説明

車載装置

【課題】地上波受信エリアとサイマル配信受信エリアとの境界線上において、受信状態が不安定なことによって生じる音声の途切れを防止することができる車載装置を提供する。
【解決手段】ナビゲーション装置は、地上波受信エリアから、地上波放送とネット放送とを互いに受信可能なサイマル配信受信エリアに移動する場合は、受信状態が不安定な境界上でネット放送への切替えをおこなうのではなく、サイマル配信受信エリアに移動してからネット放送への切替えをおこなうので、音声の途切れの発生を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上波放送によるラジオ放送と、ネット放送によるインターネットラジオを受信できる車載装置に関し、特に地上波放送と同じ内容が、同時に同じ地域でインターネットによっても配信されるサイマル配信の場合に、地上波放送とネット放送との切替えを行う車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットラジオと呼ばれる、インターネットプロトコルを通じて、音声による番組を配信するサービスが広く知られている。このインターネットラジオは通常パソコンやスマートフォン等で聴取されるが、例えば特許文献1のように車載装置において聴取できるものも知られている。
【0003】
そしてインターネットラジオは、インターネットに接続できれば世界中のラジオ番組が聴取できるので、特定の地域にいながら全世界のラジオ番組を手軽に楽しむことができるというのが、その魅力の一つである。
【0004】
一方でこのような楽しみ方とは異なり、最近では地上波によるラジオ放送と同じ内容を同じ地域でインターネットにより同時に配信するサイマル配信サービスも広まってきている。このサイマル配信は、地上波放送の受信が可能であった地域が、高層建築物の影響で受信環境が悪化し、地上波放送の受信が困難になったことや、もともと地形の関係で地上波放送の受信が困難なこと、等の理由で始められたものである。
【0005】
この地上波放送とインターネットへのサイマル配信は、エリア制限がなされていて、地上波放送の放送エリアに対応して、インターネットによる配信地域が決められている。つまり地上波放送のエリアと、インターネットによるネット放送のエリアが同じエリアになるよう制限されている。この理由としては、放送に関する規制や、従来の広告によるビジネス方法への配慮等によるものと言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−195836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、地上波放送のエリアと、ネット放送のエリアは、それぞれの放送手段が異なるので、全く同一というわけにはいかない。したがって地上波放送のエリアとネット放送のエリアとの関係によっては、地上波放送のエリアの方がネット放送のエリアよりも広くなってしまう状況が発生する。つまり地上波放送とネット放送を共に受信することができるエリア(サイマル配信受信エリア)と、地上波放送のみしか受信できないエリア(地上波受信エリア)が存在してしまう。
【0008】
このような状況で、特許文献1のような車載装置が車の走行に伴って移動すると図5(a)、(b)の状況が発生し得る。図5(a)は地上波放送のみしか受信できない地上波受信エリアSから、地上波放送とネット放送を共に受信することができるサイマル配信受信エリアCへ、車が移動していく状況を示している。また図5(b)はサイマル配信受信エリアCから地上波受信エリアSへ、車が移動していく状況を示している。先にも述べたが、このような状況は、ラジオ番組について地上波放送とネット放送によるサイマル配信を行っていたとしても、放送エリアが完全に同一とはいかないために生じるものである。
【0009】
そしてこのような場合に、地上波放送からネット放送への切替え、或いはネット放送から地上波放送への切替えを境界Bの上で行うと、境界Bでは電波の状態が不安定であるため、受信状態も不安定な状況が生じる。このような受信状態が不安定な状況は、特にスポーツ中継やニュース等の情報を聴取する場合には好ましいことではない。なぜならば、スポーツ中継の際、例えばホームランになるかならないかの瞬間に音声が途切れてしまえば、ユーザは興味が削がれてしまうからである。また、音楽を聴取する場合、一般的に音楽は鮮明な音声で聴取することをユーザは望んでいるので、雑音が多い音楽はユーザに不快感を与えてしまう。特にインターネットラジオの場合、通常受信側でバッファリングが行われ、データが蓄えられてから再生されるので、受信状態が不安定な境界B上でこのような問題がより顕著に現れる。
