説明

車両

【課題】エンジンルーム内に設けられるパワーコントロールユニットの冷却装置の冷却水の過昇温を抑制する。
【解決手段】ECUは、エンジンの間欠停止が許可されている場合であって(S100にてYES)、かつ、エンジンの作動中におけるPCUの冷却水の温度Twがしきい値Tw(0)よりも大きい場合(S102にてYES)、エンジンの始動および停止にあわせたウォーターポンプ制御を実行するステップ(S104)と、車両のアイドル状態が継続するか否かを判定するステップとを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンとモータジェネレータとを搭載したハイブリッド車両の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004−108159号公報(特許文献1)には、エンジンの始動により過昇温が予想される場合に、エンジンを始動させる前にウォーターポンプを駆動して冷却水を放熱することによって、エンジの始動後の冷却水の過昇温を防止する技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−108159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハイブリッド車両において、エンジンが始動と停止とを繰返す間欠運転が行なわれる場合においては、エンジンルーム内の雰囲気温度が上昇する。そのため、エンジンルーム内に併設されたモータジェネレータのパワーコントロールユニットの冷却水の温度が過度に上昇する場合がある。
【0005】
上述した公報に開示されたエンジンの冷却制御装置においては、エンジンを冷却するための冷却装置の冷却水の過昇温を防止するものであり、上述した課題については何ら考慮されていない。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、エンジンルーム内に設けられるパワーコントロールユニットの冷却装置の冷却水の過昇温を抑制する車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のある局面に係る車両は、エンジンルーム内に搭載されたエンジンと、エンジンを始動させるためのモータジェネレータと、エンジンルーム内に搭載され、モータジェネレータを作動させるためのパワーコントロールユニットと、パワーコントロールユニットと熱交換する冷却水をラジエータを経由する循環通路に流通させるためのウォータポンプと、冷却水の温度を検出するための検出部と、エンジンが始動と停止とを繰返す間欠運転モードを選択する場合に、ウォータポンプを作動させるための制御部とを含む。制御部は、間欠運転モードの選択時において、エンジンの作動中に検出部によって検出された冷却水の温度がしきい値を超える場合には、エンジンが停止するときにウォータポンプを停止させた後、エンジンが始動する直前に、ラジエータ内の冷却水がパワーコントロールユニットに流通するように一時的にウォータポンプを作動させ、エンジンの次回停止時に再度ウォータポンプを停止した状態とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、エンジンの始動前に、一時的にウォーターポンプを作動させることによって、ラジエータ側に滞留していた冷却水とパワーコントロールユニット側に滞留していた冷却水とを入れ替えることができる。そのため、エンジンの始動時においてパワーコントロールユニットの温度を低下させておくことができる。その結果、モータジェネレータを用いたエンジンの始動が可能となる。したがって、冷却水の温度がしきい値を超える場合でも、エンジンの停止と始動とを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態に係る車両の全体ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る車両に搭載されたPCUの冷却システムの構成を示す図である。
【図3】PCUの冷却システムの冷却水の温度の変化を示すタイミングチャート(その1)である。
【図4】本実施の形態に係る車両に搭載されたECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【図5】PCUの冷却システムの冷却水の温度の変化を示すタイミングチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態は、説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
【0011】
図1を参照して、本実施の形態に係る車両1の全体ブロック図が説明される。車両1は、エンジン10と、駆動軸16と、第1モータジェネレータ(以下、第1MGと記載する)20と、第2モータジェネレータ(以下、第2MGと記載する)30と、動力分割装置40と、減速機58と、PCU(Power Control Unit)60と、冷却システム61と、バッテリ70と、駆動輪80と、スタートスイッチ150と、ECU(Electronic Control Unit)200とを含む。
