説明

車載機器の取り付け構造

【課題】作業性の向上を図れ、部品点数の削減を図りつつ車載機器の取り付け精度の向上を図る上で有利な車載機器の取り付け構造を提供する。
【解決手段】筐体18の左右両側にブラケット20が取着されたオーディオ装置12をパネル本体1010の開口部1011に挿入し、前方に押し込むと、にアーム側係止部32がガイド部38に案内されて第1の状態が形成される。第1の状態において、上面部28と下面部30が第1アーム側係止面24と第2アーム側係止面26とにそれぞれ係止することで、オーディオ装置12の上下方向と前後方向の位置決めがなされる。第1の状態で、ねじを介してブラケット20の取り付け片2006をインストルメントパネル10の取り付け部1016に取り付けることによりオーディオ装置12が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車載機器をインストルメントパネルに取り付ける車載機器の取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ装置などの車載機器を、車室内の前部に設けられたインストルメントパネルの開口部に挿入して取り付ける場合、開口部の内部に設けられた取り付け用の部材を注意深く目視しながら作業を行わなければならないことから手間がかかっており、作業性の改善が求められている。
そこで、取り付けの作業性の改善を図った車載機器の取り付け構造が提案されている(特許文献1参照)。
この取り付け構造では、車載機器の左右両側に板状のブラケットを取着すると共に、各ブラケットにピンを介して円筒状のブッシュを左右外側に向けて取り付けている。
また、開口部の内部に、左右一対の支持部材をステアリングサポートメンバに溶接等の締結手段にて固着している。
一対の支持部材の上縁にはそれぞれフランジが設けられている。各フランジは、水平方向に延在する第1のフランジ部分と、この第1のフランジ部分の延在方向の端部に接続され起立する第2のフランジ部分とで構成されている。
そして、各ブッシュを第1のフランジ部分上にそれぞれ載置した状態で車載機器を水平方向に摺動させ、各ブッシュを第2のフランジ部分に係合させて車載機器の前後方向および上下方向の位置決めを行う。この位置決めがなされた状態で各ブラケットを、インストルメントパネルにねじで取り付けることで車載機器を配置している。
したがって、各ブッシュを各フランジで案内させることによって車載機器の取り付けができるので、開口部の内部を注意深く目視する必要がなく、作業性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3900833号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来構造では、ステアリングサポートメンバに結合された左右2つの支持部材と、左右2つのブラケットと、左右2つのブッシュと、左右2つのピンとが必要であることから、部品点数の低減を図る上で不利がある。
また、一対の支持部材をステアリングサポートメンバに溶接等の締結手段によって取り付けていることから、支持部材の取り付け精度にばらつきが生じやすく、支持部材自体の精度のばらつきがあることから、車載機器の取り付け精度の向上を図る上で限界がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、作業性の向上を図れ、部品点数の削減を図りつつ車載機器の取り付け精度の向上を図る上で有利な車載機器の取り付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、左右両側にブラケットが取着された車載機器を、車室内の前部に配置されたインストルメントパネルの開口部に挿入した状態で前記インストルメントパネルに取り付ける車載機器の取り付け構造であって、前記ブラケットに設けられた前方に延在する第1アームと、前記ブラケットの前記第1アームより下方に設けられ前方に延在する第2アームと、前記開口部内の左右側壁に設けられ、前記車載機器が前記開口部に挿入された第1の状態で前記第1アームおよび前記第2アームと係止される凸部と、前記ブラケットに設けられ前記第1の状態で前記インストルメントパネルに固定される取り付け片と、前記左右側壁において前記凸部より下方で前後方向に延在するように設けられ前記車載機器の前記開口部への挿入時に前記第1アームおよび前記第2アームを前記凸部へと導く案内壁とを備え、前記凸部は前後に延在する上面部および前記上面部と後方に向けて互いに鋭角を成すよう傾斜した下面部とを有するくさび状に形成されており、前記第1の状態において、前記第1アームと前記上面部および前記第2アームと前記下面部が係止されることで前記ブラケットの前方および上下方向での位置を規制するよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、車載機器の取り付け構造をブラケットとインストルメントパネルのみで構成することで部品点数の削減を図れる。
