説明

車両駆動制御装置

【課題】電力瞬時値を用いて電力量を検出するのに、BPFの濾波帯の中心周波数が電源の基本波周波数となるように自動補正して電源周波数の微小変動にも、商用周波数(50Hz/60Hz)切替えにも自動で対応する車両駆動制御装置を提供する。
【解決手段】車両駆動制御装置は、電動機104が駆動可能なように電力を供給するためのコンバータ102とインバータ103を有する主変換装置101のうち、2次電圧及び2次電流を検出する手段106,105と、2次電圧及び2次電流の検出値を用いて主変換装置101の入出力電力を演算する電力演算部107とを有し、電力演算の過程で中心周波数を自動的に補正可能なバンドパスフィルタ(BPF)を用いて、コンバータ、インバータうちの少なくとも一方が動作しているときのみ電力演算を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施の形態は、車両駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主変換装置の電力量演算では、電圧、電流の瞬時値から各々の実効値を演算し、それらの積から電力瞬時値を演算し、さらにこの電力瞬時値を積算することによって電力量を得ていた。
【0003】
しかし従来の方式では、実効値演算を行う必要があるために応答が遅く、電圧・電流の急変に対応できず、誤差が生じてしまう場合がある問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−148028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施の形態は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたもので、主変圧器の2次側の交流電力の瞬時値を演算し、積算することによって電力量を算出することができ、応答の早い電力量演算ができる車両駆動制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明の実施の形態は、交流電力の基本波周波数での電力瞬時値を演算することができ、基本波周波数の急変に対しても応答し、制度の良い電力量演算ができる車両駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態の車両駆動制御装置は、架線電圧を変圧して2次電圧を出力する主変圧器と、前記主変圧器の2次電圧の交流電力を直流電力に変換するコンバータと、前記コンバータの直流出力を所定電圧、所定周波数の交流電力に変換するインバータと、前記インバータの交流電力にて駆動される交流電動機と、前記主変圧器の2次側と前記コンバータの交流側との間に設置され、前記主変圧器の2次電圧瞬時値、2次電流瞬時値それぞれを検出する電圧検出器及び電流検出器と、前記電圧検出器の2次電圧瞬時値検出信号、前記電流検出器の2次電流瞬時値検出信号の少なくとも一方から交流基本波の周波数を検出する周波数検出部と、前記電圧検出器の出力する2次電圧瞬時値検出信号に対して、前記周波数検出部の検出する交流基本波の周波数を含む所定のろ波帯内だけの2次電圧瞬時値検出信号だけを通過させるバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタを出る2次電圧瞬時値検出信号と前記電流検出器の検出する2次電流瞬時値検出信号とを用いて交流電力瞬時値を演算する第1演算部と、前記コンバータ、インバータのうちの少なくとも一方が動作しているときに前記第1演算部の演算する電力瞬時値を積算して電力量を求める第2演算部とを備えたものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態の車両駆動制御装置のブロック図。
【図2】上記実施の形態の車両駆動制御装置における電力演算部の内部構成のブロック図。
【図3】上記実施の形態の車両駆動制御装置における電力演算部の変形例の内部構成のブロック図。
【図4】上記実施の形態の車両駆動制御装置における電力演算部の別の変形例の内部構成のブロック図
【図5】第2の実施の形態の車両駆動制御装置のブロック図。
