説明

車体位置管理システム

【課題】タグ内の情報を読み取る読取装置との通信可能エリアから外れている台車の位置を従来よりも詳細に把握する。
【解決手段】台車に搭載された台車タグに記憶されている車体識別情報を読み取ることに加えて、部品8とともに台車に載せられている部品タグに記載されている部品識別情報も読み取る処理を実施するように、第1読取装置11、第2読取装置12、第3読取装置13、第4読取装置14をそれぞれ構成した。そして、それら読取装置によって読み取られた情報について、車体識別情報及び部品識別情報の両方であるのか、あるいは車体識別情報だけなのかの違いに基づいて、その車体識別情報に対応する台車について、その読取装置の設置位置を境にして互いに逆側に存在する2つの領域のうち、何れの領域に位置しているのかを判定する判定処理を実施するように、メイン管理装置21を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を載せて搬送する複数の物品搬送車体についてそれぞれ、施設内における位置を把握する車体位置管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車体位置管理システムとしては、特許文献1に記載のものが知られている。この車体位置管理システムは、施設内で使用される複数の台車の位置を管理するものである。物品搬送車体としての複数の台車には、それぞれ無線ICタグからなる台車タグが搭載されている。そして、台車タグには、個々の台車に固有の台車識別情報が記憶されている。また、施設内の要所要所には、台車タグとの近距離通信によって台車タグ内の台車識別情報を読み取る複数のタグ読取装置が配設されている。それらタグ読取装置は、読み取った台車識別情報を管理装置に送信する。管理装置は、複数のタグ読取装置から送られてくる台車識別情報に基づいて、個々の台車についてそれぞれ施設内における位置を把握する。かかる車体位置管理システムによれば、個々の台車の位置をそれぞれ把握することで、台車の紛失の発生を抑えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この車体位置管理システムは、タグ読取装置との通信可能エリアを外れている台車については、大雑把な位置しか把握することができない。より詳しく説明すると、例えば、タグ読取装置を中心とした半径2m内のエリアがタグ読取装置と台車タグとの通信可能エリアであるとする。また、施設内において、互いに隣接する物品保管室Aと物品保管室Bとの連絡口にタグ読取装置が配設されているとする。かかる構成において、物品保管室A内から物品保管室Bに向けて移動している台車Xが連絡口の近くにさしかかって、その台車タグの台車識別情報がタグ読取装置によって読み取られたとする。すると、その時点で、管理装置は、台車Xについてタグ読取装置との通信可能エリア内に位置していることを把握することができる。しかし、その後、台車Xが物品保管室B内に進入してその通信可能エリアから外れると、台車Xの台車タグの台車識別情報はタグ読取装置に読み取られなくなる。すると、管理装置は、台車Xの位置について、物品保管室A内なのか、物品保管室B内なのかを特定することができず、それらの何れかであるという大雑把な位置しか把握することができないのである。
【0004】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、読取手段との通信可能エリアから外れている物品搬送車体の位置を従来よりも詳細に把握することができる車体位置管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、物品搬送車体について、物品を載せている状態であるのか、物品を載せていない状態であるのかを区別することで、その物品搬送車体の進行方向を把握し得る場合があることに着目した。例えば、施設内において、物品保管室内から、これに隣接している搬出用トラックヤードに向かう物品搬送車体は、仕向け先に搬出するための物品を載せている状態にある。この逆に、搬出用トラックヤード内から、これに隣接している物品保管室に向かう物品搬送車体は、全ての物品をトラックに受け渡した直後であるため、物品を載せていない状態にある。