説明

車載用の記憶媒体保持装置

【課題】 車両走行時の安全性を図ることができる車載用の記憶媒体保持装置を提供する。
【解決手段】 車両の搭乗者によって記憶媒体50の出し入れが可能に配置されるとともに、その記憶媒体50にデータの書き込み及び読み出しを行う記憶媒体保持装置100であって、車室内に設けられ、記憶媒体50を挿入する挿入口30aを有し、挿入された記憶媒体50を着脱可能に保持する保持体30bと、その車両が走行状態にあるか否かを検知する走行検知手段20と、その走行検知手段20と電気的に接続し、その走行検知手段20が車両の走行状態を検知しているときには、記憶媒体50の保持体30bに対する出し入れを禁止する出入操作禁止手段60と、を備えることを特徴する可能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、記憶媒体のデータの読み出し・書き込みを行うための記憶媒体保持装置のうち、車両に搭載される記憶媒体保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用機器には、例えば特許文献1のように、光ディスクや磁気ディスク、あるいはメモリカードやIDカード等の小型のデータ記憶媒体外部記憶媒体を挿脱可能とするスロット部を備え、その外部記憶媒体から記憶情報を読出す、あるいは書込む等の処理を行うために記憶媒体を保持する保持装置がある。
【0003】
【特許文献1】特開2002−71356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のような保持装置の場合、運転者が車両走行中に記憶媒体の挿入・取り出し等の操作を行うことは、その運転者が前方不注意に陥る等、走行時の安全性が損なわれる可能性あった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、車両走行時に運転者の安全を確保することができる車載用の記憶媒体保持装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の車載用の記憶媒体保持装置は、
車両の搭乗者によって記憶媒体の出し入れが可能に配置されるとともに、その記憶媒体にデータの書き込み及び読み出しを行う記憶媒体保持装置であって、
車室内に設けられ、前記記憶媒体を着脱可能に保持する保持体と、
その車両が走行状態にあるか否かを検知する走行検知手段と、
その走行検知手段と電気的に接続され、その走行検知手段が前記車両の走行状態を検知しているときには、前記記憶媒体の前記保持体に対する出し入れを禁止する出入操作禁止手段と、
を備えることを特徴する。
【0007】
これにより、車両走行中にデータの記憶媒体の出し入れ操作が規制される。これにより、運転者はこうした操作に注意が向くことなく、運転に集中することができるため、車両走行時の安全が確保される。
【0008】
また、本発明の車載用の記憶媒体保持装置では、前記保持体は、前記記憶媒体を挿入する挿入口を有し、その挿入口から前記記憶媒体が内部に押し込まれることで、その記憶媒体を前記保持体内部に保持するとともに、その保持状態において、前記記憶媒体が再度押し込まれることで、前記記憶媒体の前記保持状態を解除して取り出し可能とするものであっても良い。
【0009】
記憶媒体保持装置には、記憶媒体を押し込んで保持体に保持させ、さらにもう一度押し込むことで記憶媒体が取り出される、いわゆるプッシュイン・プッシュアウト方式を採用するものがある。上記本発明によれば、車両走行中に記憶媒体の出し入れ操作の規制を、このプッシュイン・プッシュアウト方式の記憶媒体保持装置に適用することが可能となる。
【0010】
また、本発明の車載用の記憶媒体保持装置では、前記保持体は、前記記憶媒体を挿入する挿入口を有し、その挿入口から前記記憶媒体が前記挿入口から内部に押し込まれることで、その記憶媒体をその保持体内部に保持するとともに、その保持状態において、前記記憶媒体を取り出すための取出用ボタンが押されることで、前記記憶媒体の保持状態を解除して取り出し可能とするものであっても良い。
【0011】
記憶媒体保持装置には、記憶媒体を押し込んで保持体に保持させるとともに、これを取り出す際には、取り出し用のボタン、いわゆるイジェクトボタンを押すことで行うボタンプッシュによる取り出し方式を採用するものがある。これにより、車両走行中に記憶媒体の出し入れ操作の規制を、このボタンプッシュによる取り出し方式を有する記憶媒体保持装置に適用することが可能となる。
【0012】