また、車載機器を開口部に挿入することにより、ブラケットが案内壁により案内されて第1の状態が簡単に形成されるので、目視しなくても作業者が組み付けることができ、取り付け作業の容易化を図る上で有利となる。
また、第1の状態において、第1アームと上面部および第2アームと下面部が係止されることでブラケットの前方および上下方向での位置が規制されるので、取り付け精度にばらつきがなく、車載機器の取り付け精度の向上を図る上で有利となる。
請求項2記載の発明によれば、部品点数を増やすことなく簡単な構成によりブラケットを案内でき、第1の状態が簡単、確実に形成される。
請求項3記載の発明によれば、車載機器に車両前方への衝撃が作用した場合でも第2アームが下面部に沿って下方に変形することでその衝撃を吸収する。
請求項4記載の発明によれば、第2アームの変形によって吸収しきれなかった衝撃がさらにブラケットに作用した場合、車載機器に作用する衝撃が衝撃吸収部の変形によってさらに吸収される。
請求項5記載の発明によれば、インストルメントパネルに配置された車載機器の左右のデッドスペースを有効利用する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態の車載機器の取り付け構造によってオーディオ装置12がインストルメントパネル10に取り付けられた状態を車室内から見た斜視図である。
【図2】開口部16から化粧パネル1012を取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】インストルメントパネル10に取着されたブラケット20とその取り付け状態を示す斜視図である。
【図4】オーディオ装置12の取り付け状態を示す斜視図である。
【図5】ブラケット20の取り付け状態を示す斜視図である。
【図6】第1の状態を示す斜視図である。
【図7】第1アーム側係止面24、第2アーム側係止面26、上面部28、下面部30、アーム側係止部32、係止壁34の位置関係を示す側面図である。
【図8】第1アーム側係止面24、第2アーム側係止面26、上面部28、下面部30、アーム側係止部32、係止壁34の位置関係を示す側面図である。
【図9】第1アーム側係止面24、第2アーム側係止面26、上面部28、下面部30、アーム側係止部32、係止壁34の位置関係を示す側面図である。
【図10】第1アーム側係止面24、第2アーム側係止面26、上面部28、下面部30、アーム側係止部32、係止壁34の位置関係を示す側面図である。
【図11】図9に対応する下面部30とアーム側係止部32と衝撃吸収部36の位置関係を示す平面図である。
【図12】図10に対応する下面部30とアーム側係止部32と衝撃吸収部36の位置関係を示す平面図である。
【図13】衝撃吸収部36が変形した状態における下面部30とアーム側係止部32と衝撃吸収部36の位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、インストルメントパネル10の前面1002の中央に車載機器であるオーディオ装置12が組み込まれ、オーディオ装置12の両側に空調用の吹き出し口1004が設けられ、図中符号14はフロントガラスを示している。
オーディオ装置12はインストルメントパネル10の前面1002の開口部16に組み込まれ、オーディオ装置12の筐体18の前面には操作ダイヤル1802、操作ボタン1804、表示パネル1806などが配置されている。
【0009】
図1、図2に示すように、インストルメントパネル10は、パネル本体1010と、このパネル本体1010の前面の中央に取り外し可能に設けられた化粧パネル1012とを含んで構成されている。それらパネル本体1010と化粧パネル1012とは、それぞれ合成樹脂からなり型により一体成形されている。