搬出用トラックヤードと物品保管室との間の連絡口に配設された読取手段が、車体識別情報に加えて、物品識別情報を読み取った場合、その車体識別情報に対応する物品搬送車体は物品を載せている状態である。この状態の物品搬送車体は、物品保管室内から搬出用トラックヤードに向けて進行するので、その後、読取手段との通信を断ったときには、搬出用トラックヤード内に移動していることになる。これに対し、読取手段が車体識別情報だけしか読み取らなかった場合、その車体識別情報に対応する物品搬送車体は物品を載せていない状態である。この状態の物品搬送車体は、搬出用トラックヤード内から物品保管室に向けて進行するので、その後、読取手段との通信を断ったときには、物品保管室内に移動していることになる。
【0006】
そこで、上記目的を達成するために、請求項1の発明は、物品を載せて搬送する複数の物品搬送車体にそれぞれ個別に搭載された車体識別情報記憶手段に記憶されている車体識別情報を、近距離無線通信により、物品搬送車体が使用される施設内における互いに異なる位置で読み取る複数の読取手段と、それら複数の読取手段による読取結果に基づいて、前記施設内における物品搬送車体の位置を把握する車体位置把握手段とを備える車体位置管理システムにおいて、近距離無線通信により、前記車体識別情報記憶手段に記憶されている前記車体識別情報を読み取ることに加えて、物品とともに物品搬送車体に載せられている物品識別情報記憶手段内の物品識別情報も読み取る処理を実施するように、複数の前記読取手段をそれぞれ構成するとともに、前記読取手段によって読み取られた情報について、前記車体識別情報及び前記物品識別情報の両方であるのか、あるいは前記車体識別情報だけなのかの違いに基づいて、前記車体識別情報に対応する物品搬送車体について、前記車体識別情報の読み取りを行った前記読取手段の設置位置を境にして互いに逆側に存在する2つの領域のうち、何れの領域に位置しているのかを判定する判定処理を実施するように、前記車体位置把握手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の車体位置管理システムにおいて、前記車体識別情報と、これに対応する物品搬送車体が位置している領域の情報である領域情報とを関連付けて関連付け情報記憶手段に記憶させる処理を実施するように、前記車体位置把握手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の車体位置管理システムにおいて、前記車体識別情報と前記物品識別情報とのうち、前記車体識別情報だけを受信した場合には、その車体識別情報に対応する物品搬送車体の状態を示す状態情報として、物品を載せていない状態であることを示す空状態情報を前記領域情報に関連付けて前記関連付け情報記憶手段に記憶させる一方で、両方の識別情報を受信した場合には、物品を載せた状態であることを示す積載状態情報を前記領域情報に関連付けて前記関連付け情報記憶手段に記憶させる処理を実施するように、前記車体位置把握手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2又は3の車体位置管理システムにおいて、前記車体識別情報を受信したタイミングに基づいて、その車体識別情報に対応する物品搬送車体について、現時点で位置している領域における停滞時間の計時を開始する処理を実施するように、前記車体位置把握手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項4の車体位置管理システムにおいて、前記車体識別情報を受信したことに基づいて、その車体識別情報に対応する物品搬送車体について、前記領域情報及び前記停滞時間の履歴を前記車体識別情報に関連付けて関連付け情報記憶手段に記憶させる処理を実施するように、前記車体位置把握手段を構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
