説明

車載通信システム及び車載通信方法

【課題】複数の車載装置と、各車載装置に接続してあり各車載装置から送信されるデータを更に他の車載装置へ分配する分配装置との接続関係を多重化し、分配装置から各車載装置へ分配されるデータの信頼性を向上させることができる車載通信システム及び車載通信方法を提供する。
【解決手段】車載装置1a,1b,1cは夫々複数の分配装置2a,2bに接続されており、データを分配装置2a,2b夫々に送信する。これにより、分配装置2aに支障が発生してデータベース21aが使用不可状態になった場合、又は車内通信回線3aに支障が発生した場合等でも、分配装置2bから車載装置1a,1b,1cへデータが分配される。車載装置1a,1b,1cはデータを送信する都度、番号を加減して付与して共に送信する。分配装置2a,2bは番号の大小を比較して最新データであるか否かを判断し、最新データのみ記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の車載装置と、各車載装置に接続してあり各車載装置から送信されるデータを更に他の車載装置へ分配する分配装置とを備える車載通信システムに関し、分配装置と車載装置との接続関係を多重化して、分配装置から各車載装置へ分配されるデータの信頼性を向上させることができる車載通信システム及び車載通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子制御装置(ECU;Electronic Control Unit)を使用した車載装置の機能の増加に伴い、車輌に配される車載装置の数及び種類も増加する傾向にある。
【0003】
車載装置の数の増大に伴い車載装置が接続される車内通信回線で送受信されるデータの量も増大する。車内通信回線で送受信されるデータ量の増大はコリジョン(衝突)によるデータの遅延又は欠落を招く。データの著しい遅延又は欠落は、データ内容の信頼性を欠き、場合によっては車載装置によるブレーキ制御等の運転補助機能に対して致命的となる。
【0004】
そこで、車載装置を複数の群に分け、異なる車内通信回線に車載装置を群毎に接続する構成が一般的である。また、車載装置の増大に対して効率的に車内通信回線を利用するために、車載装置の群を送受信するデータの種類で分別し、群毎に通信速度の異なる車内通信回線に接続する構成もある。これらの構成では、異なる車内通信回線間はデータの送受信を制御するゲートウェイ装置により接続される。
【0005】
特許文献1には、車載装置を複数の群に分けて群毎に通信回線に接続し、車内通信回線を更にゲートウェイ装置で接続する構成とし、送受信されるデータに優先順位を識別するための優先度情報を付加し、ゲートウェイ装置が異なる車内通信回線間でデータを送受信する場合に受信したデータの優先度情報から優先度を判別して優先度が高いデータを優先的に送信し、車内通信回線の通信負荷が増加した場合でも優先度が高いデータの送信が大きく遅れないようにする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−159568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車載装置を複数の群に分けて、各群の間をゲートウェイ装置を介して接続する場合、一の群の車載装置から他の群の車載装置へデータを送信する都度、車載装置から他の車載装置へデータを送信するのでは車載装置間の通信負荷を低減することができない。
【0007】
また、車載装置を複数の群に分けて、各群の間をゲートウェイ装置を介して接続する場合、一の群の中の車載装置が更新するデータの内容は、更新された後にゲートウェイ装置を介して他の群の車載装置へ送信されるまでの間、一の群と他の群とではデータの内容が一致しない時間が生じる。さらに、複数の群がゲートウェイ装置に直列的に接続される場合は、一の群と他の群とでデータの内容に段階的に時間差が生じる虞がある。この場合、車載通信システムにおけるデータの信頼性が担保されない。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、複数の車載装置から送信されるデータを記憶するデータベースを有してデータを各車載装置へ分配する分配装置を備えることによってデータを一元的に管理させ、通信負荷の低減及び各車載装置へ分配されるデータの内容の同一性の担保を実現し、且つ各車載装置を各分配装置に対し夫々接続することで各車載装置とデータベースとの接続関係を多重化することにより、分配装置に支障が発生した場合に車載通信システム全体の処理に支障が生じることを防ぎ、その信頼性を向上させることができる車載通信システム及び車載通信方法を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の他の目的は、各車載装置を複数の分配装置に対し夫々接続することで各車載装置とデータベースとの接続関係を多重化した場合、各車載装置から送信されるデータに、最新のデータであるか否かを識別することができる番号を付与し、分配装置で必ず最新の情報のみでデータベースを更新することにより、データの信頼性を向上させることができる車載通信システム及び車載通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る車載通信システムは、データを送受信する複数の車載装置と、該車載装置に接続されており各車載装置からデータを受信してデータベースに記憶する手段及び記憶したデータを各車載装置へ分配する手段を備える複数の分配装置とを備える車載通信システムであって、前記車載装置の一部又は全部は、前記複数の分配装置に夫々接続されており、同一のデータを各分配装置へ送信する手段を備えることを特徴とする。
【0011】
