説明

車載用レーダ装置の軸調整方法

【課題】車両の地面対して水平な位置を簡易な方法で調節でき、車両に取付けるレーダ装置の軸調整を正確に行うことの出来る技術を提供する。
【解決手段】車両を上下方向に調節可能な車両昇降台22上に、車両の水平位置を確認できる水準器30を設けることにより、車両の水平位置を該水準器を見ながら調節する。車両水平位置が調節された基準位置において、レーダ装置の車両への取り付けを行う。レーダ装置の車両への取り付け後におけるレーダ装置の軸調整は、公知の方法を用いることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両と車両前方の障害物等との距離を測定するレーダ装置の車両への取り付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ACCシステム(アダプティブ・クルーズ・コントロール・システム)、車間警報システム等に使用されるレーダ装置を車体に取り付ける場合、そのレーダ装置の物体検知軸が予め設定した方向を正しく指向していないと、隣車線の対向車を誤検知してシステムが誤作動したり、路面、陸橋、看板だけを検知して先行車を検知しないためにシステムが作動しないという問題が発生する。
特許文献1では、レーダ装置の物体検知軸を予め設定した方向に一致させる作業(エイミング)を行うための方法が開示されている。この方法は、車体に取り付けたレーダ装置のアンテナの上面の水平度および前面の鉛直度をデジタル水平器およびデジタル鉛直器で測定し、その測定結果に基づいてアンテナの軸の水平方向に対する上下角度を所定の方向に調整するようになっている。
このようなレーダ装置の物体検知軸の軸調節方法は軸の調整を行う際に車両が水平状態で停止していることが前提である。
この問題を解決する手段として特許文献2では、車両の停止状態で物体検知装置の物体検知軸を水平方向に対して所定の角度に合わせ、その後、車両を前記停止状態と反対向きに停止させた状態で物体検知装置の物体検知軸の水平方向に対する角度を測定し、両角度の間の中央の角度となるように物体検知装置の物体検知軸を上下方向に調整することにより、車両が前後方向に水平な状態で停止していない場所で軸調整を行う場合であっても検知軸の調整を適切に行うことの出来る方法を開示している。
【特許文献1】特開平11−326495号公報
【特許文献2】特開2004−101348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献2の方法では車両横手方向に傾斜した場所においては正確な軸調整を行うことができない。また、車両の停止状態で物体検地軸を所定の角度に合わせた後に、車両を前記停止状態と反対向きに移動させなければならないという工程が存在するため、レーダ装置の軸調整に時間がかかる。
【0004】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、停車場所の傾斜方向に関わらず簡易な方法でレーダ装置の検知軸調整を行うことの出来る方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため本発明は、車両用レーダ装置の車両への取り付け方法であって、
車両を、地面に対する車両の傾斜を調節可能な車両水平調節台へ移動する工程と、
前記車両水平調節台に設けられた水準器が水平位置を示す基準位置に車両調節台を調節する工程と、
車両が前期基準位置を維持した状態で、車両用レーダ装置を車両に取り付ける工程と、
を有することを特徴としている。
【0006】
本発明よれば、従来技術のように車両を複数回移動させることなしに、車両水平調節台へ移動することのみで容易に車両の水平度を調節することが可能である。また車両長手方向の傾斜のみならず横手方向の傾斜も矯正することができ、レーダ装置の軸調整を正確に行うことが出来る。
【0007】
発明の他の一態様においては、前記記載の車両用レーダ装置の車両への取り付け方法であって、
前期水準器は車両長手方向の水平度を測定する第一水準器と、車両横手方向の水平度を測定する第二水準器とを有しており、前記基準位置は、第一及び第二の水準器の夫々が水平位置を示す位置であることを特徴としている。
また発明の他の一態様においては、前記記載の車両用レーダ装置の車両への取り付け方法であって、前記車両水平調節台は、車両右側の前輪及び後輪を載置する第一昇降台と、車両左側の前輪及び後輪を載置する第二昇降台と、車両長手方向に垂直であって、前記第一及び第二昇降台を連結する連結部とを有し、前記水準器は前記連結部に設けられていることを特徴としている。
【0008】
本発明によれば、レーダ装置の軸調整が行われるカー・ディーラー等に通常設置されているカーリフト等に水準器を置くことにより、簡単に車両の水平度調節が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施例を図1乃至図4を用いて説明する。図1は車両を車両水平調節装置に載せた状態で車両横手(車両前方から見て右側)方向から見た図である。図2は水準器の一例を示した図である。図3は図1の状態において、車両を前方から見た図である。図4はレーダ装置を車両への取り付けた後の軸調整の一例を示した図である。
【0010】
図1における車両水平調節装置10は、車両昇降機20、及び水準器30から構成される。車両昇降機20は図1のA及びBの位置で昇降台を上下方向に移動することにより車両長手方向の水平位置を調節できる。昇降移動は自動、又は手動のいずれでも本発明の実施は可能であるが、図1では手動による車両昇降機20を使用した場合を示している。昇降レバー21を回転させることにより昇降台が上下に動くため、車両の上下位置を調節することができる。
図2に示す水準器30は、上部が開口した金属製又はプラスティック製の直方体の容器であって、図1に示すように車両長手方向の長さとほぼ同様の長さを有している。水準器30は昇降台と連動して動くよう、昇降台上であって、車両が昇降台22の上に乗った状態で車輪の脇に配置される。水準器は予め車輪載置レーンと一体に形成されていても良いし、磁石やフックを用いて後から取り付けても良いし、水準器を単に車両脇に置くこととしても良い。
図2に示すように水準器30は容器内側壁の長手方向に設けた平行な2本のインジケータ31を有している。インジケータは容器内側壁に長手方向に2本の平行直線を描くこととしても良いし、2本の平行溝を設けることにより形成されても良い。水準器30を昇降台22に配置するには昇降台22の上面とインジケータが平行となるようにして取り付けられる。平行を確保するために、昇降台22の水準器30を受け入れる溝深さを予め調整しておいたり、取り付けフックの位置を調節したりすることにより対応ができる。
【0011】
車両左方向にも同様の車両水平調節装置10が配置されている。水準器30の位置も車両右側と同様に昇降台上であって、車輪の脇に配置される。水準器30は車両の内側又は外側のどちらに置かれても構わないが、後に説明する車両の水平位置を調節する工程において、水準器30の液面を見ながら車両水平位置を調整することの便宜を考慮すれば、車両外部からでも見やすい位置、つまり車両外側に配置されることが最適であろう。
また、水準器30が透明のプラスティック製であって、水準器内の液面とインジケータの位置が外部からでも確認できるようにすることにより更に車両水平度の位置調節が容易となる。
【0012】
図3に示すように、車両前方に左右の昇降台22をつなぐ連結部材23が配置されている。連結部24は昇降台の昇降の動きに連動してA、Cの位置で昇降可能となっている。連結部24をヒンジ等で連動するようにしてもよいが、簡易的な構成とするため、単に平板等を左右の昇降台22に載置することとしてもよい。これにより左右の昇降台22に支持された連結部材23が左右昇降台の昇降の動きに連動する。
水準器30は車両横手方向の水平を測定するために連結部材23の上下方向の動きに連動するように配置される。昇降台22の水準器30と同様に、水準器30は連結部材23と一体に形成されても良いし、フック、又は磁石により取付けることとしてもよい。また単に連結部材上に水準器30を載置することとしても良い。水準器30は昇降台22の水準器30と同様に容器の内側壁に2本のインジケータ31を有しており、左右の昇降台22の上面を結ぶ線とインジケータ31が平行となるように水準器30が取付けられる。
【0013】
次にレーダ装置の車両への取り付け手順について説明する。
まず図1に示すように車両を車両水平調節装置10へ移動する。この際に昇降位置であるA乃至D(Dは車両左側後輪の位置)の位置のいずれかは予め固定した位置に調節しておくことが好ましい。後に説明するレーダ装置の軸調整において、ターゲット上のマークの位置が車両の決まった高さにおいて調節されているように位置決めされているため、その位置にいずれかの昇降位置を設定しておけば車両の水平度を調節するのにその固定位置以外の昇降位置で調節すれば良いからである。以下ではAの位置を固定した場合の手順について説明する。
次に各水準器30の容器を左右の昇降台、及び車両前方の連結部材上に載置する。載置する場所は上記のとおり昇降台上であって、車両の外側、及び車両前方の連結部上である。水準器30が予め昇降台22及び連結部材23に一体となっていれば、この工程は必要ない。
水準器30には予め液体が満たされていても良いが、予め液体満たさずに所定場所に載置後液体を注入することとしても良い。液体は水でも良いし、着色水でも良い。着色されていれば液面の位置を確認しやすいであろう。
次に、車両前方から連結部上に載置された水準器30を見ながら車両の水平を調節する。図3の状態であればBの位置で昇降台を上げるよう昇降ハンドルを調節する。そして水準器内の液面が2本のインジケータの間に納まるよう昇降台の位置を調節する。同様に昇降台上に載置された水準器を見ながら車両長手方向の水平度を調節する。図1においては昇降機Bの昇降台の位置を下方へ下げる。同様にして昇降機Dの昇降台の位置調節を行う。
車両の水平位置が決定したら、この位置において車両を維持してレーダ装置の取り付けを行う。車両左右方向及び前方にある水準器の全てが車両の水準位置を示す位置が基準位置となる。
レーダ装置50の取り付けについては公知の技術を用いることが出来る。図4を用いてその一例説明する。
レーザ装置55が、レーダの照射方向と同一軸方向にレーザ光が照射されるように位置調節された状態で、レーダ装置に装着されている。
またレーダ装置50はステー53を介して車両取り付け用ブラケット51に軸方向を調節可能に取付けられている。具体的には、軸調節用ネジ54を締めたり弛めたりすることにより、ブラケット51を車両支持板56に取付けた後でもレーダ装置50の軸方向を調節ができるようになっている。
まずレーダ装置50はブラケット51を車両支持板56に取付けネジ52を介して図4に示すように取付けられる。
次にレーダ装置50に装着されたレーザ55を照射し、車両前方に設けたターゲット面40にレーザ光を照射する。この際、ターゲット面上には、軸調節が正しくされた状態であればレーザ光が照射される位置に予めマーク41が施されている。
次に、ターゲット面上に現れるレーザポイントが、上記マーク41の位置に重なるよう、軸調節ネジ54を調節する。
このようにしてレーダ装置の取り付けは終了する。
【0014】
本発明を例示の実施例を参照して説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行ってもよく、各要素を均等物と交換してもよいということは当業者には理解されよう。更に、本発明の要旨から逸脱することなく、多くの変更を行って、特定の状況又は材料を本発明の教示に対し適合させることができる。従って、本発明を、実施する上で考えられる最良の態様として開示した特定の実施例に限定しようとするものではなく、本発明は、特許請求の範囲の範疇の全ての実施例を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、車両を横手方向から見た図である。
【図2】図2は、水準器の一例を示した図である。
【図3】図3は、車両を前方方向から見た図である。
【図4】図4は、車両へレーダ装置を取付ける際の図である。
【符号の説明】
【0016】
10 車両水平調節装置
20 車両昇降機
21 昇降レバー
22 昇降台
23 連結部材
24 連結部
30 水準器
31 インジケータ
40 ターゲット
41 マーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用レーダ装置の車両への取り付け方法であって、
車両を、地面に対する車両の傾斜を調節可能な車両水平調節台へ移動する工程と、
前記車両水平調節台に設けられた水準器が水平位置を示す基準位置に車両調節台を調節する工程と、
車両が前期基準位置を維持した状態で、車両用レーダ装置を車両に取り付ける工程と、
を有することを特徴とする方法。

【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前期水準器は車両長手方向の水平度を測定する第一水準器と、車両横手方向の水平度を測定する第二水準器とを有しており、前記基準位置は、第一及び第二の水準器の夫々が水平位置を示す位置であることを特徴とする、方法。

【請求項3】
請求項2記載の方法であって、
前記車両水平調節台は、車両右側の前輪及び後輪を載置する第一昇降台と、車両左側の前輪及び後輪を載置する第二昇降台と、車両長手方向に垂直であって、前記第一及び第二昇降台を連結する連結部とを有し、前記水準器は前記連結部に設けられていることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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