説明

車両輸送船用の表示ポール装置

【課題】車両輸送船によって輸送される自動車のような車両が該船内において走行したり駐停車したりする際に該車両に対して案内や誘導等を行うに適した車両輸送船用の表示ポール装置を提供すること。
【解決手段】車両輸送船90用の表示ポール装置1は、基台部2と支柱部4とを有し、基台部2が船舶90の鋼製壁部91に該表示装置1自体を吸着させる永久磁石6を含み、支柱部4が一端で基台部2に取付けられ全体として撓み易いように細長い可撓性棒状体40からなり、該可撓性棒状体40に取付けられた表示部8を更に有する。永久磁石6は、複数の永久磁石体50からなる。永久磁石体50は、複数の永久磁石小体51からなり得る。表示部8は、例えば、可撓性棒状体40の嵌装された柔軟な筒状体70からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両輸送船内において車両の進路や駐停車位置や車両の進行に対する注意情報等を表示するための車両輸送船用の表示ポール(支柱)装置に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、車両輸送船用の表示装置としては、円錐状のいわゆるコーンが用いられていた。このコーンは、船の床面に安定に載置され得るように、最大径部に鍔部が形成され、該鍔部の上に、ゴム製のリング状重錘部材が嵌装されている(重錘部材を除いて、コーン自体は、次に説明する特許文献1の図9〜図10のものと同様)。
【0003】
しかしながら、運転者に確実に視認可能とすべくコーンは1m程度を超える高さがあるので、コーンは、リング状重錘部材を含めると重いものになり、車両輸送船内において車両の進路等を表示すべく多数のコーンを並べようとすると、それだけでも、無視し難い労力を要する。また、コーンは、その形状等からして載置安定性が比較的高いとはいえ、重錘部材がそのコーン形状を保つべく働くので、車が比較的軽く当たっても転倒して車に損傷を与える虞れがある。
【0004】
なお、表示ポール装置を所定の位置にしっかりと取付けることを目的として、比較的太い筒状のポール装置の本体の底部に磁石を取付けておくと共にポール装置を設置しようとする路面にフェライト系ステンレス鋼SUS430の如き鋼板を予め配設しておき、該鋼板上にポール装置の底部を載せることにより、磁気吸着によってポール装置本体を支えるようにした路面用ポール装置は、提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示のポール装置は、ポールの底部に磁性材料からなるカップ状ヨークを下向きに配置し、該カップ内に環状の永久磁石を磁着させると共に、該磁石及びカップの全体を筒状ポール装置本体の下部の横断壁部に取り付けられたナットに環状磁石の中央孔を貫通する止めねじを螺着することにより、形成されている。
【0006】
従って、このポール装置では、筒状のポール装置本体が直径5cm程度を上回る太いものであって、実際上可撓性を欠くものである。また、磁石がポール装置本体の径と同程度の径を有する大きなものになる。
【0007】
すなわち、このポール装置では、ポール装置本体が実際上剛性であることから該ポール装置本体に車両が当たると基台部に比較的大きなトルクが働くので、転倒の虞れがある(特許文献1自体でもその図8等において転倒を前提にした技術に力点が置かれている)。また、該トルクに抗してポール装置本体を支えるようとすると、磁石を大きくする必要があり、且つ基台部においてトルクを支え得るように、基台部の拡がりを大きくする必要がある。基台部の拡がりが大きいと、基台部が路面上に拡がって、車両のタイヤ等に当たる虞れがある。また、磁石が大きいと、コストが嵩む。
【0008】
なお、床面に電磁石を埋設しておくと共に基台部を鋼で形成しておいて電磁石によって鋼製の基台部を支持し、更に、基台部の上面に湾曲面を備えた凸部を形成しておきばね部材で引っ張られたポール本体が基端部において該凸部に沿って傾動するようにした傾動可能なポール装置も提案されている(特許文献2)。
【0009】
しかしながら、このポール装置は、傾動支持機構が複雑化するのを避けがたく、それに伴うコストの増大や故障の虞れの増大等を避け難い。また、ばね部材には、実際上常に相当程度の張力が働くことから、長期間安定に動作し難い虞れがある。
【0010】
一方、車止めや駐車位置を表示するための支柱として、支柱本体の下端部近傍においてばね部材によって傾動可能に支持することは種々提案されている(例えば、特許文献3及び4)。
【0011】
しかしながら、これらの特許文献3及び4からもわかるように、支柱本体を下端部近傍においてばね部材によって傾動可能に支持する場合には、その支柱のうち支柱本体を支える基台ないしベース部分に力がかかり易いことから該基台ないしベース部分を地面に強固に固定するために、下部を深く地中に埋設したり(特許文献3)、ボルトにより駐車場の地面(舗装やコンクリート等と思われる)に固定したり(特許文献4)、している。
【0012】
なお、技術分野は実際上異なるものの検索にかかったので念のために挙げておけば、鋼製の板を天井面に敷設しておくと共に車輪により該天井面に沿って走行可能な走行体を該走行体に設けた永久磁石により鋼製天井面に引き付けるようにしておき、磁石付走行体につながった人が該磁石付走行体の助けをかりて歩行し得るようにしたり、該磁石付走行体に物品を取付けておいて該物品をその重さにかかわらず、小さな力で天井面に沿って移動させ得るようにすることも、提案されている(例えば、特許文献5)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−207142号公報
【特許文献2】特開2003−261915号公報
【特許文献3】特開平8−134856号公報
【特許文献4】特開2001−81998号公報