【0010】
本願の発明者は、上記問題を解消すべく種々検討を重ねた結果、地上波受信エリアからサイマル配信受信エリアに移動する場合、地上波放送からネット放送への切替えをサイマル配信受信エリアに移動した後でおこなうこと、或いはサイマル配信受信エリアから地上波受信エリアに移動する場合、サイマル配信受信エリア内で行うことにより、上記問題を解消し得ることに想到し、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は上記の問題点を解消することを課題とし、地上波受信エリアとサイマル配信受信エリアとの境界線上において、受信状態が不安定なことによって生じる音声の途切れを防止することができる車載装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明の第1の態様では、現在位置情報が検出できる現在位置検出部と、
地上波放送によるラジオ放送と、インターネットによるネット放送とを受信できるラジオ受信部と、
前記地上波放送が受信できるエリアに関する情報と、前記ネット放送が受信できるエリアに関する情報と、を有する受信エリア記憶部と、を備えた車載装置であって、前記車載装置は、前記ラジオ受信部で受信する放送を切替える切替え手段を有しており、前記切替え手段は、前記地上波放送のみ受信可能な地上波受信エリアから、前記地上波放送と前記ネット放送とを互いに受信可能なサイマル配信受信エリアに移動する場合において、前記サイマル配信受信エリアに移動してから、前記地上波放送から前記ネット放送への切替えをおこない、前記地上波放送と前記ネット放送とを互いに受信可能なサイマル配信受信エリアから、前記地上波放送のみ受信可能な地上波受信エリアに移動する場合において、前記サイマル配信受信エリア内で、前記ネット放送から前記地上波放送への切替えをおこなうことを特徴とする。
【0013】
また本発明の第2の態様では、前記地上波受信エリアと前記サイマル配信受信エリアとの境界から、前記サイマル配信受信エリアへ所定距離移動した後、前記切替え手段により、前記地上波放送から前記ネット放送への切替えをおこなうことを特徴とする。
【0014】
また本発明の第3の態様では、前記サイマル配信受信エリアと前記地上波受信エリアとの境界へ所定距離まで近づくと、前記切替え手段により、前記ネット放送から前記地上波放送への切替えをおこなうことを特徴とする。
【0015】
また本発明の第4の態様では、前記ラジオ放送は、振幅変調によるAMラジオ放送であることを特徴とする。
【0016】
また本発明の第5の態様では、前記ラジオ受信部は、周波数変調によるFMラジオ放送についても受信することができ、該FMラジオ放送においては、前記サイマル配信受信エリアと前記地上波受信エリアとの境界において、音声の出力を中止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1の態様によれば、地上波放送のみ受信可能な地上波受信エリアから、地上波放送とネット放送とを互いに受信可能なサイマル配信受信エリアに移動する場合は、受信状態が不安定な地上波受信エリアとサイマル配信受信エリアとの境界上でネット放送への切替えをおこなうのではなく、サイマル配信受信エリアに移動してからネット放送への切替えをおこなうので、音声の途切れの発生を低減することができ、また、地上波放送とネット放送とを互いに受信可能なサイマル配信受信エリアから、地上波放送のみ受信可能な地上波受信エリアに移動する場合は、受信状態が不安定なサイマル配信受信エリアと地上波受信エリアとの境界上で地上波放送への切替えをおこなうのではなく、サイマル配信受信エリア内で地上波放送への切替えをおこなうので、音声の途切れの発生を低減することができる。
【0018】
本発明の第2の態様によれば、サイマル配信受信エリアに移動し、地上波受信エリアとサイマル配信受信エリアとの境界から所定距離移動した後で、ネット放送への切替えをおこなうので、音声の途切れの発生をより確実に低減することができる。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、サイマル配信受信エリア内において、サイマル配信受信エリアと地上波受信エリアとの境界まで所定距離まで近づくと地上波放送への切替えをおこなうので、音声の途切れの発生をより確実に低減することができる。
