説明

車体の後部構造

【課題】ガラスハッチを開成して車両走行をした場合にも、ガラスハッチを安定して保持すると共に、走行時の空気抵抗を低減することができる車体の後部構造を提供する。
【解決手段】窓開口部20を形成した車体後面11及びガラスハッチ30を車体外方に膨出する曲面に湾曲させる。これにより、前記ガラスハッチ30を開成した状態で車両を走行させた場合でも、ガラスハッチ30を安定して保持することができる。また、車両走行に伴う走行風の流れをガラスハッチ30によって乱されることを抑制することができ、走行時の空気抵抗を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後面の窓開口部を開閉するガラスハッチを配設した車体の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バックドアに形成した窓開口部を開閉するガラスハッチを配設した車両が知られている。このガラスハッチは、例えば平面状に形成されて、上縁に設けたヒンジを中心として下部が回動して開かれる。また、ガラスハッチは、車幅方向両側に設けたガスステーによって、所定の開閉位置に保持されるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平5−41919号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した従来技術によれば、ガラスハッチを開成した場合、ガラスハッチがバックドアから後方に突出した状態となる。このため、ガラスハッチを開成したまま車両を走行させると、走行風によってガラスハッチが上下に振動し、安定して保持させることが困難であった。また、車両走行に伴って生じる車体後方側に向かう空気流が突出したガラスハッチによって乱され、走行時に車両が受ける空気抵抗を増大するおそれもあった。
【0004】
そこで、本発明は、ガラスハッチを開成して車両走行をした場合にも、ガラスハッチを安定して保持すると共に、走行時の空気抵抗を低減することができる車体の後部構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車体の後部構造は、窓開口部を有する車体後面と、前記窓開口部に開閉可能に設けられたガラスハッチと、該ガラスハッチの車幅方向両端部を車体側に回動可能に支持する回動支持部とを備え、前記窓開口部を設けた車体後面及びガラスハッチを車体外方に膨出する曲面に形成したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る車体の後部構造によれば、前記ガラスハッチを開成した状態で車両を走行させた場合でも、ガラスハッチを安定して保持することができる。また、車両走行に伴う走行風の流れをガラスハッチによって乱されることを抑制することができ、走行時の空気抵抗を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0008】
[第1実施形態]
図1〜図6は本発明に係る車体の後部構造の第1実施形態を示す。図1はガラスハッチを閉じた状態における車体後部の斜視図、図2は図1の側面図、図3はガイド部材を拡大した側面図、図4はガラスハッチを全開した状態における車体後部の斜視図、図5は図4の側面図、図6はガラスハッチを閉じた車体後部を車両後方から見た背面図である。なお、図6ではガラスハッチの左右両端を明確にするため、ガイド部材60を省略している。
【0009】
図1,図2に示すように、車体10の後部においては、車体後面11に車幅方向に沿って略矩形状の窓開口部20を形成し、該窓開口部20をガラスハッチ30によって開閉するようになっている。さらに、図2に示すように、ガラスハッチ30の上側の周縁部内側に設けたシール部材31が窓開口部20の上側の周縁部に密接して、雨水等が車室内に浸入することを防止することができるようになっている。なお、車体ルーフ40の後部41は、車体後面11を構成している。
【0010】
本発明では、前記窓開口部20を形成した車体後面11とガラスハッチ30とを車体外方(車体後方側及び車幅方向外側)に膨出する曲面形状に湾曲させてある。
【0011】
また、図4,図5に示すように、ガラスハッチ30を車体後面11に沿って上方に開成し、全開時には、ガラスハッチ30が車体ルーフ40の後部41の上側に位置するように構成している。
【0012】