これらの発明においては、読取手段によって読み取られた情報が車体識別情報だけであるのか、あるいは車体識別情報及び物品識別情報の両方であるのかの違いに基づいて、物品搬送車体について、読取手段の設置位置を境にして互いに逆側に存在する2つの領域のうち、何れの領域に位置しているのかを把握する。これにより、読取手段との通信可能エリアから外れている物品搬送車体の位置を従来よりも詳細に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る車体位置管理システムの構成を説明するためのブロック図。
【図2】同車体位置管理システムのメイン管理装置に格納されている台車管理データベースの一例を表形式で示す模式図。
【図3】同メイン管理装置によって実施される状態集計処理によるディスプレイ表示の一例を示す模式図。
【図4】同メイン管理装置によって実施される領域別集計処理によるディスプレイ表示の一例を示す模式図。
【図5】同メイン管理装置によって実施される履歴表示処理によるディスプレイ表示の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した車体位置管理システムの一実施形態について説明する。まず、実施形態に係る車体位置管理システムの基本的な構成について説明する。
図1は、実施形態に係る車体位置管理システムの構成を説明するためのブロック図である。この車体位置管理システムは、第1読取装置11、第2読取装置12、第3読取装置13、第4読取装置14、メイン管理装置21、サブ管理装置22などを備えている。これらのうち、第1読取装置11、第2読取装置12及びメイン管理装置21は、部品工場に配設されている。また、第3読取装置13、第4読取装置14及びサブ管理装置22は、製品メーカー工場に配設されている。
【0010】
製品メーカー工場は、複写機や家電などの製品を製造する施設である。また、部品工場は、製品メーカー工場で製造される製品に使用される部品を生産する施設である。それらの施設内では何れも、物品としての部品8が物品搬送車体としての台車1に載せられた状態で運ばれる。それら施設内で使用される複数の台車1には、それぞれその個体に固有の車体識別情報を記憶している無線ICタグからなる図示しない台車タグが搭載されている。RFID(Radio Frequency Identification)などで一般的に採用されているICタグと同様のものであり、自らの電力で電波を発するための電池を内蔵している。
【0011】
部品工場内には、部品生産ライン、部品保管庫、中間通路、搬出用トラックヤードなどが配設されている。部品生産ラインで生産された部品8は、所定の個数毎に梱包箱内に収容されて台車1に載せられる。部品生産ラインにおいて、所定数の梱包箱が載せられた台車1は、作業者により、部品生産ラインから部品保管庫に運ばれる。この際、部品生産ラインと部品保管庫との間に配設された第1読取装置11の付近を通過すると、台車タグとの近距離無線通信が可能な第1読取装置11によって台車タグ内の車体識別情報が読み取られる。
【0012】
部品保管庫に置かれた台車1は、製品メーカー工場からの部品発注に応じて、作業者によって部品保管庫から搬出用トラックヤードに運ばれて、トラックに積載される。この際、部品保管庫と搬出用トラックヤードとの間に配設された第2読取装置12の付近を通過すると、台車タグとの近距離無線通信が可能な第2読取装置12によって台車タグ内の車体識別情報が読み取られる。
【0013】
第1読取装置11や第2読取装置12には、メイン管理装置21が接続されている。第1読取装置11や第2読取装置12は、台車1の台車タグの車体識別情報を読み取ると、その結果を自らの識別情報である読取個体識別情報とともにメイン管理装置21に送信する。
【0014】
部品工場の経営者は、自らの部品工場で生産した部品を製品メーカー工場に継続して発注してもらうために、製品メーカー工場に対して台車1の無償貸出を行っている。このため、部品工場からは、部品8が台車1に載せられたままの状態で出荷される。荷受けのために部品工場の搬出用トラックヤードに停められたトラックの中には、製品メーカー工場から回収された空の台車1が積まれている。搬出用トラックヤードでは、空の台車1がトラックから降ろされた後に、部品8を載せた台車1がトラックに乗せられる。
【0015】
