説明

車体搬送装置

【課題】搬送リフタの受座を専用の駆動装置を用いることなく自動的に移動する車体搬送装置を提供する。
【解決手段】車体を懸架してX軸方向に搬送する搬送ハンガ10のハンガアーム11、12と、搬送ハンガ10に懸架された車体を昇降して受け取る搬送リフタ20のリフトテーブル21と、このリフトテーブル21に対して車体を支持する受座の位置をX軸方向に調整する受座位置調整機構26とを備える車体搬送装置において、受座位置調整機構26は、受座とリフトテーブル21をX軸方向について相対変位可能に支持するレール31と、リフトテーブル21がZ軸方向に上昇するのに伴って相対変位するハンガアーム12に追従して受座をリフトテーブル21に対してX軸方向に移動するガイド27とを備え、受座をハンガアーム12に対応する位置に自動的に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の生産ライン等において、車体を懸架して搬送する搬送ハンガから昇降する搬送リフタに移載する車体搬送装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車生産過程における車体の搬送において、組立作業内容に応じてコンベア間で何回かの車体の移し替えを行う必要がある。
【0003】
特許文献1には、搬送ハンガに懸架した車体を昇降装置の搬送リフタで受けた後、この搬送リフタを下降させて車体を床コンベアに移載する昇降搬送装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、多種類の形式の車体に適合して受座の位置を調整可能とし、この調整を汎用性のあるロボットで行えるようにした搬送装置が開示されている。
【特許文献1】特開平11−268823号公報
【特許文献2】特開2004−43153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
受座の位置が調整される搬送ハンガから搬送リフタに車体を受け取る際、搬送リフタ側の受座の位置を調整する必要がある。
【0006】
しかしながら、搬送リフタ側の受座の位置を調整するロボットなどの駆動装置を設けると、従来の受座を固定した搬送装置に比べて、駆動装置に係わる構成設備や制御系設備の点数が増えるため、故障頻度が高くなる可能性がある。
【0007】
また、ロボットなどの駆動装置が搬送リフタ側の受座の位置を調整するのに時間がかかり、動作サイクルタイムが長くなって生産量が低下する可能性がある。
【0008】
さらに、生産車種が変更されるたびに車種検知の設定の追加または変更などを行う作業がその都度必要になり、この作業に手間がかかるという問題点があった。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、搬送リフタの受座を専用の駆動装置を用いることなく自動的に移動する車体搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、ハンガアームに車体を懸架して搬送する搬送ハンガと、昇降するリフトテーブル上に設けられる受座にこの搬送ハンガから車体を受け取る搬送リフタと、このリフトテーブルに対するこの受座の位置を調整する受座位置調整機構とを備える車体搬送装置において、受座位置調整機構は、リフトテーブルに対して受座を変位可能に支持するレールと、リフトテーブルが上昇するのに伴って相対変位するハンガアームに追従して受座をリフトテーブルに対して移動するガイドとを備え、受座をハンガアームに対応する位置に自動的に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、多種類の型式の車体に適合するように、ハンガアームの位置が調整されることに対応して、受座位置調整機構は、リフトテーブルが上昇するのに伴って相対変位するハンガアームに追従ガイドを介して受座の位置を自動的に調整する。
【0012】
こうして受座位置調整機構は、受座を専用の駆動装置を用いることなく自動的に移動するため、この駆動装置に係わる構成設備や制御系設備が増えて故障頻度が高まることを回避できる。
【0013】
また、受座の位置を調整するのに時間が余計にかかることがなく、生産量を維持することができる。
【0014】
さらに、生産車種が変更されるたびに車種検知の設定の追加または変更などの作業が必要なくなり、省力化がはかれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態として、図1〜図6に車体搬送装置の構成を示す。図1〜図6において、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が略水平前後方向に延び、Y軸が略水平横方向に延び、Z軸が略垂直方向に延びるものとし、車体搬送装置の構成について説明する。
【0016】
車体搬送装置は、車体1を懸架してX軸方向に搬送する搬送ハンガ10と、搬送ハンガ10に懸架された車体1を図示しない床コンベアに移載する搬送リフタ20とを備える。
