説明

車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置

【課題】スピーカ2の断線および/または短絡を検出する。
【解決手段】車両の運行通知音発生装置1は、スピーカ2を備える。運行音信号は、電力増幅回路6で増幅され、カップリングコンデンサ5を通ってスピーカ2に供給される。微小な検査電流が、カップリングコンデンサ5を経由することなく、スピーカ2に供給される。検査電流は、車両の起動電源+Bから、供給される。スピーカ2が正常であるとき、計測される電圧Vbは、運行音の信号とダイオード31の電圧降下とに依存する。スピーカ2が断線すると、インピーダンス変化が生じ、電圧Vbは電圧Vcより高い電圧に変化する。断線判定部42は、電圧Vbが閾値電圧VHを上回ることを判定する。制御装置7は、警報装置11を作動させる。短絡判定部43は、運行音のための信号が供給されているときに、電圧Vbが閾値電圧VLを下回ると、スピーカ2の短絡を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ回路の断線などの異常を検出するための異常検出装置に関し、車両が電動機による運行状態にあることを音によって通知する運行通知音発生装置に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、発音体の断線を検知するために、発音体に接続された駆動回路に、発音体の電磁コイルに流れる電流と電圧とを測定するエラー判定回路を設置する構成を開示している。
【0003】
特許文献2は、スピーカ回路とインピーダンスが等価の等価回路を設け、スピーカ回路と等価回路とのインピーダンスを比較することで断線を検出するスピーカの断線検出装置を開示している。
【0004】
特許文献3は、スピーカ回路のインピーダンスを測定することにより、スピーカ回路の断線、短絡を検出するスピーカラインの検査装置を開示している。
【0005】
特許文献4は、圧電型発音体の断線の有無を検知するときにだけ、断線検出用の電圧を供給する回路を発音体に接続するスイッチを備える構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−23761号公報
【特許文献2】特開2003−274491号公報
【特許文献3】特開2007−37024号公報
【特許文献4】特開2011−70561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で提案されているエラー判定回路は、電流及び電圧を測定するための変流器と変圧器を、発音体と接続される配線上に設置する必要がある。このため、部品点数の増加、価格の上昇といった問題点があった。また、小型化が困難であった。
【0008】
特許文献2で提案されている断線検出装置は、等価回路およびスイッチ回路を設ける必要がある。このため、部品点数の増加、価格の上昇といった問題点があった。また、小型化が困難であった。さらに、通常の作動中に断線などの異常を検出することができないという問題点があった。
【0009】
特許文献3で提案されている検査装置では、スピーカラインの電流を検出するための検出回路が必要であった。このため、部品点数の増加、価格の上昇といった問題点があった。また、小型化が困難であった。また、この検査装置は、非可聴周波数の交流信号を音声信号に混合している。このため、交流信号源が必要であった。さらに、音声信号と検査信号とを混合した混合信号を電力増幅する必要があった。
【0010】
特許文献4で提案されている警報器は、断線有無を検出するときだけ、断線検出用の電圧が供給されるから、通常の作動中に断線などの異常を検出することができないという問題点があった。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、少ない部品点数で、発音動作と並行して異常を検出することができる車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、車両が運行状態にあることを音によって通知する運行通知音発生装置に用いて好適な車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0014】
請求項1に記載の発明は、車両に搭載されたスピーカ(2)と、スピーカから発生させる音の音信号を発生する発生部(15)と、音信号を増幅する電力増幅回路(6)と、電力増幅回路の出力をスピーカに供給するカップリングコンデンサ(5)と、電力増幅回路からカップリングコンデンサを経由してスピーカに印加される音信号の電圧より高い検査用の電圧をスピーカに印加することにより、スピーカを検査するための直流の検査電流を、カップリングコンデンサを経由することなく、スピーカへ供給する供給回路(12、412)と、スピーカの端子に表れる電圧を直接的に、または間接的に検出する検出回路(13、313、413)と、検出回路により検出された電圧(Vb)に基づいて、音信号の電圧がスピーカに印加されているときにも、スピーカの断線および/または短絡を判定する判定部(14、214、314、414)とを備えることを特徴とする。
【0015】
この構成によると、スピーカに断線および/または短絡が発生すると、スピーカのインピーダンスが変化する。スピーカには、検査電流が供給されているから、スピーカのインピーダンスの変化は、スピーカの端子電圧の変化となって表れる。この電圧変化は、検出回路によって検出される。判定部は、検出回路によって検出された電圧に基づいて、スピーカの断線および/または短絡を判定する。この構成によると、音信号の電圧がスピーカに印加されてスピーカから音を発音している状態においても、断線状態では、音信号の電圧より高い検査用の電圧がスピーカ端子の電圧に表れるため、正常状態の電圧と断線状態の電圧とを区別することができ、断線判定することができる。この構成によると、カップリングコンデンサを経由することのない直流の検査電流がスピーカに供給されるから、発生部からの信号による音色への影響が抑制される。また、スピーカの異常を電圧に基づいて判定することができる。このため、比較的簡単な回路構成によりスピーカの異常を判定することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、発生部(15)は、車両の運行を知らせるための運行通知音のための音信号を発生することを特徴とする。この構成によると、車両の運行を車内および/または車外の人々に知らせるための運行通知音がスピーカから発生する。検査電流は、運行通知音の発生を妨げないから、運行通知音の発生を妨げることなく、スピーカの異常を判定することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、供給回路は、車両が起動状態にあるときに供給される電源から、検査電流を供給することを特徴とする。この構成によると、車両が起動状態にあるときに供給される電源から検査電流が供給される。このため、車両が起動状態にあり、スピーカが使用される可能性があるときに、スピーカを検査することができる。車両が起動状態にあるときに供給される電源は、例えば、車両の電源スイッチがON状態にあるときに供給される電源である。また、車両が起動状態にあるときに供給される電源は、例えば、車両の走行用の高電圧が供給可能な状態であるときに供給される電源である。
