説明

車椅子用浴槽

【課題】車椅子を使用する人が、車椅子のままで入ることができ、かつ組立て易い浴槽を提供する。
【解決手段】底板58の周縁に側板を立設する浴槽において、四辺形の板体の四方の端縁部に、夫々上方に向かって立設し、その上縁で板体の中心方向に向かって略水平に屈曲した断面略鍵型の係止片61を有する底板を設け、各側板59又は60と底板58とは、底板58の各端縁部に設けた前記係止片61に、各側板59又は60の下端部から外方へ略水平に突出する断面鍵型の突片を嵌め込んで接合させて各側板59または60を立設し、かつ隣接する側板59又は60同士の接合は、一方に係止具及び他方にその被係止具を設けてこれらを着脱自在に係止する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、構造もそれ程複雑ではなく、車椅子に乗ったままで手軽に入浴出来る浴槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国においては、昨今、急速に高齢化が進んでおり、病気や怪我などで体が不自由な人の他にも車椅子を使用する人の数が増加している。最近では、公共の建物や電車の駅などでもバリアフリー化が進み、プラットホーム等に直結したエレベータの設置なども盛んに行われている。また、車椅子を使用する人がいる家庭では、住居のバリアフリー化を進め、段差の無い、車椅子を使用する人にとって都合のよい住宅環境の整備が行われている。
【0003】
この様に、各家庭や公共の建物等において、バリアフリー化が進められているが、車椅子に乗ったままで入れる浴槽というのは、実際、あまり見られない。これは、入浴というものが、プライベートな事柄であって入浴する時間や回数というのも人によって異なり、また、入浴時間も長時間必要というわけではなく、一日の時間から見れば、僅かであって、入浴自体がさほど重要視されていないということに基づくものと思われる。
【0004】
その一方で、入浴は単にプライベートな事柄ではなく、まして、病人や怪我人、また高齢者にとって、公衆衛生上も重要な事柄であり、怪我人等が何日も入浴しないでいると不衛生になり、却って、怪我を悪化させたり、悪化させないまでも怪我の回復を遅らせるなどの結果を招くことがある。また、高齢者や怪我人等が入浴したいと思っても、自分一人で入浴出来ない時には、どうしても入浴の機会を逸してしまい、その結果、何日も入浴しないという不衛生な状態を招来していた。
【0005】
そんな中、介護者が必要ないという浴槽も開発されている。例えば、浴槽の一側の側板をエアーシリンダーによって開閉自在に設け、この一側にシール材とロック機構を設け、さらに、この側板及び底板の内側面に車椅子の誘導溝を設けたというものである。
【0006】
【特許文献1】特開2001−245948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この浴槽は、単に車椅子のままで入れるということのみを想定したもので、実際に浴槽内にどの様に湯を溜めて使用するか、また、排水はどうするのかなど具体的なことは何等記載されておらず、不明である。
【0008】
そこで、この発明はこれらの点に鑑みて為されたもので、車椅子を使用する人が、車椅子のままで入ることができ、かつ組立て易い浴槽を提供して上記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、底板の周縁に側板を立設する浴槽において、四辺形の板体の四方の端縁部に、夫々上方に向かって立設し、その上縁で板体の中心方向に向かって略水平に屈曲した断面略鍵型の係止片を有する底板を設け、各側板と底板とは、底板の各端縁部に設けた前記係止片に、各側板の下端部から外方へ略水平に突出する断面鍵型の突片を嵌め込んで接合させて各側板を立設し、かつ隣接する側板同士の接合は、一方に係止具及び他方にその被係止具を設けてこれらを着脱自在に係止する構成とし、また側板同士の接合面及び側板と底板との接合面には夫々パッキン材を設けた、組み立て自在な車椅子用浴槽とした。
【0010】
請求項2の発明は、底板の周縁に側板を立設する浴槽において、四辺形の板体の四方の端縁部に、夫々上方に向かって立設し、その上縁で板体の中心方向に向かって略水平に屈曲し、さらにその内縁で下方へ垂下した断面略鍵型の係止片を有する底板を設け、各側板と底板とは、底板の各端縁部に設けた前記各係止片に、各側板の下端縁から略水平外方へ突出し、かつその外縁から上方へ突出させた断面鍵型の突片を嵌め込んで接合させて各側板を立設し、かつ隣接する側板同士の接合は、一方に係止具及び他方にその被係止具を設けてこれらを着脱自在に係止する構成とし、また側板同士の接合面及び側板と底板との接合面には夫々パッキン材を設けた、組み立て自在な車椅子用浴槽とした。
【0011】
請求項3の発明は、上記底板の少なくとも一方の端縁の係止片が間隔をあけて複数箇所切欠されている、請求項1又は2の組み立て自在な車椅子用浴槽とした。
【0012】
請求項4の発明は、底板の周縁に側板を有する浴槽において、四方の側板のうちの少なくとも一方の側板が着脱自在な構成となっており、当該着脱自在な側板は、下端から外方へ略水平に突出する断面鍵型の突片を有しており、底板の開口した端縁部には、底板の端縁が上方へ屈曲しその上縁から底板の中心方向へ向かって略水平に屈曲した断面鍵型の係止片を有しており、前記側板と底板とは、側板の下端から突出している突片と底板の端縁部に設けられた係止片を嵌め合わせて接合させて側板を立設し、前記着脱自在な側板と隣接する側板との接合は、一方に係止具及び他方にその被係止具を設けてこれらを着脱自在に係止する構成とし、また着脱自在な側板と隣接する側板との接合面及び側板と底板との接合面には夫々パッキン材を設けた、組み立て自在な車椅子用浴槽とした。
【0013】
請求項5の発明は、底板の周縁に側板を有する浴槽において、四方の側板のうちの少なくとも一方の側板が着脱自在な構成となっており、当該着脱自在な側版は、下端から外方へ略水平に突出し、さらにその外縁から上方へ突出させた断面鍵型の突片を有しており、底板の開口した端縁部には、底板の端縁が上方へ屈曲し、その上縁から底板の中心方向に向かって略水平に屈曲しさらにその内縁で下方に垂下した断面略鍵型の係止片を有しており、前記側板と底板とは、側板の下端から突出している突片と底板の端縁部に設けられた係止片を嵌め合わせて接合させて側板を立設し、前記着脱自在な側板と隣接する側板との接合は、一方に係止具及び他方にその被係止具を設けてこれらを着脱自在に係止する構成とし、また着脱自在な側板と隣接する側板との接合面及び側板と底板との接合面には夫々パッキン材を設けた、組み立て自在な車椅子用浴槽とした。
【0014】