【特許文献5】特開2004−83260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記諸点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、車両輸送船によって輸送される自動車のような車両が該船内において走行したり駐停車したりする際に該車両に対して案内や誘導等を行うに適した車両輸送船用の表示ポール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の車両輸送船用の表示ポール装置は、前記目的を達成すべく、基台部と支柱部(ポール部)とを有する車両輸送船用の表示ポール装置であって、基台部が船舶の鋼製壁部に該表示装置自体を吸着させる永久磁石を含み、支柱部が一端で基台部に取付けられ全体として撓み易いように細長い可撓性棒状体からなり、該可撓性棒状体に取付けられた表示部を更に有する。
【0016】
本発明の車両輸送船用の表示ポール装置では、「表示部が可撓性棒状体に取付けられている」ので、支柱部に不測の外力がかかっても、該外力に応じて該支柱部を形成する可撓性棒状体の全体が撓み得るから、外力がそのまま基台部に伝わる虞れがない故、基台部の固定を比較的小さな力で行い得る。しかも、本発明の車両輸送船用の表示ポール装置では、「基台部が船舶の鋼製壁部に該表示装置自体を吸着させる永久磁石を含む」ので、基台部の鋼製壁部に対する取付け領域を最低限に抑え得る。その結果、本発明の車両輸送船用の表示ポール装置では、基台部の拡がりを最低限に抑えた状態で可撓性棒状体を介して表示部を支持し得る。なお、車両の進路や駐停車位置や車両の進行に対する注意情報等を表示するための表示ポール装置において、基台部の固定に永久磁石が用いられ得るのは、車両輸送船の壁部が厚い鋼板からできていて永久磁石によって大きな体積領域が磁化され基台部と該基台部が配置される車両輸送船の壁部との間に強い静磁的な引力が働き得るためであり、基台部に対する強固な支持を与え得るこの強い磁気的な力があってこそ、支柱部の撓みが安定に支持され得る。
【0017】
従って、基台部が鋼製の床部(底壁部)に取付けられて支柱部の可撓性棒状体が床部から立ち上がった状態で支持される典型的な場合について言えば、基台部が床面上で占める面積ないし基台部の床面に沿った拡がりが最低限に抑えられ得るので、本来、車両の走行面である床面において表示部よりも基台部が大きく拡がる場合と異なり、基台部が車両の走行の邪魔になる等により車両の走行を妨げる虞れが最低限に抑えられ得る。
【0018】
また、表示部が細長い可撓性棒状体によって支持されるので、可撓性棒状体及び表示部の全体の重量が最低限に抑えられ得るから、「船舶の鋼製壁部に該表示装置自体を吸着させる永久磁石を含む基台部」が、鋼製壁部からなる床の代わりに、鋼製壁部からなる天井に吸着された状態で該天井から垂れ下がったような態様や概ね上下方向に延びた鋼製の側壁に吸着された状態で該側壁から水平方向その他横向きに延びた態様で表示を行なうことも確実に行われ得る。前者(天井から垂れ下がったような態様)の場合、例えば、車高制限のような表示を実寸で行い得るだけでなく、仮に、車高制限を僅かに超える車両が通った場合にも、自在に撓み得るから車両に損傷を与える虞れがない。一方、各種の注意・案内情報等の表示において床面や天井面よりも左右の壁面が利用に適する場合には、後者(側壁から水平方向その他横向きに延びた状態)で表示することも可能である。
【0019】
本発明の車両輸送船用の表示ポール装置では、典型的には、表示部が、柔軟な材料からなり可撓性棒状体に嵌装された筒状部材を含む。
【0020】
その場合、表示部に当たっても、損傷を受ける虞れがない。また、表示部が可撓性棒状体の概ね全長にわたって装着されているような場合でも、表示部及び棒状体の全体が実際上可撓性であり、可撓性棒状体の利点が保たれ得る。
【0021】
本発明の車両輸送船用の表示ポール装置では、典型的には、表示部が、可撓性棒状体の先端に取付けられた板状部材を含んでいてもよい。
【0022】
その場合、表示部が、典型的には、円板状その他の通常の表示部からなる。この場合でも、支柱部を構成する可撓性棒状体の利点は損なわれない。
【0023】
本発明の車両輸送船用の表示ポール装置では、典型的には、前記永久磁石が、棒状体の延在方向に交差する方向に延在した面内において相互に間隔をおいて配置された複数の永久磁石体からなり、基台部が、底側基台部分及び蓋側基台部分を含み、該底側基台部分及び蓋側基台部分が前記複数の永久磁石体を相互に間隔をおいた状態に分離すべく底側基台部分の底壁から立ち上がった隔壁部を含む磁石収容室を備えている。
【0024】
その場合、複数の永久磁石体が、隔壁部によって相互に間隔をおいた状態で保持され得るので、永久磁石として単一の大きな塊ではなく、より小さい永久磁石体を複数個用いることが可能であるから、コストを低く抑えることが可能になる。また、その場合、各永久磁石体が底側基台部分及び蓋側基台部分によって形成された磁石収容室内に保持され得るので、永久磁石体の磁力が大きくても、所定の位置に確実に保持されて、基台部の磁気的な引力を支え得る。
【0025】
本発明の車両輸送船用の表示ポール装置では、典型的には、前記永久磁石体の夫々が複数の永久磁石小体を重ねてなる。
【0026】
その場合、永久磁石として、更に小さい永久磁石小体を用い得るから、コストを最低限に抑え得る。また、この車両輸送船用の表示ポール装置では、前記永久磁石体の夫々が複数の永久磁石小体を重ねてなることにより、重ねられる永久磁石小体の数を変えることによって磁気的な吸着力を所望に応じて現場で容易に変え得るので、車両輸送船の壁面が滑らかな平面ではなくて凹凸その他の形状の場合もあることから、該壁面と車両輸送船用の表示ポール装置の基台部との磁気的な吸着力が比較的小さくなる場合であっても、積層される永久磁石小体の数を変えることによって永久磁石体の強さを変え、それによって壁面に対する磁気的な吸着力を同程度にし得る。なお、永久磁石体が前述のように隔壁部で分離された状態で間隔をおいて配置され得るから、各永久磁石体の磁気的な吸着力を個別に調整することも可能である。