トラックから降ろされた空の台車1は、作業者により、搬出用トラックヤードから中間通路を経て部品生産ラインに運ばれる。この際、第2読取装置12や第1読取装置11の付近を通ると、それらによって台車タグ内の車体識別情報が読み取られる。
【0016】
製品メーカー工場内には、製品製造ライン、一時保管庫、中間通路、トラックヤードなどが配設されている。部品工場から出荷された部品8は、製品メーカー工場のトラックヤードにて、台車1に載せられたままの状態でトラックから降ろされる。トラックヤードには、部品8の荷下ろしによって空になった台車1が運び込まれている。部品8を載せた台車1を降ろしたトラックには、トラックヤード内に置かれている空の台車1が積み込まれる。これらの台車1は、トラックが次の荷受けのために部品工場に向かった際に、部品工場の搬出用トラックヤードに降ろされる。
【0017】
製品メーカー工場のトラックヤードに降ろされた部品8は、作業者により、台車1とともに一時保管庫に運ばれる。この際、トラックヤードと一時保管庫との間に配設された第3読取装置13の付近を通過した台車1は、台車タグとの近距離無線通信が可能な第3読取装置13によって台車タグ内の車体識別情報が読み取られる。
【0018】
一時保管庫に置かれた台車1は、製品製造ラインでの部品使用状況に応じて、作業者によって一時保管庫から製品製造ラインに運ばれる。この際、一時保管庫と製品製造ラインとの間に配設された第4読取装置14の付近を通過すると、台車タグとの近距離無線通信が可能な第4読取装置14によって台車タグ内の車体識別情報が読み取られる。
【0019】
第3読取装置13や第4読取装置14には、サブ管理装置22が接続されている。第3読取装置13や第4読取装置14は、台車1の台車タグの車体識別情報を読み取ると、その結果を自らの読取個体識別情報とともにサブ管理装置22に送信する。サブ管理装置22は、インターネット回線又はイントラネット回線により、部品工場のメイン管理装置21に接続されている。サブ管理装置22は、第3読取装置13や第4読取装置14から読取個体識別情報や車体識別情報が送られてくると、それらをリアルタイムで部品工場のメイン管理装置21に送信する。なお、製品メーカー工場に設置されている第3読取装置13、第4読取装置14及びサブ管理装置22は、部位工場から無償貸与されているものである。
【0020】
従来の車体位置管理システムの管理装置は、例えば、第1読取装置11から読取個体識別情報及び車体識別情報の組み合わせが送られてきたことに基づいて、その車体識別情報に対応する台車1の位置を第1読取装置11の付近であると把握していた。しかしながら、第1読取装置11の付近にある部品生産ライン、部品保管庫、及び中間通路のうち、どこに台車1が位置しているのかを把握することはできなかった。
【0021】
次に、実施形態に係る車体位置管理システムの特徴的な構成について説明する。
上述したように、部品工場において、部品生産ラインで生産された部品8は、所定の個数毎に梱包箱内に収容されて台車1に載せられる。その梱包箱には、部品8に固有の部品識別情報(物品識別情報)を記憶している無線ICタグからなる図示しない部品タグ(物品識別情報記憶手段)が固定されている。第1読取装置11、第2読取装置12、第3読取装置13、第4読取装置14は何れも、自らの近くを通る台車1に部品8を内包する梱包箱が載せられている場合には、台車1に固定された台車タグ内の車体識別情報を読み取ることに加えて、梱包箱に固定された部品タグの部品識別情報を読み取る。
【0022】
メイン管理装置21は、各読取装置やサブ管理装置22から送られてくるタグ読取情報について、車体識別情報、及び部品識別情報の両方であるのか、あるいは車体識別情報だけなのかの違いに基づいて、次のような判定処理を実施する。即ち、その車体識別情報に対応する台車1について、その車体識別情報の読み取りを行った読取装置の設置位置を境にして互いに逆側に存在する2つの領域のうち、何れの領域に位置しているのかを判定する処理である。
【0023】
