説明

車載式塩分濃度測定装置

【課題】 タイヤの周面に沿って一対の電極を複数列配置し、該電極愛がの抵抗値で塩分濃度を測定する装置にあっては、電極先端が路面上の水と直接接触することで塩分濃度を計測することから、路面上の水の量によって測定結果が異なり正確な塩分濃度の計測ができないといった問題があった。
【解決手段】 路面に接地し回転することで路面上の水分が付着する車輪3と、該車輪の周面に付着する水分量を制限するための水分量制限手段5と、前記車輪の前記水分が付着する周面に弾性的に当接する電極4と、前記車輪、水分量制限手段および電極を車両に取付けるためのサスペンション機構2と、前記電極によって前記車輪との間に保水した水の抵抗を測定して塩分濃度を計測する塩分濃度判定回路8とから構成した車載式塩分濃度測定装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冬季において路面上の水に含まれる塩分の濃度を走行しながら測定するための車載式塩分濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
路面上の水に含まれる残留塩分濃度を測定する従来例としては、例えば、特開平11−337512号公報に開示された発明がある。この発明は、走行路面に電極の一部を露出した状態で埋め込み、この電極に電流を流して抵抗値によって変化する電流値を測定することで塩分濃度を測定するものである。
【0003】
また、他の従来例としては、例えば、特開2001−99779号公報に開示された発明がある。この発明は、タイヤの周面に沿って一対の電極を複数列配置すると共に電極の先端をタイヤ周面より突出させ、該電極間に所定の交流電圧を印加し、電極間の電圧が路面上の水に含まれる塩分量によって変化する時の電圧を計測することで塩分濃度を測定するものである。
【特許文献1】特開平11−337512号公報
【特許文献2】特開2001−99779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した第1の従来例の場合には、広域に渡って塩分濃度を測定するためには、道路に沿って多数の電極を埋設しなければならないといった問題があった。
【0005】
一方、第2の従来例の場合には、実際の走行路の塩分濃度を計測し広域の監視ができるという利点はあるが、電極先端が路面上の水と直接接触することで塩分濃度を計測することから、路面上の水の量によって測定結果が異なり正確な塩分濃度の計測ができないといった問題があった。
【0006】
本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、正確、かつ、安定した路面上の塩分濃度を計測することが可能な車載式塩分濃度測定装置を提供せんとするにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車載式塩分濃度測定装置は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、路面に接地し回転することで路面上の水が付着する車輪と、該車輪の周面に付着する水分量を制限するための水分量制限手段と、前記車輪の前記水が付着する周面に弾性的に当接する電極と、前記車輪、水分量制限手段および電極を車両に取付けるためのサスペンション機構と、前記電極によって前記車輪との間に保水した水の抵抗を測定して塩分濃度を計測する塩分濃度判定回路とから構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の手段は、前記した請求項1において、前記水分量制限手段は、前記車輪の前記電極が接触している接触面より回転上流側の周面に対して接触させた状態で取付けられ、かつ、前記車輪と接触する周方向に多数の溝が形成された補助回転輪であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の手段は、前記した請求項1において、前記サスペンション機構は、車両の下部に取付けられた回転体支持金具と、該回転体支持金具に一端が軸支されると共に先端が路面方向にバネ付勢された第1のアームと、該第1のアームに軸支されると共に前記バネ付勢方向とは逆方向にバネ付勢された第2のアームと、該第2のアームの下端に取付けられ前記車輪、電極および補助回転輪が取付けられた支持部材とから構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4の手段は、前記した請求項3において、前記回転体支持金具に軸支されている前記第1のアームは、第1のアームにバネ力を付勢するスプリングによって前記車輪が路面と接地し、路面から離れた上昇位置において係止手段によって維持するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は前記したように、車両の走行時に路面と接地して路面上の水を付着させる車輪に水分量を制限するための水分量制限手段を接触させ、この水分量が略一定となっている車輪の周面に電極を接触させて、前記水による抵抗値の変化を計測して塩分濃度を検出するようにしたので、路面上の水に含まれる塩分の濃度を正確に計測することが可能である。
【0012】
また、水分量制限手段として、車輪の電極が接触している接触面より回転上流側の周面に対して接触した状態で取付けられ、かつ、前記車輪と接触する周方向に多数の溝が形成された補助回転輪としたことにより、電極と接触する車輪の周面は常に一定の水分量となっているので、水分量の変化による塩分濃度の測定結果のバラツキを防止することができる。