【0027】
本発明の車両輸送船用の表示ポール装置では、典型的には、可撓性棒状体の前記一端が、ピン状体により前記蓋側基台部分に取付けられている。
【0028】
その場合、可撓性棒状体が蓋側基台部分から外れることなく強固に固定され得る。蓋側基台部分と底側基台部分とを組合わせるだけで、車両輸送船用の表示ポール装置が組み立てられ得る。
【0029】
本発明の車両輸送船用の表示ポール装置では、典型的には、前記蓋側基台部分が磁石収容室に望む室側面に突出部を備え、該突出部が可撓性棒状体の前記一端を収容する凹部を前記室側面とは反対側の面に備え、突出部と該突出部の凹部に嵌合された可撓性棒状体の前記一端とをまとめて横向きに貫通する状態でピン状体が挿設されており、突出部がその突出端部において複数の永久磁石体を押えるように構成されている。
【0030】
その場合、蓋側基台部分と底側基台部分とを組合わせるだけで、突出部により、複数の永久磁石体を前記の磁石収容室に確実に収容保持し得る。また、突出部の凹部に可撓性棒状体の前記一端が収容された状態でピン状体によって相互に固定されるから、可撓性棒状体と蓋側基台部分との結合が強固になされ得る。
【0031】
本発明の車両輸送船用の表示ポール装置では、典型的には、可撓性棒状体の前記一端が、前記蓋側基台部分を貫通し且つピン状体により前記底側基台部分に取付けられている。
【0032】
その場合、固定が容易に行われ易い。
【0033】
本発明の車両輸送船用の表示ポール装置では、典型的には、前記可撓性棒状体の前記一端が複数の永久磁石体を分離する分離壁の少なくとも一部として働く。
【0034】
その場合、可撓性棒状体が複数の永久磁石体を相互に分離するためにも用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の好ましい一実施例の車両輸送船用の表示ポール装置を示したもので、(a)は車両輸送船の鋼製の床面上に載置した表示ポール装置の正面説明図、(b)は(a)の断面説明図。
【図2】図1の車両輸送船用の表示ポール装置の基台部の展開(分解)斜視説明図。
【図3】図2の基台部のうち蓋側基台部分を示したもので、(a)は斜め上から見た斜視説明図、(b)は斜め下から見た斜視説明図。
【図4】図3の蓋側基台部分を示したもので、(a)は平面説明図、(b)は(a)のIVB−IVB線断面説明図、(c)は底面説明図。
【図5】図2の基台部の底側基台部分の斜視説明図。
【図6】図5の底側基台部分を示したもので、(a)は平面説明図、(b)は(a)のVIB−VIB線断面説明図(但し、想像線の部分は肉厚を最低限に抑えるような形状にした場合を示す)、(c)は(b)において想像線で示したように肉厚を最低限に抑えるようにした形状の場合における底面説明図。
【図7】図1の車両輸送船用の表示ポール装置の可撓性棒状部を示したもので、(a)は正面説明図、(b)は(a)の断面説明図、(c)は(a)の変形例の可撓性棒状部についての(b)と同様な断面説明図。
【図8】図1の車両輸送船用の表示ポール装置のキャップ部を示したもので、(a)は斜視説明図、(b)は(c)のVIIIB−VIIIB線断面説明図、(c)は(a)の底面説明図。
【図9】本発明の別の好ましい一実施例の車両輸送船用の表示ポール装置についての図1の(b)と同様な断面説明図。
【図10】本発明の更に別の好ましい一実施例の車両輸送船用の表示ポール装置の一部を示したもので、(a)は表示ポール装置の底側基台部分の底面説明図、(b)は底側基台部分に可撓性棒状体を組み込んだ蓋側基台部分を組付けた状態を示す一部の正面説明図。
【図11】図1の車両輸送船用の表示ポール装置を車両輸送船の底壁部に載置固定した状態で該表示ポール装置に外力が加わった場合における表示ポール装置の状態を示した説明図。
【図12】図1および図9の車両輸送船用の表示ポール装置を車両輸送船の壁部に適用した状態を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の好ましい一実施の形態を添付図面に示した好ましい実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0037】
本発明の好ましい一実施例の車両輸送船用の表示ポール装置1は、図1の(a)及び(b)に示したように、基台部2と支柱部(ポール部)4と永久磁石6と表示部8とを有する。永久磁石6は、船舶90の鋼製壁部91に該表示装置1自体を吸着させるものである。後で詳述するように、永久磁石6は、相互に間隔をおいて配置された複数の永久磁石体50,50,50からなる。
【0038】
基台部2は、図1に加えて図2から図6に示したように、ポリカーボネートの如き機械的強度の高い樹脂からなる底側基台部分10及び蓋側基台部分20を有し、該底側基台部分10及び蓋側基台部分20は、協働して、永久磁石6を収容する磁石収容室Rを形成している。基台部2を構成する底側基台部分10及び蓋側基台部分20は、他のエンジニアリングプラスチック等からなっていてもよい。
【0039】
より詳しくは、底側基台部分10は、図1及び図2に加えて図5及び図6からわかるように、全体として厚さの厚い円板ないし高さの比較的低い円柱の形態を有し、中心軸線Cのまわりで周方向に等間隔に三つの円筒状凹部Uを形成するように底壁11から立ち上がった隔壁部12を備える。周方向に120度間隔で形成された凹部Uを取囲む壁部のうち中心軸線Cのまわりの部分には、凹部Uよりも浅い円形凹部Wが形成されている。中央の浅い円形凹部Wの底壁部11bは、凹部Uの底壁部11aよりも厚い。隔壁部12,12,12には、厚さ方向に貫通孔13,13,13が形成され、該孔13,13,13の蓋側端部13a,13a,13aには、雌ねじ部材14,14,14が例えばインサート成形により強固に嵌着されている。
