車載用無線通信装置
【課題】効率よく通信を行う基地局を選択し、送受信できるデータ量を増加させることができる車載用無線通信装置を提供する。
【解決手段】中間周波数のDC成分をカットするためのHPF20を通過したIF信号を、第2のADC21で、IF信号の周波数の2倍よりも低い周波数でサンプリングする。そして第2のADC21の出力より基地局が送信している信号のチャネル情報を通信チャネル情報取得部22により取得し、基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時に基地局からのデータを受信する全チャネルが配置されるように局部発振器19の周波数を設定する。さらに通信チャネル情報取得部22で取得した情報を用いてチャネル選択部23で接続するチャネルを決定するようにした。
【解決手段】中間周波数のDC成分をカットするためのHPF20を通過したIF信号を、第2のADC21で、IF信号の周波数の2倍よりも低い周波数でサンプリングする。そして第2のADC21の出力より基地局が送信している信号のチャネル情報を通信チャネル情報取得部22により取得し、基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時に基地局からのデータを受信する全チャネルが配置されるように局部発振器19の周波数を設定する。さらに通信チャネル情報取得部22で取得した情報を用いてチャネル選択部23で接続するチャネルを決定するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用無線通信装置に関わり、特に狭域通信システムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
ITS(高度道路交通システム)では、近年ETC(ノンストップ自動料金支払いシステム)をはじめとする狭域通信システム(DSRC;Dedicated Short-Range Communication System)通信方式を用いて基地局(路側に設置された無線装置)と移動局(車両に搭載された無線装置)の間で無線通信を行うシステムが実用化されている。
現在普及しているDSRC通信方式を用いたサービスのほとんどはETCに利用されているが、近年DSRCに関する通信規格や法律の整備が進み、今後は様々なサービスが実現することが期待されている。駐車場やガソリンスタンドにおける決済や、SA/PA(Service Area/Parking Area)等における情報接続サービスや道路上における情報提供など、DSRCを応用したさまざまなサービスが可能となる。
DSRCは、5.8GHz帯の周波数帯を使用し通信可能な範囲は、およそ数mから30m程度である。また、伝送速度はETCでも使用されているASK変調方式を用いた1Mbpsに加え、π/4 shift QPSK変調方式を用いた4Mbpsの2種類の伝送速度が規定されている。DSRCの移動局は、基地局から送信されるスロット割付情報やフレーム制御などからなるFCMC(Frame Control Message Channel)を受信し、無線通信に使用する周波数を決定する。DSRCではアプリケーションによってETCのようにASK変調方式のみを用いる通信装置もあるため、互換性を確保するためFCMCはASK変調方式を用い、選択が可能ならば、メッセージデータにはπ/4 shift QPSK変調方式を用いることもできる。
【0003】
図7は、狭域通信システムの標準規格であるARIB STD−T75における無線周波数と各チャネルの配置を示した図である。
ARIB STD−T75規格では、アップリンク用、ダウンリンク用にそれぞれ7チャネルずつ割り当てられ、アップリンク周波数とダウンリンク周波数はペアになっている。図7のチャネル配置から明らかなように、アップリンクとダウンリンクでは40MHz離れたチャネルを使用することとなる。つまり、基地局からの送信信号は、5.775GHzから5.805GHzの最大7チャネルに設定され、移動局で受信される。
また、DSRCでは、路側に設置された基地局と高速移動する車両に搭載された移動局との間で通信を行うため、データの送受信が行える時間は非常に短い。そのため、できるだけ短時間で基地局と接続処理を終えることが望ましい。移動局は基地局と接続するために、まず通信可能な接続チャネルを走行中に探す必要がある。
【0004】
前記のように7チャネル存在するダウンリンク・チャネルの中から順番に基地局のサーチを行う。この時に基地局からのFCMCを受信、CRC検定を行い、CRC検定結果が正常の時、周波数を選定することができる。移動局は、このFCMCのCRC検定を各チャネルで複数回実行の上、周波数を選定することが望ましいとされている。
さらに、2つ以上のチャネルでFCMCのCRC検定結果が正常であったならば、各チャネルごとの受信電力を比較して、周波数を選定することが望ましいとされている。規格では周波数選定時間が定義されており、最大9スロットのフレームを9フレーム以内の時間おいて各チャネルで周波数選定を行うとなっている。つまり、1チャネルあたり最大63msec時間が必要となり、もしも全チャンネルが使用中で受信可能な状態であったなら、全チャネルをサーチし、受信状況が良好で最大のパワーを示すチャネルを選択するのに最大で441msecの時間が必要となる。これは時速120kmで走行中の車両の場合、約15mも進むこととなる。このように通信可能な接続チャネルの選定に多くの時間を費やすことは、データの送受信が行える時間を減少させ、送受信できるデータの量を低下させてしまう。
【0005】
ところで、受信機のRF構成はいろいろな種類が考えられ、一般的にはスーパーヘテロダイン方式やダイレクトコンバージョン方式またはLOW−IF方式などが採用されている。ARIB STD−T75規格のシステムでもいろいろなRF構成が考えられる。
図8は従来の受信系のRF構成の一例を示した図である。
この図8における受信機は、高周波信号を受信するアンテナ50と、アンテナ50からの入力信号を使用する全受信チャンネル使用帯域で制限する帯域制限フィルタ(第1のBPF)51と、第1のBPF51の出力信号を増幅する低雑音増幅器(LNA)52と、LNA52の出力を中間周波数に変換するためのミキサ(Mix)53と、ミキサ53のミキシング周波数を決定する可変可能な局部発振器59と、ミキサ53の出力である中間周波(IF)帯信号を増幅するIFAMP54と、IFAMP54の出力を帯域制限するための中間周波帯域制限フィルタ(第2のBPF)55と、第2のBPF55の出力をサンプリングしてディジタルデータに変換するAD変換器(ADC)56と、ADC56により変換されたディジタルデータから信号を復調する復調部57と、局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部58とを備えて構成される。
【0006】
このように構成される受信機では、アンダーサンプリングを行うとADC56のサンプリング周波数を低くできるので、でディジタル信号処理による復調処理の動作周波数を低くすることが可能となり、受信機の低消費電力化を実現することができるというメリットがある。
前記のようにARIB STD−T75規格のシステムでは、送受信機のチャネルが40MHz離れていることから、受信用のRF周波数変換を送信チャネルと同じ周波数の局部発振器でミキシングすると、受信IF信号として40MHzを中心とした信号が得られる。このようにすることで、受信RF信号は40MHzのIF信号までダウンコンバージョンされて、復調処理を行うことができるため、前記のように送受信で局部発振器をひとつで実現できるというメリットもある。
図9に受信信号とアンダーサンプリングの関係を示す。
この図9に示すように、サンプリング周波数を32.768MHzで動作させた時の40MHzの受信信号は7.232MHzを中心とした受信帯域に現れる。
【0007】
図10はサンプリング周波数が32.768MHzの時に、チャネル7で接続した基地局(5.775GHzで受信)からの受信信号と他チャネルのIF周波数と折り返し周波数の関係を示した図である。アンダーサンプリング手法ではサンプリング周波数の1/2の帯域で折り重なるため、受信する信号帯域以外の他チャネル信号の影響を受けやすい。
図11は図10と同様に、サンプリング周波数が32.768MHz、チャネル7で接続した時にIF周波数と折り返し周波数の様子を示す図である。
従来の無線通信装置では図11(a)に示すように、受信信号以外の帯域を帯域制限フィルタ(BPF)で十分にカットしてしまう。このことは通信可能な周波数の選定が終了し、基地局と接続した後で、メッセージデータの送受信を行う時には、妨害波が発生したことによる通信エラーを防ぐために大変有効である。
しかし、受信信号以外の帯域をカットしてしまうため、1回の周波数設定で1つのチャネルでの通信情報しか得られなくなってしまう。つまり図11(b)のように受信帯域を広げ、1回の周波数設定で複数のチャネルでの通信情報を取得すれば、通信可能な周波数選定時間を短くすることができる。
さらにDSRCではASK変調方式を用いて送信することができ、互換性を確保するためにはデータにπ/4 shift QPSK変調方式を用いる場合でも、FCMCはASK変調方式を用いることができる。ASK変調方式は、振幅で情報を伝えるために、送信機と受信機の中間周波数が合っていなくても復調することができる。
【0008】
図12は、サンプリング周波数を32.768MHzで、チャネル1に中心周波数を設定(5.795GHzで受信)した時における受信信号と他チャネルのIF周波数と折り返し周波数の関係を示した図である。
サンプリング周波数を32.768MHzとした時には、チャネル6(5.780GHz)の信号が7.768MHzを中心とした信号として折り返して現れる。本来の受信信号(5.795GHz)が7.232MHzを中心とした受信帯域に現れるため、妨害波になるチャネル6の信号と希望波の中心周波数とは0.536MHzしか離れていない。そのため受信機では希望波が同時刻に出力されていなければ、一般的に復調部に備える、妨害波やダウンコンバージョンの結果生じる不要成分をカットするLPFを通したとしても、妨害波になるチャネル6の信号を問題なく復調できる。FCMCには基地局が通信を行っている周波数を示すコードが含まれるため、CRC検定結果が正常であれば、受信したチャネルの無線周波数を特定することができる。