第2発明に係る車載通信システムは、前記分配装置は夫々、データベースに記憶してあるデータを他の分配装置へ送信する手段と、他の分配装置から送信されたデータを前記データベースに記憶する手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第3発明に係る車載通信システムは、各車載装置はデータを送信するに際し、データに番号を付与する手段と、前記番号を増加(又は減少)させる手段とを備え、各分配装置は、車載装置又は他の分配装置からデータを受信した場合、共に受信したデータの番号が、記憶してあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)か否かを判断する判断手段と、該判断手段が、記憶してあるデータ番号よりも大きい(又は小さい)と判断した場合、受信したデータと共に受信した番号をデータベースに記憶する手段と、前記判断手段が、記憶してあるデータ番号以下(又は以上)であると判断した場合、受信したデータを破棄する手段と、データベースに記憶してあるデータを他の分配装置へ送信するに際し、記憶してある前記データの番号を共に送信する手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
第4発明に係る車載通信方法は、データを送受信する複数の車載装置と、該車載装置に接続されており各車載装置からデータを受信してデータベースに記憶し、記憶したデータを各車載装置へ分配する複数の分配装置とを含む車載通信システムにおける車載通信方法であって、前記車載装置の一部又は全部は、前記複数の分配装置に夫々接続されており、データを各分配装置へ送信するに際し、データに番号を付与し、前記番号を増加(又は減少)させ、前記分配装置は、データベースに記憶してあるデータを、記憶してある前記データの番号と共に他の分配装置へ送信し、各車載装置又は他の分配装置からデータを受信した場合、共に受信したデータの番号が、記憶してあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)か否かを判断し、記憶してあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)と判断した場合、受信したデータと共に受信したデータの番号をデータベースに記憶し、記憶してあるデータの番号以下(又は以上)であると判断した場合、受信したデータを破棄することを特徴とする。
【0014】
第5発明に係る車載通信方法は、データを送受信する複数の車載装置と、該車載装置に接続されており各車載装置からデータを受信してデータベースに記憶し、記憶したデータを各車載装置へ分配する複数の分配装置とを含む車載通信システムにおける車載通信方法であって、前記車載装置の一部又は全部は、前記複数の分配装置に夫々接続されて同一のデータを各分配装置へ送信し、前記車載装置及び分配装置は共通する所定の周期に従い、該所定の周期の内のデータ送信期間に、前記車載装置は、データに番号を付与し、前記番号を増加(又は減少)させて各分配装置へ送信し、各分配装置は、各車載装置からデータを受信した場合、共に受信したデータ番号が、記憶してある前記データの番号よりも大きい(又は小さい)か否かを判断し、記憶してあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)と判断した場合、受信したデータと共に受信した番号をデータベースに記憶し、記憶してあるデータの番号以下(又は以上)であると判断した場合、受信したデータを破棄し、前記所定の周期の内の残期間に、各分配装置は、データベースに記憶してあるデータを、記憶してある前記データの番号と共に他の分配装置へ送信し、各車載装置又は他の分配装置からデータを受信した場合、共に受信したデータの番号が、記憶してあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)か否かを判断し、記憶してあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)と判断した場合、受信したデータと共に受信したデータの番号をデータベースに記憶し、記憶してあるデータの番号以下(又は以上)であると判断した場合、受信したデータを破棄することを特徴とする。
【0015】
本発明では、車載装置から送信されるデータを受信してデータベースに記憶し、車載装置から受信して記憶してあるデータを他の車載装置に分配する分配装置が複数備えられ、且つ、車載装置の一部又は全部夫々に対して複数の分配装置が接続される。即ち、各車載装置と分配装置との接続関係が多重化される。各車載装置からは接続している複数の分配装置に同一の内容のデータが送信され、分配装置により受信されたデータは夫々のデータベースに記憶される。
【0016】
本発明では更に、データベースのデータが分配装置間で夫々送受信される。これにより、複数の分配装置間でデータベースのデータ内容が同期される。
【0017】
本発明では、各分配装置へ接続している車載装置から直接データが送信される場合と、他の分配装置へデータが一度送信されて記憶された後に分配装置のデータベースの同期のために当該データが送信される場合とがある。つまり、同一のデータが時間差で一の分配装置へ送信される。本発明では、車載装置からデータが送信されるに際し、データに番号が付与され、送信の都度その番号が増加(又は減少)させられる。分配装置により、車載装置からデータが受信された場合、共に受信された番号もデータベースに記憶され、他の分配装置へデータを送信されるに際し、共に記憶されてある番号も送信される。分配装置により、車載装置及び分配装置からデータが受信された場合、受信されたデータと共に受信されたデータの番号が既に記憶されてあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)か否かにより最新のデータであるか否かが判断され、最新のデータであると判断されたときのみデータは記憶され、それ以外のときにデータは破棄される。
【0018】
さらに本発明では、車載装置から分配装置へのデータの送信と分配装置から分配装置へのデータの交換とが周期に従って順に行われる場合、同一のデータが一の分配装置で車載装置から直接受信される場合、及びデータベースの同期のために他の分配装置を経由して受信される場合の複数回受信される。本発明では、分配装置により、データと共に受信された番号が記憶されてあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)か否かにより最新のデータであるか否かが判断され、最新のデータであると判断された場合のみデータが記憶され、それ以外の場合にデータは破棄される。
【発明の効果】
【0019】