【0017】
搬送ハンガ10は、図示しないレール上を走行してX軸方向に移動する搬送台15と、この搬送台15の左右に対で設けられる前後のハンガアーム11,12と、各ハンガアーム11,12に車体1を支持する前後のハンガ側受座13,14とを備え、車体1の下部を4点で支持する。
【0018】
搬送ハンガ10は、ハンガアーム11,12が搬送台15にヒンジ19を介してX軸まわりに回動可能に支持されている。車体1を搬送ハンガ10から搬送リフタ20に移載する際、搬送台15がX軸方向に移動するのに伴ってローラ18が図示しないレールに追従してハンガアーム11,12をY軸方向に開くように回動させる(図5参照)。
【0019】
多種類の型式の車体に適合させるために、搬送ハンガ10は、搬送台15に対する後方のハンガアーム12の位置をX軸方向に調整するハンガアーム位置調整機構16を備える。
【0020】
このハンガアーム位置調整機構16図示しないコントローラから送られる制御信号により駆動装置を介して後方のハンガアーム12を移動し、車体1に対応する位置に後方のハンガ側受座14を自動的に配置する。
【0021】
搬送リフタ20は、図示しない昇降装置によってZ軸方向に昇降するリフトテーブル21と、このリフトテーブル21に左右に対で設けられるテーブル側受座23,24とを備え、これらの受座23,24が車体1の下部を4点で支持する。
【0022】
搬送リフタ20は、後方の受座24の位置をX軸方向に調整する受座位置調整機構26を備える。
【0023】
受座位置調整機構26は、リフトテーブル21に対して受座24をX軸方向について移動可能に支持するレール31と、リフトテーブル21がZ軸方向に上昇するのに伴って相対変位するハンガアーム12に追従して受座24をリフトテーブル21に対してX軸方向に移動するガイド(カム部材)27とを備え、受座24をハンガアーム12に対応する位置に自動的に移動する。
【0024】
リフトテーブル21上に2本のレール31が突出して設けられ、各レール31はX軸方向に延びている。
【0025】
受座24とガイド27はそれぞれスライド台28上に設けられている。このスライド台28はリフトテーブル21上をレール31に沿って円滑に移動するように支持されている。
【0026】
ガイド27はスライド台28上に固定して設けられる。ガイド27はV字形に開いたプレート状部材によって形成され、上方に向けて傾斜する対の傾斜面27aと、各傾斜面27aの下端に連なる凹状の嵌合部27bとを有する。ガイド27が各傾斜面27aの一方をハンガアーム12の下部12aに摺接させながら上昇すると、嵌合部27bがハンガアーム12の下部12aに嵌合するようになっている。
【0027】
ガイド27はY軸方向について開放された形状を持ち、車体1を搬送ハンガ10からリフトテーブル21に移載した後、ハンガアーム12がY軸方向に開いてガイド27から外れるようになっている。
【0028】
受座位置調整機構26は、受座24に車体1が載った状態でリフトテーブル21に対して受座24を係止するロック機構40を備える。このロック機構40は受座24に載る車体1の荷重によってロック作動する。
【0029】
ロック機構40は、スライド台28からZ軸方向に延びるポスト42と、このポスト42に摺動可能に嵌合して受座24を支持する昇降部材43と、この昇降部材43を上方向に付勢するバネ(図示せず)と、昇降部材60に固定されスライド台28に当接する下降規制部材44と、同じく昇降部材60に固定されるピン41と、スライド台28に固定されこのピン41に係合するラック45とを備える。ピン41の先端部がラック45の谷部に差し込まれることにより、リフトテーブル21に対する受座24の移動が係止される。
【0030】
次に、車体搬送装置の動作について説明する。
【0031】
車体搬送装置は、搬送ハンガ10が車体1を懸架してX軸方向に搬送し、搬送ハンガ10の下方でリフトテーブル21が上昇し、図4に示すように、車体1を搬送ハンガ10から搬送リフタ20へと移載する。
【0032】
このとき、図1に白抜き矢印で示すように、搬送ハンガ10の下方でリフトテーブル21が上昇する過程で、受座位置調整機構26は、図1に黒矢印で示すように、ガイド27の傾斜面27aをハンガアーム12の下部12aに摺接させながら上昇する過程にて、スライド台28が受座24と共にX軸方向に移動し、やがて受座24が後方のハンガ側受座14に近接する所定位置に配置される。
【0033】
リフトテーブル21が上昇し、図2〜図4に示すように、ガイド27の嵌合部27bをハンガアーム12の下部12aに嵌合すると、受座24の上に車体1が載る。
【0034】
こうして、受座24に車体1が載るのに伴って、図6の(b)に示すように、ロック機構40が車体1の荷重を受けてロック作動し、リフトテーブル21に対して受座24を係止する。こうして受座24の上に車体1が載ったロック状態で、受座24の位置がX軸方向にズレることなく、車体1を所定位置に支持する。