ここで、前記車体ルーフ40の後部41(車体後面11)の曲率半径を、ガラスハッチ30の曲率半径よりも大きく形成してあり、図5に示すように、ガラスハッチ30が上方に回動されて窓開口部20を開放した際に、ガラスハッチ30と車体ルーフ40との間に所定のスペースSが設けられて両者が干渉しないようになっている。
【0013】
図6に示すように、前記ガラスハッチ30の車幅方向両端部32,33を、回動支持部50,50を介して車体10側に回動可能に支持している。これによって、ガラスハッチ30を上下方向に開閉させることができる。
【0014】
この回動支持部50は、図2及び図5に詳細に示すように、車体10側に設けられ、ガラスハッチ30の回動中心Cを中心とする円弧状のガイド穴51を有するガイド部材60と、前記ガラスハッチ30に設けられ、前記ガイド穴51内を移動可能に構成されたガイドピン52と、前記ガラスハッチ30の所定の開動位置で、前記ガイドピン52をガイド穴51の所定位置に固定するロック手段53とを備えている。また、回動中心Cの位置には、ガラスハッチ30の内側面から取付軸70が突設され、該取付軸70は前記ガイド部材60に回動可能に軸支されている。これにより、ガラスハッチ30は、回動中心Cを中心に開閉可能となっている。また、前記ガイドピン52は、ガラスハッチ30の内側面から突出して前記ガイド穴51に挿入され、ガラスハッチ30の開閉に伴ってガイドピン52がガイド穴51内を摺動する。
【0015】
そして、前記ロック手段53は、前記ガイドピン52を前記ガイド穴51に固定できる構造として提供され、例えば、ガイド穴51を貫通してガイド部材60の車室内側に突出した前記ガイドピン52に形成したねじ部にナット部材を螺合して、そのナット部材を手動で締め付ける構成とすることができる。
【0016】
図3は、ガイド部材60を拡大した側面図であり、該ガイド部材60の外形形状は、車両後方に向かうにつれて上下方向の高さが徐々に大きくなる略三角状に形成されている。前側には、ガラスハッチ30の取付軸70が挿入される回動穴61が穿設されており、該回動穴61がガラスハッチ30の回動中心Cとなっている。前記ガイド穴51は、ガラスハッチ30の回動中心Cを中心とする円弧状に沿って形成されている。
【0017】
具体的には、ガイド穴51は、下部側に形成された摺動部56と、上部側に形成された抵抗部54とからなり、該抵抗部54には、内周面にローレット状の細かい凹凸部54aが形成されている。そして、抵抗部54にガイドピン52が位置した時には、凹凸部54aによる大きな摺動抵抗がガイドピン52に付加され、ガラスハッチ30をその開動位置で保持することができる。
【0018】
ここで、前記ガイド穴51は、前記ガラスハッチ30の回動中心C(取付軸70)の近傍に設けられている。つまり、前記回動中心Cを中心とするガイド穴51の半径Rを、ガラスハッチ30を保持できる範囲で極力小さくしてある。
【0019】
以上の構成により、本実施形態に係る車体の後部構造によれば、窓開口部20を設けた車体後面11及びガラスハッチ30を車体外方に膨出する曲面形状に湾曲させ、ガラスハッチ30は車幅方向両端部32,33に設けた回動支持部50を中心として上下に回動される。
【0020】
このため、ガラスハッチ30を開放したまま車両を走行させる場合でも、車両後方に流れる空気流の乱れを抑制することができ、走行時の空気抵抗を低減させることができる。
【0021】
また、前記回動支持部50は、車体10側に設けられ、ガラスハッチ30の回動中心Cを中心とする円弧状のガイド穴51を有するガイド部材60と、前記ガラスハッチ30に設けられ、前記ガイド穴51内を移動可能に構成されたガイドピン52と、前記ガラスハッチ30の所定の開動位置で、前記ガイドピン52をガイド穴51の所定位置に固定するロック手段53とを備えている。従って、ガイド穴51内をガイドピン52が摺動することにより、ガラスハッチ30の開閉動作を円滑にかつ安定的に行うことができる。さらに、ロック手段53を用いて、ガラスハッチ30を任意な開動位置で固定(ロック)しておくことができるため、車両走行時のガラスハッチ30の上下揺動を阻止して安定的に開動位置を保持することができる。
【0022】
更に、前記ガイド穴51には、ガイドピン52に摺動抵抗を付加してガラスハッチ30を所定の開状態に保持する抵抗部54を形成したので、前記ロック手段53を用いない場合でも、ガラスハッチ30を所定の開動位置に安定的に保持することができる。
【0023】