【0018】
請求項4に記載の発明は、供給回路が供給する検査電流は、発生部によってスピーカから出力される音色への影響を抑制するように、微小な電流に設定されていることを特徴とする。この構成によると、スピーカが出力するべき音色への影響を抑制しながら、スピーカの異常を判定することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、判定部は、検出回路により検出された電圧(Vb)と所定の閾値電圧(VH、VL)とを比較し、検出された電圧(Vb)が閾値電圧(VH、VL)に対して所定の関係になると、スピーカの断線および/または短絡を判定することを特徴とする。この構成によると、検出された電圧と、閾値電圧とが所定の関係になると、スピーカの断線および/または短絡が判定される。例えば、検出電圧が第1の閾値電圧を上回るとスピーカの断線が判定される。また、例えば、発生部が信号を発生しているときに、検出電圧が第2の閾値電圧を下回るとスピーカの断線が判定される。
【0020】
請求項6に記載の発明は、判定部は、所定の関係が、所定期間を上回って継続すると、スピーカの断線および/または短絡を判定することを特徴とする。この構成によると、一時的に所定の関係が成立しただけでは、スピーカの断線および/または短絡は判定されない。このため、誤判定を抑制することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、判定部(214)は、制御装置の入力ポートがもつ入力信号のレベル判定機能によって、検出回路により検出された電圧(Vb)と所定の閾値電圧(VH、VL)とを比較することを特徴とする。この構成によると、制御装置の入力ポートがもつ入力信号のレベル判定機能によって、判定部が提供される。すなわち、入力信号がハイレベルかローレベルかを判定する機能を利用して、検出電圧と閾値電圧とが比較される。
【0022】
請求項8に記載の発明は、判定部(314、414)は、検出回路により検出された電圧(Vb)と所定の閾値電圧(VH、VL)とを比較する比較回路(346、347、348、449)を備えることを特徴とする。この構成によると、判定部を比較回路によって提供することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、供給回路(412)と検出回路(413)と判定部(414)とが、集積回路(417)の中に構成されていることを特徴とする。この構成によると、スピーカの異常検出装置の多くの構成要素が集積回路の中に構成される。この結果、構成部品の数を抑制することができる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、判定部(414)は、制御装置が提供する演算処理によって、検出回路により検出された電圧(Vb)と所定の閾値電圧(VH、VL)とを比較することを特徴とする。この構成によると、制御装置が提供する演算処理によって判定部が提供される。
【0025】
請求項11に記載の発明は、制御装置は、検出回路により検出された電圧(Vb)を入力するポートを備え、検出回路は、ポートに印加される負電圧を除去するダイオード(31)を備えることを特徴とする。
【0026】
この構成によると、検出された電圧が、制御装置のポートから入力される。さらに、検出回路は、ポートに印加される負電圧を除去するダイオードを備えるから、ポートを負電圧から保護することができる。
【0027】
請求項12に記載の発明は、供給回路(12)は、電圧が変動する電源から検査電流を供給しており、供給回路(12)の電圧の検出値が下限値を下回ると検出回路(13)から入力される判定信号をマスクするマスク手段(46)を備えることを特徴とする。この構成によると、電源の電圧が低下すると、判定部に入力される判定信号がマスクされる。この結果、判定部は電源の電圧が低下すると、異常検出装置の正常な動作を保証できないが、この構成によると、判定部の判定がマスクされるから、誤判定を抑制することができる。
【0028】
なお、特許請求の範囲および上記手段の項に記載した括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る異常検出装置を含む運行通知音発生装置を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の各部の波形を示す波形図であって、図2Aは、運行通知音が発生するときの電圧Vaの一例を示し、図2Bは、運行通知音が発生しないときの電圧Vaの一例を示し、図2Cは、運行通知音が発生するときの電圧Vbの一例を示し、図2Dは、運行通知音が発生しないときの電圧Vbの一例を示し、図2Eは、運行通知音が発生するときに、スピーカ回路が断線した場合の電圧Vbの一例を示し、図2Fは、運行通知音が発生するときに、スピーカ回路が短絡した場合の電圧Vbの一例を示す。
【図3】第1実施形態の断線判定処理を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の短絡判定処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明を適用した第2実施形態に係る異常検出装置を含む運行通知音発生装置を示すブロック図である。
【図6】本発明を適用した第3実施形態に係る異常検出装置を含む運行通知音発生装置を示すブロック図である。
【図7】本発明を適用した第4実施形態に係る異常検出装置を含む運行通知音発生装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0031】
(第1実施形態)
