キー314と、当該CPU306の動作に応じて各種情報を表示する水平側表示手段としてのディスプレイ316と、に接続されている。なお、操作キー314とディスプレイ316とは、互いに一体化されたものでもよく、例えばタッチスクリーンによって構成されてもよい。
【0047】
傾斜側プロセッサ50は、図5に示すように、傾斜側計量部40の各傾斜側ロードセルLC31〜LC36からの傾斜側デジタル荷重検出信号W31〜W36の入力を受け付ける入出力インタフェース(I/O)回路506を有している。この入出力インタフェース回路506に入力された各傾斜側デジタル荷重検出信号W31〜W36は、当該入出力インタフェース回路506を経由してさらに傾斜側演算手段としてのCPU504に入力される。
【0048】
CPU504は、これに付随されたメモリ回路508に記憶されている傾斜側制御プログラムに従って動作する。このCPU504の動作の詳細については、後述する。また、CPU504は、入出力インタフェース回路506および無線通信回路510を介して、上述のアンテナ502と接続されている。さらに、CPU504は、入出力インタフェース回路506および通信制御回路512を介して、水平側プロセッサ30と有線接続されており、詳しくは当該水平側プロセッサ30のCPU306と接続されている。加えて、CPU504は、入出力インタフェース回路506を介して、当該CPU504に各種命令を入力する傾斜側命令入力手段としての操作キー514と、当該CPU504の動作に応じて各種情報を表示する傾斜側表示手段としてのディスプレイ516と、に接続されている。なお、この傾斜側プロセッサ50の操作キー514とディスプレイ516とについても、互いに一体化されたものでもよく、例えばタッチスクリーンによって構成されてもよい。また、無線通信回路510および通信制御回路512は、水平側プロセッサ30のものと同様のものである。
【0049】
さらに、車載プロセッサ90は、図6に示すように、上述したアンテナ902を有している。このアンテナ902は、車載プロセッサ90の型式(タイプ)によって内蔵型とされることがある。そして、このアンテナ902は、無線通信回路904および入出力インタフェース回路906を介して、車載演算手段としてのCPU908に接続されている。CPU908は、これに付随されたメモリ回路910に記憶されている車載制御プログラムに従って動作する。このCPU908の動作の詳細については、後述する。また、CPU908は、入出力インタフェース回路906を介して、当該CPU908に各種命令を入力する車載命令入力手段としての操作キー912と、当該CPU908の動作に応じて各種情報を表示する車載表示手段としてのディスプレイ914と、に接続されている。なお、これら操作キー912とディスプレイ914とについても、互いに一体化されたものでもよく、例えばタッチスクリーンによって構成されてもよい。無線通信回路904は、水平側プロセッサ30および傾斜側プロセッサ50それぞれのものと同様のものである。
【0050】
加えて、CPU908には、入出力インタフェース回路906を介して、ICカードリーダ916が接続されている。このICカードリーダ916は、携帯可能なICカード92からこれに記録されている車両100に関する各種情報、言わば車両情報、を読み取るものである。車両情報としては、例えば車両100毎に付与された個別の車両識別コードIDと、当該車両100の全車軸数Mと、左右の両車輪110および120間の距離(中心間距離)Ldと、が含まれている。また、駆動車104と荷台車106との連結部である後述のカプラ(第5輪)Cから当該荷台車106の前輪軸に当たる第3軸までの相互間距離Leと、当該カプラCから荷台車106の後輪軸に当たる第4軸までの相互間距離Lfと、も含まれている。さらに、駆動車104が荷台車106と切り離された単体の状態で上述の水平側計量部20(左側水平計量台210および右側水平計量台220)に載置された水平姿勢にあるときの当該駆動車104単体に属する全て(駆動車104の前輪軸および後輪軸に当たる第1軸および第2軸)の左側車輪110および110に印加される荷重値、言わば駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1aと、当該駆動車104単体に属する全ての右側車輪120および120に印加される荷重値、言わば駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aと、も車両情報として含まれている。そして、駆動車104が単体の状態で上述の傾斜側計量部40(左側傾斜計量台410および右側傾斜計量部420)に載置された傾斜姿勢にあるときの当該駆動車104単体に属する全ての左側車輪110および110に印加される荷重値、言わば駆動車単体傾斜時左側車輪印加荷重値W3aも、車両情報として含まれている。なお、ここでの全車軸数Mは、M=4である。そして、駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1aと駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aと駆動車単体傾斜時左側車輪印加荷重値W3aとは、後述するように本第1実施形態の車両計量システム10によって事前に求められる。また、ICカード92は、例えばRFID(Radio Frequency
IDentification)タグを用いた非接触型のものであるが、これに代えて、外部端子を有する接触型のものであってもよい。
【0051】
併せて、CPU908には、入出力インタフェース回路906を介して、図示しない外部装置の1つであるカーナビゲーション装置も接続されている。そして、このカーナビゲーション装置から、車両100の現在位置や当該車両100が実際に通行する道路に関する情報、言わばカーナビゲーション情報が、入出力インタフェース回路906経由でCPU908に入力される。このカーナビゲーション情報は、後述するように、本第1実施形態の車両計量システム10による一連の計量を終えた車両100が実際の輸送業務に就く際に当該車両計量システム10による計量結果と絡めて利用される。
【0052】
また、CPU908には、入出力インタフェース回路906を介して、図示しない別の外部装置である車速計が接続されている。そして、この車速計から、車両100の走行速度に関する車速情報が、入出力インタフェース回路906経由でCPU908に入力される。この車速情報もまた、後述するように、本第1実施形態の車両計量システム10による一連の計量を終えた車両100が実際の輸送業務に就く際に利用される。
【0053】
さて、本第1実施形態の車両計量システム10によれば、車両100の総重量値Wtを求めることができる。併せて、車両100の左右方向における重心Gの位置および当該重心Gの高さHを求めることができ、つまり当該重心Gに関する立体的な情報を求めることができる。さらに、車両100全体ではなく、荷台車106単体の左右方向における重心G’の位置および当該重心G’の高さH’を求めることができ、つまり当該荷台車106単体についてもその重心G’の立体的な情報を求めることができる。加えて、荷台車106単体の水平方向における重心G”の位置、つまり当該荷台車106単体の平面的な重心G”の位置を、求めることができる。
【0054】
この一連の計量を実現するために、まず、車両100の運転者または同乗者による手動操作によって、上述のICカード92が車載プロセッサ90のICカードリーダ916の読み取り部にタッチされる。これにより、ICカード92内の車両情報がICカードリーダ916によって読み取られる。読み取られた車両情報は、車載プロセッサ90のメモリ回路910に記憶され、厳密にはCPU908による制御によって当該メモリ回路910に記憶される。
【0055】
その後、車両100は、通行路60を所定の順路に従って通行し、つまり図1に白抜きの矢印102で示した方向に通行する。そして、車両100が、水平側計量部20の手前に差し掛かり、車両検知器70によって検知されると、このことが、当該車両検知器70から出力される車両検知信号Saによって水平側プロセッサ30に伝えられ、厳密にはCPU306に伝えられる。これを受けて、水平側プロセッサ30(CPU306)は、車載プロセッサ90に対して車両情報の送信を要求する。この要求は、無線通信によって行われる。
【0056】
車載プロセッサ90(CPU906)は、水平側プロセッサ30からの要求を受けると、これに応答して、メモリ回路910に記憶されている車両情報を読み出し、これを無線通信によって水平側プロセッサ30に送信する。水平側プロセッサ30は、車載プロセッサ90から送信されてきた車両情報を受信すると、これを一旦、メモリ回路308に記憶する。これにより、水平側プロセッサ90は、これから計量対象となる車両100の車両情報を認識し、つまり当該車両100の識別コードIDと、全車軸数Mと、左右両車輪110および120間距離Ldと、カプラCから第3軸までの相互間距離Leと、カプラCから第4軸までの相互間距離Lfと、駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1aと、駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aと、駆動車単体傾斜時左側車輪印加荷重値W3aと、を認識する。
【0057】
そして、車両100が水平側計量部20を通行すると、つまり当該車両100の各左側車輪110,110,…が1軸分ずつ順次左側水平計量台210に載置されると共に、各右側車輪120,120,…が1軸分ずつ順次右側水平計量台220に載置されると、このうちの左側水平計量台210を支持する各左側ロードセルLC11〜LC16から、それぞれに印加される荷重の大きさを表す左側デジタル荷重検出信号W11〜W16が出力される。併せて、右側水平計量台220を支持する各右側ロードセルLC21〜LC26から、それぞれに印加される荷重の大きさを表す右側デジタル荷重検出信号W21〜W26が出力される。そして、これら各左側デジタル荷重検出信号W11〜W16および各右側デジタル荷重検出信号W21〜W26は、水平側プロセッサ30に入力される。
【0058】
ここで、各左側デジタル荷重検出信号W11〜W16について、ゼロ調整およびスパン調整が適切に成されており、当該各左側デジタル荷重検出信号W11〜W16は、それぞれに対応する左側ロードセルLC11〜LC16への印加荷重値そのものを表す、とする。水平側プロセッサ30は、これら各左側デジタル荷重検出信号W11〜W16を合算することで、各左側ロードセルLC11〜LC16への総合の印加荷重値、厳密にはその検出値W1(=W11+W12+W13+W14+W15+W16)、を求める。つまり、この言わば左側荷重検出値W1は、今現在、左側水平計量台210に載置されている1以上の左側車輪110(または110,110,…)への総合印加荷重値を表す。
【0059】
これと同様に、各右側デジタル荷重検出信号W21〜W26についても、ゼロ調整およびスパン調整が適切に成されており、当該各右側デジタル荷重検出信号W21〜W26は、それぞれに対応する右側ロードセルLC21〜LC26への印加荷重値そのものを表す、とする。水平側プロセッサ30は、これら各右側デジタル荷重検出信号W21〜W26を合算することで、各右側ロードセルLC21〜LC26への総合の印加荷重値、厳密にはその検出値W2(=W21+W22+W23+W24+W25+W26)、を求める。つまり、この言わば右側荷重検出値W1は、今現在、右側水平計量台220に載置されている1以上の右側車輪120(または120,120,…)への総合印加荷重値を表す。
【0060】
そして例えば、左側の荷重検出値W1に注目すると、この左側荷重検出値W1は、左側水平計量台210への各左側車輪110,110,…の載置状況に応じて、図7に示すように遷移する。即ち、或る時点t1において、第1軸の左側車輪110が左側水平計量台210に載置されると、左側荷重検出値W1は、それまでのW1=0という値から多少の応答時間を掛けて当該第1軸の左側車輪110への印加荷重値に応じた値W1〈1〉に遷移(増大)する。なお、この左側荷重検出値W1の遷移(立ち上がり)直後には、オーバーシュートを含む振動ノイズ230が発生する。そして、時点t1よりも後の或る時点t2において、第2軸の左側車輪110が左側水平計量台210に載置されると、左側荷重検出値W1は、第1軸および第2軸の2つの左側車輪110および110への総合の印加荷重値に応じた値W1〈12〉に遷移する。このときも、オーバーシュートを含む振動ノイズ230が発生する。さらに、時点t2よりも後の或る時点t3において、第3軸の左側車輪110が左側水平計量台210に載置されると、左側荷重検出値W1は、第1軸〜第3軸の3つの左側車輪110,110および110への総合印加荷重値に応じた値W1〈13〉に遷移し、このときも、振動ノイズ230が発生する。そして、時点t3よりも後の或る時点t5において、第4軸の左側車輪110が左側水平計量台210に載置されると、つまり第1軸〜第4軸の全ての左側車輪110,110,…が左側水平計量台210に載置されると、左側荷重検出値W1は、当該全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値に応じた値W1〈14〉に遷移する。このときも、振動ノイズ230が発生する。
【0061】
続いて、時点t4よりも後の或る時点t5において、左側水平計量台210から第1軸の左側車輪110が降りると、左側荷重検出値W1は、多少の応答時間を掛けて当該左側水平計量台210に残された第2軸〜第4軸の3つの左側車輪110,110および110への総合印加荷重値に応じた値W1〈24〉に遷移(低下)する。なお、この左側荷重検出値W1の遷移(立ち下がり)直後には、アンダーシュートを含む振動ノイズ240が発生する。そして、時点t5よりも後の時点t6において、第2軸の左側車輪110が左側水平計量台210から降りると、左側荷重検出値W1は、第3軸および第4軸の2つの左側車輪110および110への総合印加荷重値に応じた値W1〈34〉に遷移する。このときも、アンダーシュートを含む振動ノイズ240が発生する。さらに、時点t6よりも後の或る時点t7において、第3軸の左側車輪110が左側水平計量台210から降りると、左側荷重検出値W1は、第4軸の左側車輪110のみへの印加荷重値に応じた値W1〈4〉に遷移し、このときも、振動ノイズ240が発生する。そして、時点t7よりも後の或る時点t8において、第4軸の左側車輪110が左側水平計量台210から降りて当該左側水平計量台210がいわゆる無負荷状態になると、左側荷重検出値W1は、W1=0という元の値に戻る。このときも、振動ノイズ240が発生する。
【0062】
このように左側荷重検出値W1が段階的に遷移する過程において、特に当該左側検出値W1が段階的に増大する過程において、水平側プロセッサ30は、各段階における左側荷重検出値W1〈1〉,W1〈12〉,W1〈13〉およびW1〈14〉を精確に特定する。例えば、時点t1〜時点t2の最初の段階に注目すると、図8に示すように、左側荷重検出値W1がW1=0という値からW1〈1〉という値に遷移する途中で所定の閾値Wz以上(W1≧Wz)になる瞬間が、当該最初の段階の始期時点t1とされ、厳密にはそのように水平側プロセッサ30によって特定される。なお、閾値Wzは、この最初の段階における左側荷重検出値W1〈1〉として想定される標準値や各左側ロードセルLC11〜LC16の応答特性等の諸状況に応じて適宜に定められる。
【0063】
そして、時点t1の直後に、上述の如くオーバーシュートを含む振動ノイズ230が現れる。水平側プロセッサ30は、この振動ノイズ230が減衰するのを待つ。詳しくは、振動ノイズ230の第1極大点Aを特定し、この第1極大点Aが現れる時点t10を基点としてT0という所定の時間が経過するのを待ち、この待機時間T0が経過した時点t11で、当該振動ノイズ230が減衰したものとみなす。そして、この振動ノイズ230が減衰した時点t11以降、左側荷重検出値W1の変動量ΔW1を逐次求め、この変動量ΔW1が所定の基準値Wh以上(ΔW1≧Wh)となる瞬間を、最初の段階の終期時点t2とする。その上で、この終期時点t2からTjという所定の遡及時間だけ遡った時点t12を基点とし、この基点t12からTkという所定の平均化演算時間にわたる左側荷重検出値W1の平均値を求め、この平均値を当該最初の段階における左側荷重検出値W1〈1〉とする。つまり、最初の段階における左側荷重検出値値W1〈1〉は、次の式1によって求められる。なお、ここで言う基準値Wh,遡及時間Tjおよび平均化演算時間Tkもまた、諸状況に応じて適宜に定められる。そして、この式1に基づいて求められた最初の段階における左側荷重検出値W1〈1〉は、メモリ回路308に記憶される。
【0064】
《式1》
W1〈1〉={ΣW1[n−j+k]}/K where k=0〜K−1
【0065】
この式1において、nは、左側荷重検出値W1の算出時刻tの離散インデックスであり、言い換えれば当該左側荷重検出値W1の算出順を表す。なお、左側荷重検出値W1の算出周期ΔTは、例えばΔT=1msである。勿論、この値に限らない。そして、式1におけるjは、遡及時間Tjの離散化値であり、詳しくは当該遡及時間Tjを左側荷重検出値W1の算出周期ΔTで除した値(j=Tj/ΔT)である。また、Kは、平均化演算時間Tkの離散化値であり、詳しくは当該平均化演算時間Tkを左側荷重検出値W1の算出周期ΔTで除した値(K=Tk/ΔT)である。kは、離散化された平均化演算時間Kをカウントするためのインデックスである。
【0066】
ここで例えば、車両100が(左側水平計量台210にその第1軸の左側車輪110のみを載置させたままの状態で)停止するか、若しくは当該車両100の通行(移動)速度が極端に遅い場合は、図8に太破線232で示すように、左側荷重検出値W1の変動量ΔW1がいつまで経っても上述の基準値Wh以上とならず、つまり最初の段階の終期時点t2がなかなか到来しない。その一方で、左側荷重検出値W1は極めて安定した状態にある。この場合、水平側プロセッサ30は、当該極めて安定した状態にある左側荷重検出値W1から最初の段階における左側荷重検出値W1〈1〉を精確かつ確実に特定するべく、上述した待機時間T0が経過した時点t11を基点とするT1という言わば第2の待機時間が経過した時点t14で、式1に基づいて当該最初の段階における左側荷重検出値W1〈1〉を求める。このように時点t14において最初の段階における左側荷重検出値W1が求められた場合は、これ以降、時点t2が到来したときを含め、当該最初の段階における左側荷重検出値W1〈1〉を求めるための式1に基づく演算は行われない。この時点t14において最初の段階における左側荷重検出値W1〈1〉が求められた場合も、当該最初の段階における左側荷重検出値W1〈1〉は、メモリ回路308に記憶される。
【0067】
水平側プロセッサ30は、2番目以降の各段階における左側荷重検出値W1〈12〉,W1〈13〉およびW1〈14〉についても、これと同様の要領で求める。その際、上述の式1に代えて、当該式1に準拠する次の式2が用いられる。なお、この式2におけるmは、2番目以降の各段階を特定するためのインデックス(ここではm=2,3または4)である。この式2に基づいて求められた2番目以降の各段階における左側荷重検出値W1〈12〉,W1〈13〉およびW1〈14〉もまた、メモリ回路308に記憶される。
【0068】
《式2》
W1〈1m〉={ΣW1[n−j+k]}/K where k=0〜K−1
【0069】
このようにして各段階における左側荷重検出値W1〈1〉,W1〈12〉,W1〈13〉およびW1〈14〉を求め終えると、水平側プロセッサ30は、続いて直ちに、第1軸〜第4軸それぞれの左側車輪110,110,…に個別に印加される荷重値、言わば左側輪重値W1〈1〉,W1〈2〉,W1〈3〉およびW1〈4〉、を求める。このうちの第1軸の左側輪重値W〈1〉は、上述の式1に基づいて求められた最初の段階における左側荷重検出値W1〈1〉そのものである。これ以外の第2軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W1〈2〉,W1〈3〉およびW1〈4〉は、次の式3に基づいて求められる。この式3に基づいて求められた各左側輪重値W1〈2〉,W1〈3〉およびW1〈4〉もまた、メモリ回路308に記憶される。