例えば、第1読取装置11に対応する読取個体情報と、車体識別情報との組み合わせが送られてきたとする。これは、第1読取装置11の付近を台車1が通過した際に、車体識別情報及び部品識別情報のうち、車体識別情報だけしか読み取られなかったことを意味している。すると、その車体識別情報に対応する台車1は、部品8を載せていない空の状態で第1読取装置11の付近を通過したことになる。図1からわかるように、空の状態で第1読取装置11の付近を通過する台車1は、部品生産ラインに向けて運ばれている。そこで、車体位置把握手段としてのメイン管理装置21は、その台車1について、第1読取装置11の設置位置を境にして互いに逆側に存在する部品生産ラインと部品保管庫とのうち、部位品生産ラインに存在していると判定する。
【0024】
一方、第1読取装置11に対応する読取個体情報と、車体識別情報と、部品識別情報との組み合わせがメイン管理装置21に送られてきたとする。これは、第1読取装置11の付近を台車1が通過した際に、車体識別情報及び部品識別情報の両方が読み取られなかったことを意味している。すると、その車体識別情報に対応する台車1は、部品8を載せた状態で第1読取装置11の付近を通過したことになる。図1からわかるように、部品8を載せた状態で第1読取装置11の付近を通過する台車1は、部品保管庫に向けて運ばれている。そこで、メイン管理装置21は、その台車1について、第1読取装置11の設置位置を境にして互いに逆側に存在する部品生産ラインと部品保管庫とのうち、部品保管庫に存在していると判定する。
【0025】
また、第2読取装置12に対応する読取個体情報と、車体識別情報との組み合わせがメイン管理装置21に送られてきたとする。この場合、その車体識別情報に対応する台車1は、空の状態で中間通路に向けて運ばれている。そこで、メイン管理装置21は、その台車1について、第2読取装置12の設置位置を境にして互いに逆側に存在する中間通路と搬出用トラックヤードとのうち、中間通路に存在していると判定する。
【0026】
一方、第2読取装置12に対応する読取個体情報と、車体識別情報と、部品識別情報との組み合わせがメイン管理装置21に送られてきたとする。この場合、その車体識別情報に対応する台車1は、部品8を載せた状態で搬出用トラックヤードに向けて運ばれている。そこで、メイン管理装置21は、その台車1について、第2読取装置12の設置位置を境にして互いに逆側に存在する中間通路と搬出用トラックヤードとのうち、搬出用トラックヤードに存在していると判定する。
【0027】
また、第3読取装置13に対応する読取個体情報と、車体識別情報との組み合わせがメイン管理装置21に送られてきたとする。この場合、その車体識別情報に対応する台車1は、空の状態で製品メーカー工場のトラックヤードに向けて運ばれている。そこで、メイン管理装置21は、その台車1について、製品メーカー工場における第3読取装置13の設置位置を境にして互いに逆側に存在する一時保管庫とトラックヤードとのうち、トラックヤードに存在していると判定する。
【0028】
一方、第3読取装置13に対応する読取個体情報と、車体識別情報と、部品識別情報との組み合わせがメイン管理装置21に送られてきたとする。この場合、その車体識別情報に対応する台車1は、部品8を載せた状態で製品メーカー工場の一時保管庫に向けて運ばれている。そこで、メイン管理装置21は、その台車1について、製品メーカー工場における第3読取装置13の設置位置を境にして互いに逆側に存在する一時保管庫とトラックヤードとのうち、一時保管庫に存在していると判定する。
【0029】
また、第4読取装置14に対応する読取個体情報と、車体識別情報との組み合わせがメイン管理装置21に送られてきたとする。この場合、その車体識別情報に対応する台車1は、空の状態で製品メーカー工場の中間通路に向けて運ばれている。そこで、メイン管理装置21は、その台車1について、製品メーカー工場における第4読取装置14の設置位置を境にして互いに逆側に存在する製品製造ラインと中間通路とのうち、中間通路に存在していると判定する。
【0030】
一方、第4読取装置14に対応する読取個体情報と、車体識別情報と、部品識別情報との組み合わせがメイン管理装置21に送られてきたとする。この場合、その車体識別情報に対応する台車1は、部品8を載せた状態で製品メーカー工場の部品製造ラインに向けて運ばれている。そこで、メイン管理装置21は、その台車1について、製品メーカー工場における第4読取装置14の設置位置を境にして互いに逆側に存在する製品製造ラインと中間通路とのうち、製品製造ラインに存在していると判定する。