図1は、本発明を適用した第1実施形態に係る異常検出装置100を含む運行通知音発生装置1を示すブロック図である。車両用の運行通知音発生装置1(以下、発生装置1という)は、車両の走行を車内および車外の人々に通知するための運行通知音を発生する。また、発生装置1は、車両が走行可能な状態におかれるときにも、運行通知音を発生してもよい。例えば、発生装置1は、車両が、走行していないが、信号などで一時停車しているときにも、運行通知音を発生してもよい。この明細書において、運行の語は、車両が走行状態にあることを意味する場合と、車両が走行状態にあること、および車両が走行可能な状態にあることの両方を意味する場合とがある。運行通知音は、歩行者に対して車両の接近を知らせる目的で使用される場合には、車両接近音、接近通報音、あるいは接近警告音とも呼ばれることがある。運行通知音は、従来のホーンなどとは異なり、車両が所定の低速走行をしている間中、継続的に出力される。
【0032】
発生装置1は、電動車両、または低騒音車両に搭載されることがある。電動車両には、走行用の動力源として電動機のみを搭載した電気自動車と、走行用の動力源として内燃機関と電動機とを搭載したハイブリッド車両とが含まれる。ハイブリッド車両においては、発生装置1は、車両が電動機のみによって走行するときにだけ、運行通知音を発生するように構成することができる。
【0033】
発生装置1は、車両に搭載されたスピーカ(SP)2を含むスピーカ回路を備える。スピーカ2は、ボイスコイルを備えるダイナミックスピーカである。よって、スピーカ2は、誘導性の装置である。スピーカ2の負極端子は、接地されている。スピーカ2の正極端子には、運行通知音のための交流電力と、検査用の直流電流とが印加される。
【0034】
発生装置1は、電源(BAT)3を備える。電源3は、車両に搭載されたバッテリである。電源3は、発生装置1の電源として機能する。電源3は、電源スイッチ4がON(オン)状態のときに起動電源+Bと呼ばれる電力を供給する。起動電源+Bは、車両が起動状態にあるとき、すなわち車両が走行する可能性があるときに供給される電源である。起動電源+Bは、車両が非起動状態のときには供給されない。起動電源+Bの電圧は、電源3の電圧に応じて変動する。例えば、一般的な12Vの車両用電源システムにおいては、起動電源+Bは、8Vから16Vの範囲で変動することがある。このため、発生装置1および異常検出装置100は、起動電源+Bの上記変動範囲において正常に機能できるように設計されている。
【0035】
発生装置1は、カップリングコンデンサ5と、電力増幅回路(AMP)6とを備える。電力増幅回路6は、運行通知音のための音信号を増幅する。カップリングコンデンサ5は、電力増幅回路6の出力のうち、運行通知音のための交流成分を通過させ、スピーカ2に供給する。よって、音信号の電圧は、電力増幅回路6からカップリングコンデンサ5を経由してスピーカ3に印加される。
【0036】
発生装置1は、制御装置(COM)7を備える。制御装置7は、電子制御装置である。制御装置7は、運行通知音のための音信号を発生する。また、制御装置7は、運行通知音の発生と停止とを切換える。音信号は、電力増幅回路6に供給される。制御装置7は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを格納している。記憶媒体は、メモリによって提供されうる。プログラムは、制御装置7によって実行されることによって、制御装置7をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される制御方法を実行するように制御装置7を機能させる。制御装置7が提供する手段は、所定の機能を達成する機能的ブロック、またはモジュールとも呼ぶことができる。
【0037】
発生装置1は、車両のブレーキ装置の操作を検出するブレーキセンサ(BRK)8を備える。ブレーキセンサ8の信号は、制御装置7に入力される。発生装置1は、車両の走行速度を検出する車速センサ(VM)9を備える。車速センサ9の信号は、制御装置7に入力される。制御装置7は、車速センサ9から入力される車速信号に基づいて、車両が所定の速度領域で走行しているときに運行通知音を発生する。例えば、制御装置7は、車両が所定の低速領域で走行しているときに運行通知音を発生する。制御装置7は、車両の走行速度が、0km/hから20km/hの間の領域にあるときに、音信号を発生する。発生装置1は、音信号の発生を許可、または禁止する選択装置(ON/OFF)10を備える。選択装置10の信号は、制御装置7に入力される。選択装置10は、例えば、車両の運転者によって操作されるスイッチ、または車両に搭載された他の電子制御装置である。例えば、選択装置10は、車両が駐車されているときに音信号の発生を禁止し、車両が運行状態にあるときに音信号の発生を許可する。また、車両の運転者が運行通知音を止めたいときに、運転者は選択装置10を操作することにより、音信号の発生を禁止することができる。
【0038】
発生装置1は、スピーカ回路の異常が検出されたときに起動される対策装置としての警報装置(WRN)11を備える。警報装置11は、スピーカ2の異常を、視覚的、または聴覚的に車両の利用者に知らせる。警報装置11は、警報ランプ、または警報ブザーによって提供することができる。また、警報装置11は、車両に搭載されたディスプレイに警報表示を表示する表示装置によっても提供することができる。
【0039】
制御装置7は、音信号を発生する発生部(SDG)15を備える。発生部15は、車両の走行速度に応じて、音信号を合成し、出力する。発生部15は、制御装置7の内部または外部に設けられたメモリに保存されたデータに基づいて、音信号を合成し、出力する。発生部15により発生された音信号は、電力増幅回路6に供給される。制御装置7は、発生部15を制御する制御部(CNT)16を備える。制御部16は、ブレーキセンサ8、車速センサ9、および選択装置10からの信号に基づいて、発生部15を制御する。制御部16は、発生部15を制御する制御手段を提供する。制御部16は、運行発生音の発生と停止とを切換える。
【0040】
発生装置1は、スピーカ2を含むスピーカ回路の異常を検出する異常検出装置100を備える。異常検出装置100は、スピーカ2の断線および/または短絡を検出する。ここで、スピーカ2の断線には、スピーカ2の内部における回路の断線と、スピーカ2へ通電するための回路の断線とが少なくとも含まれる。よって、異常検出装置100は、スピーカ2を含むスピーカ回路の断線を検出しているともいえる。また、スピーカ2の短絡には、スピーカ2の内部おける短絡と、スピーカ2の端子の接地、およびスピーカ2へ通電するための回路の接地が少なくとも含まれる。よって、異常検出装置100は、スピーカ2を含むスピーカ回路の短絡を検出しているともいえる。異常検出装置100は、起動電源+Bが供給されている期間中に、スピーカ2の断線および/または短絡を検出する。したがって、車両が運行可能な状態に置かれている期間中にスピーカ2の異常が検出される。特に、利用者が車両を運行するために、電源スイッチ4をオン状態に操作すると、その直後から異常検出装置100は、スピーカ2の異常を検出する。