【0040】
なお、底側基台部分10の肉厚を最低限に抑える場合、例えば、図6の(c)に示したような底面形状を採る。その場合、図6の(b)に示した断面は、例えば、想像線で示したような形状部分を含む。
【0041】
一方、蓋側基台部分20は、図1及び図2に加えて図3及び図4からわかるように、概ね円錐台状の形態を有し、中心軸線Cの周囲において円錐台の底面21から突出した円柱状の底側突出部22を備えると共に、中心軸線Cの周囲において円錐台頂面23から円柱状底側突出部22内に延びた内径D3の円柱状穴24を備える。円柱状底側突出部22には、円柱状穴24を直径方向に貫通するピン挿通孔25が形成されている。円柱状底側突出部22が底側基台部分10の円形凹部Wに嵌るように、円柱状底側突出部22の外径D1は円形凹部Wの内径D2と同程度である。また、円柱状底側突出部22の突出長L1は、図示の例のように、円柱状底側突出部22の突出端部が磁石の頂面に当たる場合であって、磁石の頂部が凹部Wの底面よりも上方に突出する場合には、典型的には、L1<L2である。但し、磁石の頂面が凹部Wの底面よりも奥に位置したり、磁石の突出量にかかわらず円柱状底側突出部22の突出端部が磁石の頂面に当たらないような場合には、典型的には、円柱状底側突出部22の突出長L1は円形凹部W深さL2と同程度である。但し、場合によっては、L1>L2でもよい。
【0042】
蓋側基台部分20には、底側基台部分10の雌ねじ部材14,14,14のある孔13,13,13に一致するように、周方向に等間隔にねじ挿通孔26,26,26が形成されている。従って、底側基台部分10に蓋側基台部分20を載せた状態で各ねじ挿通孔26に雄ねじ部材29を底側基台部分10の貫通孔13の雌ねじ部材14(図2参照)に螺合することにより、底側基台部分10と蓋側基台部分20とを固定し得る。
【0043】
なお、この例では、蓋側基台部分20の表示部8側には、概ね環状の凹部27が形成されている。但し、この凹部27はなくてもよい。
【0044】
永久磁石は、典型的には、ネオジム磁石(Nd−B−Fe系の磁石)からなる。但し、十分な静磁力が得られる限り、他の合金系の永久磁石でも非希土類系の永久磁石でもよい。永久磁石6を構成する永久磁石体50,50,50は、図1の(b)に加えて図2並びに図5及び図6の(a)からわかるように、周方向に等間隔に相互に間隔をおいて夫々の凹部U,U,U内に配置されている。各永久磁石体50は、図1の(b)や図5に示したように、複数の永久磁石小体51,51,・・・を重ねたものであり得る。永久磁石小体51や永久磁石50は、厚さ方向(軸線方向)Zに磁化されている。永久磁石50や永久磁石小体51が凹部U内に嵌込まれ得るように、永久磁石50や永久磁石小体51のの外径D5は、凹部Uの内径D6と概ね同じである(図6)。各永久磁石小体51の大きさや各永久磁石50の大きさは相互に異なっていてもよいけれども、典型的には、同じである。
【0045】
典型的には、永久磁石50の高さは、凹部Uの深さと同程度またはそれ以下であるけれども、所望ならば、永久磁石50の高さが凹部Uの深さよりも大きくてもよい。その場合、図5や図6に示したように、凹部U,U,Uが中央の凹部Wと重なるように構成されているときには、典型的には、永久磁石50,50,50の突出端部52,52,52を、蓋側基台部分20が、その円柱状底側突出部22の底面28で押える(一方、凹部U,U,Uが中央の凹部Wと重ならないように構成されているとき(例えば、図1の(b)で示したようなとき)又は凹部Wの中央に広い領域が残る(たとえば、図6において想像線Crで囲んだ領域が十分に大きい)ときには、永久磁石50,50,50の突出端部52,52,52は、永久磁石50,50,50にかかわりなく、凹部W内に延びていていもよい)。なお、永久磁石50の高さが凹部Uの深さよりも小さい場合、永久磁石50,50,50は全体として凹部U,U,U内に収容され、蓋側基台部分20の円柱状底側突出部22の底面28は、底側基台部分10の中央凹部W内に延びる。
【0046】
以下では、特に断らない限り、図6の(a)に示したように、永久磁石50のある凹部Uに対して凹部Wが大きく重なり、蓋側基台部分20の円柱状底側突出部22が凹部W内に延びてその底面28で永久磁石50,50,50の頂面55を押えるように構成されているとする。
【0047】
各永久磁石体50,50,50は、典型的には、その円板乃至円柱の厚さ方向Zに磁化されている。但し、所望ならば、径方向に磁化されていてもよい。また、永久磁石50,50,50は、典型的には、永久磁石体50,50,50のうち二つが同一の磁気的な配向方向を有し残りの一つが逆の磁気的な配向方向を有するように、凹部U,U,U内に配設される。但し、所望ならば、各永久磁石体50,50,50の全てが同一の磁気的な配向方向を有するように、凹部U,U,U内に配設されていてもよい。
【0048】
実際には、各永久磁石体50,50,50の間に働く静磁的な力は無視し難いほど大きいので、二つ目以降の永久磁石体50の配設に際しては、既に配設済みの永久磁石体50を凹部Uから出ないように押圧しておく。
【0049】
いずれにしても、底側基台部分10の底壁部11a及び隔壁部12と蓋側基台部分20の底面21及び円柱状底側突出部22の外周面22aとによって磁石収容室Rが形成され、各永久磁石体50は、隔壁部12によって分割された凹部U内に収容されている。従って、永久磁石6を構成する複数の永久磁石体50,50,50は、支柱部4の延在方向Zに垂直な方向に延在した面(鋼製壁部91の延在面Sと平行な面)内において該隔壁部12によって相互に間隔をおいた状態に分離されている。
【0050】