オーディオ装置12は図2、図4に示すようにパネル本体1010の開口部1011に挿入された状態でパネル本体1010に取り付けられ、その後、化粧パネル1012がパネル本体1010に組み付けられ、前面1002の開口部16をなす化粧パネル1012の開口からオーディオ装置12の前面のみが車室内に露出するように配置されている。
【0010】
本発明の車載機器の取り付け構造は、上述のインストルメントパネル10に加え、図6、図7に示すように、ブラケット20、第1アーム2010、第2アーム22、凸部23、取り付け片2006、案内壁1022を含んで構成されている。
図3はオーディオ装置12の筐体18の左右両側に取着されるブラケット20とその取り付け状態を示しており、ブラケット20が理解しやすいように筐体18を省いている。
ブラケット20は、筐体18の左右両側に取着されるブラケット本体2002を有している。
ブラケット本体2002には、ブラケット20をねじにより筐体18に結合させるためのねじ挿通孔2004が設けられている。
取り付け片2006はブラケット本体2002に設けられ、取り付け片2006には、取り付け片2006をねじによりパネル本体1010に結合させるためのねじ挿通孔2008が設けられている。
すなわち、筐体18の左右両側にねじ挿通孔2004、ねじを介してブラケット本体2002が取着され、このブラケット本体2002の取り付け片2006がねじ挿通孔2008、ねじを介してインストルメントパネル10の取り付け部1016に取着されることでオーディオ装置12が開口部16に配置されることになる。
なお、ブラケット20には、所定の強度、剛性を有する従来公知のさまざまな合成樹脂材料や金属材料が使用される。
【0011】
図3、図5、図6に示すように、第1アーム2010は、ブラケット20の前部から前方に延在して設けられている。
第1アーム2010は、第2アーム22に比べて上下方向に変形しにくいように大きな幅で形成され、第2アーム22よりも上下方向に対して強い剛性を有している。この第1アーム2010の先部に下方を向いた第1アーム側係止面24が設けられている。第1アーム側係止面24は下方に向けられ、前後方向に延在する平面で形成されている。
第2アーム22は第1アーム2010よりも下方に設けられている。第2アーム22は、ブラケット20の下部の前部から前方に延在して設けられ、第2アーム22は、第1アーム2010よりも上下方向に対して剛性が弱く、第1アーム2010に比べて上下方向に変形しやすい。後述するように、第2アーム22が変形することで衝撃を吸収する。本実施の形態では、図10に示すように下方に変形することで衝撃を吸収する。
図6、図7に示すように、第2アーム22の先部の上部に第2アーム側係止面26が設けられ、第2アーム側係止面26は第1アーム側係止面24の下方に位置している。第2アーム側係止面26は上方かつ前方に向けられ、前後方向に延在する平面で形成されている。
そして、第1アーム側係止面24と第2アーム側係止面26との後方のブラケット20の箇所にそれら第1、第2アーム2010、22により開口2012が形成されている。
【0012】
図6、図7に示すように、第2アーム側係止面26の下方の第2アーム22の箇所にアーム側係止部32が設けられ、アーム側係止部32は前後方向に延在する平面壁で形成されている。
第2アーム22の延在方向の中間部に衝撃吸収部36が設けられ、衝撃吸収部36は、衝撃を受けた際に変形することで衝撃を吸収するものである。
衝撃吸収部36は、図11、図12、図13に示すように、前後方向に対して斜めに延在する直線部3602と、この直線部3602の両端に接続する屈曲部3604、3606とで構成されている。
衝撃吸収部36が衝撃を受けた際の変形は、両屈曲部3604、3606を介して直線部3602が次第に左右方向に向けられていく変形である。
【0013】
図6、図7に示すように、凸部23は、開口部16の前方で開口部16の左右側方に位置するインストルメントパネル10(パネル本体1010)の左右側壁1020に設けられ、オーディオ装置12が開口部16に挿入された第1の状態で第1アーム2010の第1アーム側係止面24と第2アーム22の第2アーム側係止面26とに係止される。
凸部23は上面部28と下面部30とを含んで構成されている。上面部28と下面部30は、後方に向けて互いに鋭角をなし第1アーム側係止面24および第2アーム側係止面26に係止可能に設けられている。