本発明による場合、分配装置と車載装置の一部又は全部との接続関係が多重化されるので、複数の分配装置の内のいずれかについて支障が発生し、当該分配装置からデータが分配されない状態となっても、他の分配装置からのデータの分配が可能になる。したがって、分配装置を備えることにより各車載装置が受信するデータの同一性を担保することができるのみならず、分配装置のいずれかに支障が発生した場合、分配装置と車載装置との接続に支障が発生した場合等、システムの一部に障害が発生しても車載通信システム全体の動作に支障が生じることを防ぎ、システムの信頼性を向上させることができる。
【0020】
本発明による場合、多重化された分配装置と各車載装置との接続関係において、各分配装置が有しているデータベースが同期されるので、分配装置から送信されるデータの内容が異なる等の問題が起こることを防ぎ、データの内容の同一性を担保し、車載通信システムで送受信されるデータの信頼性を向上させることができる。
【0021】
本発明による場合、多重化された分配装置と各車載装置との接続関係において、車載装置から分配装置へデータが送信される際及び分配装置間でデータが交換される際、分配装置は最新のデータであると判断した場合のみデータベースに記憶するので、古いデータで新しいデータを更新してしまうことを防ぎ、車載通信システムで送受信されるデータの信頼性を向上させることができる。
【0022】
さらに、本発明による場合、車載装置及び分配装置が共通の周期に従って車載装置から分配装置へのデータの送信及び分配装置間でのデータの交換を行うときは、分配装置は車載装置及び他の分配装置から同一のデータを受信するが、最新のデータであると判断した場合のみ記憶するのでデータの信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係る車載通信システムの構成を示す模式図である。車載通信システムは、ECU(Electronic Control Unit)、センサ等を備えてデータを送受信する複数の車載装置1a,1b,1cと、車載装置1a,1b,1c夫々と接続されており各車載装置1a,1b,1cからデータを受信し、他の車載装置1a,1b,1c及び図示しない他の車載装置群へデータを分配する分配装置2a,2bと、車載装置1a,1b,1cと分配装置2aとを接続する車内通信回線3aと、車載装置1a,1b,1cと分配装置2bとを接続する車内通信回線3bと、分配装置2a,2b間を接続する通信線4とを含んで構成されている。なお、図1中において車内通信回線3bは車内通信回線3aと区別するために破線で示している。また、図1中の白矢印は、車載装置1aと分配装置2a,2bとの間のデータの送受信の例を表わしている。
【0025】
車載装置1a,1b,1cは、測定値、計算値、制御値等の各種物理量の数値情報を含むデータの送信又はエンジン、ブレーキ等のマイクロコンピュータによる制御が可能な装置である。例えば一の車載装置1aは車速を検知する図示しないセンサを備え、検知した車速のデータを分配装置2a,2bへ送信する。
【0026】
分配装置2a,2bは、データベース21a,21bとして使用する記憶領域を備えており、車載装置1a,1b,1cから送信されたデータをデータベース21a,21bに記憶し、データベース21a,21bから読み出したデータを車載装置1a,1b,1cへ送信する。分配装置2a,2bにデータを一元的に記憶させることにより、通信負荷の低減及び各車載装置1a,1b,1cへ分配されるデータの内容の同一性の担保の実現が可能になる。
【0027】
分配装置2a,2bは、図示しない他の車載装置群と接続しており、車載装置1a,1b,1cから受信したデータを他の車載装置群へ送信してもよい。この場合、他の車載装置群へ送信するデータは車載装置1a,1b,1cから送信されるデータ全てではなく、当該他の車載装置群で必要なデータのみをデータベース21a,21bから読み出して送信する構成とすることにより、車載通信システムにおける通信負荷が低減される。またデータベース21a,21bに一元的に記憶されてデータベース21a,21bから読み出されたデータが分配されることにより、車載装置1a,1b,1c及び他の車載装置群で受信するデータの内容の同一性が担保される。さらに、分配装置2a,2bから複数の群に接続している各車載装置へ一括してデータを送信することによりデータの同時性が担保される。
【0028】
車載装置1a,1b,1cと分配装置2a,2bとを接続している車内通信回線3a,3b、及び分配装置2a,2b間を接続している通信線4のトポロジーは、バス型、スター型、ディジーチェーン型等いずれの形態でもよい。車載装置1a,1b,1cは分配装置2a,2bと車内通信回線3a,3bを介してデータを送受信することが可能であり、分配装置2a,2bは通信線4を介して相互にデータを送受信することが可能である。
【0029】
なお、本発明に係る車載通信システムでは更に、図1の模式図に示すように各車載装置1a,1b,1cが分配装置2a及び分配装置2bの両者に車内通信回線3a及び3bを介して接続されており、両者にデータを送信する。例えば車載装置1aは分配装置2a及び分配装置2bの両者に車速のデータを送信する。他の車載装置群によって送信されたデータを含め、分配装置2a及び分配装置2bの両者に同一のデータが送信されて記憶される。これにより、車載装置1a,1b,1cは分配装置2aのみならず分配装置2bからもデータを受信することができる。
【0030】
したがって、図1の模式図に示すように、分配装置2aにおいてメモリ等のハードウェアの故障が発生してデータベース21aからデータを読み出すことができなくなる場合、又は分配装置2aと車内通信回線3aとの接続に障害が発生し、車載装置1a,1b,1cが分配装置2aからデータを送受信することができなくなる場合等、分配装置2aに支障が発生した場合であっても、車載装置1a,1b,1cは分配装置2bとの間でデータを送受信することができる。このように本発明の車載通信システムでは各車載装置1a,1b,1cと分配装置2a,2b即ちデータベース21a,21bとの接続関係が二重化されることにより車載通信システム全体としてフェールセーフな状態で動作することが可能になり、システムとしての信頼性が向上する。
【0031】