【0070】
《式3》
W1〈2〉=W1〈12〉−W1〈1〉
W1〈3〉=W1〈13〉−W1〈12〉
W1〈4〉=W1〈14〉−W1〈13〉
【0071】
そして、水平側プロセッサ30は、左側水平計量台210から全ての左側車輪110,110,…が降りるのを待つ。具体的には、左側荷重検出値W1が上述の閾値Wzを下回った(W1<Wz)瞬間を、左側水平計量台210から全ての左側車輪110,110,…が降りた時点t8とする。つまり、左側水平計量台210が無負荷状態になったものと認識する。
【0072】
なお、式3に基づく演算は、上述の如く各段階における左側荷重検出値W1〈1〉,W1〈12〉,W1〈13〉およびW1〈14〉が求められた後の直ぐにではなく、それ以降、例えば左側水平計量台210から全ての左側車輪110,110,…が降りた時点t8の直後くらいまでに、行われればよい。また、左側荷重検出値W1が段階的に増大する過程ではなく、当該左側荷重検出値W1が段階的に低下する過程において、各段階における左側荷重検出値W1〈14〉,W1〈24〉,W1〈34〉およびW1〈4〉が求められ、ひいては第1軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W1〈1〉,W1〈2〉,W1〈3〉およびW1〈4〉が求められてもよい。
【0073】
これと同様の要領で、水平側プロセッサ30は、右側荷重検出値W2に基づいて第1軸〜第4軸それぞれの右側輪重値W2〈1〉,W2〈2〉,W2〈3〉およびW2〈4〉を求める。これらの右側輪重値W2〈1〉,W2〈2〉,W2〈3〉およびW2〈4〉もまた、メモリ回路308に記憶される。
【0074】
ここで、左側水平計量台210に全ての左側車輪110,110,…が載置されており、かつ、右側水平計量台220に全ての右側車輪120,120,…が載置されている状態を、車両100の左右方向における力学的要素のみに注目して図示すると、例えば図9のようになる。この図9によれば、全ての左側車輪110,110,…は、全ての左側ロードセルLC11〜LC16の集合体である言わば左側ロードセル群LC1によって、P1という或る位置で一括的に支持されている、とみなすことができる。このときの左側ロードセルLC1群による荷重検出値、つまり左側荷重検出値W1は、W1=W1〈14〉(=W1〈1〉+W1〈2〉+W1〈3〉+W1〈4〉)である。これと独立して、全ての右側車輪120,120,…は、全ての右側ロードセルLC21〜LC26の集合体である右側ロードセル群LC2によって、P2という或る位置で一括的に支持されている、とみなすことができる。このときの右側ロードセル群LC2による荷重検出値、つまり右側荷重検出値W2は、W2=W2〈14〉(=W2〈1〉+W2〈2〉+W2〈3〉+W2〈4〉)である。そこで、水平側プロセッサ30は、次の式4に基づいて車両100の総重量値Wtを求める。この車両100の総重量値Wtもまた、メモリ回路308に記憶される。
【0075】
《式4》
Wt=W1〈14〉+W2〈14〉
【0076】
続いて、水平側プロセッサ30は、車両100の左右方向における重心Gの位置、詳しくは当該車両100の左右方向における中心P0から重心Gまでの距離である言わば左右偏心量Lz、を求める。具体的には、左側ロードセル群LC1による支持位置P1と右側ロードセル群LC2による支持位置P2とを含む仮想の水平面24が設定される。そして、この仮想水平面24における重心Gの真下の位置Pgに当該重心Gが仮想的に転移され、この仮想重心位置Pgからさらに下方に向かって車両100の総重量Wtが荷重として作用する、と考えることができる。その上で、例えば左側支持位置P1を軸とするモーメントに注目すると、次の式5が成立する。なお、この式5におけるLxは、左側支持位置P1と仮想重心位置Pgとの相互間距離である。
【0077】
《式5》
Lx・Wt=Ld・W2〈14〉
【0078】
そして、この式5を距離Lxについての数式に変形すると、次の式6のようになる。
【0079】
《式6》
Lx={Ld・W2〈14〉}/Wt
【0080】
すると、左右偏心量Lzは、次の式7のように表される。
【0081】
《式7》
Lz=Lx−(Ld/2)
={Ld・W2〈14〉}/Wt−(Ld/2)
【0082】
この式7において、右側荷重検出値W2〈14〉は、上述の式2に基づいて算出済みであり、車両100の総重量値Wtは、式4に基づいて算出済みである。そして、左右両車輪110および120間距離Ldは、車載プロセッサ90からの車両情報の1つとして認識済みである。ゆえに、水平側プロセッサ30は、この式7に基づいて左右偏心量Lzを求める。この左右偏心量Lzもまた、メモリ回路308に記憶される。
【0083】
なお、式7から分かるように、左右偏心量Lzが例えばLz=0のときは、車両100の重心Gは、当該車両100の左右方向における中心P0に位置する。そして、左右偏心量Lzが例えばLz<0(負数)のときは、車両100の重心Gは、当該車両100の中心P0よりも左側に位置し、言わば左側偏心(偏荷重)状態にある。これとは反対に、左右偏心量LzがLz>0(正数)のときは、車両100の重心Gは、当該車両100の中心P0よりも右側に位置し、言わば右側偏心状態にある。
【0084】
さらに、水平側プロセッサ30は、荷台車106単体の重量Wt’による左右方向における重心G’の位置を求め、つまり当該荷台車106単体の左右偏心量Lz’を求める。具体的には、図9に示した状態にあるときの左側ロードセル群LC1による左側荷重検出値W1〈14〉から上述の車両情報の1つである駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1aを差し引くことで、つまり次の式8に基づいて、荷台車106単体の重量Wt’による左側ロードセル群LC1への印加荷重値W1’を求める。
【0085】
《式8》
W1’=W1〈14〉−W1a
【0086】
併せて、水平側プロセッサ30は、図9に示した状態にあるときの右側ロードセル群LC2による右側荷重検出値W2〈14〉から車両情報の1つである駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aを差し引くことで、つまり次の式9に基づいて、荷台車106単体の重量Wt’による右側ロードセル群LC2への印加荷重値W2’を求める。
【0087】
《式9》
W2’=W2〈14〉−W2a
【0088】
そして、水平側プロセッサ30は、これら式8に基づく荷台車106単体の重量Wt’による左側印加荷重値W1’と式9に基づく当該荷台車106単体の重量Wt’による右側印加荷重値W2’とを合算することで、つまり次の式10に基づいて、当該荷台車106単体の重量値Wt’を求める。この荷台車106単体の重量値Wt’は、メモリ回路308に記憶される。
【0089】
《式10》
Wt’=W1’+W2’
【0090】
その上で、水平側プロセッサ30は、上述の式7における右側荷重検出値(言い換えれば車両100全体による右側印加荷重値)W2〈14〉に代えて、式9に基づく荷台車106単体の重量Wt’による右側印加荷重値W2’を用いると共に、当該式7における車両100の総重量値Wtに代えて、式10に基づく荷台車106単体の重量値Wt’を用いることで、つまり次の式11に基づいて、荷台車106単体の左右偏心量Lz’を求める。この荷台車単体左右偏心量Lz’もまた、メモリ回路308に記憶される。
【0091】
《式11》
Lz’=Ld・(W2’/Wt’)−(Ld/2)
【0092】
なお、この式11から分かるように、荷台車単体左右偏心量Lz’が例えばLz’=0のときは、荷台車106単体の重心G’は、当該荷台車106を含む車両100全体の左右方向における中心P0に位置する。そして、荷台車単体左右偏心量Lz’が例えばLz’<0のときは、荷台車106単体の重心G’は、車両100の中心P0よりも左側に位置し、つまり左側偏心状態にある。これとは反対に、荷台車単体左右偏心量Lz’がLz’>0のときは、荷台車106単体の重心G’は、車両100の中心P0よりも右側に位置し、つまり右側偏心状態にある。
【0093】
加えて、水平側プロセッサ30は、荷台車106単体を支持する点が、第3軸の左右両車輪110および120と、第4軸の左右両車輪110および120と、第5輪としてのカプラC(厳密には荷台車106側の図示しないキングピンとの連結部)と、であることを踏まえて、当該荷台車106単体の水平方向における重心G”の位置を求める。具体的には、図10に示すように、カプラCを含む水平面において、当該カプラCを原点Oとする仮想のX−Y直交座標が設定される。なお、図10においては、車両100の左右方向がX軸方向とされており、当該車両100の前後方向(進退方向)がY軸方向とされている。また、P11およびP21という符号が付された各点は、第1軸の左右両車輪110および120の接地位置であり、P12およびP22という符号が付された各点は、第2軸の左右両車輪110および120の接地位置である。そして、P13およびP23という符号が付された各点は、第3軸の左右両車輪110および120の接地位置であり、P14およびP24という符号が付された各点は、第4軸の左右両車輪110および120の接地位置である。
【0094】
このような仮想座標が設定された上で、水平側プロセッサ30は、第1軸および第2軸の各左側輪重値W1〈1〉およびW1〈2〉を合算することによって、これら第1軸および第2軸という駆動車104単体に属する全ての左側車輪110および110への総合印加荷重値、言わば駆動車総合左側印加荷重値W1〈12〉(=W1〈1〉+W1〈2〉)、を求める。なお、上述の図7を参照しながら説明したように、左側荷重検出値W1が段階的に増大する過程において時点t2〜時点t3の2番目の段階における当該左側荷重検出値W1〈12〉が特定された場合は、これが当該駆動車総合左側印加荷重値W1〈12〉として採用されてもよい。そして、水平側プロセッサ30は、この駆動車総合左側印加荷重値W1〈12〉から上述の駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1aを差し引くことで、つまり次の式12に基づいて、荷台車106単体の重量Wt’による駆動車104の全左側車輪110および110への印加荷重値、言わば第5輪左側印加荷重値W1〈12〉”、を求める。
【0095】
《式12》
W1〈12〉”=W1〈12〉−W1a
【0096】
併せて、水平側プロセッサ30は、第1軸および第2軸の各右側輪重値W2〈1〉およびW2〈2〉を合算することによって、これら第1軸および第2軸という駆動車104単体に属する全ての右側車輪120および120への総合印加荷重値、言わば駆動車総合右側印加荷重値W2〈12〉(=W2〈1〉+W2〈2〉)、を求める。なお、この駆動車総合右側印加荷重値W2〈12〉についても、これに先立って、上述の時点t2〜時点t3の2番目の段階における右側荷重検出値W2〈12〉が特定されている場合は、これが当該駆動車総合右側印加荷重値W2〈12〉として採用されてもよい。そして、水平側プロセッサ30は、この駆動車総合右側印加荷重値W2〈12〉から上述の駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aを差し引くことで、つまり次の式13に基づいて、荷台車106単体の重量Wt’による駆動車104の全右側車輪120および120への印加荷重値、言わば第5輪右側印加荷重値W2〈12〉”、を求める。
【0097】
《式13》
W2〈12〉”=W2〈12〉−W2a
【0098】
さらに、水平側プロセッサ30は、これら式12に基づく第5輪左側印加荷重値W1〈12〉”と式13に基づく第5輪右側印加荷重値W2〈12〉”とを合算することで、つまり次の式14に基づいて、カプラCに印加される荷台車106単体の重量Wt’による荷重値、いわゆる第5輪荷重値W5を、求める。
【0099】
《式14》
W5=W1〈12〉”+W2〈12〉”
【0100】
ここで、X軸方向における力学的要素の相互関係を図示すると、図11のようになる。この図11において、例えば第3軸および第4軸の各左側車輪110および110の接地位置P13およびP14を軸とするモーメントに注目すると、次の式15が成立する。なお、この式15におけるLx”は、左側接地位置P13およびP14と荷台車106単体の水平方向重心G”との相互間距離である。
【0101】
《式15》
Lx”・Wt’=(Ld/2)・W5+Ld・(W2〈3〉+W2〈4〉)
【0102】
そして、この式15を距離Lx”についての数式に変形すると、次の式16のようになる。
【0103】
《式16》
Lx” ={(Ld/2)・W5+Ld・(W2〈3〉+W2〈4〉)}/Wt’
【0104】
そうすると、原点OであるカプラCから荷台車単体水平方向重心G”までの距離、言わばX軸方向偏心量Lz”は、次の式17のように表される。
【0105】
《式17》
Lz”=Lx”−(Ld/2)
={(Ld/2)・W5+Ld・(W2〈3〉+W2〈4〉)}/Wt’−(Ld/2)
【0106】
水平側プロセッサ30は、この式17に基づいてX軸方向偏心量Lz”を求める。なお、この式17から分かるように、X軸方向偏心量Lz”が例えばLz”=0のときは、荷台車単体水平方向重心G”は、当該荷台車106を含む車両100全体の左右方向における中心P0に位置する。そして、X軸方向偏心量Lz”が例えばLz”<0のときは、荷台車単体水平方向重心G”は、車両100の中心P0よりも左側に位置する。これとは反対に、X軸方向偏心量Lz”がLz”>0のときは、荷台車単体水平方向重心G”は、車両100の中心P0よりも右側に位置する。このX軸方向偏心量Lz”は、次に説明するY軸方向重心距離Ly”と共に、荷台車単体水平方向重心G”の位置を表す座標値[Lz”,Ly”]としてメモリ回路308に記憶される。
【0107】
続いて、Y軸方向における力学的要素の相互関係を図示すると、図12のようになる。そして、この図12において、例えば原点OであるカプラCを軸とするモーメントに注目すると、次の式18が成立する。なお、この式18におけるLy”は、カプラCから荷台車単体水平方向重心G”までの相互間距離、言わばY軸方向重心距離である。そして、Leは、カプラCから第3軸までの相互間距離であり、Lfは、当該カプラCから第4軸までの相互間距離であり、これらの距離LeおよびLfは、車載プロセッサ90からの車両情報として認識される。
【0108】
《式18》
Ly”・Wt’=Le・(W1〈3〉+W2〈3〉)+Lf・(W1〈4〉+W2〈4〉)
【0109】
そして、この式18をY軸方向重心距離Lx”についての数式に変形すると、次の式19のようになる。
【0110】
《式19》
Ly” ={Le・(W1〈3〉+W2〈3〉)+Lf・(W1〈4〉+W2〈4〉)}/Wt’
【0111】
水平側プロセッサ30は、この式19に基づいてY軸方向重心距離Ly”を求める。この式19から分かるように、Y軸方向重心距離Lz”は、常にLy”>0である。このY軸方向重心距離Ly”は、上述の如くX軸方向偏心量Lz”と共に、荷台車単体水平方向重心G”の位置を表す座標値[Lz”,Ly”]としてメモリ回路308に記憶される。
【0112】
なお、上述の式4〜式19に基づく演算は、少なくとも左側水平計量台210から全ての左側車輪110,110,…が降りた時点t8の直後くらいまでに行われ、例えば上述の式3に基づく演算の直後に行われる。そして、水平側プロセッサ30は、このうちの式7に基づく車両100全体の左右偏心量Lzと、式11に基づく荷台車106単体の左右偏心量Lz’と、式17および式19に基づく荷台車単体水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、に基づいて、車両100が転倒する危険性が高いかどうかを判定する。
【0113】
例えば、式7に基づく車両100全体の左右偏心量Lzに関して、その絶対値|Lz|が極端に大きい場合、つまり車両100の左右方向における重心Gが中心P0から極端に離れている場合、当該車両100は転倒する危険性が高い。そこで、水平側プロセッサ30は、次の式20に基づいて車両100の左右偏荷重率Reを求める。
【0114】
《式20》
Re=Lz/(Ld/2)
【0115】
そして、水平側プロセッサ30は、この車両100の左右偏荷重率Reの絶対値|Re|が例えば次の式21を満足するか否かを判定する。
【0116】
《式21》
0≦|Re|<1/2
【0117】
この式21が満足されるとき、水平側プロセッサ30は、車両100の左右方向における重心Gのバランスが比較的に良好であり、この重心Gのバランスに起因して車両100が転倒する危険性は低い、と判定する。一方、式21が満足されないときは、車両100が転倒する危険性が高い、と判定する。
【0118】
また、式11に基づく荷台車106単体の左右偏心量Lz’に関しても、その絶対値|Lz’|が極端に大きい場合、つまり荷台車106単体の左右方向における重心G’が中心P0から極端に離れている場合は、当該荷台車106を含む車両100全体が転倒する危険性が高い。そこで、水平側プロセッサ30は、式20に準拠する次の式22に基づいて荷台車106単体の左右偏荷重率Re’を求める。
【0119】
《式22》
Re=Lz/(Ld/2)
【0120】
そして、水平側プロセッサ30は、この荷台車106単体の左右偏荷重率Re’の絶対値|Re’|が例えば式21に準拠する次の式23を満足するか否かを判定する。
【0121】
《式23》
0≦|Re’|<1/2
【0122】
この式23が満足されるとき、水平側プロセッサ30は、荷台車106単体の左右方向における重心G’のバランスが比較的に良好であり、この荷台車106単体の重心G’のバランスに起因して当該荷台車106を含む車両100全体が転倒する危険性は低い、と判定する。一方、式23が満足されないときは、車両100が転倒する危険性が高い、と判定する。
【0123】
さらに、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置が極端に偏っている場合も、当該荷台車106を含む車両100全体が転倒する危険性がある。そこで、水平側プロセッサ30は、図10に示した仮想座標において、同図に斑点模様108で示す安全領域を設定する。そして、上述の式17および式19に基づく座標値[Lz”,Ly”]によって特定される荷台車単体水平方向重心G”の位置が、この安全領域108内にあるか否かを確認する。例えば、荷台車単体水平方向重心G”の位置が、この安全領域108内にあるときは、当該荷台車単体水平方向重心G”のバランスが比較的に良好であり、この荷台車単体水平方向重心G”のバランスに起因して荷台車106単体を含む車両100全体が転倒する危険性は低い、と判定する。一方、荷台車単体水平方向重心G”の位置が、安全領域108内にないときは、車両100が転倒する危険性が高い、と判定する。
【0124】
なお、図10における安全領域108は、カプラCと、第4軸の左側車輪110の接地位置P14と、第4軸の右側車輪110の接地位置P24と、を頂点とする三角形状の領域であるが、これに限らない。例えば、図13に示すように、カプラCの台座の左右縁部P01およびP02と、第3軸の左側車輪110の接地位置と、第3軸の右側車輪120の接地位置と、を頂点とする台形状の領域であってもよいし、これ以外の形状および大きさの領域であってもよい。
【0125】
これら車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lz(左右偏荷重率Re)に基づく判定と、荷台車106単体の重心G’の位置を表す左右偏心量Lz’(左右偏荷重率Re)に基づく判定と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置を表す座標値[Lz”,Ly”]に基づく判定と、のいずれにおいても、車両100が転倒する危険性が低い、つまり安全である、という判定が成された場合、水平側プロセッサ30は、その旨を表す安全メッセージを、ディスプレイ316に表示する。併せて、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]とを、ディスプレイ316に表示する。