支柱部4は、図1の(a)及び(b)に加えて図7の(a)及び(b)に示したように、全体として撓み易いように細長い可撓性棒状体40(直径8mm程度、長さ1.2m程度)を備え、該可撓性棒状体40は、一端41で基台部2に取付けられている。
【0051】
より詳しくは、可撓性棒状体40は、FRP(繊維強化樹脂)からなる細長く撓み易い棒45からなり、該棒45の基端41の近傍に直径方向の貫通孔42を備え、先端43の近傍にも同様な直径方向の貫通孔44を備える。可撓性棒状体40は、図1の(b)に加えて図4の(b)において想像線で示したように、棒45の基端部41が蓋側基台部分20の中央凹部24内に嵌合された状態で、孔25,42を貫通するピン49を該孔25,42に挿通すると共に該挿通部等を接着剤で固着させることにより、可撓性棒状体40の基端部41を基台部2の蓋側基台部分20内に固定される。
【0052】
図1の(a)及び(b)に示したように、可撓性棒状体40には、柔軟な材料からなる多数の筒状部材70が嵌装されている。筒状部材70は、典型的には、ポリウレタンからなる。但し、柔らかくて衝撃を吸収しうるものであれば他の材料であってもよい。この例では、表示部8は、可撓性棒状体40に嵌装された筒状部材70,70,70,・・・からなる。例えば、筒状部材70のうち一つおきの筒状部材71が同一の色Faからなり、他の一つおきの筒状部材72が別の同一の色Fbからなる。ここで、例えば、色Fa,Fbのうちの一方が赤であり、色Fa,Fbのうちの他方が白である。その代わりに、Fa,Fbが別の色であってもよい。また、場合によっては、筒状部材71,72が同一又は別の色や模様であっても、同一の筒状部材が異なる順序で分布していてもよい。
【0053】
表示部8の頂部には、最先端の筒状部材70の先端側において、キャップ部材75が被せられている。キャップ部材75は、図8の(a),(b)及び(c)に示したように、棒45すなわち棒状体40の先端43に嵌装される管状部76と、丁端の鍔状部77とを備える。管状部76には、直径方向孔78が形成され、該孔78及び棒状体40の先端43の孔44にはピン79が挿通されている。キャップ部材75は筒状部材70の抜止めとして働き、ピン79は、キャップ部材75の抜止めとして働く。ピン79は、例えば、ピン49と同様に接着剤で孔44内に内に固着される。
【0054】
このように、可撓性棒状体40に多数の筒状部材70,70,・・・を嵌装した状態において、筒状部材70,70,・・・からなる表示部8は、可撓性棒状体40と共に可撓性である。
【0055】
図1の(a)において想像線73で示した通り、基台部2と下端部に位置する筒状部材70を覆うように、筒状部材70と同様に柔軟な材料からなるカバー部材が設けられていてもよい。
【0056】
この車両輸送船用の表示ポール装置1では、特に、基台部2が永久磁石6で車両輸送船9の鋼製の厚い(数cm程度以上の)底壁部92に強い静磁的な引力で強固に磁着されているので、図1の(a)において想像線で示したように、可撓性棒状体40からなる支柱4及び柔軟な筒状部材70からなる表示部8が基台部2のまわりで撓み得る。すなわち、基台部2の底側基台部分10の底面18の径D7(図6の(b))が可撓性棒状体40の長さL8(図7の(a))と比較して小さくても(D7/L8<<1であっても)、表示ポール装置1の基台部2以外の部分に比較的大きな外力Jが加わっても、基台部2が永久磁石6で厚い壁部92に強く磁着された状体で支柱部4をなす可撓性棒状体40及び表示部8をなす筒状部材70,70,・・・の全体が撓んで外力の衝撃を受けるのを避け得るから、表示ポール装置1が安定に支持され得る。
【0057】
また、この車両輸送船用の表示ポール装置1では、表示部8をなす筒状部材70,70,・・・が柔らかい材料からなり且つ表示部8が全体として可撓性であるので、万一、車両等が表示ポール装置1の基台部2以外の部分に当たっても、表示部8が撓み且つ筒状部材70が凹んで衝撃を和らげるので、車両等が損傷を受ける虞れが少ない。更に、基台部2が永久磁石6によって車両輸送船90の厚い壁部91に強い静磁力で固定されるので基台部2が小さく(細く)形成され得るから、車両V等が基台部2に当たる虞れが少なく、仮に当たるとしても、図11において想像線Vで示したように、タイヤ部を含む車輪部V2の部分が基台部2に当たることなくバンパー部やボンネット部V1等で支柱部4のまわりの表示部8に当たることになり、上述の通り衝撃を受ける虞れが最低限に抑えられ得る。
【0058】
なお、車両Vの前後ではなくて側面が表示ポール装置1の基台部2以外の部分に当たったり車両Vがカーブを曲がる際に表示ポール装置1の基台部2以外の部分に当たったりするような場合には、車両Vのバンパー部やボンネット部V1とタイヤ部を含む車輪部V2との突出長の差異が小さくなるので、基台部の底面積が大きい従来の表示ポール装置では基台部に車輪部V2が当たって車両Vの走行が妨げられる虞れが高くなるけれども、この車両輸送船用の表示ポール装置1では、基台部2の底面積が最低限に抑えられるので、そのような虞れも最低限に抑えられ得る。
【0059】
壁部91(底壁部(床壁部)92だけでなく側壁部93や頂壁部(天井壁部)94でも同様)が多少なりとも平面からずれて湾曲しているような場合には、表示ポール装置1の基台部2の底面積が大きくなるほどその湾曲の影響で基台部2の壁部91への静磁的な吸着による安定化が不十分になる虞れがあるけれども、この車両輸送船用の表示ポール装置1では、基台部2の底面積が最低限に抑えられるので、そのような虞れも最低限に抑えられ得る。
【0060】
なお、棒状体は、図7の(b)に示したように中実な棒45からなる棒状体40である代わりに、図7の(c)に示したように、中空棒状体すなわち管状体45Aからなる棒状体40Aであってもよい。その場合、キャップ75の管状部76が棒状体45の先端43に被せられる代わりに、キャップ75の管状部76が管状体45Aの先端43Aに嵌挿されてもよく、その場合、鍔状部ないしフランジ状部77で筒状体70を押えることになる。そのとき、キャップ75の部分76は管状の代わりに中実な棒状であり得る。