【図6】第3の実施の形態の車両駆動制御装置のブロック図。
【図7】第4の実施の形態の車両駆動制御装置のブロック図。
【図8】上記実施の形態の車両駆動制御装置における電力演算部の内部構成のブロック図。
【図9】第5の実施の形態の車両駆動制御装置における2次電圧換算部の内部構成のブロック図。
【図10】第6の実施の形態の車両駆動制御装置における2次電圧換算部の内部構成のブロック図。
【図11】第7の実施の形態の車両駆動制御装置における電力演算部の内部構成のブロック図。
【図12】第8の実施の形態の車両駆動制御装置における電力演算部の内部構成のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0010】
[第1の実施の形態]
図1に示すように、第1の実施の形態の車両駆動制御装置は、架線からパンタグラフのような集電器130にて取り込んだ高圧交流を主変圧器100にて降圧する。そして主変圧器100の2次側に接続されている主回路101に供給する。主回路101には、2次側交流電力を直流電力に変換するコンバータ(CNV)102、このコンバータ102の直流電力を所定周波数、所定電圧の交流電力に再変換するインバータ(INV)103が備えられている。このインバータ103には、その交流出力にて駆動される主電動機104が接続されている。
【0011】
そして、主変圧器100からコンバータ102に至る回路上に、2次電流瞬時値を検出する電流検出器(A)105と、2次電圧瞬時値を検出する電圧検出器(V)106が設置されている。さらに、電流検出器105の出力する2次電流瞬時値検出信号、電圧検出器106の出力する2次電圧瞬時値検出信号を入力し、交流電力瞬時値とそれを積算した交流電力量とを演算する電力演算部107、コンバータ102、インバータ103、交流電動機104の動作制御のための制御回路140が設置されている。
【0012】
電流検出器105及び電圧検出器106により検出された2次電流瞬時値検出信号、2次電圧瞬時値検出信号は電力演算部107に入力される。また、コンバータ102、インバータ103それぞれの動作状態信号も電力演算部107へ入力される。
【0013】
図2に示すように、電力演算部107は、電圧検出器106により検出された2次電圧瞬時値検出信号に対して例えばPLLにより交流基本波周波数を検出する周波数検出部202、電圧検出器106により検出された2次電圧瞬時値検出信号に対して、周波数検出部202の検出した基本波周波数fを含む所定のろ波帯(f±Δf)の交流電圧基本波だけをパスさせるバンドパスフィルタ203、このバンドパスフィルタ203から出てくる交流基本波電圧瞬時値検出信号と電流検出器105からの交流電流瞬時値検出信号とを乗算し、電力瞬時値Pwを求める第1演算部200、この第1演算部200の電力瞬時値を積算して電力量Pwhを算出する第2演算部201、さらに、コンバータ動作、インバータ動作の少なくとも一方の動作信号が入力されればONして閉路し、第1演算部200の算出する電力瞬時値を第2演算部201に入力させるスイッチ210を備えている。制御回路140はこのスイッチ210のON/OFF動作も制御する。
【0014】
上記実施の形態の車両駆動制御装置は、次のように動作して2次電圧瞬時値、2次電流瞬時値から主回路の電力量Pwhを算出して出力する。主変換装置101において、架線から集電器130にて高圧交流を取り込み、主変圧器100にて降圧し、主変圧器100の2次側に接続されている主回路101に給電する。主回路101では、コンバータ102にて2次側交流電力を直流電力に変換し、さらにこの直流電力をインバータ103にて所定周波数、所定電圧の交流電力に再変換し、主電動機104に供給して回転駆動する。コンバータ102、インバータ103は制御回路140により制御され、起動・停止の制御、インバータ103の周波数・電圧制御を行う。
【0015】
電力演算部107は次のようにして、電力瞬時値Pwを演算し、さらに時間積分して電力量Pwhを算出して出力する。
【0016】
電流検出器105及び電圧検出器106により主変圧器100の2次電流、2次電圧を検出し、2次電流瞬時値検出信号、2次電圧瞬時値検出信号それぞれを出力する。2次電流瞬時値検出信号は第1演算部200にそのまま入力される。