また、前記ガイド穴51を、前記ガラスハッチ30の回動中心C(取付軸70)の近傍に設けたので、ガイド部材60の面積を小さくでき、窓開口部20の開口面積をより拡大することができる。
【0024】
[第2実施形態]
図7〜図11は本発明の第2実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0025】
図7は本発明の第2実施形態におけるガラスハッチを閉じた状態の車体後部の斜視図、図8は図7の側面図、図9は本発明の第2実施形態におけるガラスハッチを全開した状態の車体後部の斜視図、図10は図9の側面図、及び図11は本発明の第2実施形態におけるガラスハッチを全開した状態の車体後部を車両後方から見た背面図である。
【0026】
本実施形態による車体10の後部構造は、基本的に第1実施形態と略同様の構成であり、窓開口部20を形成した車体後面11及びガラスハッチ30を車体外方(車両後方側及び車幅方向外側)に膨出する曲面形状に湾曲させてある。
【0027】
ガラスハッチ30は車幅方向両端部32,33に設けられた取付軸70を介してガイド部材60に回動自在に取り付けてある。また、図外のロック手段によって、ガラスハッチ30を所定の回動角度に固定(ロック)することができる。
【0028】
なお、本実施形態によるガイド部材80には、前記取付軸70が挿入される回動穴81と、ガイドピン52が挿入されるガイド穴82とが形成されている。前記回動穴81は、車両前後方向に沿って延びる長穴に形成されている。また、ガイド穴82は、車両前後方向に延びる水平部と、回動中心Cを中心とする円弧に沿って延びる円弧部とから、側面視逆L字状に形成されている。図7,図8に示すガラスハッチ30の全閉時には、取付軸70は回動穴81の前端に位置し、ガイドピン52はガイド穴82の水平部の前端に位置している。
【0029】
そして、本実施形態が第1実施形態と特に異なる点は、車体ルーフ40の後部の上面に、後方に向かうにつれて上下方向の厚さが大きくなる断面略三角形状に形成されたストッパー部90が設けられていることである。
【0030】
このストッパー部90の後面91は、図10に示すように、ガラスハッチ30の全開位置で該ガラスハッチ30の上端34(図7参照)が当接される。また、図10に示すように、ガラスハッチ30の全開位置において、ストッパー部90の上面93は、ガラスハッチ30の外側面35と車体ルーフ40の上面42とを、車両前後方向に沿って滑らかに面一につなぐように形成されている。また、図7に示すように、ストッパー部90の内部は空洞になっており、上面93には、車幅方向に延びる長穴状の導入口94,94が左右一対に形成されている。また、ストッパー部90の後面91には、前記導入口94,94に連通する導出口95,95が形成されている。そして、導入口94、導出口95、及びこれらの導入口94と導出口95とを連通する空洞が導風部に構成されている。
【0031】
この導風部によれば、図10に示すように、走行風Wは、ストッパー部90の導風部からガラスハッチ30の外側面35の下部(内方)を通って車体後方に流れる走行風W1と、ストッパー部90の上面93からガラスハッチ30の外側面35の上を通って車体後方に流れる走行風W2とに分かれる。従って、ガラスハッチ30の上部(外方)と下部(内方)とで圧力差が低減されるため、ガラスハッチ30の保持性を高めることができる。
【0032】
また、本実施形態では、ガラスハッチ30を前方に付勢するスプリング(図示せず)を設けて、ガラスハッチ30を全閉した際に、そのガラスハッチ30を車両前方に引き寄せて保持している。ここで、ガラスハッチ30を開成させる手順を簡単に説明する。
【0033】
まず、図8に示すように、ガラスハッチ30の全閉時には、取付軸70は回動穴81の前端に位置し、ガイドピン52はガイド穴82の水平部の前端に位置している。そして、前述したように、ガラスハッチ30は図外のスプリングによって車両前方側に付勢されている。
【0034】
次に、ガラスハッチ30を車両後方に向けて引き出すと、スプリングの付勢力に逆らって、取付軸70は回動穴81の後端に移動し、ガイドピン52はガイド穴82の水平部の後端に移動する。図10に示すように、この状態から、ガラスハッチ30を上方に向けて回転させると、ガイドピン52はガイド穴82の円弧部に沿って上方移動して上端に至る。そして、ガラスハッチ30の上端34がストッパー部90の後面91に当接することにより、ガラスハッチ30が全開される。
【0035】