【0035】
続いて、搬送ハンガ10が、図5に示すように、ヒンジ19を介して回動してY軸方向に開き、車体1から離れる。
【0036】
その後、リフトテーブル21を車体1を載せた状態で下降し、車体1を搬送リフタ20から図示しない床コンベアへと移載する。
【0037】
ロック機構40は受座24から車体1が離れるのに伴ってスライド台28に対して昇降部材60が上昇し、ピン41がラック45から外れ、図6の(a)に示すアンロック状態に戻る。
【0038】
以上のように車体搬送装置は動作し、次に作用及び効果について説明する。
【0039】
多種類の型式の車体1に適合するように、ハンガアーム位置調整機構16が搬送ハンガ10の受座14の位置を調整する。これに対応して、受座位置調整機構26は、リフトテーブル21に対する受座24の位置を自動的に調整することにより、車体1を搬送ハンガ10から搬送リフタ20へと円滑に移載することができる。
【0040】
受座位置調整機構26は、受座24とリフトテーブル21をX軸方向について相対変位可能に支持するレール31と、リフトテーブル21がZ軸方向に上昇するのに伴って相対変位するハンガアーム12に追従して受座24をリフトテーブル21に対してX軸方向に移動するガイド27とを備え、リフトテーブル21が搬送ハンガ10から車体1を受け取る際に、リフトテーブル21がZ軸方向に上昇するのに伴って相対変位するハンガアーム12に追従して受座24の位置を自動的に調整する。
【0041】
こうして受座位置調整機構26は、受座24を専用の駆動装置を用いることなく自動的に移動するため、この駆動装置に係わる構成設備や制御系設備が増えることなく、故障頻度が高まることを回避できる。
【0042】
また、受座24の位置を調整するのに時間が余計にかかることがなく、生産量を維持することができる。
【0043】
さらに、生産車種が変更されるたびに車種検知の設定の追加または変更などの作業を行う必要なく、省力化がはかれる。
【0044】
ロック機構40は受座24に車体1が載った状態でリフトテーブル21に対して受座24を係止し、受座24の位置がX軸方向にズレることなく、車体1を所定位置に支持する。
【0045】
ロック機構40は受座24に載る車体1の荷重によって作動し、専用の駆動装置を用いることなく作動するため、この駆動装置に係わる構成設備や制御系設備が増えることなく、故障頻度が高まることを回避できる。
【0046】
ガイド27はY軸方向について開放された形状を持ち、車体1を搬送ハンガ10から搬送リフタ20に移載した後、ハンガアーム12が搬送方向に延びるX軸まわりに回動してガイド27から外れる構成としたため、車体1を搬送ハンガ10から搬送リフタ20へと円滑に移載することができる。
【0047】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、車体搬送装置は自動車の生産ラインに限らず他の車両を搬送する設備にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態を示す車体搬送装置の斜視図。
【図2】同じく車体搬送装置の斜視図。
【図3】同じく車体搬送装置の側面図。
【図4】同じく車体搬送装置の正面図。
【図5】同じく車体搬送装置の正面図。
【図6】同じくロック機構等の側面図。
【符号の説明】
【0050】
1 車体
10 搬送ハンガ
11,12 ハンガアーム
20 搬送リフタ
21 リフトテーブル
23,24 受座
26 受座位置調整機構
27 ガイド
31 レール
40 ロック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンガアームに車体を懸架して搬送する搬送ハンガと、
昇降するリフトテーブル上に設けられる受座にこの搬送ハンガから車体を受け取る搬送リフタと、
このリフトテーブルに対するこの受座の位置を調整する受座位置調整機構とを備える車体搬送装置において、
前記受座位置調整機構は、
前記リフトテーブルに対して前記受座を変位可能に支持するレールと、
前記リフトテーブルが上昇するのに伴って相対変位する前記ハンガアームに追従して前記受座を前記リフトテーブルに対して移動するガイドとを備え、
前記受座を前記ハンガアームに対応する位置に自動的に移動することを特徴とする車体搬送装置。
【請求項2】
車体を前記搬送ハンガから前記搬送リフタに移載した後、前記ハンガアームが搬送方向に延びる軸まわりに回動して前記ガイドから外れることを特徴とする請求項1に記載の車体搬送装置。
【請求項3】
前記受座に車体が載った状態で前記リフトテーブルに対して前記受座を係止するロック機構を備え、
このロック機構は前記受座に載せられる車体の荷重によって作動することを特徴とする請求項1または2に記載の車体搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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