【0020】
本発明の第4の態様によれば、ラジオ放送は振幅変調によるAMラジオ放送であるため、スポーツ中継やニュース、交通情報等の情報提供の番組が主に放送されているAMラジオ放送において、一番問題となる音声の途切れを防ぐことができる。
【0021】
本発明の第5の態様によれば、周波数変調によるFMラジオ放送の場合には、サイマル配信受信エリアと地上波受信エリアとの境界においては、音声の出力を止めてしまうので、音楽番組が主に放送されているFMラジオ放送において一番問題となり得る雑音交じりの音楽を出力することによるユーザへの不快感を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用したナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用したナビゲーション装置における地上波放送からネット放送への切替えを示したフローチャートである。
【図3】本発明を適用したナビゲーション装置を用いて、地上波受信エリアからサイマル配信受信エリアへ移動する際の、AM放送とFM放送での切替えの状況を示した概念図である。
【図4】本発明を適用したナビゲーション装置を用いて、サイマル配信受信エリアから地上波受信エリアへ移動する際の、AM放送とFM放送での切替えの状況を示した概念図である。
【図5】地上波受信エリアとサイマル配信受信エリアとの間を移動する際の状況を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術的思想を具体化するための車載装置の中からナビゲーション装置を例示するものであって、本発明をこのナビゲーション装置に特定することを意図するものではなく、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって定められるものである。
【実施例】
【0024】
図1は、本発明におけるナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。本実施例において、ナビゲーション装置1は車載装置の典型例である。この他の車載装置として、例えば車に搭載されるオーディオ装置等であってもよい。
【0025】
本発明のナビゲーション装置1は、制御部100、現在位置検出部110、地図情報記憶部120、受信エリア記憶部130、ラジオ受信部140、操作入力部150、表示部160、音声出力部170を備えて構成されている。
【0026】
制御部100は、CPU、ROM、RAM等を備えて構成され、ROM等に記憶された制御プログラムをCPUにおいて実行することにより、ナビゲーション装置1の各部の動作を制御・統括する。またナビゲーション機能としての経路探索手段や経路案内手段を構成する。また後述するネット放送から地上波放送への切替えや地上波放送からネット放送への切替えをおこなう切替え手段を構成する。
【0027】
現在位置検出部110は、地球の上空を周回している複数のGPS衛星から時刻情報を含む電波を受信するGPS受信機等で構成され、受信した電波に基づき現在地を検出する。この他、現在地検出手段110としては、距離センサ、方位センサ、舵角センサ等からなる自立航法手段を用いることもできる。
【0028】
地図情報記憶部120は、道路の分岐地点等の結節点をノードとする道路ノードデータと、それぞれのノード間を結ぶ経路をリンクとした道路リンクデータを含む道路情報を記憶している。なお、道路ノードデータには、道路ノード番号、位置座標、接続リンク本数、分岐地点名称等が記憶されている。また、道路リンクデータには、始点及び終点となる道路ノード番号、道路種別、リンク長(リンクコスト)、所要時間、制限速度、車線数、車道幅等の道路属性が含まれている。そして道路リンクデータには、さらに道路属性として橋、トンネル、踏切、料金所等のデータが付与される。また地図情報記憶部120は、道路情報の他に、施設データ、地形図データ等を記憶している。この施設データには、主要なランドマークや各種の施設について、施設の位置、施設の種別(コンビニエンスストア、ガソリンスタンド等)、施設名称、営業時間等の情報が含まれている。また地形図データには、海岸線、湖沼、河川形状等の水系情報、行政境界情報等が含まれる。
【0029】