本実施の形態では、図6に示すように、凸部23はくさび形状を呈し左右側壁1020に一体成形され、上面部28と下面部30とは凸部23の上下面に設けられている。
図6、図7に示すように、上面部28は上方を向いて前後に延在する平面で形成され、下面部30は上面部28の下方に位置して下方かつ後方を向いて前後に延在する平面で形成されている。そして、下面部30は上面部28よりも水平面に対して大きな角度をもって水平面に交差している。
本実施の形態では、後述するようにオーディオ装置12の後部の重量を支える観点から、上面部28は水平面上を延在する平面で形成され、あるいは、水平面に対して小さな傾斜角度をもって交差する平面で形成されている。
それら上面部28と下面部30は、図9に示すように、開口部16にオーディオ装置12が挿入されることで第1アーム側係止面24と第2アーム側係止面26とにそれぞれ係止し、ブラケット20の前方および上下方向における位置決めを行い、かつ、ブラケット20の前方への移動を阻止する第1の状態を形成する。
また、この第1の状態において前方への衝撃がオーディオ装置12に作用した際に、図10に示すように、第2アーム22を下方に変形させつつブラケット20を前方に変位させるように構成されている。
なお、図9に示すように、第1の状態において、上面部28および下面部30の後部は、開口2012内に位置している。
また、第1の状態において、オーディオ装置12の前部の重量は、取り付け片2006を介して取り付け部1016により支えられ、また、後部の重量は、第1アーム側係止面24を介して上面部28により支えられる。
【0014】
案内壁1022は、左右側壁において凸部23より下方で前後方向に延在するように設けられ、オーディオ装置12の開口部16への挿入時に第1アーム2010および第2アーム22を凸部23へと導くものである。
案内壁1022は、その延在方向の中間部に設けられたガイド部38と、延在方向の前部に設けられた係止壁34とを含んで構成されている。
ガイド部38は、開口部16の前方で開口部16の下方に位置するインストルメントパネル10の箇所に設けられている。
ガイド部38は、図7、図8、図9に示すように、オーディオ装置12の開口部16への挿入時に、ブラケット20(アーム側係止部32)に係合し第1アーム側係止面24、第2アーム側係止面26の上面部28、下面部30への係止を案内するものである。言い換えると、ガイド部38は、第2アーム22を案内壁1022に沿わせてオーディオ装置12を開口部16に挿入した際に、第1アーム2010および第2アーム22を前記第1の状態へ導くものである。
ガイド部38は前後に延在し、前方に至るにつれて次第に高さが大きくなる傾斜面で形成され、すなわち凸部23に向かって上方へ傾斜して設けられている。
したがって、オーディオ装置12の開口部16への挿入時、ブラケット20(アーム側係止部32)をガイド部38で案内することによって第1の状態を簡単に形成できるため、目視しなくても作業者が組み付けることができ、オーディオ装置12の取り付け作業の容易化を図る上で有利となる。
また、図9に示すように、第1の状態でアーム側係止部32は前後方向においてガイド部38から離間しているので、車両走行時に発生する振動によってアーム側係止部32とガイド部38とが干渉して異音が発生することが防止されている。
【0015】
係止壁34は、図5、図6、図7に示すように、開口部16の前方で開口部16の下方に位置するインストルメントパネル10の案内壁1022の箇所に前後に延在する平面壁で形成されている。
係止壁34は、図9に示すように、第1の状態でアーム側係止部32から下方に離れた箇所に位置し、衝撃で第1の状態からブラケット20が前方に変位した際に図10に示すようにアーム側係止部32に当接し下面部30と協働してブラケット20のさらなる前方への移動を阻止する第2の状態とする。
【0016】
次に本実施の形態の作用効果について説明する。
オーディオ装置12のインストルメントパネル10への取り付けは次のように行う。
すなわち、筐体18の左右両側にブラケット20が取着されたオーディオ装置12をパネル本体1010の開口部1011に挿入し、前方に押し込むと、図7、図8に示すようにアーム側係止部32(ブラケット20)が案内壁1022に案内されて、図6、図9、図11に示す第1の状態が形成される。
この第1の状態において、上面部28と下面部30が第1アーム側係止面24と第2アーム側係止面26とにそれぞれ係止することで、オーディオ装置12の上下方向と前後方向の位置決めがなされる。