さらに、本発明に係る車載通信システムでは、分配装置2a,2b間で夫々のデータベース21a,21bから読み出したデータを送受信し、データベース21a,21bの内容を同期させることが望ましい。分配装置2a及び分配装置2bの両者が完全に同じ構成で車載装置1a,1b,1c及び他の車載装置群と接続されており、各車載装置1a,1b,1c,…から正常にデータが両者に送信される場合、データベース21a,21bの内容は同一の内容となる。しかしながら、例えば車載装置1a,1b,1c以外に接続されている車載装置が異なる場合等は、送信されるデータが異なり、データベース21a,21bの内容が同一でないことがある。データベース21a,21bの内容が同一でない場合、車載装置1a,1b,1cは分配装置2a,2b夫々から送信されるデータのいずれが正しい(最新の)データであるかを判断する必要が生じ、データの信頼性が低下する。また、分配装置2aと分配装置2bとで車載装置1a,1b,1c以外の車載装置に別々に接続している場合、それらの車載装置から送信されるデータを車載装置1a,1b,1cでも共有することができると共に、車載装置1a,1b,1c以外であって、分配装置2a及び分配装置2bに別々に接続している車載装置間で同一のデータを使用するときにデータの内容の同一性が担保される。
【0032】
図2は、本発明に係る車載通信システムを構成する車載装置1a及び分配装置2aの内部構成を示すブロック図である。車載装置1b,1cは車載装置1aと同様の内部構成であるので詳細な説明を省略し、分配装置2bは分配装置2aと同様の内部構成であるので詳細な説明を省略する。
【0033】
車載装置1aは、以下に示す各構成部の動作を制御する制御部10aと、各構成部に電力を供給する電源回路11aと、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリからなる記憶部12aと、車内通信回線3aに接続されている第1通信制御部13aと、車内通信回線3bに接続されている第2通信制御部14aとを備える。
【0034】
車載装置1aの制御部10aは、図示しない車輌のオルタネータ、バッテリー等の電力供給装置から電源回路11aを介して電力の供給を受け、記憶部12aに記憶されている制御プログラムを読み出して実行し、各構成部の動作を制御する。
【0035】
車載装置1aの記憶部12aには、制御部10aの処理により発生する制御値、計算値等の各種情報、又は図示しないセンサから入力された信号が表わす物理量の計測値等が一時的に記憶される。
【0036】
また、本発明による場合、車載装置1aの記憶部12aには、送信するデータに付与するデータのシーケンス番号が記憶されている。車載装置1aの制御部10aはデータを送信する場合、記憶部12aに記憶されているシーケンス番号を読み出してデータと共に送信する。本実施の形態では、シーケンス番号は1バイトのメモリを使用する正の整数値(0〜255)として記憶される。シーケンス番号の初期値はゼロに設定されており、制御部10aはデータを送信する都度シーケンス番号を1つ増加させる。シーケンス番号は、255まで増加された場合、次はゼロにリセットされる。なお、シーケンス番号を増加させるタイミングはデータの送信前、送信後いずれでもよい。制御部10aは、データを送信した後、送信前又は送信後に増加されたシーケンス番号を記憶部12aに記憶する。
【0037】
車載装置1aの第1通信制御部13aは、車内通信回線3aを介して接続している分配装置2aとのデータの送受信を実現する。なお、車載装置1aは、第1通信制御部13aにより、車内通信回線3aを介して他の車載装置1b,1cと直接的にデータの送受信が可能な構成でもよい。第2通信制御部14aは、車内通信回線3bを介して接続している分配装置2bと車載装置1aとのデータの送受信を実現する。
【0038】
車載装置1aの制御部10aは、第1通信制御部13a及び第2通信制御部14aにより、記憶部12aに記憶してあるデータのシーケンス番号と共にデータを送信する。なお車載装置1aの制御部10aは、所定のフォーマットを有する「メッセージ」にデータを含めて送信する。
【0039】
分配装置2aは、以下に示す各構成部の動作を制御する制御部20aと、各構成部に電力を供給する電源回路22aと、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリからなる記憶部23aと、車内通信回線3aに接続されている第1通信制御部24aと、通信線4に接続されている第2通信制御部25aとを備える。
【0040】
分配装置2aの制御部20aは、図示しない車輌のオルタネータ、バッテリー等の電力供給装置から電源回路22aを介して電力の供給を受け、記憶部23aに記憶されている制御プログラムを読み出して実行し、各構成部の動作を制御する。
【0041】
分配装置2aの記憶部23aには、制御部20aが車載装置1a,1b,1cから受信したデータを記憶するデータベース21aのための記憶領域が設けられている。制御部20aは、受信したデータから「車速」「操舵角」等の種別(データID)毎に、対応する具体的な測定値、計算値、制御値及び後述するデータのシーケンス番号をデータベース21aに記憶する。なお、分配装置2aの制御部20aは後述するように、データを受信した場合でもデータベース21aに記憶せず破棄するときがある。この処理については後述にて説明する。
【0042】
分配装置2aの第1通信制御部24aは、車内通信回線3aを介して接続している各車載装置1a,1b,1cとのデータの送受信を実現する。第2通信制御部25aは、通信線4を介して接続している分配装置2bとのデータの送受信を実現する。なお、本実施の形態では、分配装置2aの制御部20aは第2通信制御部25aによりデータベース21aから読み出したデータを分配装置2bへ送信するに際し、データベース21aにデータの種別毎に記憶してあるシーケンス番号を読み出して共に送信する。
【0043】
図3は、本発明に係る車載通信システムを構成する車載装置1a,1b,1c及び分配装置2a,2b間で送受信されるメッセージのフォーマットを模式的に表わす説明図である。
【0044】
図3の説明図に示すように、車載装置1a,1b,1cから送信されるメッセージは、所定のヘッダから開始され、シーケンス番号、データ(ペイロード)、最後にメッセージの終了を示すトレイラで構成される。分配装置2aは車載装置1a,1b,1c又は他の分配装置2bから送信されるメッセージから、図3の説明図に表わされたフォーマットに従い、データとそのデータに付与されたシーケンス番号を読み出すことができる。なお、シーケンス番号はデータに含まれる構成でもよい。
【0045】