受信エリア記憶部130は、地上波エリア記憶部131と、ネット放送エリア記憶部132で構成されている。地上波エリア記憶部131は、各地域における各放送局からの地上波放送を受信できるエリアを示す情報を記憶している。具体的には受信可能なエリアの境界に関する緯度、経度情報等で構成されている。同様に、ネット放送エリア記憶部132も、インターネットを通じてサイマル配信されたラジオ番組を受信できるエリアを示す情報を記憶している。なお、先にも述べたように、同じラジオ番組を地上波とインターネットとによりサイマル配信する場合には、放送に関する規制等の理由でエリア制限がなされているので、このような地上波エリア記憶部131やネット放送エリア記憶部132に記憶されているエリア情報は、既知の情報を最初から記憶しておいてもよいし、通信手段を介して入手して記憶しておいてもよい。またエリアが変更されることもあるので、最新の情報に更新できる構成となっているのがよい。
【0030】
ラジオ受信部140は、地上波受信部141と、ネット放送受信部142で構成されている。地上波受信部141は、高周波の電波を、アンテナ(図示せず)を介して受信し、制御部100の指令に基づいて高周波信号を変換し、復調IC(図示せず)により音声信号を抽出するものである。そしてこの音声信号は音声出力部170を介して出力されることになる。なお地上波受信部141は、振幅変調されたAM放送と、周波数変調されたFM放送を共に受信することができるものである。ネット放送受信部142は、通信手段(図示せず)を介してインターネットに接続し、インターネットを介して配信される音声ファイルを音声信号に変換するものである。そしてこの音声信号も音声出力部170を介して出力されることになる。なおインターネットと接続する通信手段は、ナビゲーション装置1自体に搭載されていてもよいし、例えば携帯電話を介してインターネットと接続し、携帯電話から音声ファイルを受け取る構成であってもよい。
【0031】
操作入力部150は、ユーザによって操作され、出発地、目的地等の経路探索条件を入力したり、複数のラジオ番組の中から好みの番組を選択したりするためのものである。操作入力部150は、ナビゲーション装置1の前面に配置されたハードキーや、表示部160に設けられたタッチパネルや、付属されたリモコン等で構成される。
【0032】
表示部160は、制御部100の指令に基づき、探索された経路や車の現在位置を示すマークからなるナビゲーションとしての表示や、ラジオ受信部140で受信しているラジオ番組に関する表示をおこなうためのものである。この表示部160は、液晶パネル等の表示デバイスによって構成される。
【0033】
音声出力部170は、経路案内の際の案内音声や、ラジオ受信部140で受信した音声信号からなら音楽等を出力するものである。この音声出力部170は、スピーカ等で構成される。
【0034】
次に本発明におけるナビゲーション装置1での地上波放送とネット放送との切替えについて具体的に説明を行うが、まず図5(a)で示した状況での切替えについて説明する。つまり地上波放送のみしか受信できない地上波受信エリアSから、地上波放送とネット放送を共に受信することができるサイマル配信受信エリアCへ、車が移動していく状況について説明する。図2は切替えの際の処理について示したフローチャートであり、図3はAM放送とFM放送における切替えの状況を示した概念図である。なお、以下に説明するように、最初に地上波放送を受信していて、サイマル配信エリアになるとネット放送へ切替えをおこなう理由としては、ネット放送の方が天候や建物の影響があったとしても、地上波放送に比べ比較的安定して音声データを取得できので、サイマル配信エリアであればネット放送を優先して受信する方が音質的に安定する等の理由による。
【0035】
まず、ナビゲーション装置1を搭載した車が地上波受信エリアSを走行している際に、ユーザの操作によって地上波によるラジオ放送を受信することでこの処理が開始される。そしてナビゲーション装置1では、まず受信中のラジオ放送がAM放送なのかFM放送なのかについて判断する(ステップ301)。この判断は地上波受信部141から出力に基づいて制御部100で判別するよう行えばよい。このような判断を行うのは、AM放送なのかFM放送なのかによって、地上波放送からネット放送への切替えをおこなうタイミングが異なっているからである。
【0036】
一般的にはAM放送は、FM放送に比べると音質が低いことから、スポーツ中継やニュース、交通情報等の情報提供の番組が主に放送されている。そしてスポーツ中継やニュース等の情報番組については、雑音が多少あってもよいので、できるだけ音声が途切れないことが一般的に望まれている。反対にFM放送は、AM放送に比べると音質が高いことから、音楽番組が主に放送されている。そして音楽については雑音のない高音質が一般的に望まれており、雑音交じりの音楽はむしろユーザに不快感を与えてしまうことがある。このようにAM放送とFM放送には、異なる特徴があるのでこの特徴にあわせて地上波放送からネット放送への切替えをおこなうタイミングを変えている。
【0037】
つぎに、ステップ301で受信中の放送がAM放送であれば、ナビゲーション装置1は現在位置検出部110を介して、車の現在位置の検出を行う(ステップ302)。この処理によって車が現在どこを走行しているのかを知ることができる。
【0038】
つぎに、ナビゲーション装置1はステップ302で検出した車の位置が、サイマル配信受信エリアCか否かの判断をおこなう(ステップ303)。つまり、車が地上波受信エリアSからサイマル配信受信エリアCへ移動したかどうかを判断する。まだ地上波受信エリアSであれば、ステップ302に戻って処理を繰り返す。サイマル配信受信エリアCか否かの判断は、受信エリア記憶部130の地上波エリア記憶部131と、ネット放送エリア記憶部132から、現在受信しているAM放送の放送局に関するエリア情報と、車の現在位置とに基づいて判断をおこなう。
【0039】
つぎに、ステップ303において車がサイマル配信受信エリアCに移動したと判断したら、ナビゲーション装置1はサイマル配信受信エリアCと地上波受信エリアSとの境界Bから所定距離移動したか否かの判断をおこなう(ステップ304)。具体的には、例えばこの場合境界Bはネット配信されるラジオ番組を受信できるエリアの境界ということになるので、ネット放送エリア記憶部132からネット放送の聴取エリアに関する緯度、経度に関する情報を読み出して、現在位置との比較をおこなうことによりこの処理をおこなう。
【0040】
このように境界Bから所定距離移動したか否かの判断をおこなうのは、境界B上或いは境界Bの近辺では、電波の状態が不安定であるため、受信状態も不安定な状況が生じるためである。このような受信状態が不安定な状況で、地上波放送からネット放送へ切替えると、音声が途切れてしまう可能性が高くなる。特にネット放送へ切替える場合、受信側でバッファリングが行われ、データを蓄えてから再生するので、音声の途切れが長くなるおそれがある。このような音声の途切れは、先にも述べたように、スポーツ中継やニュース等の情報番組を主に放送するAM放送においては、非常に問題となる。
【0041】
したがって、境界Bから所定距離移動していなければステップ302に戻って処理を繰り返す。そして、図3に示すように、境界Bから所定距離移動していれば、ステップ305に進み、地上波放送(図3の実線で示す矢印)からネット放送(図3の破線で示す矢印)への切替えを行う。境界Bから所定距離移動していれば、受信状態も安定するので、このような状態になってから切替えを行うことで音声の途切れをより一層防止することができる。境界Bから所定距離移動したか否かの判断における所定距離は、電波状況等に基づいて任意に決めておけばよいが、おおよそ100m〜1000m程度の間で設定してあればよい。なお道路の形状によっては、境界Bおよび境界Bの近傍を蛇行している場合もあるので、地図情報記憶部120の道路情報等も用いて、境界Bから所定距離遠ざかったか否かにより判断する構成とするのがより好ましい。
【0042】
つぎに、ステップ301で受信中の放送がAM放送でない、つまり受信中の放送がFM放送であれば、ナビゲーション装置1は現在位置検出部110を介して、車の現在位置の検出を行う(ステップ306)。そしてステップ307に進み、ナビゲーション装置1は、所定距離まで境界Bに接近したか否かの判断を行う(ステップ307)。具体的には、ネット放送エリア記憶部132から該当する情報を読み出して現在位置との比較をおこなうことによりこの処理をおこなう。
【0043】
このように境界Bに所定距離まで接近したか否かの判断をおこなうのは、境界B上或いは境界Bの近辺では、受信状態が不安定な状況が生じるため、音声を出力しても雑音が混じった音声となってしまうためである。特に雑音が混じった音声は、先にも述べたように音楽番組を主に放送するFM放送においては、音楽を聴き取り難いだけでなく、ユーザに不快感を与えてしまうおそれがある。
【0044】
そこで、ステップ307で所定距離まで境界Bに接近したと判断すると、ステップ308に進んで地上波放送の受信をストップ(図3の実線で示す矢印)してしまう。そしてこのように地上波放送の受信をストップすることで、雑音交じりの音楽の出力することを止めてしまう。音楽の場合、どちらかといえば流れている曲を初めて聴くということは少なく、今までに何度か聞いたことがあるという場合や、曲を知っているという場合が多い。そうすると、仮に音声が途切れてしまっても、ある程度その先がわかっているので、雑音交じりの曲を無理に出力するよりも、かえって出力を止めてしまったほうがユーザにとっては不快感を生じないこともある。一方で、スポーツ中継のような情報番組は次の展開がわからないので、たとえ雑音が混じっていて聴き取り難くても、常に音声が出力されているほうがよい。なお所定距離まで境界Bに接近したか否かの判断における所定距離は、電波状況等に基づいて任意に決めておけばよいが、おおよそ100m〜500m程度の間で設定してあればよい。また受信をストップするのではなく、音声の出力を単にとめるだけでも構わない。いずれにしてもユーザが雑音交じりの音楽を聴けないようにすればよい。
【0045】
ステップ307で所定距離まで境界Bに接近していないと判断すると、ステップ306に戻って処理を繰り返す。
【0046】
つぎに、ステップ309で地上波放送の受信をストップした後、ナビゲーション装置1では車の現在位置の検出を行う(ステップ309)。そしてつぎにナビゲーション装置1はステップ309で検出した車の位置が、サイマル配信受信エリアCか否かの判断をおこなう(ステップ310)。つまり、車が地上波受信エリアSからサイマル配信受信エリアCへ移動したかどうかを判断する。まだ地上波受信エリアSであれば、ステップ309に戻って処理を繰り返す。サイマル配信受信エリアCか否かの判断についても、ステップ303と同様、受信エリア記憶部130の地上波エリア記憶部131と、ネット放送エリア記憶部132から、現在受信しているFM放送の放送局に関するエリア情報と、車の現在位置とに基づいて判断をおこなう。
【0047】
つぎに、ステップ310おいて車がサイマル配信受信エリアCに移動したと判断したら、ナビゲーション装置1はサイマル配信受信エリアCと地上波受信エリアSとの境界Bから所定距離移動したか否かの判断をおこなう(ステップ311)。
【0048】
このように境界Bから所定距離移動したか否かの判断をおこなうのは、境界Bから所定距離移動してしまえば、電波の状態も安定し、受信状態が安定するためである。
【0049】
したがって、境界Bから所定距離移動していれば、ステップ305に進みネット放送への切替え(図3の破線で示す矢印)をおこなう。このように受信状態が安定した状態で、ネット放送へ切替えて音声出力を再開することで、雑音交じりの音楽を出力することによるユーザへの不快感を抑えることができる。境界Bから所定距離移動していないのであれば、ステップ309に進み、処理を繰り返す。境界Bから所定距離移動したか否かの判断における所定距離は、電波状況等に基づいて任意に決めておけばよいが、おおよそ100m〜1000m程度の間で設定してあればよい。なお、ステップ305における地上波放送からネット放送への切替えは、制御部100とラジオ受信部140等で構成された切替え手段により実現される。具体的には、制御部100によって地上波受信部141での受信を中止するよう制御され、ネット放送受信部142で受信をおこなうよう制御される。
【0050】
このように、ナビゲーション装置1においては、地上波放送のみ受信可能な地上波受信エリアSから、地上波放送とネット放送とを互いに受信可能なサイマル配信受信エリアCに移動する場合に、AM放送であれば、境界B上でネット放送への切替えをおこなわないで、サイマル配信受信エリアCに移動した後から、ネット放送への切替えをおこなっている。このような構成により、受信状態が不安定となる地上波受信エリアSとサイマル配信受信エリアCとの境界Bで、音声の途切れを効果的に低減することができる。また境界Bから所定距離移動した後に切替えをおこなうことで、より確実に受信状態が不安定なことによる音声の途切れを低減することができるので、AM放送によるスポーツ中継やニュース等の情報を途切れの少ない音声で聴取することができる。
【0051】
つぎに、図5(b)で示した状況での切替えについて図4の概念図で説明する。図4はサイマル配信受信エリアCから地上波受信エリアSへ車が移動していく状況におけるAM放送とFM放送における切替えの状況を示した概念図である。そして図4の場合は、ネット放送を介してラジオ番組を聴取していた状態から、同じラジオ番組を地上波放送に切替えて継続して聴取する際の、ネット放送から地上波放送への切替えについてである。
【0052】
この場合においてもナビゲーション装置1は、AM放送について、サイマル配信受信エリアCと地上波受信エリアSとの境界Bでネット放送から地上波放送へ切替えるのではなく、サイマル配信受信エリアC内でネット放送(図4の実線で示す矢印)から地上波放送(図4の破線で示す矢印)への切替えをおこなってしまうことを特徴としている。より具体的には、境界Bに所定距離まで近づくと、ネット放送から地上波放送への切替えをおこなう。このようにすることで、受信状態が不安定なことによる音声の途切れを低減することができるので、AM放送によるスポーツ中継やニュース等の情報を途切れの少ない音声で聴取することができる。
【0053】
またFM放送については、境界Bに所定距離まで近づくと、ネット放送の受信をストップし、境界Bから所定距離移動した後に、ネット放送から地上波放送への切替えをおこなう。FM放送においては、受信状態が不安定な状態ではネット放送の受信を止めてしまい、受信状態が安定した状態で地上波放送へ切替えて音声出力を再開することにより、雑音交じりの音楽を出力することによるユーザへの不快感を抑えることができる。
【0054】
なお、上記実施形態においては、境界Bに対して所定距離を基準にして放送の切替えを行うものについて説明したが、一律に定めておくのではなく、道路情報と受信エリア情報から、道路毎に切替え地点を定めておき、その情報を記憶しておくことで、放送の切替えを行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 ナビゲーション装置
100 制御部
110 現在位置検出部
120 地図情報記憶部
130 受信エリア記憶部
131 地上波エリア記憶部
132 ネット放送エリア記憶部
140 ラジオ受信部
141 地上波受信部
142 ネット放送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置情報が検出できる現在位置検出部と、
地上波放送によるラジオ放送と、インターネットによるネット放送とを受信できるラジオ受信部と、
前記地上波放送が受信できるエリアに関する情報と、前記ネット放送が受信できるエリアに関する情報と、を有する受信エリア記憶部と、を備えた車載装置であって、
前記車載装置は、前記ラジオ受信部で受信する放送を切替える切替え手段を有しており、
前記切替え手段は、前記地上波放送のみ受信可能な地上波受信エリアから、前記地上波放送と前記ネット放送とを互いに受信可能なサイマル配信受信エリアに移動する場合において、前記サイマル配信受信エリアに移動してから、前記地上波放送から前記ネット放送への切替えをおこない、
前記地上波放送と前記ネット放送とを互いに受信可能なサイマル配信受信エリアから、前記地上波放送のみ受信可能な地上波受信エリアに移動する場合において、前記サイマル配信受信エリア内で、前記ネット放送から前記地上波放送への切替えをおこなうことを特徴とする車載装置。
【請求項2】
前記地上波受信エリアと前記サイマル配信受信エリアとの境界から、前記サイマル配信受信エリアへ所定距離移動した後、前記切替え手段により、前記地上波放送から前記ネット放送への切替えをおこなうことを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記サイマル配信受信エリアと前記地上波受信エリアとの境界へ所定距離まで近づくと、前記切替え手段により、前記ネット放送から前記地上波放送への切替えをおこなうことを特徴とする請求項1に記載の車載装置。
【請求項4】
前記ラジオ放送は、振幅変調によるAMラジオ放送であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の車載装置。
【請求項5】
前記ラジオ受信部は、周波数変調によるFMラジオ放送についても受信することができ、
該FMラジオ放送においては、前記サイマル配信受信エリアと前記地上波受信エリアとの境界において、音声の出力を中止することを特徴とする請求項4に記載の車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77985(P2013−77985A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216617(P2011−216617)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】