請求項6の発明は、上記底板の開口した端縁の係止片が間隔をあけて複数箇所切欠されている、請求項4又は5の組み立て自在な車椅子用浴槽とした。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至6の各発明によれば、四方の側板又は少なくとも1つの側板が底板に対して着脱自在の構成になっているので、組立てが容易で、車椅子を底板上に載せた後、四方又は少なくとも1つの側板を底板上に立設することにより、車椅子に乗ったままで入浴することが出来る。それ故、車椅子を使用する人々が不衛生な状態を招くことも無く、車椅子を使用する人々が清潔で健康な生活を送ることに大きく貢献するものである。
【0016】
また、これらの各発明によれば、パッキン、係止金具及び係止具を用いることで、お湯がこぼれず、密閉性の高い組立て式の浴槽を提供できる。
【0017】
またこれらの各発明によれば、ステンレス板等で一体に成型でき加工しやすく便宜である。更に請求項3及び6の発明によれば、底板の一側又は開口部縁の係止片に切欠箇所があるため、これらの切欠箇所に車椅子の車輪を通せば、車椅子を容易に底板上に載せることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
底板の周縁に側板を立設する浴槽において、四辺形の板体の四方の端縁部に、夫々上方に向かって立設し、その上縁で板体の中心方向に向かって略水平に屈曲した断面略鍵型の係止片を有する底板を設け、各側板と底板とは、底板の各端縁部に設けた前記係止片に、各側板の下端部から外方へ略水平に突出する断面鍵型の突片を嵌め込んで接合させて各側板を立設し、かつ隣接する側板同士の接合は、一方に係止具及び他方にその被係止具を設けてこれらを着脱自在に係止する構成としたので、組み立てが容易な車椅子用浴槽になる。
【0019】
以下、この発明の実施例等を図に基づいて説明する。
【0020】
図1は、この発明の変形例1の車椅子用浴槽A(以下、単に「浴槽A」と言う。)を示す。この発明の浴槽Aは、底板1と二枚の側板2と二枚の側板3から主として構成され(但し図1では説明のため側板2と側板3は夫々一枚ずつしか表示していない。)、底板1の上に二枚の側板2及び二枚の側板3を立設して浴槽を形成する。底板1の上面は中央部に扁平な直方体の板を重ねた構成になっており、底板1の上面は中央の部分が四方の端縁部4aより一段高い構成となっている。この端縁上に略垂直に各側板2及び各側板3をそれぞれ立設する。
【0021】
具体的には、側板2及び側板3の下端にそれぞれ設けられた差込突片5を、底板1の端縁部4aの段部4b脇の平面に穿った切り溝6に嵌め込む。この場合、図1に示すように底板1の端縁部4aの各段部4b側面からそれぞれ略半球状に弾性部材7が複数突出しているため、これらの弾性部材7に、当接する側板2あるいは側板3の下端側面を押し付けて、弾性部材7を圧縮させながら、側板2及び側板3の下端に設けられた各差込突片5を底板1の各切り溝6に嵌め込む。
【0022】
このように弾性部材7に側板2、側板3を押し付けて底板1に側板2等を立設する構成とすることで、側板2及び側板3が底板1に立設されている間は、底板1の端縁部4aの段部4b側面と各側板の下部には常に弾性部材7の元に戻ろうとする復元力が加わっていることとなる。そのため底板1と側板との密着性が高くなり、立設した側板2及び側板3は、底板1から誤って上に抜けてしまうことがなくなる。但し、弾性部材7を突出させすぎると、底板1と側板2の接合面に隙間ができてしまうため、弾性部材7の硬さにもよるが、突出する長さは数センチ程度が望ましい。
【0023】
更に図1に示したように、側板2及び側板3を底板1に立設する際、側板下端の接合面の弾性部材7が当接する箇所に弾性部材7の大きさよりやや小さい大きさの深さ数センチ程度のくぼみ8を設けておけば、弾性部材7がそのくぼみ8に圧縮されて嵌り込み、より一層接合がずれにくくなる。
【0024】
一方、隣接する側板2と側板3の結合は図2に示すように、隣接する側板2お呼び側板3をバックル金具9によって接合する構成となっている。この場合においても図1に示すように側板2の接合面の複数箇所から略半球状に弾性部材7が突出しているため、バックル金具9によって側板同士を接合する場合には、側板3を押し付けて弾性部材7を対向する側板3のくぼみ8に圧入させることになる。従って接合した側板2と側板3には、立設している間は常に弾性部材7の元の大きさに戻ろうとする復元力がかかっていることになり、側板同士の密着性が増し、接合が外れたりすることがなくなる。なお、図2では側板2及び側板3の接合にバックル金具9を1つ用いたが、図3に示すようにバックル金具9を2つ用いてもよいし、接合状態を安定させるためそれ以上の数のバックル金具9を用いてもよい。
【0025】
バックル金具9は、通常トランク等の接合金具として用いられているものである。側板2と側板3を接合する場合、側板3に付されている台座9fに一端を枢着されているハンドル9aを起こして当該ハンドル9aの長孔9bに一端を係止したフック9cを、側板2の被係止金具9dの折曲縁9eに引っ掛けてハンドル9aを倒すと、フック9cが被係止金具9dを引っ張り、側板2と側板3が接合される。このバックル金具9は側板2及び側板3に取り付けるだけの簡単な構成であり、操作も容易なものである。
【0026】
さらにバックル金具による側板同士の接合の構成は上記の構成に限らず、例えば図18に示すように、側板3に被係止金具39を取り付け、係止金具40を側板2に取り付ける構成にしてもよい。また被係止金具39の折曲縁41とフック45の先端との距離を伸縮させることができれば、バックル金具の側板2と側板3を引き付ける力を調整することができ、弾性部材7や後述するパッキン材10に最適な力を与えることができる。そこで図18に示すように係止金具40の台座40aに一端を枢着したハンドル44の長孔44aに一端を係止したフックを2つに分け、一方のフック片42の先端の軸にナット部43を設け、他方のフック片45の軸の外周にネジを切ってボルト部とし、これらのフック片42のナット部43にフック片45の軸のボルト部を螺着しておけば、フック片45を回転させればフック片45の先端の位置が変わり、バックル金具の側板2と側板3を引き付ける力を調整することができる。
【0027】
また、図18で示した構成において、図19で示すように被係止金具39の中間に蝶番46を設けて、被係止金具39の自由端を折曲自在とし、側板2の側で折曲縁41にフック片45を引っ掛けるような構成にしてもよい。このような構成にすれば、被係止金具39を側板3の側面で畳むことができるため、浴槽の組み立てや分解中に他の部材とぶつかって折曲縁41が曲がってしまうことを避けることができる。