【0041】
異常検出装置100は、検査用の供給回路12を備える。供給回路12は、スピーカ2の正常または異常を検査するための直流の検査電流をスピーカ2に供給する。供給回路12は、発生部15によってスピーカ2から出力される運行通知音の音色への影響を抑制するように、微小な電流に設定されている。供給回路12がスピーカ2に供給する検査電流は、運行通知音を発生するためにスピーカ2に供給される電流よりも十分に小さい。例えば、供給回路12がスピーカ2に供給する検査電流は、カップリングコンデンサ5を経由して供給される交流電流の1/100程度である。
【0042】
供給回路12は、起動電源+Bによって検査電流を供給する。供給回路12は、電力増幅回路6からカップリングコンデンサ5を経由してスピーカ2に印加される音信号の電圧より高い検査用の電圧をスピーカ2に印加する。供給回路12は、検査用の電圧を印加することにより、スピーカ2を検査するための直流の検査電流を、カップリングコンデンサ5を経由することなく、スピーカ2へ供給する。起動電源+Bの電圧は、バッテリの状態に応じて変動する。よって、供給回路12は、電圧が変動する電源から検査電流を供給している。起動電源+Bの電圧変動に応じて検査電流も変動する。よって、検査電流によって生じる電圧降下も、起動電源+Bに応じて変動する。起動電源+Bは、車両が非起動状態のときには供給されない。この結果、車両が運行されないときに検査のために電力が消費されることが防止される。
【0043】
供給回路12は、検査電流を、カップリングコンデンサ5とスピーカ2との間から、スピーカ2に供給する。よって、供給回路12は、カップリングコンデンサ5を経由することなく、直流の検査電流をスピーカ2に供給する。
【0044】
供給回路12は、起動電源+Bを分圧する分圧回路を構成する抵抗器21、22を備える。さらに、供給回路12は、分圧回路にアノードが接続され、スピーカ2の正極端子にカソードが接続されたダイオード23を備える。ダイオード23は、起動電源+Bからスピーカ2へ向けて直流電圧を供給するように、順方向に配置されている。供給回路12は、抵抗器21と、ダイオード23とによって、スピーカ2の正極端子に直流電圧を印加するプルアップ回路でもある。抵抗器22は、スピーカ2のインピーダンスの変化に応じた電圧を発生するための負荷抵抗でもある。
【0045】
ダイオード23のカソードとカップリングコンデンサ5との間、すなわちスピーカ2の正極端子には、電圧Vaが表れる。電圧Vaは、運行通知音のための交流電圧と、検査用の直流電圧との合成電圧である。
【0046】
発生装置1は、スピーカ2のインピーダンスの変化に応じて変化する電圧信号を検出するための検出回路13を備える。検出回路13は、スピーカ2の端子に表れる電圧を直接的に、または間接的に検出する。この実施形態では、スピーカ2のインピーダンス変化によってスピーカ2の端子に表れる電圧を、抵抗器22の電圧降下によって間接的に検出する。
【0047】
検出回路13は、起動電源+Bに応じて変動する電圧を、制御装置7に入力可能な電圧に変換する変換回路でもある。検出回路13は、起動電源+Bが直接的に印加される回路から、制御装置7を保護する保護回路でもある。検出回路13は、抵抗器22の端子電圧を検出する。検出回路13は、出力部分に電圧Vbを出力する。電圧Vbは、断線および/または短絡を判定するために計測される電圧である。
【0048】
検出回路13は、アノードが接地され、カソードが出力部分に接続されたダイオード31を備える。ダイオード31は、出力部分と接地電位との間に逆方向に配置されている。ダイオード31は、負電圧をカットするための保護ダイオードである。音信号が供給されるとき、電圧Vaは、負方向へも変化する。ダイオード31は、負電圧を除去することによって、負電圧が制御装置7に入力されることを阻止し、制御装置7のポートを保護する。
【0049】
検出回路13は、アノードが出力部分に接続され、カソードが電源Vcに接続されたダイオード32を備える。ダイオード32は、電源Vcと出力部分との間に逆方向に配置されている。電源Vcは、電子回路のために安定化された電源である。電源Vcとダイオード32は、計測される電圧を、電源Vcの電圧に制限するプルアップ回路を構成する。これにより、起動電源+Bを供給回路12の電源として使用しても、計測される電圧が電子回路のための電圧に制限される。この結果、計測される電圧は、制御装置7に入力可能な電圧に調整される。
【0050】
検出回路13は、電流制限用の抵抗器33を備える。抵抗器33は、抵抗器21と抵抗器22との間と、ダイオード31とダイオード32との間との間に接続されている。直列接続されたダイオード31、32、および抵抗器33は、計測される電圧を制限する保護回路を構成する。
【0051】
さらに、検出回路13は、高周波成分を阻止し、低周波成分を通過させるローパスフィルタを含むフィルタ回路(FLT)34を備える。検出回路13の出力は、制御装置7に入力される。
【0052】
制御装置7は、判定部14を提供する。制御装置7は、検出回路13により検出された電圧Vbを入力するポートを備える。このポートは、AD変換ポートである。制御装置7は、電圧Vbをデジタル情報に変換するAD変換器(A/D)41を備える。この実施形態では、主として制御装置7が提供する演算処理、すなわちソフトウェアによって、判定部14が提供されている。判定部14は、検出回路13により検出された電圧Vbと所定の閾値電圧VH、VLとを比較する。この構成によると、音信号の電圧がスピーカ2に印加されてスピーカ2から音を発音している状態においても、断線状態では、音信号の電圧より高い検査用の電圧がスピーカ2の端子の電圧に表れる。このため、正常状態の電圧と断線状態の電圧とを区別することができ、断線判定することができる。よって、判定部14は、電圧Vbに基づいて、音信号の電圧がスピーカ2に印加されているときにも、スピーカ2の断線を判定する。このために、供給回路12がスピーカ2に印加する電圧は、音信号の電圧の変動範囲を越える電圧値に設定されている。
【0053】