【0126】
そして、水平側プロセッサ30は、車載プロセッサ90に対して、安全である旨の判定結果を無線通信により送信する。併せて、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]とを、当該無線通信により車載プロセッサ90に送信する。このとき、水平側プロセッサ30から車載プロセッサ90に対して、上述した車両情報の1つである車両識別コードIDが付随して送信される。
【0127】
さらに、水平側プロセッサ30は、傾斜側プロセッサ50に対して、計量の準備を行うよう通知する。この通知は、有線通信によって行われる。併せて、水平側プロセッサ30は、上述の車両情報と、少なくとも車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏心量Lzと、荷台車106単体の重量値Wt’と、荷台車106単体の左右偏心量Lz’とを、当該有線通信によって傾斜側プロセッサ50に送信する。
【0128】
車載プロセッサ90は、水平側プロセッサ30から安全である旨の判定結果を受信すると、これに付随する車両識別コードIDが自身のものと一致することを確認した上で、当該判定結果をメモリ回路910に記憶する。そして、安全メッセージをディスプレイ914に表示する。併せて、車載プロセッサ90は、当該判定結果と一緒に送られてきた車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、を受信し、これらについても、メモリ回路910に記憶すると共に、ディスプレイ914に表示する。
【0129】
このように、車両100が転倒する危険性が低く、安全であり、その旨を表す安全メッセージが車載プロセッサ90のディスプレイ914に表示されると、これを受けて、当該車両100は、図1に白抜きの矢印102で示したように傾斜側計量部40へと進む。
【0130】
これとは反対に、上述の車両100全体の左右偏心量Lz(左右偏荷重率Re)に基づく判定と、荷台車106単体の左右偏心量Lz’(左右偏荷重率Re)に基づく判定と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]に基づく判定と、の少なくともいずれかにおいて、車両100が転倒する危険性が高い、という判定が成された場合、水平側プロセッサ30は、その旨を表す警告メッセージを、ディスプレイ316に表示する。併せて、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、についても、ディスプレイ316に表示する。なお、このディスプレイ316に表示される車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、のうち、車両100の転倒の危険性が高いという判定要因になったものは、特別な態様で表示され、例えば赤色文字等で表示される。
【0131】
併せて、水平側プロセッサ30は、上述した警報器80から警報を発生させるための警報信号Sbを出力する。これを受けて、警報器80は警報を発する。
【0132】
さらに、水平側プロセッサ30は、車載プロセッサ90に対して、車両100の転倒の危険性が高い旨の判定結果を無線通信により送信する。併せて、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、を当該無線通信により車載プロセッサ90に送信する。また、この車載プロセッサ90に送信する車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、のうち、車両100の転倒の危険性が高いという判定要因になったものは、その旨を表す注記符号を付した上で、送信する。このときも、水平側プロセッサ30から車載プロセッサ90に対して、車両識別コードIDが付随して送信される。
【0133】
なお、このように車両100の転倒の危険性が高い場合は、水平側プロセッサ30は、傾斜側プロセッサ50に対しては特段な処理(有線通信)を行わない。
【0134】
車載プロセッサ90は、水平側プロセッサ30から車両100の転倒の危険性が高い旨の判定結果を受信すると、これに付随する車両識別コードIDが自身のものと一致することを確認した上で、当該判定結果をメモリ回路910に記憶する。そして、警告メッセージをディスプレイ914に表示する。併せて、車載プロセッサ90は、当該判定結果と一緒に送られてきた車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、を受信し、これらについても、メモリ回路910に記憶すると共に、ディスプレイ914に表示する。さらに、このディスプレイ914に表示する車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、のうち、車両100の転倒の危険性が高いという判定要因になったもの、厳密には上述の注記符号が付されたもの、については、赤色文字等の特別な態様で表示する。
【0135】
このように、車載プロセッサ90のディスプレイ914に警告メッセージが表示されると共に、警報器80から警報が発せられると、これを受けて、車両100(運転手)は、一旦、本第1実施形態の車両計量システム10による計量を終了(中断)する。そして、上述の車両100全体の左右偏心量Lz(左右偏荷重率Re)に基づく判定と、荷台車106単体の左右偏心量Lz’(左右偏荷重率Re)に基づく判定と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]に基づく判定と、の各結果に基づいて、車両100の各重心G,G’およびG”のバランスが検証され、特に荷台車106の図示しない荷物の積載状態が検証される。そして、当該荷台車106の荷物の積載状態が改善可能な場合には、その改善が試みられた後、改めて最初から本第1実施形態の車両計量システム10による計量が行われる。
【0136】
なお例えば、車両100が転倒する危険性が高いと判定された状態で、当該車両100がそのまま傾斜側計量部40を通行する、とすると、次のような不都合が生じる。即ち、車両100が傾斜側計量台40を通行する際には、当該車両100は上述したように傾斜姿勢になる。このとき、車両100の各重心G,G’およびG”の位置によっては、特にこれら各重心G,G’およびG”の位置が車両100の中心P0から左側に大きく離れている場合には、当該車両100の転倒の危険性がさらに高くなる。このような極めて危険な状況の発生を回避するべく、車両100が転倒する危険性が高いと判定された場合には、上述の如く本第1実施形態の車両計量システム10による計量が途中で終了され、傾斜側計量台40への車両100の通行が禁止される。
【0137】
さて、車両100の転倒の危険性が低く、安全な場合には、当該車両100は、図1に白抜きの矢印102で示したように傾斜側計量部40へと進む。その一方で、傾斜側プロセッサ50は、厳密にはCPU504は、水平側プロセッサ30から計量準備通知を受けることで、今現在、当該車両100が傾斜側計量部40に向かって移動中であることを認識する。また、傾斜側プロセッサ50は、当該計量準備通知に付随して送られてきた車両情報と、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏心量Lzと、荷台車106単体の重量値Wt’と、荷台車106単体の左右偏心量Lz’と、を受信して、これらを一旦、メモリ回路508に記憶する。
【0138】
そして、車両100が傾斜側計量部40を通行すると、つまり当該車両100の各左側車輪110,110,…が1軸分ずつ順次左側傾斜計量台410に載置されると共に、各右側車輪120,120,…が1軸分ずつ順次右側傾斜計量台420に載置されると、このうちの左側傾斜計量台410を支持する各傾斜側ロードセルLC31〜LC36から、それぞれに印加される荷重の大きさを表す傾斜側デジタル荷重検出信号W31〜W36が出力される。そして、これら各傾斜側デジタル荷重検出信号W31〜W36は、傾斜側プロセッサ50に入力される。
【0139】
ここで、各傾斜側デジタル荷重検出信号W31〜W36についても、ゼロ調整およびスパン調整が適切に成されており、当該各傾斜側デジタル荷重検出信号W31〜W36は、それぞれに対応する傾斜側ロードセルLC31〜LC36への印加荷重値そのものを表す、とする。傾斜側プロセッサ50は、これら各傾斜側デジタル荷重検出信号W31〜W36を合算することで、各傾斜側ロードセルLC31〜LC36への総合の印加荷重値、厳密にはその検出値W3(=W31+W32+W33+W34+W35+W36)、を求める。この言わば傾斜側荷重検出値W3は、今現在、左側傾斜計量台410に載置されている1以上の左側車輪110(または110,110,…)への総合印加荷重値を表す。このとき、車両100は、上述の如く傾斜姿勢にある。
【0140】
そして、傾斜側プロセッサ50は、当該傾斜側荷重検出値W3に基づいて、車両100が傾斜姿勢にあるときの第1軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W3〈1〉,W3〈2〉,W3〈3〉およびW3〈4〉を求める。なお、これら各左側輪重値W3〈1〉,W3〈2〉,W3〈3〉およびW3〈4〉の算出要領は、上述した水平側プロセッサ30による各左側輪重値W1〈1〉,W1〈2〉,W1〈3〉およびW1〈4〉の算出要領、ならびに各右側輪重値W2〈1〉,W2〈2〉,W2〈3〉およびW2〈4〉の算出要領と、同様である。
【0141】
図14は、左側傾斜計量台410に全ての左側車輪110,110,…が載置されており、かつ、右側傾斜計量台420に全ての右側車輪120,120,…が載置されている状態を、車両100の左右方向における力学的要素のみに注目して図示したものである。この図14によれば、全ての左側車輪110,110,…は、図3(a)に示した傾斜面44上のP3という或る位置において一括的に支持されており、この支持位置P3に印加される荷重W3は、当該支持位置P3の真下の位置P3’を一括的に支持する全ての傾斜側ロードセルLC31〜LC36の集合体である言わば傾斜側ロードセル群LC3に対してそのまま印加される、とみなすことができる。このときの傾斜側ロードセルLC3群による荷重検出値、つまり傾斜側荷重検出値W3は、W3=W3〈14〉(=W3〈1〉+W3〈2〉+W3〈3〉+W3〈4〉)である。これと独立して、全ての右側車輪120,120,…は、傾斜面44上のP4という或る位置において一括的に支持されており、この支持位置P4に印加される荷重W4は、当該支持位置P4の真下の位置P4’を一括的に支持する全てのダミーロードセル422,422,…の集合体であるダミーロードセル群LC4に対してそのまま印加される、とみなすことができる。なお、傾斜側ロードセル群LC3による支持位置P3’とダミーロードセル群LC4による支持位置P4’とは、仮想の水平面46内にある、とされる。さらに、車両100の左右方向における重心Gが、傾斜面44における当該重心Gの真下の位置Pg’に仮想的に転移され、この仮想重心位置Pg’から下方に向かって当該車両100の総重量Wtが荷重として作用する、とみなされる。そして、この車両100の総重量Wtによる荷重は、仮想水平面46に転移された重心位置Pgaから下方に向かって作用する、とみなすこともできる。
【0142】
これを踏まえて、傾斜側プロセッサ50は、車両100全体の重心Gの高さHを求める。例えば、ダミーロードセル群LC4による支持位置P4’を軸とするモーメントに注目すると、次の式24が成立する。
【0143】
《式24》
Ld・cosθ・W3〈14〉={(Ld−Lx)+H・tanθ}・cosθ・Wt
【0144】
そして、この式24を高さHについての数式に変形すると、次の式25のようになる。
【0145】
《式25》
H={Ld・W3〈14〉−(Ld−Lx)・Wt}/(Wt・tanθ)
【0146】
この式25において、傾斜側荷重検出値W3〈14〉は、図14の状態にあるときの傾斜側荷重検出器W3そのものであり、つまり既知である。そして、車両100の総重量値Wtは、水平側プロセッサ30から与えられ、左右両車輪110および120間距離Ldは、当該水平側プロセッサ30を介して車両情報の1つとして与えられる。さらに、距離Lxは、上述の式7の変形式である次の式26に基づいて求められる。そして、傾斜角度θは、既知であり、例えば操作キー514による手動操作によって事前に設定さる。傾斜側プロセッサ50は、この式25に基づいて車両100全体の重心Gの高さHを求める。この車両100全体の重心高さHは、メモリ回路508に記憶される。
【0147】
《式26》
Lx=Lz+(Ld/2)
【0148】
併せて、傾斜側プロセッサ50は、荷台車106単体の左右方向における重心G’の高さH’を求める。具体的には、図14に示した状態にあるときの傾斜側荷重検出値W3〈14〉から上述の車両情報の1つである駆動車単体傾斜時左側車輪印加荷重値W3aを差し引くことで、つまり次の式27に基づいて、荷台車106単体の重量Wt’による傾斜側ロードセル群LC3への印加荷重値W3’を求める。
【0149】
《式27》
W3’=W3〈14〉−W3a
【0150】
そして、傾斜側プロセッサ50は、上述の式25に準拠する次の式28に基づいて、荷台車106単体の重心G’の高さH’を求める。この荷台車106単体の重心高さH’もまた、メモリ回路508に記憶される。
【0151】
《式28》
H’={Ld・W3’−(Ld−Lx’)・Wt’}/(Wt’・tanθ)
【0152】
なお、この式28は、式25における傾斜側荷重検出値(言い換えれば車両100全体の重量Wtによる傾斜側印加荷重値)W3〈14〉に代えて、式27に基づく荷台車106単体の重量Wt’による傾斜側印加荷重値W3’を用いると共に、当該式25における車両100の総重量値Wtに代えて、上述の式10に基づく荷台車106単体の重量値Wt’を用い、さらに、式25における距離Lxに代えて、上述の式26に準拠する次の式29に基づく距離Lx’を用いたものである。
【0153】
《式29》
Lx’=Lz’+(Ld/2)
【0154】
このようにして車両100全体の重心高さHと荷台車106単体の重心高さH’とを求め終えると、傾斜側プロセッサ50は、これらをディスプレイ516に表示する。併せて、当該各重心高さHおよびH’を車載プロセッサ90に送信する。この送信は、無線通信によって行われる。このとき、傾斜側プロセッサ50から車載プロセッサ90に対して、上述の車両識別コードIDが付随して送信される。
【0155】
車載プロセッサ90は、傾斜側プロセッサ50から各重心高さHおよびH’を受信すると、これに付随する車両識別コードIDが自身のものと一致することを確認した上で、当該各重心高さHおよびH’をメモリ回路910に記憶すると共に、ディスプレイ914に表示する。これをもって、本第1実施形態の車両計量システム10による一連の計量が終了する。
【0156】
この一連の計量終了後、車載プロセッサ90は、当該一連の計量によって得た情報を、車両100が実際の輸送業務に就く際の安全走行支援に利用する。
【0157】
即ち、車両100が実際の輸送業務において道路を走行する際、特にカーブを通過する際、当該車両100に遠心力が作用する。この遠心力は、車両100の運転性(安定性)に支障を来し、極端な場合には当該車両100の転倒を招く恐れがある。そこで、車載プロセッサ90は、上述の一連の計量によって得た情報、特に車両100の総重量値Wtと、当該車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lzと、当該重心Gの高さHと、を用いて、例えば車両100の走行速度がどれくらいであれば、最小でどれくらいの曲率半径のカーブを安定して走行することができるか、という車両100の走行速度とカーブの最小曲率半径との相互関係を、導き出す。そして、実際に道路を走行する際に、上述のカーナビゲーション装置から得られるカーナビゲーション情報に基づいて、先々の各カーブの曲率半径を認識すると共に、車速計から得られる車速情報に基づいて、今現在の車両100の走行速度を認識し、これらを当該相互関係と照合することで、今現在の車両100の走行速度によって先々の各カーブを安定して走行することができるかどうかを判断する。そしてもし、今現在の車両100の走行速度が過大であるのであれば、これを抑えるよう、例えばディスプレイ914へのメッセージの表示や図示しないスピーカからアラーム音を発生させることによって、運転者に注意を促す。これにより、安全走行支援が実現される。
【0158】
この安全走行支援は、飽くまでも一例であって、これとは別の要領によって、当該安全走行支援が実現されてもよい。また、車両100の総重量値Wtと、当該車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lzと、当該重心Gの高さHと、に代えて、或いはこれらに加えて、例えば荷台車106単体の重量値Wtと、当該荷台車106単体の重心G’の位置を表す左右偏心量Lz’と、当該重心G’の高さH’とが、安全走行支援(上述の相互関係の導出)に供されてもよい。勿論、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]等の他の情報が、当該安全走行支援に供されてもよい。
【0159】
ここで、水平側プロセッサ30の動作について、改めて具体的に説明する。
【0160】
即ち、水平側プロセッサ30は、上述したように水平側制御プログラムに従って動作するが、特に車両検知器70によって車両100が検知されたことを表す車両検知信号Saが当該車両検知器70から入力されると、図15の水平側制御タスクを実行する。
【0161】
この水平側制御タスクによれば、水平側プロセッサ30は、まず、ステップS101に進み、車載プロセッサ90に対して、車両情報の送信を要求する。この要求は、上述したように無線通信によって行われる。そして、水平側プロセッサ30は、ステップS103に進み、車載プロセッサ90から車両情報が送られてくるのを待つ。
【0162】
ステップS103において、車載プロセッサ90から車両情報が送られてくると、水平側プロセッサ30は、これを受信し、その後、ステップS105に進む。そして、このステップS105において、当該車両情報、つまり車両100の識別コードID,全車軸数M,左右両車輪110および120間距離Ld,カプラCから第3軸までの相互間距離Le,カプラCから第4軸までの相互間距離Lf,駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1a,駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2a,ならびに駆動車単体傾斜時左側車輪印加荷重値W3aを、一旦、メモリ回路308に記憶する。なお、ここでの全車軸数Mは、M=4である。
【0163】
そして、水平側プロセッサ30は、ステップS107に進み、後述する輪重計量タスクを実行する。この輪重計量タスクにおいては、第1軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W1〈1〉,W1〈2〉,W1〈3〉およびW1〈4〉と、当該第1軸〜第4軸それぞれの右側輪重値W2〈1〉,W2〈2〉,W2〈3〉およびW2〈4〉とが、互いに別個に求められる。厳密に言えば、各左側輪重値W1〈1〉,W1〈2〉,W1〈3〉およびW1〈4〉を求めるための輪重計量タスクと、各右側輪重値W2〈1〉,W2〈2〉,W2〈3〉およびW2〈4〉を求めるための輪重計量タスクとが、互いに独立かつ並行して実行される。
【0164】