【0017】
2次電圧瞬時値検出信号は周波数検出部202へ入力され、周波数検出部202にてPLLにより電源周波数の基本波周波数fにフェーズロックし、この基本波周波数fをバンドパスフィルタ203に与える。
【0018】
2次電圧瞬時値検出信号はバンドパスフィルタ203にも入力され、周波数検出部202の設定した基本波周波数fを中心にした所定のろ波帯(f±Δf)内の周波数の電圧瞬時値検出信号だけをパスさせて第1演算部200に入力させる。
【0019】
第1演算部200では、入力されてくる2次電流瞬時値検出信号、ろ波帯内の2次電圧瞬時値検出信号を乗算して電力瞬時値Pwを算出し、継続的に出力する。
【0020】
制御回路140の働きにより、スイッチ210はコンバータ102とインバータ103の少なくとも一方が動作している時にONして閉路し、この閉路している間中、第1演算部200の演算した電力瞬時値Pwを第2演算部201に入力し続け、第2演算部201は第1演算部200の電力瞬時値Pwを時間積分し、電力量Pwhを求める。
【0021】
通常、商用電源の周波数は西日本では60Hz、東日本では50Hzであり、周波数検出部202のフェーズロックにより、バンドパスフィルタ203の中心周波数はこのいずれかに自動的に決定される。しかしながら、それぞれの基本周波数にも少しの変動が発生することがあり、その場合には、バンドパスフィルタ203の中心周波数は同様に変動することになる。
【0022】
これにより、本実施の形態の車両駆動制御装置によれば、バンドパスフィルタ203の作用により、2次電圧瞬時値の検出信号に重畳するノイズ等の成分を低減することができ、電力量演算結果の誤差を低減することができる。また、コンバータ102、インバータ103が動作していないときは電力が0になることから、コンバータ102、インバータ103の少なくとも一方が動作中のみ電力量演算を行うことで、電圧瞬時値検出信号、電流瞬時値検出信号に含まれるノイズ等の影響を低減することができる。また、バンドパスフィルタ203の中心周波数を自動的に補正することにより、ノイズ等の成分の除去精度(基本波の抽出精度)を向上させ、誤差を低減できる。
【0023】
尚、本実施の形態において、図3の変形例に示すように、バンドパスフィルタ203Iについては、2次電流瞬時値検出信号に対しても設け、周波数検出部202からの中心周波数fの信号を受けて2次電流瞬時値検出信号に対するバンドパスを行い、第1演算部200にろ波後の2次電流瞬時検出信号を入力させ、電力瞬時値の演算に用いるようにする構成としてもよい。また、図4の変形例に示すように、図2の構成から2次電圧瞬時値検出信号に対するバンドパスフィルタ203と周波数検出部202を共に省略し、2次電流瞬時値検出信号に対するバンドパスフィルタ203Iと、中心周波数fを検出する周波数検出部202Iとを設け、2次電流瞬時値検出信号から中心周波数fを検出してバンドパスフィルタ203Iに与えるようにする構成にすることも可能である。これらの変形例の車両駆動制御装置によっても、上記実施の形態と同様の作用、効果を奏する。また、これらの変形例は、以下に説明する他の実施の形態においても電力演算部107の内部の構成として同様に適用できるものである。
【0024】
[第2の実施の形態]
図5に示す第2の実施の形態の車両駆動制御装置は、図1に示した第1の実施の形態の車両駆動制御装置に対して、その主変圧器100の2次側巻線に設けた電圧検出器106に代え、主変圧器100の1次側巻線に電圧検出器(V)108を設け、さらに、この電圧検出器108の1次電圧瞬時値検出信号を2次電圧瞬時値検出信号に換算する2次電圧換算部109を設けたことを特徴とする。
【0025】
本実施の形態における電圧検出器108は、主変圧器100の1次側巻線に接続され、その出力は1次電圧瞬時値検出信号として2次電圧換算部109へ入力される。2次電圧換算部109は1次電圧瞬時値検出信号を2次電圧瞬時値検出値に換算し、電力演算部107へ入力する。ここで、1次電圧と2次電圧との換算比として、例えば、架線電圧が25000Vであり、2次電圧が1500Vであれば、1500/25000=0.06の係数を1次電圧瞬時値検出信号に掛けて2次電圧瞬時値検出信号とすることになる。尚、本実施の形態における他の構成は、第1の実施の形態の構成と共通する。電力演算部107の内部構成も同様、図2に示したものである。