【0012】
この車両1は、エンジン10および第2MG30の少なくとも一方から出力される駆動力によって走行する。エンジン10が発生する動力は、動力分割装置40によって2経路に分割される。2経路のうちの一方の経路は減速機58を介して駆動輪80へ伝達される経路であり、他方の経路は第1MG20へ伝達される経路である。
【0013】
第1MG20および第2MG30は、たとえば、三相交流回転電機である。第1MG20および第2MG30は、PCU60によって駆動される。
【0014】
第1MG20は、動力分割装置40によって分割されたエンジン10の動力を用いて発電してPCU60を経由してバッテリ70を充電するジェネレータとしての機能を有する。また、第1MG20は、バッテリ70からの電力を受けてエンジン10の出力軸であるクランク軸を回転させる。これによって、第1MG20は、エンジン10を始動するスタータとしての機能を有する。
【0015】
第2MG30は、バッテリ70に蓄えられた電力および第1MG20により発電された電力の少なくともいずれか一方を用いて駆動輪80に駆動力を与える駆動用モータとしての機能を有する。また、第2MG30は、回生制動によって発電された電力を用いてPCU60を経由してバッテリ70を充電するためのジェネレータとしての機能を有する。
【0016】
エンジン10は、たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジン10は、エンジンルーム106内に搭載される。エンジン10は、複数の気筒102と、複数の気筒102の各々に燃料を供給する燃料噴射装置104とを含む。燃料噴射装置104は、ECU200からの制御信号S1に基づいて、各気筒に対して適切な時期に適切な量の燃料を噴射したり、各気筒に対する燃料の噴射を停止したりする。
【0017】
さらに、エンジン10には、エンジン10のクランク軸の回転速度(以下、エンジン回転速度と記載する)Neを検出するためのエンジン回転速度センサ11が設けられる。エンジン回転速度センサ11は、検出されたエンジン回転速度Neを示す信号をECU200に送信する。
【0018】
動力分割装置40は、駆動輪80を回転させるための駆動軸16、エンジン10の出力軸および第1MG20の回転軸の三要素の各々を機械的に連結する。動力分割装置40は、上述の三要素のうちのいずれか一つを反力要素とすることによって、他の2つの要素間での動力の伝達を可能とする。第2MG30の回転軸は、駆動軸16に連結される。
【0019】
動力分割装置40は、サンギヤ50と、ピニオンギヤ52と、キャリア54と、リングギヤ56とを含む遊星歯車機構である。ピニオンギヤ52は、サンギヤ50およびリングギヤ56の各々と噛み合う。キャリア54は、ピニオンギヤ52を自転可能に支持するとともに、エンジン10のクランク軸に連結される。サンギヤ50は、第1MG20の回転軸に連結される。リングギヤ56は、駆動軸16を介在して第2MG30の回転軸および減速機58に連結される。
【0020】
減速機58は、動力分割装置40や第2MG30からの動力を駆動輪80に伝達する。また、減速機58は、駆動輪80が受けた路面からの反力を動力分割装置40や第2MG30に伝達する。
【0021】
PCU60は、バッテリ70に蓄えられた直流電力を第1MG20および第2MG30を駆動するための交流電力に変換する。PCU60は、エンジンルーム106内に搭載される。PCU60は、ECU200からの制御信号S2に基づいて制御されるコンバータおよびインバータ(いずれも図示せず)を含む。コンバータは、バッテリ70から受けた直流電力の電圧を昇圧してインバータに出力する。インバータは、コンバータが出力した直流電力を交流電力に変換して第1MG20および/または第2MG30に出力する。これにより、バッテリ70に蓄えられた電力を用いて第1MG20および/または第2MG30が駆動される。また、インバータは、第1MG20および/または第2MG30によって発電される交流電力を直流電力に変換してコンバータに出力する。コンバータは、インバータが出力した直流電力の電圧を降圧してバッテリ70へ出力する。これにより、第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いてバッテリ70が充電される。なお、コンバータは、省略してもよい。
【0022】
バッテリ70は、蓄電装置であり、再充電可能な直流電源である。バッテリ70としては、たとえば、ニッケル水素やリチウムイオン等の二次電池が用いられる。バッテリ70の電圧は、たとえば200V程度である。バッテリ70は、上述したように第1MG20および/または第2MG30により発電された電力を用いて充電される他、外部電源(図示せず)から供給される電力を用いて充電されてもよい。なお、バッテリ70は、二次電池に限らず、直流電圧を生成できるもの、たとえば、キャパシタ、太陽電池、燃料電池等であってもよい。