このステップS107の輪重計量タスクの実行後、水平側プロセッサ30は、ステップS109に進む。そして、このステップS109において、上述の式4に基づいて車両100の総重量値Wtを求めた後、さらに、ステップS111に進み、上述の式7に基づいて当該車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lzを求める。
【0165】
次いで、水平側プロセッサ30は、ステップS113に進み、上述の式10に基づいて荷台車106単体の重量値Wt’を求めた後、ステップS115に進み、上述の式11に基づいて荷台車106単体の重心G’の位置を表す左右偏心量Lzを求める。そして、ステップS117に進み、上述の式17に基づいてX軸方向偏心量Lz”を求めると共に、式19に基づいてY軸方向偏心量Ly”を求める。つまり、荷台車106単体の水平方向重心Gの位置を表す座標値[Lz”,Ly”]を求める。
【0166】
ステップS117の実行後、水平側プロセッサ30は、ステップS119に進み、車両100が転倒する危険性がないかどうかの言わば安全性の評価を行う。即ち、車両100全体の左右偏心量Lzに基づいて、厳密には上述の左右偏荷重率Reが式21を満足するか否かに基づいて、車両100の転倒の危険性がないかどうか判定する。併せて、荷台車106単体の左右偏心量Lz’に基づいて、厳密には上述の左右偏荷重率Re’が式23を満足するか否かに基づいて、当該荷台車106を含む車両100全体の転倒の危険性がないかどうかを判定する。加えて、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]が図10に示した安全領域108内にあるか否かに基づいて、当該荷台車106を含む車両100全体の転倒の危険性がないかどうかを判定する。これらの判定の全てにおいて、車両100の転倒の危険性が低い、という判定が成された場合、安全である、という評価を下す。一方、少なくともいずれかの判定において、車両100の転倒の危険性が高い、という判定が成された場合は、危険である、という評価を下す。
【0167】
そして、水平側プロセッサ30は、ステップS121に進み、先のステップS119における評価結果を無線通信によって車載プロセッサ90に送信する。このとき併せて、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]とを、車両識別コードIDと共に、車載プロセッサ90に送信する。なお例えば、ステップS119における評価結果が危険を意味する場合、車載プロセッサ90に送信される車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、のうち、当該危険という評価要因になったものについて、上述の注記符号が付される。
【0168】
ステップS121の実行後、水平側プロセッサ30は、ステップS123に進み、上述のステップS119における評価結果が安全を意味するものであるか否かを判断する。ここで例えば、当該評価結果が安全を意味する場合、水平側プロセッサ30は、ステップS125に進む。そして、このステップS125において、当該安全である旨を表す安全メッセージを一定期間(数秒間〜数十秒間)にわたってディスプレイ316に表示する。併せて、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]とを、ディスプレイ316に表示する。
【0169】
その上で、水平側プロセッサ30は、ステップS127に進み、傾斜側プロセッサ50に対して、計量準備を通知する。この通知は、上述したように有線通信によって行われる。併せて、水平側プロセッサ30は、上述した車両情報と、少なくとも車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏心量Lzと、荷台車106単体の重量値Wt’と、荷台車106単体の左右偏心量Lz’とを、当該有線通信によって傾斜側プロセッサ50に送信する。
【0170】
このステップS127の実行後、水平側プロセッサ30は、ステップS129に進み、メモリ回路308に一時的に記憶された車両情報等の諸データを消去する等の初期の状態に復帰するための処理を行い、これをもって、水平側制御タスクを終了する。
【0171】
一方、上述のステップS123における評価結果が危険を意味するものである場合、水平側プロセッサ30は、当該ステップS123からステップS131に進む。そして、このステップS131において、当該危険である旨を表す警告メッセージを一定期間(数秒間〜数十秒間)にわたってディスプレイ316に表示する。併せて、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]とを、ディスプレイ316に表示する。さらに、このディスプレイ316に表示される車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、のうち、当該危険という評価要因になったものについては、赤色文字等の特別な態様で表示する。
【0172】
そして、水平側プロセッサ30は、ステップS133に進み、上述した警報器80から警報を発生させるための警報信号Sbを一定期間(数秒間〜数十秒間)にわたって出力する。これを受けて、警報器80は、当該一定期間にわたって警報を発する。このステップS133の実行後、水平側プロセッサ30は、ステップS129を経由して、水平側制御タスクを終了する。
【0173】
次に、上述のステップS107の輪重計量タスクについて、図16〜図18を参照して詳しく説明する。なお、この輪重計量タスクは、上述したように各左側輪重値W1〈1〉,W1〈2〉,W1〈3〉およびW1〈4〉を求めるためのものと、各右側輪重値W2〈1〉,W2〈2〉,W2〈3〉およびW2〈4〉を求めるためのものとが、互いに並行して実行される。つまり、各左側輪重値W1〈1〉,W1〈2〉,W1〈3〉およびW1〈4〉を求めるための図16〜図18に示す手順に従う処理と、各右側輪重値W2〈1〉,W2〈2〉,W2〈3〉およびW2〈4〉を求めるための当該図16〜図18に示す手順に従う処理とが、互いに別個に実行される。また、この輪重計量タスクに入る前に、後述するFa,Fb,F0,F1およびF2という各フラグに初期値としての0が設定されると共に、nというインデックスの値に初期値としての0が設定される。併せて、mという別のインデックスの値に初期値としての1が設定されると共に、C0およびC1という各カウンタのカウント値がリセットされ、つまり0とされる。
【0174】
この輪重計量タスクによれば、水平側プロセッサ30は、まず、図16のステップS201に進み、目的の荷重検出値Wxを求める。この目的の荷重検出値Wxとは、例えば当該輪重計量タスクが左側輪重値W1〈1〉,W1〈2〉,W1〈3〉およびW1〈4〉を求めるために実行される場合には、左側荷重検出値W1(=W11+W12+W13+W14+W15+W16)のことを指す。また、当該輪重計量タスクが右側輪重値W2〈1〉,W2〈2〉,W2〈3〉およびW2〈4〉を求めるために実行される場合には、目的の荷重検出値Wxは、右側荷重検出値W2(=W21+W22+W23+W24+W25+W26)を指す。なお、当該輪重計量タスクは、後述するように傾斜側プロセッサ50によっても実行され、つまり車両100が傾斜姿勢にあるときの各左側輪重値W3〈1〉,W3〈2〉,W3〈3〉およびW3〈4〉を求めるためにも実行される。この場合、目的の荷重検出値Wxは、傾斜側荷重検出値W3(=W31+W32+W33+W34+W35+W36)を指す。
【0175】
このステップS201の実行後、水平側プロセッサ30は、ステップS203に進み、当該ステップS201における荷重検出値Wxの算出順(算出時刻)を表すインデックスnの値を1だけインクリメントする。そして、ステップS205に進み、このインデックスnの値を今現在の(つまり直近のステップS201において求められた)荷重検出値Wxに関連付ける。
【0176】
さらに、水平側プロセッサ30は、ステップS207に進み、Faというフラグに0が設定されているか否かを判断する。なお、このフラグFaは、図7を参照しながら説明した各段階における荷重検出値Wx〈1〉〜Wx〈1M〉(ここでは、M=4である。)の全てが算出済みであるか否かを表す指標であり、当該各段階における荷重検出値Wx〈1〉〜Wx〈1M〉の全てが算出済みである場合には、Fa=1となり、そうでない場合には、Fa=0となる。このステップS207において、例えば当該フラグFaがFa=0である場合、つまり各段階における荷重検出値Wx〈1〉〜Wx〈1M〉の全てが未だ算出済みでない場合、水平側プロセッサ30は、ステップS209に進む。
【0177】
ステップS209において、水平側プロセッサ30は、Fbという別のフラグに0が設定されているか否かを判断する。このフラグFbは、当該輪重計量タスクによる計量が実際に行われている最中であるか否かを表す指標であり、言い換えれば車両100が水平側計量部20(傾斜側プロセッサ50が当該輪重計量タスクを実行する際には傾斜側計量部40)に乗り込んでいるか否かを表す指標である。例えば、当該輪重計量タスクによる計量が実際に行われている最中である場合には、Fb=1となり、そうでない場合には、Fb=0となる。このステップS209において、フラグFbがFb=0である場合、つまり当該輪重計量タスクによる計量が実際には未だ行われていない場合、水平側プロセッサ30は、ステップS211に進む。
【0178】
ステップS211において、水平側プロセッサ30は、今現在の荷重検出値Wx[n]と、図8を参照しながら説明した閾値Wzと、を比較する。ここで例えば、今現在の荷重検出値Wx[n]が閾値Wzよりも小さい(Wx[n]<Wz)場合、水平側プロセッサ30は、未だ車両100が水平側計量部20に乗り込んでいないものと判断する。そして、ステップS201に戻り、改めて荷重検出値Wxを算出する。なお、図示は省略するが、ステップS201は、上述したΔTという一定の周期で実行され、厳密にはそうなるように当該ステップS201の実行タイミングが計られている。
【0179】
一方、ステップS211において、今現在の荷重検出値Wx[n]が閾値Wz以上(Wx[n]≧Wz)である場合、水平側プロセッサ30は、車両100が水平側計量部20に乗り込んだものと判断し、厳密には当該車両100の第1軸が水平側計量部20に乗り込んだものと判断する。そして、ステップS213に進み、上述のフラグFbに1を設定し、その後、ステップS201に戻る。このようにフラグFbに1が設定されると、これ以降、水平側プロセッサ30は、上述のステップS209を改めて実行する際、当該ステップS209から図17のステップS215に進む。
【0180】
図17のステップS215において、水平側プロセッサ30は、F1というさらに別のフラグに0が設定されているか否かを判断する。このフラグF1は、図8を参照しながら説明したT1という第2の待機時間のカウント中であるか否かを表す指標であり、当該第2の待機時間T1のカウント中である場合には、F1=1となり、そうでない場合には、F1=0となる。このステップS215において、当該フラグF1がF1=0である場合、つまり第2の待機時間T1のカウント中でない場合、水平側プロセッサ30は、ステップS217に進む。
【0181】
ステップS217において、水平側プロセッサ30は、F0というさらに別のフラグに0が設定されているか否かを判断する。このフラグF0は、図8を参照しながら説明した振動ノイズ230が減衰するのを待つための言わば第1の待機時間T0のカウント中であるか否かを表す指標であり、当該第1の待機時間T0のカウント中である場合には、F0=1となり、そうでない場合には、F0=0となる。このステップS217において、当該フラグF0がF0=0である場合、つまり第1の待機時間T0のカウント中でない場合、水平側プロセッサ30は、ステップS219に進む。
【0182】
ステップS219において、水平側プロセッサ30は、F2というさらに別のフラグに0が設定されているか否かを判断する。このフラグF2は、上述の第2の待機時間T1が経過したか否かを表す指標であり、当該第2の待機時間T1が経過した場合に、F2=1となり、そうでない場合には、F2=0となる。このステップS219において、当該フラグF2がF2=0である場合、つまり第2の待機時間T1が経過していない場合、水平側プロセッサ30は、ステップS221に進む。
【0183】
ステップS221において、水平側プロセッサ30は、今現在の荷重検出値Wx[n]と、その1つ前の時点[n−1]で求められた荷重検出値Wx[n−1]と、を比較する。ここで例えば、今現在の荷重検出値Wx[n]が1つ前の荷重検出値Wx[n−1]以上(Wx[n]≧Wz)である場合、つまり当該荷重検出値W[n]が増大傾向にある場合、水平側プロセッサ30は、図16のステップS201に戻り、改めて荷重検出値Wxを算出する。
【0184】
一方、ステップS221において、今現在の荷重検出値Wx[n]が1つ前の荷重検出値Wx[n−1]よりも小さい(Wx[n]<Wz)場合、つまり当該荷重検出値Wx[n]が増大傾向から減少傾向に転じた場合、水平側プロセッサ30は、上述の振動ノイズ230の第1極大点Aが現れたものと判断する。そして、ステップS223に進み、フラグF0に1を設定し、その後、ステップS225に進む。なお、このようにフラグF0に1が設定されると、これ以降、水平側プロセッサ30は、上述のステップS217を改めて実行する際、当該ステップS217から直接ステップS225に進む。
【0185】
ステップS225において、水平側プロセッサ30は、上述の第1の待機時間T0をカウントするためのカウンタのカウント値C0を1だけインクリメントする。そして、ステップS227に進み、このインクリメント後のカウント値C0と、当該第1の待機時間T0の離散化値Q0(=T0/ΔT)と、を比較する。ここで例えば、カウント値C0が離散化された第1待機時間Q0に満たない(C0<Q0)場合、つまり未だ第1待機時間T0が経過しておらず振動ノイズ230が十分に減衰していないものとみなされる場合は、図16のステップS201に戻り、改めて荷重検出値Wxを算出する。一方、当該カウント値C0が離散化された第1待機時間Q0に達した(C0≧Q0)場合、つまり第1待機時間T0が経過して振動ノイズ230が十分に減衰したものとみなされる場合は、ステップS227からステップS229に進む。
【0186】
ステップS229において、水平側プロセッサ30は、今現在の荷重検出値Wx[n]を、当該荷重検出値Wxの最小値Wminおよび最大値Wmaxとして設定する。そして、ステップS231に進み、上述のカウント値C0をリセットした後、ステップS233に進み、上述のフラグF1に1を設定する。さらに、ステップS235に進み、フラグF0に0を設定し直して、その後、図16のステップ201に戻る。なお、このようにフラグF1に1が設定されると共に、フラグF0に0が設定し直されることによって、これ以降、水平側プロセッサ30は、上述のステップS215を改めて実行する際、当該ステップS215から図18のステップS237に進む。
【0187】
ステップS237において、水平側プロセッサ30は、今現在の荷重検出値Wx[n]と、現時点での最小荷重検出値Wminと、を比較する。ここで例えば、今現在の荷重検出値Wx[n]が最小荷重検出値Wminよりも小さい(Wx[n]<Wmin)場合は、ステップS239に進み、当該今現在の荷重検出値Wx[n]を新たな最小荷重検出値Wminとして設定し、つまり最小荷重検出値Wminを更新し、その後、ステップS241に進む。一方、ステップS237において、今現在の荷重検出値Wx[n]が最小荷重検出値Wmin以上(Wx[n]≧Wmin)の場合には、ステップS243に進む。
【0188】
ステップS243において、水平側プロセッサ30は、今現在の荷重検出値Wx[n]と、現時点での最大荷重検出値Wmaxと、を比較する。ここで例えば、今現在の荷重検出値Wx[n]が最大荷重検出値Wmaxよりも大きい(Wx[n]>Wmax)場合は、ステップS245に進み、当該今現在の荷重検出値Wx[n]を新たな最大荷重検出値Wmaxとして設定し、つまり最大荷重検出値Wmaxを更新し、その後、ステップS241に進む。なお、ステップS243において、今現在の荷重検出値Wx[n]が最大荷重検出値Wmax以下(Wx[n]≦Wmax)の場合、つまり当該今現在の荷重検出値Wx[n]が1つ前の荷重検出値Wx[n−1]と等価(W[n]=Wx[n−1])の場合には、そのままステップS241に進む。
【0189】
ステップS241において、水平側プロセッサ30は、現時点での最大荷重検出値Wmaxから現時点での最小荷重検出値Wminを差し引き、その絶対値|Wmax−Wmin|を、荷重検出値Wx[n]の変動量ΔWxとする。その上で、ステップS247に進み、この変動量ΔWxと、上述した基準値Whと、を比較する。ここで例えば、変動量ΔWxが基準値Wh以上(ΔWx≧Wh)である場合、つまり上述の第2の待機時間T1が経過する前に車両100の次の車軸が水平側計量部20に乗り込んだ場合は、ステップS249に進む。一方、変動量ΔWxが基準値Whよりも小さい(ΔWx<Wh)場合には、ステップS247からステップS251に進み、第2待機時間T1をカウントするためのカウンタのカウント値C1を1だけインクリメントした後、ステップS253に進む。
【0190】
ステップS253において、水平側プロセッサ30は、ステップS251におけるインクリメント後のカウント値C1と、第2待機時間T1の離散化値Q1(=T1/ΔT)と、を比較する。ここで例えば、カウント値C1が離散化された第2待機時間Q1に満たない(C1<Q1)場合、つまり第2待機時間T1が未だ経過していない場合は、図16のステップS201に戻る。一方、当該カウント値C1が離散化された第2待機時間Q1に達した(C1≧Q1)場合、つまり第2待機時間T1が経過して荷重検出値Wx[n]が極めて安定した状態にあるとみなされる場合は、ステップS255に進み、上述のフラグF2に1を設定した後、ステップS249に進む。
【0191】
ステップS249において、水平側プロセッサ30は、今現在、図7に示した各段階のうちのいずれの段階にあるのかを確認し、厳密には当該段階を表すインデックスmの値がm=1であるか否かを判断する。言い換えれば、インデックスmの値は、今現在、水平側計量部20に車両100の何番目までの車軸が乗り込んでいるのかの言わば車軸番号を表しており、ゆえに、当該ステップS249においては、今現在、水平計量部20に車両100の第1軸のみが乗り込んでいる状態にあるか否かの判断が成される。ここで例えば、インデックスmの値がm=1のとき、つまり水平側計量部20に車両100の第1軸のみが乗り込んでいる状態にあるときは、ステップS257に進む。そして、このステップS257において、当該水平側計量部20に車両100の第1軸のみが乗り込んでいる状態にあるときの荷重検出値Wx〈1〉を、上述の式1(W2〈1〉およびW3〈1〉については式1の準拠式)に基づいて求める。その後、ステップS259に進む。
【0192】
一方、ステップS249において、インデックスmの値がm=1でないとき、つまり車両100の第1軸のみならず当該第1軸〜第m軸が水平側計量部20に乗り込んでいる状態にあるときは、水平側プロセッサ30は、ステップS261に進む。そして、このステップS261において、当該車両100の第1軸〜第m軸が水平側計量部20に乗り込んでいる状態にあるときの荷重検出値Wx〈1m〉を、上述の式2(W2〈1m〉およびW3〈1m〉については式2の準拠式)に基づいて求める。その後、ステップS259に進む。
【0193】
ステップS259において、水平側プロセッサ30は、上述のフラグF1に0を設定し直した後、ステップS263に進み、上述のカウント値C1をリセットし、さらに、ステップS265に進む。そして、このステップS265において、インデックスmの値と、その最大値である全車軸数Mと、を比較する。なお、この全車軸数Mは、上述したようにM=4である。ここで例えば、当該インデックスmの値が全車軸数Mよりも小さい(m<M)場合、つまり未だ車両100の全ての車軸が水平側計量部20に乗り込んでいない場合は、ステップS267に進む。そして、このステップS267において、インデックスmの値を1だけインクリメントした後、図16のステップS201に戻る。一方、ステップS265において、インデックスmの値が全車軸数Mと等価(m=M)である場合、要するに図7に示した各段階における荷重検出値Wx〈1〉〜Wx〈14〉の全てが算出された場合は、ステップS269に進む。そして、このステップS269において、上述のフラグFaに1を設定した後、図16のステップS201に戻る。