【0026】
本実施の形態の車両駆動制御装置では、主変圧器100の2次電圧を直接に検出する代わりに1次電圧を直接に検出し、その1次電圧瞬時値検出信号を2次電圧瞬時値検出信号に換算して電力演算部107に入力する構成により、第1の実施の形態の効果に加え、2次電圧検出信号を直接に検出する場合にその2次電圧瞬時値検出信号に重畳するコンバータ102やインバータ103のPWMスイッチングノイズの影響を低減できる。主変圧器100の2次電圧はコンバータ102のPWMスイッチング動作の影響を受け、電圧波形がPWM波形となる。そのため、1次電圧を検出して2次電圧相当に換算して電力瞬時値演算に用いることにより、正弦波に近い波形を得ることができ、電力量演算の誤差を低減できる。
【0027】
尚、本実施の形態においても、電力演算部107には第1の実施の形態の変形例として示した構成を採用することができる。
【0028】
同時に、本実施の形態では、2次電流瞬時値検出器についても、2次電圧瞬時値検出器と同様に、主回路100の1次側に電流検出器を設置して1次電流瞬時値を検出し、1次電流瞬時値検出信号を主変換装置101に入力し、主変換装置101には2次電圧換算部109と同様な2次電流換算部を設置して1次電流瞬時値検出信号を2次電流瞬時値検出信号に換算してから電力演算部107に入力する構成とすることもできる。
【0029】
[第3の実施の形態]
図6に示すように、第3の実施の形態の車両駆動制御装置は、図1に示した第1の実施の形態に対して、2次電圧瞬時値検出器として、主変圧器100の2次側巻線に直接ではなく、補助電源装置等に利用される3次側巻線に電圧検出器(V)110を接続し、この電圧検出器110の3次電圧瞬時値検出信号を2次電圧換算部111にて2次電圧瞬時値検出信号に換算し、電力演算部107に入力するようにした点が異なる。本実施の形態における他の構成は、第1の実施の形態の構成と共通する。電力演算部107の内部構成も同様、図2に示したものである。
【0030】
電圧検出器110は、主変圧器100の3次側巻線に接続されている。電圧検出器110の出力は、3次電圧瞬時値検出信号として2次電圧換算部111へ入力される。2次電圧換算部111は入力される3次電圧瞬時値検出信号に対して所定値の換算係数を掛けて2次電圧瞬時値検出信号に変換し、これを電力演算部107に入力する。例えば、3次側巻線の電圧が定格で400Vであり、2次側巻線の電圧が定格で1500Vであれば、1500/400=3.75の係数を用いる。2次電流瞬時値検出信号は第1の実施の形態と同様に、2次側巻線上の電流検出器105にて検出する検出信号をそのまま電力演算部107に入力する。
【0031】
本実施の形態の車両駆動制御装置では、第1の実施の形態のように2次電圧を直接に検出する代わりに3次電圧を検出し、その瞬時値検出信号を2次電圧換算部111にて2次電圧瞬時値検出信号に換算する構成としたことにより、第1の実施の形態の効果に加えて、次のような効果を奏する。すなわち、主変圧器100は、架線電圧(1次電圧)を主変換装置101用の電圧(2次電圧)と、補助電源装置等の低圧用電源(3次電圧)とに変換するが、3次電圧は1次電圧に比べて小さい電圧であるため、電圧検出器110としてより低電圧仕様のものを採用することができる。一般的に、高電圧用の機器は大型で高価であるが、本実施の形態の構成とすることにより、省スペース化、低コスト化が図れる。
【0032】
[第4の実施の形態]
図7に示すように、第4の実施の形態の車両駆動制御装置は、コンバータ(CNV)102、インバータ(INV)103、コンバータ102の交流回路側に接続された電圧検出器(V)106及び電流検出器(A)105、さらに、主接触器120、充電接触器121、充電抵抗器122を具備する主変換装置101と、主変圧器100と、主電動機(MM)104とから構成される。本実施の形態の車両駆動制御装置はさらに、特徴的な要素として電力演算部115を具備している。