【0009】
なお、IF帯信号をアンダーサンプリングにより復調処理する方式は従来技術として特許文献1、2などの先願特許が公開されている。
特許文献1では、複数のBPFを用い、アンダーサンプリングによる折り返し雑音をカットしている。そのため一般的な無線通信装置と同様、周波数選定時には1回の周波数設定で1つのチャネルの通信状況しか取得できず、周波数選定時間に多くの時間を割いてしまう。
特許文献2では、妨害波と希望波と受信強度に応じてサンプリング周波数を変化させている。しかし、妨害波による通信エラーを防ぐことを目的としており、受信中のチャネルに影響のある妨害波の存在の検出は行うが、妨害波や受信帯域以外のチャネル周波数の通信状況の検出を行わず、周波数選定時間を短縮まで考慮されていない。
【0010】
【特許文献1】特開2003−318760公報
【特許文献2】特開2004−96141公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように車載用無線通信装置では、短い時間でのデータ送受信を行うことを求められるため、できるだけ短い時間で接続処理を行うことが望ましい。そのため通信可能な接続チャネルの選定は、短時間で終了させることが望ましい。一方、アンダーサンプリング手法で受信処理を行う受信機は、妨害波が希望波に折り重なる現象が発生する。これにより周波数選定時には、1回の周波数設定で複数のチャネル情報を取得することができるため、周波数選定時間の短縮につながる。
本発明はかかる課題に鑑み、高速で移動する車載用通信装置の移動局において、アンダーサンプリング方式で受信することにより受信中のチャネル以外のチャネルの信号が折り返すことを用いて効率よく通信を行う基地局を選択し、送受信できるデータ量を増加させることができる車載用無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、隣接する複数のチャネルで構成された高周波信号を受信するアンテナと、前記アンテナからの入力信号を全受信チャネルの使用帯域で制限する第1の帯域制限フィルタと、前記第1の帯域制限フィルタの出力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力を中間周波数に変換するミキサと、前記ミキサのミキシング周波数を決定する局部発振器と、前記ミキサの出力である中間周波帯信号を増幅する中間周波増幅器と、前記中間周波増幅器の出力を帯域制限する第2の帯域制限フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器と、前記第1のAD変換器の出力をディジタル信号処理により復調する復調部と、前記局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部とを備える車載用無線通信装置において、前記中間周波数のDC成分をカットする高域通過フィルタと、前記高域通過フィルタを通過した中間周波帯信号を、該中間周波帯信号の2倍の周波数よりも低い周波数でサンプリングする第2のAD変換器と、前記第2のAD変換器の出力より基地局が送信している送信信号のチャネル情報を取得する通信チャネル情報取得部と、前記通信チャネル情報取得部で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部と、を備え、前記基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時、前記コントローラ部は、前記基地局からのデータを受信する全チャネルが配置されるように前記局部発振器の周波数を設定し、前記通信チャネル情報取得部は、前記中間周波増幅器の出力を前記第2のAD変換器によりディジタルデータにサンプリングすることを特徴とする。
このような本発明によれば、1回の周波数設定で全てのチャネルの通信情報を取得することができる。そのため、効率よくチャネル選択を行うことが可能となり、チャネル選択にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0013】
また請求項2に記載の本発明は、隣接する複数のチャネルで構成された高周波信号を受信するアンテナと、前記アンテナからの入力信号を全受信チャネルの使用帯域で制限する第1の帯域制限フィルタと、前記第1の帯域制限フィルタの出力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力を中間周波数に変換するミキサと、前記ミキサのミキシング周波数を決定する局部発振器と、前記ミキサの出力である中間周波帯信号を増幅する中間周波増幅器と、前記中間周波増幅器の出力を帯域制限する第2の帯域制限フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器と、前記第1のAD変換器の出力をディジタル信号処理により復調する復調部と、前記局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部とを備える車載用無線通信装置において、前記中間周波数のDC成分をカットする高域通過フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力と前記高域通過フィルタの出力とを選択可能なフィルタ選択部と、前記第1のAD変換器の出力より前記基地局が送信している信号のチャネル情報を取得する通信チャネル情報取得部と、前記通信チャネル情報取得部で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部と、を備え、基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時、前記コントローラ部は、前記基地局からのデータを受信する全チャネルが配置されるように前記局部発振器の周波数を設定し、前記通信チャネル情報取得部は、前記第1のAD変換器のサンプリング周波数を前記中間周波帯信号の周波数の2倍よりも低い周波数に設定したうえで、前記フィルタ選択部により前記高域通過フィルタの出力を選択し、前記第1のAD変換器において前記高域通過フィルタを通過した中間周波帯信号をディジタル信号にサンプリングすることを特徴とする。
本発明によれば、1回の周波数設定で全てのチャネルの通信情報を取得することができるため、効率よくチャネル選択を行うことが可能となり、チャネル選択にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0014】
また請求項3に記載の本発明は、隣接する複数のチャネルで構成された高周波信号を受信するアンテナと、前記アンテナからの入力信号を全受信チャネルの使用帯域で制限する第1の帯域制限フィルタと、前記帯域制限フィルタの出力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力を中間周波数に変換するミキサと、前記ミキサのミキシング周波数を決定する局部発振器と、前記ミキサの出力である中間周波帯信号を増幅する中間周波増幅器と、前記中間周波増幅器の出力を帯域制限する第2の帯域制限フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器と、前記第1のAD変換器の出力をディジタル信号処理により復調する復調部と、前記局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部とを備える車載用無線通信装置において、前記第1のAD変換器の出力より前記基地局が送信している信号のチャネル情報を取得する通信チャネル情報取得部と、前記通信チャネル情報取得部で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部と、を備え、基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時に、前記コントローラ部は、基地局からのデータを受信する2つ以上のチャネルが配置されるように前記局部発振器の周波数を設定し、前記通信チャネル情報取得部は、前記第1のAD変換器のサンプリング周波数を、前記中間周波帯信号の周波数の2倍よりも低い周波数に設定したうえで、前記第2の帯域制限フィルタを通過した中間周波帯信号を前記第1のAD変換器によりディジタル信号にサンプリングすることを特徴とする。
本発明によれば、1回の周波数設定で2つ以上のチャネルの通信情報を取得することができる。そのため、効率よくチャネル選択を行うことが可能となり、チャネル選択にかかる時間を短縮することができる。
【0015】
また請求項4に記載の本発明は、前記通信チャネル情報取得部は、受信したフレームを復調処理して得られる基地局がどの周波数で通信を行っているかを示すコードにより、基地局が送信している信号のチャネル情報を得る請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載用無線通信装置を特徴とする。
本発明によれば、受信チャネル以外のチャネルでも、ASK変調方式のFCMCを受信し、CRC検定結果が正常である時に、FCMCより基地局が送信を行っているチャネル情報を得ることができる。そのため、確実に基地局が送信を行っている周波数のチャネル情報を得ることができる。
また請求項5に記載の本発明は、前記通信チャネル情報取得部が、FFT演算により周波数解析を行い、受信チャネル信号の各チャネル周波数のパワー値を算出し、基地局が送信している信号のチャネル情報を得る請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載用無線通信装置を特徴とする。
本発明によれば、妨害波が発生し、アンダーサンプリングによって妨害波が希望波の受信帯域に折り返して通信エラーがおこっていても、各チャネルの通信情報を取得することができる。そのため、チャネル選択にかかる時間を短縮することができる。
