説明

車載用盗難防止装置

【課題】誤報知を防止することができる車載用盗難防止装置を提供すること。
【解決手段】車載用盗難防止装置1は、警報装置3と、傾斜センサ4と、タイヤ空気圧センサ6とに接続され、傾斜センサ4の出力値が閾値を超え、かつ、タイヤ空気圧センサ6の出力値が低下中でなければ、警報装置3による報知が必要であると判断し、傾斜センサ4の出力値が閾値を超えていても、タイヤ空気圧センサ6の出力値が低下中であれば、警報装置3による報知が不要であると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両状態の変化を検知して報知装置を動作させる車載用盗難防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、第三者による車両へのいたずらや車両の盗難を未然に防止するため、車両状態の変化を検知して報知装置を動作させる車載用盗難防止装置がある。
【0003】
このような従来の車載用盗難防止装置としては、傾斜センサ、振動センサおよび音感センサから取得したセンサ出力値を駐車場所、時刻、曜日、および季節に対応づけて記録しておき、記録しておいたセンサ出力値に基づいて閾値を設定し、センサ出力値が閾値を越えた場合に報知装置を動作させるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−7999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車載用盗難防止装置は、タイヤのパンクにより車両が傾斜した場合等のように、第三者の行為によらずに車両状態が変化しても報知装置を動作させてしまうことがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、誤報知を防止することができる車載用盗難防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車載用盗難防止装置は、上記課題を解決するため、車両状態の変化を検知するセンサの出力値に基づいて報知装置を動作させる制御手段を備えた車載用盗難防止装置において、前記車両状態を変化させた要因を検出する要因検出手段を備え、前記制御手段は、前記要因検出手段による検出結果に基づいて前記報知装置による報知が必要か否かを判断することを特徴としている。
【0007】
この構成により、本発明の車載用盗難防止装置は、車両状態を変化させた要因を考慮して車両状態の変化を報知するか否かを判断するので、誤報知を防止することができる。
【0008】
また、前記制御手段は、前記報知が不要であると判断した場合、前記センサの感度を通常より低く設定してもよい。
【0009】
また、前記制御手段は、前記センサの出力値が閾値を超えると報知装置を動作させ、前記報知が不要であると判断した場合、前記閾値を通常より大きい値に設定してもよい。
【0010】
これらの構成により、本発明の車載用盗難防止装置は、報知が不要であると判断した場合、車両状態の変化の程度が小さければ報知装置を動作させないようにすることができる。
【0011】
また、前記制御手段は、前記報知が不要であると判断した場合、前記報知装置の動作を禁止するようにしてもよい。
【0012】
この構成により、本発明の車載用盗難防止装置は、報知が不要であると判断した場合、車両状態の変化の程度に関わらず確実に報知装置を動作させないようにすることができる。
【0013】
また、前記センサは車両の傾斜を検知し、前記要因検出手段は、前記車両のタイヤの空気圧を検知する空気圧センサの出力値に基づいて、前記傾斜の要因として前記空気圧の低下を検出し、前記制御手段は、前記要因検出手段によって前記空気圧の低下が検出されると、前記報知が不要であると判断してもよい。
【0014】
この構成により、本発明の車載用盗難防止装置は、タイヤがパンクした場合、車両が傾斜しても報知は不要であると判断することができる。
【0015】
また、前記制御手段は、前記車両状態の変化を検知する複数のセンサの何れかからその出力値を取得するようにしてもよい。
【0016】
この構成により、本発明の車載用盗難防止装置は、1つのセンサが故障等により使用不可となっても代替のセンサを使用することができる。
【0017】
また、本発明の車載用盗難防止装置は、前記センサの出力値の履歴および前記要因検出手段による検出結果の履歴を表す履歴情報を記憶する履歴記憶手段と、前記履歴情報を、出力装置を介して利用者に通知する履歴通知手段とをさらに備える構成としてもよい。
【0018】
この構成により、本発明の車載用盗難防止装置は、利用者が車両を離れている間の車両状態の変化およびその要因を利用者に通知することができる。
【0019】