【0023】
バッテリ70には、バッテリ70の電池温度TBを検出するための電池温度センサ156と、バッテリ70の電流IBを検出するための電流センサ158と、バッテリ70の電圧VBを検出するための電圧センサ160とが設けられる。
【0024】
電池温度センサ156は、電池温度TBを示す信号をECU200に送信する。電流センサ158は、電流IBを示す信号をECU200に送信する。電圧センサ160は、電圧VBを示す信号をECU200に送信する。
【0025】
スタートスイッチ150は、たとえば、プッシュ式スイッチである。スタートスイッチ150は、キーをキーシリンダに差し込んで所定の位置まで回転させるものであってもよい。スタートスイッチ150は、ECU200に接続される。運転者がスタートスイッチ150を操作することに応じて、スタートスイッチ150は、信号STをECU200に送信する。
【0026】
ECU200は、たとえば、車両1のシステムが停止状態である場合に信号STを受信した場合に、起動指示を受けたと判断して、車両1のシステムを停止状態から起動状態に移行させる。また、ECU200は、車両1のシステムが起動状態である場合に信号STを受信した場合に、停止指示を受けた判断して、車両1のシステムを起動状態から停止状態に移行させる。以下の説明において、車両1のシステムが起動状態である場合に運転者がスタートスイッチ150を操作することをIGオフ操作といい、車両1のシステムが停止状態である場合に運転者がスタートスイッチ150を操作することをIGオン操作という。また、車両1のシステムが起動状態に移行した場合には、車両1が走行するために必要な複数の機器に電力が供給されるなどして、複数の機器は作動可能な状態となる。一方、車両1のシステムが停止状態に移行した場合には、車両1が走行するために必要な複数の機器のうちの一部への電力の供給が停止されるなどして、一部の機器が作動停止状態となる。
【0027】
第1レゾルバ12は、第1MG20の回転速度Nm1を検出する。第1レゾルバ12は、検出された回転速度Nm1を示す信号をECU200に送信する。第2レゾルバ13は、第2MG30の回転速度Nm2を検出する。第2レゾルバ13は、検出された回転速度Nm2を示す信号をECU200に送信する。
【0028】
車輪速センサ14は、駆動輪80の回転速度Nwを検出する。車輪速センサ14は、検出された回転速度Nwを示す信号をECU200に送信する。ECU200は、受信した回転速度Nwに基づいて車速Vを算出する。なお、ECU200は、回転速度Nwに代えて第2MG30の回転速度Nm2に基づいて車速Vを算出するようにしてもよい。
【0029】
ECU200は、エンジン10を制御するための制御信号S1を生成し、その生成した制御信号S1をエンジン10へ出力する。また、ECU200は、PCU60を制御するための制御信号S2を生成し、その生成した制御信号S2をPCU60へ出力する。
【0030】
ECU200は、エンジン10およびPCU60等を制御することによって車両1が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体、すなわち、バッテリ70の充放電状態、エンジン10、第1MG20および第2MG30の動作状態を制御する。
【0031】
ECU200は、運転席に設けられたアクセルペダル(図示せず)の踏込み量に対応する要求駆動力を算出する。ECU200は、算出された要求駆動力に応じて、第1MG20および第2MG30のトルクと、エンジン10の出力とを制御する。
【0032】
上述したような構成を有する車両1においては、発進時や低速走行時等であってエンジン10の効率が悪い場合には、第2MG30のみによる走行が行なわれる。また、通常走行時には、たとえば動力分割装置40によりエンジン10の動力が2経路の動力に分けられる。一方の動力で駆動輪80が直接的に駆動される。他方の動力で第1MG20を駆動して発電が行なわれる。このとき、ECU200は、発電された電力を用いて第2MG30を駆動させる。このように第2MG30を駆動させることにより駆動輪80の駆動補助が行なわれる。
【0033】
車両1の減速時には、駆動輪80の回転に従動する第2MG30がジェネレータとして機能して回生制動が行なわれる。回生制動によって回収した電力は、バッテリ70に蓄えられる。なお、ECU200は、蓄電装置の残容量(以下の説明においては、SOC(State of Charge)と記載する)が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン10の出力を増加させて第1MG20による発電量を増加させる。これにより、バッテリ70のSOCが増加させられる。また、ECU200は、低速走行時でも必要に応じてエンジン10からの駆動力を増加させる制御を行なう場合もある。たとえば、上述のようにバッテリ70の充電が必要な場合や、エアコン等の補機が駆動される場合や、エンジン10の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