また、本発明の車載用の記憶媒体保持装置では、前記出入操作禁止手段は、前記出入操作禁止手段は、前記走行検知手段が車両の走行状態を検知すると、前記取出用ボタンを押すことを妨げるボタンロック機構とすることができる。これにより、ボタンプッシュによる取り出し方式を採用する記憶媒体保持装置に対して、取り出し用ボタンをロックし、そのボタンの押し込み操作を不可とすることで、車両走行中の記憶媒体の取り出し操作を規制する機構を採用することができる。
【0013】
また、本発明の車載用の記憶媒体保持装置では、前記出入操作禁止手段は、前記走行検知手段が車両の走行状態を検知すると、前記挿入口の一部を塞ぐように突出する爪部や前記挿入口全てを覆う蓋部等、前記記憶媒体の出し入れを妨げる遮蔽材を含むロック機構とすることができる。これにより、車両走行中には記憶媒体の挿入口に爪部、又は蓋部で塞がれるため、記憶媒体の出し入れ操作が妨げられる。また、蓋を採用した場合には、その蓋によって挿入口の立体構造・段差構造を外部から隠すことができるため、意匠面の向上を図ることもできる。
【0014】
また、本発明の車載用の記憶媒体保持装置では、前記保持体は、車内空間に露出する内壁面に設けられた開口から、前記挿入口が露出するように備えられ、前記出入操作禁止手段は、前記走行検知手段が車両の走行状態を検知すると、前記保持体を前記開口の奥側に引き込んで、前記保持体の挿入口を前記開口の奥に位置させる保持体移動手段であっても良い。車載用の記憶媒体保持装置の保持体は、車内空間に表れる内壁面から挿入口が露出するように配置される。その保持体が上記構成をなす場合、保持体は、車両走行中に内壁面の奥側に引き込まれ、保持体の挿入口が内壁面の奥の手の届かない位置に移動する。これにより、車両走行中には、記憶媒体の挿入や取り出しができなくなる。
【0015】
また、本発明の車載用の記憶媒体保持装置では、車内空間に露出する内壁面には凹部が設けられ、その凹部には、前記保持体が収納可能に配置され、かつその保持体の前記挿入口が前記凹部の内側で前記車内空間に露出しないように配置されるとともに、その保持体は、回転軸によって回動可能に支持され、前記凹部に収納された前記保持体をその回転軸を中心に回転させることにより、前記凹部から前記車内空間側に移動して前記挿入口が前記車内空間に表れ、前記記憶媒体の出し入れ操作が可能となるものであっても良い。これにより、車室内の内壁面の凹部に収納されるように保持体が配置される。この保持体は、内壁面の凹部に収納された状態では保持体の挿入口が外部に表れず、この収納状態から回転軸を軸として挿入口が外部に表れるように構成されており、記憶媒体を挿入又は取り出しを行う際には、この回転動作が必要となる。従って、記憶媒体を挿入又は取り出し時の動作に、動的な意匠性を持たせることができる。また、内壁面の凹部に収納された状態では、挿入口の立体構造・段差構造を外部から隠すことができるため、車室内の意匠性の向上を図ることもできる。また、挿入口からのゴミの侵入を防止することもできる。
【0016】
また、本発明の車載用の記憶媒体保持装置では、前記保持体が前記凹部に収納された状態にあるときに、前記保持体の露出面が、前記内壁面と連続する平面上に位置すものであっても良い。これにより、車室内の内壁面と車室内に露出する保持体の壁面とを、滑らかに連続する壁面として見せることができ、車室内の意匠性の向上を図ることができる。
【0017】
また、本発明の車載用の記憶媒体保持装置では、前記出入操作禁止手段は、前記走行検知手段が車両の走行状態を検知すると、前記保持体を前記凹部に収納された状態とした上で、その保持体の回転をロックする回転ロック機構であっても良い。これにより、車両走行中には、回転軸の回転がロックされるため、保持体は凹部に収納された状態を維持し続け、車室内の内壁面の凹部に収納された保持体の挿入口を外部に露出させることができない。従って、車両走行中の記憶媒体の取り出し操作を規制することができる。
【0018】
また、本発明の車載用の記憶媒体保持装置では、前記走行検知手段は、パーキングギアにより、車輪に動力を伝える駆動軸の回転がロックされている状態を検知するものであっても良い。これにより、ギアがパーキングギアに入っていることを検知し、それに基づいて出力されるパーキング信号を制御部が受けることで、車両が走行状態にあるか否かの判定が可能となる。
【0019】
また、本発明の車載用の記憶媒体保持装置では、前記走行検知手段は、車両が有する速度センサが検出する速度が所定の値を超えたか否かを検知するものであってもよい。これにより、例えば、車両停止状態を定義する速度領域を定め、車速センサの検出値がその領域にあるか否かを制御部が判定することで、車両が走行状態にあるか否かを判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず、図1に示すブロック図を用いて、本発明の車載用の記憶媒体保持装置の構成を説明する。同図に示す記憶媒体保持装置100は、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと略す)10と、車速センサ20と、車室内に設けられるスロット部30とを主として構成される。
【0021】
マイコン10(本発明の出入操作禁止手段に相当する)は、メモリカード50に対するデータの書き込み・読み出し等の各種動作を制御するものであり、周知のCPU1,ROM2,RAM3,入出力回路であるI/O4、およびこれらの構成を接続するバスライン5が備えられている。CPU1は、ROM2およびRAM3に記憶されたプログラムおよびデータにより制御を行う。ROM2は、プログラム格納領域2aとデータ記憶領域2bとを有している。プログラム格納領域2aには、制御用の各種動作プログラム2pと、その他に車両走行時においてメモリカード50の着脱操作を禁止する着脱操作禁止プログラム2xが格納されており、また、データ記憶領域82bにはそれらのプログラムの動作に必要なデータが格納されている。プログラム格納領域2aに記憶されるプログラムは、RAM3のワークメモリ3作業領域とする形で作動する。
【0022】
車速センサ(本発明の走行検知手段に相当する)20は、マイコン10と電気的に接続される。この車速センサ20は、車両の速度を検出するために、周知のレゾルバあるいはロータリエンコーダ等の回転検出部を含んで構成される。検出された車速データは記憶媒体保持装置100のマイコン10(CPU1)に送られる。
【0023】
スロット部30(図2〜6参照)は、メモリカード50を挿入する挿入口30aと、挿入されたメモリカード50を保持する保持体30bと、ロック機構60とを主として構成される。このスロット部30の保持体は、外部との電気的接続が可能な端子部33を備えており、メモリカード50が挿入されると、その端子部33の先端部33aと記憶媒体の端子部53とが接触し、電気的に接続される。これら双方の端子部33,53が接続した状態となると、マイコン10(CPU1)に制御される形で、リード/ライト部32によるメモリカード50へのデータの書き込み・読み出しが可能となる。また、スロット部30には、ロック機構(本発明の出入操作禁止手段に相当する)60が設けられており、メモリカード50の挿入口30aへの挿入、および挿入口30aからの取り出しを妨げる手段として構成されている。なお、このスロット部30およびロック機構60については、後において具体的に説明する。
【0024】
また、スロット部30によって、データの書き込み・読み出しがされるメモリカード(本発明の記憶媒体に相当する)50は、データを記憶する記憶部となるメモリ53と、データの入出力部となるリード/ライト部51とで構成され、さらにはこれらを制御する制御部52とを備えて構成されていてもよい。本発明の記憶媒体には、本実施例における小型のメモリカード50の他、デジタルデータを記憶できるCDやDVD、ICカード、あるいは磁気データを記憶する記憶媒体等を用いることができる。
【0025】
このような構成の記憶媒体保持装置100は、その起動時において、車速センサ20の検出した車速値が車両の走行状態を規定する車速範囲(例えば時速2km以上等)内に達したことをCPU1が認識すると、着脱操作禁止プログラム2x(図1)が実行されて、スロット部30へのメモリカード50の挿入もしくは取り出し操作を禁止するロック機構60が作動する。そして、車速が上記車速範囲から外れない限りは、そのロック状態が継続される。これにより、車両走行中のメモリカード50の出し入れ操作ができなくなるため、車両運転者は、メモリカードの出し入れ操作を行う意思を持たなくなり、車両の運転により集中することができるようになる。従って、車両走行時の運転者の安全性を増すことができる。
【0026】
なお、上記の記憶媒体保持装置100を構成するスロット部については、既に様々な形態のものが知られており、本発明ではそれらのスロット部に対して上記のロック機構32を設けることを特徴としている。以下、そのスロット部30の具体的な構成について図面を用いて説明する。
【0027】
図2、図3、図4は、本発明に用いるスロット部の第一、第二、第三実施形態を示すものである。これらに示されるスロット部30は、メモリカード50を挿入口30aから内部空間35に押し込むことで、そのケース30b(本発明の保持材に相当する)の内部に保持されるとともに、その保持状態において、メモリカード50を再度押し込むことで、メモリカード50の保持状態が解除されて取り出し可能となる、いわゆるプッシュイン・プッシュアウト方式によってメモリカード50の着脱を行うものである。このスロット部30は、挿入口30a、ケース30bの他にも、メモリカード50の出し入れ操作を妨げるためのロック機構60と、上記プッシュイン・プッシュアウト方式によるメモリカード50の着脱を実現するための着脱機構(図示なし)を備える。ケース30bには、挿入されたメモリカード50の端子部53と接触するように複数の側端子33が設けられるとともに、これらの端子33は、図の右側でケース30bから突出するように設けられ、図2〜図4では示されないマイコン10(CPU1)と電気的に接続している。なお、着脱機構に関しては、メモリカードの挿入に伴ってスライドするスライダや略ハード状の溝構造を有するハートカム等を備えて構成される周知の機構とすることができる。
【0028】
図2、図3、図4に示すスロット部30は、上記のプッシュイン・プッシュアウト方式のスロット部として構成されているが、ロック機構(本発明の出入操作禁止手段に相当する)60の構造が異なっている。以下、これらの図におけるロック機構について説明を行う。
【0029】
図2に示すスロット部30のロック機構60は、スロット部30の挿入口30aを覆う蓋61と、その蓋61に設けられるスライド案内部61aと、蓋61を案内部61aに沿ってスライド移動させる駆動部61Mとを主として構成されている。この蓋61は、車両停止状態において、図2の(c)のように、挿入口30aを覆う位置に配置され、図示されない蓋開閉ボタンを押すことで、モータ等からなる駆動部61Mが駆動し、蓋61は自身に設けられたスライド案内部61aに沿って図2の(b)に示す位置にスライド移動する。蓋61が図2の(b)の位置に移動することで、挿入口30aが外部に露出した状態となり、メモリカード50の出し入れ操作が可能となる。ただし、車速センサ20が車両の走行状態を検知すると、駆動部61Mは、マイコン10(CPU1)から信号線61bを介して制御信号の入力を受ける。この制御信号により、蓋61は、図2の(c)の位置に移動し、移動後にはその位置を維持し続けるように制御されるとともに、蓋開閉ボタンがロックされて押すことができなくなる。これにより、車両走行中には、メモリカード50の出し入れ操作が不可能となる。このロック状態を維持する制御は、マイコン10(CPU1)が車両の停止状態を検知することで解除されて、蓋61は、蓋開閉ボタンによって移動可能となり、メモリカード50の出し入れ操作が可能な状態に復帰する。
【0030】
図3に示すスロット部30のロック機構60は、スロット部30全体を、車室内に露出する内壁面300の奥側にスライド移動させる駆動部62Mとスライド案内部62aとを主として構成されている。スロット部30は、車両停止状態において、図3の(b)に示す位置、すなわち内壁面300の奥側に位置し、図示されないスロット部可動ボタン(図示なし)を押すことで、モータ等からなる駆動部62Mが駆動して、スロット部30全体がスライド案内部62aに沿って図3の(a)の位置にスライド移動する。スロット部30全体が図3の(a)の位置に移動すると、挿入口30aは内壁面300の開口300aから外部に表れ、メモリカード50の出し入れ操作が可能となる。ただし、車速センサ20が車両の走行状態を検知すると、駆動部62Mは、マイコン10(CPU1)から信号線62bを介して制御信号の入力を受ける。この制御信号により、スロット部30は、図3の(b)の位置に移動し、その位置を維持し続けるように制御されるとともに、スロット部可動ボタンがロックされて押すことができなくなる。この場合、挿入口30aが壁面300の奥に位置するため、メモリカードの操作ができなくなる。従って、車両走行中には、メモリカード50の出し入れ操作が不可能となる。このロック状態を維持する制御は、マイコン10(CPU1)が車両の停止状態を検知することで解除されて、スロット部30はスロット部可動ボタンを押すことが可能となり、メモリカード50の出し入れ操作が可能な状態に復帰する。なお、この場合、スロット部30が引き込んだ状態(図3の(b)の状態)にあるときに、開口300aが覆われるように蓋が設けられても良い。これにより、開口300aが車室内に露出しない構造となるため、車内空間の意匠性の向上を図ることができる。このとき、この蓋は、内壁面300と同一平面となるように、すなわち内壁面300に対して面一となるように設けられていることが望ましい。
【0031】
図4に示すスロット部30のロック機構60は、スロット部30の挿入口30aの一部を塞ぐように突出する爪部63と、その爪部63に設けられるスライド案内部63aと、爪部63を案内部63aに沿ってスライド移動させる駆動部63Mとを主として構成されている。この爪部63は、通常、図4の(b)のように、挿入口30aの右端の一部を塞がない位置に配置され、メモリカード50の出し入れ操作が可能な状態となっている。ただし、車速センサ20が車両の走行状態を検知すると、モータ等からなる駆動部63Mは、マイコン10(CPU1)から信号線63bを介して制御信号の入力を受ける。この制御信号により、爪部63は、図4の(c)の位置に移動し、移動後にはその位置を維持し続けるように制御される。これにより、車両走行中には、メモリカード50の出し入れ操作が不可能となる。このロック状態を維持する制御は、マイコン10(CPU1)が車両の停止状態を検知することで解除されて、爪部63は、図4の(b)の位置に戻り、メモリカード50の出し入れ操作が可能な状態に復帰する。
【0032】
なお、ロック機構に関しては、図2〜図4に示すロック機構の複数を同時に備えるものであっても良い。
【0033】
以上、本発明の記憶媒体保持装置のうち、プッシュイン・プッシュアウト方式のスロット部を採用した実施形態について説明した。ただし、本発明のスロット部は、上記のような方式に限られるものではなく、少なくとも車両の搭乗者によってメモリカードの出し入れが可能に配置され、そのメモリカードを保持することが可能なものであれば良い。以下では、上記実施形態とは異なるスロット部を備えた本発明の実施形態についての説明を行う。
【0034】
図5は本発明に用いるスロット部の第四実施形態を示している。同図に示すスロット部30は、メモリカード50を挿入口30aから内部空間35に押し込むことで、そのケース30b(本発明の保持材に相当する)の内部に保持されるとともに、その保持状態において、メモリカード50を取り出すための取出用ボタン143、いわゆるイジェクトボタンが押されることで、メモリカード50の保持状態が解除されて取り出し可能となる、ボタンプッシュによる取り出し方式を採用したスロット部である。このスロット部30は、図2〜4に示すスロット部30と同じく、挿入口30a、ケース30b、およびメモリカード50の出し入れ操作を妨げるためのロック機構60を備えるとともに、上記ボタンプッシュ式のメモリカードの取り出しを実現するための着脱機構(図示なし)を備える。この着脱機構は、上記取出用ボタンによってメモリカードの取り出しを行う周知の着脱機構が用いられる。なお、図2〜4に示すスロット部と同じ構造部分については、それらの図と同じ符号を付することで説明を省略する。
【0035】
また、図5のスロット部30には、イジェクトボタン143が押し込まれないようにロックするロック機構60が設けられる。このロック機構60は、ソレノイドコイル64bと可動鉄心64aとばね材64cと取出用ボタンに設けられた貫通孔143aとを主として構成される。車両停車時において、ソレノイドコイル64bには通電がなされず、可動鉄心64aは図5の(a)および(b)の位置を保つ。従って、イジェクトボタン143を押し込むことで、メモリカード50の取り出し操作が可能となる。ただし、車速センサ20が車両の走行状態を検知すると、マイコン10(CPU1)の制御によってソレノイドコイル65bに通電がなされ、可動鉄心64aはばね材64cの付勢力に抗する形で貫通孔143aに引き込まれる。これにより、車両走行中には、イジェクトボタン143がロックされて、これを押し込むことができなくなり、メモリカード50の取り出し操作が不可能となる。このロック状態は、マイコン10(CPU1)が車両の停止状態を検知し、ソレノイドコイル64bへの通電が無くなることで解除される。このとき可動鉄心64aは、ばね材64cの付勢力によって図の位置に戻り、イジェクトボタン143は再び押し込み可能な状態となる。なお、この実施形態におけるスロット部には、ここで述べたようなロック機構ではなく、図2〜4で述べたロック機構を採用することもでき、また、そうしたロック機構を複数備えるように構成されても良い。
【0036】
図6は本発明に用いるスロット部の第五実施形態を示している。同図に示すスロット部30は、車内空間に露出する内壁面300に設けられた凹部300bに、ケース30bが収納可能に配置され、かつそのケース30bの挿入口30aが凹部300bの内側で車内空間に露出しないように構成されている。ケース30bは、回転部材310aにケース本体310bが埋め込まれた形で構成されるとともに、ケース30b全体が回転軸320を軸に回動可能に支持され、かつ図示されないばね材によって絶えず図の矢印方向とは反対の方向に付勢されている。ケース30bは、この回転軸320を軸として回転移動することで、凹部300bに収納された状態から車内空間側(図の矢印方向)に移動する。この移動により、挿入口30aは車内空間に表れ、メモリカード50の出し入れ操作が可能となる。そして、ケース30bに回転移動を行わせた力が除かれると図示されないばね材の付勢力によって、図の実線の位置に戻される。なお、本実施形態におけるケース本体310bは、図2〜5におけるスロット部30の構造を有する部分であり、本実施形態においては、このケース本体310bと回転部材310aとを合わせてケース30bと称している。従って、ここでのケース本体310bの構成に関する説明は省略する。
【0037】
また、このスロット部30には、ケース30bの回転をロックする回転ロック機構60が設けられる。ロック機構60は、ソレノイドコイル65bと可動鉄心65aとばね材65cと回転軸320に設けられた貫通孔320aとを主として構成される。通常、ソレノイドコイル65bには通電がなされず、可動鉄心65aは図6の位置を保ち、ケース30bは、図の矢印方向に回動自在となっている。従って、ケース30bは図の鎖線が示す位置に回転移動することができ、この位置に移動することで挿入口30aが車室内に表れ、メモリカード50の出し入れ操作が可能となる。また、回転移動を促す力が除かれると図示されないばね材によって、図6の実線位置に戻される。ただし、車速センサ20が車両の走行状態を検知すると、まず、ケース30bは図6の実線位置に戻される。その上で、マイコン10(CPU1)の制御によってソレノイドコイル65bに通電がなされ、可動鉄心65aはばね材65cの付勢力に抗する形で貫通孔320aに引き込まれる。これにより、車両走行中には、回転軸320がロックされてケース30bの回転移動ができなくなり、メモリカード50の出し入れ操作が不可能となる。そして、車両が停止状態となると、ソレノイドコイル65bへの通電が解除されて、可動鉄心65aはばね材65cの付勢力によって図の位置に戻り、ケース30bが回転移動可能な状態となる。なお、この実施形態におけるスロット部には、ここで述べたようなロック機構ではなく、図2〜4で述べたロック機構を採用することもでき、また、そうしたロック機構を複数備えるように構成されても良い。
【0038】
以上、本発明の記憶媒体保持装置に用いるスロット部の実施形態に付いて説明したが、本発明の記憶媒体保持装置のスロット部は、上記のような実施形態に限られるものではなく、少なくとも車両の搭乗者によって記憶媒体の出し入れが可能に配置され、その記憶媒体を保持することが可能なものであれば良い。従って、記憶媒体の出し入れを行う着脱機構やその着脱操作を妨げるロック機構の構造によって限定されるものではない。また、これらの機構に加えて、記憶媒体取り出し時に記憶媒体が勢い良く飛び出すことを防止する飛び出し防止手段や、記憶媒体の自動送りを行うローディング機能等を備えていても良い。
【0039】
また、上記第実施形態における走行検知手段は、車速センサがその役目を果たしているが、本発明では少なくとも車両の停止状態を検知可能なものであればよく、例えば、パーキングギアにより、車輪に動力を伝える駆動軸の回転がロックされている状態を検知し、そのロック状態(パーキング状態)の検知に基づいて伝達されるパーキング信号をマイコン(CPU)に認識させてロック機構を制御させても良い。また、本発明のロック機構は、上記第一の実施形態のような構成に限られるものではなく、少なくとも、走行検知手段(上記実施形態においては車速センサ)によって、スロット部が搭載された車両が停止状態であることを検知したときに、スロット部への記憶媒体の挿入、およびスロット部からの記憶媒体の取り出しをさせなくするための機構であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の記憶媒体保持装置のブロック図。
【図2】本発明の記憶媒体保持装置に用いるスロット部の第一実施形態を示す概略図。
【図3】本発明の記憶媒体保持装置に用いるスロット部の第二実施形態を示す概略図。
【図4】本発明の記憶媒体保持装置に用いるスロット部の第三実施形態を示す概略図。
【図5】本発明の記憶媒体保持装置に用いるスロット部の第四実施形態を示す概略図。
【図6】本発明の記憶媒体保持装置に用いるスロット部の第五実施形態を示す概略図。
【符号の説明】
【0041】
1 CPU
10 マイクロコンピュータ
20 車速センサ(走行検知手段)
30 スロット部
30a 挿入口
30b ケース(保持体)
50 メモリカード(記憶媒体)
60 ロック機構
100 記憶媒体保持装置
300 車両の内壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の搭乗者によって記憶媒体の出し入れが可能に配置されるとともに、その記憶媒体にデータの書き込み及び読み出しを行う記憶媒体保持装置であって、
車室内に設けられ、前記記憶媒体を着脱可能に保持する保持体と、
その車両が走行状態にあるか否かを検知する走行検知手段と、
その走行検知手段と電気的に接続され、その走行検知手段が前記車両の走行状態を検知しているときには、前記記憶媒体の前記保持体に対する出し入れを禁止する出入操作禁止手段と、
を備えることを特徴する車載用の記憶媒体保持装置。
【請求項2】
前記保持体は、前記記憶媒体を挿入する挿入口を有し、その挿入口から前記記憶媒体が内部に押し込まれることで、その記憶媒体を前記保持体内部に保持するとともに、その保持状態において、前記記憶媒体が再度押し込まれることで、前記記憶媒体の前記保持状態を解除して取り出し可能とする請求項1に記載の車載用の記憶媒体保持装置。
【請求項3】
前記保持体は、前記記憶媒体を挿入する挿入口を有し、その挿入口から前記記憶媒体が内部に押し込まれることで、その記憶媒体をその保持体内部に保持するとともに、その保持状態において、前記記憶媒体を取り出すための取出用ボタンが押されることで、前記記憶媒体の保持状態を解除して取り出し可能とする請求項1に記載の車載用の記憶媒体保持装置。
【請求項4】
前記出入操作禁止手段は、前記走行検知手段が車両の走行状態を検知すると、前記取出用ボタンを押すことを妨げるボタンロック機構である請求項3に記載の車載用の記憶媒体保持装置。
【請求項5】
前記出入操作禁止手段は、前記走行検知手段が車両の走行状態を検知すると、前記挿入口の一部を塞ぐように突出する爪部が表れるように構成された、前記記憶媒体の出し入れを妨げるロック機構である請求項2または3に記載の車載用の記憶媒体保持装置。
【請求項6】
前記出入操作禁止手段は、前記走行検知手段が車両の走行状態を検知すると、前記挿入口を被う蓋である請求項2ないし5のいずれか1項に記載の車載用の記憶媒体保持装置。
【請求項7】
前記保持体は、車内空間に露出する内壁面に設けられた開口から、前記挿入口が露出するように備えられ、
前記出入操作禁止手段は、前記走行検知手段が車両の走行状態を検知すると、前記保持体を前記開口の奥側に引き込んで、前記保持体の挿入口を前記開口の奥に位置させる保持体移動手段である請求項2ないし6のいずれか1項に記載の車載用の記憶媒体保持装置。
【請求項8】
車内空間に露出する内壁面には凹部が設けられ、その凹部には、前記保持体が収納可能に配置され、かつその保持体には、前記記憶媒体を挿入する挿入口が前記凹部の内側で前記車内空間に露出しないように配置されるとともに、その保持体は、回転軸によって回動可能に支持され、前記凹部に収納された前記保持体をその回転軸を中心に回転させることにより、前記凹部から前記車内空間側に移動して前記挿入口が前記車内空間に表れ、前記記憶媒体の出し入れ操作が可能となる請求項1に記載の車載用の記憶媒体保持装置。
【請求項9】
前記保持体が前記凹部に収納された状態にあるときに、前記保持体の露出面が、前記内壁面と連続する平面上に位置する請求項8に記載の車載用の記憶媒体保持装置。
【請求項10】
前記出入操作禁止手段は、前記走行検知手段が車両の走行状態を検知すると、前記保持体を前記凹部に収納した状態とした上で、その保持体の回転をロックする回転ロック機構である請求項8または9に記載の車載用の記憶媒体保持装置。
【請求項11】
前記走行検知手段は、パーキングギアにより、車輪に動力を伝える駆動軸の回転がロックされている状態を検知するものである請求項1ないし10に記載の車載用の記憶媒体保持装置。
【請求項12】
前記走行検知手段は、車両が有する速度センサが検出する速度が所定の値を超えたか否かを検知するものである請求項1ないし11に記載の車載用の記憶媒体保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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