また請求項6に記載の本発明は、前記通信チャネル情報取得部は、各受信チャネルの周波数を中心周波数とし、1つ以上のチャネルを受信する帯域幅の信号を通過するフィルタ群を並列に配置し、前記フィルタ群からのそれぞれの出力のパワー値を算出し、基地局が送信している信号のチャネル情報を得る請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載用無線通信装置を特徴とする。
本発明によれば、妨害波が発生し、アンダーサンプリングによって妨害波が希望波の受信帯域に折り返して通信エラーがおこっていても、各チャネルの通信情報を取得することができる。そのため、チャネル選択にかかる時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車載用無線通信装置の移動局受信機において、周波数選定時にアンダーサンプリング方式で受信処理を行い、1回の周波数設定で複数のチャネルの通信情報を取得して接続処理を短時間で行うことで、多量のデータを送受信できる車載用無線通信装置の移動局を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線受信装置のブロック図である。この図1に示す無線受信装置1は、高周波信号を受信するアンテナ10と、アンテナ10からの入力信号を使用する全受信チャネル使用帯域で制限する帯域制限フィルタ(第1の帯域制限フィルタ、以下、第1のBPFと称する)11と、第1のBPF11の出力信号を増幅する低雑音増幅器(LNA)12と、LNA12の出力を中間周波数に変換するミキサ(Mix)13とを備えている。ミキサ13には局部発振器19が接続され、ミキシングする周波数を決定している。ミキサ13の出力は、中間周波(IF)帯信号を増幅するIF増幅器(IFアンプ)14と、IF増幅器14の出力を帯域制限する中間周波帯域制限フィルタ(第2の帯域制限フィルタ、以下、第2のBPFと称する)15と、第2のBPF15の出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器(第1のADC)16と、第1のADC16により変換されたディジタルデータから信号を復調する復調部17とコントローラ部18と、を備えている。
【0018】
さらに、本実施の形態の無線受信装置では、IF増幅器14の出力のDC成分をカットして高域成分のみを通過させる高域通過フィルタ(HPF)20と、HPF20の出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第2のAD変換器(第2のADC)21と、第2のADC21により変換されたディジタルデータから通信チャネルの情報を取得する通信チャネル情報取得部22と、この通信チャネル情報取得部22で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部23と、を備えている。
第1のADC16のサンプリング周波数は、受信IF周波数の2倍よりも低い周波数に設定し、アンダーサンプリング方式を用いて受信処理を行っても良いし、受信IF周波数の2倍以上のナイキスト条件を満足する周波数に設定し、オーバーサンプリング方式を用いて受信処理を行っても良い。受信状態の良い方式を選択して使用しても良い。第1のADC16のみを用いて帯域制限された信号で受信処理を行うのは、使用するチャネルが決まった後になる。
一般に基地局が使用しているチャネル番号は分からないので、最初は基地局の使用チャネルを検出して、その後接続処理を行い、接続後にデータ通信を開始できる。したがって、走行中は常にチャネル検出状態にしておく必要がある。
前述の従来技術のように、チャネル毎に局部発信器の周波数を変更してチャネル検出処理を行うと、7チャネル分の検出処理に441msecもの時間を必要とする可能性がある。
【0019】
そこで、本実施の形態では、チャネル選択中は第1のADC16の代わりに第2のADC21を使用する。第2のADC21のサンプリング周波数は受信IF周波数の2倍よりも低い周波数に設定し、アンダーサンプリング方式で受信処理を行う。そして、第2のADC21でサンプリングされたディジタル信号を復調処理やパワーの検出を行うことで、基地局からの信号が送信されている周波数を検出する。
つまり、本実施形態では、基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時、コントローラ部18は、基地局からのデータを受信する全チャネルが配置されるように局部発振器19の周波数を設定し、通信チャネル情報取得部22は、IF増幅器14の出力を第2のADC21によりディジタルデータにサンプリングするようにした。
その後、検出処理によって得られた情報を基にコントローラ部18は、周波数設定を行い、通常受信に戻して第1のADC16により受信したフレームを解析する。勿論、FCMCから基地局の通信情報が得られなかったチャネルや、周波数選定時にパワーがないと判定されたチャネルは受信対象外とする。パワーの判定には閾値を用いて実施すればよい。このようにすることで一度に複数のチャネルの通信情報を得ることが出来るので、周波数選定に要する時間が短くて済む。
【0020】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る無線受信装置のブロック図である。
図2に示す無線受信装置30は、図1に示す無線受信装置1のように第2のADC21を使う変わりに、セレクタ(フィルタ選択部)31を設け、第1のADC16のサンプリング周波数を動的に変更して、一つのADCで実現できるようにしたものである。これにより、ADCを2つ搭載する必要がなくなるので、コスト面でメリットがある。
基本的な動作手順は前述の説明と同じであるが、チャネル選択中は図2のようにDCカット用のHPF出力信号を使うようにセレクタ31で信号パスを切り替え、同時に第1のADC16のサンプリング周波数をIF信号の2倍よりも低い周波数へと変更する。使用するチャネルが決定している時には、第2のBPF15による帯域制限された信号を使うようにセレクタ31で信号パスを切り替える。
この時、第1のADC16のサンプリング周波数は、受信IF周波数の2倍よりも低い周波数に設定し、アンダーサンプリング方式を用いて受信処理を行っても良いし、受信IF周波数の2倍以上のナイキスト条件を満足する周波数に設定し、オーバーサンプリング方式を用いて受信処理を行っても良い。または受信状態の良い方式を選択して使用しても良い。これにより、全チャネルのパワー算出が可能となり、前記同様チャネル選択順序を決定できる。
【0021】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る無線受信装置のブロック図である。
図3に示す無線受信装置40は、図1及び図2に示した無線受信装置1、30に設けられていたHPF20を用いることなく、第1のADC16のサンプリング周波数を動的に変更して、第2のBPF15の出力から取得できる2つ以上のチャネルの通信情報を取得するものである。これにより、HPF20を搭載する必要がなくなるので、コスト面でメリットがある。基本的な動作手順は前述の説明と同じであるが、周波数選定中は第1のADC16のサンプリング周波数をIF信号の2倍よりも低い周波数へと変更する。
第2のBPF15により帯域制限された信号を周波数選定に用いるため、一度の周波数設定で全チャネルの検出処理を行うのは難しくなる。そのため、周波数設定を複数回行って検出処理をする必要がある。また第2のBPF15から2つ以上のチャネルの信号が出力されるため、周波数選定時以外では、ディジタルのLPFやBPFでさらに不要な帯域の信号をカットしたり、サンプリング周波数を高速にすることで、妨害波の影響を防ぐ必要がある。
【0022】
なお、第1〜第3の本実施の形態において、通信チャネル情報取得部22における基地局が送信している信号のチャネル情報の取得方法について説明する。
先ず、第1のチャネル情報の取得方法について説明する。
この場合は、図1に示した無線受信装置を有する車載用無線通信装置の移動局において、サンプリング周波数を32.768MHzで、チャネル7に周波数を設定して、周波数選定を行うとする。勿論、周波数選定に使用するチャネルはどのチャネルでも構わないし、サンプリング周波数はアンダーサンプリングを行える周波数であればどの周波数でも構わない。チャネル7に周波数(移動局の受信中心周波数を5.775GHz)を設定した時における、受信信号と他チャネルのIF周波数と、折り返し周波数の関係は、上記図10に示される。
【0023】
また、図4に各チャネルにおけるフレームの送出状況を示す。なお、横軸は時間、縦軸はチャネル番号(無線周波数)である。
この図4に示すように、異なった時間で各フレームが送出され、且つ、フレームがETCなどのサービスで使用されているASK変調で送出されている場合には、移動局の周波数がチャネル7に設定されていても、全てのチャネルのフレームを受信することができる。これは、ASK変調は信号の振幅を変化させて情報を伝える変調方式であるため、位相や周波数を使った変調方式(例えば、PSK変調やFSK変調)と違って、受信信号と受信機のチャネル番号が合っていなくても復調を行うことが出来るためである。
このように、受信したフレームを復調、CRC検定を行う。周波数選定プロセスは、前述のように1つの周波数設定のみで行ってもよいし、1回の周波数設定で全チャネルをカバーできなければ複数回設定して選定を行ってもよい。
【0024】
周波数選定プロセスでは、どのチャネルで基地局と通信するかを選定しなければならない。従来方式の受信機では周波数設定したチャネルのフレームのみが受信される。そのため、受信中のフレームがどのチャネルで送信されたフレームかをすぐに判別することができる。しかし、本実施形態の移動局が行う周波数選定プロセスにおいては、1回の周波数設定で全てのチャネルのフレームを受信できる可能性があるため、受信中のフレームがどの周波数で送信されたフレームであるかをすぐに判別することはできない。
ARIB STD−T75規格のFCMCでは、フレームを送信した基地局がどの周波数で運用しているかを示す周波数種別識別子を含むように規定されている。
そこで、本実施形態ではCRC検定を行い、CRC検定結果が正常であった時に、フレームに含まれる周波数種別識別子を解析し、基地局が運用しているチャネル情報を取得、複数の基地局が検出された場合にはパワーや受信状態の良い基地局が使用しているチャネルへと移行するようにしている。
【0025】
次に、第2のチャネル情報の取得方法について説明する。
この場合は、図1に示した無線受信装置を有する車載用無線通信装置の移動局において、サンプリング周波数を32.768MHzで、チャネル7に周波数を設定して周波数選定を行う。
図5は、FFT演算によって得られた各チャネルのパワースペクトラムを示した図である。このようにFFT演算を行えば、どのチャネルで基地局が運用しているかを解析でき、全チャネルでFCMCのCRC検定を行う必要がない。
そのため、FFT演算を行い、解析結果で一定のパワーが確認できたチャネルのみ、オーバーサンプリング方式を用いた通信エラーの少ない受信状態で、再度FCMCのCRC検定を行い、接続する基地局の選定を行うことができる。
【0026】
次に、第3のチャネル情報の取得方法について説明する。
図6は、通信チャネル情報取得部の一例を示した図である。
図6のようにチャネルごとに帯域制限フィルタ(BPF)51−1〜51−7を用意し、フィルタ群を通過した信号のパワー値をパワースペクトラム算出部52−1〜52−7でそれぞれ算出することで、どのチャネルで基地局が運用しているかを解析できる。そのため、全チャネルでFCMCのCRC検定を行う必要がない。フィルタ群を通過した信号のパワー値が一定値を超えたチャネルのみ、オーバーサンプリング方式を用いた通信エラーの少ない受信状態で、再度FCMCのCRC検定を行い、接続する基地局の選定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線受信装置のブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る無線受信装置のブロック図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る無線受信装置のブロック図である。
【図4】各チャネルにおけるフレームの送出状況を示した図である。
【図5】FFT演算によって得られた各チャネルのパワースペクトラムを示した図である。
【図6】通信チャネル情報取得部の一例を示した図である。
【図7】狭域通信システムの標準規格であるARIB STD−T75における無線周波数と各チャネルの配置を示した図である。
【図8】従来の受信系のRF構成の一例を示した図である。
【図9】受信信号とアンダーサンプリングの関係を示した図である。
【図10】サンプリング周波数が32.768MHzの時にチャネル7で接続した基地局からの受信信号と他チャネルのIF周波数と折り返し周波数の関係を示した図である。
【図11】サンプリング周波数が32.768MHz、チャネル7で接続した時にIF周波数と折り返し周波数の様子を示す図である。
【図12】サンプリング周波数を32.768MHzで、チャネル1に中心周波数を設定した時における受信信号と他チャネルのIF周波数と折り返し周波数の関係を示した図である。
【符号の説明】
【0028】
1、30、40…無線受信装置、10…アンテナ、11…第1のBPF、12…LNA、13…ミキサ、14…IF増幅器、15…第2のBPF、16…第1のADC、17…復調部、18…コントローラ部、19…局部発振器、20…HPF、21…第2のADC、22…通信チャネル情報取得部、23…チャネル選択部、31…セレクタ、51−1〜51−7…BPF、52−1〜52−7…パワースペクトラム算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用無線通信装置に関わり、特に狭域通信システムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
ITS(高度道路交通システム)では、近年ETC(ノンストップ自動料金支払いシステム)をはじめとする狭域通信システム(DSRC;Dedicated Short-Range Communication System)通信方式を用いて基地局(路側に設置された無線装置)と移動局(車両に搭載された無線装置)の間で無線通信を行うシステムが実用化されている。
現在普及しているDSRC通信方式を用いたサービスのほとんどはETCに利用されているが、近年DSRCに関する通信規格や法律の整備が進み、今後は様々なサービスが実現することが期待されている。駐車場やガソリンスタンドにおける決済や、SA/PA(Service Area/Parking Area)等における情報接続サービスや道路上における情報提供など、DSRCを応用したさまざまなサービスが可能となる。
DSRCは、5.8GHz帯の周波数帯を使用し通信可能な範囲は、およそ数mから30m程度である。また、伝送速度はETCでも使用されているASK変調方式を用いた1Mbpsに加え、π/4 shift QPSK変調方式を用いた4Mbpsの2種類の伝送速度が規定されている。DSRCの移動局は、基地局から送信されるスロット割付情報やフレーム制御などからなるFCMC(Frame Control Message Channel)を受信し、無線通信に使用する周波数を決定する。DSRCではアプリケーションによってETCのようにASK変調方式のみを用いる通信装置もあるため、互換性を確保するためFCMCはASK変調方式を用い、選択が可能ならば、メッセージデータにはπ/4 shift QPSK変調方式を用いることもできる。
【0003】
図7は、狭域通信システムの標準規格であるARIB STD−T75における無線周波数と各チャネルの配置を示した図である。
ARIB STD−T75規格では、アップリンク用、ダウンリンク用にそれぞれ7チャネルずつ割り当てられ、アップリンク周波数とダウンリンク周波数はペアになっている。図7のチャネル配置から明らかなように、アップリンクとダウンリンクでは40MHz離れたチャネルを使用することとなる。つまり、基地局からの送信信号は、5.775GHzから5.805GHzの最大7チャネルに設定され、移動局で受信される。
また、DSRCでは、路側に設置された基地局と高速移動する車両に搭載された移動局との間で通信を行うため、データの送受信が行える時間は非常に短い。そのため、できるだけ短時間で基地局と接続処理を終えることが望ましい。移動局は基地局と接続するために、まず通信可能な接続チャネルを走行中に探す必要がある。
【0004】
前記のように7チャネル存在するダウンリンク・チャネルの中から順番に基地局のサーチを行う。この時に基地局からのFCMCを受信、CRC検定を行い、CRC検定結果が正常の時、周波数を選定することができる。移動局は、このFCMCのCRC検定を各チャネルで複数回実行の上、周波数を選定することが望ましいとされている。
さらに、2つ以上のチャネルでFCMCのCRC検定結果が正常であったならば、各チャネルごとの受信電力を比較して、周波数を選定することが望ましいとされている。規格では周波数選定時間が定義されており、最大9スロットのフレームを9フレーム以内の時間おいて各チャネルで周波数選定を行うとなっている。つまり、1チャネルあたり最大63msec時間が必要となり、もしも全チャンネルが使用中で受信可能な状態であったなら、全チャネルをサーチし、受信状況が良好で最大のパワーを示すチャネルを選択するのに最大で441msecの時間が必要となる。これは時速120kmで走行中の車両の場合、約15mも進むこととなる。このように通信可能な接続チャネルの選定に多くの時間を費やすことは、データの送受信が行える時間を減少させ、送受信できるデータの量を低下させてしまう。
【0005】
ところで、受信機のRF構成はいろいろな種類が考えられ、一般的にはスーパーヘテロダイン方式やダイレクトコンバージョン方式またはLOW−IF方式などが採用されている。ARIB STD−T75規格のシステムでもいろいろなRF構成が考えられる。
図8は従来の受信系のRF構成の一例を示した図である。
この図8における受信機は、高周波信号を受信するアンテナ50と、アンテナ50からの入力信号を使用する全受信チャンネル使用帯域で制限する帯域制限フィルタ(第1のBPF)51と、第1のBPF51の出力信号を増幅する低雑音増幅器(LNA)52と、LNA52の出力を中間周波数に変換するためのミキサ(Mix)53と、ミキサ53のミキシング周波数を決定する可変可能な局部発振器59と、ミキサ53の出力である中間周波(IF)帯信号を増幅するIFAMP54と、IFAMP54の出力を帯域制限するための中間周波帯域制限フィルタ(第2のBPF)55と、第2のBPF55の出力をサンプリングしてディジタルデータに変換するAD変換器(ADC)56と、ADC56により変換されたディジタルデータから信号を復調する復調部57と、局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部58とを備えて構成される。
【0006】
このように構成される受信機では、アンダーサンプリングを行うとADC56のサンプリング周波数を低くできるので、でディジタル信号処理による復調処理の動作周波数を低くすることが可能となり、受信機の低消費電力化を実現することができるというメリットがある。
前記のようにARIB STD−T75規格のシステムでは、送受信機のチャネルが40MHz離れていることから、受信用のRF周波数変換を送信チャネルと同じ周波数の局部発振器でミキシングすると、受信IF信号として40MHzを中心とした信号が得られる。このようにすることで、受信RF信号は40MHzのIF信号までダウンコンバージョンされて、復調処理を行うことができるため、前記のように送受信で局部発振器をひとつで実現できるというメリットもある。
図9に受信信号とアンダーサンプリングの関係を示す。
この図9に示すように、サンプリング周波数を32.768MHzで動作させた時の40MHzの受信信号は7.232MHzを中心とした受信帯域に現れる。
【0007】