制御装置7は、スピーカ2の断線を判定する断線判定手段としての断線判定部(OCD)42を備える。断線判定部42は、AD変換器41の出力が示す電圧Vbと、所定の閾値電圧VHとを比較することにより断線を判定する。閾値電圧VHは、スピーカ2の断線を判定するために設定された第1閾値である。閾値電圧VHは、電圧Vbがほぼ電源Vcの電圧であることを判定できるように設定されている。断線判定部42は、電圧Vbが閾値電圧VHより高くなると、断線を判定する。断線判定部42は、断線を判定すると、警報装置11を作動させるための信号を出力する。この信号に応答して、警報装置11は、断線を示す警報を発生する。
【0054】
制御装置7は、スピーカ2の短絡を判定する短絡判定手段としての短絡判定部(SCD)43を備える。短絡判定部43は、AD変換器41の出力が示す電圧Vbと、所定の閾値電圧VLとを比較することにより断線を判定する。閾値電圧VLは、スピーカ2の短絡を判定するために設定された第2閾値である。閾値電圧VLは、閾値電圧VHより低い。閾値電圧VLは、電圧Vbがほぼ0(ゼロ)Vであることを判定できるように設定されている。短絡判定部43は、電圧Vbが閾値電圧VLより低くなると、短絡を判定する。短絡判定部43は、短絡を判定すると、警報装置11を作動させるための信号を出力する。この信号に応答して、警報装置11は、短絡を示す警報を発生する。
【0055】
供給回路12は、電圧が変動する起動電源+Bから検査電流を供給している。制御装置7は、供給回路12の電源である起動電源+Bの電圧が低下することを検出するモニタ部(MO)46を備える。モニタ部46は、起動電源+Bの電圧の検出値が、所定の下限値を下回ると検出回路13から入力される判定信号をマスクするマスク手段を提供する。モニタ部46は、判定信号をマスクするための信号を断線判定部42に供給する。これにより、起動電源+Bが低下したときの不正確な判定を防止することができる。
【0056】
スピーカ2の正常な抵抗値は、数Ω(オーム)、例えば8Ωである。プルアップ抵抗である抵抗器21の抵抗値は、スピーカ2の抵抗値より十分に大きく設定されている。抵抗器21の抵抗値は、例えば10kΩとすることができる。抵抗器22の抵抗値は、抵抗器21と抵抗器22との分圧比を望ましい比とするように設定される。抵抗器22の抵抗値は、起動電源+Bの電圧が下限値を下回った場合に、計測される電圧Vbが閾値電圧VHを下回るように設定することができる。この場合、もし、実際にスピーカ2が断線しても、電圧Vbは閾値電圧VHを上回ることがない。言い換えると、起動電源+Bが下限値を下回ると、断線の判定が非検出状態に固定される。つまり不正確な判定がなされるおそれがある。起動電源+Bの電圧の下限値は、異常検出装置100の正常な動作を保証できない程度の低電圧に設定することができる。例えば、下限値は8Vに設定することができる。この場合、起動電源+Bの電圧が8Vを下回ると、電圧Vbは、電源Vcに到達しない。モニタ部46が提供するマスク手段により、起動電源+Bが過剰に低下した場合の、不確定な判定を防止することができる。抵抗器22の抵抗値は、例えば20kΩとすることができる。
【0057】
抵抗器33の抵抗値は、電流を制限するために望ましい値に設定される。抵抗器33の抵抗値は、例えば、10kΩとすることができる。電源Vcの電圧は、例えば5Vである。
【0058】
図2は、第1実施形態の各部の波形を示す波形図である。なお、図中の波形図は、説明のために簡単化されている。図2Aは、運行通知音が発生するときの電圧Vaの一例を示す。発生部15が作動しているとき、すなわちON状態であるとき、電圧Vaには、運行通知音のための交流信号が表れる。図2Bは、運行通知音が発生しないときの電圧Vaの一例を示す。発生部15が停止しているとき、すなわちOFF状態であるとき、電圧Vaには、検査用の直流電圧が表れる。ここで、スピーカ2は、正常時には、所定の低い抵抗値を示す。抵抗器22の抵抗値は、スピーカ2の抵抗値より十分に大きく設定されているから、電圧Vaは、ほぼ0(ゼロ)Vである。
【0059】
図2Cは、運行通知音が発生するときの電圧Vbの一例を示す。発生部15が作動しているとき、電圧Vbには、ダイオード31によって半波整流された電圧波形が表れる。この電圧波形は、音信号の電圧に対応している。このとき、電圧Vbは電源Vcの電圧に到達することはない。電圧Vbは、電源Vcの電圧より低い最大値を示す。ここで、電圧Vfは、ダイオード31の順方向電圧降下である。図2Dは、運行通知音が発生しないときの電圧Vbの一例を示す。発生部15が停止しているとき、電圧Vbは、ほぼ0(ゼロ)Vである。
【0060】
図2Eは、運行通知音が発生するとき(SDG:ON)に、スピーカ2が断線(SP:OPEN)した場合の電圧Vbの一例を示す。スピーカ2のボイスコイルなどに断線が生じると、スピーカ2の抵抗値はほぼ無限大に増加する。スピーカ2に検査電流が供給されているときに、スピーカ2に断線が生じると、抵抗器22の端子電圧は、起動電源+Bの電圧を抵抗器21と抵抗器22とで分圧した電圧に上昇する。抵抗器22の端子電圧は、ダイオード32を順方向にバイアスする。この結果、電圧Vbは、ほぼ電源Vcの電圧となる。閾値電圧VHは、電源Vcの電圧よりわずかに低い電圧である。この結果、断線判定部42によって断線が検出される。
【0061】
図2Fは、運行通知音が発生するとき(SDG:ON)に、スピーカ2が短絡(SP:SHORT)した場合の電圧Vbの一例を示す。ボイスコイルなどに短絡が生じると、スピーカ2の抵抗値はほぼ0(ゼロ)Ωに低下する。スピーカ2に検査電流が供給されているときに、スピーカ2に短絡が生じると、抵抗器22の端子間電圧は、ダイオードの電圧降下値に低下する。この結果、電圧Vbはダイオードの電圧降下値となる。閾値電圧VLは、ダイオードの電圧降下値よりわずかに高い電圧である。この結果、短絡判定部42によって短絡が検出される。閾値電圧VLは、図2Cに示す正常時の電圧Vbと、図2Fに示す短絡時の電圧Vbとを区別できるように設定されている。
【0062】
図3は、第1実施形態の断線判定処理160を示すフローチャートである。断線判定処置160によって断線判定部42が提供されている。ステップ161では、起動電源+Bの供給が確認される。すなわち、起動電源+Bの供給によって供給回路12が作動し、検査電流が供給されていることが確認される。
【0063】
ステップ162では、計測対象である電圧Vbが制御装置7に入力される。ここでは、AD変換器41によって電圧Vbがデジタル値に変換される。ステップ163では、電圧Vbと閾値電圧VHとを比較する。ステップ163では、電圧Vbが閾値電圧VHを上回るか否かを判定する。電圧Vbが閾値電圧VHを上回らない場合、ステップ162に戻り、電圧Vbの観測を繰り返す。電圧Vbが閾値電圧VHを上回ると、ステップ164に進む。