【0194】
なお、上述のステップS255において、フラグF2に1が設定されると、つまり第2待機時間T1が経過したことが確定されると、これ以降、水平側プロセッサ30は、図17のステップS219を改めて実行する際、当該ステップS219からステップS271に進む。そして、このステップS271〜ステップS279にわたって、上述の図18のステップS237〜ステップS245にわたる処理と同様、必要に応じて最小荷重検出値Wminまたは最大荷重検出値Wmaxを更新すると共に、荷重検出値Wx[n]の変動量ΔWxを求める。そして、ステップS281に進み、図18のステップS247と同様、当該変動量ΔWxと、上述の基準値Whと、を比較する。
【0195】
ステップS281において、例えば変動量ΔWxが基準値Wh以上である場合、つまり上述の第2の待機時間T1が経過した後に車両100の次の車軸が水平側計量部20に乗り込んだ場合、水平側プロセッサ30は、ステップS183に進む。そして、このステップS183において、フラグF2に0を設定し直した後、上述の第1極大点Aを特定するべく、ステップS221に進む。一方、変動量ΔWxが基準値Whよりも小さい場合は、図16のステップS201に戻る。
【0196】
また、図18のステップS269において、フラグFaに1が設定されると、つまり図7に示した各段階における荷重検出値Wx〈1〉〜Wx〈1M〉の全てが算出されると、これ以降、水平側プロセッサ30は、図16のステップS207を改めて実行する際、当該ステップS207からステップS285に進む。そして、このステップS285において、上述の式3(またはその準拠式)に基づいて、第2軸〜第4軸それぞれの輪重値Wx〈2〉,Wx〈3〉およびWx〈4〉を求める。なお、第1軸の輪重値Wx〈1〉は、上述したように最初の段階における荷重検出値Wx〈1〉そのものである。
【0197】
ステップS285の実行後、水平側プロセッサ30は、ステップS287に進む。そして、このステップS287において、今現在の荷重検出値Wx[n]と上述の閾値Wzとを比較して、当該今現在の荷重検出値Wx[n]が閾値Wzを下回ったか否かを確認する。即ち、水平側計量部20から車両100の全ての車軸が降りるのを待つ。ここで例えば、今現在の荷重検出値Wx[n]が閾値Wz以上(Wx[n]≧Wz)である場合、つまり未だ水平側計量部20から車両100の全ての車軸が降りていない場合は、ステップS201に戻る。一方、今現在の荷重検出値Wx[n]が閾値Wzを下回った(Wx[n]<Wz)場合、つまり水平側計量部20から車両100の全ての車軸が降りた場合は、ステップS289に進む。
【0198】
ステップS289において、水平側プロセッサ30は、上述のフラグFbに0を設定し直す。そして、ステップS291に進み、フラグFaに0を設定し直した後、ステップS293に進み、車軸番号を表すインデックスmの値をその初期値である1に戻し、さらに、ステップS295に進み、上述のステップS201における荷重検出値Wxの算出順を表すインデックスnの値をその初期値である0に戻す。このステップS295の実行をもって、水平側プロセッサ30は、一連の車軸計量タスクを終了する。
【0199】
このような水平側プロセッサ30の動作に対して、傾斜側プロセッサ50は、具体的に次のように動作する。
【0200】
即ち、傾斜側プロセッサ50は、上述したように傾斜側制御プログラムに従って動作するが、水平側プロセッサ30から有線通信によって計量準備通知を受けると、図19に示す傾斜側制御タスクを実行する。
【0201】
この傾斜側制御タスクによれば、傾斜側プロセッサ30は、まず、ステップS301に進み、水平側プロセッサ30から計量準備通知と共に受信した諸データ、つまり車両識別コードID等の車両情報と、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏心量Lzと、荷台車106単体の重量値Wt’と、荷台車106単体の左右偏心量Lz’とを、一旦、メモリ回路508に記憶する。そして、ステップS303に進み、水平側プロセッサ30によるのと同じ要領で、図16〜図18に示した車軸計量タスクを実行する。これにより、車両100が傾斜側計量部40に乗り込んでいる状態にあるときの、つまり当該車両100が傾斜姿勢にあるときの、各左側輪重値W3〈1〉,W3〈2〉,W3〈3〉およびW3〈4〉が求められる。
【0202】
このステップS303の輪重計量タスクの実行後、傾斜側プロセッサ50は、ステップS305に進み、上述の式25(式26を含む)に基づいて車両100全体の重心Gの高さHを求める。さらに、ステップS307に進み、上述の式28(式27および式29を含む)に基づいて荷台車106単体の重心G’の高さH’を求める。なお、これら式25および式28の演算で用いられる傾斜角度θは、予めメモリ回路508に記憶されている。そして、傾斜側プロセッサ50は、ステップS309に進み、各重心高さHおよびH’を無線通信によって車載プロセッサ90に送信する。
【0203】
ステップS309の実行後、傾斜側プロセッサ50は、ステップS311に進み、一連の計量が終了したことを表す終了メッセージを一定期間(数秒間〜数十秒間)にわたってディスプレイ516に表示する。このとき併せて、各重心高さHおよびH’を当該ディスプレイ516に表示する。そして、ステップS313に進み、メモリ回路508一時的に記憶された車両情報等の諸データを消去する等の初期の状態に復帰するための処理を行い、これをもって、傾斜側制御タスクを終了する。
【0204】
続いて、車載プロセッサ90の動作について、具体的に説明する。
【0205】
即ち、傾斜側プロセッサ50は、上述したように車載制御プログラムに従って動作するが、ICカード92からの車載情報の読み取り処理を経て、その上で、水平側プロセッサ30から無線通信によって車両情報送信要求を受けると、図20に示す車載制御タスクを実行する。
【0206】
この車載制御タスクによれば、車載プロセッサ90は、まず、ステップS401に進み、メモリ回路910に記憶されている車両情報を読み出し、これを無線通信によって水平側プロセッサ30に送信する。そして、ステップS403に進み、水平側プロセッサ30から安全性評価の結果が送られてくるのを待つ。この間、車両100は、水平側計量部20に乗り入れる。
【0207】
ステップS403において、水平側プロセッサ30から安全性評価結果を受信すると、車載プロセッサ90は、この安全性評価結果に付随して送られてきた車両識別コードIDが自身のものと一致することを確認した上で、ステップS405に進み、当該安全性評価結果をメモリ回路910に記憶する。なお、水平側プロセッサ30からは、この安全性評価結果と共に、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、が送られてくるので、車載プロセッサ90は、これらについてもメモリ回路910に記憶する。
【0208】
そして、車載プロセッサ90は、ステップS407に進み、水平側プロセッサ30から送られてきた安全性評価結果が安全である旨を表すものであるか否かを判断する。ここで例えば、当該安全性評価結果が安全である旨を表すものである場合は、ステップS409に進み、安全メッセージをディスプレイ914に表示する。併せて、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、をもディスプレイ914に表示する。そして、ステップS411に進む。なお、このディスプレイ914への安全メッセージ等の表示を受けて、車両100は、水平側計量部20から傾斜側計量部40に向かって移動する。また、当該安全メッセージ等の表示は、後述するステップS415における各重心高さHおよびH’の表示が消えるまで継続される。
【0209】
ステップS411において、車載プロセッサ90は、傾斜側プロセッサ50から各重心高さHおよびH’が送られてくるのを待つ。この間、車両100は、傾斜側計量部40に乗り込む。そして、傾斜側プロセッサ50から各重心高さHおよびH’が送られてくると、車載プロセッサ90は、これに付随する車両識別コードIDが自身のものと一致することを確認した上で、ステップS413に進み、当該各重心高さHおよびH’をメモリ回路910に記憶する。さらに、車載プロセッサ90は、ステップS415に進み、上述の安全メッセージ等の表示に加えて、当該各重心高さHおよびH’を一定期間(数秒間〜数十秒間)にわたってディスプレイ914に表示する。これをもって、車載制御タスクが終了し、ひいては本第1実施形態の車両計量システム10による一連の計量が終了する。
【0210】
一方、上述のステップS407において、水平側プロセッサ30から送られてきた安全性評価結果が危険である旨を表す場合には、車載プロセッサ90は、当該ステップS407からステップS417に進む。そして、このステップS417において、警告メッセージを一定期間(数秒間〜数十秒間)にわたってディスプレイ914に表示する。併せて、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、をもディスプレイ914に表示する。さらに、このディスプレイ914に表示される車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、のうち、当該危険という評価要因になったもの、厳密には上述の注記符号が付されたもの、については、赤色文字等の特別な態様で表示する。そして、このステップS417の実行をもって、一旦、車載制御タスクを終了する。
【0211】
なお、このようにディスプレイ914に警告メッセージが表示されるときは、併せて、上述の警報器80から警報が発せられる。これを受けて、車両100は、一旦、本第1実施形態の車両計量システム10による計量を終了(中断)する。そして、当該警告メッセージと共にディスプレイ914に表示される車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車106単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、に基づいて、車両100の各重心G,G’およびG”のバランスが検証され、特に荷台車106の積載状態が検証される。
【0212】
以上のように、本第1実施形態の車両計量システム10によれば、車両100の総重量Wtのみならず、当該車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lzと、当該重心Gの高さHと、荷台車106単体の重心G’の位置を表す左右偏心量Lz’と、当該重心G’の高さHと、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、が言わば総合的に求められる。これらは、車両100の安全走行の維持、言い換えれば当該車両100による安全輸送の維持に、大きく貢献する。しかも、車両100にとっては、言わば通行路60を通行するだけで、当該総合計量が実現される。従って、車両の重心高さを求めるのに複数の工程を経る必要のある上述した従来技術に比べて、遥かに効率よく当該総合計量を実現することができる。
【0213】
なお、例えば図21に示すように、通行路60が直線状である場合には、水平側計量部20と傾斜側計量部40とは、当該通行路60の延伸方向に沿って言わば直列に配置される。そして、水平側計量部20の手前(図21において左側)には、当該水平側計量部20(左側水平計量台210および右側水平計量台220)の上面と同様の水平面を成し、かつ、少なくとも車両100の最遠軸距Lbよりも大きめの距離L10(>Lb)を持つ、アプローチ部分AP1が設けられる。このようなアプローチ部分AP1が設けられることで、車両100が水平側計量部20に乗り込む際のロール方向への捻れが防止される。これは、上述した左右各輪重値W1〈2〉,W1〈3〉,W1〈4〉およびW2〈1〉,W2〈2〉,W2〈3〉,W2〈4〉を精確に求めるための必須の要件である。また、傾斜側計量部40の手前(図21において左側)にも、当該傾斜側計量部40(左側傾斜計量台410および右側傾斜計量台420)の上面と同様の傾斜面を成し、かつ、少なくとも車両100の最遠軸距Lbよりも大きめの距離L20(>Lb)を持つ、アプローチ部分AP2が設けられる。このようなアプローチ部分AP2が設けられることで、車両100が傾斜側計量部40に乗り込む際のロール方向への捻れが防止され、ひいては当該車両100が傾斜姿勢にあるときの各左側輪重値W3〈1〉,W3〈2〉,W3〈3〉およびW3〈4〉の算出が精確に行われる。
【0214】
また、例えば図22や図23に示すように、通行路60がカーブを有する場合には、水平側計量部20と傾斜側計量部40とは、いずれも当該カーブから外れた直線状の部分に配置されるのが、望ましい。そして、この場合も、それぞれの手前にアプローチ部分AP1およびAP2が設けられることが、肝要である。ただし、厳密に言えば、傾斜側計量部40の手前のアプローチ部分AP2については、その距離L20が車両100の最遠軸距Lb以下(L20≦Lb)であってもよい。その理由は、上述の式25および(式27を含む)式28から分かるように、傾斜側計量部40を用いて各重心高さHおよびH’が求められる際、個々の左側輪重値W3〈1〉,W3〈2〉,W3〈3〉およびW3〈4〉は不必要であり、当該傾斜側計量部40(左側傾斜計量台410および右側傾斜計量台420)に全ての車輪110,110,…および120,120,…が載置されている状態にあるときの傾斜側荷重検出値W3〈14〉が得られれば足りるからである。
【0215】
さらに、上述した車両情報としての駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1a,駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aおよび駆動車単体傾斜時左側車輪印加荷重値W3aは、駆動車104のみが単体で被計量物とされたときの本第1実施形態の車輌計量システム10による計量結果に基づいて事前に求められる。具体的には、まず、駆動車104のみが単体で水平側計量部20に乗り込み、つまり当該駆動車104に属する全ての左側車輪110および110が左側水平計量台210に載置されると共に、当該駆動車104に属する全ての右側車輪120および120が右側水平計量台220に載置される。この状態にあるときの左側荷重検出値W1が、駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1aとされ、右側荷重検出値W2が、駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aとされる。次いで、駆動車104単体が傾斜側計量部40に乗り込み、つまり当該駆動車104に属する全ての左側車輪110および110が左側傾斜計量台410に載置されると共に、当該駆動車104に属する全ての右側車輪120および120が右側傾斜計量台420に載置される。この状態にあるときの傾斜側荷重検出値W3が、駆動車単体傾斜時左側車輪印加荷重値W3aとされる。なお、これ以外の要領によって、例えば本第1実施形態の車輌計量システム10とは別の計量装置によって、当該各印加荷重値W1a,W2aおよびW3aが求められてもよい。
【0216】
本第1実施形態で説明した内容は、本発明を実現するための一具体例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0217】
例えば、車両100として、4軸のセミトレーラを挙げたが、これに限らない。4軸以外のセミトレーラやフルトレーラの計量にも、本発明を適用することができる。また、トレーラ以外のトラックや乗用車等の計量にも、当然に本発明を適用することができる。
【0218】
そして、傾斜側計量部40を構成する右側傾斜計量台420については、ダミーロードセル422,422,…によって支持されることとしたが、これに限らない。即ち、上述した各数式から分かるように、右側傾斜計量台420への印加荷重値W4は、当該各数式のいずれにも算出要素として含まれないので、右側傾斜計量台420そのものが設けられなくてもよい。ただし、車両100が通行路60(路面)を繰り返し通行することによる当該通行路60の摩耗や損傷を防止するために、例えば図24に示すような概略矩形の金属製保護板430が設けられてもよい。なお、このように右側傾斜計量台420が非設置とされた場合、車両100の右側車輪120,120,…が通行路60(または保護板430)によって拘束されるため、その影響が当該車両100の左側車輪110,110,…への荷重W3の印加状況に及び、多少ではあるが計量精度が低下する恐れがある。従って、高い計量精度を得るには、本第1実施形態(図3(b)等)のように、右側傾斜計量台420を設けると共に、これをダミーロードセル422,422,…によって支持する構成とすること、つまり車両100の左右両車輪110,110,…および120,120,…の載置条件を互いに揃えることが、望ましい。
【0219】
また、右側傾斜計量台420ではなく、これに代えて、左側傾斜計量台410が非設置とされてもよい。さらに、これら左側傾斜計量台410および右側傾斜計量台420に代えて、水平側計量部20を構成するの左側水平計量台210または右側水平計量台220が非設置とされてもよい。即ち、詳しい算出要領は省略するが、左側傾斜計量台410,左側水平計量台210および右側水平計量台220のいずれかが非設置とされた場合でも、本第1実施形態で説明したのと同様の総合計量を実現することができる。
【0220】
加えて、図25に示すように、水平側計量部20を構成する各ロードセル212,212,…および222,222,…については、それぞれの上方側端部のみが概略球状に突出し、それぞれの下方側端部はピット62の底面(基礎面)に固定される構造のいわゆるシングルコンベックス型のものであってもよい。ただし、このシングルコンベックス型のものが採用された場合、車両100の載荷によって計量台210または220が撓むと、この計量台210または220の下面との接触部分において「すべり」が生じ、それぞれに横方向の荷重が作用する。そして、この横荷重は、計量精度の低下を招く。従って、高い計量精度を得るには、ダブルコンベックス型のものが採用されるのが、望ましい。
【0221】
なお、多少の計量精度の低下が許されるのであれば、図26に示すように、傾斜側計量部40の各ロードセル412,412,…についても、シングルコンベックス型のものが採用されてもよい。また、この図26に示す構成おいては、図24に示した構成と同様、右側傾斜計量台420に代えて保護板430が設けられているが、当該右側傾斜計量台420が設けられると共に、この右側傾斜計量台420がシングルコンベックス型のダミーロードセル422,422,…によって支持される構成とされてもよい。
【0222】
さらに、傾斜側計量部40の各ロードセル412,412,…として、シングルコンベックス型のものが採用される場合には、図27に示すように、当該各ロードセル412,412…によって支持される左側傾斜計量台410が概略矩形平板とされると共に、ピット64の底面が水平方向に対して上述の傾斜角度θを成す傾斜面とされ、このピット64の底面に各ロードセル412,412,…が当該傾斜角度θだけ傾斜した状態で固定されてもよい。この構成によれば、図26に示した構成に比べて、特にピット64および左側傾斜計量台410の構造が簡素であるので、当該ピット64および左側傾斜計量台410の低コスト化を図ることができる。その一方で、各ロードセル412,412,…への横荷重が増大するため、計量精度がさらに低下する恐れがある。また、車両100全体の重心Gの高さHを求める要領が、上述したのとは異なり、次の要領による。
【0223】