【0033】
主変圧器100の1次側巻線はパンタグラフのような集電器130を介して架線に接続される。主変圧器100の2次側巻線は、主接触器120及び電流検出器105を介してコンバータ102の交流側に接続されている。また、主変圧器100の2次側巻線に、コンバータ102と並列に電圧検出器106が接続されている。主接触器120と並列に、充電接触器121と充電回路抵抗122を直列に接続した回路が接続されている。コンバータ102の直流側はインバータ103と接続されている。インバータ103の交流側は主電動機104に接続されている。
【0034】
電流検出器105及び電圧検出器106により検出された2次電流瞬時値検出信号、2次電圧瞬時値検出信号それぞれは電力演算部115に入力される。また、コンバータ102、インバータ103それぞれの動作状態が電力演算部115に入力され、充電接触器121の動作状態も電力演算部115に入力される。実際には制御回路140にこれらの信号は入力され、制御回路140はコンバータ102、インバータ103、充電接触器121のうちの少なくとも1つの回路が動作状態にあることを判断すればスイッチ211をONさせて閉路させる構成である。
【0035】
電力演算部115は図8に示す内部構成であり、電圧検出器106により検出された2次電圧瞬時値検出信号は、バンドパスフィルタ203に入力される。また、2次電圧瞬時値検出信号は周波数検出部202へ入力される。バンドパスフィルタ203の出力は、第1演算部200へ入力される。一方、電流検出器105により検出された2次電流瞬時値検出信号も第1演算部200へ入力される。第1演算部200では電力瞬時値Pwを演算し、第2演算部201へ出力する。第2演算部201では、第1演算部200の電力瞬時値を時間積分して電力量Pwhを求め、出力する。
【0036】
スイッチ211は上述したように、制御回路140のオン/オフ指令によってON、OFF動作するのであるが、制御回路140はコンバータ102の動作状態信号、インバータ103の動作状態信号、充電接触器121の動作状態信号のうち少なくとも1つが動作中である信号を受けている間だけON指令をスイッチ211に与えてこれを閉路させる。これにより、第2演算部201はコンバータ102、インバータ103、充電接触器121のうち少なくとも1つが動作中のときに電力瞬時値Pwを積算して電力量Pwhを求めることになる。
【0037】
本実施の形態の車両駆動制御装置では、起動時に充電接触器121を閉じて充電抵抗器122を通じて起動電流をコンバータ102に流し、始動電流が安定すれば主接触器120を閉じ、この主接触器120を通じて定常時の電流をコンバータ102に流す。
【0038】
定常時、主変圧器100が変圧する架線電圧からの2次交流電圧をコンバータ102にて所定の直流電力に変換し、これをインバータ103に入力し、所定の電圧、所定の周波数の交流に再変換して主電動機104に出力し、主電動機104を回転駆動する。
【0039】
この主回路の動作中の電力の監視のために、主変換装置101において、電流検出器105、電圧検出器106にて主変圧器100の2次電流、2次電圧を検出し、2次電流瞬時値検出信号、2次電圧瞬時値検出信号それぞれを電力演算部115に入力する。
【0040】
電力演算部115では、電流検出器15により検出した2次電流瞬時値検出信号はそのまま入力する。一方、電圧検出器106により検出した2次電圧瞬時値検出信号に対しては、これをバンドパスフィルタ203に入力し、同時に周波数検出部202にも入力する。周波数検出部202はPLLにより電源周波数の基本波周波数にロックし、この基本波周波数を中心にバンドパスするようにバンドパスフィルタ203のろ波帯を設定する。バンドパスフィルタ203はこの設定された基本波周波数の電圧を2次電圧瞬時値検出信号として第1演算部200に入力する。
【0041】
電力演算部115の第1演算部200では、バンドパスフィルタ203にてバンドパスされた2次電圧瞬時値検出信号と直接に入力される2次電流瞬時値検出信号とを掛け算して電力瞬時値Pwを算出し、第2演算部201に向けて連続的に出力する。第2演算部201では、スイッチ211がONし閉路している間だけ、第1演算部200から入力されてくる電力瞬時値を時間積分し、電力量Pwhを求めて出力する。