【0034】
冷却システム61は、図1および2に示すように、水温センサ62と、第1通路63と、ラジエータ64と、第2通路65と、ウォーターポンプ66とを含む。本実施の形態においては、ラジエータ64は、エンジンルーム106内において車両1の前方側に設けられるとして説明するが、特にエンジンルーム106内に限定して設けられるものではない。
【0035】
図2に示すように、第1通路63は、PCU60とラジエータ64とを接続し、ウォーターポンプ66の作動時にPCU60からラジエータ64に向けて冷却水を流通させる。
【0036】
第1通路63の上流側には、水温センサ62が設けられる。すなわち、水温センサ62は、PCU60から第1通路63に流通する冷却水の温度Twを検出する。水温センサ62は、検出した冷却水の温度Twを示す信号をECU200に送信する。
【0037】
ラジエータ64は、熱交換器であって、内部を流通する冷却水を放熱して、冷却水の温度を低下させる。具体的には、ラジエータ64は、内部を流通する冷却水と、車両1が走行することにより受ける走行風、あるいは、図示しない冷却ファンから供給される空気との間で行なわれる熱交換によって内部を流通する冷却水を放熱する。
【0038】
第2通路65は、第1通路63とは別にPCU60とラジエータ64とを接続し、ウォーターポンプ66の作動時にラジエータ64からPCU60に向けて冷却水を流通させる。第2通路の途中には、ウォーターポンプ66が設けられる。なお、ウォーターポンプ66は、第1通路63の途中に設けられるようにしてもよい。ウォーターポンプ66は、ECU200から受信する制御信号に基づいて作動する。
【0039】
PCU60の筐体には、第1通路63と第2通路65とを接続する通路が形成される。ウォーターポンプ66の作動時においては、PCU60の筐体に形成された通路内の冷却水は、第2通路65から第1通路63に向けて流通する。PCU60の筐体に形成された通路内を冷却水が流通することによって冷却水と、PCU60の内部に設けられる部品(たとえば、スイッチング素子等)との間で行なわれる熱交換によってPCU60の内部に設けられる部品の温度が低下させられる。
【0040】
なお、第1通路63と、ラジエータ64と、第2通路65と、PCU60の筐体に形成された通路とで冷却水の循環通路が形成される。
【0041】
このような冷却システム61の構成において、たとえば、ECU200から受信する制御信号に基づいてウォーターポンプ66が作動すると、冷却システム61内の冷却水は、図2の矢印の方向に流通を開始する。すなわち、第2通路65内の冷却水がPCU60に向けて流通する。PCU60の筐体に形成された通路内に流通した冷却水とPCU60内の部品等との熱交換により冷却水の温度が上昇する。その後、PCU60の筐体に形成された通路内の冷却水は、第1通路63に流通する。第1通路63内の冷却水は、ラジエータ64において冷却された後に第2通路65に循環する。
【0042】
上述した構成を有する車両1において、走行後に車両1がアイドル状態(停車状態)で放置される場合には、ECU200は、エンジン10の始動と停止とを繰り返す間欠運転モードを選択する。ECU200は、間欠運転モードの選択時においては、エンジン10の作動時間がエンジン10を始動させてから第1期間を経過した場合にエンジン10を停止させる。さらに、ECU200は、間欠運転モードの選択時においては、エンジン10の停止時間がエンジン10を停止させてから第2期間を経過した場合にエンジン10を始動させる。ECU200は、間欠運転モードが選択されている間、上述のエンジン10の始動と停止とを繰返す。なお、第1期間および第2期間の各々は、所定期間であってもよいし、車両1の状態に応じて変動する期間であってもよい。また、第1期間と第2期間とは同一の期間であってもよいし、異なる期間であってもよい。また、ECU200は、間欠運転モードの選択時において、ウォーターポンプを作動させる。
【0043】
しかしながら、図3に示すように、エンジンルーム106内においては、エンジン10の作動時におけるエンジン10の熱によってPCU60の冷却システム61の冷却水の温度Twが上昇する。図3に示すように、時間T(0)から時間T(1)まで、時間T(2)から時間T(3)まで、時間T(4)から時間T(5)まで、および、時間T(6)から時間T(7)までにおいて、エンジン10がオン状態となる場合には、冷却水の温度Twは、エンジン10の熱による上昇する。一方、時間T(1)から時間T(2)まで、時間T(3)から時間T(4)まで、および、時間T(5)から時間T(6)までにおいて、エンジン10がオフ状態となる場合には、冷却水の温度Twは、ラジエータ64における放熱により低下する。なお、この期間において、ウォーターポンプ66は、作動状態を維持する。
