説明

車載用オーディオシステム

【課題】 マルチチャンネルソースに対応することができる低コストの「車載用オーディオシステム」を提供する。
【解決手段】 車載用オーディオシステム100は、オーディオ信号を再生するDVDプレーヤ10と、フロント側およびリア側のスピーカ20、22、24、26、28、30、32と、DVDプレーヤ10とフロント側スピーカ20、22、24との間に接続された騒音補正フィルタ40、42、44と、DVDプレーヤ10とリア側スピーカ26、28、30との間に接続された切替スイッチ160、162、164と、オーディオ信号がマルチチャンネルか否かを判別するマルチチャンネル判別部170と、マルチチャンネルであると判別されたとき、切替スイッチ160、162、164にDVDプレーヤの出力を入力として選択させ、マルチチャンネルでないと判別された場合、騒音補正フィルタの出力を入力として選択させる切替制御信号Cとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用オーディオシステムに関し、特にマルチチャンネルのオーディオソースを再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
DVDなどのマルチチャンネルソフトの普及に伴い、マルチチャンネルのオーディオソースを再生するオーディオシステムが利用されている。マルチチャンネルによる音響効果を得るために、スピーカシステムは、5.1チャンネル方式または6.1チャンネル方式を採用している。最近では、このようなオーディオシステムが自動車内の空間にも普及されつつある。
【0003】
しかし、車室内空間におけるスピーカシステムは、必ずしも家庭用またはホームシアター用のスピーカシステムと同等ではない。このため、マルチチャンネルのオーディオソースをそのまま再生しても、マルチチャンネルによるサラウンド効果を十分に享受できないという問題がある。この問題に対処すべく特許文献1は、音源からの入力が、マルチチャネルオーディオ入力か、ステレオ・モノラル入力かを検知する入力検知手段と、入力検知手段によりマルチチャネルオーディオ入力であることを検知したとき、再生回路における再生特性をマルチチャネルオーディオ入力に適合した再生特性に補正する再生特性補正手段とを備えた車載用マルチチャネルオーディオ再生装置を提供している。具体的には、マルチチャンネルオーディオ入力のとき、リアのスピーカをサブではなくメインとして機能するように再生特性を補正している。
【0004】
【特許文献1】特開2001−69598号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車内でオーディオを聞くとき、エンジンノイズやロードノイズなどの騒音にさらされると、その音楽をよく聞くことができなくなる。このため、車室内に設置されたマイクロホンで走行騒音を測定し、その騒音に応じた補正を行っている。図7にそのような騒音補正機能を有するオーディオシステムの構成例を示す。サラウンド効果を得るために、車室内のフロント側のレフト、センター、ライトにスピーカ20、22、24を配し、リア側にサラウンド用のレフト、センター、ライトのスピーカ26、28、30を配し、さらにリア側に重低音用のサブウーファ32が配されている。DVDプレーヤ10と各スピーカ20〜32の間には、騒音に応じてオーディオ信号を補正するための騒音補正フィルタ40、42、44、46、48、50、52が接続されている。また、車室内にマイクロホン60が設置され、マイクロホン60により車室内のオーディオ再生音Pおよび騒音Nが検知される。騒音抽出部70は、マイクロホン60で検知された音声信号から騒音Nを抽出し、この騒音Nに応じて騒音補正フィルタ40〜52を補正している。
【0006】
DVDなどのマルチチャンネルソフトに対応するためには、上記のように騒音補正フィルタ40〜52を用いて多くのチャンネルに対してフィルタリングを行うため、DSPの演算処理量が大きくなり、コスト高となってしまう。一方、自動車の走行時の騒音は、図8に示すように、低音が大きく高音に向けて徐々に減少するスペクトルパターンを持つため、騒音補正フィルタ40〜52によって低音を増強する必要がある。しかし、サラウンド用のオーディオ信号には、ほとんど低音成分が含まれていないため、低音をブーストしても、騒音補正による効果があまり発揮されず、せっかく高価なDSPを用いても、その有効な活用が成されていないという実情があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために成されたもので、マルチチャンネルのオーディオソースに対応することができる低コストの車載用オーディオシステムを提供することを目的とする。
さらに本発明は、DSP等の利用効率を改善し、マルチチャンネルソフトに対応したサラウンド効果を得ることができる車載用オーディオシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車載用オーディオシステムは、オーディオ信号を再生する再生手段と、フロント側およびリア側に配された複数のスピーカと、再生手段とフロント側のスピーカとの間に接続され、再生されたオーディオ信号の信号処理を行う信号処理手段と、再生手段とリア側のスピーカとの間に接続され、前記信号処理手段の出力または再生手段の出力のいずれかを入力として選択する切替手段と、再生されるオーディオ信号がマルチチャンネルか否かを判別するマルチチャンネル判別手段と、マルチチャンネルであると判別されたとき、前記切替手段の入力として再生手段の出力を選択させ、マルチチャンネルでないと判別されたとき、前記切替手段の入力として前記信号処理手段の出力を選択させる切替制御手段とを有するものである。
【0009】
好ましくはリア側のスピーカは、車室内のリアに配された少なくともレフトおよびライトのサラウンドスピーカを含み、フロント側のスピーカは、車室内のフロントに配されたレフト、ライトのスピーカを含み、車室内に5.1チャンネルまたは6.1チャンネルのスピーカシステムが構成される。
【0010】
また信号処理手段は、自動車の騒音に応じてオーディオ信号の低周波をブースト(増強)する補正を行う。信号処理手段は、DSPによるフィルタの演算により行うことができる。
【0011】
さらに本発明の車載用オーディオシステムは、オーディオ信号を再生する再生手段と、フロント側およびリア側に配された複数のスピーカと、再生手段と複数のスピーカとの間に接続され、再生されたオーディオ信号の信号処理を行う信号処理手段と、再生されるオーディオ信号がマルチチャンネルか否かを判別するマルチチャンネル判別手段と、リア側のスピーカに接続された信号処理手段と並列に接続され、切替制御信号に応じて信号処理手段をバイパスするバイパス手段と、ステレオオーディオ信号をマルチチャンネルオーディオ信号に拡張する拡張手段と、マルチチャンネル判別手段によりマルチチャンネルと判別されたとき、前記バイパス手段により信号処理手段が実行されるように前記切替制御信号を供給し、ステレオチャンネルであると判別されたとき、さらに前記拡張手段がオンされているか否かを判別し、オンであれば前記信号処理手段に使用していた演算処理資源とメモリー資源を前記拡張手段に割り当て、前記バイパス手段により前記信号処理手段がバイパスされるように前記切替制御信号を供給する切替制御手段とを有するものである。
【0012】
さらに本発明に係る、車室内のフロント側およびリア側に配された複数のスピーカからオーディオ再生音を出力する車載用オーディオシステムのオーディオ信号の再生方法は、再生されるオーディオ信号がマルチチャンネルか否かを判別し、オーディオ信号がマルチチャンネルであると判別されたとき、フロント側のスピーカに供されるオーディオ信号について騒音補正を行い、リア側のサラウンドスピーカに供されるオーディオ信号について騒音補正を行わないステップを有するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車載用オーディオシステムによれば、騒音補正等を行う信号処理手段を再生手段とフロント側のスピーカ間に接続するようにし、オーディオ信号がマルチチャンネルのときにリア側のサラウンドスピーカへのオーディオ信号に対し騒音補正等の信号処理を行わないようにしたので、リア側のスピーカへ供されるオーディオ信号の信号処理手段を削除され、オーディオシステムのコストを低減させることができる。さらに本発明の車載用オーディオシステムによれば、リア側のサラウンド用スピーカに接続された信号処理手段をバイパスできるようにし、ステレオオーディオ信号をマルチチャンネルオーディオ信号に拡張するときに信号処理手段を利用できるようにしたので、信号処理手段を有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る車載用オーディオシステムの最良の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の実施例に係る車載用オーディオシステムの構成を示すブロック図である。車載用オーディオシステム100は、CD、DVD、ハードディスクーディスク、半導体メモリ、ブルーレイディスク等の記憶媒体に記憶されたディジタルオーディオソースを再生するためのオーディオ再生部110、オーディオ再生部110によって再生されたディジタルオーディオ信号を受け取り、サラウンド再生に必要な処理や騒音補正に必要な処理を行なうDSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)120、DSP120を制御するコントローラ130、ディジタルオーディオ信号をアナログ音声信号に変換しこれを増幅するアンプ140、アンプ140からのアナログオーディオ信号を可聴音に変換するスピーカ150とを含んでいる。
【0016】
コントローラ130は、後述するように、オーディオ信号がマルチチャンネルか否かを判別する処理、および車室内に設置されたマイクロホンにより検知された音声信号に基づき騒音を抽出する処理等を行い、これらの処理結果に応じてDSP120を制御する。コントローラ130は、例えばROM、RAMを含むマイクロコンピュータから構成され、ROM内に必要な制御を行うためのプログラムが記憶されている。
【0017】
スピーカ150は、図2に示すように、車室内のフロント側に、フロントレフト20、フロントセンター22、フロントライト24のフルレンジのメインスピーカと、リア側に、リアレフト26、リアセンター28、リアライト30のサラウンド効果用のスピーカと、さらに重低音用のリアセンターのサブウーファ32とを含んでいる。これにより、6.1チャンネルのスピーカシステムを実現している。
【0018】
図3は、図1のオーディオシステムの内部構成を示すブロック図である。なお、図中においてアンプ140を省略し、かつ従来の説明で用いた図7と同一構成については同一番号を付してある。オーディオシステム100は、オーディオ再生部としてDVDプレーヤ10、騒音補正フィルタ40、42、44、52、切換スイッチ160、162、164、およびスピーカ20〜32を含んでいる。本実施例では、騒音補正フィルタ40、42、44、52は、DVDプレーヤ10のフロントレフト出力F/L、フロントセンター出力F/C、フロントライト出力F/R、およびサブウーファ出力S/Wにそれぞれ接続され、サラウンド用のリアレフト出力R/L、リアセンター出力R/Cおよびリアライト出力R/Rには騒音補正フィルタが接続されていない。これは、サラウンド用のオーディオ信号には、低音成分があまり含まれておらず、低音を増強しても補正による効果があまり発揮されないためである。騒音補正フィルタ40、42、44、52は、DSP120のディジタル信号処理によって実施される。
【0019】
切換スイッチ160は、騒音補正フィルタ40の出力またはDVDプレーヤ10のリアレフト出力R/Lのいずれかを入力として選択し、これをリアレフトのスピーカ26へ出力する。同様に、切換スイッチ162は、騒音補正フィルタ42の出力またはDVDプレーヤ10のリアセンター出力R/Cのいずれかを入力として選択し、これをリアセンターのスピーカ28に出力する。切換スイッチ164は、騒音補正フィルタ44の出力またはDVDプレーヤ10のリアのライト出力R/Rのいずれかを入力として選択し、これをリアライトのスピーカ30に出力する。切換スイッチ160、162、164の動作制御は、マルチチャンネル判別部170の切換制御信号Cによって行われる。
【0020】
車室内のオーディオ再生音Pおよび騒音Nは、マイクロホン60に入力され、それらが騒音抽出部70へ供給される。騒音抽出部70にはさらに、DVDプレーヤ10からのオーディオ信号が入力され、これらの両信号の差分から騒音Nが抽出される。騒音抽出部70は、騒音Nに応じた補正係数を騒音補正フィルタ40、42、44、52に出力し、それらの動作を制御する。騒音抽出部70およびマルチチャンネル判別部170は、コントローラ170に含まれる。
【0021】
マルチチャンネル判別部170は、DVDプレーヤ10からのオーディオ信号をデコードし、再生されるオーディオ信号がマルチチャンネルか否かを判別する。マルチチャンネルは、例えば、ドルビーディジタルによる5.1チャンネルや6.1チャンネルのディジタルオーディオ信号である。マルチチャンネルでないオーディオ信号は、モノラルまたはステレオのオーディオ信号である。マルチチャンネルか否かの判別方法は、これ以外にも、例えばマルチチャンネルの入力と、モノラル/ステレオの入力が与えられる信号線が異なる場合、いずれかの信号線に入力があるかを検出することで判別するようにしてもよい。
【0022】
マルチチャンネル判別部170は、その判別結果に応じて切換制御信号Cを切換スイッチ160、162、164に出力し、それらの動作を制御する。オーディオ信号がマルチチャンネルであると判別した場合、切換制御信号Cにより切換スイッチ160、162、164はDVDプレーヤ10のリアレフト出力R/L、リアセンター出力R/Cおよびリアライト出力R/Rを入力として選択する。一方、オーディオ信号がモノラルまたはステレオであると判別された場合、切換制御信号Cにより切換スイッチ160、162、164は騒音補正フィルタ40、42、44の出力を入力として選択する。
【0023】
次に、本実施例のオーディオシステムの動作を図4のフローチャート参照して説明する。DVDプレーヤ10によってオーディオ信号が再生されると(ステップS101)、再生されたオーディオ信号がマルチチャンネル判別部170に供給される。マルチチャンネル判別部170は、オーディオ信号をデコードし、オーディオ信号がマルチチャンネルか否かを判別する(ステップS102)。
【0024】
オーディオ信号がマルチチャンネルであると判別されると、マルチチャンネル判別部170は、論理レベル「1」の切換制御信号Cを切換スイッチ160、162、164に出力する(ステップS103)。切換スイッチ160、162、164は、切換制御信号Cに応答して、DVDプレーヤ10のリアレフト出力R/L、リアセンター出力R/C、リアライト出力R/Rを入力として選択する(ステップS104)。
【0025】
一方、DVDプレーヤ10のフロントレフト出力F/L、フロントセンター出力F/C、およびフロントライト出力F/Rは、騒音補正フィルタ40、42、44に入力される。これにより、フロント側のスピーカへのオーディオ信号については、騒音抽出部70によって抽出された騒音に応答した補正、すなわち、低音を増強する補正が行われる。同様に、サブウーファ32へのオーディオ信号についても騒音補正フィルタ52による補正が行われる。これに対し、リア側のサラウンドスピーカ26、28、30へのオーディオ信号については、騒音に応じた補正は行われない(ステップS105)。上記したように補正による実効性が乏しいためである。
【0026】
オーディオ信号がモノラル/ステレオ信号であると判別された場合、マルチチャネル判別部170は、論理レベル「0」の切換制御信号Cを切換スイッチ160、162、164に出力する(ステップS106)。切換スイッチ160、162、164は、切換制御信号Cに応答して、騒音補正フィルタ40、42、44の出力を入力として選択する(ステップS107)。
【0027】
これにより、フロント側のスピーカとリア側のスピーカには、騒音補正された共通のオーディオ信号が供給される。すなわち、フロントおよびリアのレフトのスピーカ20、26には、騒音補正フィルタ40により補正されたオーディオ信号が供給され、フロントおよびリアのセンタースピーカ22、28には、騒音補正フィルタ42により補正されたオーディオ信号が供給され、フロントおよびリアのライトスピーカ26、30には、騒音補正フィルタ44により補正されたオーディオ信号が供給される。また、サブウーファスピーカ32には、騒音補正フィルタ52により補正されたオーディオ信号が供給される(ステップS108)。これによりフロントおよびリア側のスピーカからは、騒音補正されたオーディオ再生音が出力される。
【0028】
このように本実施例によれば、オーディオ信号がマルチチャンネルである場合には、リア側のサラウンド用スピーカへのオーディオ信号の騒音補正を行わないようにしたので、従来のオーディオシステムと比較して騒音補正フィルタを減少することができ、コストを低減させることができる。また、オーディオ信号がマルチチャンネルでない場合には、フロント側のオーディオ信号に対して補正された信号をリア側のサラウンド用スピーカで共用できるようにしたので、従来と同様の音響効果を維持することができる。
【0029】
次に本発明の第2の実施例について説明する。第2の実施例では、DSP120の資源を有効に利用する例について説明する。第2の実施例に係る車載用オーディオシステムの内部構成を図5に示す。同図に示すように、DSP120は、ドルビーによるプロロジック2やDTSによるNeo6といったサラウンドの拡張機能12を含んでいる。プロロジック2やNeo6は、ステレオ音声を5.1チャンネルまたは6.1チャンネル音声に拡張して再生させる機能であり、この機能は、例えばユーザからの入力180によってオン・オフを選択することができる。
【0030】
DVDプレーヤ10のフロント側の出力およびサブウーファ側の出力と対応するスピーカ20、22、24、32の間には、従来と同様に騒音補正フィルタ40、42、44、52が接続され、これらは騒音抽出部70で抽出された騒音に応じてオーディオ信号を補正する。一方、リアレフト出力R/L、リアセンター出力R/C、リアライト出力R/Rとリア側のサラウンド用スピーカ26、28、30との間にも、DSPの演算資源やメモリー資源を利用する騒音補正フィルタ46a、48a、50aが接続されている。騒音補正フィルタ46a、48a、50aに用いるDSPの演算処理資源やメモリー資源を用いて、DSPは、プロロジック2やNeo6による拡張処理を実行することができる。さらに騒音補正フィルタ46a、48a、50aと並列にバイパススイッチ190、192、194が接続されている。バイパススイッチ190、192、194は、マルチチャンネル判別部170からの切替制御信号Cに応答して騒音補正フィルタ46a、48a、50aをバイパスさせる。
【0031】
次に、第2の実施例の動作を図6のフローチャートを参照して説明する。オーディオ信号が再生され(ステップS201)、再生されるオーディオ信号がマルチチャンネルか否かが判別される(ステップS202)。マルチチャンネルである場合、マルチチャンネル判別部170は、論理「0」の切替制御信号Cをバイパススイッチ190、192、194に出力する(ステップS203)。切替制御信号Cに応答してバイパススイッチ190、192、194は接点を開き、これにより、リア側のリアレフト出力R/L、リアセンター出力R/C、リアライト出力R/Rが騒音補正フィルタ46a、48a、50aに接続される(ステップS204)。その結果、サラウンド用のリアスピーカ26、28、30からも、騒音補正されたオーディオ信号が出力される(ステップS205)。
【0032】
一方、オーディオ信号がマルチチャンネルでない場合には、プロロジック2等のサラウンド拡張機能12がオンか否か判別される(ステップS206)。拡張機能がオフである場合には、マルチチャンネルのときと同様の処理が成される。すなわち、バイパススイッチ190〜196が開き、リア側のサラウンド用スピーカ26、28、30にも、騒音補正されたオーディオ信号が供給される。この場合、第1の実施例と同様に、フロント側の騒音補正フィルタ40、42、44の出力をリア側のスピーカ26、28、30へ供給するようにしてもよい。
【0033】
拡張機能12がオンであるとき、マルチチャンネル判別部170は、論理「1」の切替制御信号Cを出力する(ステップS207)。これに応答してバイパススイッチ190、192、194の接点が閉じ、リアレフト出力R/L、リアセンター出力R/C、リアライト出力R/Rが騒音補正フィルタ46a、48a、50aをバイパスされる(ステップS208)。これにより、騒音補正フィルタ46a、48a、50aに用いられたDSPの演算処理資源およびメモリー資源がサラウンド拡張機能12に切り替えられ、プロロジック2やNeo6に対応するオーディオ信号の拡張処理が行われ、それらがリアのスピーカ26、28、30に供給される。これにより、サラウンド拡張されたマルチチャンネルオーディオ出力が得られるようになる。
【0034】
このように第2の実施例によれば、DSPの演算処理資源やメモリー資源を、プロロジック2やNeo6などの拡張処理や騒音補正処理に有効に活用することができる。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0036】
上記実施例では、車室内に6.1チャンネルのスピーカシステムを用いたが、これは5.1チャンネルであってもよい。また、オーディオ再生部110は、オーディオ信号を再生する機能を含むあらゆる電子機器を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係る車載用オーディオシステムは、車両等の移動体に装備されるオーディオシステムや、オーディオやビデオを複合したAV機器、さらにはナビゲーション機能を複合した車載用電子機器において広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例に係る車載用オーディオシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】車室内のスピーカの配置を示す図である。
【図3】図1のオーディオシステムの内部構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施例のオーディオシステムの動作を説明するフローチャートである。
【図5】第2の実施例の車載用オーディオシステムの内部構成を示すブロック図である。
【図6】第2の実施例のオーディオシステムの動作を説明するフローチャートである。
【図7】従来の車載用オーディオシステムの内部構成を示すブロック図である。
【図8】自動車の走行時の騒音スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0039】
20:フロントレフト 22:フロントセンター
24:フロントライト 26:リアレフト
28:リアセンター 30:リアライト
32:サブウーファ
40、42、44、46、48、50、52:騒音補正フィルタ
60:マイクロホン 70:騒音抽出部
100:車載用オーディオシステム 110:オーディオ再生部
120:DSP 130:コントローラ
140:アンプ 150:スピーカ
160、162、164:切換スイッチ
170:マルチチャンネル判別部
190、192、194:バイパススイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオ信号を再生する再生手段と、
フロント側およびリア側に配された複数のスピーカと、
再生手段とフロント側のスピーカとの間に接続され、再生されたオーディオ信号の信号処理を行う信号処理手段と、
再生手段とリア側のスピーカとの間に接続され、前記信号処理手段の出力または再生手段の出力のいずれかを入力として選択する切替手段と、
再生されるオーディオ信号がマルチチャンネルか否かを判別するマルチチャンネル判別手段と、
マルチチャンネルであると判別されたとき、前記切替手段の入力として再生手段の出力を選択させ、マルチチャンネルでないと判別されたとき、前記切替手段の入力として前記信号処理手段の出力を選択させる切替制御手段と、
を有する車載用オーディオシステム。
【請求項2】
前記リア側のスピーカは、車室内のリアに配された少なくともレフトおよびライトのサラウンドスピーカを含み、前記フロント側のスピーカは、車室内のフロントに配されたレフト、ライトのスピーカを含む、請求項1に記載の車載用オーディオシステム。
【請求項3】
前記車室内に、5.1チャンネルまたは6.1チャンネルのスピーカが配される、請求項2に記載の車載用オーディオシステム。
【請求項4】
前記信号処理手段は、自動車の騒音に応じてオーディオ信号の低周波を増強する補正を行う、請求項1に記載の車載用オーディオシステム。
【請求項5】
オーディオ信号を再生する再生手段と、
フロント側およびリア側に配された複数のスピーカと、
再生手段と複数のスピーカとの間に接続され、再生されたオーディオ信号の信号処理を行う信号処理手段と、
再生されるオーディオ信号がマルチチャンネルか否かを判別するマルチチャンネル判別手段と、
リア側のスピーカに接続された信号処理手段と並列に接続され、切替制御信号に応じて信号処理手段をバイパスするバイパス手段と、
ステレオオーディオ信号をマルチチャンネルオーディオ信号に拡張する拡張手段と、
マルチチャンネル判別手段によりマルチチャンネルと判別されたとき、前記バイパス手段により信号処理手段が実行されるように前記切替制御信号を供給し、ステレオチャンネルであると判別されたとき、前記バイパス手段により前記信号処理手段がバイパスされるように前記切替制御信号を供給する切替制御手段と、
を有する車載用オーディオシステム。
【請求項6】
車室内のフロント側およびリア側に配された複数のスピーカからオーディオ再生音を出力する車載用オーディオシステムのオーディオ信号の再生方法であって、
再生されるオーディオ信号がマルチチャンネルか否かを判別し、
オーディオ信号がマルチチャンネルであると判別されたとき、フロント側のスピーカに供されるオーディオ信号について騒音補正を行い、リア側のサラウンドスピーカに供されるオーディオ信号について騒音補正を行わない、
オーディオ信号の再生方法。
【請求項7】
オーディオ信号がマルチチャンネルでないと判別されたとき、フロント側のスピーカへ供される騒音補正されたオーディオ信号をリア側のサラウンドスピーカへ供給する、請求項6に記載のオーディオ信号の再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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