【0042】
これにより、本実施の形態の車両駆動制御装置によれば、コンバータ102、インバータ103、充電接触器のうち少なくとも1つが動作中の期間、第2演算部201にて2次電力量Pwhを求めることができ、第1の実施の形態の効果に加え、主回路充電時の消費電力をも積算できる利点がある。
【0043】
尚、本実施の形態にあっても、第1の実施の形態における変形例を適用し、2次電流瞬時値検出信号に対しても同時にバンドパスフィルタ203Iを通し、あるいは2次電流瞬時値検出信号だけにバンドパスフィルタ203Iを通し、電力瞬時値を演算する構成とすることができる。
【0044】
また、第2の実施の形態のように、2次側巻線の電圧を直接に検出することに代えて、主変圧器100の1次側巻線の電圧を検出し、換算して2次電圧検出信号として使用する構成にすること、第3の実施の形態のように3次巻線の電圧を検出し、換算して2次電圧検出信号として使用する構成にすることも可能である。
【0045】
[第5の実施の形態]
本実施の形態は、図2に示した第2の実施の形態に対して、2次電圧換算部109’を図9に示す内部構成にしたことを特徴とする。主変圧器100の1次巻線と2次巻線、3次巻線との巻線比は不変であるため、2次電圧と3次電圧の比はほぼ一定である。しかし、各巻線の負荷によって各巻線の電圧比が若干変動する。そのため、負荷に応じた電圧比の変動を予め調べておき、負荷に応じて電圧を補正することで、より高精度に電力の演算ができる。例えば、主変換装置101の電圧は主電動機104の出力(つまり、負荷)が最大100%〜停止0%の間で変化し、出力0%であれば1500Vであるところが、出力100%では1450Vまで低下する特性がある。そこで、本実施の形態では、主変換装置101の実機の特性に応じて、あらかじめ制御回路140が示す負荷指令Prefに対応して2次電圧換算部109’で用いる換算係数を調整する。
【0046】
そのため、本実施の形態では、2次電圧換算部109’は、制御回路140からの負荷指令Prefを受け、換算係数K12を演算する換算係数演算部901と、この換算係数演算部901が算出した換算係数K12を用いて1次電圧瞬時値検出信号を2次電圧瞬時値検出信号に換算する係数乗算部902を備えている。
【0047】
換算係数演算部901は、制御回路140からの2次巻線の負荷指令Prefを受け、あらかじめ内蔵している換算係数データ表を参照し、0%〜100%の間で負荷指令Prefにより比例演算して換算係数K12を算定する。例えば、負荷Prefが50%であれば、換算係数K12を0.059(=(0.06+0.058)/2)に設定する。そして、係数乗算部902はこの換算係数K12を1次電圧瞬時値検出信号に掛けて2次電圧瞬時値検出信号に換算し、第2の実施の形態と同様の構成の電力演算部107に対して出力する。電力演算部107における演算処理機能については、第1、第2の実施の形態と同様である。
【0048】
本実施の形態によれば、第1、第2の実施の形態の効果に加えて、電圧補正により電力量計算値の精度を向上することができる。
【0049】
尚、本実施の形態にあっても、第4の実施の形態で採用した構成の電力演算部115を採用することもできる。
【0050】
[第6の実施の形態]
本実施の形態は、図3に示した第3の実施の形態に対して、2次電圧換算部111’を図10に示す内部構成にしたことを特徴とする。第5の実施の形態でも説明したように、主変圧器100の1次巻線と2次巻線、3次巻線との巻線比は不変であるため、2次電圧と3次電圧の比はほぼ一定である。しかし、各巻線の負荷によって各巻線の電圧比が若干変動する。そのため、負荷に応じた電圧比の変動を予め調べておき、負荷に応じて電圧を補正することで、より高精度に電力の演算ができる。例えば、主変換装置101の電圧は主電動機104の出力(つまり、負荷)が最大100%〜停止0%の間で変化し、出力0%であれば1500Vであるところが、出力100%では1450Vまで低下する特性がある。そこで、本実施の形態では、主変換装置101の実機の特性に応じて、あらかじめ制御回路140が示す負荷指令Lrefに対応して2次電圧換算部111’で用いる換算係数を調整する。