【0044】
たとえば、図3の時間T(5)において、冷却水の温度Twがしきい値Tw(0)を超える場合には、エンジン10を始動できない場合がある。エンジン10を始動させるために第1MG20によってクランキングを行なう場合には、PCU60に電流が流れる。PCU60に電流が流れることによって、PCU60自身が発熱する。そのため、冷却水の温度Twがしきい値Tw(0)よりも高いと、PCU60の内部の部品の温度が許容温度を超えるような場合には、第1MG20を用いたクランキングを行えない。その結果、エンジン10を始動できない。
【0045】
このような問題に対して、図3の破線に示すように、冷却水の温度Twがしきい値Tw(0)を超える場合に、エンジン10の停止を禁止することも考えられる。しかしながら、エンジン10の作動を継続する場合には、エンジン10の熱によって冷却水の温度Twがさらに上昇する場合がある。
【0046】
そこで、本実施の形態に係る車両に搭載されたECU200は、間欠運転モードの選択時において、エンジン10の作動中に冷却水の温度Twがしきい値Tw(0)を超える場合には、エンジン10が停止するときにウォーターポンプ66を停止させた後、エンジン10が始動する直前に、ラジエータ64内の冷却水がPCU60に流通するように一時的にウォーターポンプ66を作動させ、エンジン10の次回停止時にウォーターポンプ66を再度停止した状態とする点に特徴を有する。
【0047】
図4を参照して、本実施の形態に係る車両に搭載されたECU200で実行されるプログラムの制御構造について説明する。ECU200は、図4で示されるフローチャートに基づくプログラムを所定の計算サイクル毎に実行する。なお、ECU200は、図4で示されるフローチャートに基づくプログラムを実行する場合においては、第1MG20および第2MG30が非通電状態であることを前提とする。すなわち、ECU200は、たとえば、車両1が停止中である場合に、図4で示されるフローチャートに基づくプログラムを実行する。
【0048】
ステップ(以下、ステップをSと記載する)100にて、ECU200は、エンジン10の間欠停止が許可されているか否かを判定する。たとえば、ECU200は、車両1の走行後に車両1がアイドル状態(停車状態)で放置される場合においてエンジン10の間欠運転モードが選択されているときには、間欠停止が許可されていると判定する。エンジン10の間欠停止が許可されている場合(S100にてYES)、処理はS102に移される。もしそうでない場合(S100にてNO)、処理はS100に戻される。
【0049】
S102にて、ECU200は、エンジン10の作動中において、冷却水の温度Twがしきい値Tw(0)以上であるか否かを判定する。
【0050】
S104にて、ECU200は、エンジン10の始動および停止に対応させたウォーターポンプ66の制御を実行する。
【0051】
具体的には、ECU200は、間欠運転モードの選択時において、エンジン10が停止するときにウォーターポンプ66を停止させる。ECU200は、ウォーターポンプ66を停止させた後、エンジン10が始動する直前に、一時的にウォーターポンプ66を作動させる。
【0052】
なお、エンジン10が始動する直前とは、エンジン10が始動する所定時間前をいう。所定時間とは、たとえば、1秒以下の時間である。また、一時的にウォーターポンプ66を作動させる期間は、所定期間である。所定期間とは、ウォーターポンプ66を作動させてからラジエータ64内の冷却水がPCU60に流通するまでの期間であることが望ましい。
【0053】
ECU200は、一時的にウォーターポンプ66を作動させた後にウォーターポンプ66を停止させる。ECU200は、エンジン10の次回停止時にウォーターポンプ66を再度停止した状態とする。
【0054】
ECU200は、S106にて、車両1のアイドル状態(停車状態)が継続中であるか否かを判定する。車両1のアイドル状態が継続中である場合(S106にてYES)、処理はS100に戻される。もしそうでない場合(S106にてNO)、この処理は終了する。
【0055】
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る車両に搭載されたECU200の動作について図5を参照して説明する。
【0056】
たとえば、車両1の走行後に車両1がアイドル状態で放置される場合に、エンジン10の間欠運転モードが選択される。そのため、エンジン10の始動と停止とが繰返される(S100にてYES)。エンジン10の作動中においては、エンジン10の熱によりエンジンルーム106内の雰囲気温度が上昇する。エンジンルーム106内の雰囲気温度の上昇によりエンジンルーム106内に併設されたPCU60の冷却システム61内を流通する冷却水の温度が上昇することとなる。
【0057】
エンジン10の作動中に冷却水の温度Twの検出値がしきい値Tw(0)以上になる場合(S102にてYES)、エンジン10の始動および停止に対応させたウォーターポンプ66の制御を実行する(S104)。
【0058】
具体的には、冷却水の温度Twがしきい値Tw(0)以上となった後の時間T(0)にて、エンジン10が停止する場合には、ECU200は、ウォーターポンプ66を停止させる。そのため、時間T(0)以降においては、ウォーターポンプ66の停止によって冷却システム61内の冷却水が滞留する。そのため、ラジエータ64側の冷却水の温度Twは低下していく。一方、PCU60側の冷却水の温度Twの検出値は、エンジンルーム106内の雰囲気温度に応じて上昇する。PCU側の冷却水の温度Twの上昇に応じてPCU60に含まれるスイッチング素子の温度も上昇する。
【0059】
エンジン10の始動する所定時間前の時間T(1)にて、ウォーターポンプ66が一時的に作動させられる。このとき、冷却水の温度Twの検出値は、Tw(1)である。また、ラジエータ64内の冷却水の温度は、Tw(1)よりも低いTw(2)である。ウォーターポンプ66の一時的な作動によって、ラジエータ64側に滞留していた冷却水がPCU60側に流通し、PCU60側に滞留していた冷却水がラジエータ64側に流通する。その結果、ラジエータ64側に滞留していた冷却水とPCU60側に滞留していた冷却水とが入れ替わることとなる。そのため、PCU60内にPCU60側に滞留していた冷却水よりも温度が低いラジエータ64側の冷却水が供給されることとなる。これによって、PCU60側の冷却水の温度が低下する。そのため、第1MG20を用いてエンジン10を始動させた場合、PCU60の部品の温度が耐熱温度を超えることが抑制される。
【0060】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両によると、エンジン10の始動前に、一時的にウォーターポンプ66を作動させることによって、ラジエータ64側に滞留していた冷却水とPCU60側に滞留していた冷却水とを入れ替えることができる。そのため、エンジン10の始動時においてPCU60の温度を低下させておくことができる。その結果、第1MG20を用いたエンジン10の始動が可能となる。したがって、冷却水の温度がしきい値Tw(0)以上になる場合でも、エンジン10の停止と始動とを行なうことができる。そのため、エンジン10の作動を継続する場合と比較して、PCU60内の部品の過昇温が抑制される。したがって、エンジンルーム内に設けられるパワーコントロールユニットの冷却装置の冷却水の過昇温を抑制する車両を提供することができる。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 車両、10 エンジン、11 エンジン回転速度センサ、12,13 レゾルバ、14 車輪速センサ、16 駆動軸、20,30 MG、40 動力分割装置、50 サンギヤ、52 ピニオンギヤ、54 キャリア、56 リングギヤ、58 減速機、61 冷却システム、62 水温センサ、63,65 通路、64 ラジエータ、66 ウォーターポンプ、70 バッテリ、80 駆動輪、102 気筒、104 燃料噴射装置、106 エンジンルーム、150 スタートスイッチ、156 電池温度センサ、158 電流センサ、160 電圧センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム内に搭載されたエンジンと、
前記エンジンを始動させるためのモータジェネレータと、
前記エンジンルーム内に搭載され、前記モータジェネレータを作動させるためのパワーコントロールユニットと、
前記パワーコントロールユニットと熱交換する冷却水をラジエータを経由する循環通路に流通させるためのウォータポンプと、
前記冷却水の温度を検出するための検出部と、
前記エンジンが始動と停止とを繰返す間欠運転モードを選択する場合に、前記ウォータポンプを作動させるための制御部とを含み、
前記制御部は、前記間欠運転モードの選択時において、前記エンジンの作動中に前記検出部によって検出された前記冷却水の前記温度がしきい値を超える場合には、前記エンジンが停止するときに前記ウォータポンプを停止させた後、前記エンジンが始動する直前に、前記ラジエータ内の前記冷却水が前記パワーコントロールユニットに流通するように一時的に前記ウォータポンプを作動させ、前記エンジンの次回停止時に再度前記ウォータポンプを停止した状態とする、車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−158310(P2012−158310A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21290(P2011−21290)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】