即ち、図27に示す左側傾斜計量台410に全ての左側車輪110,110,…が載置されており、かつ、右側保護板430に全ての右側車輪120,120,…が載置されている状態を、車両100の左右方向における力学的要素のみに注目して図示すると、図28のようになる。この図28によれば、全ての左側車輪110,110,…は、傾斜面44上のP3”という或る位置において、傾斜側ロードセル群LC3によって一括的に支持されている、とみなされる。ただし、傾斜側ロードセル群LC3によって検出されるのは、全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重W3ではなく、当該総合印加荷重W3のうち傾斜側ロードセル群LC3に対して真っ直ぐ(垂直)に印加される成分W3”である。つまり、この図28の状態にあるときの傾斜側ロードセル群LC3による荷重検出値W3〈14〉は、W3〈14〉=W3”=W3・cosθである。そして、全ての右側車輪120,120,…は、傾斜面44上のP4”という或る位置において、一括的に支持される、とみなされる。さらに、傾斜面44上に仮想転移された車両100全体の重心Gの位置Pg”から下方に向かって当該車両100の総重量Wtが荷重として作用する、とみなされる。
【0224】
ここで例えば、右側車輪120,120,…の支持位置P4”を軸とするモーメントに注目すると、次の式30が成立する。なお、この式30は、図14に示した状態にあるときのモーメントの釣り合い式である上述の式24に準拠する。
【0225】
《式30》
Ld・cosθ・W3={(Ld−Lx)+H・tanθ}・cosθ・Wt
【0226】
そして、この式30を高さHについての数式に変形すると、上述の式25に準拠する次の式31のようになる。
【0227】
《式31》
H={Ld・W3−(Ld−Lx)・Wt}/(Wt・tanθ)
【0228】
さらに、この式31における荷重値W3は、W3=W3”/cosθ=W3〈14〉/cosθであるので、これを代入すると、当該式31は、次の式32のようになる。
【0229】
《式32》
H={Ld・(W3”/cosθ)−(Ld−Lx)・Wt}/(Wt・tanθ)
={Ld・(W3〈14〉/cosθ)−(Ld−Lx)・Wt}/(Wt・tanθ)
【0230】
従って、図27に示した構成が採用される場合には、この式32に基づいて車両100全体の重心Gの高さHが求められる。また、荷台車106単体の重心G’の高さH’についても、当該式32に準拠する次の式33に基づいて求められる。なお、この式33における荷台車106単体による傾斜側ロードセル群LC3への印加荷重値W3’は、当該図27の構成が採用された上で、上述の式27に基づいて求められる。
【0231】
《式33》
H’={Ld・(W3’/cosθ)−(Ld−Lx’)・Wt’}/(Wt’・tanθ)
【0232】
そしてさらに、水平側計量部20については、図29に示すような構成とされてもよい。即ち、当該水平側計量部20を構成する左側水平計量台210が、3つの計量台210a,210bおよび210cに分割されている。このうちの最前部の計量台210aは、車両100の第1軸および第2軸の、つまり駆動車104のみに属する、2つの左側車輪110および110を載置させるためのものであり、複数の、例えば4つの、ロードセル212a,212a,…によって、その下面の四隅近傍を支持されている。そして、真ん中の計量台210bは、車両100の第3軸の、つまり荷台車106の前輪に当たる、左側車輪110を載置させるためのものであり、やはり複数の、例えば4つの、ロードセル212b,212b,…によって、その下面の四隅近傍を支持されている。さらに、最後部の計量台210cは、車両100の第4軸の、つまり荷台車106の後輪に当たる、左側車輪110を載置させるためのものであり、複数の、例えば4つの、ロードセル212c,212c,…によって、その下面の四隅近傍を支持されている。
【0233】
これと同様に、右側水平計量台220もまた、3つの計量台220a,220bおよび220cに分割されている。このうちの最前部の計量台220aは、車両100の第1軸および第2軸の、つまり駆動車104のみに属する、2つの右側車輪120および120を載置させるためのものであり、複数の、例えば4つの、ロードセル222a,222a,…によって、その下面の四隅近傍を支持されている。そして、真ん中の計量台220bは、車両100の第3軸の、つまり荷台車106の前輪に当たる、右側車輪120を載置させるためのものであり、やはり複数の、例えば4つの、ロードセル222b,222b,…によって、その下面の四隅近傍を支持されている。さらに、最後部の計量台220cは、車両100の第4軸の、つまり荷台車106の後輪に当たる、右側車輪120を載置させるためのものであり、複数の、例えば4つの、ロードセル222c,222c,…によって、その下面の四隅近傍を支持されている。
【0234】
このように構成された水平側計量部20によれば、当該水平側計量部20に車両100の全ての車輪110,110,…および120,120,…が乗り込んでいる状態にあるときの最前部の左側計量台210aを支持する各ロードセル212a,212a,…から得られる荷重検出値に基づいて、車両100の第1軸および第2軸の各左側車輪110および110への総合印加荷重値W1〈12〉が求められる。そして、真ん中の左側計量台210bを支持する各ロードセル212b,212b,…から得られる荷重検出値に基づいて、車両100の第3軸の左側車輪110への印加荷重値、つまり当該第3軸の左側輪重値W1〈3〉、が求められる。さらに、最後部の左側計量台210cを支持する各ロードセル212c,212c,…から得られる荷重検出値に基づいて、車両100の第4軸の左側車輪110への印加荷重値、つまり当該第4軸の左側輪重値W1〈4〉、が求められる。一方、最前部の右側計量台220aを支持する各ロードセル222a,222a,…から得られる荷重検出値に基づいて、車両100の第1軸および第2軸の各右側車輪120および120への総合印加荷重値W2〈12〉が求められる。そして、真ん中の右側計量台220bを支持する各ロードセル222b,222b,…から得られる荷重検出値に基づいて、車両100の第3軸の右側輪重値W2〈3〉が求められる。さらに、最後部の右側計量台220cを支持する各ロードセル212c,212c,…から得られる荷重検出値に基づいて、車両100の第4軸の右側輪重値W2〈4〉が求められる。即ち、上述した荷台車106単体の水平方向重心G”の位置(座標値[Lz”,Ly”])を求めるのに極めて好適である。
【0235】
なお、この図29の構成の水平側計量部20が採用される場合は、例えば当該水平側計量部20の車両100の乗り込み口付近と降り口付近とに、当該車両100を検知するための言わば車両乗降検知手段としての検知器250および252が設けられる。これらの検知器250および252としては、例えば上述の車両検知器70と同様のものが採用可能である。各検知器250および252は、自身による車両100の検知状況に応じた検知信号Sc1およびSc2を出力する。これらの検知信号Sc1およびSc2は、例えば車両100を検知したときにH(ハイ)レベルとなり、当該車両100を非検知のときにはL(ロー)レベルとなる。ゆえに、車両100が水平側計量部20を通行すると、各検知信号Sc1およびSc2は、図30に示すように遷移する。
【0236】
即ち、車両100が水平側計量部20に乗り込む前は、各検知信号Sc1およびSc2のいずれもLレベルである。そして、或る時点t01において、車両100が水平側計量部20に乗り込むと、つまり当該車両100の前方側端部が乗り込み口側検知器250によって検知されると、この乗り込み口側検知器250の検知信号Sc1がLレベルからHレベルになる。一方、降り口側検知器252の検知信号Sc2についてはLレベルのままである。そして、車両100が前進し、或る時点t02において、当該車両100の後方側端部が乗り込み口側検知器250を過ぎると、この乗り込み口側検知器250の検知信号Sc1がHレベルからLレベルに戻る。一方、降り口側検知器252の検知信号Sc2は依然としてLレベルのままである。さらに、車両100が前進し、或る時点t03において、当該車両100の前方側端部が降り口側検知器252によって検知されると、この降り口側検知器252の検知信号Sc2がLレベルからHレベルになり、乗り込み口側検知器250の検知信号Sc1はLレベルを維持する。そして、或る時点t04において、車両100が水平側計量部20を降りると、つまり当該車両100の後方側端部が降り口側検知器252を過ぎると、降り口側検知器252の検知信号Sc2がHレベルからLレベルに戻る。このとき、乗り込み口側検知器250の検知信号Sc1は依然としてLレベルを維持する。
【0237】
このように遷移する各検知信号Sc1およびSc2によれば、乗り口側検知信号Sc1がHレベルからLレベルになる時点t02と、その後、降り口側検知信号Sc2がLレベルからHレベルになる時点t03と、の間のTaという期間中に、車両100が完全に水平側計量部20に乗り込んだ状態にある。従って、この期間Ta中に各ロードセル212a,212a,…,212b,212b,…,212c,212c,…,222a,222a,…,222b,222b,…,212c,212c,…から得られる荷重検出値に基づいて、上述の各印加荷重値W1〈12〉,W1〈3〉,W1〈4〉,W2〈12〉,W2〈3〉およびW2〈4〉が求められ、ひいては荷台車106単体の水平方向重心G”の位置が求められる。なお、説明するまでもないが、各検知信号Sc1およびSc2は、水平側プロセッサ30に入力される。また、傾斜側計量部30については、水平側計量部20とは異なり、図3等の本第1実施形態で説明したものが採用される。
【0238】
併せて、図29に示した構成の水平側計量部20が採用される場合、つまり荷台車106単体の水平方向重心G”の位置を求めるのに必要な上述の各印加荷重値W1〈12〉,W1〈3〉,W1〈4〉,W2〈12〉,W2〈3〉およびW2〈4〉を同時に測定することのできる構成の水平側計量部20が採用される場合、図21〜図23に示した当該水平側計量部20の手前のアプローチ部分AP1の距離L10は、車両100の最遠軸距Lb以下(L10≦Lb)であってもよい。このように水平側計量部20の手前のアプローチ部分AP1が短縮化されることで、特に傾斜側計量部40の手前のアプローチ部分AP2もまた上述の如く短縮化されることで、これら各アプローチ部分AP1およびAP2を含む通行路60全体の短縮化が図られる。
【0239】
なお、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置を求める必要がない場合、言い換えればそのような要求がない場合も、各アプローチ部分AP1およびAP2の短縮化が許される。
【0240】
そして、各ロードセル212,212,…および222,222,…ならびに412,412,…として、いわゆるデジタル式のものが採用されたが、アナログ式のものが採用されてもよい。この場合、言うまでもなく、アナログ荷重検出信号をデジタル化するためのA/D変換回路が必要になる。また、状況に応じて、当該アナログ荷重検出信号を適当に増幅するための増幅回路や、当該アナログ荷重検出信号に含まれる各種ノイズを除去するためのフィルタ回路等も、適宜必要になる。
【0241】
加えて、本第1実施形態では、車載プロセッサ90にICカードリーダ916が設けられる構成としたが、これに限らない。例えば、水平側プロセッサ30の付属要素として、同様のICカードリーダが設けられてもよい。この場合、ICカードリーダは、水平側計量部20の手前の位置に設置されるのが望ましく、特に車両検知器70に代えて設置されるのが望ましい。この構成によれば、車両100がICカードリーダの近傍を通過する際に、その車両100に備えられたICカード92がICカードリーダの読み取り部にタッチされることで、当該ICカード92内の車両情報がICカードリーダによって読み取られる。読み取られた車両情報は、水平側プロセッサ30に入力される。水平側プロセッサ30は、この車両情報の入力を受けて、これから車両100が水平側計量部20に乗り込もうとしていることを認識すると共に、当該車両100の車両情報を認識する。そして、上述した要領で各処理を行う。なお、水平側プロセッサ30に入力された車両情報は、当該水平側プロセッサ30から車載プロセッサ90に対して直接的に送信(無線送信)されてもよいし、傾斜側プロセッサ50経由で送信されてもよい。また、ICカードリーダとして、通信可能距離が比較的に長い(例えば数m〜数十m程度の)ものが採用されれば、車両100が当該ICカードリーダの近傍を通過する際に、その車両に備えられたICカードから車両情報が言わば自動的に読み取られ、この車両情報の読み取りを含む一連の計量のさらなる効率化が図られる。
【0242】
また、本第1実施形態では、水平側プロセッサ30によって、車両100全体の重心Gの位置と、荷台車106単体の重心G’の位置と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置と、が求められると共に、これらに基づいて車両100の転倒の危険性がないかどうかの安全性評価が成されたが、これに限らない。例えば、水平側プロセッサ30から車載プロセッサ90に対して上述した各輪重値W1〈1〉〜W1〈4〉およびW2〈1〉〜W2〈4〉等の重量に関する情報が送信され、車載プロセッサ90側において、当該水平側プロセッサ30から送信されてきた情報に基づいて、車両100全体の重心Gの位置と、荷台車106単体の重心G’の位置と、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置と、が求められると共に、安全性評価が成されてもよい。
【0243】
これと同様に、傾斜側プロセッサ50によって求められる各重心高さHおよびH’についても、車載プロセッサ90側で求められてもよい。即ち、傾斜側プロセッサ50から車載プロセッサ90に対して上述した傾斜側荷重検出値W1〈14〉(または各左側輪重値W3〈1〉〜W3〈4〉)に関する情報が送信され、車載プロセッサ90側において、当該傾斜側プロセッサ50から送信されてきた情報に基づいて、各重心高さHおよびH’が求められてもよい。
【0244】
さらに、水平側プロセッサ30と傾斜側プロセッサ50とは、1台のプロセッサに統合されてもよい。このようにすれば、当該1台のプロセッサへの処理の負担は増大するものの、車両計量システム10全体の構成が簡素化される。
【0245】
そしてさらに、図8に示した左側荷重検出値W1を含む任意の荷重検出値Wx(W1,W2およびW3)に関して、振動ノイズ230の第1極大点Aが現れる時点t10を基点として、当該振動ノイズ230が減衰するのを待つための第1待機時間T0が計時されたが、これに限らない。例えば、荷重検出値Wxが所定の閾値Wz以上となる時点t1を基点として、当該第1待機時間T0が計時されてもよい。また、第1待機時間T0の計時に代えて、いわゆる安定判別論理が用いられてもよい。即ち、時点t1以降または時点t10以降において、荷重検出値Wxの安定度合が監視され、この安定度合が所定レベルに達したとき(つまり荷重検出値Wxが十分に安定したとき)に、当該荷重検出値Wxに含まれる振動ノイズ230が十分に減衰したものと判定される。その上で、上述の式1または式2に基づく演算が行われてもよい。
【0246】
加えて、本第1実施形態では、水平側計量部20と傾斜側計量部40とが設けられたが、これに限らない。詳しい図示は省略するが、例えば後方から見て水平方向に対して時計回りにθ’という角度だけ傾斜した第1の傾斜計量部と、反時計回りにθ”という角度だけ傾斜した第2の傾斜計量部と、が設けられ、これら各傾斜計量部によって得られる荷重検出値に基づいて、一連の計量が行われてもよい。なお、各傾斜角度θ’およびθ”は、互いに等価(θ’=θ”)であってもよいし、不等価(θ’≠θ”)であってもよい。
【0247】
このように互いに異なる方向に傾斜した2つの傾斜計量部が設けられる構成によれば、次のような利点がある。即ち、本第1実施形態で説明した水平側計量部20と傾斜側計量部40とが設けられる構成によれば、言わば水平側計量部20の出力としての左右両ロードセル群LC1およびLC2による荷重検出値W1およびW2と、傾斜側計量部40の出力としての傾斜側ロードセル群LC3による荷重検出値W2と、の相互差が顕著であるほど、車両100全体の重心高さHおよび荷台車106単体の重心高さH’を精確に求めることができる。それには、傾斜側計量部40の傾斜角度θが大きいこと、厳密には水平側計量部20と傾斜側計量部40との間でそれぞれの車両100の載置面(上面)の角度差が大きいことが、必要とされる。しかしながら、この角度差が過度に大きいと、つまり傾斜側計量部40の傾斜角度θが過度に大きいと、この傾斜側計量部40に車両100が乗り込んだときに当該車両100が転倒する危険性が極めて高くなる。これに対して、互いに異なる方向に傾斜した2つの傾斜計量部が設けられる構成によれば、それぞれの傾斜角度θ’およびθ”そのもの(絶対値)が比較的に小さくても、両者の相互差が比較的に大きいので、各重心高さHおよびH’を精確に求めることができる。例えば、一方の傾斜角度θ’の絶対値|θ’|が5度であり、他方の傾斜角度θ”の絶対値|θ”|もまた5度である、とすると、本第1実施形態で説明した水平側計量部20と傾斜側計量部40とが設けられる構成において当該傾斜側計量部40の傾斜角度θが10度であるのと略同等の精度で各重心高さHおよびH’を求めることができる。言い換えれば、一方の傾斜角度θ’の絶対値|θ’|が10度であり、他方の傾斜角度θ”の絶対値|θ’|もまた10度である、とすると、本第1実施形態において傾斜側計量部40の傾斜角度θが10度である場合に比べてより高い精度(概ね2倍の精度)で各重心高さHおよびH’を求めることができる。つまり、互いに異なる方向に傾斜した2つの傾斜計量部が設けられる構成によれば、車両100の転倒の危険性を抑えつつ、より高い精度で各重心高さHおよびH’を求めることができる。
【0248】
また、本第1実施形態では、車両計量システム10の設置場所として、輸送業者の敷地内が例示されたが、これに限らない。例えば、公的な計量所や、その他の公的または私的な場所にも当然に、当該車両計量システム10の設置が可能である。
【0249】
次に、本発明の第2実施形態について、説明する。
【0250】
本第2実施形態においては、水平側計量部20として、図31に示すようなものが採用される。即ち、この図31に示す水平側計量部20は、車両100の全車輪110,110,…および120,120,…が同時に載置される一体の水平計量台200を有する。この水平計量台200は、図示しないリブ等の適当な補強部材を備えた概略矩形の金属製平板であり、その一方主面が上面として真上に向けられると共に、他方主面が下面として真下に向けられた状態で、複数の、例えば6つの、ロードセル202,202,…によって支持されている。なお、各ロードセル202,202,…は、第1実施形態におけるのと同様のダブルコンベックス型のものであり、水平計量台200の下面の周縁近傍、詳しくは四隅近傍および各長辺の中央近傍、の6箇所を、支持するように配置されている。そして、特に図31(c)に示すように、これら各ロードセル202,202,…のうち、水平計量台200の左側長辺に沿って配置された3つのロードセル202,202および202は、左側ロードセル群LC10という1つの集合体として取り扱われ、当該水平計量台200の右側長辺に沿って配置された3つのロードセル202,202および202については、右側ロードセル群LC20という1つの集合体として取り扱われる。また、水平計量台200の幅寸法L50は、車両100の左右各車輪110,110,…および120,120,…の外側面間距離Laよりも大きく(L50>La)、当該水平計量台200の長さ寸法L51は、車両100の最遠軸距Lbよりも大きい(L51>Lb)。
【0251】