【0051】
そのため、本実施の形態では、2次電圧換算部111’は、制御回路140からの負荷指令Prefを受け、換算係数K32を演算する換算係数演算部1101と、この換算係数演算部1101が算出した換算係数K32を用いて3次電圧瞬時値検出信号を2次電圧瞬時値検出信号に換算する係数乗算部1102を備えている。
【0052】
換算係数演算部1101は、制御回路140からの2次巻線の負荷指令Prefを受け、あらかじめ内蔵している換算係数データ表を参照し、0%〜100%の間で負荷指令Prefにより比例演算して換算係数K32を算定する。例えば、負荷Prefが50%であれば、換算係数K32を3.6875(=(3.75+3.625)/2)に設定する。そして、この係数乗算部1102はこの換算係数K32を3次電圧瞬時値検出信号に掛けて2次電圧瞬時値検出信号に換算し、第3の実施の形態と同様の構成の電力演算部107に対して出力する。電力演算部107における演算処理機能については、第1、第3の実施の形態と同様である。
【0053】
本実施の形態によれば、第1、第3の実施の形態の効果に加えて、電圧補正により電力量計算値の精度を向上することができる。
【0054】
尚、本実施の形態にあっても、第4の実施の形態で採用した構成の電力演算部115を採用することもできる。
【0055】
[第7の実施の形態]
本実施の形態は、第1〜3の実施の形態、第5の実施の形態において用いた図2に示す内部構成の電力演算部107に代えて、図11に示す内部構成の電力演算部107’を採用したことを特徴とする。この電力演算部107’では、バンドパスフィルタ205の位置を第1演算部200の後に設置している。これにより、上記各実施の形態の効果に加えて、電力瞬時値に対して基本波成分の電力値を求めることができる。
【0056】
[第8の実施の形態]
本実施の形態は、第4の実施の形態において用いた図8に示す内部構成の電力演算部115に代えて、図12に示す内部構成の電力演算部115’を採用したことを特徴とする。この電力演算部115’では、バンドパスフィルタ205の位置を第1演算部200の後に設置している。これにより、上記実施の形態の効果に加えて、電力瞬時値に対して基本波成分の電力値を求めることができる。
【0057】
一般に、電圧、電流の瞬時値を使用し、両者の積から瞬時電力を求めて積算することで電力量を演算する方式の車両駆動制御装置によれば、実効値演算が不要となるため、高精度な積算が期待できる。また、実効値を用いた場合では、力率を考慮する必要があるため、力率が変動した場合に誤差が生じるが、瞬時値演算であれば力率を考慮する必要がないため、高精度な演算が期待できる。このように瞬時値を用いる場合、ノイズ等の影響を受けにくくする必要がある。ノイズの影響を低減するためには、バンドパスフィルタ(BPF)を用いて必要な基本波のみを抽出すればよい。BPFは、そのろ波帯の中心周波数から離れた周波数成分を低減する効果がある。そのため、基本波周波数が変動する場合、BPFにより基本波成分も低減する可能性がある。
【0058】
本発明の上記の各実施の形態によれば、バンドパスフィルタを用いて必要な基本波のみを抽出し、この基本波周波数の電圧、電流にて電力を求め、さらに積算して電力量を求めるので、瞬時値にて電力、電力量を求めながらも精度良くそれら電力、電力量を求めることができる。加えて、周波数検出部にて商用電源周波数を自動的に検出し、BPFの中心周波数とすることにより、50Hz,60Hzの電力量演算を自動的に切替えて行える。
【0059】
尚、システムを簡易なものにするために、周波数検出部による基本波周波数の検出を行わず、BPFに手動で中心周波数を50Hz,60Hzのどちらかに切り替える設定ができるものを採用することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
100 主変圧器
101 主変換装置
102 コンバータ
103 インバータ
104 主電動機
105 電流検出器
106 電圧検出器
107,107′ 電力演算部
108 電圧検出器