【0061】
なお、表示部は、筒状部材70からなる表示部8の代わりに、図9に示したように、可撓性棒状体40の先端42に取付けられた板状体80からなる表示部8Bであってもよい。所望ならば、表示部が、そのような筒状部材70及び板状部材80の両方を含んでいていもよい。
【0062】
図9に示した車両輸送船用の表示ポール装置1Bでは、表示部8Bを構成する板状部材80は、円板状の表示部本体81と、該表示部本体81を可撓性棒状体40の棒45の先端42に取付ける管状部82とを有する。管状部82は、キャップ75の管状部76と同様に、ピン挿通用の直径方向孔83を備える。孔83は、図9に示したように、複数であり得る(その場合、棒45の先端42にも対応する複数箇所に直径方向孔が形成される)。孔83に、ピン79と同様なピン84が挿通されて、表示部8Bが可撓性棒状体40の先端部42に固定される。
【0063】
ここで、図9において、想像線70Bで示したように、可撓性筒状部材70と同様な可撓性筒状部材70Bが可撓性棒状体40の棒45のところに嵌装されて先端の可撓性棒状体70Bが表示部8Bの管状部82の端部によってその抜けを防ぐように構成され得る。
【0064】
次に、本発明の車両輸送船用の表示ポール装置1が車両輸送船90の壁部91に固定される場合の特徴を、前の説明との多少の重複を厭わず、図11等に基づいてより詳しく説明する。
【0065】
本発明の車両輸送船用の表示ポール装置1では、図11に示したように、基台部2で車両輸送船90の壁部91に固定され且つ表示部8が支柱部4をなす可撓性棒状体40で撓み得るから、表示部8に、車両の一部その他が当たって、表示部8に外力Jが加えられても、表示部8の被された支柱部4が、図11において、想像線8ia,8ib,8ic,8id及び想像線4ia,4ib,4ic,4idで示したように、撓むことによって外力Jを実際上吸収し得るから、基台部2が外力Jの影響を受け難く、表示ポール装置1が基台部2によって安定に支えられ易い。
【0066】
しかも、この表示ポール装置1では、支柱部4の可撓性棒状体40が可撓性の棒45からなるので、外力Jが表示部8になっている支柱部4の棒45の延在方向線Cを中心としてそのまわり360度のうちいずれの方向から支柱部4ないし表示部8に加えられても、支柱部4の可撓性棒状体40が、想像線4ia,8iaで示したように左方にK1方向に曲がったり、想像線4ib,8ibに示したように右方にK2方向に曲がったり、想像線4ic,8icで示したように右手前にK3方向に曲がったり、想像線4id,8idで示したように左奥にK4方向にK4方向に曲がったりするなど、いずれの方向にも自在に撓み得るから、いずれの方向から外力を受けても、表示ポール装置1が基台部2によって安定に支えられ易い。すなわち、特許文献2と異なり、任意の方向に変形され得るから、外力を受ける向きを考慮する必要がない。
【0067】
また、この車両輸送船の表示ポール装置1では、基台部2の永久磁石6が静磁的に吸着される壁部91が車両輸送船90の壁部であるので、図11の底壁部92の如く少なくとも数cm程度以上の厚さの鋼板からなるから、該壁部92の厚さ方向に十分に磁化され得る。従って、永久磁石6を構成する永久磁石体50,50が厚さ方向に磁化された磁性体からなり得る。すなわち、永久磁石の磁化の強さは閉磁路が形成されるか否かによって実際上影響を受けないので、永久磁石体50,50をその磁極が軟磁性体である車両輸送船90の壁部92に対してその厚さ方向に対面するように、永久磁石体50,50を単に基台部2の底部近傍に配置するだけで、永久磁石体50,50の磁極と車両輸送船90の壁部92との間に大きな磁気的な吸着力を生起させ得る。すなわち、鉄鋼板の厚さが比較的薄いことから支持面に沿う方向に磁化した永久磁石を用いていると想定される特許文献1と異なり、支持面に実際上垂直な方向に磁化させるように静磁的に配向した(磁化した)永久磁石により車両輸送船90の厚い壁部92の特性を生かして最大限の吸着力を発揮させ得る。従って、この表示ポール装置1では、特許文献1の場合と比較して基台部2の底面積を最低限に抑えることが可能である。また、例えば、特許文献1では永久磁石を軟磁性材料からなるカップに磁気的に吸着させ、該カップの周縁を鉄鋼板に対面させることによって吸着させるようにしているけれども、永久磁石の磁化状態はその環境には実際上依存しないので、厚い壁部92を実際上厚さ方向に磁化しつつ該壁部92に磁気的に吸着させる場合には、特許文献1のような構造では、カップ自体が磁気的に飽和されるのを避けるためにはカップの壁部自体を厚くする必要があることから、基台部が大きく重くなるのを避け難い。それに対して、この車両輸送船の表示ポール装置1では、基台部2の底面積が最低限に抑えられ得る。
【0068】
なお、基台部2の底面積が小さくなり過ぎると該基台部2による支持が不安定になり易いけれども、この車両輸送船の表示ポール装置1では、柔軟な筒状部材70からなる表示部8を支える支柱部4が可撓性棒状体40からなり、表示部8および支柱部4の全体が可撓性であることから、外力Jに伴う衝撃が基台部2に直接的に加わるのを避け得るので、基台部2の底面積を最低限に抑えつつ表示部8を支える支柱部4が安定に支持され得る。
【0069】
以上においては、車両輸送船の表示ポール装置1が車両輸送船90の壁部91をなす底壁すなわち床壁92上に載置固定される例について説明したけれども、表示ポール装置1,1Bが固定されるのは、車両輸送船90の壁部91であれば、図12に示したように、底壁部(床壁部)92であっても、上下方向等に延びた側壁部93であっても、頂壁部(天井壁部94であってもよい。図12のれいでは、床壁部92には表示部8Bとして円板状表示部80を備えた表示ポール装置1Bが載置固定され、側壁部93には表示ポール装置1の形態の表示ポール装置1bと共に表示ポール装置1Bの形態の表示ポール装置1Bbが取外し可能に固定され、天井壁部94には表示ポール装置1の形態の表示ポール装置1a及び表示ポール装置1Bの形態の表示ポール装置1Bcが取外し可能に固定されている。