【0031】
次に示す表1は、部品工場や製品メーカー工場における各領域と、略称との関係を示している。メイン管理装置21は、各領域を次の表1のような略称で把握するようになっている。
【表1】

【0032】
メイン管理装置21に対して車体識別情報が送られてきたときには、その車体識別情報に対応する台車1の位置が変化したことを意味している。以下、部品工場や製品メーカー工場において、メイン管理装置21が車体識別情報を受信する直前まで台車1の現在位置として認識していた領域を旧領域という。また、車体識別情報を受信した後に台車1の現在位置として認識する領域を新領域という。
【0033】
メイン管理装置21は、部品工場や製品メーカー工場で使用される複数の台車1についてそれぞれ、車体識別情報と各種の情報とを関連付けて記憶する台車管理データベースを関連付け情報記憶手段たるハードディスクに記憶している。そして、車体識別情報を受信すると、その車体識別情報に対応する台車1について、新領域の略称を台車管理データベースに追加する処理を実施する。このとき、車体識別情報と部品識別情報とのうち、車体識別情報だけを受信した場合には、台車1の状態を示す状態情報として、物品を載せていない状態であることを示す空状態情報を、新領域の略称に関連付けて台車管理データベースに入力する。一方、車体識別情報と部品識別情報との両方を受信した場合には、物品を載せた状態であることを示す積載状態情報を新領域の略称に関連付けて台車管理データベースに入力する。
【0034】
また、メイン管理装置21は、車体識別情報を受信したタイミングに基づいて、その車体識別情報に対応する台車1について、現時点で位置している領域である新領域における停滞時間の計時を開始する一方で、旧領域における停滞時間の計時を停止する。
【0035】
図2は、台車管理データベースの一例を表形式で示す模式図である。同図において、一番左の列に入力されているデータは、個々の台車1の車体識別情報である。2番目以降の列には、その車体識別情報に対応する台車1の旧領域に関するデータや、新領域に関するデータが入力されている。2列目以降のデータのうち、最も右側のデータが新領域に関するものであり、その他のデータが旧領域に関するものである。旧領域に関するデータや、新領域に関するデータは、第1文字列+ハイフン+第2文字列+ハイフン+第3文字列+ハイフン+第4文字列という書式で入力されている。第1文字列には、表1に示した略称が入力される。また、第2文字列には、空状態情報である「空」、あるいは積載状態情報である「載」が入力される。また、第3文字列には、停滞時間の計時結果が0.1時間(6分)の単位時間表記で入力される。また、第4文字列には、停滞時間の計時処理を開始した年月日及び時分秒が入力される。第4文字列は年月日を示す文字列だけでなく、時分秒を示す文字列も含むものであるが、図2においては、便宜上、時分秒を省略した6桁(西暦の下2桁+月の2桁表記+日の2桁表記)の数字だけを示している。
【0036】
図2の表において、例えば、1行目2列目に入力されている旧領域に関するデータは、車体識別情報=E−001の台車1について、2010年2月3日(実際には時分秒までが入力されている)に部品生産ラインでの停滞時間の計時処理を開始し、このときの状態は空の状態であり、最終的な停滞時間は2時間であったことを示している。なお、旧領域に関するデータの場合には停滞時間は確定値であるが、新領域に関するデータ(最も右側にあるデータ)の場合には停滞時間は計時中の値である。このため、メイン管理装置21は、全ての車体識別情報についてそれぞれ、新領域における停滞時間の入力値を6分毎に更新する。
【0037】