さらに、水平計量台200の一方長辺、例えば左側長辺、における略中央位置の外方には、車両100の側面までの距離L52を測定するための車両載置位置検知手段としての距離センサ260が設けられている。そして、詳しい図示は省略するが、この距離センサ260から出力される距離測定信号Sd1は、水平側プロセッサ30に入力され、厳密には入出力インタフェース回路304を介してCPU306に入力される。なお、距離センサ260としては、例えば赤外線を利用した赤外線方式のものが採用されるが、これ以外の光方式や超音波方式のものも採用可能である。また極端には、距離センサ260に代えて、ビデオカメラが設置されると共に、このビデオカメラによる撮影画像から当該距離L52が導き出されてもよい。
【0252】
併せて、傾斜側計量部40として、図32に示すようなものが採用される。即ち、この図32に示す傾斜側計量部40は、車両100の全車輪110,110,…および120,120,…が同時に載置される一体の傾斜計量台400を有するものである。この傾斜計量台400は、その上面が傾斜面とされており、下面が水平面とされたものであり、図示しないリブ等の適当な補強部材によって補強されている。特に上面は、これを上方から見ると概略矩形であり、後方から見ると水平方向に対して反時計回りに所定角度θだけ傾斜している。そして、この傾斜計量台400もまた、複数の、例えば6つの、ダブルコンベックス型のロードセル402,402,…および404,404,…によって、その下面の周縁近傍、詳しくは四隅近傍および各長辺の中央近傍、の6箇所を、支持されている。ただし、この傾斜計量台400の右側長辺に沿って配置された3つのロードセル404,404および404は、ダミーである。これら3つのダミーロードセル404,404および404は、特に図32(b)に示すように、ダミーロードセル群LC40という1つの集合体として取り扱われる。片や、傾斜計量台400の左側長辺に沿って配置された3つのロードセル402,402および402は、傾斜側ロードセル群LC30という1つの集合体として取り扱われる。なお、傾斜計量台400の上面幅寸法L70は、上述の水平計量台200の幅寸法L50と基本的に同じ(L70=L50)である。そして、当該傾斜計量台400の長さ寸法L71は、水平計量台200の長さ寸法L51と基本的に同じ(L71=L51)である。
【0253】
さらに、この傾斜計量台400の一方長辺、例えば左側長辺、における略中央位置の外方にも、図31に示したのと同様の車両載置検出手段としての距離センサ460が設けられており、この距離センサ460によって車両100の側面までの距離L72が測定される。なお、詳しい図示は省略するが、この距離センサ460から出力される距離測定信号Sd1は、傾斜側プロセッサ50に入力され、厳密には入出力インタフェース回路506を介してCPU504に入力される。
【0254】
なお、これ以外の構成、特にハードウェア構成は、第1実施形態におけるのと同様であるので、それらについての詳しい説明は省略する。
【0255】
さて、本第2実施形態の車両計量システム10によれば、第1実施形態と同様、車両100の総重量値Wtと、当該車両100全体の重心Gの位置および高さHと、荷台車106単体の重心G’の位置および高さH’と、当該荷台車106単体の水平方向重心G”の位置と、を求めることができる。
【0256】
具体的には、まず、車両100が水平側計量部20を通行することによって、当該車両100の左右両車輪110,110,…および120,120,…が1軸分ずつ順次水平計量台200に載置される。これにより、水平計量台200を介して、左側ロードセル群LC10および右側ロードセル群LC20のそれぞれに荷重が印加され、当該左側ロードセル群LC10および右側ロードセル群LC20のそれぞれによる荷重検出値W10およびW20が、図7に示したのと同様に段階的に遷移する。そして例えば、左側ロードセル群LC10による荷重検出値W10が段階的に遷移する過程において、特にこれが段階的に増大する過程において、各段階における当該左側荷重検出値W10〈1〉,W10〈12〉,W10〈13〉およびW10〈14〉が、図7(および図8)を参照しながら説明したのと同様の要領により特定される。このうちの最初の段階における左側荷重検出値W10〈1〉は、車両100の第1軸のみに対応する荷重値であり、詳しくは当該第1軸の左右両車輪110および120への総合印加荷重(いわゆる軸重)のうち左側ロードセル群LC10のみに印加される成分を表す。そして、上述した式3に準拠する次の式34に基づいて、車両100の第2軸,第3軸および第4軸のそれぞれに対応する左側荷重検出値W10〈2〉,W10〈3〉およびW10〈4〉が求められる。
【0257】
《式34》
W10〈2〉=W10〈12〉−W10〈1〉
W10〈3〉=W10〈13〉−W10〈12〉
W10〈4〉=W10〈14〉−W10〈13〉
【0258】
これと同様に、右側ロードセル群LC20による荷重検出値W20についても、これが段階的に増大する過程において、各段階における当該右側荷重検出値W20〈1〉,W20〈12〉,W20〈13〉およびW20〈14〉が特定される。そして、このうちの第1軸のみに対応する右側荷重検出値W20〈1〉に加えて、第2軸,第3軸および第4軸のそれぞれに対応する右側荷重検出値W20〈2〉,W20〈3〉およびW20〈4〉が求められる。
【0259】
ここで、車両100の左右両車輪110,110,…および120,120,…の全てが水平計量台200に載置されている状態を、当該車両100の左右方向における力学的要素にのみ注目して図示すると、例えば図33のようになる。この図33によれば、車両100は、左側ロードセル群LC10による支持位置P10と右側ロードセル群LC20による支持位置P20とを含む仮想水平面204を介して、当該左側ロードセル群LC10と右側ロードセル群LC20とによって支持された状態にある。従って、左側ロードセル群LC10による荷重検出値W10〈14〉と右側ロードセル群LC20による荷重検出値W20〈14〉とが合算されることで、つまり次の式35に基づいて、車両100の総重量値Wtが求められる。
【0260】
《式35》
Wt=W10〈14〉+W20〈14〉
【0261】
そして、左側ロードセル群LC10による荷重検出値W10〈14〉と右側ロードセル群LC20による荷重検出値W20〈14〉とは、仮想水平面204上における車両100の全左側車輪110,110,…の代表載置位置(左右方向における中心位置)P10’と全右側車輪120,120,…の代表載置位置P20’とによって変わり、つまり車両100全体の重心Gの位置によって変わる。厳密に言えば、車両100全体の重心Gが、仮想水平面204における当該重心Gの真下位置PGに転移される、とすると、この仮想水平面204における仮想重心位置PGによって、左側ロードセル群LC10による荷重検出値W10〈14〉と左側ロードセル群LC20による荷重検出値W20〈14〉との相互比率が変わる。また、仮想重心位置PGによって、車両100の全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1(ここではW1〈14〉)と全右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2(ここではW2〈14〉)との相互比率が変わり、言い換えれば当該全左側車輪110,110,…の載置位置P10’への印加荷重値(これについてもW1(ここではW1〈14〉)という符号で表す。)と全右側車輪120,120,…の載置位置P20’への印加荷重(これについてもW2(ここではW2〈14〉)という符号で表す。)との相互比率が変わる。これらを踏まえて、例えば右側ロードセル群LC20による支持位置P20を軸とするモーメントに注目すると、次の式36が成立する。
【0262】
《式36》
L53・W10〈14〉=(L53−L54)・W1〈14〉+{L53−(Ld+L54)}・W2〈14〉
【0263】
この式36において、L53は、左側ロードセル群LC10による支持位置P10と右側ロードセル群LC20による支持位置P20との相互間距離であり、既知である。そして、L54は、左側ロードセル群LC10による支持位置P10と車両100の全左側車輪110,110,…の載置位置P10’との相互間距離であり、距離センサ260による測定距離L52を含む次の式37に基づいて求められる。なお、式37におけるL55は、車両100の左側側面と当該車両100の全左側車輪110,110,…の載置位置(厳密には中心位置)P10’との相互間距離であり、L56は、距離センサ260と左側ロードセル群L10による支持位置P10との水平方向における相互間距離であり、いずれも既知である。
【0264】
《式37》
L54=(L52+L55)−L56
【0265】
併せて、式35に基づく車両100の総重量値Wtは、上述の式4から分かるように、当該車両100の全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1〈14〉と全右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2〈14〉との合算値(Wt=W1〈14〉+W2〈14〉)でもある。そうすると、式4と式36との連立方程式を解くことで、全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1〈14〉と全右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2〈14〉とが求められる。
【0266】
このようにして車両100の全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1〈14〉と全右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2〈14〉とが求められると、第1実施形態と同様、上述の式7に基づいて車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lzが求められる。
【0267】
続いて、荷台車106単体の重心G’の位置を求めるべく、上述の式8に基づいて当該荷台車106単体の重量Wt’による全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1’(=W1〈14〉−W1a)が求められると共に、上述の式9に基づいて当該荷台車106単体の重量Wt’による全右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2’(=W2〈14〉−W2a)が求められる。なお、この演算で用いられる駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1aと駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aとは、第1実施形態と同様、事前に求められるが、当該第1実施形態とは少し異なる要領で求められ、言わば上述の式4と式36との連立方程式から車両100の総重量Wtによる全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1〈14〉と全右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2〈14〉とが求められるのと同様の要領により求められる。
【0268】
具体的には、荷台車106と切り離された単体の状態にある駆動車104のみが水平側計量部20に乗り込み、つまり当該駆動車104のみに属する全ての車輪110,110,120および120が水平計量台200に載置される。そして、この状態にあるときの左側荷重検出値W10が、駆動車104単体の重量Waによる水平時左側荷重検出値W10aとして取得され、右側荷重検出値W20が、当該駆動車104単体の重量Waによる水平時右側荷重検出値W20aとして取得される。その上で、これら駆動車単体水平時左側荷重検出値W10aと駆動車単体水平時右側荷重検出値W20aとが合算され、つまり次の式38に基づいて、駆動車104単体の重量Waが求められる。
【0269】
《式38》
Wa=W10a+W20a
【0270】
なお、この式38に基づく駆動車104単体の重量値Waは、駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1aと駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aとの合算値でもあり、つまり次の式39のようにも表される。
【0271】
《式39》
Wa=W1a+W2a
【0272】
さらに、駆動車104のみが単体で水平計量台200に載置されている状態にあるときの図33に示したような力学的関係図を想定すると、上述の式36に準拠する次の式40が成立する。
【0273】
《式40》
L53・W10a=(L53−L54)・W1a+{L53−(Ld+L54)}・W2a
【0274】
そうすると、式39と式40との連立方程式を解くことで、駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1aと駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aとが求められる。このようにして事前に求められた駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1aと駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aとは、水平側プロセッサ30のメモリ回路308に記憶される。そして、これらの駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1aと駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aを用いて、上述の如く荷台車106単体の重量Wt’による全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1’と全右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2’とが求められる。
【0275】
この要領で求められた荷台車106単体の重量Wt’による全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1’と全右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2’とは、さらに合算される。これにより、つまり上述の式10に基づいて、荷台車106単体の重量値Wt’が求められる。その上で、上述の式11に基づいて荷台車106単体の重心G’の位置を表す左右偏心量Lz’が求められる。
【0276】
次に、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置を求めるべく、第1軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W1〈2〉,W1〈3〉およびW1〈4〉と、当該第1軸〜第4軸それぞれの右側輪重値W2〈1〉,W2〈2〉,W2〈3〉およびW2〈4〉とが、求められる。この演算は、上述の式4と式36との連立方程式から車両100の総重量Wtによる全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1〈14〉と全右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2〈14〉とが求められるのと同様の要領(または上述の式39と式40との連立方程式から駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1aと駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aとが求められるのと同様の要領)によるので、その詳しい説明は省略する。
【0277】
そして、これ以降は、第1実施形態と同様に、第1軸および第2軸の各左側輪重値W1〈1〉およびW1〈2〉が合算されることで、当該第1軸および第2軸という駆動車104単体に属する全ての左側車輪110および110への総合印加荷重値である駆動車総合左側印加荷重値W1〈12〉(=W1〈1〉+W1〈2〉)が求められ、さらに、この駆動車総合左側印加荷重値W1〈12〉から駆動車単体水平時左側車輪印加荷重値W1aが差し引かれることで、つまり上述の式12に基づいて、荷台車106単体の重量Wt’による駆動車104の全左側車輪110および110への印加荷重値である第5輪左側印加荷重値W1〈12〉”が求められる。併せて、第1軸および第2軸の各右側輪重値W2〈1〉およびW2〈2〉が合算されることで、当該第1軸および第2軸という駆動車104単体に属する全ての右側車輪120および120への総合印加荷重値である駆動車総合右側印加荷重値W2〈12〉(=W2〈1〉+W2〈2〉)が求められ、さらに、この駆動車総合右側印加荷重値W2〈12〉から駆動車単体水平時右側車輪印加荷重値W2aが差し引かれることで、つまり上述の式13に基づいて、荷台車106単体の重量Wt’による駆動車104の全右側車輪120および120への印加荷重値である第5輪右側印加荷重値W2〈12〉”が求められる。そして、これら第5輪左側印加荷重値W1〈12〉”と第5輪右側印加荷重値W2〈12〉”とが合算されることで、つまり上述の式14に基づいて、カプラCへの印加荷重値である第5輪荷重値W5が求められる。
【0278】
その上で、上述の式17に基づいてX軸方向偏心量Lz”が求められると共に、上述の式19に基づいてY軸方向重心距離Ly”が求められる。これにより、荷台車106単体の水平方向重心G”の位置を表す座標値[Lz”,Ly”]が求められる。
【0279】
このようにして車両100の総重量値Wtと、当該車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lzと、荷台車106単体の重心G’の位置を表す左右偏心量Lz’と、当該荷台車106単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、が求められ、さらに、第1実施形態と同様の判定要領によって車両100の転倒の危険性が低いという判定が成されると、車両100は、傾斜側計量部40へと進む。そして、この傾斜側計量部40を用いて、車両100全体の重心Gの高さHと、荷台車100単体の重心G’の高さH’と、が求められる。
【0280】
即ち、車両100が傾斜側計量部40に乗り込むと、詳しくは当該車両100の左右両車輪110,110,…および120,120,…が1軸分ずつ順次傾斜計量台400に載置されると、傾斜側ロードセル群LC30による荷重検出値W30が図7に示したのと同様に段階的に推移する。そして、このように段階的に推移する傾斜側ロードセル群LC30による荷重検出値W30についても、上述の左側ロードセル群L10による荷重検出値W10および右側ロードセル群L20による荷重検出値W20と同様の要領により、各段階における当該傾斜側荷重検出値W30〈1〉,W30〈12〉,W30〈13〉およびW30〈14〉が特定され、ひいては第1軸〜第4軸のそれぞれに対応する傾斜側荷重検出値W30〈1〉,W30〈2〉,W30〈3〉およびW30〈4〉が求められる。
【0281】
ここで、車両100の全ての車輪110,110,…および120,120,…が傾斜計量台400に載置されている状態を、当該車両100の左右方向における力学的要素にのみ注目して図示すると、例えば図34のようになる。この図34によれば、傾斜側ロードセル群LC30による支持位置P30とダミーロードセル群LC40による支持位置P40とを含む仮想水平面406に対して上述の傾斜角度θを成す仮想傾斜面408が想定され、この仮想傾斜面408上に車両100が載置されている、とみなすことができる。そして、仮想傾斜面408上における車両100の全左側車輪110,110,…の代表載置位置P30’に、傾斜姿勢にある当該車両100の全左側車輪110,110,…への総合印加荷重W3(ここではW3〈14〉)が印加されると共に、この印加荷重W3は、仮想水平面406上における当該載置位置P30’の真下の位置P30aにもそのまま印加される、とみなされる。これと同様に、仮想傾斜面408上における車両100の全右側車輪120,120,…の代表載置位置P40’に、傾斜姿勢にある当該車両100の全右側車輪120,120,…への総合印加荷重W4が印加されると共に、この印加加重W4は、仮想水平面406上における当該載置位置P40’の真下の位置P40aにもそのまま印加される、とみなされる。