109,109’ 2次電圧演算部
110 電圧検出器
111,111’ 2次電圧換算部
115,115′ 電力演算部
120 主回路接触器
121 充電接触器
122 充電抵抗器
130 集電器
140 制御回路
200 第1演算部
201 第2演算部
202,202I 周波数検出部
203,203I バンドパスフィルタ
205 バンドパスフィルタ
210,211 スイッチ
901,1101 換算係数演算部
902,1102 係数乗算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線電圧を変圧して2次電圧を出力する主変圧器と、
前記主変圧器の2次電圧の交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記コンバータの直流出力を所定電圧、所定周波数の交流電力に変換するインバータと、
前記インバータの交流電力にて駆動される交流電動機と、
前記主変圧器の2次側と前記コンバータの交流側との間に設置され、前記主変圧器の2次電圧瞬時値、2次電流瞬時値それぞれを検出する電圧検出器及び電流検出器と、
前記電圧検出器の2次電圧瞬時値検出信号、前記電流検出器の2次電流瞬時値検出信号の少なくとも一方から交流基本波の周波数を検出する周波数検出部と、
前記電圧検出器の出力する2次電圧瞬時値検出信号に対して、前記周波数検出部の検出する交流基本波の周波数を含む所定のろ波帯内だけの2次電圧瞬時値検出信号だけを通過させるバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタを出る2次電圧瞬時値検出信号と前記電流検出器の検出する2次電流瞬時値検出信号とを用いて交流電力瞬時値を演算する第1演算部と、
前記コンバータ、インバータのうちの少なくとも一方が動作しているときに前記第1演算部の演算する電力瞬時値を積算して電力量を求める第2演算部とを備えたことを特徴とする車両駆動制御装置。
【請求項2】
前記コンバータのフィルタコンデンサに充電する充電手段と、前記充電手段の電気的な切り離し、接続を行う充電開閉手段とを備え、
前記第2演算部は、前記コンバータが動作しているとき、前記インバータが動作しているとき、前記充電開閉手段が閉じているときの少なくとも1つの条件が成立するときに、前記第1演算部の電力瞬時値を積算して電力量を求めることを特徴とする請求項1に記載の車両駆動制御装置。
【請求項3】
前記バンドパスフィルタは、ろ波帯の中心周波数を可変設定できるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両駆動制御装置。
【請求項4】
前記電圧検出器として、前記主変圧器の2次側の交流電圧を検出する代わりに、前記主変圧器の1次側の電圧を検出する1次電圧検出器と、前記1次電圧検出器の検出する1次電圧検出信号を前記主変圧器の2次電圧瞬時値検出信号に換算する2次電圧換算器とを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両駆動制御装置。
【請求項5】
前記主変圧器は3次巻線を備え、
前記電圧検出器として、前記主変圧器の2次側の交流電圧を検出する代わりに、前記主変圧器の3次電圧を検出する3次電圧検出器と、前記3次電圧検出器の検出する3次電圧検出信号を前記主変圧器の2次電圧瞬時値検出信号に換算する2次電圧換算器とを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両駆動制御装置。
【請求項6】
前記3次電圧と2次電圧との変換比を、前記電流検出器の検出する2次電圧瞬時値検出信号の大きさに応じて補正する電圧補正部を備えたことを特徴とする請求項5に記載の車両駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−42592(P2013−42592A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177527(P2011−177527)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】