メイン管理装置21は、作業者によって状態別集計命令がなされると、状態別集計処理を実施する。この状態別集計処理は、全ての車体識別情報についての新領域に関するデータに基づいて、メーカー在庫「載」台車数と、メーカー在庫「空」台車数と自社在庫「載」台車数と、自社在庫「空」台車数と、納品移動中台車数と、返却中台車数とを集計して、その結果を例えば図3に示すようにディスプレイに表示する処理である。なお、メーカー在庫「載」台車数は、全ての台車1のうち、新領域の略称として、メ1(製品製造ライン)、又はメ2(一時保管庫)が入力されている台車1の総数である。また、メーカー在庫「空」台車数は、メ4(メーカー製品工場の中央通路)が入力されている台車1の総数である。また、自社在庫「載」台車数は、新領域の略称として、部1(部品生産ライン)、又は部2(部品保管庫)が入力されている台車1の総数である。また、自社在庫「空」台車数は、新領域の略称として、部4(部品工場の中央通路)が入力されている台車1の総数である。また、納品移動中台車数は、新領域の略称として、部3(搬出用トラックヤード)が入力されている台車1の総数である。また、返却中台車数は、新領域の略称として、メ3(製品メーカー工場のトラックヤード)が入力されている台車1の総数である。メイン管理装置21に対してこのような状態集計処理を実施させることで、部品工場内にある台車数と、製品メーカー工場内にある台車数と、両工場間を移動中又は移動準備中の台車数との比率を容易に把握することができる。
【0038】
また、メイン管理装置21は、作業者によって領域別集計命令がなされると、領域別集計処理を実施する。この領域別集計処理は、全ての車体識別情報についての新領域に関するデータに基づいて、各領域における台車数を集計して、その結果を例えば図4に示すようにディスプレイに表示する処理である。なお、この領域別集計処理では、図4に示すように、各領域を台車数の多い順にソートしてディスプレイに表示する。メイン管理装置21に対してこのような領域別集計処理を実施させることで、各領域についてそれぞれ台車1の停滞が過度に起こっていないか否かを容易に把握することができる。これにより、過度の停滞の発生を未然に防止することで、台車1の在庫数を過剰に増やすことなく、各領域での台車不足の発生を回避することができる。
【0039】
また、メイン管理装置21は、作業者により、車体識別情報の入力と履歴表示命令とがなされると、履歴表示処理を実施する。この履歴表示処理は、作業者によって入力された車体識別情報に対応する台車1について、旧領域に関するデータの全ての履歴と、新領域に関するデータとを、図5に示すように一覧形式でディスプレイに表示する処理である。メイン管理装置21に対してこのような履歴表示処理を実施させることで、個々の台車1についてそれぞれ移動履歴を詳細に把握することができる。
【0040】
これまで、台車1の位置を2つの施設(部品工場及び製品メーカー工場)でそれぞれ把握するように構成した車体位置管理システムの実施形態について説明してきたが、1つの施設内だけで台車1の位置を把握するようにしてもよい。
【0041】
以上、実施形態に係る車体位置管理システムにおいては、車体識別情報と、これに対応する台車1が位置している領域の情報である領域情報たる略称とを関連付けて関連付け情報記憶手段たるハードディスクに記憶させる処理を実施するように、車体位置把握手段たるメイン管理装置21を構成している。かかる構成では、個々の台車1についてそれぞれ、ハードディスクに記憶されている台車データベースに、旧領域の履歴を記憶させることができる。
【0042】
また、実施形態に係る車体位置管理システムにおいては、次のような処理を実施するように、メイン管理装置21を構成している。即ち、車体識別情報と。物品識別情報たる部品識別情報とのうち、車体識別情報だけを受信した場合には、その車体識別情報に対応する台車1の状態を示す状態情報として、物品を載せていない状態であることを示す空状態情報(「空」)を、領域情報たる略称に関連付けて台車管理データベースに入力する。一方、両方の識別情報が送られてきた場合には、部品を載せた状態であることを示す積載状態情報(「載」)を、略称に関連付けて台車管理データベースに入力する。かかる構成においては、個々の台車1についてそれぞれ、旧領域の履歴における状態情報を容易に把握することができる。
【0043】
また、実施形態に係る車体位置管理システムにおいては、車体識別情報を受信したタイミングに基づいて、その車体識別情報に対応する台車1について、新領域における停滞時間の計時を開始する処理を開始するように、メイン管理装置21を構成している。かかる構成では、各領域における台車1の停滞時間を計って記憶することで、過度の停滞が起こっていないか否かをユーザーに容易に把握してもらうことができる。