この第1の状態で、ねじを介してブラケット20の取り付け片2006をインストルメントパネル10の取り付け部1016に取り付けることによりオーディオ装置12が配置される。
この場合、車両走行時に発生する振動によって上面部28と下面部30が第1アーム側係止面24と第2アーム側係止面26とに干渉して異音が発生することが防止される。
なお、本実施の形態では、オーディオ装置12がパネル本体1010に取り付けられたのちに、化粧パネル1012がパネル本体1010に取り付けられ、オーディオ装置12の前面が化粧パネル1012の開口部16から車室内に露出する。しかしながら、化粧パネル1012がパネル本体1010に一体化されているインストルメントパネル10の場合には、インストルメントパネル10の開口部16からオーディオ装置12が挿入されてインストルメントパネル10に取り付けられることになる。いずれの場合も、インストルメントパネル10の開口部16からオーディオ装置12が挿入されてインストルメントパネル10に取り付けられるということができる。
【0017】
第1の状態で、すなわちオーディオ装置12の取り付け状態で、オーディオ装置12に前方への衝撃が作用すると、ブラケット20にも前方への衝撃が作用する。すると、第1アーム側係止面24は、第2アーム22よりも上下方向に対して強い剛性の第1アーム2010で支持されていることから、第2アーム側係止面26が下面部30に案内されて、第2アーム22が下方に変形しつつブラケット20が前方に変位する。このとき、第1アーム側係止面24は、上面部28上を摺動してブラケット20と共に前方に変位する。
そして、オーディオ装置12に作用する衝撃が第2アーム22の下方に向かう変形によって吸収される。
図10、図12に示すように、前記衝撃でブラケット20がさらに前方に変位すると、第2アーム22が下方に変形しつつブラケット20が前方に変位し、アーム側係止部32が係止壁34に当接する。これにより、係止壁34と下面部30とが協働してブラケット20のさらなる前方への移動を阻止する第2の状態が形成される。
図10に示すように、第2の状態において、上面部28および下面部30の後部は、第1の状態に比べて開口2012のさらに内側に位置している。
【0018】
第2の状態において、第2アーム22の変形によって吸収しきれなかった衝撃がさらにブラケット20に作用すると、ブラケット20が前方に変位するものの、第2アーム22の前部(第2アーム側係止面26、アーム側係止部32)は係止壁34と下面部30とにより前方への移動が阻止されている。そのため、図13に示すように、衝撃が衝撃吸収部36に作用し、衝撃吸収部36に、両屈曲部3604、3606を介して直線部3602が次第に左右方向に向けられていく変形を生じる。
すなわち、オーディオ装置12に作用する衝撃が衝撃吸収部36の変形によってさらに吸収される。
この場合、本実施の形態では、衝撃吸収部36が筐体18に近接する方向に変形するように構成している。そして、この変形を許容するため、図11、図13に示すように、ブラケット本体2002に筐体18側に膨出する膨出部2020を形成し、この膨出部2020を筐体18の左右の側面に取り付けることで衝撃吸収部36と筐体18の左右の側面との間に空間Sを確保した。しかしながら、衝撃吸収部36を筐体18の左右側面から離れる方向に変形する構成としてもよく、その場合は、衝撃吸収部36の左右外側に空間を確保すればよい。なお、インストルメントパネル10にオーディオ装置12が組み込まれた状態で、オーディオ装置12の左右側方はデッドスペースとなっていることから、上記の空間Sは簡単に確保でき、したがって、このデッドスペースを利用し衝撃吸収部36の変形をデッドスペース内で行わせることになる。
【0019】
本実施の形態によれば、ブラケット20に形成された第1アーム2010、第2アーム22、インストルメントパネル10に設けられた凸部23、取り付け片2006、案内壁1022によって車載機器の取り付け構造が構成される。
したがって、ブラケット20とインストルメントパネル10のみで車載機器の取り付け構造が構成されるため、部品点数の削減を図る上で有利となる。
また、オーディオ装置12をパネル本体1010の開口部1011に挿入することにより、ブラケット20が案内壁1022により案内されて第1の状態が簡単に形成されるので、目視しなくても作業者が組み付けることができ、オーディオ装置12の取り付け作業の容易化を図る上で有利となる。