図10はサンプリング周波数が32.768MHzの時に、チャネル7で接続した基地局(5.775GHzで受信)からの受信信号と他チャネルのIF周波数と折り返し周波数の関係を示した図である。アンダーサンプリング手法ではサンプリング周波数の1/2の帯域で折り重なるため、受信する信号帯域以外の他チャネル信号の影響を受けやすい。
図11は図10と同様に、サンプリング周波数が32.768MHz、チャネル7で接続した時にIF周波数と折り返し周波数の様子を示す図である。
従来の無線通信装置では図11(a)に示すように、受信信号以外の帯域を帯域制限フィルタ(BPF)で十分にカットしてしまう。このことは通信可能な周波数の選定が終了し、基地局と接続した後で、メッセージデータの送受信を行う時には、妨害波が発生したことによる通信エラーを防ぐために大変有効である。
しかし、受信信号以外の帯域をカットしてしまうため、1回の周波数設定で1つのチャネルでの通信情報しか得られなくなってしまう。つまり図11(b)のように受信帯域を広げ、1回の周波数設定で複数のチャネルでの通信情報を取得すれば、通信可能な周波数選定時間を短くすることができる。
さらにDSRCではASK変調方式を用いて送信することができ、互換性を確保するためにはデータにπ/4 shift QPSK変調方式を用いる場合でも、FCMCはASK変調方式を用いることができる。ASK変調方式は、振幅で情報を伝えるために、送信機と受信機の中間周波数が合っていなくても復調することができる。
【0008】
図12は、サンプリング周波数を32.768MHzで、チャネル1に中心周波数を設定(5.795GHzで受信)した時における受信信号と他チャネルのIF周波数と折り返し周波数の関係を示した図である。
サンプリング周波数を32.768MHzとした時には、チャネル6(5.780GHz)の信号が7.768MHzを中心とした信号として折り返して現れる。本来の受信信号(5.795GHz)が7.232MHzを中心とした受信帯域に現れるため、妨害波になるチャネル6の信号と希望波の中心周波数とは0.536MHzしか離れていない。そのため受信機では希望波が同時刻に出力されていなければ、一般的に復調部に備える、妨害波やダウンコンバージョンの結果生じる不要成分をカットするLPFを通したとしても、妨害波になるチャネル6の信号を問題なく復調できる。FCMCには基地局が通信を行っている周波数を示すコードが含まれるため、CRC検定結果が正常であれば、受信したチャネルの無線周波数を特定することができる。
【0009】
なお、IF帯信号をアンダーサンプリングにより復調処理する方式は従来技術として特許文献1、2などの先願特許が公開されている。
特許文献1では、複数のBPFを用い、アンダーサンプリングによる折り返し雑音をカットしている。そのため一般的な無線通信装置と同様、周波数選定時には1回の周波数設定で1つのチャネルの通信状況しか取得できず、周波数選定時間に多くの時間を割いてしまう。
特許文献2では、妨害波と希望波と受信強度に応じてサンプリング周波数を変化させている。しかし、妨害波による通信エラーを防ぐことを目的としており、受信中のチャネルに影響のある妨害波の存在の検出は行うが、妨害波や受信帯域以外のチャネル周波数の通信状況の検出を行わず、周波数選定時間を短縮まで考慮されていない。
【0010】
【特許文献1】特開2003−318760公報
【特許文献2】特開2004−96141公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように車載用無線通信装置では、短い時間でのデータ送受信を行うことを求められるため、できるだけ短い時間で接続処理を行うことが望ましい。そのため通信可能な接続チャネルの選定は、短時間で終了させることが望ましい。一方、アンダーサンプリング手法で受信処理を行う受信機は、妨害波が希望波に折り重なる現象が発生する。これにより周波数選定時には、1回の周波数設定で複数のチャネル情報を取得することができるため、周波数選定時間の短縮につながる。
本発明はかかる課題に鑑み、高速で移動する車載用通信装置の移動局において、アンダーサンプリング方式で受信することにより受信中のチャネル以外のチャネルの信号が折り返すことを用いて効率よく通信を行う基地局を選択し、送受信できるデータ量を増加させることができる車載用無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、隣接する複数のチャネルで構成された高周波信号を受信するアンテナと、前記アンテナからの入力信号を全受信チャネルの使用帯域で制限する第1の帯域制限フィルタと、前記第1の帯域制限フィルタの出力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力を中間周波数に変換するミキサと、前記ミキサのミキシング周波数を決定する局部発振器と、前記ミキサの出力である中間周波帯信号を増幅する中間周波増幅器と、前記中間周波増幅器の出力を帯域制限する第2の帯域制限フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器と、前記第1のAD変換器の出力をディジタル信号処理により復調する復調部と、前記局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部とを備える車載用無線通信装置において、前記中間周波数のDC成分をカットする高域通過フィルタと、前記高域通過フィルタを通過した中間周波帯信号を、該中間周波帯信号の2倍の周波数よりも低い周波数でサンプリングする第2のAD変換器と、前記第2のAD変換器の出力より基地局が送信している送信信号のチャネル情報を取得する通信チャネル情報取得部と、前記通信チャネル情報取得部で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部と、を備え、前記基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時、前記コントローラ部は、前記基地局からのデータを受信する全チャネルが配置されるように前記局部発振器の周波数を設定し、前記通信チャネル情報取得部は、前記中間周波増幅器の出力を前記第2のAD変換器によりディジタルデータにサンプリングすることを特徴とする。
このような本発明によれば、1回の周波数設定で全てのチャネルの通信情報を取得することができる。そのため、効率よくチャネル選択を行うことが可能となり、チャネル選択にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0013】
また請求項2に記載の本発明は、隣接する複数のチャネルで構成された高周波信号を受信するアンテナと、前記アンテナからの入力信号を全受信チャネルの使用帯域で制限する第1の帯域制限フィルタと、前記第1の帯域制限フィルタの出力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力を中間周波数に変換するミキサと、前記ミキサのミキシング周波数を決定する局部発振器と、前記ミキサの出力である中間周波帯信号を増幅する中間周波増幅器と、前記中間周波増幅器の出力を帯域制限する第2の帯域制限フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器と、前記第1のAD変換器の出力をディジタル信号処理により復調する復調部と、前記局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部とを備える車載用無線通信装置において、前記中間周波数のDC成分をカットする高域通過フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力と前記高域通過フィルタの出力とを選択可能なフィルタ選択部と、前記第1のAD変換器の出力より前記基地局が送信している信号のチャネル情報を取得する通信チャネル情報取得部と、前記通信チャネル情報取得部で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部と、を備え、基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時、前記コントローラ部は、前記基地局からのデータを受信する全チャネルが配置されるように前記局部発振器の周波数を設定し、前記通信チャネル情報取得部は、前記第1のAD変換器のサンプリング周波数を前記中間周波帯信号の周波数の2倍よりも低い周波数に設定したうえで、前記フィルタ選択部により前記高域通過フィルタの出力を選択し、前記第1のAD変換器において前記高域通過フィルタを通過した中間周波帯信号をディジタル信号にサンプリングすることを特徴とする。
本発明によれば、1回の周波数設定で全てのチャネルの通信情報を取得することができるため、効率よくチャネル選択を行うことが可能となり、チャネル選択にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0014】
また請求項3に記載の本発明は、隣接する複数のチャネルで構成された高周波信号を受信するアンテナと、前記アンテナからの入力信号を全受信チャネルの使用帯域で制限する第1の帯域制限フィルタと、前記帯域制限フィルタの出力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力を中間周波数に変換するミキサと、前記ミキサのミキシング周波数を決定する局部発振器と、前記ミキサの出力である中間周波帯信号を増幅する中間周波増幅器と、前記中間周波増幅器の出力を帯域制限する第2の帯域制限フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器と、前記第1のAD変換器の出力をディジタル信号処理により復調する復調部と、前記局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部とを備える車載用無線通信装置において、前記第1のAD変換器の出力より前記基地局が送信している信号のチャネル情報を取得する通信チャネル情報取得部と、前記通信チャネル情報取得部で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部と、を備え、基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時に、前記コントローラ部は、基地局からのデータを受信する2つ以上のチャネルが配置されるように前記局部発振器の周波数を設定し、前記通信チャネル情報取得部は、前記第1のAD変換器のサンプリング周波数を、前記中間周波帯信号の周波数の2倍よりも低い周波数に設定したうえで、前記第2の帯域制限フィルタを通過した中間周波帯信号を前記第1のAD変換器によりディジタル信号にサンプリングすることを特徴とする。