【0070】
この表示ポール装置1,1Bでは、基台部2以外の部分は軽いだけでなく、可撓性棒状体40に固定されているから、表示ポール装置1,1Bの向きにかかわらず、基台部2によって安定に支持され得る。
【0071】
また、この表示ポール装置1,1Bでは、例えば図2に示した基台部2の展開(分解)斜視図からわかるように、隔壁部12,12,12が、一方では、永久磁石体50,50,50を収容する凹部U,U,Uを実際上画成するので、永久磁石体50,50,50相互の間に極めて強い静磁的な力(隣接磁極の極性の異同に応じた引力又は斥力)が働くにもかかわらず、永久磁石体50,50,50を夫々の凹部U,U,U内に収容して該静磁力によって永久磁石体50,50,50が飛び出すのを避け得、他方では、該隔壁部12,1,12に孔13,13,13を形成し該孔13,13,13に雌ねじ部材14,14,14を嵌着し得るから、該雌ねじ部材14,14,14に蓋側基台部20から雄ねじ部材29,29,29を螺着して、蓋側及び底側基台部分20,10を相互に固定することにより、永久磁石体50,50,50を蓋側及び底側基台部分20,10により囲んだ室内に収容し得る。
【0072】
なお、この表示ポール装置1,1Bでは、底側及び蓋側基台部分10,20は、機械的強度の高いエンジニアリングプラスチックであるポリカーボネートで形成されている。従って、凹部Uの底壁部分11a(図6の(b))は高々数mm程度(例えば2mm程度)の厚さであり得る。ポリカーボネートは、実際上非磁性(反磁性)であり永久磁石の磁化状態からすると空気間隙が数mmあるのと実質的に同等で、各永久磁石体50,50,50は、その厚さ方向(例えばZ方向)端部に位置する磁極が数mm以下(例えば2mm程度)の間隙を介して強磁性体である鉄鋼製の数cm以上の厚い壁部91に対面され得る。従って、対面した鉄鋼製の厚い壁部91が磁気的に飽和することも(厚さが薄い場合と異なり)厚さ方向の磁化に伴なう反磁場が無視し難くなるようなこともなく、永久磁石体50,50,50の磁化の強さに応じてその厚さ方向に磁化され得る。
【0073】
また、特許文献1のように軟磁性材料からなるカップを磁化して該カップを鉄鋼板に吸着させようとする場合、永久磁石は概ね地面に平行な方向に磁化しているものと想定されるけれども、そのようなカップの縁の磁化は、全周にわたって一様ではなく、直径方向に対向する部分にN,S極が形成されるものと考えられ、該N,S極となる部位とは周方向に90度ずれた部位では表面に垂直な向きの磁力線は少なく、鉄鋼板のうちこれに対面する部位では静磁誘導による磁化が小さくなり、両部分間では静磁的な引力が小さくなるものと考えられる。従って、当該部分を持ち上げる向きのトルクが生じるような磁化に対しては、静磁的な保持力が小さくなるのを避け難い(即ち、安定性に方向依存性が生じる)。これに対して、この表示ポール装置1,1Bでは、永久磁石体50,50,50のうち底側基台部分10の底壁部分11aに対面した表面部分の概ね全体に磁極がある状態で該磁極が底側基台部分10に対面する壁部91を該壁部91の表面に対して実際上垂直に磁化させ、これにより、永久磁石体50,50,50と底側基台部分10の底壁部部分10aを介してこれに対面し表面に概ね垂直に磁化した厚い壁部91との間に大きな静磁的な引力が生じる。従って、いずれの方向においても同程度に安定な支持が行われ得る。
【0074】
加えて、この表示ポール装置1,1Bでは、永久磁石6が複数の永久磁石体50からなるので、永久磁石体50の数又は永久磁石体50を構成する永久磁石小体51,51,・・・の数を変えることにより、所望に応じて、静磁的な力の大きさを変え得る。また、その際、永久磁石50がその厚さ方向に磁化すればよいので、永久磁石小体51として厚さ方向に磁化したものを重ねればよいから、数の変更による磁化の大きさの実効的な調整が容易且つ確実に行われ得る。これに対して、特許文献1のように、面に対して概ね平行な方向に磁化した単一の円板と軟磁性材料からなるカップとを組合わせる場合には、磁石円板が大きくなってそのコストや取り扱いが容易でなくなったりカップの磁気的な飽和が無視し難くなったりする虞れがある。
【0075】
また、この車両輸送船90用の表示ポール装置1,1Bでは、前記永久磁石体50,50,50の少なくとも一部50,50が複数の永久磁石小体51,51を重ねてなる場合には、重ねられる永久磁石小体51の数を変えることによって磁気的な吸着力を所望に応じて現場で容易に変え得るので、車両輸送船90の壁面(壁部91の表面)が滑らかな平面ではなくて凹凸その他の形状で該壁面と車両輸送船用の表示ポール装置1の基台部2との磁気的な吸着力が比較的小さくなる場合であっても、積層される永久磁石小体51,51の数を変えることによって永久磁石体50の磁化の大きさを変え、それによって壁部91に対する磁気的な吸着力を同程度にし得る。なお、永久磁石体50,50,50が前述のように隔壁部12,12,12で分離された状態で間隔をおいて配置され得るから、各永久磁石体50,50,50の磁気的な吸着力を個別に調整することも可能である。
【0076】