【0028】
また浴槽Aの底板1と各側板2及び側板3との接合箇所の防水は接合面に夫々パッキン材10を沿わせることにより行う。図1に示すようにパッキン材10が側板2、側板3及び底板1の各接合面に沿って設けられている。図1ではパッキン材10は、底板1、側板2及び側板3に設けられた切れ込みに、各接合面からわずかに突出するよう嵌め込まれているが、パッキン材10を側板2、側板3及び底板1の各接合面に沿わせる方法はこの構成に限定されるものではなく、他の構成を用いてもよい。またパッキン材10を沿わせる構成は、図1、図2及び図3に示された構成のように、浴槽A内に満たされたお湯が漏れないように、側板2と側板3を接合した際、あるいは側板2及び側板3を底板1に接合した際に各接合面でパッキン材10が2列になる構成がのぞましい。
【0029】
この浴槽Aの組み立て手順は、まず、底板1を自宅の浴室の洗い場などに置き、入浴者は車椅子に乗ったまま、底板1の中央部の端縁部4aより一段高くなった箇所に載せる。それから側板2及び側板3の下端にそれぞれ設けられた各差込突片5を、底板1の四方の端縁部4aの段部4b脇の平面に穿った各切り溝6に嵌め込んで、各二枚の側板2及び側板3を底板1に立設する。そして隣接する側板2と側板3をバックル金具9を締めて接合する。その後浴槽Aにお湯を満たす。入浴者が浴槽から出る場合には、浴槽の側壁を構成する4枚の側板のうちいずれか1枚を外せば浴槽A内のお湯が流れ出て、排水することができ、側板を外した箇所から車椅子に乗ったままで外に出ることができる。
【0030】
なお、いずれか1枚の側板を外して排水するのは、側板に水圧がかかっている状態で行わなければならないため、介護者の労力が必要となるが、側板2、側板3あるいは、底板1のいずれかの箇所に浴槽A内のお湯を排水するための孔を穿っておき、その孔にゴム製の栓をする構成にしておけば、側板を取り外さなくても浴槽Aのお湯を排水することができて便宜である。そして底板あるいは側板のいずれかの箇所に浴槽内のお湯を排水するための孔を穿っておき、その孔にゴム製の栓をする、この構成は下記の浴槽B〜Eにおいても採用することができる。
【0031】
次に、変形例2を図4に基づいて説明する。
この変形例2の浴槽Bは、浴槽の側壁を構成する4枚の側板のうち1枚の側板12だけが着脱式の構成になっており、それ以外の側板13は底板11と予め一体に固定されている。側板12を底板11に立設する場合には、側板12の下端に設けられた複数の差込突片15を、底板11の端縁部14aの段部14b脇の平面に設けた複数の切り溝16にはめ込むことにより行う。また隣接する他の側板13と側板12の接合は上記実施と同様なバックル金具(図示省略)によって行う。
【0032】
なお、浴槽Aの構成と同様に、本例においても、側板13の側板12との2つの接合面から略半球状の弾性部材17が複数突出しており、また側板12の下部側面と当接する底板11の端縁部14aの段部14bの側面から略半球状の弾性部材17が突出しているため、差込突片15を底板11の切り溝16にはめ込む場合には、側板12を側板13と底板11の接合面に押し付けて、弾性部材17を圧縮させる必要がある。また側板12と底板11及び側板13の接合箇所の防水については夫々パッキン材18を接合面に沿わせることにより行う。さらに上記例1と同様に側板12の接合面の上記弾性部材17が対向する箇所にくぼみ(図示省略)を設けて、これらの弾性部材17を嵌合させる構成にしてもよい。
【0033】
浴槽Bは、浴槽Aと異なり側板12を底板11に立設し、隣接する側板13とバックル金具で接合するだけで浴槽の組み立てが完了するため、浴槽の組み立てを行う介護者の労力を軽減することができ便宜である。また、浴槽Bは、浴槽Aのように、使用する場合には、自宅等の通常の浴槽がすでに設置されている浴室に持ち込んで使用することも可能であるが、浴槽Bは車椅子の搭乗者以外の者が通常の浴槽として用いても何ら問題なく使用できるものであるため、通常の浴槽として浴室に据え付けておいてもよい。そして車椅子で浴槽Bに入るときだけ側板12をいったん外して使用すればよい。
【0034】
また、上記の浴槽Bの側板12の下端に設けた差込突片15として、図13に示すような、かすがい35を側板12の下端から突出するように打ち込んだ構成にしてもよい。この場合には、底板11の端縁部14aに穿った切り溝16内に、図15及び図16に示すような凸部36を設ける。そして底板11に側板12を立設する際には、図14に示すように、かすがい35を底板11の切り溝16内に差込み、凸部36に引っ掛ければ側板12は真上方向には抜けなくなる。
【0035】
また、差込突片15として図17に示すように、市販されているネジ先37を取り付け、底板11の端縁部14aに穿った切り溝16内に、当該ネジ先37の外径よりやや大きい径のナット38をはめ込む構成としてもよい。このような構成にすれば、一旦側板12を底板11に立設すると、側板12が少しでも斜めになっている状態では、ネジ先37の側部の凹凸がナット38の側部の凹凸に引っ掛かり、例えば浴槽Bにお湯が入っている状態で誤って抜けてしまうことはなくなる。一方、ある程度の力で真上に側板12を真上に持上げれば、ネジ先37の凹凸とナット38の凹凸がこすれながらも抜くことができる。このように差込突片12に市販の部材を用いる構成にすれば、浴槽Bの側板や底板の加工が非常に容易になる。上記では浴槽Bの場合で説明したが、浴槽Aの場合においても同様に差込突片5としてかすがい35及びネジ先36を用いることや、切り溝6にナット37を嵌め込む構成を採用することは可能である。
【0036】
次に、変形例3を図5に基づいて説明する。
この変形例3の浴槽Cは、側板20だけが着脱式の構成になっており、浴槽Cのそれ以外の部分は予め一体に固定されている。従って浴槽Cを組立てる場合には、側板20を取り付ければ組立ては完了する。具体的には側板20の下端に設けられた蝶番の軸部材22aを底板19の裏面に設けられた蝶番の管部材22bに横から差込み、側板20の内側面が接合する2枚の側板21及び底板19に当接するように回動させる。そして側板20と二枚の側板21を接合させるため、側板20及び側板21の適宜の箇所に設けられているバックル金具(図示省略)を締める。このバックル金具は上記変形例と同様のものである。バックル金具は浴槽の外側だけでなく、内側に取り付ける構成としてもよい。バックル金具を浴槽の内側に取り付ければ、車椅子の搭乗者自身がバックル金具を締めることができ便宜である。なお、浴槽Cは、側板20が蝶番22(軸部材22aと管部材22bから成る)によって自在に回動できるよう、図5で示すように浴槽Cに脚などを設けて、底板19と浴室の床との間に間隔を設ける必要がある。また側板20と底板19及び側板21の接合箇所の防水についてはパッキン材23を接合面に沿わせることにより行う。
【0037】
次に、変形例4を図6に基づいて説明する。
この変形例4の浴槽Dは、底板24と二枚の側板25及び二枚の側板26によって主として構成される。底板24の裏面の四方の端縁部の適宜の箇所には、略半分が枠体形状のフックとなっている板状の留め具27を、当該留め具27のフック部分だけが底板24の端縁部から外側に突出するように、底板24の裏面に平行に取り付けられている。更に底板24の裏面には、底板24と浴室の床面との間に間隔ができるように、ゴム片29が適宜の箇所に貼り付けられている(図7及び図8参照)。また側板25及び側板26の下部には、縦の断面が略Jの字型の引っ掛け金具28が、先端の引っ掛け部が各側板の外側方向に向くように取り付けられている。
【0038】
そして浴槽Dを組立てる場合には、図7に示すように側板25の引っ掛け金具28を底板24の留め具27のフック部分に斜めにはめ込む。その状態で側板25を真っ直ぐに立てる。そうすると、図8に示すように引っ掛け金具28の引っ掛け部が留め具28のフック部分にひっかかり、上に抜けなくなる。ここでは、側板25の場合で説明したが、側板26の場合でも同じ手順で組み立てる。浴槽Dの側壁を構成する4枚の側板を組立てる順番は、どの側板から組立ててもかまわない。
【0039】
このままの状態では、側板25及び側板26は、底板24に固定されているわけではないため、隣接する側板25と側板26を上記実施例と同様なバックル金具(図示省略)でそれぞれ接合して、側板25と側板26の接合及び側板と底板24の接合状態を安定させる。より安定させるために、図3で示したように複数のバックル金具を用いて側板25と側板26を接合してもよい。
【0040】
次に、浴槽Dの防水方法を、図9及び図10を用いて説明する。まず側板同士の接合であるが、側板26の、側板25との2つの接合面にそれぞれパッキン材30を当該接合面から数センチ程度突出するように沿わせる。このような構成にすると側板25と側板26をバックル金具31を締めて接合する場合、パッキン材30の突出している部分を圧縮させることになるため、接合箇所に隙間ができることはなく、防水性が高くなる。
【0041】
次に、側板同士の別の接合方法を、図11及び図12を用いて説明する。側板26の浴槽Dの内側面となる面の両側端に沿ってL型パッキン材32を取り付ける。このL型パッキン材32の、側板25と側板26を接合した場合に側板25と当接する部分の一部には、永久磁石33がはめ込まれている。一方、側板25の、側板26のL型パッキン材32が当接する箇所には例えば金属等の永久磁石33が吸い付く吸磁性体34がはめ込まれている。このような構成にすると、永久磁石33の磁性によって、L型パッキン材32が側板25に吸いつき、接合箇所の隙間を埋めるため、防水性が高くなる。またこのL型パッキン材32は、浴槽Dにお湯を入れると、お湯の水圧によって、パッキン材32は側板25及び側板26に押し付けられ、より強力に密着する。
【0042】
更に、側板25及び側板26と底板24との接合面の防水方法については、上記した側板同士の接合方法のいずれを採用する場合であっても、浴槽Dの側板25及び側板26と、底板24とが接合している底板24の四辺をアングル材状のパッキン材(図示していない)を設けて密閉する。さらにアングル材状のパッキン材の両側の側片の断面を刃のように先端の尖った形状にすれば、水圧で側板25等により強力に密着する。
【0043】
なお、浴槽Dの側板25、側板26はそれぞれ下端から複数の引っ掛け金具28が突出しているため、浴槽Dを分解して壁に立てかけておく場合等、床面に引っ掛け金具28が直接接触して損傷してしまうおそれがある。そこで引っ掛け金具28が傷つかないように、側板の下端から引っ掛け金具よりも長い棒状等のガイド片を突出させ、底板24には、当該ガイド片が嵌る孔を適宜設けておけば、側板25及び側板26を底板24に立設する際の位置決めが容易になる。
【0044】
次に変形例5を図20及び図21を用いて説明する。
この変形例5の浴槽Eは、側板47だけが可動式の構成になっており、浴槽Eのそれ以外の部分は予め一体に固定されている。側板47の一方の側部上端は当該部分が支点となるよう回動自在に軸48によって、隣接する浴槽Eの側壁端面に軸支されている。また側47の他方の側部は、隣接する側板とバックル金具を用いて接続する(図示省略)。側板47の他方の側部付近の外面にはフック49が設けられており、このフック49にロープ50の一端が結びつけられている。ロープ50の他端は浴室の天井等に設置された滑車51を通して、台52の上に設置された巻取り機53に接続されている。側板47の下端には差し込み突片54が設けられており、浴槽Eの底板55の端縁部の段部脇の平面に設けた切り溝(図示省略)にはめ込み自在となっている。また側板と底板55及び隣接する側板の接合箇所の防水についてはパッキン材56をこれらの接合面に沿わせることにより行う。
【0045】
浴槽Eの使用方法について説明する。図20のように底板55に側板47が立設されている状態から、巻き取り機53によってロープ50を巻き取ると、図21のように側板47のフック49が設けられている側が軸48を支点として持ち上がる。側板47が跳ね上がった状態で、車椅子の搭乗者は車椅子ごと浴槽E内に入る。その後、浴槽Eの中から巻き取り機53を操作し、ロープ50を繰り出せば、側板47は回動し、図20に示すように側板47は底板55に立設される。その際側板47の下端の差込突片54が底板55の切り溝に嵌る。なお巻き取り機53がラチェットを備えているものであれば、巻き取り機53を止めた位置でロープ50が止まり、ロープ50が誤って逆行したりせず、より望ましい。
【0046】
浴槽Eの構成によれば、車椅子の搭乗者が介助者の手を借りずに一人で、入浴することが可能となる。また本実施例では巻き取り機53を用いて、ロープ50の操作を行ったが、もっと簡便に、ロープ50を搭乗者自らが手で引っぱったり、緩めたりして操作し、ロープ50を特定の長さで固定する場合には、ロープ50の一端を浴槽Eの適宜の箇所に結び付ける構成としてもよい。
【0047】
更に本変形例においては側板47が跳ね上がる構成としたが、図22に示すように蝶番57を用いて、側板47が扉のように開く構成にしてもよい。その場合図示は省略したが、側板47の自由端と浴槽Eの隣接する側板端部とを上記例と同様のバックル金具を用いて固定する。
【実施例1】
【0048】
以下、この発明の実施例1を図23〜28に基づいて説明する。