本発明によれば、1回の周波数設定で2つ以上のチャネルの通信情報を取得することができる。そのため、効率よくチャネル選択を行うことが可能となり、チャネル選択にかかる時間を短縮することができる。
【0015】
また請求項4に記載の本発明は、前記通信チャネル情報取得部は、受信したフレームを復調処理して得られる基地局がどの周波数で通信を行っているかを示すコードにより、基地局が送信している信号のチャネル情報を得る請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載用無線通信装置を特徴とする。
本発明によれば、受信チャネル以外のチャネルでも、ASK変調方式のFCMCを受信し、CRC検定結果が正常である時に、FCMCより基地局が送信を行っているチャネル情報を得ることができる。そのため、確実に基地局が送信を行っている周波数のチャネル情報を得ることができる。
また請求項5に記載の本発明は、前記通信チャネル情報取得部が、FFT演算により周波数解析を行い、受信チャネル信号の各チャネル周波数のパワー値を算出し、基地局が送信している信号のチャネル情報を得る請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載用無線通信装置を特徴とする。
本発明によれば、妨害波が発生し、アンダーサンプリングによって妨害波が希望波の受信帯域に折り返して通信エラーがおこっていても、各チャネルの通信情報を取得することができる。そのため、チャネル選択にかかる時間を短縮することができる。
また請求項6に記載の本発明は、前記通信チャネル情報取得部は、各受信チャネルの周波数を中心周波数とし、1つ以上のチャネルを受信する帯域幅の信号を通過するフィルタ群を並列に配置し、前記フィルタ群からのそれぞれの出力のパワー値を算出し、基地局が送信している信号のチャネル情報を得る請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載用無線通信装置を特徴とする。
本発明によれば、妨害波が発生し、アンダーサンプリングによって妨害波が希望波の受信帯域に折り返して通信エラーがおこっていても、各チャネルの通信情報を取得することができる。そのため、チャネル選択にかかる時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車載用無線通信装置の移動局受信機において、周波数選定時にアンダーサンプリング方式で受信処理を行い、1回の周波数設定で複数のチャネルの通信情報を取得して接続処理を短時間で行うことで、多量のデータを送受信できる車載用無線通信装置の移動局を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る無線受信装置のブロック図である。この図1に示す無線受信装置1は、高周波信号を受信するアンテナ10と、アンテナ10からの入力信号を使用する全受信チャネル使用帯域で制限する帯域制限フィルタ(第1の帯域制限フィルタ、以下、第1のBPFと称する)11と、第1のBPF11の出力信号を増幅する低雑音増幅器(LNA)12と、LNA12の出力を中間周波数に変換するミキサ(Mix)13とを備えている。ミキサ13には局部発振器19が接続され、ミキシングする周波数を決定している。ミキサ13の出力は、中間周波(IF)帯信号を増幅するIF増幅器(IFアンプ)14と、IF増幅器14の出力を帯域制限する中間周波帯域制限フィルタ(第2の帯域制限フィルタ、以下、第2のBPFと称する)15と、第2のBPF15の出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器(第1のADC)16と、第1のADC16により変換されたディジタルデータから信号を復調する復調部17とコントローラ部18と、を備えている。
【0018】
さらに、本実施の形態の無線受信装置では、IF増幅器14の出力のDC成分をカットして高域成分のみを通過させる高域通過フィルタ(HPF)20と、HPF20の出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第2のAD変換器(第2のADC)21と、第2のADC21により変換されたディジタルデータから通信チャネルの情報を取得する通信チャネル情報取得部22と、この通信チャネル情報取得部22で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部23と、を備えている。
第1のADC16のサンプリング周波数は、受信IF周波数の2倍よりも低い周波数に設定し、アンダーサンプリング方式を用いて受信処理を行っても良いし、受信IF周波数の2倍以上のナイキスト条件を満足する周波数に設定し、オーバーサンプリング方式を用いて受信処理を行っても良い。受信状態の良い方式を選択して使用しても良い。第1のADC16のみを用いて帯域制限された信号で受信処理を行うのは、使用するチャネルが決まった後になる。
一般に基地局が使用しているチャネル番号は分からないので、最初は基地局の使用チャネルを検出して、その後接続処理を行い、接続後にデータ通信を開始できる。したがって、走行中は常にチャネル検出状態にしておく必要がある。
前述の従来技術のように、チャネル毎に局部発信器の周波数を変更してチャネル検出処理を行うと、7チャネル分の検出処理に441msecもの時間を必要とする可能性がある。
【0019】
そこで、本実施の形態では、チャネル選択中は第1のADC16の代わりに第2のADC21を使用する。第2のADC21のサンプリング周波数は受信IF周波数の2倍よりも低い周波数に設定し、アンダーサンプリング方式で受信処理を行う。そして、第2のADC21でサンプリングされたディジタル信号を復調処理やパワーの検出を行うことで、基地局からの信号が送信されている周波数を検出する。
つまり、本実施形態では、基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時、コントローラ部18は、基地局からのデータを受信する全チャネルが配置されるように局部発振器19の周波数を設定し、通信チャネル情報取得部22は、IF増幅器14の出力を第2のADC21によりディジタルデータにサンプリングするようにした。
その後、検出処理によって得られた情報を基にコントローラ部18は、周波数設定を行い、通常受信に戻して第1のADC16により受信したフレームを解析する。勿論、FCMCから基地局の通信情報が得られなかったチャネルや、周波数選定時にパワーがないと判定されたチャネルは受信対象外とする。パワーの判定には閾値を用いて実施すればよい。このようにすることで一度に複数のチャネルの通信情報を得ることが出来るので、周波数選定に要する時間が短くて済む。
【0020】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る無線受信装置のブロック図である。
図2に示す無線受信装置30は、図1に示す無線受信装置1のように第2のADC21を使う変わりに、セレクタ(フィルタ選択部)31を設け、第1のADC16のサンプリング周波数を動的に変更して、一つのADCで実現できるようにしたものである。これにより、ADCを2つ搭載する必要がなくなるので、コスト面でメリットがある。
基本的な動作手順は前述の説明と同じであるが、チャネル選択中は図2のようにDCカット用のHPF出力信号を使うようにセレクタ31で信号パスを切り替え、同時に第1のADC16のサンプリング周波数をIF信号の2倍よりも低い周波数へと変更する。使用するチャネルが決定している時には、第2のBPF15による帯域制限された信号を使うようにセレクタ31で信号パスを切り替える。
この時、第1のADC16のサンプリング周波数は、受信IF周波数の2倍よりも低い周波数に設定し、アンダーサンプリング方式を用いて受信処理を行っても良いし、受信IF周波数の2倍以上のナイキスト条件を満足する周波数に設定し、オーバーサンプリング方式を用いて受信処理を行っても良い。または受信状態の良い方式を選択して使用しても良い。これにより、全チャネルのパワー算出が可能となり、前記同様チャネル選択順序を決定できる。
【0021】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る無線受信装置のブロック図である。
図3に示す無線受信装置40は、図1及び図2に示した無線受信装置1、30に設けられていたHPF20を用いることなく、第1のADC16のサンプリング周波数を動的に変更して、第2のBPF15の出力から取得できる2つ以上のチャネルの通信情報を取得するものである。これにより、HPF20を搭載する必要がなくなるので、コスト面でメリットがある。基本的な動作手順は前述の説明と同じであるが、周波数選定中は第1のADC16のサンプリング周波数をIF信号の2倍よりも低い周波数へと変更する。
第2のBPF15により帯域制限された信号を周波数選定に用いるため、一度の周波数設定で全チャネルの検出処理を行うのは難しくなる。そのため、周波数設定を複数回行って検出処理をする必要がある。また第2のBPF15から2つ以上のチャネルの信号が出力されるため、周波数選定時以外では、ディジタルのLPFやBPFでさらに不要な帯域の信号をカットしたり、サンプリング周波数を高速にすることで、妨害波の影響を防ぐ必要がある。
【0022】
なお、第1〜第3の本実施の形態において、通信チャネル情報取得部22における基地局が送信している信号のチャネル情報の取得方法について説明する。
先ず、第1のチャネル情報の取得方法について説明する。
この場合は、図1に示した無線受信装置を有する車載用無線通信装置の移動局において、サンプリング周波数を32.768MHzで、チャネル7に周波数を設定して、周波数選定を行うとする。勿論、周波数選定に使用するチャネルはどのチャネルでも構わないし、サンプリング周波数はアンダーサンプリングを行える周波数であればどの周波数でも構わない。チャネル7に周波数(移動局の受信中心周波数を5.775GHz)を設定した時における、受信信号と他チャネルのIF周波数と、折り返し周波数の関係は、上記図10に示される。
【0023】
また、図4に各チャネルにおけるフレームの送出状況を示す。なお、横軸は時間、縦軸はチャネル番号(無線周波数)である。
この図4に示すように、異なった時間で各フレームが送出され、且つ、フレームがETCなどのサービスで使用されているASK変調で送出されている場合には、移動局の周波数がチャネル7に設定されていても、全てのチャネルのフレームを受信することができる。これは、ASK変調は信号の振幅を変化させて情報を伝える変調方式であるため、位相や周波数を使った変調方式(例えば、PSK変調やFSK変調)と違って、受信信号と受信機のチャネル番号が合っていなくても復調を行うことが出来るためである。
このように、受信したフレームを復調、CRC検定を行う。周波数選定プロセスは、前述のように1つの周波数設定のみで行ってもよいし、1回の周波数設定で全チャネルをカバーできなければ複数回設定して選定を行ってもよい。
【0024】
周波数選定プロセスでは、どのチャネルで基地局と通信するかを選定しなければならない。従来方式の受信機では周波数設定したチャネルのフレームのみが受信される。そのため、受信中のフレームがどのチャネルで送信されたフレームかをすぐに判別することができる。しかし、本実施形態の移動局が行う周波数選定プロセスにおいては、1回の周波数設定で全てのチャネルのフレームを受信できる可能性があるため、受信中のフレームがどの周波数で送信されたフレームであるかをすぐに判別することはできない。
ARIB STD−T75規格のFCMCでは、フレームを送信した基地局がどの周波数で運用しているかを示す周波数種別識別子を含むように規定されている。
そこで、本実施形態ではCRC検定を行い、CRC検定結果が正常であった時に、フレームに含まれる周波数種別識別子を解析し、基地局が運用しているチャネル情報を取得、複数の基地局が検出された場合にはパワーや受信状態の良い基地局が使用しているチャネルへと移行するようにしている。
【0025】
次に、第2のチャネル情報の取得方法について説明する。
この場合は、図1に示した無線受信装置を有する車載用無線通信装置の移動局において、サンプリング周波数を32.768MHzで、チャネル7に周波数を設定して周波数選定を行う。
図5は、FFT演算によって得られた各チャネルのパワースペクトラムを示した図である。このようにFFT演算を行えば、どのチャネルで基地局が運用しているかを解析でき、全チャネルでFCMCのCRC検定を行う必要がない。
そのため、FFT演算を行い、解析結果で一定のパワーが確認できたチャネルのみ、オーバーサンプリング方式を用いた通信エラーの少ない受信状態で、再度FCMCのCRC検定を行い、接続する基地局の選定を行うことができる。
【0026】
次に、第3のチャネル情報の取得方法について説明する。
図6は、通信チャネル情報取得部の一例を示した図である。
図6のようにチャネルごとに帯域制限フィルタ(BPF)51−1〜51−7を用意し、フィルタ群を通過した信号のパワー値をパワースペクトラム算出部52−1〜52−7でそれぞれ算出することで、どのチャネルで基地局が運用しているかを解析できる。そのため、全チャネルでFCMCのCRC検定を行う必要がない。フィルタ群を通過した信号のパワー値が一定値を超えたチャネルのみ、オーバーサンプリング方式を用いた通信エラーの少ない受信状態で、再度FCMCのCRC検定を行い、接続する基地局の選定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る無線受信装置のブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る無線受信装置のブロック図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る無線受信装置のブロック図である。
【図4】各チャネルにおけるフレームの送出状況を示した図である。
【図5】FFT演算によって得られた各チャネルのパワースペクトラムを示した図である。
【図6】通信チャネル情報取得部の一例を示した図である。
【図7】狭域通信システムの標準規格であるARIB STD−T75における無線周波数と各チャネルの配置を示した図である。
【図8】従来の受信系のRF構成の一例を示した図である。
【図9】受信信号とアンダーサンプリングの関係を示した図である。
【図10】サンプリング周波数が32.768MHzの時にチャネル7で接続した基地局からの受信信号と他チャネルのIF周波数と折り返し周波数の関係を示した図である。
【図11】サンプリング周波数が32.768MHz、チャネル7で接続した時にIF周波数と折り返し周波数の様子を示す図である。
【図12】サンプリング周波数を32.768MHzで、チャネル1に中心周波数を設定した時における受信信号と他チャネルのIF周波数と折り返し周波数の関係を示した図である。
【符号の説明】
【0028】
1、30、40…無線受信装置、10…アンテナ、11…第1のBPF、12…LNA、13…ミキサ、14…IF増幅器、15…第2のBPF、16…第1のADC、17…復調部、18…コントローラ部、19…局部発振器、20…HPF、21…第2のADC、22…通信チャネル情報取得部、23…チャネル選択部、31…セレクタ、51−1〜51−7…BPF、52−1〜52−7…パワースペクトラム算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する複数のチャネルで構成された高周波信号を受信するアンテナと、前記アンテナからの入力信号を全受信チャネルの使用帯域で制限する第1の帯域制限フィルタと、前記第1の帯域制限フィルタの出力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力を中間周波数に変換するミキサと、前記ミキサのミキシング周波数を決定する局部発振器と、前記ミキサの出力である中間周波帯信号を増幅する中間周波増幅器と、前記中間周波増幅器の出力を帯域制限する第2の帯域制限フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器と、前記第1のAD変換器の出力をディジタル信号処理により復調する復調部と、前記局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部とを備える車載用無線通信装置において、
前記中間周波数のDC成分をカットする高域通過フィルタと、
前記高域通過フィルタを通過した中間周波帯信号を、該中間周波帯信号の2倍の周波数よりも低い周波数でサンプリングする第2のAD変換器と、
前記第2のAD変換器の出力より基地局が送信している送信信号のチャネル情報を取得する通信チャネル情報取得部と、
前記通信チャネル情報取得部で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部と、を備え、
前記基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時、前記コントローラ部は、前記基地局からのデータを受信する全チャネルが配置されるように前記局部発振器の周波数を設定し、前記通信チャネル情報取得部は、前記中間周波増幅器の出力を前記第2のAD変換器によりディジタルデータにサンプリングすることを特徴とする車載用無線通信装置。
【請求項2】
隣接する複数のチャネルで構成された高周波信号を受信するアンテナと、前記アンテナからの入力信号を全受信チャネルの使用帯域で制限する第1の帯域制限フィルタと、前記第1の帯域制限フィルタの出力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力を中間周波数に変換するミキサと、前記ミキサのミキシング周波数を決定する局部発振器と、前記ミキサの出力である中間周波帯信号を増幅する中間周波増幅器と、前記中間周波増幅器の出力を帯域制限する第2の帯域制限フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器と、前記第1のAD変換器の出力をディジタル信号処理により復調する復調部と、前記局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部とを備える車載用無線通信装置において、
前記中間周波数のDC成分をカットする高域通過フィルタと、
前記第2の帯域制限フィルタの出力と前記高域通過フィルタの出力とを選択可能なフィルタ選択部と、
前記第1のAD変換器の出力より前記基地局が送信している信号のチャネル情報を取得する通信チャネル情報取得部と、
前記通信チャネル情報取得部で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部と、を備え、
基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時、前記コントローラ部は、前記基地局からのデータを受信する全チャネルが配置されるように前記局部発振器の周波数を設定し、前記通信チャネル情報取得部は、前記第1のAD変換器のサンプリング周波数を前記中間周波帯信号の周波数の2倍よりも低い周波数に設定したうえで、前記フィルタ選択部により前記高域通過フィルタの出力を選択し、前記第1のAD変換器において前記高域通過フィルタを通過した中間周波帯信号をディジタル信号にサンプリングすることを特徴とする車載用無線通信装置。
【請求項3】
隣接する複数のチャネルで構成された高周波信号を受信するアンテナと、前記アンテナからの入力信号を全受信チャネルの使用帯域で制限する第1の帯域制限フィルタと、前記帯域制限フィルタの出力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力を中間周波数に変換するミキサと、前記ミキサのミキシング周波数を決定する局部発振器と、前記ミキサの出力である中間周波帯信号を増幅する中間周波増幅器と、前記中間周波増幅器の出力を帯域制限する第2の帯域制限フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器と、前記第1のAD変換器の出力をディジタル信号処理により復調する復調部と、前記局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部とを備える車載用無線通信装置において、
前記第1のAD変換器の出力より前記基地局が送信している信号のチャネル情報を取得する通信チャネル情報取得部と、
前記通信チャネル情報取得部で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部と、を備え、
基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時に、前記コントローラ部は、基地局からのデータを受信する2つ以上のチャネルが配置されるように前記局部発振器の周波数を設定し、前記通信チャネル情報取得部は、前記第1のAD変換器のサンプリング周波数を、前記中間周波帯信号の周波数の2倍よりも低い周波数に設定したうえで、前記第2の帯域制限フィルタを通過した中間周波帯信号を前記第1のAD変換器によりディジタル信号にサンプリングすることを特徴とする車載用無線通信装置。
【請求項4】
前記通信チャネル情報取得部は、受信したフレームを復調処理して得られる基地局がどの周波数で通信を行っているかを示すコードにより、基地局が送信している信号のチャネル情報を得ることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載用無線通信装置。
【請求項5】
前記通信チャネル情報取得部は、FFT演算により周波数解析を行い、受信チャネル信号の各チャネル周波数のパワー値を算出し、基地局が送信している信号のチャネル情報を得ることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載用無線通信装置。
【請求項6】
前記通信チャネル情報取得部は、各受信チャネルの周波数を中心周波数とし、1つ以上のチャネルを受信する帯域幅の信号を通過するフィルタ群を並列に配置し、前記フィルタ群からのそれぞれの出力のパワー値を算出し、基地局が送信している信号のチャネル情報を得ることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載用無線通信装置。
【請求項1】
隣接する複数のチャネルで構成された高周波信号を受信するアンテナと、前記アンテナからの入力信号を全受信チャネルの使用帯域で制限する第1の帯域制限フィルタと、前記第1の帯域制限フィルタの出力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力を中間周波数に変換するミキサと、前記ミキサのミキシング周波数を決定する局部発振器と、前記ミキサの出力である中間周波帯信号を増幅する中間周波増幅器と、前記中間周波増幅器の出力を帯域制限する第2の帯域制限フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器と、前記第1のAD変換器の出力をディジタル信号処理により復調する復調部と、前記局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部とを備える車載用無線通信装置において、
前記中間周波数のDC成分をカットする高域通過フィルタと、
前記高域通過フィルタを通過した中間周波帯信号を、該中間周波帯信号の2倍の周波数よりも低い周波数でサンプリングする第2のAD変換器と、
前記第2のAD変換器の出力より基地局が送信している送信信号のチャネル情報を取得する通信チャネル情報取得部と、
前記通信チャネル情報取得部で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部と、を備え、
前記基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時、前記コントローラ部は、前記基地局からのデータを受信する全チャネルが配置されるように前記局部発振器の周波数を設定し、前記通信チャネル情報取得部は、前記中間周波増幅器の出力を前記第2のAD変換器によりディジタルデータにサンプリングすることを特徴とする車載用無線通信装置。
【請求項2】
隣接する複数のチャネルで構成された高周波信号を受信するアンテナと、前記アンテナからの入力信号を全受信チャネルの使用帯域で制限する第1の帯域制限フィルタと、前記第1の帯域制限フィルタの出力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力を中間周波数に変換するミキサと、前記ミキサのミキシング周波数を決定する局部発振器と、前記ミキサの出力である中間周波帯信号を増幅する中間周波増幅器と、前記中間周波増幅器の出力を帯域制限する第2の帯域制限フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器と、前記第1のAD変換器の出力をディジタル信号処理により復調する復調部と、前記局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部とを備える車載用無線通信装置において、
前記中間周波数のDC成分をカットする高域通過フィルタと、
前記第2の帯域制限フィルタの出力と前記高域通過フィルタの出力とを選択可能なフィルタ選択部と、
前記第1のAD変換器の出力より前記基地局が送信している信号のチャネル情報を取得する通信チャネル情報取得部と、
前記通信チャネル情報取得部で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部と、を備え、
基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時、前記コントローラ部は、前記基地局からのデータを受信する全チャネルが配置されるように前記局部発振器の周波数を設定し、前記通信チャネル情報取得部は、前記第1のAD変換器のサンプリング周波数を前記中間周波帯信号の周波数の2倍よりも低い周波数に設定したうえで、前記フィルタ選択部により前記高域通過フィルタの出力を選択し、前記第1のAD変換器において前記高域通過フィルタを通過した中間周波帯信号をディジタル信号にサンプリングすることを特徴とする車載用無線通信装置。
【請求項3】
隣接する複数のチャネルで構成された高周波信号を受信するアンテナと、前記アンテナからの入力信号を全受信チャネルの使用帯域で制限する第1の帯域制限フィルタと、前記帯域制限フィルタの出力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器の出力を中間周波数に変換するミキサと、前記ミキサのミキシング周波数を決定する局部発振器と、前記ミキサの出力である中間周波帯信号を増幅する中間周波増幅器と、前記中間周波増幅器の出力を帯域制限する第2の帯域制限フィルタと、前記第2の帯域制限フィルタの出力をサンプリングしてディジタルデータに変換する第1のAD変換器と、前記第1のAD変換器の出力をディジタル信号処理により復調する復調部と、前記局部発振器の発振周波数をコントロールするコントローラ部とを備える車載用無線通信装置において、
前記第1のAD変換器の出力より前記基地局が送信している信号のチャネル情報を取得する通信チャネル情報取得部と、
前記通信チャネル情報取得部で取得した情報を用いて接続するチャネルを決定するチャネル選択部と、を備え、
基地局からの送信信号を受信し、無線通信を行うチャネル周波数を選定する周波数選定時に、前記コントローラ部は、基地局からのデータを受信する2つ以上のチャネルが配置されるように前記局部発振器の周波数を設定し、前記通信チャネル情報取得部は、前記第1のAD変換器のサンプリング周波数を、前記中間周波帯信号の周波数の2倍よりも低い周波数に設定したうえで、前記第2の帯域制限フィルタを通過した中間周波帯信号を前記第1のAD変換器によりディジタル信号にサンプリングすることを特徴とする車載用無線通信装置。
【請求項4】
前記通信チャネル情報取得部は、受信したフレームを復調処理して得られる基地局がどの周波数で通信を行っているかを示すコードにより、基地局が送信している信号のチャネル情報を得ることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載用無線通信装置。
【請求項5】
前記通信チャネル情報取得部は、FFT演算により周波数解析を行い、受信チャネル信号の各チャネル周波数のパワー値を算出し、基地局が送信している信号のチャネル情報を得ることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載用無線通信装置。
【請求項6】
前記通信チャネル情報取得部は、各受信チャネルの周波数を中心周波数とし、1つ以上のチャネルを受信する帯域幅の信号を通過するフィルタ群を並列に配置し、前記フィルタ群からのそれぞれの出力のパワー値を算出し、基地局が送信している信号のチャネル情報を得ることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車載用無線通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−5279(P2009−5279A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166652(P2007−166652)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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