【0282】
さらに、傾斜側ロードセル群LC30による荷重検出値W30は、仮想傾斜面408上における当該傾斜側ロードセル群LC30による支持位置P30の真上の位置P31への印加荷重に相当する、とみなすことができる。これと同様に、ダミーロードセル群LC40への印加荷重W40は、仮想傾斜面408上における当該ダミーロードセル群LC40による支持位置P40の真上の位置41への印加荷重に相当する、とみなすことができる。そして、車両100の総重量Wtは、仮想傾斜面408上における当該車両100全体の重心Gの真下位置PG’から下方に向かって荷重として作用し、言い換えれば、仮想水平面406上における当該重心Gの真下位置PGaから下方に向かって作用する、とみなすことができる。これらを踏まえて、例えばダミーロードセル群LC40による支持位置P40を軸とするモーメントに注目すると、次の式41が成立する。
【0283】
《式41》
L73・W30〈14〉=(L74+Ld・cosθ)・W3〈14〉+L74・W4
【0284】
この式41において、L73は、傾斜側ロードセル群LC30による支持位置P30とダミーロードセル群LC40による支持位置P40との相互間距離であり、既知である。そして、L74は、ダミーロードセル群LC40による支持位置P40と車両100の全右側車輪120,120,…の載置位置P40’との水平方向における相互間距離であり、次の式42によって求められる。
【0285】
《式42》
L74=L73−(Ld・cosθ+L75・cosθ)
【0286】
さらに、この式42におけるL75は、仮想傾斜面408上における傾斜側ロードセル群LC30への荷重W30の印加位置P31と当該仮想傾斜面408上における全左側車輪110,110,…の載置位置P30’との相互間距離であり、距離センサ460による測定距離L72を含む次の式43に基づいて求められる。なお、次の式43におけるL76は、仮想傾斜面408上における距離センサ460の設置位置P50と傾斜側ロードセル群L30による支持位置P30との水平方向における相互間距離であり、既知である。そして、L55は、車両100の左側側面と当該車両100の全左側車輪110,110,…の載置位置(厳密には中心位置)P10’との相互間距離であり、図33に示したのと同じである。
【0287】
《式43》
L75=(L72+L55)−(L76/cosθ)
【0288】
併せて、上述の式35に基づく車両100の総重量値Wtは、傾斜姿勢にある当該車両100の全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3〈14〉と全右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W4との合算値でもあり、つまり次の式44が成立する。
【0289】
《式44》
Wt=W3〈14〉+W4
【0290】
そうすると、上述の式41(式42および式43を含む)とこの式44との連立方程式を解くことで、傾斜姿勢にある車両100の全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3〈14〉と全右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W4とが求められる。
【0291】
このようにして傾斜姿勢にある車両100の全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3〈14〉と全右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W4とが求められると、特に全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3〈14〉が求められると、第1実施形態と同様、上述の式25(式26を含む)に基づいて車両100全体の重心Gの高さHが求められる。
【0292】
さらに、荷台車106単体の重心G’の高さHを求めるべく、上述の式27に基づいて当該荷台車106単体の重量Wt’による傾斜姿勢時の全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3’(=W3〈14〉−W3a)が求められる。なお、この演算で用いられる駆動車単体傾斜時左側車輪印加荷重値W3aもまた、事前に求められる。
【0293】
具体的には、荷台車106と切り離された単体の状態にある駆動車104のみが傾斜側計量部40に乗り込み、つまり当該駆動車104のみに属する全ての車輪110,110,120および120が傾斜計量台400に載置される。そして、この状態にあるときの傾斜側ロードセル群LC30による荷重検出値W30が、駆動車104単体の重量Waによる傾斜時左側荷重検出値W30aとして取得される。その上で、駆動車104のみが単体で傾斜計量台400に載置されている状態にあるときの図34に示したような力学的関係図を想定すると、上述の式41に準拠する次の式45が成立する。
【0294】
《式45》
L73・W30a=(L74+Ld・cosθ)・W3a+L74・W4a
【0295】
なお、この式45におけるW4aは、傾斜姿勢にある駆動車104単体の重量Waによる当該駆動車104単体の全右側車輪120および120への印加荷重値であり、言わば駆動車単体傾斜時右側車輪印加荷重値である。そして、この駆動車単体傾斜時右側車輪印加荷重値W4aと駆動車単体傾斜時左側車輪印加荷重値W3aとの合算値は、上述の式38に基づく駆動車104単体の重量値Waと等価であり、つまり次の式46が成立する。
【0296】
《式46》
Wa=W3a+W4a
【0297】
そうすると、式45と式46との連立方程式を解くことで、駆動車単体傾斜時左側車輪印加荷重値W3aと駆動車単体傾斜時右側車輪印加荷重値W4aとが求められ、特に当該駆動車単体傾斜時左側車輪印加荷重値W3aが求められる。このようにして求められた駆動車単体傾斜時左側車輪印加荷重値W3aは、傾斜側プロセッサ50のメモリ回路508に記憶される。そして、この駆動車単体傾斜時左側車輪印加荷重値W3aを用いて、上述の如く傾斜姿勢にある荷台車106単体の重量Wt’による全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3’が求められる。
【0298】
その上で、第1実施形態と同様、上述の式28(式29を含む)に基づいて荷台車106単体の重心G’の高さH’が求められる。
【0299】
なお、本第2実施形態においても、水平側計量部20を構成する各ロードセル202,202,…として、図35に示す如くシングルコンベックス型のものが採用されてもよい。ただし、高い計量精度を得る上では、シングルコンベックス型よりもダブルコンベックス型のも方が好適であることは、上述した通りである。
【0300】
また、多少の計量精度の低下が許されるのであれば、図36に示すように、傾斜側計量部40の各ロードセル402,401,…および各ダミーロードセル404,404,…についても、シングルコンベックス型のものが採用されてもよい。
【0301】
さらに、図37に示すように、傾斜計量台400が概略矩形平板とされると共に、ピット64の底面が傾斜面とされ、この傾斜面とされたピット64の底面に各ロードセル402,402,…および各ダミーロードセル404,404,…が傾斜した状態で固定されてもよい。ただし、この場合は、車両100全体の重心Gの高さHを求める要領が、上述したのとは少し異なり、次の要領による。
【0302】
即ち、図37に示す傾斜計量台400に車両100の左右両車輪110,110,…および120,120,…の全てが載置されている状態を、当該車両100の左右方向における力学的要素のみに注目して図示すると、図38のようになる。この図38によれば、傾斜側ロードセル群LC30による支持位置P30”とダミーロードセル群LC40による支持位置P40”とを含む仮想傾斜面410上の或る位置P31”に、車両100の全左側車輪110,110,…が載置されると共に、この全左側車輪110,110,…の載置位置P31”に、傾斜状態にある車両100の当該全左側車輪110,110,…への総合印加荷重W3(ここではW3〈14〉)が印加される、とみなすことができる。これと同様に、仮想傾斜面410上の別の位置P41”に、車両100の全右側車輪120,120,…が載置されると共に、この全右側車輪120,120,…の載置位置P41”に、傾斜状態にある車両100の当該全右側車輪120,120,…への総合印加荷重W4が印加される、とみなすことができる。なお、仮想傾斜面410は、水平方向に対して上述の傾斜角度θを成している。
【0303】
さらに、傾斜側ロードセル群LC30に対しては、W30という荷重が印加されるものの、当該傾斜側ロードセル群LC3による荷重検出値W30〈14〉は、図28に示した荷重値W3”と同様、これに真っ直ぐ(垂直)に印加される成分W30”であり、つまりW30〈14〉=W30”=W30・cosθである。そして、車両100の総重量Wtは、仮想傾斜面410における当該車両100全体の重心Gの真下位置PG”から下方に向かって荷重として作用する、とみなすことができる。これらを踏まえて、例えばダミーロードセル群LC40による支持位置P40”を軸とするモーメントに注目すると、次の式47が成立する。
【0304】
《式47》
L80・W30=(L81+Ld)・W3〈14〉+L81・W4
【0305】
この式47において、L80は、傾斜側ロードセル群LC30による支持位置P30”とダミーロードセル群LC40による支持位置P40”との相互間距離であり、既知である。そして、L81は、ダミーロードセル群LC40による支持位置P40”と車両100の仮想傾斜面410上における全右側車輪120,120,…の載置位置P41”との相互間距離であり、次の式48によって求められる。
【0306】
《式48》
L81=L80−(Ld+L82)
【0307】
さらに、この式48におけるL82は、傾斜側ロードセル群LC30による支持位置P30”と仮想傾斜面410上における全左側車輪110,110,…の載置位置P31”との相互間距離であり、距離センサ460による測定距離L72を含む次の式49に基づいて求められる。なお、次の式49におけるL83は、仮想傾斜面410上における距離センサ460の設置位置P50”と傾斜側ロードセル群L30による支持位置P30”との相互間距離であり、既知である。そして、L55は、車両100の左側側面と当該車両100の全左側車輪110,110,…の載置位置(厳密には中心位置)P31”との相互間距離であり、図33および図34に示したのと同じである。
【0308】
《式49》
L82=(L72+L55)−L83
【0309】
加えて、上述の式47における傾斜側ロードセル群LC30への印加荷重値W30がW30=W30〈14〉/cosθであることから、当該式47は、次の式50のように表される。
【0310】
《式50》
L80・(W30〈14〉/cosθ)=(L81+Ld)・W3〈14〉+L81・W4
【0311】
そうすると、この式50と上述の式44との連立方程式を解くことで、傾斜姿勢にある車両100の全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3〈14〉と全右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W4とが求められ、特に全左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3〈14〉が求められる。
【0312】
これ以降は、図34に示した構成が採用された場合と同じ要領で、車両100全体の重心Gの高さHが求められる。そして、荷台車106単体の重心G’の高さH’についても、同様の要領で求められる。
【0313】
なお、傾斜計量台400の右側長辺に沿う各ロードセル404,404,…がダミーロードセルとされるのではなく、当該傾斜計量台400の左側長辺に沿う各ロードセル402,402,…がダミーロードセルとされてもとい。また、これらに代えて、水平側計量部20を構成する水平計量台400の左側長辺または右側長辺に沿う各ロードセル202,202,…がダミーロードセルとされてもよい。
【0314】
さらに、水平計量台200上における車両100(各左側車輪110,110,…および各右側車輪120.120.…)の載置位置を検知するための上述した距離センサ260等の車両載置位置検知手段に代えて、図示は省略するが、当該水平計量台200上における車両100の載置位置として希望の位置に適当な目印が付されてもよい。例えば、左右両車輪110,110,…および120,120,…間の距離Ldに応じた間隔を置くと共に車両100の進行方向に沿って延伸する2本の直線状のラインが、当該目印として付されてもよい。この場合、水平計量台200上に車両100が乗り込む際に、この2本のライン上に左右両車輪110,110,…および120,120,…が載置されるようにすることで、当該2本のラインの位置を左右両車輪110,110,…および120,120,…の載置位置として代用することができる。このようにすれば、距離センサ260等の車両載置位置検知手段が不要となり、その分、車両計量システム10全体の構成が簡素化かつ低コスト化される。その一方で、水平計量台200上に車両100が乗り込む際に、2本のライン上に左右両車輪110,110,…および120,120,…が精確に載置される必要があるため、それ相応の運転技術や慎重さが要求される。従って、計量作業の効率化を図る上では、上述の如く距離センサ260等の車両載置位置検知手段が採用されるのが、適当である。このことは、傾斜計量台400側の距離センサ460についても、同様である。
【0315】
加えて、車両100が特に上述のトレーラである場合は、当該車両100の第1軸に当たる駆動車104の前輪110および120には、荷台車106単体の重量Wt’の分布(バランス)に拘らず左右略均等な荷重が印加される。この点に着目すると、例えば水平計量台200に車両100が乗り込む際に、当該車両100の第1軸110および120のみが水平計量台200に乗り込んだときの左側ロードセル群LC10による荷重検出値W10〈1〉と右側ロードセル群LC20による荷重検出値W20〈1〉との比率に基づくことで、当該水平側計量台200上における車両100の載置位置を求めることができる。傾斜計量台400に関しても、右側のロードセル群LC40がダミーでない場合には、同様の要領で、当該傾斜計量台400上における車両100の載置位置を求めることができる。
【符号の説明】
【0316】
10 車両計量システム
20 水平側計量部
30 水平側プロセッサ
40 傾斜側計量部
50 傾斜側プロセッサ
100 車両
210 左側水平計量台
212 左側ロードセル
220 右側水平計量台
222 右側ロードセル
410 左側傾斜計量台
412 傾斜側ロードセル
420 右側傾斜計量台
422 ダミーロードセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物としての車両が通行する路面の一部を形成すると共に該車両に属する全ての車輪が同時に載置可能でありかつ該全ての車輪が同時に載置されたときに該車両が第1姿勢を成すように構成された第1計量台と、
上記第1計量台を支持すると共に該第1計量台を介して印加される荷重を検出する複数の第1荷重検出手段と、
上記路面の別の一部を形成すると共に上記全ての車輪が同時に載置可能でありかつ該全ての車輪が同時に載置されたときに上記車両が上記第1姿勢とは異なる第2姿勢を成すように構成された第2計量台と、
上記第2計量台を支持すると共に該第2計量台を介して印加される荷重を検出する複数の第2荷重検出手段と、
上記複数の第1荷重検出手段から得られる第1荷重検出値と上記複数の第2荷重検出手段から得られる第2荷重検出値とに基づいて上記車両の重心の高さを求める重心高さ演算手段と、
を具備し、
上記第1姿勢は上記車両の進行方向に対して直角な平面上で該車両が水平方向に対して第1角度を成す姿勢であり、
上記第2姿勢は上記車両の進行方向に対して直角な平面上で該車両が水平方向に対して上記第1角度とは異なる第2角度を成す姿勢である、
車両計量装置。
【請求項2】
上記第1角度は略零であり、
上記第2角度は鋭角である、
請求項1に記載の車両計量装置。
【請求項3】
上記車両が上記第1計量台を通行した後に上記第2計量台を通行するように該第1計量台および該第2計量台が配置され、
少なくとも上記車両が上記第2計量台を通行する前に上記第1荷重検出値に基づいて該車両の左右方向における重心の位置を求める左右重心位置演算手段と、
上記左右重心位置演算手段によって求められた左右重心位置に基づいて上記車両の左右方向における重心バランスを評価する左右重心バランス評価手段と、
上記左右重心バランス評価手段による評価結果を出力する左右重心バランス評価結果出力手段と、
をさらに備える、
請求項2に記載の車両計量装置。
【請求項4】
上記第1角度は鋭角であり、
上記第2角度は上記第1角度とは逆方向に成す鋭角である、
請求項1に記載の車両計量装置。
【請求項5】
上記車両は駆動車と該駆動車によって牽引される荷台車とから成る牽引自動車であり、
上記駆動車が上記荷台車と切り離された単体の状態にありかつ上記第1姿勢および上記第2姿勢にそれぞれあるときの該駆動車単体に属する全ての左側車輪への印加荷重値である駆動車単体左側車輪印加荷重値と該駆動車単体に属する全ての右側車輪への印加荷重値である駆動車単体右側車輪印加荷重値とが予め記憶された駆動車単体荷重値記憶手段と、
上記第1荷重検出値と上記第2荷重検出値と上記駆動車単体左側車輪印加荷重値と上記駆動車単体右側車輪印加荷重値とに基づいて上記荷台車単体の重心の高さを含む荷台車単体重心情報を求める荷台車単体重心情報演算手段と、
をさらに備える、
請求項1ないし4のいずれかに記載の車両計量装置。
【請求項6】
上記車両は駆動車と該駆動車によって牽引される荷台車とから成る牽引自動車であり、
上記駆動車が上記荷台車と切り離された単体の状態にありかつ上記第1姿勢および上記第2姿勢にそれぞれあるときの該駆動車単体に属する全ての左側車輪への印加荷重値である駆動車単体左側車輪印加荷重値と該駆動車単体に属する全ての右側車輪への印加荷重値である駆動車単体右側車輪印加荷重値とが予め記憶された駆動車単体荷重値記憶手段と、
上記第1荷重検出値および上記第2荷重検出値の少なくとも一方と上記駆動車単体左側車輪印加荷重値と上記駆動車単体右側車輪印加荷重値とに基づいて上記荷台車単体の水平方向における重心の位置である水平方向重心位置を求める水平方向重心位置演算手段と、
をさらに備える、
請求項1ないし4のいずれかに記載の車両計量装置。
【請求項7】
上記水平方向重心位置に基づいて上記荷台車単体の水平方向における重心バランスを評価する荷台車単体重心バランス評価手段と、
上記荷台車単体重心バランス評価手段による評価結果を出力する荷台車単体重心バランス評価結果出力手段と、
をさらに備える、
請求項6に記載の車両計量装置。
【請求項8】
上記第1計量台および上記第2計量台のそれぞれは上記車両に属する全ての左側車輪のみが同時に載置可能な左側計量台と該車両に属する全ての右側車輪のみが同時に載置可能な右側計量台とを含む、
請求項1ないし7のいずれかに記載の車両計量装置。
【請求項9】
上記第1計量台および上記第2計量台のそれぞれは一体のものである、
請求項1ないし7のいずれかに記載の車両計量装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate