説明

車両

【課題】車輪を軸受に取り付ける際に位置決めが容易な車両を提供する。
【解決手段】前タイヤ23と、タイヤ23の間に備える前輪軸FXと、前輪軸FXの両端に備え、前輪軸FXを回転自在に支持するとともに、前タイヤ23を取り付けて保持するハブユニット40とを備え、前タイヤ23の中央に貫通孔23WCを形成する一方、前輪軸FXの中央に円筒状のインロー部41Tを形成し、前タイヤ23の貫通孔23WCをインロー部41Tに嵌め合わせることで前タイヤ23をハブユニット40に取り付けるトラクタにおいて、インロー部41Tの先端に沿って取付補助部50を突出して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪と、その車輪を取り付ける軸受とを備える、農業機械、建設機械、自動車などの車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両は、左右一対の前タイヤ(車輪)と、その一対の前タイヤの間に備える車軸と、車軸の両端に備え、車軸を回転自在に支持するとともに、前タイヤを取り付けて保持する軸受とを備える。そして前タイヤのホイールの中央に貫通孔を形成する一方、軸受の中央に円筒状のインロー部(車輪取付部)を形成し、前タイヤの貫通孔をインロー部に嵌め合わせることで前タイヤを軸受に取り付ける(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−294031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような構成の車両では、インロー部の突出が不十分であり、前タイヤを軸受に取り付ける際に、位置決めに手間取ってしまうという問題があった。そこで、この発明の目的は、車輪を軸受に取り付ける際に位置決めが容易な車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため請求項1に記載の発明は、左右一対の車輪と、
該一対の車輪の間に備える車軸と、
該車軸の両端に備え、該車軸を回転自在に支持するとともに、前記車輪を取り付けて保持する軸受とを備え、
前記車輪の中央に貫通孔を形成する一方、
前記軸受の中央に円筒状の車輪取付部を形成し、
前記車輪の貫通孔を前記車輪取付部に嵌め合わせることで前記車輪を前記軸受に取り付ける車両において、
前記車輪取付部の先端に沿って取付補助部を突出して設けることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両において、前記取付補助部が前記車輪取付部に対して着脱可能であることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両において、前記車軸の一端が前記円筒状の車輪取付部の中心部分に配置された車両であって、
前記取付補助部に雄ネジを備え、
該雄ネジに螺合する雌ネジを前記車軸の一端に形成し、
前記取付補助部を前記車軸にネジつけることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両において、前記取付補助部が矩形図形の回転体として形成され、
前記取付補助部の上部に直径方向にわたって間隙部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、左右一対の車輪と、該一対の車輪の間に備える車軸と、該車軸の両端に備え、該車軸を回転自在に支持するとともに、前記車輪を取り付けて保持する軸受とを備え、前記車輪の中央に貫通孔を形成する一方、前記軸受の中央に円筒状の車輪取付部を形成し、前記車輪の貫通孔を前記車輪取付部に嵌め合わせることで前記車輪を前記軸受に取り付ける車両において、前記車輪取付部の先端に沿って取付補助部を突出して設ける。
【0010】
これにより、取付補助部を設けることで車輪取付部を十分に突出させることができ、車輪を軸受に取り付ける際に、取付補助部がガイドとなって車輪を軸受に誘導し、位置決めを容易にすることができる。したがって、車輪を軸受に取り付ける際に位置決めが容易な車両を提供することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記取付補助部が前記車輪取付部に対して着脱可能であるので、例えば、異なる車輪の中央部の形状に応じて、取付補助部を車輪取付部に取り付けたり、取り外したりすることができ、作業性がよい。また、取付補助部が破損した場合に、取付補助部のみを交換すればよく、メンテナンス性もよい。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記車軸の一端が前記円筒状の車輪取付部の中心部分に配置された車両であって、前記取付補助部に雄ネジを備え、該雄ネジに螺合する雌ネジを前記車軸の一端に形成し、前記取付補助部を前記車軸にネジつけるので、簡単な構成で取付補助部を着脱可能とすることができる。また、取付補助部を車軸に取り付ける際に、ボルトなど取付部品を必要とすることがなく、部品点数を削減することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、前記取付補助部が矩形図形の回転体として形成され、前記取付補助部の上部に直径方向にわたって間隙部を備えるので、取付補助部を車軸に取り付ける際に、間隙部に工具などを差し込んで取付補助部をネジつけることができるので、取付工程を容易にする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の車両の一例としてのトラクタの概略側面図である。
【図2】図1の要部拡大側面図である。
【図3】さらに要部拡大断面図である。
【図4】(a)は図3のA矢視正面図、(b)は取付補助部の斜視図である。
【図5】(a)は前タイヤを軸受の取り付ける手順を説明するための概略断面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図6】(a)は図4(a)の別の例を示す正面図、(b)は(a)に備える取付補助部の斜視図である。
【図7】(a)は図3のさらに別の例を示す要部拡大断面図、(b)は(a)のB矢視正面図である。
【図8】(a)は図3のさらに別の例を示す拡大断面図、(b)は(a)のC矢視正面図、(c)は取付補助部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1にこの発明の車両としてのトラクタ21の側面図を示す。トラクタ21は、車体フレーム22の前側に一対の前タイヤ(車輪)23,23、後側に一対の後タイヤ(車輪)24,24を備える。前タイヤ23,23の上方にはボンネット25を配置し、その内側には駆動部としてのエンジンを備える。そして、ボンネット25の後部に連続して箱型の運転キャビン26を配置する。運転キャビン26は、後タイヤ24の近傍にその後部が配置されるようにする。なお、後タイヤ24は、ミッションを介してエンジンの駆動力によって駆動する。また、前タイヤ23は後タイヤ24の推進力によって走行するトラクタ21に従動して回転する。
【0016】
運転キャビン26は、前面にフロントガラス32、後面にリアガラス33を備える。また、左右の側面部26Sにはガラス製のドア31をそれぞれ備える。運転キャビン26の外周には、後方確認用のミラー36,36、前照灯34,34、後照灯35をそれぞれ設ける。また、左右それぞれのドア31の下方には、運転者が運転キャビン26に昇降するためのステップSTを車体フレーム22に固定して取り付ける。一方、運転キャビン26内には、エンジンキー、アクセルペダル,クラッチペダル,ブレーキペダルなどの操作ペダル、シフトレバー、ハンドル29、運転席30、さらに、速度、燃料、警報などを表示する表示部などを設ける。
【0017】
また、運転キャビン26の後部両側下端には、後タイヤ24を上方より覆うためのフェンダ38をそれぞれ設ける。フェンダ38の後部には、ウインカーとストップランプを備える。
【0018】
図2に示すように、車体フレーム22の前側下方にはフロントアクスルFAを車幅方向に沿って設ける。そして、フロントアクスルFAの両端には、それぞれハブユニット(軸受)40を設け、ハブユニット40に前タイヤ23を取り付ける。
【0019】
ハブユニット40は、図3に示すように、ハブホイール41、外輪42、内輪43、外輪42と内輪43との間に備えられた一連の転動体44などを備える。ハブホイール41の内側には、前輪軸(車軸)FXをスプライン嵌合などによって嵌め合わせる。この前輪軸FXはフロンとアクスルFAに内装されている。これによって、前輪軸FXとハブホイール41は一体に回転する。一方、ハブホイール41と内輪43とは、嵌め合わされて連結されており、一体に回転する。外輪42は略円筒状に形成され、内輪43およびハブホイール41を外側から囲うように配置される。外輪42と、内輪43およびハブホイール41との間には複数の球状の転動体44を外輪42の内周に沿って回転自在に配置する。外輪42(ハブユニット40)は、不図示の箇所で車体フレーム22に固定されている。
【0020】
このようにして、内輪43およびハブホイール41は、転動体44を介して、外輪42に対して回転自在である。なお、この例では前輪軸FXはエンジンの出力軸とは連結されておらず、トラクタ21の走行に合わせて従動回転する。
【0021】
ハブホイール41には、ドーナツ板状の取付フランジ41Fを備える。ハブフランジ41Fには、その円周に沿うように一定間隔で貫通孔を設け、その貫通孔には、取付ボルト45を先端が外側向きとなるようにして溶接などで固定する。この取付ボルト45には、前タイヤ23のホイール(後述)を取り付ける。一方、ハブホイール41(ハブユニット40)の中央付近には、インロー部(車輪取付部)41Tを突設する。インロー部41Tは前輪軸FXの外周よりも大きな直径の円筒状に形成される。なお、前輪軸FXとインロー部41Tの軸心CTは同一である。
【0022】
インロー部41Tの(先端)天面には、図4(a),(b)に示すように、前タイヤ23の取り付けを容易にするための取付補助部50をインロー部41Tの天面に沿うように備える。取付補助部50の本体部は、円弧状の厚板で形成され、その両端に平板状の取付部50Eを備える。取付補助部50の円弧の半径はインロー部41Tの半径と略同一とする。取付部50Eに貫通孔50Hを形成し、その貫通孔50Hとインロー部41Tに形成された貫通孔とを合わせてボルトBTを通して取付補助部50をインロー部41Tに固定する。したがって、取付補助部50はインロー部41Tに対して着脱可能である。なお、取付補助部50の板厚は、インロー部41Tの天面の幅と同程度とする。また、取付補助部50の円弧の外周はインロー部41Tの外周よりも外側に突出しないと好適である。
【0023】
このように構成されたハブユニット40に前タイヤ23を取り付けるには、図5(a)に示すように、前タイヤ23のホイール23Wの中央に形成された円状の貫通孔23WCをインロー部41Tを目がけてはめ込む。このとき、取付補助部50が突出して設けられているので、貫通孔23WCを誘導しやすい。次に、取付ボルト45とホイール23Wの取付孔23WHとを合わせながら、前タイヤ23をハブユニット41に当接させる(一点鎖線で表示)。そして、取付ボルト45の先端からナット(不図示)を締め付けて前タイヤ23をハブユニット40に固定する。その後、取付補助部50は適宜、取り外しても良い。
【0024】
なお、図5(b)に示すように、取付補助部50の先端は、取付ボルト45の先端よりhだけ外側に向けて突出させるので、前タイヤ23をハブユニット40に取り付ける際、取付補助部50のほうが、取付ボルト45よりも先にホイール23Wに達し、貫通孔23WCをインロー部41Tへ誘導することができる。
【0025】
取付補助部50の変形例を、図6(a),(b)に示す。詳しくは、2つの取付補助部150を円筒状のインロー部41Tの天面に中心Cから略90度隔てて配置される。取付補助部150をこのように配置することで、前タイヤ23の貫通孔23WCをインロー部41Tに取り付ける際に、インロー部41Tの上下方向と左右方向に対してそれぞれガイドされるため、前タイヤ23の位置決めがしやすくなる。
【0026】
取付補助部150の本体部は、円弧状の厚板で形成され、その両端に平板状の取付部150Eを備える。取付部150Eに貫通孔150Hを形成し、その貫通孔150Hとインロー部41Tに形成された貫通孔とを合わせてボルトBTを通して取付補助部150をインロー部41Tに固定する(取付補助部150はインロー部41Tに対して着脱可能である)。なお、取付補助部150の板厚は、インロー部41Tの天面の幅と同程度とする。また、取付補助部150の円弧の外周はインロー部41Tの外周よりも外側に突出しないと好適である。この例の2つの取付補助部150は、前の例の取付補助部50よりも円弧長さLが短く形成されてもよい。なお、インロー部41Tの天面に取付補助部を3つ以上備えていてもよい。この場合に、両端に配置される取付補助部の中心Cからの角度は90度程度とすることが望ましい。これ以外のトラクタ21の構成は、前述の例と同様である。
【0027】
また、別の例として、図7(a),(b)に示すように、取付補助部50´をインロー部141Tに溶接などで固設して一体にしてもよい。この取付補助部50´は、円弧状の厚板で形成される。なお、符号140はハブユニット、符号141はハブホイール、符号141Fはハブフランジを示す。これ以外のトラクタ21の構成は、前述の例と同様である。
【0028】
さらに別の例として、図8(a)〜(c)に示すように、取付補助部250を台形図形の回転体として形成してもよい(台形図形に限定されるものではなく、矩形図形であってもよい)。この取付補助部250の上面250Tに形成された円よりも、下面250Bに形成された円の面積のほうが大きい。したがって、側面250Sには上面250Tから下面250Bに向かってテーパが形成されている。このテーパがあることで前タイヤ23の貫通孔23WCのガイドを容易にすることができる。取付補助部250は、中央部には、U型ノッチ(間隙部)250Cを備える。また、下面250Bからネジ部250Aが突出している。
【0029】
取付補助部250は前輪軸FX´に螺合自在に取り付ける(前輪軸FX´は上述の例の前輪軸FXに相当する)。前輪軸FX´はその両端が円筒状のインロー部41Tの内側に露出している。ネジ部250Aは雄ネジで、前輪軸FX´の露出した先端に形成された雌ネジに螺合する。下面250Bは円状に形成され、その外縁はインロー部41Tの外周と同じがやや小さく形成される。なお、取付補助部250の下面250Bはインロー部41Tと同一かやや小さく形成される。これ以外のトラクタ21の構成は、前述の例と同様である。
【0030】
このように構成されたハブユニット40に前タイヤ23を取り付けるには、まず、取付補助部250をU型ノッチ250Cに工具などのバーを嵌めつけて取付補助部250を前輪軸FX´にねじつける(このとき、下面250Bがインロー部41Tの天面に当接してもよいし、わずかな隙間を隔てて隣接していてもよい)。そして、前タイヤ23のホイール23Wの中央に形成された円状の貫通孔23WCをインロー部41Tを目がけてはめ込む。このとき、取付補助部250が突出して設けられているので、貫通孔23WCを誘導しやすい。
【0031】
次に、取付ボルト45とホイール23Wの取付孔23WHとを合わせながら、前タイヤ23をハブユニット40に当接させる(一点鎖線で表示)。そして、取付ボルト45の先端からナット(不図示)を締め付けて前タイヤ23をハブユニット40に固定する。その後、再び、U型ノッチ250Cに工具などのバーを嵌めつけ、取付補助部250を前輪軸FX´からゆるめて外す。なお、前タイヤ23の構成部分の符号は図5(a)と同様である。このように、取付補助部250は、前タイヤ23を取り付けた後に前輪軸FX´から外すので、取付補助部250の高さWは、ホイール23Wの厚みよりも大きくして、U型ノッチ250Cに工具を嵌めつけられるようにする必要がある。
【0032】
以上詳述した取付補助部50,50´,150,250はいずれも前タイヤ23を前輪軸のハブユニット40に取り付ける際に用いたが、この発明はこれに限定されるものではなく、取付補助部は後タイヤ24を後輪軸のハブユニットに取り付ける際に適用してもよい。また、上述の全ての例では、前タイヤ23が従動回転し、後タイヤ24が駆動回転する構成としたが、この発明はこれに限定されるものではなく、前タイヤが駆動回転し、後タイヤが従動回転するように構成してもよい。さらに、前タイヤ、後タイヤいずれもが駆動回転するいわゆる4輪駆動の車両であってもよいし、前タイヤ、後タイヤいずれもが従動回転するトレーラー車両であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明の車両は、トラクタなどの農業機械車両、建設機械車両、自動車、また、エンジンを持たないトレーラーなどあらゆる車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
21 トラクタ(車両)
23 前タイヤ(車輪)
23WC 貫通孔
40 ハブユニット(軸受)
41T インロー部(車輪取付部)
50,50´,150,250 取付補助部
250C U型ノッチ(間隙部)
FX,FX´ 前輪軸(車軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の車輪と、
該一対の車輪の間に備える車軸と、
該車軸の両端に備え、該車軸を回転自在に支持するとともに、前記車輪を取り付けて保持する軸受とを備え、
前記車輪の中央に貫通孔を形成する一方、
前記軸受の中央に円筒状の車輪取付部を形成し、
前記車輪の貫通孔を前記車輪取付部に嵌め合わせることで前記車輪を前記軸受に取り付ける車両において、
前記車輪取付部の先端に沿って取付補助部を突出して設けることを特徴とする、車両。
【請求項2】
前記取付補助部が前記車輪取付部に対して着脱可能であることを特徴とする、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記車軸の一端が前記円筒状の車輪取付部の中心部分に配置された車両であって、
前記取付補助部に雄ネジを備え、
該雄ネジに螺合する雌ネジを前記車軸の一端に形成し、
前記取付補助部を前記車軸にネジつけることを特徴とする、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記取付補助部が矩形図形の回転体として形成され、
前記取付補助部の上部に直径方向にわたって間隙部を備えることを特徴とする、請求項3に記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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