【0013】
さらに、車輪、電極および補助回転輪が取付けられる支持部材は、車体に対して2つのスプリングによって車輪が路面の凹凸に対して接触状態を維持しながら回転するので、車輪の表面には常に水が付着され塩分濃度を正確に計測することができる。計測を必要としない場合には車輪を路面から浮かせた状態を維持させて走行できるので、車輪の摩擦による周面の磨耗を防止できる等の効果を有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、車両の走行時に路面と接地して路面上の水を付着させる車輪に対して補助回転輪を接触させ水分量を制限して常に一定の水を前記車輪と電極の間に保水するようにし、この保水した水に含まれる塩分濃度を検出するようにした。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明に係る車載式塩分濃度測定装置の一実施例を図面と共に説明する。
1は牽引用のステー1aが後部に取付けられている車両、2は該ステー1aに取付けられた後述するところの車輪3、電極4および補助回転輪5を取付けるためのサスペンション機構にして、前記ステー1aには回転体支持金具21が固定されている。この回転体支持金具21には上下方向に対して第1のアーム22が回動自在に軸支され、該第1のアーム22の先端には第2のアーム23の中間部が水平方向に対して回動自在に軸支されている。そして、前記第1のアーム22と前記ステー1aとの間には第1のアーム22の先端を下方に向かってバネ付勢する一対のスプリング22aが張設されている。また、第1のアーム22と第2のアーム23との間には各図に示す車両の進行方向とは逆の方向に第2のアーム23を回転させるバネ力を不勢する一対のスプリング23aが張設されている。
【0016】
また、前記第2のアーム23の下端に支持部材24が水平方向に対して回動自在に軸支され、該支持部材24には車輪3を回転自在に支持する三角形状の垂下片24aが固定されている。また、支持部材24には前記車輪3の周面に弾性的に当接する一対の電極4が取付けられ、また、前記車輪3と対向する位置に車輪3の周面と弾性的に接触する補助回転輪5を支持するコの字状の支持体51が取付けられている。
【0017】
前記車輪3はアルミホイールに強度や弾性等の機械的強度、耐候性、耐磨耗性を高めるためのスチレンブタジエンゴムが蒸着され、かつ、車輪3の周面は路面との接触面積を大きくするために滑らかな平面となっている。また、前記補助回転輪5の前記車輪3と摺接する面には周方向に溝5aが形成されている。なお、6は前記垂下片24aに取付けられたコの字状のスクレーパーにして、車輪3に付着した泥やごみを削り落とす。また、前記第2のアーム23内には図示しないスプリングが内蔵されており、前記垂下片24aを回転可能とし、カーブした路面に対する追従性を高くしている。
【0018】
さらに、前記回転体支持金具21と前記ステー1aとは図示しない防振ゴムを介して取付けられ、車輪3と路面との間で発生する振動を車両に伝達しないようになっている。なお、6は路面上の塩分濃度を測定しない場合に、サスペンション機構2を引き上げて車輪3を路面から引き上げるためのフックにして、これにより、車輪3の磨耗を防止する。
【0019】
前記したサスペンション機構2は、図6に示すように路面の凹凸に対する追従性を高めると共に、車両がカーブを曲がる時にも車輪3の旋回も追従するので、車輪3の周面には常に水が付着される。
【0020】
そして、車輪3が回転しながら路面上を移動すると路面の水が車輪3に付着するが、車輪3のみの場合には電極4に送られる水分量は一定しない。そこで、水が付着している車輪3が回転しながら補助回転輪5に接触することにより、補助回転輪5に形成されている多数の溝5aによって補助回転輪5より回転上流側の水が一定の状態で電極4に対して供給され、図5のように車輪3と電極4で保水された水の抵抗を測定する。
【0021】
図7は塩分濃度判定回路8を示し、固定抵抗器R1と前記一対の電極4(R2)とを直列接続し、該直列接続した固定抵抗器R1と抵抗R2に対して並列に、例えば、10KHzの交流電圧(5Vp−p)の発振器81を接続し、さらに、前記固定抵抗器R1と並列に電圧計測部82を接続し、該電圧計測部82にA/D変換器83を接続する。84は図8に示すフローチャートの動作を行うCPUにして、該CPU84のバスラインに前記発振器81とA/D変換器83が接続され、また、バスラインには電極4で検出する抵抗値変化から塩分濃度を判定する濃度判定部85、モニター、メモリ、プリンタ等の出力インターフェース86および搭乗者からの濃度測定開始指令、例えば、スイッチ等の入力インターフェース87が接続されている。
【0022】
次に、図8のフローチャートと共に塩分濃度判定回路8による塩分濃度測定処理の動作を説明する。
先ず、計測開始の指令が行われると、CPU84は発振器82を動作させて固定抵抗器R1と電極4である抵抗R2との直列回路に対して交流電圧を印加する(ステップS1)。この状態において車輪3を路面に接地した状態で車両を走行させると、前記したように補助回転輪5によって一定量の水が電極4に対して供給されるので、塩分濃度に応じて電極4の抵抗値が変化する。
【0023】
この電極4による抵抗値変化によって固定抵抗器R1の両端電圧V1は変化するので、この電圧変化を電圧計測部82が計測する(ステップS2)。すなわち、水の中に含まれている塩分濃度を検出する。なお、前記電圧計測部82で検出する電圧は、塩分濃度が高いほど電圧は高い。そして、電圧計測部82の出力はA/D変換器83によってデジタル信号に変換された後、濃度判定部85に入力される。