なお、本発明は集積回路によって実現してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、誤報知を防止することができるという効果を有する車載用盗難防止装置を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
本発明の実施の形態に係る車載用盗難防止装置の構成図を図1に示す。
【0023】
図1において、車両に搭載される車載用盗難防止装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、および、ハードディスク装置やフラッシュメモリ等の記憶装置14を備えるメイン部10と、CPU21、RAM22、ROM23、記憶装置24、通信モジュール25および3Dジャイロ26を備えるサブ部20とから構成され、メイン部10およびサブ部20は、メイン部10のCPU11によってサブ部20の各部を制御可能に接続されている。
【0024】
メイン部10は、液晶ディスプレイ等の表示装置2に接続され、メイン部10および表示装置2は、車両のアクセサリ電源がオンになると電源が供給されて動作するようになっている。
【0025】
また、メイン部10のCPU11は、ROM13に格納されたプログラムをRAM12に読み込んで実行し、表示装置2およびサブ部20の記憶装置24を制御することにより、本発明における履歴通知手段を構成している。
【0026】
サブ部20は、CAN(Control Area Network)等の車載LAN(Loacl Area Network)5を介して警報装置3、傾斜センサ4およびタイヤ空気圧センサ6に接続されている。
【0027】
また、サブ部20、警報装置3、傾斜センサ4およびタイヤ空気圧センサ6は、車両のアクセサリ電源がオフのときも電源が供給されて動作するようになっている。
【0028】
また、サブ部20のCPU21は、ROM23に格納されたプログラムをRAM22に読み込んで実行し、サブ部20の各部および接続されている警報装置3、傾斜センサ4およびタイヤ空気圧センサ6を制御することにより、本発明における制御手段、要因検出手段および履歴記憶手段を構成している。
【0029】
警報装置3は、スピーカ等の音声出力手段を備え、サブ部20の制御の基に警告音を発生するようになっている。なお、警報装置3は、例えば携帯端末装置であってもよい。この場合、サブ部20は、携帯端末装置を無線電波を介して制御できるようになっている。
【0030】
傾斜センサ4は、車両の傾斜角度を検知するとともに、検知可能な傾斜角度の最小量を表す感度を調整することができるようになっている。
【0031】
3Dジャイロ26は、車両の角速度を検知するジャイロセンサ、車両の傾斜角度と加速度を検知する加速度センサ、および車速を検知する車速センサから構成され、これらの出力値に基づいて車両の進行方位および高度等を算出するようになっている。
【0032】
タイヤ空気圧センサ6は、各タイヤに取り付けられる圧力センサ、および、各圧力センサの出力値を無線電波を介して受信する受信装置を備えて、各タイヤの空気圧を検知するようになっている。
【0033】
以上のように構成された車載用盗難防止装置1の動作を、図2〜6を用いて説明する。
【0034】
図2は、傾斜センサ4によって検知される傾斜角度を監視する傾斜監視処理を説明するフロー図である。
【0035】
まず、CPU21は、傾斜センサ4から傾斜角度を取得する(S1)。
【0036】
ここで、CPU21は、傾斜センサ4から傾斜角度が取得できない場合(S2でNO)、3Dジャイロ26から傾斜角度を取得する(S3)。
【0037】
次に、CPU21は、取得した傾斜角度を取得した日時に対応づけて、記憶装置24に格納する(S4)。
【0038】
次に、CPU21は、傾斜角度が、RAM22に格納されている閾値を超えているか否かを判断し(S5)、閾値を超えていなければ、傾斜検知フラグを0に設定する(S6)。
【0039】
ステップS5で、傾斜角度が閾値を超えていれば、CPU21は、傾斜検知フラグを1に設定し(S7)、傾斜を検知したことを表す傾斜検知情報を、検知した日時に対応づけて記憶装置24に格納する(S8)。
【0040】
CPU21は、ステップS1〜S8の処理を繰返し実行する。
【0041】
図3は、タイヤ空気圧センサ6によって検知される空気圧を監視する空気圧監視処理を説明するフロー図である。CPU21は、図2に示した傾斜監視処理に並行してこの空気圧監視処理を実行する。
【0042】
まず、CPU21は、タイヤ空気圧センサ6から各タイヤの空気圧を取得する(S11)。
【0043】
次に、CPU21は、各タイヤの空気圧を、取得した日時に対応づけて、記憶装置24に格納する(S12)。
【0044】
次に、CPU21は、記憶装置24に格納された各タイヤの空気圧の履歴を参照して空気圧が低下中のタイヤがあるか否かを判断する(S13)。ここで、CPU21は、各タイヤについて、直近の一定時間内における空気圧の変化量を算出し、算出した変化量が閾値以上であるか否かに基づいて空気圧が低下中であるか否かを判断する。なお、CPU21は、各タイヤの直近の一定時間内における空気圧の変化率を用いて空気圧が低下中であるかを判断してもよい。
【0045】
ステップS13において、全てのタイヤの空気圧が低下中でないと判断した場合、CPU21は、空気圧低下中フラグを0に設定する(S14)。
【0046】
ステップS13において、空気圧が低下中のタイヤがあると判断した場合、CPU21は、空気圧低下中フラグを1に設定する(S15)。
【0047】
CPU21は、ステップS11〜S15の処理を繰返し実行する。
【0048】
このような空気圧監視処理が繰り返し実行されることにより、パンクが発生していなければ空気圧低下中フラグは0に設定されており、パンクが発生すると空気圧低下中フラグが1に設定された後、空気圧の低下が終了すると空気圧低下中フラグが再度0に設定されることになる。
【0049】
図4は、車両状態の変化を報知するか否を判断する報知要否判断処理を説明するフロー図である。CPU21は、図2、3に示した傾斜監視処理および空気圧監視処理に並行してこの報知要否判断処理を実行する。
【0050】
まず、CPU21は、傾斜検知フラグが1であり(S21でYES)、空気圧低下中フラグが1であれば(S22でYES)、車両が傾斜した要因はパンクであり報知は不要であると判断して、警報装置3を動作させない(S23)。
【0051】
なお、ステップS23において、CPU21は、傾斜センサ4の感度を通常より低く設定する処理、または、RAM22に格納されている傾斜角度の閾値を通常より大きい値に設定する処理をさらに行ってもよい。
【0052】
ステップS22において、空気圧低下中フラグが0であれば、車両が傾斜した要因は第三者の行為による可能性が高いとして報知が必要であると判断し、警報装置3を動作させる(S24)。
【0053】
CPU21は、ステップS21〜S24の処理を繰返し実行する。
【0054】
以上の処理を行うことにより、車載用盗難防止装置1は、図5に示すように、タイヤのパンクが発生してからパンクによる空気圧の低下が終了するまでの間は、車両が傾斜しても誤報知を防止することができる。
【0055】
図6は、アクセサリ電源オフ時の履歴情報を利用者に通知する履歴通知処理を説明するフロー図である。メイン部10のCPU11は、アクセサリ電源がオンにされるとこの履歴通知処理を実行する。なお、メイン部10の記憶装置14には、前回アクセサリ電源がオフにされた日時が格納されているものとする。
【0056】
まず、CPU11は、サブ部20の記憶装置24に格納されている傾斜角度、傾斜検知情報およびタイヤの空気圧のうち、前回アクセサリ電源がオフにされてから今回オンにされるまでの範囲の日時に対応づけられているものを取得する(S31)。
【0057】
次に、CPU11は、ステップS31で取得した情報に基づいて、傾斜検知の有無、傾斜角度の変化および空気圧の変化をそれぞれ表す履歴情報を、表示装置2に表示する(S32)。
【0058】
以上で、CPU11は履歴通知処理を終了する。
【0059】
このように、本発明の一実施の形態の車載用盗難防止装置1は、車両状態を変化させた要因を考慮して車両状態の変化を報知するか否かを判断するので、誤報知を防止することができる。
【0060】
なお、本実施の形態において、本発明における要因検出手段が、タイヤ空気圧センサ6の出力値に基づいて車両を傾斜させた要因を検出する例について説明したが、例えば、タイヤの径変化を検知する光学センサ等の出力値に基づいて車両を傾斜させた要因を検出してもよい。
【0061】
また、本実施の形態において、本発明における制御手段が、車両状態の変化を検知するセンサとして傾斜センサ4および3Dジャイロ26に接続される例について説明したが、例えば、振動センサ等に接続されていてもよい。この場合、本発明における要因検出手段は、車両を振動させた要因として、タイヤの空気圧の低下の他、例えばトラックの通過や工事による騒音等を検出するようにしてもよい。
【0062】
また、本実施の形態において、図3に示した傾斜監視処理および図4に示した空気圧監視処理をサブ部20のCPU21が実行するものとして説明したが、傾斜センサ4およびタイヤ空気圧センサ6がそれぞれ制御部を備えて各処理を実行してもよい。この場合、傾斜センサ4およびタイヤ空気圧センサ6の各制御部は、傾斜検知フラグおよび空気圧低下中フラグを1または0に設定したことを、車載LAN5を介してサブ部20に伝達するようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明の車載用盗難防止装置は、誤報知を防止することができるという効果を有し、車両状態の変化を検知して報知装置を動作させる車載用盗難防止装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態に係る車載用盗難防止装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態に係る車載用盗難防止装置によって車両の傾斜を監視する処理を説明するフロー図
【図3】本発明の実施の形態に係る車載用盗難防止装置によってタイヤの空気圧を監視する処理を説明するフロー図
【図4】本発明の実施の形態に係る車載用盗難防止装置によって報知の要否を判断する処理を説明するフロー図
【図5】本発明の実施の形態に係る車載用盗難防止装置によって誤報知を防止できる期間を説明する図
【図6】本発明の実施の形態に係る車載用盗難防止装置によって車両の傾斜検知およびタイヤの空気圧の変化の履歴を利用者に通知する処理を説明するフロー図
【符号の説明】
【0065】
1 車載用盗難防止装置
2 表示装置
3 警報装置
4 傾斜センサ
5 車載LAN
6 タイヤ空気圧センサ
10 メイン部
20 サブ部
11、21 CPU
12、22 RAM
13、23 ROM
14、24 記憶装置
25 通信モジュール
26 3Dジャイロ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両状態の変化を検知するセンサの出力値に基づいて報知装置を動作させる制御手段を備えた車載用盗難防止装置において、
前記車両状態を変化させた要因を検出する要因検出手段を備え、
前記制御手段は、前記要因検出手段による検出結果に基づいて前記報知装置による報知が必要か否かを判断することを特徴とする車載用盗難防止装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記報知が不要であると判断した場合、前記センサの感度を通常より下げることを特徴とする請求項1に記載の車載用盗難防止装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記センサの出力値が閾値を超えると報知装置を動作させ、前記報知が不要であると判断した場合、前記閾値を通常より大きい値に設定することを特徴とする請求項1に記載の車載用盗難防止装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記報知が不要であると判断した場合、前記報知装置の動作を禁止することを特徴とする請求項1に記載の車載用盗難防止装置。
【請求項5】
前記センサは車両の傾斜を検知し、
前記要因検出手段は、前記車両のタイヤの空気圧を検知する空気圧センサの出力値に基づいて、前記傾斜の要因として前記空気圧の低下を検出し、
前記制御手段は、前記要因検出手段によって前記空気圧の低下が検出されると、前記報知が不要であると判断することを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の車載用盗難防止装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記車両状態の変化を検知する複数のセンサの何れかからその出力値を取得することを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の車載用盗難防止装置。
【請求項7】
前記センサの出力値の履歴および前記要因検出手段による検出結果の履歴を表す履歴情報を記憶する履歴記憶手段と、
前記履歴情報を出力装置を介して利用者に通知する履歴通知手段とをさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の車載用盗難防止装置。
【請求項8】
車両状態の変化を検知するセンサの出力値に基づいて報知装置を動作させる制御手段を備えた集積回路において、
前記車両状態を変化させた要因を検出する要因検出手段を備え、
前記制御手段は、前記要因検出手段による検出結果に基づいて前記報知装置による報知が必要か否かを判断することを特徴とする集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−239062(P2008−239062A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84918(P2007−84918)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】