【0064】
ステップ164では、Vb>VHの状態が所定期間継続しているか否かを判定する。ステップ164では、Vb>VHの状態の継続時間Tcontが、所定の閾値時間Tthを上回るか否かを判定する。閾値時間Tthは、例えば、500msecとすることができる。ステップ164は、一時的な断線判定を却下して、後続の断線処理の安定化を図る。継続時間Tcontが閾値時間Tthを上回らない場合、ステップ162に戻る。継続時間Tcontが閾値時間Tthを上回わると、ステップ165に進む。
【0065】
この結果、判定部14は、検出回路13により検出された電圧Vbと閾値電圧VHとを比較し、検出された電圧Vbが閾値電圧VHに対して所定の関係となるとき、スピーカ2の断線を判定する。さらに、判定部14は、所定の関係Vb>VHが、所定期間Tthを上回って継続すると、スピーカ2の断線を判定する。
【0066】
ステップ165では、スピーカ2の断線判定に応答して、断線に対策するための断線処理が実行される。ここでは、スピーカ2の断線を、車両の利用者に通知する警告処理が実行される。具体的には、警報装置11を作動させる処理が実行される。これに代えて、または追加的に、発生部15を停止させる保護処理が実行されてもよい。
【0067】
図4は、第1実施形態の短絡判定処理180を示すフローチャートである。短絡判定処置180によって短絡判定部43が提供されている。ステップ181では、起動電源+Bの供給が確認される。すなわち、起動電源+Bの供給によって供給回路12が作動し、検査電流が供給されていることが確認される。
【0068】
ステップ182では、計測対象である電圧Vbが制御装置7に入力される。ここでは、AD変換器41によって電圧Vbがデジタル値に変換される。ステップ183では、発生部15が作動しているか否か、すなわちON状態か否かを判定する。この実施形態では、発生部15が作動しているときにだけ、スピーカ2の正常と、スピーカ2の短絡とを識別することができる。すなわち、図2Fに図示された電圧Vbの波形は、図2Dに図示された電圧Vbの波形と区別できない。しかし、図2Fに図示された電圧Vbの波形は、図2Cに図示された電圧Vbの波形と区別することができる。そこで、短絡判定のための処理の大部分は、発生部15が作動しているときにだけ、実行される。発生部15が停止しているとき、ステップ182に戻り、電圧Vbの観測を繰り返す。発生部15が作動しているとき、ステップ184に進む。
【0069】
ステップ184では、電圧Vbと閾値電圧VLとを比較する。ステップ184では、電圧Vbが閾値電圧VLを下回るか否かを判定する。ステップ184での判定は、電圧Vbがほぼ0(ゼロ)Vであるか否かの判定と置き換え可能である。電圧Vbが閾値電圧VHを下回らない場合、ステップ182に戻り、電圧Vbの観測を繰り返す。電圧Vbが閾値電圧VLを下回ると、ステップ185に進む。
【0070】
ステップ185では、Vb<VLの状態が所定期間継続しているか否かを判定する。ステップ185では、Vb<VLの状態の継続時間Tcontが、所定の閾値時間Tthを上回るか否かを判定する。ステップ164は、一時的な短絡判定を却下して、後続の短絡処理の安定化を図る。継続時間Tcontが閾値時間Tthを上回らない場合、ステップ182に戻る。継続時間Tcontが閾値時間Tthを上回ると、ステップ186に進む。
【0071】
この結果、判定部14は、検出回路13により検出された電圧Vbと閾値電圧VLとを比較し、検出された電圧Vbが閾値電圧VLに対して所定の関係になると、スピーカ2の短絡を判定する。さらに、判定部14は、所定の関係Vb<VLが、所定期間Tthを上回って継続すると、スピーカ2の短絡を判定する。
【0072】
ステップ186では、スピーカ2の短絡判定に応答して、短絡に対策するための短絡処理が実行される。ここでは、スピーカ2の短絡を、車両の利用者に通知する警告処理が実行される。具体的には、警報装置11を作動させる処理が実行される。これに代えて、または追加的に、発生部15を停止させる保護処理が実行されてもよい。
【0073】
断線判定処理160および短絡判定処理180は、起動電源+Bが供給された直後、すなわち車両の電源がON状態に操作された直後から繰り返して実行される。断線判定処理160および短絡判定処理180は、車両の電源がOFF状態に操作されるまで繰り返される。この結果、運行通知音を発生させる可能性が生じたときから、スピーカ2の断線および短絡が判定される。車両が走行可能な状態になる前に、車両の電源はON状態に操作されるから、運行通知音を発生すべき時期の前に、スピーカ2の断線および短絡が判定される。また、運行通知音を発生させている間中にスピーカ2の断線および短絡が判定される。
【0074】
(第2実施形態)
図5は、本発明を適用した第2実施形態に係る異常検出装置200を含む運行通知音発生装置1を示すブロック図である。上記実施形態では、制御装置7におけるソフトウェア処理によって電圧Vbと閾値電圧VH、VLとを比較した。これに代えて、この実施形態では、ハードウェアによって電圧Vbと閾値電圧VH、VLとを比較する。しかも、この実施形態では、制御装置7が備える入力ポート244の閾値機能によって電圧Vbと閾値電圧VH、VLとを比較する。
【0075】
異常検出装置200は、判定部214を備える。判定部214は、入力ポート244を備える。入力ポート244は、制御装置7の汎用入力ポート(GPI)、またはインプットキャプチャポート(CAI)によって提供される。さらに、判定部214は、閾値電圧VHおよび閾値電圧VLを設定する閾値設定器245を備える。閾値設定器245は、入力ポート244の回路によって提供されている。入力ポート244は、入力電圧が所定の閾値電圧VHを上回ると、入力電圧がハイレベルであると判定する。また、入力ポート244は、入力電圧が所定の閾値電圧VLを下回ると、入力電圧がローレベルであると判定する。また、入力ポート244は、入力電圧のレベルが継続した場合に、ハイレベルまたはローレベルであると判定するフィルタ機能を有する。
【0076】
この実施形態では、判定部214は、制御装置7の入力ポートがもつ入力信号のレベル判定機能によって、検出回路13により検出された電圧Vbと閾値電圧VH、VLとを比較する。この結果、入力ポート244によって、電圧Vbが閾値電圧VHを上回ったこと、すなわちスピーカ2の断線を判定することができる。入力ポート244の閾値電圧VHとして、一般的なマイクロコンピュータに見られる4.2V程度の電圧を用いることができる。この構成によると、電源Vcの電圧に近い電圧が、閾値電圧VHとして用いられる。したがって、運行通知音を発生させているときの正常時の電圧Vbと、運行通知音を発生させているときの断線時の電圧Vbとを区別するために適した閾値電圧VHが設定される。この結果、簡単な構成でありながら、誤判定を抑制することができる。