また、第1の状態において、第1アーム2010と上面部28および第2アーム22と下面部30が係止されることでブラケット20の前方および上下方向での位置が規制されるので、取り付け精度にばらつきがなく、オーディオ装置12の取り付け精度の向上を図る上で有利となる。
【0020】
なお、本実施の形態では、車載機器がオーディオ装置12である場合について説明したが、本発明は従来公知のさまざまな装置を車載機器としてインストルメントパネル10に取り付ける場合に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0021】
10……インストルメントパネル、12……オーディオ装置、16……開口部、1022……案内壁、20……ブラケット、2006……取り付け片、2010……第1アーム、22……第2アーム、23……凸部、28……上面部、30……下面部、32……アーム側係止部、34……係止壁、36……衝撃吸収部、3602……直線部、3604、3606……屈曲部、38……ガイド部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両側にブラケットが取着された車載機器を、車室内の前部に配置されたインストルメントパネルの開口部に挿入した状態で前記インストルメントパネルに取り付ける車載機器の取り付け構造であって、
前記ブラケットに設けられた前方に延在する第1アームと、
前記ブラケットの前記第1アームより下方に設けられ前方に延在する第2アームと、
前記開口部内の左右側壁に設けられ、前記車載機器が前記開口部に挿入された第1の状態で前記第1アームおよび前記第2アームと係止される凸部と、
前記ブラケットに設けられ前記第1の状態で前記インストルメントパネルに固定される取り付け片と、
前記左右側壁において前記凸部より下方で前後方向に延在するように設けられ前記車載機器の前記開口部への挿入時に前記第1アームおよび前記第2アームを前記凸部へと導く案内壁とを備え、
前記凸部は前後に延在する上面部および前記上面部と後方に向けて互いに鋭角を成すよう傾斜した下面部とを有するくさび状に形成されており、
前記第1の状態において、前記第1アームと前記上面部および前記第2アームと前記下面部が係止されることで前記ブラケットの前方および上下方向での位置を規制するよう構成されている、
ことを特徴とする車載機器の取り付け構造。
【請求項2】
前記案内壁には、前記凸部に向かって上方へ傾斜するガイド部が形成されており、
前記ガイド部は、前記第2アームを前記案内壁に沿わせて前記車載機器を前記開口部に挿入した際に、前記第1アームおよび前記第2アームを前記第1の状態へ導く、
ことを特徴とする請求項1記載の車載機器の取り付け構造。
【請求項3】
前記第2アームは、前記車載機器に車両前方への衝撃が作用した際に、前記下面部に沿って下方に変形することで前記ブラケットの前方への変位を許容する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車載機器の取り付け構造。
【請求項4】
前記案内壁は、前記衝撃により前記第1の状態から前記ブラケットが前方に変位した際に、前記第2アームに当接し、前記下面部と協働して前記第2アームのさらなる前方への変位を規制した第2の状態とする係止壁を備え、
前記第2アームは、前記第2の状態から前記ブラケットがさらに前方へ変位すると変形して前記衝撃を吸収する衝撃吸収部を備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の車載機器の取り付け構造。
【請求項5】
前記衝撃吸収部は、前後方向に対して斜めに延在する直線部と、この直線部の両端に接続する屈曲部とで構成され、前記変形は、前記両屈曲部を介して前記直線部が次第に左右方向に向けられていく変形である、
ことを特徴とする請求項4記載の車載機器の取り付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−131653(P2011−131653A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291279(P2009−291279)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】