また、本実施の形態における車載装置1a,1b,1c及び分配装置2a,2bは、同期したタイマを有していることにより、共有の周期に基づき同期して動作する。このため、車載装置1a,1b,1cの制御部10a,10b,10c及び分配装置2a,2bの制御部20a,20bは夫々、図示しない内臓クロックに従ってタイマとして機能する。図4は、本実施の形態における各車載装置1a,1b,1c及び各分配装置2a,2bの制御部10a,10b,10c,20a,20bがタイマとして機能することにより従う所定の周期の例を模式的に示す説明図である。横軸は時間の経過を表わし、各矩形は分割された期間を表わしている。
【0046】
図4の説明図に示す例では、一周期は例えば数十ミリ秒である。一周期は、分配装置2a,2b間でデータを送受信しデータベース21a,21bを同期する期間である同期スロットと、車載装置1a,1b,1cから分配装置2a,2bへ及び分配装置2a,2bから車載装置1a,1b,1cへデータを送信する期間である送信スロットとに分割されている。図4の説明図に示す期間A,C,Eは送信スロットであり、期間B,D,Fは同期スロットである。車載装置1a,1b,1c及び分配装置2a,2bの制御部10a,10b,10c及び制御部20a,20bは、タイマとして機能することにより同期スロット及び送信スロットを認識する。
【0047】
同期スロットの間、分配装置2a,2bと車載装置1a,1b,1cとの間ではデータの送受信は行われず、分配装置2a,2b間でデータベース21a,21bに記憶してあるデータを送受信し、データを交換することにより、データベース21a,21bが同期される。本実施の形態では、データベース21a,21bの同期の手順については限定しない。同期スロットが終了した時点で、分配装置2aのデータベース21aの内容と分配装置2bのデータベース21bの内容とは同期している。
【0048】
上述のように構成される本発明に係る車載通信システムにおいて、各車載装置1a,1b,1cがデータをメッセージに含め、分配装置2a,2bへ送信する処理、分配装置2aがデータベース21aからデータを読み出してメッセージに含めて分配装置2bへ送信する処理、及び、分配装置2bが各車載装置1a,1b,1c及び分配装置2aから送信されるメッセージを受信する場合の処理について説明する。
【0049】
本発明の車載通信システムでは、上述のように各車載装置1a,1b,1cは分配装置2a及び分配装置2bの両者に接続しており、両者に同一のデータ例えば車速データを含めたメッセージを送信する。この場合、車内通信回線3bでコリジョンが発生し、一方の分配装置2bへのメッセージが大幅に遅延し、分配装置2bへデータが送信された時点ではそのデータが既に古いデータとなるときがある。これに対して本発明では上述のように、各車載装置1a,1b,1cからデータにシーケンス番号が付与されて共に送信され、且つ送信の都度シーケンス番号が増加されるので、データを受信する分配装置2a,2bは、より大きいシーケンス番号が付与されたデータが最新であることを認識することができる。したがって、分配装置2a,2bは最新のデータのみをデータベース21a,21bに記憶し、それ以外のデータを破棄する。
【0050】
以下に、車載装置1a,1b,1c及び分配装置2a,2bの制御部20a,20bが送信スロット及び同期スロットの期間に行なう処理をフローチャートを用いて説明する。図5及び図6は、本実施の形態における車載通信システムで、送信スロットの期間に車載装置1a及び分配装置2aの間でデータが送受信される処理手順を示すフローチャートである。車載装置1b,1cが分配装置2a,2bへ送信する処理手順は車載装置1aによる処理手順と同様であるので詳細な説明を省略する。また、分配装置2bが車載装置1a,1b,1cからメッセージを受信する処理手順は、分配装置2aによる処理手順と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0051】
車載装置1aの制御部10aはタイマとして機能することにより、送信スロットが到来したか否かを判断する(ステップS101)。車載装置1aの制御部10aは、送信スロットが到来していないと判断した場合(S101:NO)、処理をステップS101へ戻し、送信スロットが到来したと判断するまで待機する。
【0052】
車載装置1aの制御部10aは、送信スロットが到来したと判断した場合(S101:YES)、記憶部12aに一時的に記憶してある測定値、計算値、制御値等のデータを読み出す(ステップS102)。また車載装置1aの制御部10aは、記憶部12aに記憶してあるシーケンス番号を読み出し(ステップS103)、読み出したシーケンス番号を1増加させ(ステップS104)、読み出したデータ及び増加させたシーケンス番号を含めてメッセージを生成し(ステップS105)、生成したメッセージを第1通信制御部13a及び第2通信制御部14aにより、車内通信回線3a,3bを介して分配装置2a,2bへ送信する(ステップS106)。
【0053】
分配装置2aの制御部20aは、接続している車載装置1aから送信されたメッセージを第1通信制御部24aにより受信し(ステップS107)、受信したメッセージからデータ及びデータのシーケンス番号を読み出す(ステップS108)。分配装置2aの制御部20aは、受信したメッセージから読み出したデータに対応し、データベース21aに既に記憶してあるデータのシーケンス番号を読み出し(ステップS109)、ステップS108で読み出したシーケンス番号と比較する(ステップS110)。
【0054】
分配装置2aの制御部20aは、受信したメッセージから読み出したデータのシーケンス番号が、データベース21aから読み出したデータのシーケンス番号よりも大きいか否かを判断する(ステップS111)。分配装置2aの制御部20aは、受信したメッセージから読み出したデータのシーケンス番号が、読み出したデータのシーケンス番号よりも大きいと判断した場合(S111:YES)、受信したメッセージから読み出したデータ、及び共にメッセージから読み出したシーケンス番号をデータベース21aに記憶し(ステップS112)、処理を終了する。
【0055】
分配装置2aの制御部20aは、受信したメッセージから読み出したデータのシーケンス番号が、読み出したデータのシーケンス番号以下であると判断した場合(S111:NO)、受信したメッセージから読み出したデータを破棄し(ステップS113)、処理を終了する。
【0056】
なお、ステップS111における判断処理で、分配装置2aの制御部20aは、受信したメッセージから読み出したデータのシーケンス番号がゼロリセットされた後の番号である場合は、読み出したデータのシーケンス番号よりも大きいと判断する。
【0057】
図7及び図8は、本実施の形態における車載通信システムで、同期スロットの期間に分配装置2a,2b間でデータが送受信される処理手順を示すフローチャートである。なお、分配装置2bが他の分配装置2aからメッセージを受信する処理以降の処理手順は、車載装置1a,1b,1cからメッセージを受信した場合の処理手順と同様である。したがって、図7及び図8のフローチャートに示す処理手順の内の、分配装置2bが分配装置2aからメッセージを受信した後の処理手順については図5及び図6のフローチャートに示した処理手順と同一のステップ番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0058】
分配装置2aの制御部20aはタイマとして機能することにより、同期スロットが到来したか否かを判断する(ステップS201)。分配装置2aの制御部20aは、同期スロットが到来していないと判断した場合(S201:NO)、処理をステップS201へ戻し、同期スロットが到来したと判断するまで待機する。
【0059】
分配装置2aの制御部20aは、同期スロットが到来したと判断した場合(S201:YES)、記憶部23aのデータベース21aに記憶してあるデータ及びデータのシーケンス番号を読み出す(ステップS202)。分配装置2aの制御部20aは、読み出したデータ及びシーケンス番号を含めてメッセージを生成し(ステップS203)、生成したメッセージを第2通信制御部25aにより分配装置2bへ送信する(ステップS204)。
【0060】
その後、ステップS107の処理により分配装置2aからメッセージを受信した(S107)分配装置2bの制御部20bは、車載装置1aからメッセージを受信した場合同様、メッセージからデータ及びシーケンス番号を読み出し(S108)、データベース21bに記憶してあるデータのシーケンス番号を読み出し(S109)て比較し(S110)、受信したメッセージから読み出したデータのシーケンス番号がデータベース21bに記憶してあるデータのシーケンス番号よりも大きいと判断した場合(S111:YES)、データを記憶し(S112)、記憶してあるデータのシーケンス番号以下であると判断した場合(S111:NO)、データを破棄して(S113)同期の処理を終了する。
【0061】
さらに、分配装置2bの制御部20bが、データベース21bから読み出したデータに基づいてメッセージを生成して分配装置2aへ送信し、分配装置2aの制御部20aは分配装置2bから受信したデータの内の、最新のデータのみデータベース21aに記憶する。これにより、分配装置2a,2b間でデータが交換され、データベース21a,21bの内容が同期される。
【0062】
次に、上述のような処理の具体例として、車載装置1aの制御部10aによりデータの種別を車速とするデータが送信され、分配装置2a,2bによって当該車速データが受信され、更に分配装置2a,2b間でデータが同期される場合を例に挙げて説明する。図9、図10及び図11は、本発明の車載通信システムを構成する車載装置1a及び分配装置2a,2b間でデータが送受信され、記憶される処理を模式的に示す説明図である。
【0063】
図9(a)は図4の説明図に示した各期間の内の期間A、図9(b)は同様に期間B、図10(a)は期間C、図10(b)は期間D、図11(a)は期間Eにおける処理を示している。図9(a)、図9(b)、図10(a)、図10(b)、図11(a)の説明図では夫々、本発明に係る車載通信システムを構成する車載装置1a及び分配装置2a,2bの接続関係を示し、車載装置1aから分配装置2a,2bへ送信されるメッセージの内容を示し、更に、分配装置2a,2bが夫々備えているデータベース21a,21bで記憶されるデータの内容例を表により示している。
【0064】
まず、送信スロットである期間Aでは図9(a)の説明図に示すように、車載装置1aの制御部10aは、車速データ(値=20)及び車速データに付与されたシーケンス番号「100」を含んだメッセージを生成し、分配装置2a及び分配装置2bへ車内通信回線3a,3bを介して送信する。なお、シーケンス番号「100」は1増加された番号である。分配装置2aの制御部20aは、車載装置1aから送信されたメッセージを受信し、データベース21aを更新する。これにより、分配装置2aのデータベース21aに記憶される車速データは、値が「20」、シーケンス番号が「100」のデータに更新される。一方、期間Aでは車内通信回線3bが例えば輻輳状態であることにより、分配装置2bの制御部20bは、車載装置1aから送信されたメッセージを受信することができず、データベース21bは更新されず、分配装置2bのデータベース21bに記憶されている車速データは、値が「10」、シーケンス番号が「99」である。
【0065】
次に、同期スロットである期間Bでは図9(b)の説明図に示すように、分配装置2a,2b間で通信線4を介してデータが送受信されて同期される。ここでは、分配装置2aの制御部20aが、データベース21aから車速データの値「20」及び記憶してあるシーケンス番号「100」を含むメッセージを生成し、分配装置2bへ送信する。分配装置2bの制御部20bは、分配装置2aから受信したメッセージに含まれる車速データのシーケンス番号「100」と、データベース21bに記憶してある車速データのシーケンス番号「99」とを比較する。分配装置2bの制御部20bは、受信したメッセージに含まれるデータのシーケンス番号「100」が、記憶してある車速データのシーケンス番号「99」よりも大きいと判断するので、受信した車速データの値「20」及びシーケンス番号「100」をデータベース21bに記憶する。これにより、分配装置2a,2bのデータベース21a,21bが最新のデータに同期される。
【0066】
次に、送信スロットである期間Cでは図10(a)の説明図に示すように、車載装置1aの制御部10aは、車速データ(値=45)を含むメッセージを生成する。このとき車載装置1aの制御部10aは、前回送信したデータのシーケンス番号「100」を1増加させたシーケンス番号「101」を車速データに共に含めてメッセージを生成し、分配装置2a,2bへ送信する。分配装置2a,2bの制御部20a,20bは、車載装置1aから送信されたメッセージを受信し、メッセージに含まれる車速データのシーケンス番号「101」とデータベース21a,21bに記憶してある車速データのシーケンス番号「100」とを比較する。分配装置2a,2bの制御部20a,20bは夫々、受信したメッセージに含まれるデータのシーケンス番号「101」が、記憶してある車速データのシーケンス番号「100」よりも大きいと判断するので、受信したメッセージに含まれる車速データの値「45」及びシーケンス番号「101」をデータベース21a,21bに記憶し、更新する。
【0067】
次に、同期スロットである期間Dでは図10(b)の説明図に示すように、分配装置2a,2b間でデータが送受信されて同期される。この期間でも、分配装置2aの制御部20aが、データベース21aから車速データの値「45」及び記憶してあるシーケンス番号「101」を含むメッセージを生成し、分配装置2bへ送信する。期間Bにおける処理同様に、分配装置2bの制御部20bは、分配装置2bから受信したメッセージに含まれる車速データのシーケンス番号「101」と、データベース21bに記憶してある車速データのシーケンス番号「101」とを比較する。しかし、期間Dでは分配装置2bの制御部20bは、受信したメッセージに含まれるデータのシーケンス番号「101」が、記憶してある車速データのシーケンス番号「101」以下であると判断するので、受信したメッセージに含まれる車速データ及びシーケンス番号を破棄する。記憶してあるデータと同一内容であり、既に同期されている状態であるので更新されない。
【0068】
次に、送信スロットである期間Eでは図11(a)の説明図に示すように、車載装置1aの制御部10aにより期間Aで送信された車速データ(値=20)及びシーケンス番号「100」を含むメッセージが車内通信回線3bを介して分配装置2bへ再送される。分配装置2bの制御部20bは、再送されたメッセージを受信する。分配装置2bの制御部20bは、受信したメッセージに含まれる車速データのシーケンス番号「100」とデータベース21bに記憶してある車速データのシーケンス番号「101」とを比較する。この場合、分配装置2bの制御部20bは、受信したメッセージに含まれるデータのシーケンス番号「100」が、記憶してある車速データのシーケンス番号「101」以下であると判断するので、受信したメッセージに含まれる車速データ及びシーケンス番号を破棄する。
【0069】
上述のように分配装置2bは、送信スロット及び同期スロットの期間に夫々、車載装置1a,1b,1c及び分配装置2aから同一のデータを含むメッセージを受信する。本発明の場合、車載装置1a,1b,1cからはデータにシーケンス番号が付与されて共に送信され、且つそのシーケンス番号は送信の都度増加される。したがって、分配装置2bは、より大きいシーケンス番号が付与されたデータが最新のデータであることを認識し、受信したメッセージのデータのシーケンス番号が、データベース21bに記憶してあるデータに付与されているシーケンス番号よりも大きいと判断した場合のみデータベース21bにそのデータを記憶する。この処理により、分配装置2bが、古いデータによって新しいデータを更新してしまうことを回避することができ、車載装置1a,1b,1cに対するデータベースとの接続関係をデータベース21a及びデータベース21b両方と接続することにより二重化してデータの信頼性を向上させた上で更に、データの信頼性を向上させることができる。
【0070】
なお、本実施の形態では車内通信回線をも車内通信回線3a,3bによって二重化する構成とした。しかしながら、本発明はこれに限らず、分配装置2a,2b及び車載装置1a,1b,1cがいずれも一の車内通信回線に接続している構成でもよい。この場合、車載装置1a,1b,1cは通信制御部を二つ備える必要がなく、一の通信制御部を介して車内通信回線に接続し、当該一の車内通信回線を介してデータを分配装置2a及び分配装置2bに送信する構成でもよい。分配装置2aが何らかの要因で故障した場合であっても車載装置1a,1b,1cは分配装置2bからデータを受信することができ、システムの信頼性は向上する。
【0071】
本実施の形態では、車載装置1a,1b,1cの全部が複数の分配装置2a,2bへ接続する構成とした。しかしながら、本発明はこれに限らず、車載装置1a,1b,1cの内の一部のみが複数の分配装置2a,2bへ接続している構成でもよい。例えば、車載装置1aのみ分配装置2a及び分配装置2bに接続し、車載装置1bは車内通信回線3aのみに接続して分配装置2aとのみデータの送受信が可能であり、車載装置1bは車内通信回線3bのみに接続して分配装置2bとのみデータの送受信が可能である構成でもよい。
【0072】
また、本実施の形態では車載装置1a,1b,1cがデータを送信する場合にデータに付与する番号は、送信する都度増加させる構成とした。しかしながら、本発明はこれに限らず、送信する都度番号を減少させ、番号が小さい程最新のデータであると判断できるように構成してもよい。この場合、分配装置2a,2bの制御部20a,20bは受信したデータに付与されている番号の値が記憶してあるデータの番号よりも小さい場合にデータベースに記憶し、記憶してある番号以上である場合はデータを破棄する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る車載通信システムの構成を示す模式図である。
【図2】本発明に係る車載通信システムを構成する車載装置及び分配装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る車載通信システムを構成する車載装置及び分配装置間で送受信されるメッセージのフォーマットを模式的に表わす説明図である。
【図4】本実施の形態における各車載装置及び各分配装置の制御部がタイマとして機能することにより従う所定の周期の例を模式的に示す説明図である。
【図5】本実施の形態における車載通信システムで、送信スロットの期間に車載装置及び分配装置の間でデータが送受信される処理手順を示すフローチャートである。
【図6】本実施の形態における車載通信システムで、送信スロットの期間に車載装置及び分配装置の間でデータが送受信される処理手順を示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態における車載通信システムで、同期スロットの期間に分配装置間でデータが送受信される処理手順を示すフローチャートである。
【図8】本実施の形態における車載通信システムで、同期スロットの期間に分配装置間でデータが送受信される処理手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の車載通信システムを構成する車載装置及び分配装置間でデータが送受信され、記憶される処理を模式的に示す説明図である。
【図10】本発明の車載通信システムを構成する車載装置及び分配装置間でデータが送受信され、記憶される処理を模式的に示す説明図である。
【図11】本発明の車載通信システムを構成する車載装置及び分配装置間でデータが送受信され、記憶される処理を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1a,1b,1c 車載装置
10a,10b,10c 制御部
12a,12b,12c 記憶部
2a,2b 分配装置
20a,20b制御部
21a,21b データベース
23a,23b 記憶部
3a,3b 車内通信回線
4 通信線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送受信する複数の車載装置と、該車載装置に接続されており各車載装置からデータを受信してデータベースに記憶する手段及び記憶したデータを各車載装置へ分配する手段を備える複数の分配装置とを備える車載通信システムであって、
前記車載装置の一部又は全部は、
前記複数の分配装置に夫々接続されており、
同一のデータを各分配装置へ送信する手段
を備えることを特徴とする車載通信システム。
【請求項2】
前記分配装置は夫々、
データベースに記憶してあるデータを他の分配装置へ送信する手段と、
他の分配装置から送信されたデータを前記データベースに記憶する手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車載通信システム。
【請求項3】
各車載装置はデータを送信するに際し、
データに番号を付与する手段と、
前記番号を増加(又は減少)させる手段と
を備え、
各分配装置は、
車載装置又は他の分配装置からデータを受信した場合、
共に受信したデータの番号が、記憶してあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)か否かを判断する判断手段と、
該判断手段が、記憶してあるデータ番号よりも大きい(又は小さい)と判断した場合、受信したデータと共に受信した番号をデータベースに記憶する手段と、
前記判断手段が、記憶してあるデータ番号以下(又は以上)であると判断した場合、受信したデータを破棄する手段と、
データベースに記憶してあるデータを他の分配装置へ送信するに際し、記憶してある前記データの番号を共に送信する手段と
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の車載通信システム。
【請求項4】
データを送受信する複数の車載装置と、該車載装置に接続されており各車載装置からデータを受信してデータベースに記憶し、記憶したデータを各車載装置へ分配する複数の分配装置とを含む車載通信システムにおける車載通信方法であって、
前記車載装置の一部又は全部は、
前記複数の分配装置に夫々接続されており、
データを各分配装置へ送信するに際し、
データに番号を付与し、
前記番号を増加(又は減少)させ、
前記分配装置は、
データベースに記憶してあるデータを、記憶してある前記データの番号と共に他の分配装置へ送信し、
各車載装置又は他の分配装置からデータを受信した場合、
共に受信したデータの番号が、記憶してあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)か否かを判断し、
記憶してあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)と判断した場合、受信したデータと共に受信したデータの番号をデータベースに記憶し、
記憶してあるデータの番号以下(又は以上)であると判断した場合、受信したデータを破棄する
ことを特徴とする車載通信方法。
【請求項5】
データを送受信する複数の車載装置と、該車載装置に接続されており各車載装置からデータを受信してデータベースに記憶し、記憶したデータを各車載装置へ分配する複数の分配装置とを含む車載通信システムにおける車載通信方法であって、
前記車載装置の一部又は全部は、前記複数の分配装置に夫々接続されて同一のデータを各分配装置へ送信し、
前記車載装置及び分配装置は共通する所定の周期に従い、
該所定の周期の内のデータ送信期間に、
前記車載装置は、
データに番号を付与し、
前記番号を増加(又は減少)させて各分配装置へ送信し、
各分配装置は、
各車載装置からデータを受信した場合、
共に受信したデータ番号が、記憶してある前記データの番号よりも大きい(又は小さい)か否かを判断し、
記憶してあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)と判断した場合、受信したデータと共に受信した番号をデータベースに記憶し、
記憶してあるデータの番号以下(又は以上)であると判断した場合、受信したデータを破棄し、
前記所定の周期の内の残期間に、
各分配装置は、
データベースに記憶してあるデータを、記憶してある前記データの番号と共に他の分配装置へ送信し、
各車載装置又は他の分配装置からデータを受信した場合、
共に受信したデータの番号が、記憶してあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)か否かを判断し、
記憶してあるデータの番号よりも大きい(又は小さい)と判断した場合、受信したデータと共に受信したデータの番号をデータベースに記憶し、
記憶してあるデータの番号以下(又は以上)であると判断した場合、受信したデータを破棄する
ことを特徴とする車載通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−302780(P2008−302780A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150783(P2007−150783)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】