以上の構成により、本実施形態に係る車体の後部構造によれば、車体ルーフ40に、ガラスハッチ30の全開位置で該ガラスハッチ30の上端34に当接するストッパー部90を設けたので、ガラスハッチ30の全開状態を安定化させることができる。
【0036】
このとき、ストッパー部90がない場合には、走行風Wはガラスハッチ30の外側面35の上面に沿って流れて負圧が発生するため、ガラスハッチ30は上方に持ち上げられる力が作用して安定性が悪化する。しかし、本実施形態では前記ストッパー部90に導風部を設けて、走行風をガラスハッチ30の外側面の下部に積極的に導入させるようにしたので、ガラスハッチ30の外側面の下部にも負圧を発生させ、前記外側面35の上部と下部とで圧力差が低減されて、全開状態にあるガラスハッチ30を効率良く安定化させることができる。
【0037】
ところで、本発明に係る車体の後部構造は、前記第1及び第2実施形態に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態におけるガラスハッチを閉じた状態の車体後部の斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるガイド部材を拡大した側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるガラスハッチを全開した状態の車体後部の斜視図である。
【図5】図4の側面図である。
【図6】本発明の第1実施形態におけるガラスハッチを閉じた車体後部を車両後方側から見た背面図である。
【図7】本発明の第2実施形態におけるガラスハッチを閉じた状態の車体後部の斜視図である。
【図8】図7の側面図である。
【図9】本発明の第2実施形態におけるガラスハッチを全開した状態の車体後部の斜視図である。
【図10】図9の側面図である。
【図11】本発明の第2実施形態におけるガラスハッチを全開した状態の車体後部を車両後方から見た背面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 車体
11 車体後面
20 窓開口部
30 ガラスハッチ
34 ガラスハッチの上端
35 ガラスハッチの外側面
50 回動支持部
51 ガイド穴
52 ガイドピン
60,80 ガイド部材
90 ストッパー部
94 導入口(導風部)
95 導出口(導風部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓開口部を有する車体後面と、
前記窓開口部に開閉可能に設けられたガラスハッチと、
該ガラスハッチの車幅方向両端部を車体側に回動可能に支持する回動支持部とを備え、
前記窓開口部を設けた車体後面及びガラスハッチを車体外方に膨出する曲面に形成したことを特徴とする車体の後部構造。
【請求項2】
前記回動支持部は、
車体側に設けられ、ガラスハッチの回動中心を中心とする略円弧状のガイド穴を有するガイド部材と、
前記ガラスハッチに設けられ、前記ガイド穴内を移動可能に構成されたガイドピンと、
前記ガラスハッチの所定の開動位置で、前記ガイドピンをガイド穴の所定位置に固定するロック手段とを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の車体の後部構造。
【請求項3】
前記ガイド部材のガイド穴は、前記ガラスハッチの所定の開動位置で前記ガイドピンの移動に抵抗力を付与してガラスハッチを開状態に保持する抵抗部を備えてなることを特徴とする請求項2に記載の車体の後部構造。
【請求項4】
前記ガイド部材のガイド穴は、前記ガラスハッチの回動中心の近傍に設けられることを特徴とする請求項2又は3に記載の車体の後部構造。
【請求項5】
車体ルーフの後端部に、全開状態にしたガラスハッチの端部が当接するストッパー部を設け、該ストッパー部に、全開状態にあるガラスハッチの外側面の内方に走行風を導入する導風部を形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体の後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−174175(P2008−174175A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11343(P2007−11343)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】