【0024】
濃度判定部85は、予め電圧に対する塩分濃度を計測し、この電圧を対するしきい値を複数設定し、例えば、電圧値が第1のしきい値(3V)以上の場合には塩分濃度は10%、電圧値が第2のしきい値(2.5V)以上で第1のしきい値より小さい場合には塩分濃度は5%以上、10%以下というように複数のしきい値を設定し、A/D変換器83よりの電圧値によって塩分濃度を判定(ステップS3)するものである。そして、濃度判定部85によって判定された塩分濃度を、例えば、出力インターフェース86であるモニターで判断し、あるいは判定結果をデータとして記憶し、また、印刷する(ステップS4)。
【0025】
前記した本発明の車載式塩分濃度測定装置によって測定された結果と、本出願人会社が既に出願した特願2005−240693の発明(以下、先願発明という)である車両のタイヤあるいは前記タイヤとは異なる独立した車輪に電極を当接して測定された結果とを図9〜図12と共に対比説明する。
【0026】
図9と図10は路面上の水に含まれている塩分濃度が1%の場合、図11、図12は塩分濃度が5%の場合であり、図9と図11が補助回転輪5を付けた本発明によって得られた測定結果で、図10、図12が補助回転輪5の無い場合の測定結果であり、かつ、車両の速度が40km/h(実線)、同じく40km/h(点線)および50km/h(一点鎖線)の場合の測定時間(測定回数)に対する出力(電圧)結果である。
【0027】
この特性図から判るように、塩分濃度が1%の場合には、先願発明の測定結果に比べて、本発明の測定結果は1.5Vを中心に分布しており速度の変化に対してバラツキが少なく安定した測定が可能なことを示している。
また、塩分濃度が5%の場合にも同様に、計測値が安定した20回から60回の分布を比較すると本発明の測定結果が2.5Vを中心に分布しているのに対して、先願発明では同じ速度に対しても測定結果のバラツキが大きいのに加えて2.5Vから3V+の範囲で広く分布しており、本発明の補助回転輪5が速度の違いによる影響を受けることなく塩分濃度の安定した測定に効果のあることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る車載式塩分濃度測定装置を車両に積載した状態の側面図である。
【図2】同上の平面図である。
【図3】濃度測定装置の部分を前方から見た斜視図である。
【図4】同上の後方から見た斜視図である。
【図5】同上の側面図である。
【図6】路面の凹凸に対する車輪の動きと非測定状態の車輪を上昇固定した状態の側面図である。
【図7】塩分濃度判定回路を示すブロック図である。
【図8】同上の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の塩分濃度が1%時の車両速度が異なる場合の時間に対する出力結果を示す特性図である。
【図10】先願発明の塩分濃度が1%時の車両速度が異なる場合の時間に対する出力結果を示す特性図である。
【図11】本発明の塩分濃度が5%時の車両速度が異なる場合の時間に対する出力結果を示す特性図である。
【図12】先願発明の塩分濃度が5%時の車両速度が異なる場合の時間に対する出力結果を示す特性図である。
【符号の説明】
【0029】
1 車両
2 サスペンション機構
3 車輪
4 電極
5 補助回転輪
6 スクレーパー
7 フック
8 塩分濃度判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に接地し回転することで路面上の水が付着する車輪と、
該車輪の周面に付着する水分量を制限するための水分量制限手段と、
前記車輪の前記水が付着する周面に弾性的に当接する電極と、
前記車輪、水分量制限手段および電極を車両に取付けるためのサスペンション機構と、
前記電極によって前記車輪との間に保水した水の抵抗を測定して塩分濃度を計測する塩分濃度判定回路と、
から構成したことを特徴とする車載式塩分濃度測定装置。
【請求項2】
前記水分量制限手段は、前記車輪の前記電極が接触している接触面より回転上流側の周面に対して接触させた状態で取付けられ、かつ、前記車輪と接触する周方向に多数の溝が形成された補助回転輪であることを特徴とする請求項1記載の車載式塩分濃度測定装置。
【請求項3】
前記サスペンション機構は、車両の下部に取付けられた回転体支持金具と、該回転体支持金具に一端が軸支されると共に先端が路面方向にバネ付勢された第1のアームと、該第1のアームに軸支されると共に前記バネ付勢方向とは逆方向にバネ付勢された第2のアームと、該第2のアームの下端に取付けられ前記車輪、電極および補助回転輪が取付けられた支持部材とから構成されていることを特徴とする請求項1記載の車載式塩分濃度測定装置。
【請求項4】
前記回転体支持金具に軸支されている前記第1のアームは、第1のアームにバネ力を付勢するスプリングによって前記車輪が路面と接地し、路面から離れた上昇位置において係止手段によって維持するようにしたことを特徴とする請求項3記載の車載式塩分濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−205881(P2007−205881A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25114(P2006−25114)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】