なお、以上においては、蓋側基台部分20と底側基台部分10とが雄ねじ29と雌ねじ14との螺合によって固定される例について説明したけれども、例えば、図10の(a)及び(b)に示したように、蓋側基台部分20Dのスプライン状突起部22bD,22bD付きの円柱状底側突出部22Dが底側基台部分10Dのスプライン溝17a付き中央孔17を貫通して底側基台部分10Dの背面側に突出するようにしておくと共に、底側基台部分10Dのうち凹部U,U,U,Uの底壁部ないし底部部分11aD,11aD,11aD,11aDを他の底部部分よりも突出させて該凹部U内に収容される永久磁石体50が対向する壁部91に近接し得るようにしてもよい。この場合、蓋側基台部分20Dの円柱状底側突出部22Dのスプライン状突起部22bD,22bDが底側基台部分10Dの中央孔17のスプライン溝17aD,17aDに沿うように円柱状底側突出部22Dを底側基台部分10Dの中央孔17に沿って挿入突出させ、蓋側基台部分20Dを底側基台部分10Dに対して回すことにより、蓋側基台部分20Dを底側基台部分10Dに固定し得る。なお、ピン49が、円柱状底側突出部22Dの直径方向のピン挿通孔25及び可撓性棒状体40の基端部41の孔42(図示せず)に挿通されて固着されること自体は、前述の場合と同様である。図10に示した例では、ピン49の挿通のし易さを考慮して、凹部U及び永久磁石体50を四つ備える例を示しているけれども、これらは、所望ならば、夫々、三つでも、二つでも、五つ以上でもよい(必要に応じて、孔の向きを変えたり、蓋側基台部分と底側基台部分とを組み立てる前に、蓋側基台部分に可撓性棒状体を組付ければよい)。
【0077】
勿論、蓋側基台部分と底側基台部分との固定は、他の箇所に設けた相互係合部で行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1,1a,1b,1B,1Bb,1Bc 車両輸送船用の表示ポール装置
2 基台部
4,4ia,4ib,4ic,4id 支柱部(ポール部)
6 永久磁石
8,8B,8ia,8ib,8ic,8id 表示部
10,10D 底側基台部分
11 底壁
11a,11b,11aD 底壁部
12 隔壁部
13 貫通孔
14 雌ねじ部材
17 中央孔
17a スプライン溝
18 底面
20,20D 蓋側基台部分
21 底面
22,22D 底側突出部
22a 外周面
22bD スプライン状突起部
23 円錐台頂面
24 円柱状穴
25 ピン挿通孔
26 ねじ挿通孔
27 凹部
28 底面
29 雄ねじ部材
39 ピン
40,40A 可撓性棒状体
41 基端部
42 直径方向貫通孔
43 先端部
44 直径方向貫通孔
45 棒
45A 管状体
49 ピン
50 永久磁石体
51 永久磁石小体
52 突出端部
55 頂面
70,70B 筒状部材
71 筒状部材
72 筒状部材
73 カバー部材
75 キャップ部材
76 部分(管状部)
77 鍔状部
78 直径方向孔
79 ピン
80 板状体(板状部材)
81 円板状表示部本体
82 管状部
83 直径方向孔
84 ピン
90 車両輸送船
91 鋼製壁部
92 底壁部(床壁部)
93 側壁部
94 頂壁部(天井壁部)
C 中心軸線
Cr 領域
D2,D3,D6 内径
D1,D4,D5 外径
D7 径
Fa,Fb 色
J 外力
L1 突出長
L2 深さ
L8 長さ
R 磁石収容室
S 壁部の延在面
U 円筒状凹部
V 車両
V1 バンパー部やボンネット部
V2 タイヤ部を含む車輪部
W 円形凹部
Z 延在方向(上下方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部と支柱部とを有する車両輸送船用の表示ポール装置であって、
基台部が船舶の鋼製壁部に該表示装置自体を吸着させる永久磁石を含み、
支柱部が一端で基台部に取付けられ全体として撓み易いように細長い可撓性棒状体からなり、
該可撓性棒状体に取付けられた表示部を更に有する
車両輸送船用の表示ポール装置。
【請求項2】
表示部が、柔軟な材料からなり可撓性棒状体に嵌装された筒状部材を含む請求項1に記載の車両輸送船用の表示ポール装置。
【請求項3】
表示部が、可撓性棒状体の先端に取付けられた板状部材を含む請求項1又は2に記載の車両輸送船用の表示ポール装置。
【請求項4】
前記永久磁石が、棒状体の延在方向に交差する方向に延在した面内において相互に間隔をおいて配置された複数の永久磁石体からなり、基台部が、底側基台部分及び蓋側基台部分を含み、該底側基台部分及び蓋側基台部分が前記複数の永久磁石体を相互に間隔をおいた状態に分離すべく底側基台部分の底壁から立ち上がった隔壁部を含む磁石収容室を備えている請求項1から3までのいずれか一つの項に記載の車両輸送船用の表示ポール装置。
【請求項5】
前記永久磁石体の夫々が複数の永久磁石小体を重ねてなる請求項4に記載の車両輸送船用の表示ポール装置。
【請求項6】
可撓性棒状体の前記一端が、ピン状体により前記蓋側基台部分に取付けられている請求項1から5までのいずれか一つの項に記載の車両輸送船用の表示ポール装置。
【請求項7】
前記蓋側基台部分が磁石収容室に望む室側面に突出部を備え、該突出部が可撓性棒状体の前記一端を収容する凹部を前記室側面とは反対側の面に備え、突出部と該突出部の凹部に嵌合された可撓性棒状体の前記一端とをまとめて横向きに貫通する状態でピン状体が挿設されており、突出部がその突出端部において複数の永久磁石体を押えるように構成されている請求項6に記載の車両輸送船用の表示ポール装置。
【請求項8】
可撓性棒状体の前記一端が、前記蓋側基台部分を貫通し且つピン状体により前記底側基台部分に取付けられている請求項1から5までのいずれか一つの項に記載の車両輸送船用の表示ポール装置。
【請求項9】
前記可撓性棒状体の前記一端が複数の永久磁石体を分離する分離壁の少なくとも一部として働く請求項8に記載の車両輸送船用の表示ポール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−132212(P2012−132212A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285369(P2010−285369)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(394012245)株式会社カーボーイ (3)
【Fターム(参考)】