図23は、この発明の実施例1の車椅子用浴槽F(以下、単に「浴槽F」と言う。)を示す。この発明の浴槽Fは、底板58と二枚の一対の側板59と二枚の他対の側板60から主として構成され、底板58の上に二枚の一対の側板59及び二枚の他対の側板60を立設して浴槽を形成する。図24に示す通り、底板58の上面の四方の端縁部には、各辺に沿って、夫々上方へ向かって突出し、その上縁から底板の中心方向に向かって水平に屈曲させさらにその内縁で下方へ垂下させた断面鍵型の係止片61が4つ設けられている。また底板58の上面の、係止片61の内側垂下部の下方には、4つの係止片61の垂下部に沿ってパッキン材62が設けられている。つまり4つの係止片61の垂下部のほぼ真下の箇所に沿ってパッキン材62が設けられている。なお図24に示した構成においては、底板58の四辺にそれぞれ1つの係止片61が設けられている。この構成の場合には、搭乗者の乗った車椅子を底板58の上面に載せる際に、係止片61を乗り越える必要がある。そこで図25に示すように、底板58の1辺に夫々設ける係止片61に複数の切り欠き部を設け、車椅子の車輪が通り抜けられるような構成にしてもよい。
【0049】
底板58に立設する一方の側板59及び他方の側板60は、図23に示すように底板58の上面の端縁部に側板59同士、側板60同士が対向するように立設される。そして側板59及び側板60はいずれも四辺形の枠体59a、60aの一方に背板59b、60bが貼り付けられ、中央部には水平に補強材59c、60cが嵌め込まれた構成になっており、この側板の下端となる枠体の一辺外縁には、図26に示すように横長の突片63が立設されている。これにより側板59又は60の下端は枠体59a、又は60aが水平に外側に延び、その外縁から上方へ屈曲した断面鍵型の突片を形成している。また、図26に示す通り、側板60の両側端となる枠体60aの二辺には、辺の一面を覆うようにパッキン材64が設けられている。なお、側板59にはこのパッキン材64は貼られていない。
【0050】
次に浴槽Fの組み立て方法について説明する。底板58の上面の各端縁部に夫々側板59を対向するように立てる。この際、図27に示すように側板59の突片63が底板58の断面鍵型の係止片61の屈曲部に引っ掛かるようにして側板59を立てる。それから2枚の側板60を同様に対向するように立てる。隣接する側版59と側板60との接合は図28に示すようにバックル金具65を用いて接合する。
【0051】
このバックル金具65は引っ掛け具とバックルの付いた保持具65aとフック状の被係止具65bとから成り、例えば上記係止具65aを側板60の補強材60cの端縁に、被係止具65bを側板59の補強材59cの端縁に固定し、係止具65aのバックルを起こして引っ掛け具を被係止具65bに引っ掛け、バックルを元に戻すことにより係止される。隣接する側板59と側板60との接合部にはパッキン材64が設けられているが、バックル金具で接合することで、両側板をある程度の力で押圧しながら接合することができ、浴槽Fの防水性が高まる。また上記係止具65aの引っ掛け具は長さ調整可能である。
【0052】
また、図23に示す通り、対向して立設される2枚の側板59の内側面の上方の、側板60との接合面に直近の箇所から夫々、ピン75を突出させる構成にすれば、側板60が夫々浴槽Fの内側方向に倒れることを防止でき便宜である。
【実施例2】
【0053】
以下、この発明の実施例2を図29〜37を用いて説明する。
図29〜31は、この発明の実施例2の車椅子用浴槽G(以下、単に「浴槽G」と言う。)を示す。この発明の浴槽Gは、ステンレスやアルミ等の1枚の板に適宜切り込みを入れ、内側や外側に折り曲げて、図29〜31に示すように四方の側板のうち一方が開口している構成とする。そして、開口している側の底板72の端縁部には、端縁部から浴槽Gの外側に向かって水平に突出させ、その外縁で上方へ屈曲させ、またその上縁から底板72の中心に向けて水平に突出させ、さらにその内縁から下方へ垂下させた断面鍵型の係止片68が設けられている(図31では、係止片68は省略されている)。なお係止片68は浴槽Gをステンレス板等で一体成形する際に、一緒に成形しても良いし、後から浴槽Gに溶接する構成にしてもよい。
【0054】
また係止片68は、本実施例の上述の説明では底板72の外側へ一旦突出させ、そこで上方へ屈曲させたが、底板72の端縁部から直接上方に向かって立設し、その上縁から底板72の中心に向けて水平に突出させ、さらにその内縁から下方へ垂下させた構成にしてもよい。但しこの場合には、後述するパッキン材70の貼りしろ71の設ける位置を、浴槽Gを構成するステンレス板等をいったん折り返した後に浴槽Gの内側に略90度に折り曲げる等して、後方にずらす必要がある。
【0055】
また、上記車椅子用浴槽Gの開口一端に取り付ける図32に示した着脱自在な側版66も浴槽Gと同様にステンレスやアルミ等の1枚の板により一体成形する。なお、図32に示されている側版66は中央部に水平に補強材67が設けられているものである。またこの側板66の下端は外側へ水平に屈曲させ、その外縁で上方へ突出させた断面鍵型の突片74を設けている。
【0056】
次に浴槽Gと側板66との接合面の防水方法について説明する。まず浴槽Gの開口端の両側の2つの側板69と側板66との接合については、側板66と当接する浴槽Gの2枚の側板69の接合部で、図29に示すように、浴槽Gを構成するステンレス板等を浴槽Gの内側に略90度に折り曲げ、パッキン材70の貼りしろ71をつくり、この貼りしろ71に沿って垂直にパッキン材70を貼り付ける。更にステンレス板等の余った部分は折り返して浴槽Gの内側に溶接する。また、浴槽Gの底板72と側板66の接合については、図29及び図31に示すように、底板9の開口部側の端縁部に貼りしろ73を立設し、貼りしろ73に沿って水平にパッキン材70を貼る。貼りしろ73には複数の切り欠き部を設け、また上記係止片68の幅を合わせて、車椅子の車輪が通り抜けられるようにする。
【0057】
次に浴槽Gの組み立て方法について説明する。側板66を浴槽Gの底板72の開口部側に立設する際には、浴槽Gの開口部側の左右いずれか真横から側板66をスライドさせ、側板66の下端の突片74が浴槽Gの係止片68に嵌るようにする。そして浴槽Gの2枚の側板69と側板66との接合は、上記実施例6と同様なバックル金具を用いて行う(図示省略)。浴槽Gの2枚の側板69と側板66との接合部には上述したようにパッキン材70が設けられているが、バックル金具で接合することで、両側板をある程度の力で押圧しながら接合することができ、浴槽Gの防水性が高まる。
【0058】
本実施例においては。浴槽Gを構成するステンレス板等を浴槽Gの内側に略90度折り曲げ、パッキン材70の貼りしろ71をつくったが、図33及び図34に示すように浴槽Gを構成するステンレス板等を浴槽Gの外側に略90度折り曲げ、パッキン材70の貼りしろ71をつくってもよい。このような構成にすれば、衛生上浴槽G内に雑菌や汚れがたまる部分が少なくなるため望ましい。
【0059】
また図29に示した本実施例においては、上述したように開口している側の底板72の端縁部には、端縁部から浴槽Gの外側に向かって水平に突出させ、その外縁で上方へ屈曲させ、またその上縁から底板72の中心に向けて水平に突出させ、さらにその内縁から下方へ垂下させた断面鍵型の係止片68が設けられた構成になっているが、図33に示すように、係止片68を底板72の端縁部から浴槽Gの外側に向かって水平に突出させる部分を端縁部の全面から突出させる構成とし、水平に突出した部分の一部をその外縁で上方に屈曲させて突出させる構成にしてもよい。係止片68の一部だけをその外縁で上方に屈曲させる構成にすることにより、係止片68の上方への屈曲部分のない、その隙間から車椅子の車輪が通れるようにする。
【0060】
更に、浴槽Gの底板72と側板66の接合については、図29及び図31に示すように、底板66の開口部側の端縁部に貼りしろ73を複数立設し、貼りしろ73に沿って水平にパッキン材70を貼る構成としていたが、図33に示すように、パッキン材70を、係止片68の底板72の端縁部から浴槽Gの外側に向かって水平に突出している部分の上面に水平に貼り付ける構成にしてもよい。但し、このように係止片68の底板72の端縁部から浴槽Gの外側に向かって水平に突出している部分の上面にパッキン材70を貼る構成にすると、車椅子を底板72の上面に載せる際に車椅子の車輪がその上を通ることになり、パッキン材70が磨耗したり、はがれてしまう可能性があるため、図35に示すように側板66の突片74の底面にパッキン材70を貼り付ける構成にしてもよい。
【0061】
また本実施例においては、側板66は、中央部に水平に補強材67が設けられている構成が示されているが、図36及び図37に示す通り、補強材の代わりに深さ5ミリ位の凸プレスを複数本入れる構成にしてもよい。別途用意した補強材を設ける構成より、側板66を一体成型しやすくなり、衛生的にも望ましい。なおこの凸プレスを入れる構成は、実施例6の側板59及び側板60の場合でも採用することができる。
【0062】
なお上記実施例1及び2の係止片及び突片に代えて、図38に示すように底板58又は72の外縁を上向きに屈曲させ、その上縁を底板58又は72の中心方向へ水平に折り曲げた断面鍵型の係止片61’又は68’とし、側板59、60又は66の下端縁を外方へ水平に折り曲げた断面鍵型の突片63’又は74’とし、係止片61’又は68’の内側にパッキン材62’又は64’を設けることにより突片63’又は74’を係止片61’又は68’に係合させることもできる。また図39に示すように上記係止片61’又は68’の上縁を湾曲させた構成でも同様に係合できる。
【0063】
以上のように浴槽A〜Gは構成され、これら浴槽の中に湯を入れても湯は外部にほとんど漏れず、漏れたとしてもその量はわずかであり、浴室内での使用においては、何ら不都合がない。
【0064】
またこの浴槽A〜Eの材質については合成樹脂やステンレス材を用いてもよいし、木材を用いてもよいが、木材の場合はお湯を吸って重くなったり、腐るのを防ぐため表面に防水塗料を塗布するか、透明なアクリル樹脂のカバーを一体に被せてもよい。ここで、防水塗料の塗布の仕方について具体的に説明する。まず、浴槽の内側となる各側板と底板の面にエポキシ樹脂等の防水塗料を塗布する。それから、後に剥がれやすくするために油等の剥離剤を塗った平板を塗布面に圧着する。ここで用いる平板は、凹凸や突起のない表面の滑らかな鏡面仕上げの金属板やアクリル板を用いる。そして、防水塗料が固着した後、圧着していた平板を取り除く。このように平板を圧着させて防水塗料を固着させると、上記防水塗料の塗布面が鏡のように滑らかに仕上がり、これらの各側板や底板を用いると浴槽に入浴した際、肌触りが非常に良くなる。なお、上記の説明では浴槽の内側となる側板と底板の面に防水塗料を塗布すると記載されているが、側板や底板のいずれの面に防水塗料を塗布しても良い。
【0065】
また、この浴槽A〜Eを構成する側板や底板の他の部材と当接する箇所や、入浴する際に車椅子が載ったり、ぶつかったりする箇所に、金属板を貼る構成にしてもよい。このように他の部材や車椅子が接触する箇所を金属板で覆っておけば、浴槽を何度も組立てたり分解したりして長い年月使用しても、側板や底板の接合面等がこすれて削れたりすること等を避けることができ、この浴槽A〜Eの耐用年数を伸ばすことができる。
【0066】
側板や底板に金属板を貼る場合、パッキンや弾性部材が突出している箇所を避けて、金属板を貼る構成にしても良いし、側板や底板の適宜の箇所に金属板を貼った後に、その上からパッキンや弾性部材を取り付ける構成にしてもよい。浴槽A〜Eの材質が木材である場合等には、金属板の上にパッキンや弾性部材を取り付けた方が取り付け面がより平滑であるため、取り付けやすく、またパッキンと金属板との間に隙間がほとんどなくなり、浴槽A〜Eの防水性が高まる。側板や底板に係止金具や蝶番等を取り付ける場合、金属板の上から取り付ければ、これらの取り付けが強固になる。
【0067】
また、側板と底板との接合及び側板相互の接合は上記変形例1〜5及び実施例1〜2のものに限らず、また他の変形例又は実施例のものと夫々組み換えた構成にすることも可能であり、設計によって適宜の構成を選択、採用できる。また変形例1〜5及び実施例1〜2では隣接する側板相互の接合にはバックル金具を設けているが、このバックル金具に限るものではない。接合構造としては、かんぬき構造や、楔を使用した係止具を用いた構造も含まれる。要は隣接する側板の一方の側板に係止体を設け、他方の側板に被係止体を設け、これらの係止体を被係止体に係止する構成であればよい。また上記実施例7においては、一つの側板を着脱自在としたが、これに限らず二つ又は三つの側板を着脱自在としてもよい。
【0068】
図40は、この発明の側板の例を示す概略構成図であり、図41は、図40における側板同士の接合を示す概略構成図である。
【0069】
図40に示すように、側板75は、内側面にパッキン材76が形成され、その外側にコ字状部材77が取付けられる。このとき、コ字状部材77の両端部が側板75の内側面に接するように取付けられ、ほぞ穴78が形成される。また、隣り合う側板79の側面79aには、その側面79aを貫通する貫通孔80が形成される。
【0070】
図41に示すように、隣り合う側板75,79を接合する場合、側板79の貫通孔80にコ字状部材77を挿通する。この後、貫通孔80を挿通されて側板79の側面79aの内側に突出したコ字状部材77のほぞ穴78に、楔部材81を差し込む。この楔部材81の材質は、木材、ゴム、金属等が考えられる。この楔部材81は、側面がテーパ状に形成されるため、コ字状部材77への差込みを深くするにつれて、確実に両側板75,79を接合できる。この接合構造によれば、予めコ字状部材77と貫通孔80がそれぞれの位置に対応して設けられているため、接合の際の位置決めが容易となる。
【0071】
図42はこの発明の側板の例を示す概略構成図であり、図43は底板の例を示す概略構成図である。また、図44はこの例の側板と底板との接合状態を示す断面図である。
【0072】
図42(A)は、側板82の側面図である。また、図42(B)は側板82の正面図、(C)は(A)のA−A断面図である。側板82は略断面コ字状であり、下端部に断面コ字状の係止片89が形成される。係止片89の先端の突片89aと、側板82の表面82aには、棒状の補強部材83が架渡されて溶着される。この補強部材83は、(C)に示すように、側板82の左右方向に沿って複数個所(図では4箇所)に溶着される。また、突片89a及び側板82の下面82bには切欠き84が複数個(図では3個)形成される。
【0073】
図43(A)は、底板85の係止片86付近の側面図であり、(B)は(A)のB−B断面図である。底板85の係止片86の上片86aと下面86bには、棒状の補強部材87が複数本(図では3本)架渡されて溶着される。88はパッキン材である。
【0074】
図44に示すように、側板82と底板85は、側板82の係止片89と底板85の係止片86とを係止させて接合される。このとき、側板82の各切欠き84に底板85の各補強部材87が入り込んで接合される。このような構成により、確実に側板82と底板85を接合できるとともに、補強部材83,87により、側板82の係止片89や底板85の係止片86が使用による劣化や変形で開くことを防止できる。このように断面コ字状の係止片89,86の開き防止手段として、複数本の棒状の補強部材83,87を係止片89,86の内側に溶着して架渡すことにより、この発明に係る車椅子用浴槽の使用回数を大幅に向上できる。
【0075】
図45は図44の別の例であり、側板と底板の接合状態を示す断面図である。
【0076】
図示したように、側板82と底板85は、底板85の係止片86の上片86aの先端が内側に折れ曲がって側板82の係止片89の突片89aと係止する。このように係止片86を折り曲げて係止させることによっても、係止片86の開きを防止できる。その他の構成、作用、効果は図44と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明の変形例1の浴槽の主な構成を示す分解斜視図である。
【図2】この発明の変形例1の浴槽の隣接する側板同士を、1つのバックル金具を用いて接合することを示す斜視図である。
【図3】この発明の変形例1の浴槽の隣接する側板同士を、2つのバックル金具を用いて接合することを示す斜視図である。
【図4】この発明の変形例2の浴槽の構成を示す分解斜視図である。
【図5】この発明の変形例3の浴槽の構成を示す分解斜視図である。
【図6】この発明の変形例4の浴槽の構成を示す分解斜視図である。
【図7】この発明の変形例4における側板の引っ掛け金具を、底板に設けられている留め具内に斜めに入れた状態を示す概念図である。
【図8】この発明の変形例4における側板の引っ掛け金具を、底板に設けられている留め具内で略垂直に立てた状態を示す概念図である。
【図9】この発明の変形例4の隣接する側板の、接合する前の状態を示す斜視図である。
【図10】この発明の変形例4の隣接する側板の接合状態を示した斜視図である。
【図11】この発明の変形例4において、図9及び図10で示したものとは別の構成によって隣接する側板の、接合する前の状態を示す斜視図である。
【図12】この発明の変形例4において、図9及び図10で示したものとは別の構成によって隣接する側板の接合状態を示した斜視図である。
【図13】この発明の変形例1〜2のいずれかの実施例において、差込突片5として用いるかすがいの平面図である。
【図14】この発明の変形例1〜2のいずれかの実施例において、側板の差込突片としてかすがいを用い、底板の切り溝内に引っ掛かりを設ける構成とした場合に、かすがいを切り溝内の凸部に嵌めた状態を示す断面図である。
【図15】この発明の変形例1〜2のいずれかの実施例において、側板の差込突片としてかすがいを用い、底板の切り溝内に引っ掛かりを設ける構成とした場合に、かすがいを切り溝内に嵌め込もうとしている状態を示す断面図である。
【図16】この発明の変形例1〜2のいずれかの実施例において、側板の差込突片としてかすがいを用い、底板の切り溝内に引っ掛かりを設ける構成とした場合の底板の端縁部の切り溝部分の平面図である。
【図17】この発明の変形例1〜2のいずれかにおいて、差込突片5としてネジ先を用い、切り溝6にナットをはめ込んだ場合に、側板を切り溝に立設した状態を示す断面図である。
【図18】この発明の変形例1の浴槽の隣接する側板の他の接合状態を示す斜視図である。
【図19】この発明の変形例1の浴槽の隣接する側板の更に他の接合状態を示す斜視図である。
【図20】この発明の変形例5において、回動自在な側板が底板に立設されている状態を示す正面図である。
【図21】この発明の変形例5において、回動自在な側板が持ち上がっている状態を示す正面図である。
【図22】この発明の変形例5における別の構成を示した斜視図である。
【図23】この発明の実施例1の浴槽の組立てた状態を示す斜視図である。
【図24】この発明の実施例1の浴槽の底板の構成を示す斜視図である。
【図25】この発明の実施例1の浴槽の底板の別の構成を示す斜視図である。
【図26】この発明の実施例1の浴槽の側板の構成を示す斜視図である。
【図27】この発明の実施例1の側板と底板の接合状態を示す断面図である。
【図28】この発明の実施例1の側板同士の接合状態を示す斜視図である。
【図29】この発明の実施例2の浴槽の主な構成を示す斜視図である。
【図30】この発明の実施例2の浴槽の主な構成を示す右側面図である。
【図31】この発明の実施例2の浴槽の主な構成を示す正面図である。
【図32】この発明の実施例2の浴槽の着脱自在な側板を示す斜視図である。
【図33】この発明の実施例2の浴槽の別な主な構成を示す斜視図である。
【図34】この発明の実施例2の浴槽の一方のパッキン材の貼りしろの構成を概念的に示した横断面図である。
【図35】この発明の実施例2の浴槽の別の構成の着脱自在な側板を示す斜視図である。
【図36】この発明の実施例2の浴槽の別の構成の着脱自在な側板を示す斜視図である。
【図37】この発明の実施例2の浴槽の別の構成の着脱自在な側板の縦断面図である。
【図38】この発明の底板の係止片と側板の突片の他の構成を示す係合断面図である。
【図39】この発明の底板の係止片と側板の突片の他の構成を示す係合断面図である。
【図40】この発明の側板の例を示す概略構成図である。
【図41】図40における側板同士の接合を示す概略構成図である。
【図42】この発明の側板の例を示す概略構成図である。
【図43】底板の例を示す概略構成図である。
【図44】図42と図43の側板と底板との接合状態を示す断面図である。
【図45】図44の別の例であり、側板と底板の接合状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0078】
A:浴槽、B:浴槽、C:浴槽、D:浴槽、E:浴槽、F:浴槽、G:浴槽、1:底板、2:側板、3:側板、4a:端縁部、4b:段部、5:差込突片、6:切り溝、7:弾性部材、8:くぼみ、9:バックル金具、9a:ハンドル、9b:長孔、9c:フック、9d:被係止金具、9e:折曲縁、9f:台座、10:パッキン材、11:底板、12:側板、13:側板、14:直方体の板、15:差込突片、16:切り溝、17:弾性部材、18:パッキン材、19:底板、20:側板、21:側板、22a:蝶番の軸部材、22b:蝶番の管部材、23:パッキン材、24:底板、25:側板、26:側板、27:留め具、28:引っ掛け金具、29:ゴム片、30:パッキン材、31:バックル金具、32:L型パッキン材、33:永久磁石、34:吸磁性体、35:かすがい、36:凸部、37:ネジ先、38:ナット、39:被係止金具、40:係止金具、40a:台座、41:折曲縁、42:フック片、43:ナット部、44:ハンドル、44a:長孔、45:フック片、46:蝶番、47:側板、48:軸、49:フック、50:ロープ、51:滑車、52:台、53:巻き取り機、54:差込突片、55:底板、56:パッキン材、57:蝶番、58:底板、59:側板、60:側板、61:係止片、62:パッキン材、63:突片、64:パッキン材、65:バックル金具、66:側板、67:補強材、68:係止片、69:側板、70:パッキン材、71:貼りしろ、72:底板、73:貼りしろ、74:突片、75:側板、76:パッキン材、77:コ字状部材、78:ほぞ穴、79:側板、80:貫通孔、81:楔部材、82:側板、82a:側板表面、82b:側板下面、83:補強部材、84:切欠き、85:底板、86:係止片、86a:上片、86b:下面、87:補強部材、88:パッキン材、89:係止片、89a:突片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板の周縁に側板を立設する浴槽において、四辺形の板体の四方の端縁部に、夫々上方に向かって立設し、その上縁で板体の中心方向に向かって略水平に屈曲した断面略鍵型の係止片を有する底板を設け、各側板と底板とは、底板の各端縁部に設けた前記係止片に、各側板の下端部から外方へ略水平に突出する断面鍵型の突片を嵌め込んで接合させて各側板を立設し、かつ隣接する側板同士の接合は、一方に係止具及び他方にその被係止具を設けてこれらを着脱自在に係止する構成とし、また側板同士の接合面及び側板と底板との接合面には夫々パッキン材を設けたことを特徴とする、組み立て自在な車椅子用浴槽。
【請求項2】
底板の周縁に側板を立設する浴槽において、四辺形の板体の四方の端縁部に、夫々上方に向かって立設し、その上縁で板体の中心方向に向かって略水平に屈曲し、さらにその内縁で下方へ垂下した断面略鍵型の係止片を有する底板を設け、各側板と底板とは、底板の各端縁部に設けた前記各係止片に、各側板の下端縁から略水平外方へ突出し、かつその外縁から上方へ突出させた断面鍵型の突片を嵌め込んで接合させて各側板を立設し、かつ隣接する側板同士の接合は、一方に係止具及び他方にその被係止具を設けてこれらを着脱自在に係止する構成とし、また側板同士の接合面及び側板と底板との接合面には夫々パッキン材を設けたことを特徴とする、組み立て自在な車椅子用浴槽。
【請求項3】
上記底板の少なくとも一方の端縁の係止片が間隔をあけて複数箇所切欠されていることを特徴とする、請求項1又は2の組み立て自在な車椅子用浴槽。
【請求項4】
底板の周縁に側板を有する浴槽において、四方の側板のうちの少なくとも一方の側板が着脱自在な構成となっており、当該着脱自在な側板は、下端から外方へ略水平に突出する断面鍵型の突片を有しており、底板の開口した端縁部には、底板の端縁が上方へ屈曲し、その上縁から底板の中心方向へ向かって略水平に屈曲した断面鍵型の係止片を有しており、前記側板と底板とは、側板の下端から突出している突片と底板の端縁部に設けられた係止片を嵌め合わせて接合させて側板を立設し、前記着脱自在な側板と隣接する側板との接合は、一方に係止具及び他方にその被係止具を設けてこれらを着脱自在に係止する構成とし、また着脱自在な側板と隣接する側板との接合面及び側板と底板との接合面には夫々パッキン材を設けたことを特徴とする、組み立て自在な車椅子用浴槽。
【請求項5】
底板の周縁に側板を有する浴槽において、四方の側板のうちの少なくとも一方の側板が着脱自在な構成となっており、当該着脱自在な側版は、下端から外方へ略水平に突出し、さらにその外縁から上方へ突出させた断面鍵型の突片を有しており、底板の開口した端縁部には、底板の端縁が上方へ屈曲し、その上縁から底板の中心方向に向かって略水平に屈曲しさらにその内縁で下方に垂下した断面略鍵型の係止片を有しており、前記側板と底板とは、側板の下端から突出している突片と底板の端縁部に設けられた係止片を嵌め合わせて接合させて側板を立設し、前記着脱自在な側板と隣接する側板との接合は、一方に係止具及び他方にその被係止具を設けてこれらを着脱自在に係止する構成とし、また着脱自在な側板と隣接する側板との接合面及び側板と底板との接合面には夫々パッキン材を設けたことを特徴とする、組み立て自在な車椅子用浴槽。
【請求項6】
上記底板の開口した端縁の係止片が間隔をあけて複数箇所切欠されていることを特徴とする、請求項4又は5の組み立て自在な車椅子用浴槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2009−78160(P2009−78160A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293501(P2008−293501)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【分割の表示】特願2006−266215(P2006−266215)の分割
【原出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(500536249)
【Fターム(参考)】