【0077】
また、入力ポート244によって、電圧Vbが閾値電圧VLを下回ったこと、すなわちスピーカ2の短絡を判定してもよい。短絡判定においては、制御装置7によってステップ183の処理が実行される。
【0078】
(第3実施形態)
図6は、本発明を適用した第3実施形態に係る異常検出装置300を含む運行通知音発生装置1を示すブロック図である。上記実施形態では、制御装置7のソフトウェア処理、または入力ポート244によって判定部14、214を構成した。これに代えて、この実施形態では、制御装置7とは別に設けられたハードウェアによって判定部314を構成する。
【0079】
異常検出装置300は、検出回路313を備える。検出回路313は、抵抗器22の端子電圧を検出する。異常検出装置300は、判定部314を備える。判定部314は、コンパレータ346により構成された比較回路を備える。比較回路は、検出回路13により検出された電圧Vbと閾値電圧VH、VLとを比較する。比較回路は、コンパレータ346と、閾値電圧VHを設定する設定回路を提供する抵抗器347、348を備える。抵抗器347、348は、電源Vcに対して直列接続され、抵抗分圧回路を構成している。コンパレータ346の非反転入力に検出回路313が接続されている。コンパレータ346の反転入力に抵抗分圧回路が接続されている。コンパレータ346の出力は、入力ポート244に接続されている。比較回路は、電圧Vbが閾値電圧VHを上回ると、スピーカ2の断線を判定する。スピーカ2の断線が判定されると、制御装置7は、警報装置11を作動させる。
【0080】
また、比較回路によって、電圧Vbが閾値電圧VLを下回ったこと、すなわちスピーカ2の短絡を判定してもよい。短絡判定においては、制御装置7によってステップ183の処理が実行される。
【0081】
この構成によると、コンパレータ346によって制御装置7への入力電圧を調節できるため、検出回路313を簡単な回路構成とすることができる。また、制御装置7の汎用入力ポート(GPI)、またはインプットキャプチャポート(CAI)を利用することができる。また、制御装置7の処理負荷を増加させることなく、スピーカ2の断線を判定することができる。
【0082】
(第4実施形態)
図7は、本発明を適用した第4実施形態に係る異常検出装置400を含む運行通知音発生装置1を示すブロック図である。この実施形態では、スピーカ2の駆動、および異常検出のための回路を集積回路として構成する。
【0083】
異常検出装置400は、集積回路417を有する。集積回路417は、制御装置7とスピーカ2との間に設けられている。集積回路417は、電力増幅回路6を内蔵している。カップリングコンデンサ5は、集積回路417の外に設けられている。集積回路417は、は、定電圧回路(CVC)424を備える。定電圧回路424は、起動電源+Bから電力供給を受ける。定電圧回路424は、集積回路417内の回路の電源を供給する。特に、定電圧回路424は、供給回路412に一定の電圧Vcを供給する。供給回路412は、定電圧Vcを分圧する抵抗分圧回路を構成する抵抗器425、426を備える。抵抗器425と抵抗器426との間の接続点は、カップリングコンデンサ5とスピーカ2との間に接続されている。これにより、定電圧回路424から供給回路412を経由して、微小な検査電流がスピーカ2に供給される。
【0084】
異常検出装置400は、検出回路413を備える。検出回路413は、抵抗器426の端子に表れる電圧Vbを検出する。異常検出装置400は、判定部414を備える。判定部414は、判定回路(DET)449によって提供される。判定回路449は、電圧Vbに基づいて、スピーカ2の断線および/または短絡を判定する。判定回路449は、電圧Vbが閾値電圧VHを上回ることを検出する比較回路などによって構成することができる。さらに、判定回路449は、電圧Vbが閾値電圧VHを上回る状態の継続期間が所定期間を上回ることを判定する継続判定手段を備える。よって、判定回路449は、電圧Vbが閾値電圧VHを上回る状態の継続期間が所定期間を上回ると、スピーカ2の断線を判定する。
【0085】
さらに、判定回路449は、発生部15が信号を発生しているときに、電圧Vbが閾値電圧VLを下回ることを検出する比較回路などを備えることができる。この場合、判定回路449は、電圧Vbが閾値電圧VLを下回る状態の継続期間が所定期間を上回ることを判定する継続判定手段を備える。よって、判定回路449は、電圧Vbが閾値電圧VLを下回る状態の継続期間が所定期間を上回ると、スピーカ2の短絡を判定する。
【0086】
判定回路449の出力は、制御装置7に入力される。スピーカ2の断線または短絡が判定されると、制御装置7は、警報装置11を作動させる。この構成によると、供給回路412と、検出回路413と、判定部414とが、集積回路417の中に構成される。この結果、スピーカ2の異常検出装置400の多くの構成要素を集積回路の中に構成することができる。
【0087】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。上記実施形態の構造は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0088】
例えば、制御装置が提供する手段と機能は、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置をアナログ回路によって構成してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、スピーカ2の断線と短絡との両方を判定した。これに代えて、断線のみ、または短絡のみを判定してもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、起動電源+Bとして、車両の電源スイッチ4がON状態のときに供給される電源を利用した。これに代えて、電動車両の走行用の高圧電力が供給可能な状態であるときに供給される電源を、起動電源として利用してもよい。例えば、電動車両の走行用電動機に給電するための高圧電池が、電動機に給電可能な状態となっている期間にだけ供給される電源を、起動電源として利用することができる。
【0091】
また、上記実施形態では、判定部314、414から制御装置7への信号の送信は、ハイレベルまたはローレベルの信号によって与えられた。これに代えて、判定部314、414から制御装置7への信号の送信を、通信装置を利用した通信により、またはパルス信号を利用する送信回路により実行してもよい。例えば、車両用ネットワークを利用することができる。
【0092】
また、上記実施形態では、制御装置7によって警報装置11を直接的に制御した。これに代えて、制御装置7からは、異常処理のための指令信号を出力するように構成してもよい。かかる構成においては、指令信号を受信した他の制御装置によって断線または短絡に対策するための対策処理が実行される。
【符号の説明】
【0093】
1 運行音発生装置、 100 異常検出装置、 2 スピーカ、 3 電源、 4 電源スイッチ、 5 カップリングコンデンサ、 6 電力増幅回路、 7 制御装置、 8 ブレーキセンサ、 9 車速センサ、 10 選択装置、 11 警報装置、 12 供給回路、 21 抵抗器、 22 抵抗器、 23 ダイオード、 13 検出回路、 31 ダイオード、 32 ダイオード、 33 抵抗器、 34 フィルタ、 14 判定部、 41 AD変換器、 42 断線判定部、 43 短絡判定部、 15 発生部、 16 制御部、 200 異常検出装置、 214 判定部、 244 入力ポート、 245 閾値設定器、 300 異常検出装置、 313 検出回路、 314 判定部、 346 オペアンプ、 347 抵抗器、 348 抵抗器、 400 異常検出装置、 412 供給回路、 413 検出回路、 414 判定部、 417 集積回路、 424 定電圧回路、 425 抵抗器、 426 抵抗器、 449 異常判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたスピーカ(2)と、
前記スピーカから発生させる音の音信号を発生する発生部(15)と、
前記音信号を増幅する電力増幅回路(6)と、
前記電力増幅回路の出力を前記スピーカに供給するカップリングコンデンサ(5)と、
前記電力増幅回路から前記カップリングコンデンサを経由して前記スピーカに印加される前記音信号の電圧より高い検査用の電圧を前記スピーカに印加することにより、前記スピーカを検査するための直流の検査電流を、前記カップリングコンデンサを経由することなく、前記スピーカへ供給する供給回路(12、412)と、
前記スピーカの端子に表れる電圧を直接的に、または間接的に検出する検出回路(13、313、413)と、
前記検出回路により検出された電圧(Vb)に基づいて、前記音信号の電圧が前記スピーカに印加されているときにも、前記スピーカの断線および/または短絡を判定する判定部(14、214、314、414)とを備えることを特徴とする車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項2】
前記発生部(15)は、前記車両の運行を知らせるための運行通知音のための音信号を発生することを特徴とする請求項1に記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項3】
前記供給回路は、前記車両が起動状態にあるときに供給される電源から、前記検査電流を供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項4】
前記供給回路が供給する前記検査電流は、前記発生部によって前記スピーカから出力される音色への影響を抑制するように、微小な電流に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記検出回路により検出された電圧(Vb)と所定の閾値電圧(VH、VL)とを比較し、前記検出された電圧(Vb)が前記閾値電圧(VH、VL)に対して所定の関係になると、前記スピーカの断線および/または短絡を判定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記所定の関係が、所定期間を上回って継続すると、前記スピーカの断線および/または短絡を判定することを特徴とする請求項5に記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項7】
前記判定部(214)は、制御装置の入力ポートがもつ入力信号のレベル判定機能によって、前記検出回路により検出された電圧(Vb)と所定の閾値電圧(VH、VL)とを比較することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項8】
前記判定部(314、414)は、前記検出回路により検出された電圧(Vb)と所定の閾値電圧(VH、VL)とを比較する比較回路(346、347、348、449)を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項9】
前記供給回路(412)と前記検出回路(413)と前記判定部(414)とが、集積回路(417)の中に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項10】
前記判定部(414)は、制御装置が提供する演算処理によって、前記検出回路により検出された電圧(Vb)と所定の閾値電圧(VH、VL)とを比較することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記検出回路により検出された電圧(Vb)を入力するポートを備え、
前記検出回路は、前記ポートに印加される負電圧を除去するダイオード(31)を備えることを特徴とする請求項10に記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。
【請求項12】
前記供給回路(12)は、電圧が変動する電源から前記検査電流を供給しており、
前記供給回路(12)の電圧の検出値が下限値を下回ると前記検出回路(13)から入力される判定信号をマスクするマスク手段(46)を備えることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載の車両運行通知音発生用スピーカ回路の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−63706(P2013−63706A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203889(P2011−203889)
【出願日】平成23年9月17日(2011.9.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】