説明

車線判定装置

【課題】自車の前方を走行している車両が、自車が走行している車線と同一の車線を走行しているか否かを、精度良く判定する。
【解決手段】車線判定装置は、一の車両に搭載され、該一の車両が、複数の車線を含み、該複数の車線各々を走行する車両を検知すると共に、検知された車両に係る情報である第1車両情報を提供する車両検知手段(10)が設けられた道路(1)を走行している際に、車両検知手段と交信して、一の車両とは異なる他の車両に係る第1車両情報を取得する取得手段(22)と、他の車両に係る第1車両情報に基づいて、複数の車線のうち他の車両が走行している車線が、一の車両が走行している車線と同じであるか否かを判定する判定手段(23)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等である車両が走行している車線を判定する車線判定装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、例えば、自車の前方の車両から送信される車車間通信用電波の入射角が80度以上100度以下である場合に、車車間通信用電波を送信している車両は、自車と同じ車線を走行している前方車両であると認識する装置が提案されている(特許文献1参照)。或いは、道路面下に車線毎に埋設された基点マーカの信号を検出して、自車の走行車線を識別する装置が提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
或いは、走行路に設けられた磁極の組み合わせによって自車の走行レーンを認識すると共に、他車両から送信される走行レーン情報に基づいて、自車の走行レーン上を複数の車両が走行するか否かを判定する装置が提案されている(特許文献3参照)。或いは、複数の車両各々から送信される車線状況情報の基礎データにより、車線状況情報のデータベースを作成して、車線状況情報を各車両に提供する装置が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−276642号公報
【特許文献2】特開2001−307291号公報
【特許文献3】特開平08−087695号公報
【特許文献4】特開2009−216400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の背景技術では、自車の前方を走行している車両が、自車が走行している車線と同一の車線を走行しているか否かを精度良く判定することが難しいという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、自車の前方を走行している車両が、自車が走行している車線と同一の車線を走行しているか否かを、精度良く判定することができる車線判定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車線判定装置は、上記課題を解決するために、一の車両に搭載され、前記一の車両が、複数の車線を含み、前記複数の車線各々を走行する車両を検知すると共に、前記検知された車両に係る情報である第1車両情報を提供する車両検知手段が設けられた道路を走行している際に、前記車両検知手段と交信して、前記一の車両とは異なる他の車両に係る前記第1車両情報を取得する取得手段と、前記他の車両に係る前記第1車両情報に基づいて、前記複数の車線のうち前記他の車両が走行している車線が、前記一の車両が走行している車線と同じであるか否かを判定する判定手段と、を備える。
【0008】
本発明の車線判定装置によれば、当該車線判定装置は、例えば自動車等である一の車両に搭載されている。該一の車両が走行する道路の少なくとも一部の道路は、複数の車線を含み、車両検知手段が設けられている。
【0009】
ここで、車両検知手段は、例えば、複数の車線の夫々に対応して設けられた複数の車両検知センサと、該複数の車両検知センサ各々からの信号に応じて検知された車両に係る情報である第1車両情報を構築し、該構築された第1車両情報を外部に提供する通信装置と、を備えて構成される。
【0010】
尚、第1車両情報には、例えば、検知された車両の車両ID(Identification)、該検知された車両が走行している車線に係る車線番号、検知時刻等が含まれる。
【0011】
当該車線判定装置は、取得手段及び判定手段を備えて構成される。例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる取得手段は、一の車両が道路を走行している際に、車両検知手段と交信して、該一の車両とは異なる他の車両(典型的には、一の車両の前方の車両)に係る第1車両情報を取得する。
【0012】
例えばメモリ、プロセッサ等を備えてなる判定手段は、他の車両に係る第1車両情報に基づいて、複数の車線のうち該他の車両が走行している車線が、一の車両が走行している車線と同じであるか否かを判定する。
【0013】
以上の結果、本発明の車線判定装置によれば、自車(即ち、一の車両)の前方を走行している車両(ここでは、他の車両)が、自車が走行している車線と同一の車線を走行しているか否かを、精度良く判定することができる。加えて、当該車線判定装置が、例えばカメラやレーダ等を備える必要がないので、例えば製造コストを抑制することができる。
【0014】
本発明の車線判定装置の一態様では、前記取得手段は、更に、前記他の車両と交信して、前記他の車両に係る情報である第2車両情報を取得し、前記判定手段は、前記他の車両に係る前記第1車両情報に加えて、前記取得された第2車両情報に基づいて、前記複数の車線のうち前記他の車両が走行している車線が、前記一の車両が走行している車線と同じであるか否かを判定する。
【0015】
この態様によれば、自車の前方を走行している車両が、自車が走行している車線と同一の車線を走行しているか否かを、より精度良く判定することができる。
【0016】
尚、第2車両情報には、例えば、他の車両の車両ID、該他の車両の位置・速度・車間等の状態情報等が含まれる。
【0017】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る車両が走行する道路の概略構成を示す概略図である。
【図2】実施形態に係る路側システム及び車両各々の構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る路側システムにおいて実施される処理を示すフローチャートである。
【図4】実施形態に係る車両において実施される処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の車線判定装置の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の図では、本発明に直接関連する部材のみ示し、その他の部材については図示を省略している。
【0020】
先ず、本実施形態に係る車両が走行する道路の概略構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両が走行する道路の概略構成を示す概略図である。
【0021】
図1において、道路1は、3つのレーン(車線)を含んでいる(“レーン1”、“レーン2”及び“レーン3”参照)。道路1には、路側システム10が設けられている。
【0022】
路側システム10は、(i)例えばトラフィックカウンタ等の車両検知センサ11a、11b及び11cが設置された車両検知センサエリアと、(ii)各車両検知センサ11a、11b及び11cからの出力信号に基づいて、車両検知センサエリアを通過した車両を認識すると共に、該通過した車両に係る情報を、所定範囲内に存在する車両に送信可能に構成された路側機12と、を備えて構成されている。
【0023】
上記道路1を、図1に示すように、車両A(本発明に係る「他の車両」に相当)と、車両B(本発明に係る「一の車両」に相当)とが走行しているものとする。
【0024】
ここで、路側システム10、車両A及び車両Bの構成について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る路側システム及び車両各々の構成を示すブロック図である。
【0025】
図2において、路側システム10は、車両検知センサ11a、11b及び11cと、路側車両認識システム12aと、路車間通信システム12bと、を備えて構成されている。尚、路側機12(図1参照)は、路側車両認識システム12a及び路車間通信システム12bを備えて構成されている。
【0026】
車両A及び車両Bは、夫々、車車間通信システム21、路車間通信システム22、前方車両及び自レーン認識システム23、及び加減速制御システム24を備えて構成されている。尚、車車間通信システム21及び路車間通信システム22は、一体として構成されていてもよい。
【0027】
車両Aが車両検知センサエリアにさしかかった際に、車両検知センサ11aは、車両Aを検知して、例えばレーン番号(位置)、車両Aの速度、検知時刻等を示す信号を路側車両認識システム12aに送信する。続いて、路側車両認識システム12aは、路車間通信システム12bを介して、車両Aに車両IDを要求する。
【0028】
車両Aは、路側システム10からの要求に応じて、路車間通信システム22を介して、路側システム10に、該車両Aに係る車両IDを送信する。車両Aは、更に、車車間通信システム21を介して、該車両Aを中心とした所定範囲内に存在する車両に対して、該車両Aに係る車両ID等を送信する。
【0029】
車両Aに係る車両IDを受信した路側システム10は、路車間通信システム12bを介して、該路側システム10を中心とした所定範囲内に存在する車両に対して、例えば、車両Aに係る車両ID、該車両Aが走行するレーン番号、検知時刻等を送信する。
【0030】
車両Bが、車車間通信システム21を介して、車両Aに係る車両ID等と受信すると共に、路車間通信システム22を介して、車両Aに係る車両ID、車両Aが走行するレーン番号、検知時刻等を受信すると、車両Bの前方車両及び自レーン認識システム23は、車車間通信システム21及び路車間通信システム22各々を介して受信された情報に基づいて、車両Aが走行しているレーンが、車両Bが走行しているレーンと同一であるか否かを判定する。
【0031】
車両Bは、例えば、路車間通信により現在走行している走行区間の車線数情報を取得するように構成されてもよいし、車両Bの車載カメラにより撮像された画像に基づいて車線数を認識するように構成されてもよい。
【0032】
車両Bを、例えば、(i)車両Bの車載カメラにより撮像された画像のうち右側の所定範囲内又は左側の所定範囲内に、停止物しか存在しない(即ち、動いている車両が存在しない)ことを条件に、自車(即ち、車両B)が最も右側のレーンを走行している又は最も左側のレーンを走行していると判定するように構成すると共に、例えば、(ii)車両Bの車載カメラにより撮像された画像に含まれる車線区別用の線(例えば、白線等)の数に基づいて、自車が何車線目を走行しているか判定するように構成すれば、車両Bは、上記(i)及び(ii)の判定結果から自車が走行している車線を認識することができる。
【0033】
或いは、車両Bは、路車間通信システム22から送信される情報に基づいて、自車(即ち、車両B)が走行している車線を認識するように構成されてもよい。
【0034】
次に、以上のように構成された路側システム10、車両A及び車両B各々において実施される処理について、図3及び図4のフローチャートを参照して説明する。
【0035】
図3において、路側システム10における路側車両認識システム12aは、車両検知センサ11a、11b及び11cのいずれかが“ON”であるか否か(即ち、車両を検知したか否か)を判定する(ステップS101)。
【0036】
車両検知センサ11a、11b及び11cのいずれも“ON”でないと判定された場合(ステップS101:No)、路側車両認識システム12aは、再びステップS101の処理を実行する。他方、車両検知センサ11a、11b及び11cのいずれかが“ON”であると判定された場合(ステップS101:Yes)、路側車両認識システム12aは、路車間通信システム12bを介して、車両IDの要求を示す信号を発信する(ステップS102)。
【0037】
続いて、路側車両認識システム12aは、車両IDを示す信号を受信したか否かを判定する(ステップS103)。車両IDを示す信号が、車両IDの要求を示す信号を発信してから所定時間以内に受信されなかった場合(例えば、検知された車両が路車間通信システムを備えていない場合等)(ステップS103:No)、路側車両認識システム12aは、再びステップS101の処理を実行する。
【0038】
車両IDを示す信号を受信したと判定された場合(ステップS103:Yes)、路側車両認識システム12aは、受信された車両ID、車両が検知された時刻(通過時刻T)、走行レーン番号等を発信する(ステップS104)。
【0039】
図4(a)において、車両Aの路車間通信システム22は、車両IDの要求があったか否かを判定する(ステップS201)。車両IDの要求がないと判定された場合(ステップS201:No)、路車間通信システム22は、再びステップS201の処理を実行する。他方、車両IDの要求があったと判定された場合(ステップS201:Yes)、路車間通信システム22は、車両IDを示す信号を発信する(ステップS202)。
【0040】
次に、車両Aは、予め設定された範囲(例えば、車両Aを中心として半径200m又は半径1000m等)内に車車間通信可能な機器を備えた車両が存在するか否かを判定する(ステップS203)。予め設定された範囲内に車車間通信可能な機器を備えた車両が存在しないと判定された場合(ステップS203:No)、再びステップS201の処理が実行される。他方、予め設定された範囲内に車車間通信可能な機器を備えた車両が存在する(即ち、車車間通信車がある)と判定された場合(ステップS203:Yes)、車両Aは、車車間通信システム21を介して、該車両Aに係る車両ID、及び車両状態(例えば、速度、加速度、車間等)等を示す信号を発信する(ステップS204)。
【0041】
尚、車両Aに係る車両状態に含まれる「車間」は、車両Aと該車両Aの先行車との車間距離に限らず、車間時間であってもよい。このように構成すれば、例えば、車両Aの周囲の交通状況(例えば、混雑しているか否か等)の推定を比較的容易にして実施することができる。
【0042】
図4(b)において、車両Bは、車車間通信があったか否か(即ち、他の車両から発信された信号を受信したか否か)を判定する(ステップS301)。車車間通信はないと判定された場合(ステップS301:No)、再びステップS301の処理が実行される。
【0043】
車車間通信があったと判定された場合(ステップS301:Yes)、車両Bは、路車間通信があったか否か(即ち、路側システム10から発信された信号を受信したか否か)を判定する(ステップS302)路車間通信がないと判定された場合、再びステップ301の処理が実行される。
【0044】
路車間通信があったと判定された場合(ステップS302:Yes)、前方車両及び自レーン認識システム23は、車車間通信システム21を介して受信した、例えば車両Aに係る車両ID、及び車両状態等(本発明に係る“第1車両情報”に相当)と、路車間通信システム22を介して受信した、例えば車両Aに係る車両ID、通過時刻、走行レーン番号等(本発明に係る“第2車両情報”に相当)と、に基づいて、他の車両(ここでは、車両A)が走行しているレーンが、自車(即ち、車両B)が走行しているレーンと同一であるか否かを判定する(ステップS304)。
【0045】
次に、車両Bは、自レーン判定が“ON”であるか否か(即ち、上記ステップ303の処理において、他の車両が自車と同一レーンを走行していると判定されたか否か)を判定する(ステップS304)。自レーン判定が“ON”ではないと判定された場合(ステップS304:No)、再びステップS301の処理が実行される。
【0046】
自レーン判定が“ON”であると判定された場合(ステップS304:Yes)、加減速制御システム24は、車車間通信システム21を介して受信される前方通信車(ここでは、車両A)に係る情報に基づいて車両制御を実施する(ステップS305)。
【0047】
本実施形態に係る「車車間通信システム21」、「路車間通信システム22」及び「前方車両及び自レーン認識システム23」は、本発明に係る「車線判定装置」の一例である。本実施形態に係る「車車間通信システム21」及び「路車間通信システム22」は、本発明に係る「取得手段」の一例である。本実施形態に係る「前方車両及び自レーン認識システム23」及び「路側システム10」は、夫々、本発明に係る「判定手段」及び「車両検知手段」の一例である。
【0048】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車線判定装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0049】
1…道路、10…路側システム、11a、11b、11c…車両検知センサ、12…路側機、12a…路側車両認識システム、12b、22…路車間通信システム、21…車車間通信システム、23…前方車両及び自レーン認識システム、24…加減速制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の車両に搭載され、
前記一の車両が、複数の車線を含み、前記複数の車線各々を走行する車両を検知すると共に、前記検知された車両に係る情報である第1車両情報を提供する車両検知手段が設けられた道路を走行している際に、前記車両検知手段と交信して、前記一の車両とは異なる他の車両に係る前記第1車両情報を取得する取得手段と、
前記他の車両に係る前記第1車両情報に基づいて、前記複数の車線のうち前記他の車両が走行している車線が、前記一の車両が走行している車線と同じであるか否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする車線判定装置。
【請求項2】
前記取得手段は、更に、前記他の車両と交信して、前記他の車両に係る情報である第2車両情報を取得し、
前記判定手段は、前記他の車両に係る前記第1車両情報に加えて、前記取得された第2車両情報に基づいて、前記複数の車線のうち前記他の車両が走行している車線が、前記一の車両が走行している車線と同じであるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車線判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−84125(P2013−84125A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223702(P2011−223702)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】