【0044】
また、実施形態に係る車体位置管理システムにおいては、車体識別情報を受信したことに基づいて、その車体識別情報に対応する台車1について、旧領域の略称及び停滞時間の履歴を車体識別情報に関連付けて台車管理データベースに入力する処理を実施するように、メイン管理装置21を構成している。かかる構成においては、個々の旧領域の履歴について、過度の停滞が起こっていないか否かをユーザーに容易に把握してもらうことができる。
【符号の説明】
【0045】
1:台車(物品搬送車体)
11:第1読取装置(読取手段)
12:第2読取装置(読取手段)
13:第3読取装置(読取手段)
14:第4読取装置(読取手段)
21:メイン管理装置(車体位置把握手段)
22:サブ管理装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開2010−18410号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を載せて搬送する複数の物品搬送車体にそれぞれ個別に搭載された車体識別情報記憶手段に記憶されている車体識別情報を、近距離無線通信により、物品搬送車体が使用される施設内における互いに異なる位置で読み取る複数の読取手段と、
それら複数の読取手段による読取結果に基づいて、前記施設内における物品搬送車体の位置を把握する車体位置把握手段とを備える車体位置管理システムにおいて、
近距離無線通信により、前記車体識別情報記憶手段に記憶されている前記車体識別情報を読み取ることに加えて、物品とともに物品搬送車体に載せられている物品識別情報記憶手段内の物品識別情報も読み取る処理を実施するように、複数の前記読取手段をそれぞれ構成するとともに、
前記読取手段によって読み取られた情報について、前記車体識別情報及び前記物品識別情報の両方であるのか、あるいは前記車体識別情報だけなのかの違いに基づいて、前記車体識別情報に対応する物品搬送車体について、前記車体識別情報の読み取りを行った前記読取手段の設置位置を境にして互いに逆側に存在する2つの領域のうち、何れの領域に位置しているのかを判定する判定処理を実施するように、前記車体位置把握手段を構成したことを特徴とする車体位置管理システム。
【請求項2】
請求項1の車体位置管理システムにおいて、
前記車体識別情報と、これに対応する物品搬送車体が位置している領域の情報である領域情報とを関連付けて関連付け情報記憶手段に記憶させる処理を実施するように、前記車体位置把握手段を構成したことを特徴とする車体位置管理システム。
【請求項3】
請求項2の車体位置管理システムにおいて、
前記車体識別情報と前記物品識別情報とのうち、前記車体識別情報だけを受信した場合には、その車体識別情報に対応する物品搬送車体の状態を示す状態情報として、物品を載せていない状態であることを示す空状態情報を前記領域情報に関連付けて前記関連付け情報記憶手段に記憶させる一方で、両方の識別情報を受信した場合には、物品を載せた状態であることを示す積載状態情報を前記領域情報に関連付けて前記関連付け情報記憶手段に記憶させる処理を実施するように、前記車体位置把握手段を構成したことを特徴とする車体位置管理システム。
【請求項4】
請求項2又は3の車体位置管理システムにおいて、
前記車体識別情報を受信したタイミングに基づいて、その車体識別情報に対応する物品搬送車体について、現時点で位置している領域における停滞時間の計時を開始する処理を実施するように、前記車体位置把握手段を構成したことを特徴とする車体位置管理システム。
【請求項5】
請求項4の車体位置管理システムにおいて、
前記車体識別情報を受信したことに基づいて、その車体識別情報に対応する物品搬送車体について、前記領域情報及び前記停滞時間の履歴を前記車体識別情報に関連付けて関連付け情報記憶手段に記憶させる処理を実施するように、前記車体位置把握手段を構成したことを特徴とする車体位置管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate